説明

リチウム二次電池電極、リチウム二次電池、および電池システム

【課題】高出力化を可能とするリチウム二次電池電極を提供する。
【発明の効果】集電体12a、14aと、集電体の表面に形成された活物質層11と、活物質層の内部に配置され、リチウムイオンを透過させる内部集電体11cと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池電極、リチウム二次電池、および電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)用のリチウム二次電池の開発が盛んに行われており、電池の高容量化が図られている。リチウム二次電池は、一般に、正極活物質または負極活物質が集電体に塗布されて正極および負極が形成され、正極と負極が電解質を介して積層されて構成される。電池を高容量化するには、たとえば、集電体に活物質層を厚塗りする方法がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−220454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、活物質層が集電体に厚塗りされている場合、厚塗りされている厚さの分だけ、リチウムイオンの移動する距離が増加することになる。このため、活物質層を構成する活物質とリチウムイオンとの反応に遅れが生じ、高出力を得ることが困難になる。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、リチウム二次電池の高出力化を実現する電極構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明に係るリチウム二次電池電極は、集電体と活物質層とリチウムイオンを透過する内部集電体とを有する。内部集電体は活物質層の内部に配置する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るリチウム二次電池電極によれば、高出力時に、活物質層内に設けたリチウムイオンを透過する内部集電体で選択的に集電することにより、リチウムイオンの移動距離を減少させる。また、内部集電体によって集電することにより、内部集電体の両側の活物質層をリチウムイオンの享受に寄与させる。これにより、リチウム二次電池の高出力時における内部抵抗を低減し、高出力化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態に係るリチウム二次電池を含む電池システムの構成概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るリチウム二次電池の外観を表した斜視図である。
【図3】図2に示されるリチウム二次電池を、A−A’の線により切断した場合の断面概略図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るリチウム二次電池電極を電解質層とともに示す断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るリチウム二次電池の正電極の形成手順と共に、タブが構成された正電極および負電極を積層して形成された本発明に係るリチウム二次電池の外観を示す概略図である。
【図6】本発明の第2実施形態および第3実施形態に係るリチウム二次電池電極の断面を示す概略図である。
【図7】本発明の第2実施形態および第3実施形態に係るリチウム二次電池の正極活物質層における抵抗をモデル化した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るリチウム二次電池電極、リチウム二次電池、および電池システムについて説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されることがあり、実際の比率とは異なることがある。
【0010】
なお、本発明の実施形態に係るリチウム二次電池は、積層型(扁平型)電池として説明するが、例えば、巻回型(円筒型)電池にも適用し得る。
【0011】
また、本実施形態に係るリチウム二次電池は通常の並列接続型の積層型電池を例として説明するが、双極型の電池にも適用し得る。
【0012】
(第1実施形態)
図1は本実施形態に係るリチウム二次電池を含む電池システムの構成概略図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係るリチウム二次電池は、負極集電体(集電体)12a、負極内部集電体(内部集電体)13c、負極活物質層(活物質層)11、電解質層15、正極内部集電体(内部集電体)11c、正極活物質層(活物質層)13、正極集電体(集電体)14aを有してなる。ここで、図1においては、簡単のため、リチウム二次電池の構造を、電池として機能する最小単位である単電池層の構造のみで示している。
【0014】
負極活物質層11は、負極活物質下層11aと負極活物質上層11bとが積層されてなる。負極活物質下層11aと負極活物質上層11bとの間には、負極内部集電体11cを設ける。正極活物質層13は、正極活物質下層13aと正極活物質上層13bとが積層されてなる。正極活物質下層13aと正極活物質上層13bとの間に正極内部集電体13cを設ける。負極活物質層11は、負極活物質下層11aが負極集電体12aと接するように負極集電体12a上に積層され、負極集電体12aおよび負極内部集電体11cとともに負電極(リチウム二次電池電極)をなす。正極活物質層13は、正極活物質下層13aが正極集電体14aと接するように正極集電体14a上に積層され、正極集電体14aおよび正極内部集電体13cとともに正電極(リチウム二次電池電極)をなす。
【0015】
負極活物質層11と正極活物質層13は、それぞれ、負極活物質上層11bが電解質層15と接し、正極活物質上層13bが電解質層15と接するように、電解質層15を介して積層する。
【0016】
本実施形態に係る電池システム10は、リチウム二次電池20、スイッチ機構S11c、S13c、S12a、S14a、制御装置16、インバータ(負荷)17、を有してなる。
【0017】
