説明

リニアアクチュエータ

【課題】ジャックスクリュ機構の機能を損なうことなく、低コスト化及び軽量化を図ることができるリニアアクチュエータを提供する。
【解決手段】ジャックスクリュ機構3が、ジャックスクリュ31と、ジャックスクリュ31に螺合し且つジャックスクリュ31の回転に従動して進退動作可能なナット体32と、ジャックスクリュ31及びナット体32を内部空間に収容し得るガイドハウジング33とを備えてなり、ナット体32に、ジャックスクリュ31の軸方向と略直交する第1軸321a、第2軸321bを中心に転動可能な第1ベアリング321A、第2ベアリング321Bを設けるとともに、ガイドハウジング33に、第1ベアリング321A、第2ベアリング321Bの外周面にそれぞれ添接し且つナット体32の進退動作を案内する第1ガイド溝33A、第2ガイド溝33Bを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、高負荷に対応可能なリニアアクチュエータとして、電動モータと、電動モータの回転運動を直線運動に変換する運動変換機構(例えばジャックスクリュ機構)とを備えたものが知られている。
【0003】
その一例として、ジャックスクリュに係合可能なナット体の外周面、及びナット体の外周面と添接し得るガイドハウジングの内周面に、それぞれスプライン加工を施し、このスプライン嵌合を利用して、ナット体がジャックスクリュの回転に従動してジャックスクリュの軸方向に沿って進退動作するようにした態様が挙げられる。なお、このような従来技術は、現場において適宜実施されるものであり、特許文献などとして開示されているものはない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のものは、ナット体の外周面及びガイドハウジングの内周面にそれぞれスプラインを加工しなければならず、加工コストが嵩む上に、高い加工精度が要求されるという問題があった。さらに、高負荷にも耐え得るように、ガイドハウジングをステンレス鋼等の鋼材から成形しなければならず、リニアアクチュエータ全体の重量化を招来するという問題も発生していた。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、運動変換機構の機能を損なうことなく、低コスト化及び軽量化を図ることができるリニアアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明のリニアアクチュエータは、モータと、当該モータの回転運動を直線運動に変換する運動変換機構とを具備してなるものであって、前記運動変換機構が、ねじ軸と、当該ねじ軸に螺合し且つねじ軸の回転に従動して進退動作可能なナット体と、前記ねじ軸及びナット体を内部空間に収容し得るガイドハウジングとを備えたものであり、前記ナット体に、前記ねじ軸の軸方向と略直交する軸を中心に転動可能な転動体を設けるとともに、前記ガイドハウジングに、前記転動体の外周面に添接し且つ前記ナット体の進退動作を案内するガイド溝を設けたことを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、ガイドハウジングに設けたガイド溝に、転動体を添接させた状態で転動させながらナット体を進退移動させるようにしているため、従来のように、ナット体の外周面及びガイドハウジングの内周面にそれぞれスプライン加工を施す必要がなく、加工コストを有効に抑えることができるとともに、ガイドハウジングにガイド溝を形成する態様であるため、ガイドハウジングにスプラインを加工する態様と比較して、加工容易性の点においても優れたものとなる。さらに、高負荷で作動させた場合にナット体及びガイド溝に過大な面圧が作用するが、転動体をガイド溝に添接した状態で転動させることによって、ナット体をガイド溝に直接接触させた状態で進退動作させる態様と比較して、ナット体及びガイド溝に作用する負荷を効果的に軽減することができ、その結果、ガイドハウジングを、鋼材以外の素材、例えばアルミニウムから成形することが可能となり、アクチュエータ全体の軽量化をも図ることができる。
【0008】
特に好適な実施態様としては、転動体としてベアリングを適用した態様が挙げられる。これにより、ナット体の直線運動をさらに円滑なものとすることが可能である。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、運動変換機構の機能を損なうことなく、低コスト化及び軽量化を図ることが可能なリニアアクチュエータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0011】