負極内部集電体11cおよび正極内部集電体13cは、それぞれ、スイッチ機構S11cおよびスイッチ機構S13cを介してインバータ17へ接続する。負極集電体12aおよび正極集電体14aは、それぞれ、スイッチ機構S12aおよびスイッチ機構S14aを介してインバータ17へ接続する。各スイッチ機構S11c、S13c、S12a、S14aは制御装置16が制御する。制御装置16は、集電体の組である負極集電体12aおよび正極集電体14aと、内部集電体の組である負極内部集電体11cおよび正極内部集電体13cとのいずれかから出力を取り出すように各スイッチ機構S11c、S13c、S12a、S14aを接続または遮断する制御をする。一方、制御装置16は、負極集電体12aおよび正極集電体14aと、負極内部集電体11cおよび正極内部集電体13cと、の両方から出力するように各スイッチ機構S11c、S13c、S12a、S14aを制御してもよい。
【0018】
本実施形態に係る電池システムにおいては、通常は負極集電体12aおよび正極集電体14aから集電し、高出力が要求される際には、選択的に、負極内部集電体11cおよび正極内部集電体13cから集電する。
【0019】
制御装置16には、上位装置(図示せず)から制御信号が送信される。制御装置16はスイッチ機構S11c、S13c、S12a、S14aを制御することによって正極内部集電体13cおよび負極内部集電体11cから高出力の電力をインバータ17に供給することができる。
【0020】
負極内部集電体11cおよび正極内部集電体13cからはタブを突出して形成してもよい。これらのタブを利用して、負極内部集電体11cおよび正極内部集電体13cを負荷であるインバータ17へスイッチ機構S11cおよびS13cを介して接続することができる。また、負極集電体12aおよび正極集電体14aからはタブを突出して形成し、これらのタブを利用して、負極集電体12aおよび正極集電体14aをインバータ17へスイッチ機構S12aおよびS14aを介して接続することができる。前記タブは、それぞれ、任意の箇所に形成してよいが、配線し易いように、また短絡を防ぐために、それぞれお互いに一辺上において離隔して形成されることが望ましい。
【0021】
なお、図1では、リチウム二次電池20の負荷の例としてインバータ17を示したが、リチウム二次電池20の使用用途によっては、当然負荷が異なる場合があり、負荷がインバータに限られないことは言うまでもない。
【0022】
図2は本実施形態に係るリチウム二次電池の外観を示す斜視図である。
【0023】
図2に示すように、本実施形態に係るリチウム二次電池20は、長方形状の扁平な形状を有し、その両側部からは電力を取り出すための第1負極タブ22、第1正極タブ23、第2負極タブ24、第2正極タブ25が引き出される。発電要素21は、リチウム二次電池20の電池外装材26によって包まれ、その周囲は熱融着され、第1負極タブ22、第1正極タブ23、第2負極タブ24、第2正極タブ25を引き出した状態で密封される。ここで、発電要素21は、負極集電体12a、負極内部集電体13c、負極活物質層11、電解質層15、正極内部集電体11c、正極活物質層13、正極集電体14aからなる単電池層が複数積層されたものである。
【0024】
図3は、本実施形態に係るリチウム二次電池の積層構造を示す断面概略図である。図には、図2に示すリチウム二次電池を、A−A’の線により切断した場合の断面概略図を示している。
【0025】
図3に示すように、本実施形態に係るリチウム二次電池30は、発電要素37が、外装であるラミネートシート36の内部に封止された構造を有する。詳しくは、高分子−金属複合ラミネートシートを電池の外装材として用いて、その周辺部の全部を熱融着にて接合することにより、発電要素37を収納し密封した構成を有する。
【0026】
発電要素37は、正極集電体14a、正極活物質下層13a、正極内部集電体13c、正極活物質上層13b、電解質層15、負極活物質上層11b、負極内部集電体11c、負極活物質下層11a、負極集電体12aからなる単電池層39が複数積層されてなる。各単電池層39は、電気的に並列に接続されている。
【0027】
負極内部集電体11cおよび正極内部集電体13cから延びるタブの先には、それぞれ、第2負極タブ24、第2正極タブ25が取り付けられる。そして、第2負極タブ24および第2正極タブ25がそれぞれ、ラミネートシート36の端部に挟まれるようにしてラミネートシート36の外部に導出される。
【0028】
図4は、本実施形態に係るリチウム二次電池電極を電解質層とともに示す断面図である。図には、正極活物質下層13a、正極内部集電体13c、正極活物質上層13b、正極集電体14aからなる正電極と、電解質層15と、を示している。電解質層15と正極集電体14aとの間に正極活物質層下層13aおよび正極活物質層上層13bを設け、さらに、正極活物質層下層13aと正極活物質層上層13bとの間に正極内部集電体13cを設ける。正極内部集電体13cはリチウムイオンを透過させることができるように、メッシュ状に、十分な開口率を有するように形成する。
【0029】
ここで、本実施形態に係る電池システム10において、リチウム二次電池20を放電した際の、正極活物質下層13aおよび正極活物質上層13bの内部へのリチウムイオンの移動、拡散および吸蔵ついて説明する。
【0030】
一般的に、リチウム二次電池を高出力化するためには、電池の高容量化が必要である。電池の高容量化のためには、活物質層活物質層を厚くすることが有効である。活物質層を厚くすることで、放電反応に寄与するリチウムイオンを吸蔵するサイトの数を増加させて、放電により埋まっていくサイトの数に余裕をもたせることができるからである。
【0031】
しかし、単に活物質層を厚くすると、活物質とリチウムイオンとが反応するまでのリチウムイオンの移動距離が増加し、活物質層のリチウムイオンに対する拡散抵抗が増加する。このため、活物質層を構成する活物質とリチウムイオンとの反応に遅れが生じ、高出力を得ることが困難になる。
【0032】
本実施形態に係るリチウム二次電池20の正極内部集電体13cを利用する放電においては、正極活物質上層13bと正極活物質下層13aとの間(すなわち、正極活物質層13の内部)に正極内部集電体13cを設けることで、電解質層15から集電体(すなわち、正極内部集電体13c)までの距離を短くすることができる。したがって、正極活物質層13(特に、正極活物質上層13b)のリチウムイオンに対する拡散抵抗を減少させ、活物質とリチウムイオンとが反応するまでのリチウムイオンの移動距離を減少させることができる。このため、活物質層を構成する活物質とリチウムイオンとの反応に遅れを生じさせず、高出力を得ることが可能になる。
【0033】
また、本実施形態に係るリチウム二次電池20の正極内部集電体13cによる放電においては、正極内部集電体13cをリチウムイオンが透過できるように構成している。したがって、電解質層15と正極内部集電体13cとの間の正極活物質上層13bに加え、正極内部集電体13cと正極集電体14aとの間の正極活物質下層13aをも放電時のリチウムイオンの吸蔵に寄与させる。これにより、活物質層を厚くしたことによる電池の高容量化を維持することができる。
【0034】
すなわち、単に活物質層を薄くすることで拡散抵抗を減少させて高出力化したリチウム二次電池は、正極活物質層で最もリチウムの密度が大きい正極活物質層表面のサイトがリチウムイオンの吸蔵で埋め尽くされると電池の内部抵抗が急激に増加する。一方、本実施形態に係るリチウム二次電池20は、正極内部集電体13cの両側の正極活物質層13をリチウムイオンの享受に寄与させるため、正極活物質下層13aのサイトを利用できる分、正極活物質上層13b表面(詳しくは、正極活物質上層13bが電解質層15と接する表面)のサイトに余裕をもたせることができる。したがって、本実施形態に係るリチウム二次電池は、単に活物質層を薄くすることで拡散抵抗を減少させて高出力化したリチウム二次電池と比較して長時間の高出力要求に対応できる。
【0035】
このように、本実施形態に係るリチウム二次電池電極によれば、高出力時に、活物質層内に設けたリチウムイオンを透過する内部集電体で選択的に集電することにより、リチウムイオンの移動距離を減少させる。また、内部集電体によって集電することにより、内部集電体の両側の活物質層をリチウムイオンの享受に寄与させる。これにより、高出力時における電池抵抗を低減し、電池の高出力化を実現することができる。
【0036】
なお、このような効果は、放電時に負極活物質層11に設けた負極内部集電体11cが奏する効果、充電時に負極活物質層11に設けた負極内部集電体11cが奏する効果、充電時に正極活物質層13に設けた正極内部集電体13cが奏する効果と同様である。
【0037】
以下に、本実施形態に係るリチウム二次電池の構成要素である、正極/負極活物質層、集電体および内部集電体、電解質層について、より詳細に説明する。
【0038】
<正極/負極活物質層>
正極/負極活物質層は、集電体上に形成され、充放電反応の中心を担う活物質を含む層である。
【0039】
ここで、正極活物質は、放電時にイオンを吸蔵し、充電時にイオンを放出する組成を有する。好ましい一例としては、遷移金属とリチウムとの複合酸化物であるリチウム−遷移金属複合酸化物が挙げられる。具体的には、LiCoOなどのLi・Co系複合酸化物、LiNiOなどのLi・Ni系複合酸化物、スピネルLiMnなどのLi・Mn系複合酸化物、LiFeOなどのLi・Fe系複合酸化物およびこれらの遷移金属の一部を他の元素により置換したものなどが使用できる。これらリチウム−遷移金属複合酸化物は、反応性、サイクル特性に優れ、低コストな材料である。そのためこれらの材料を電極に用いることにより、出力特性に優れた電池を形成することが可能である。この他、前記正極活物質としては、LiFePOなどの遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物;V、MnO、TiS、MoS、MoOなどの遷移金属酸化物や硫化物;PbO、AgO、NiOOHなど、を用いることもできる。上記正極活物質は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。正極活物質の平均粒子径は、特に制限されないが、正極活物質の高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜20μmである。このような範囲であれば、二次電池は、高出力条件下での充放電時における電池の内部抵抗の増大が抑制され、充分な電流を取り出しうる。なお、正極活物質が2次粒子である場合には該2次粒子を構成する1次粒子の平均粒子径が10nm〜1μmの範囲であるのが望ましいといえるが、本実施形態では、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。ただし、製造方法にもよるが、正極活物質が凝集、塊状などにより2次粒子化したものでなくても良いことはいうまでもない。かかる正極活物質の粒径および1次粒子の粒径は、レーザー回折法を用いて得られたメディアン径を使用できる。なお、正極活物質の形状は、その種類や製造方法等によって取り得る形状が異なり、たとえば、球状(粉末状)、板状、針状、柱状、角状などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、いずれの形状であれ問題なく使用できる。好ましくは、充放電特性などの電池特性を向上し得る最適の形状を適宜選択するのが望ましい。
【0040】
また、負極活物質は、放電時にイオンを放出し、充電時にイオンを吸蔵できる組成を有する。負極活物質は、リチウムを可逆的に吸蔵および放出できるものであれば特に制限されないが、負極活物質の例としては、SiやSnなどの金属、或いはTiO、Ti、TiO、もしくはSiO、SiO、SnOなどの金属酸化物、Li4/3Ti5/3もしくはLiMnNなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物、Li−Pb系合金、Li−Al系合金、Li、または天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、もしくはハードカーボンなどの炭素材料などが好ましく挙げられる。また、負極活物質は、リチウムと合金化する元素を含むことが好ましい。リチウムと合金化する元素を用いることにより、従来の炭素系材料に比べて高いエネルギー密度を有する高容量及び優れた出力特性の電池を得ることが可能となる。上記負極活物質は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0041】
上記のリチウムと合金化する元素としては、以下に制限されることはないが、具体的には、Si、Ge、Sn、Pb、Al、In、Zn、H、Ca、Sr、Ba、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、Cd、Hg、Ga、Tl、C、N、Sb、Bi、O、S、Se、Te、Cl等が挙げられる。これらの中でも、容量およびエネルギー密度に優れた電池を構成できる観点から、炭素材料、ならびに/またはSi、Ge、Sn、Pb、Al、In、およびZnからなる群より選択される少なくとも1種以上の元素を含むことが好ましく、炭素材料、Si、またはSnの元素を含むことが特に好ましい。これらは1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