本実施形態に係るリニアアクチュエータ1は、図1に示すように、モータ2と、モータ2の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構(ジャックスクリュ機構3)とを備えたものである。本実施形態では、モータ2として、電動モータを適用している。すなわち、本実施形態に係るリニアアクチュエータ1は、電動リニアアクチュエータである。また、本実施形態では、運動変換機構として、本発明のねじ軸たるジャックスクリュ31を備えたジャックスクリュ機構3を適用している。
【0012】
電動モータ2は、モータ本体21と、モータ本体21の一端面から突出し軸回りに回転する回転軸とを備えたものである。そして、この回転軸の回転を、図示しない一又は複数の歯車からなる減速機構で減速してジャックスクリュ機構3へ出力するようにしている。
【0013】
ジャックスクリュ機構3は、減速機構の終端に接続され、出力軸として機能するジャックスクリュ31と、ジャックスクリュ31に螺合した状態でジャックスクリュ31の回転に従動して進退動作可能なナット体32と、ジャックスクリュ31及びナット体32を内部空間に収容し得るガイドハウジング33とを備えたものである。
【0014】
ジャックスクリュ31は、外周面に雄ねじを切ったものであり、ジャックスクリュ用軸受け31aに回転可能に支持されている。そして、減速機構の終端に接続された部位がジャックスクリュ機構31の入力端に相当する。
【0015】
ナット体32は、内周面にジャックスクリュ31の雄ねじに螺合可能な雌ねじを切ったナット本体321と、ナット本体321に一体又は一体的に設けられ、筒状の内部空間にジャックスクリュ31を収容し得るチューブ状部322とを備えたものである。図1では、ナット本体321とチューブ状部322とを一体に有するナット体32を図示している。
【0016】
しかして、ナット本体321に、ジャックスクリュ31の軸方向(換言すればナット体32の進退方向)と略直交する軸を中心に転動可能な転動体たるベアリング(第1ベアリング321A、第2ベアリング321B)を設けている。本実施形態では、ナット本体321に、上方(モータ2側)に向かって延びる第1軸321aと、下方(反モータ2側)に向かって延びる第2軸321bとを設け、これら各軸(第1軸321a、第2軸321b)にそれぞれ単一のベアリング(第1ベアリング321A、第2ベアリング321B)を回転可能に支持させている。すなわち、本実施形態では、ナット本体321に、上下一対のベアリング(第1ベアリング321A、第2ベアリング321B)を設けている。
【0017】
ガイドハウジング33は、例えばアルミニウム素材からなり、ナット体32に設けた第1ベアリング321A、第2ベアリング321Bの外周面にそれぞれ添接し得る第1ガイド溝33A、第2ガイド溝33Bを長手方向(換言すればナット体32の進退方向)に沿って形成したものである。そして、ベアリング(第1ベアリング321A、第2ベアリング321B)とガイド溝(第1ガイド溝33A、第2ガイド溝33B)とによってナット体32の直線運動をガイドするリニアガイド機構を構成している。
【0018】
第1ガイド溝33Aは相互に対向する対向壁33aを有し、第2ガイド溝33Bは相互に対向する対向壁33bを有し、これら対をなす対向壁33a同士、対向壁33b同士の離間寸法を、ベアリング(第1ベアリング321A、第2ベアリング321B)の直径と略同一又は若干大きく設定している。本実施形態では、第1ガイド溝33Aの上方を、上壁331によって閉塞している一方、第2ガイド溝33Bは、下方に開口しており、この下方開口部をカバー4によって閉塞可能にしている(図1参照)。
【0019】
次に、本実施形態に係るリニアアクチュエータ1の動作について説明する。
【0020】
電動モータ2からの出力は減速機で減速された後にジャックスクリュ機構3に伝達され、電動モータ2の回転軸の正転運動、又は逆転運動に対応してナット体32が、第1ベアリング321A及び第2ベアリング321Bをガイドハウジング33に形成した第1ガイド溝33A及び第2ガイド溝33Bにそれぞれ案内させながらジャックスクリュ31の軸方向に沿って直線運動する。より具体的には、第1ベアリング321A及び第2ベアリング321Bが、それぞれの外周面を第1ガイド溝33A、第2ガイド溝33Bに添接した状態で転動しながらスライドすることにより、負荷によるジャックスクリュ31のトルクリアクションを受け止め、ナット体32の直線運動がスムーズ且つ適切にガイドされる。
【0021】