負極活物質の平均粒子径は、特に制限されないが、負極活物質の高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜20μmである。このような範囲であれば、二次電池は、高出力条件下での充放電時における電池の内部抵抗の増大が抑制され、充分な電流を取り出しうる。なお、負極活物質が2次粒子である場合には該2次粒子を構成する1次粒子の平均粒子径が10nm〜1μmの範囲であるのが望ましいといえるが、本実施形態では、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。ただし、製造方法にもよるが、負極活物質が凝集、塊状などにより2次粒子化したものでなくても良いことはいうまでもない。かかる負極活物質の粒径および1次粒子の粒径は、レーザー回折法を用いて得られたメディアン径を使用できる。なお、負極活物質の形状は、その種類や製造方法等によって取り得る形状が異なり、たとえば、球状(粉末状)、板状、針状、柱状、角状などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、いずれの形状であれ問題なく使用できる。好ましくは、充放電特性などの電池特性を向上し得る最適の形状を適宜選択するのが望ましい。
【0043】
負極および正極活物質層には、必要であれば、その他の物質が含まれてもよい。たとえば、導電助剤、バインダ等が含まれうる。また、イオン伝導性ポリマーが含まれる場合には、前記ポリマーを重合させるための重合開始剤が含まれてもよい。
【0044】
導電助剤とは、活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト等のカーボン粉末や、気相成長炭素繊維(VGCF;登録商標)等の種々の炭素繊維、膨張黒鉛などが挙げられる。しかし、導電助剤がこれらに限定されないことは言うまでもない。
【0045】
バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリイミド、PTFE、SBR、合成ゴム系バインダ等が挙げられる。しかし、バインダがこれらに限定されないことはいうまでもない。また、バインダとゲル電解質として用いるマトリックスポリマーとが同じ場合には、バインダを使用する必要はない。
【0046】
活物質層に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、リチウム二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
【0047】
<集電体>
本実施形態において、集電体および内部集電体の材質は、特に限定されないが、具体的な例としては、たとえば、鉄、クロム、ニッケル、マンガン、チタン、モリブデン、バナジウム、ニオブ、アルミニウム、銅、銀、金、白金およびカーボンよりなる群から選ばれてなる少なくとも1種類の集電体材料を含む。より好ましくはアルミニウム、チタン、銅、ニッケル、銀、またはステンレス(SUS)よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種類の集電体材料などが好ましく挙げられる。あるいは、これらの集電体材料の組み合わせのめっき材なども好ましく使える。また、上記集電体材料である金属(アルミニウムを除く)表面に、他の集電体材料であるアルミニウムを被覆させた集電体であってもよい。また、場合によっては、2つ以上の上記集電体材料である金属箔を張り合わせた集電体を用いてもよい。上述の材質は、耐食性、導電性、または加工性などに優れる。集電体の一般的な厚さは、5〜50μmである。ただし、この範囲を外れる厚さの集電体を用いてもよい。
【0048】
これらは、集電体としては単層構造(たとえば、箔の形態)で用いてもよいし、異なる種類の層で構成された多層構造で用いてもよいし、これらで被覆されたクラッド材(たとえば、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材)を用いてもよい。
【0049】
特に、内部集電体は、特に制限はしないが、たとえば上記材質からなる直径0.1mm程度の線材を形成し、その線材をさらにリチウムイオンの拡散を妨げないようにメッシュ状に形成されてよい。このように形成された内部集電体は、好適には開口率を大きく、たとえば95%以上に形成する。
【0050】
集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。大型の電池に用いられる大型の電極を作製するのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。小型の電極を作製するのであれば、面積の小さな集電体が用いられる。
【0051】
集電体表面上への正極活物質層(または負極活物質層)の形成方法は、特に制限されず、公知の方法が同様にして使用できる。たとえば、上記したように、正極活物質(または負極活物質)、ならびに必要であれば、イオン伝導性を高めるための電解質塩、電子伝導性を高めるための導電助剤、および結着剤を、適当な溶剤に分散、溶解などして、(または負極活物質液)を調製する。これを集電体上に塗布、乾燥して溶剤を除去した後、プレスすることによって、正極活物質層(または負極活物質層)が集電体上に形成される。内部集電体を構成するには、上記のように集電体上に活物質液を塗布し、乾燥した後に、その上に内部集電体をのせ、さらに活物質液の塗布を施す。その後、乾燥し、プレスすることによって、内部集電体を構成する活物質層が形成される。内部集電体は、好ましくは電解質層または集電体と平行に構成される。この際、溶剤としては、特に制限されないが、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、シクロヘキサン、ヘキサンなどが用いられうる。結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を採用する場合には、NMPを溶媒として用いるとよい。
【0052】
上記方法において、正極活物質液(または負極活物質液)を集電体上に塗布・乾燥した後、プレスする。この際、プレス条件を調節することにより、正極活物質層(または負極活物質層)の空孔率が制御されうる。
【0053】
プレス処理の具体的な手段やプレス条件は特に制限されず、プレス処理後の正極活物質層(または負極活物質層)の空孔率が所望の値となるように、適宜調節されうる。プレス処理の具体的な形態としては、たとえば、ホットプレス機やカレンダーロールプレス機などが挙げられる。また、プレス条件(温度、圧力など)も特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0054】
正極活物質層および負極活物質層の厚さは、特に制限されないが、10〜200μm、特に50〜150μmとするのがよい。この際、正極活物質層および負極活物質層の厚さは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
【0055】
<電解質層>
電解質層は、正極活物質層と負極活物質層との間に設ける。ここで、電解質層は、セパレータを有することができる。セパレータによって、正極と負極とが接触することを防ぐことができる。特に、固体電解質およびポリマー電解質を電解質として使用する場合を除いて、電解質を使用する場合セパレータが必要となる。セパレータがない状態では、活物質同士が直接反応し、発熱等の安全上の問題、あるいは、自己放電などの性能上の問題を引き起こす可能性がある。
【0056】
セパレータの素材は、特に制限されず、公知のセパレータ基材が使用できる。たとえば、微孔性ポリエチレンフィルム、微孔性ポリプロピレンフィルム、微孔性エチレン−プロピレンコポリマーフィルムなどのポリオレフィン系樹脂、ならびにアラミド、ポリイミド、セルロースなどの多孔膜または不織布、これらの積層体などが挙げられる。これらは、電解質(電解液)との反応性を低く抑えることができるという優れた効果を有する。他に、ポリオレフィン系樹脂不織布またはポリオレフィン系樹脂多孔膜を補強材層に用い、前記補強材層中にフッ化ビニリデン樹脂化合物を充填した複合樹脂膜なども挙げられる。
【0057】
セパレータ基材の厚さは、使用用途に応じて適宜決定すればよいが、自動車等のモータ駆動用二次電池などの用途においては、1〜100μm程度とすればよい。また、セパレータ基材の多孔度、大きさなどは、得られる二次電池の特性を考慮して、適宜決定すればよい。たとえば、セパレータ基材の空孔率は、好ましくは30〜80%、より好ましくは40〜70%である。また、セパレータ基材の曲路率は、好ましくは1.2〜2.8である。このような多孔度を有するセパレータ基材であれば、電解液及びセパレータの電解質を十分量導入することができ、かつセパレータの強度も十分維持できる。
【0058】
また、セパレータの厚さは均一であることが望ましい。薄い部分があると、その部分での電流が局所的に上昇し、セパレータ全体の透過性にむらを生ずることとなる。その結果、電池の性能・寿命を著しく低下することとなる。
【0059】
セパレータに含浸する電解質は、特に制限されず、公知の電解質が使用できる。具体的には、(a)ゲル電解質(高分子ゲル電解質)、(b)全固体高分子電解質(高分子固体電解質、無機固体型電解質)、(c)液体電解質(電解液)を挙げることができる。
【0060】
本実施形態に係るリチウム二次電池電極の形成手順について説明する。
【0061】
図5(A)は、本実施形態のリチウム二次電池の正電極の形成手順を示す説明図である。
【0062】
まず、板状の正極集電体14aの上に、正極活物質下層13aを形成し、その上にメッシュ状の正極内部集電体13cを形成する。さらにその上に正極活物質上層13bを形成する。その後、このように形成された積層構造を、点線で示される形状に打ち抜くことによって正極活物質層本体を形成する。その後、正−1タブを正極集電体のタブとし、正−2タブを内部集電体のタブとして、それぞれ形成する。
【0063】
負極活物質層も正極活物質層と同様の手順によって形成することができるため正極活物質層の形成手順についての説明は省略する。
【0064】
図5(B)は、タブが構成された正電極および負電極を積層して形成された本実施形態に係るリチウム二次電池の外観を示す図である。図に示すように、正極タブ(正−1タブおよび正−2タブ)および負極タブ(負−1タブおよび負−2タブ)を、電極全体の形状に対してそれぞれ相互に対称的に配置することによって本実施形態によるリチウム二次電池を形成してもよい。正極と負極のタブの位置は、短絡を防ぐためにそれぞれ相互に十分な間隔をもって配置されることが望ましいが、図に示した位置に限定されるものではない。さらに、タブの形状も用途に応じた形状に形成可能であり、図に示した形状に制限されるものではない。
【0065】
また、本実施形態では、一つの活物質層の内部に1つの内部集電体が構成されるが、1つ以上の内部集電体が構成されてもよい。
【0066】
以上、本発明の第1実施形態に係るリチウム二次電池電極、リチウム二次電池、および電池システムについて説明したが、本実施形態は、次のような効果を奏する。
【0067】
・高出力時に、活物質層内に設けたリチウムイオンを透過する内部集電体で選択的に集電することにより、リチウムイオンの移動距離を減少させる。また、内部集電体によって集電することにより、内部集電体の両側の活物質層をリチウムイオンの享受に寄与させる。これにより、リチウム二次電池の高出力時における内部抵抗を低減し、電池の高出力化を実現することができる。
【0068】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係るリチウム電池電極、リチウム二次電池、および電池システムは、活物質層内に設けた内部集電体によって上下に分けられた各活物質層(すなわち、正極活物質上層13bと正極活物質下層13a(または、負極活物質上層11bと負極活物質下層11a))の空孔率を変化させたことに特徴を有する。その他の部分については第1実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0069】
以下、図6および図7を参照しながら、本実施形態について詳細に説明する。
【0070】
図6(A)は、本実施形態に係るリチウム二次電池電極の断面図である。
【0071】
図6(A)には、電解質層15と正極内部集電体13cとの間の正極集電体上層13b、および、内部集電体13cと正極集電対14aとの間の正極集電体下層13aに散在する、粒状活物質63および導電助剤64を示している。図に示すように、本実施形態に係るリチウム二次電池電極は、正極集電体上層13bにおいて粒状活物質63同士の空間を大きくして、空孔率を大きくする。このように、粒状活物質63の間の空間を大きくして空孔率を上げることにより、リチウムイオンの移動および拡散を促すことができる。これにより、リチウムイオンは活物質上のサイトへより容易に到達できる。つまり、空孔率を大きくすることによって、正活物質層における拡散抵抗を減少させることができる。