このように、本実施形態に係るリニアアクチュエータ1は、ナット体32に、ジャックスクリュ31の軸方向、すなわちナット体32の進退方向と略直交する軸(第1軸321a、第2軸321b)を中心に転動可能なベアリング(第1ベアリング321A、第2ベアリング321B)を設けるとともに、ガイドハウジング33に、ベアリング(第1ベアリング321A、第2ベアリング321B)の外周面に添接し且つナット体32の進退動作を案内するガイド溝(第1ガイド溝33A、第2ガイド溝33B)を設け、ベアリング(第1ベアリング321A、第2ベアリング321B)とガイド溝(第1ガイド溝33A、第2ガイド溝33B)とによってナット体32の直線運動をガイドするリニアガイド機構を構成しているため、従来のように、ナット体の外周面及びガイドハウジングの内周面にそれぞれスプライン加工を施す必要がなく、加工コストを抑えることができるとともに、ジャックスクリュ31の回転動作時に生じる負荷を、ガイド溝(第1ガイド溝33A、第2ガイド溝33B)に沿って転動するベアリング(第1ベアリング321A、第2ベアリング321B)の外周面と、ガイド溝(第1ガイド溝33A、第2ガイド溝33B)の対向壁(対向壁33a、対向壁33b)との面同士の接触で受けるようにしているため、ガイド溝(第1ガイド溝33A、第2ガイド溝33B)自体に掛かる負荷を効果的に軽減することができ、その結果、ガイドハウジング33を、鋼材以外の素材、例えばアルミニウムから成形することも可能となり、アクチュエータ1全体の軽量化をも図ることができる。
【0022】
特に、本実施形態では、ガイド溝(第1ガイド溝33A、第2ガイド溝33B)に沿って転動する転動体としてベアリング(第1ベアリング321A、第2ベアリング321B)を適用しているため、ガイド溝(第1ガイド溝33A、第2ガイド溝33B)に沿ったナット体32の直線運動をより円滑なものとすることができる。
【0023】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0024】
例えば、前記実施形態では、モータの回転運動を直線運動に変換する運動変換機構として、ジャックスクリュ機構を適用した態様を例示したが、ジャックスクリュ機構に代えてボールスクリュ機構を適用しても構わない。また、モータとして、電動以外のもの、例えば空気圧や油圧を駆動源とするモータを適用してもよい。
【0025】
また、転動体として、ベアリングに代えて、戸車を用いてもよい。
【0026】
また、一のガイド溝に、複数の転動体を転動させる態様や、或いはガイドハウジングに1又は3以上のガイド溝を設けた態様であっても構わない。この場合、各ガイド溝には少なくとも1以上の転動体を転動させるようにしておけばよい。
【0027】
さらに、ガイドハウジングは、軽量化の観点から、鋼材以外の素材からなるものが好ましいことは上述した通りであり、その素材として、アルミニウム以外の素材を適用しても構わない。
【0028】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係るリニアアクチュエータを一部破断して模式的に示す全体概略図。
【図2】図1のx方向矢視図であってカバーを取り付けていない状態を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0030】
1…リニアアクチュエータ
2…モータ(電動モータ)
3…運動変換機構(ジャックスクリュ機構)
31…ねじ軸(ジャックスクリュ)
32…ナット体
321a、321b…軸(第1軸、第2軸)
321A、321B…転動体(第1ベアリング、第2ベアリング)
33…ガイドハウジング
33A、33B…ガイド溝(第1ガイド溝、第2ガイド溝)
4…カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、当該モータの回転運動を直線運動に変換する運動変換機構とを具備してなるリニアアクチュエータであって、
前記運動変換機構が、ねじ軸と、当該ねじ軸に螺合し且つねじ軸の回転に従動して進退動作可能なナット体と、前記ねじ軸及びナット体を内部空間に収容し得るガイドハウジングとを備えたものであり、
前記ナット体に、前記ねじ軸の軸方向と略直交する軸を中心に転動可能な転動体を設けるとともに、前記ガイドハウジングに、前記転動体の外周面に添接し且つ前記ナット体の進退動作を案内するガイド溝を設けたことを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記転動体がベアリングである請求項1記載のリニアアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−8162(P2009−8162A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169972(P2007−169972)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】