【0072】
図7は、本実施形態に係るリチウム二次電池電極の正極活物質層における抵抗をモデル化した回路図である。抵抗Rl1〜Rl4は、正極活物質層におけるリチウムイオンの拡散抵抗、抵抗Re1〜Re4は電子抵抗、抵抗Rr1〜Rr5は活物質反応抵抗である。
【0073】
本実施形態によれば、図でモデル化した抵抗のうち、主にリチウムイオンの拡散抵抗のうち抵抗Rl1、Rl2と、活物質反応抵抗のうち抵抗Rr1、Rr2、Rr3の値を低減することができる。これにより、正極内部集電体から電力を出力する際に経路Eに流れる電流を効果的に増大させることができるため、リチウム二次電池の出力向上を達成することができる。
【0074】
本実施形態に係るリチウム二次電池電極は、例えば、次のように製造することができる。すなわち、正極活物質層を構成する層を順次積層し、プレスして形成する際に、プレス時の圧力を正極活物質下層13aについては比較的低くする。これにより、正極活物質下層13aの空孔率を正極活物質上層13bよりも大きくすることができる。すなわち、正極活物質層13のうち、正極内部集電体と電解質層15との間の部分の空孔率を、正極集電体14aと正極内部集電体との間の部分の空孔率より大きくすることができる。
【0075】
本実施形態は、負極活物質層11についても同様に適用することができる。
【0076】
以上、本発明の第2実施形態に係るリチウム二次電池電極、リチウム二次電池、および電池システムについて説明したが、本実施形態は、第1実施形態による効果に加えて、次のような効果を奏する。
・内部集電体と電解質層間の活物質層の空孔率を選択的に上げてリチウムイオンの拡散性を向上させ電池全体の抵抗を減少させることで、高出力要求時においてさらに高出力化を実現することができる。
【0077】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係るリチウム二次電池電極、リチウム二次電池、および電池システムは、活物質層内に設けた内部集電体によって上下に分けられた活物質層ごとに導電助剤の量を変化させたことに特徴を有する。その他の部分については第1実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0078】
以下、図6および図7を参照しながら、本実施形態について詳細に説明する。
【0079】
図6(B)は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池電極の断面図である。
【0080】
図6(B)に示すように、本実施形態に係る正電極は、正極集電体下層13aにある導電助剤64の量よりも正極集電体上層13bにある導電助剤64の量を多くする。このように、正極活物質上層13bの導電助剤64の量を増加させることによって、正極活物質上層13bの電気導電率を向上させることが可能となる。このことは、図7に示す、正極活物質層における抵抗をモデル化した回路図におけるモデル化した抵抗のうち、電子抵抗Re1、Re2の値を低減することに当たる。これにより、正極内部集電体から電力を出力する際に経路Fに流れる電流を効果的に増大させることができるため、リチウム二次電池の出力向上を達成することができる。
【0081】
ここで、導電助剤64の量とは、単位重量に占める導電助剤64の重量をいうが、これに限定されず、例えば、単位体積に占める導電助剤64の体積であってもよい。
【0082】
本実施形態は、負極活物質層11についても同様に適用することができる。
【0083】
以上、本発明の第3実施形態に係るリチウム二次電池電極、リチウム二次電池、および電池システムについて説明したが、本実施形態は、第1実施形態による効果に加えて、次のような効果を有する。
・内部集電体と電解質層間の活物質層の電気導電率を向上させて、電池全体の抵抗を減少させることにより、高出力要求時においてさらに電池の高出力化を実現することができる。
【0084】
図示はしないが、本発明の実施形態に係る車両は、本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を搭載したことを特徴とする。
【0085】
本発明の実施形態に係る車両は高出力を実現できるので、走行中に急加速をしたり、緊急時に早急に付加的な出力を要求したりしたいときなどに、対応し得る。
【実施例】
【0086】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例により説明する。ただし、本発明が以下に説明される実施例に限定されるものではない。
【0087】
表1に、比較例および実施例のリチウム二次電池電極の構成要素および構成要素に対応する仕様を示す。表2に、表1に記載した正極インク(正極活物質液)と負極インク(負極活物質液)の仕様を示す。以下に、表1に記載した電池電極の作成について説明する。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
<比較例1の電極作成>
1.活物質層の作成
比較例1の活物質層には、正極には正極インク(正極活物質液)1を、負極には負極インク(負極活物質液)1を使用した。正極インク1および負極インク1は、以下のように作成した。
【0091】
−正極インク1の作成
ニッケル酸リチウム(D50=10μm)を重量比で90wt%、導電助剤としてアセチレンブラック(一時粒子のD50=48nm)を5wt%、結着材としてPVdFを5wt%とし、NMPを溶媒として固形分比が60wt%となるようにインクを作成した。
【0092】
−負極インク1の作成
天然黒鉛を重量比で90wt%、導電助剤としてアセチレンブラックを5wt%、結着材としてPVdFを5wt%とし、NMPを溶媒として固形分比が50wt%となるようにインクを作成した。
【0093】
2.電極の作成
−正極
電解Al箔(20μm)に正極インク1を、溶媒乾燥後の単位面積あたり17mg/cmとなるようにダイコーターを使用して塗布した。溶媒を、ホットプレートを用いて揮発させた後、35tプレス機を用いて電極空孔率が30%になるようにプレスした。集電箔を除く電極膜厚は、60μmとした。
【0094】
−負極
圧延Cu箔(20μm)に負極インク1を、溶媒乾燥後の単位面積あたり10mg/cmとなるようにダイコーターを使って塗布した。溶媒を、ホットプレートを用いて揮発させた後、35tプレス機を用いて電極空孔率が25%となるようにプレスした。集電箔を除く電極膜厚は、60μmとした。
【0095】
<比較例2の電極作成>
比較例2は、比較例1に対し、正極、負極ともに活物質層の膜厚を2倍に増加させた。それ以外については比較例1と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0096】
1.電極の作成
−正極
比較例1と異なり、溶媒乾燥後の単位面積あたりの正極インク1量は、単位面積あたり34mg/cmとなるようにした。集電箔を除く電極膜厚は、120μmとした。
【0097】
−負極
比較例1と異なり、溶媒乾燥後の単位面積あたりの負極インク1量は、単位面積あたり20mg/cmとなるようにした。集電箔を除く電極膜厚は、120μmとした。
【0098】
<実施例1の電極作成>
1.活物質層の作成
実施例1の活物質層には、正極、負極ともにインク1を使用した。
【0099】
2.電極の作成
−正極
電解Al箔(20μm)に正極インク1を、溶媒乾燥後の単位面積あたり17mg/cmとなるようにダイコーターを使用して塗布した。溶媒を、ホットプレートを用いて揮発させた後、開口率98%、φ0.1mmのAl線材でできたメッシュ(内部集電体)をのせ、更に正極インク1を溶媒乾燥後の単位面積あたり17mg/cmとなるようにダイコーターを使用して塗布した。溶媒を、ホットプレートを用いて揮発させた後、35tプレス機を用いて電極空孔率が30%になるようにプレスした。集電箔を除く電極膜厚は、120μmとした。
【0100】
−負極
圧延Cu箔(20μm)に負極インク1を、溶媒乾燥後の単位面積あたり10mg/cmとなるようにダイコーターを使って塗布した。溶媒を、ホットプレートを用いて揮発させた後、開口率98%、φ0.1mmのCu線材でできたメッシュをのせ、更に負極インク1を溶媒乾燥後の単位面積あたり10mg/cmとなるようにダイコーターを使用して塗布した。溶媒を、ホットプレートを用いて揮発させた後、35tプレス機を用いて電極空孔率が25%になるようにプレスした。集電箔を除く電極膜厚は、120μmとした。
【0101】
<実施例2の電極作成>
実施例2は、実施例1に対し、正極、負極ともに、活物質上層の膜厚および空孔率を大きくし、かつ、活物質下層の膜厚および空孔率を小さくしている。それ以外については比較例1と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0102】
1.電極の作成
−正極
電解Al箔(20μm)に正極インク1を、溶媒乾燥後の単位面積あたり17mg/cmとなるようにダイコーターを使用して塗布した。溶媒を、ホットプレートを用いて揮発させた後、35tプレス機を用いて電極空孔率が25%になるようにプレスした。集電箔を除く電極膜厚は、57μmである。開口率98%、φ0.1mmのAl線材でできたメッシュをのせ、更に正極インク1を溶媒乾燥後の単位面積あたり17mg/cmとなるようにダイコーターを使用して塗布した。溶媒を、ホットプレートを用いて揮発させた後、35tプレス機を用いて電極空孔率が30%になるようにプレスした。集電箔を除く電極膜厚は、120μmとした。結果として、先に塗った電極下部の空孔率は25%となり、後に塗った電極上部の空孔率は35%となった。
【0103】
−負極
圧延Cu箔(20μm)に負極インク1を、溶媒乾燥後の単位面積あたり10mg/cmとなるようにダイコーターを使って塗布した。溶媒を、ホットプレートを用いて揮発させた後、35tプレス機を用いて電極空孔率が28%となるようにプレスした。集電箔を除く電極膜厚は、57μmである。開口率98%、φ0.1mmのAl線材でできたメッシュをのせ、更に負極インク1を溶媒乾燥後の単位面積あたり10mg/cmとなるようにダイコーターを使用して塗布した。溶媒を、ホットプレートを用いて揮発させた後、35tプレス機を用いて電極空孔率が25%になるようにプレスした。集電箔を除く電極膜圧は、120μmとした。結果として、先に塗った電極下部の空孔率は20%となり、後に塗った電極上部の空孔率は30%となった。
【0104】
なお、上記空孔率は合材の真密度と設計膜圧より算出でき、全体の空孔率は水銀圧入法により計測することが可能である。
【0105】
<実施例3の電極作成>
実施例3は、実施例1に対し、正極、負極ともに、活物質上層にインク2を使用し、かつ、活物質下層にインク3を使用した点で異なる。これにより、正極、負極ともに、活物質上層の導電助剤量(wt%)を大きくし、かつ、活物質下層の導電助剤量(wt%)を小さくした。それ以外については比較例1と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0106】
1.活物質層の作成
実施例3の活物質層には、正極および負極共に、活物質上層にはインク2を、活物質層下層にはインク3を使用した。インク2および3は、以下のように作成した。
【0107】
−正極インク2の作成
ニッケル酸リチウム(D50=10μm)を重量比で87wt%、導電助剤としてアセチレンブラック(一次粒子のD50=48nm)を8wt%、結着材としてPVdFを5wt%とし、NMPを溶媒として固形分比が60wt%となるようにインクを作成した。
【0108】
−負極インク2の作成
天然黒鉛を重量比で85wt%、導電助剤としてアセチレンブラックを10wt%、結着材としてPVdFを5wt%とし、NMPを溶媒として固形分比が50wt%となるようにインクを作成した。
【0109】
−正極インク3の作成
ニッケル酸リチウム(D50=10μm)を重量比で93wt%、導電助剤としてアセチレンブラック(一次粒子のD50=48nm)を2wt%、結着材としてPVdFを5wt%とし、NMPを溶媒として固形分比が60wt%となるようにインクを作成した。
【0110】
−負極インク3の作成
天然黒鉛を重量比で95wt%、結着材としてPVdFを5wt%とし、NMPを溶媒として固形分比が50wt%となるようにインクを作成した。
【0111】
各比較例および各実施例の電極形成後、比較例1および比較例2には集電体に、実施例1〜3には集電体および内部集電体に、以下のようにタブを形成した。
【0112】
まず、正極を塗布部一辺28mm、つまり7.84cmの正方形に、負極を塗布部一辺30mm、つまり9.00cmの正方形にそれぞれ打ち抜く。比較例1、2では、それぞれAl箔にAlタブ(正−1タブ)、Cu箔にNiタブ(負−1タブ)を取り付けた。実施例1〜3では、それぞれAl箔にAlタブ(正−1タブ)、内部集電体のAlメッシュにAlタブ(正−2タブ)を、Cu箔にNiタブ(負−1タブ)、内部集電体のCu箔にNiタブ(負−2タブ)を取り付けた。
【0113】
上記のように作成した全ての電極について、正極・負極活物質層間に使用されるセパレータとして、ポリプロピレン(PP)製のセパレータ25μmを使用した。さらに、1M LiPF6EC−DECを1cc注液した。その後、アルミラミネートで封止して電池を作成した。
【0114】
上記のように作成したそれぞれの電極の試験方法および試験結果は、以下の通りである。
【0115】
<試験方法>
<初期電池容量>
正−1タブ、負−1タブを充電装置の端子に接続し、上限電圧4.2Vとして、CC(constant current)、CV(constant voltage)モードで、5mAで10時間充電を行った。
【0116】
下限電圧2.5Vとして、CCモードで2.5mAの放電を行った。
【0117】
結果、比較例、実施例それぞれについて得られた放電容量は、表3の通りである。
【0118】
【表3】

【0119】
<DC−IR試験1>
比較例1、2の電池は、計測器の端子に正−1タブ、負−1タブを接続した。
【0120】
実施例1、2、3の電池は、端子に正−2タブ、負−2タブを接続した。
【0121】
初期電池容量で得られた電池容量(比較例1;1C=20mAh、それ以外;1C=40mAh)を基準として、満充電状態から0.5C/30min放電をし、10分間休止後80mAを1秒間放電することによって、電圧降下量からオームの法則(R=ΔV/0.08)より電池内抵抗を算出した。
【0122】
<DC−IR試験2>
比較例1、2の電池は、計測器の端子に正−1タブ、負−1タブを接続した。
【0123】
実施例1、2、3の電池は、端子に正−2タブ、負−2タブを接続した。
【0124】
初期電池容量で得られた電池容量(比較例1;1C=20mAh、それ以外;1C=40mAh)を基準として、満充電状態から0.5C/30min放電をし、10分間休止後80mAを10秒間放電することによって、電圧降下量からオームの法則(R=ΔV/0.08)より電池内抵抗を算出した。
【0125】
<DC−IR試験3>
比較例1、2の電池は、端子に正−1タブ、負−1タブを接続した。
【0126】
実施例1、2、3の電池は、端子に正−2タブ、負−2タブを接続した。
【0127】
初期電池容量で得られた電池容量(比較例1;1C=20mAh、それ以外;1C=40mAh)を基準として、満充電状態から0.5C/30min放電をし、10分間休止後80mAを30秒間放電することによって、電圧降下量からオームの法則(R=ΔV/0.08)より電池内抵抗を算出した。
【0128】
<試験結果>
各試験で得られた電池内抵抗Rに電極面積(正極サイズ7.84cm)を乗じて面積抵抗を算出した。試験結果を表4に示す。
【0129】
【表4】

【0130】
DC−IR試験1〜3の結果、表3に示される通り、比較例1は実施例1〜3と比べて電池容量が小さかった。比較例2は、電池容量では実施例1〜3と同程度大きかったが、表4に示される通り、端子間で発生する電極内抵抗が大きかった。一方、実施例1〜3では、比較例2と同程度に電池容量が大きく、また同時に、電極内抵抗を抑えることができた。
【0131】
本試験によって、本発明の実施形態に係るリチウム二次電池によって、電池容量を減少することなく、リチウム二次電池の内部抵抗を減少することが証明できた。したがって、本発明の実施形態に係るリチウム二次電池および電池システムを使用することによって、エネルギー密度を低下することなく、一時的な高出力を実現することが可能であることが証明された。
【符号の説明】
【0132】
10 電池システム、
11 負極活物質層(活物質層)、
11a 負極活物質下層(活物質層)、
11b 負極活物質上層(活物質層)、
11c 負極内部集電体(内部集電体)、
12a 負極集電体(集電体)、
13 正極活物質層(活物質層)、
13a 正極活物質下層(活物質層)、
13b 正極活物質上層(活物質層)、
13c 正極内部集電体(内部集電体)、
14a 正極集電体(集電体)、
15 電解質層、
16 制御装置、
17 インバータ(負荷)、
20 リチウム二次電池、
22、23、24、25 電極タブ、
26 電池外装材、
32c,34c 第2集電板、
36 電池外装材、
37 発電要素、
39 単電池層、
63 粒状活物質、
64 導電助剤、
S11c、S12a、S13c、S14a スイッチ機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、
前記集電体の表面に形成された活物質層と、
前記活物質層の内部に配置され、リチウムイオンを透過させる内部集電体と、
を有することを特徴とするリチウム二次電池電極。
【請求項2】
前記活物質層は、前記集電体と接触する面の反対面において電解質層と接触しており、
前記活物質層のうち、前記内部集電体と前記電解質層との間の部分の空孔率は、前記集電体と前記内部集電体との間の部分の空孔率より大きいことを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池電極。
【請求項3】
前記活物質層のうち、前記内部集電体と前記電解質層との間の部分に含まれる導電助剤量は、前記集電体と前記内部集電体との間の部分に含まれる導電助剤量より多いことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のリチウム二次電池電極。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池電極を含むリチウム二次電池。
【請求項5】
集電体と、前記集電体上に形成された活物質層と、前記活物質層の内部に配置された内部集電体と、を備えたリチウム二次電池電極を含むリチウム二次電池と、
前記集電体および前記内部集電体に接続された負荷と、
前記集電体および前記負荷間ならびに前記内部集電体および前記負荷間にそれぞれ配置され、電気的な接続または遮断可能なスイッチ機構と、
を有し、
高出力放電時には、前記内部集電体および前記負荷間を電気的に接続することを特徴とする電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−119156(P2011−119156A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276591(P2009−276591)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】