説明

リニアソレノイド及びそれを用いたバルブ装置

【課題】リニアソレノイド及びそれを用いたバルブ装置の小型化を維持することができるとともに、ヒステリシス特性を向上させる。
【解決手段】コイル26と、前記コイル26に対する通電作用下に固定コア20に吸引される可動コア22と、前記可動コア22の外周面を囲繞する円筒状ヨーク72と、前記可動コア22を摺動可能に支持する軸受部材36とを有するリニアソレノイド部12をハウジング70内に備え、前記固定コア20は、前記可動コア22側の外周面に第1縮径部20dが形成され、前記円筒状ヨーク72は、前記固定コア20側の外周面に第2縮径部72aが形成され、前記第1縮径部20dに一端を嵌合するとともに、前記第2縮径部72aに他端を嵌合し、前記固定コア20と前記円筒状ヨーク72とを同軸で連結する非磁性のリング部材80を備え、前記第2縮径部72aと前記軸受部材36とが、径方向において重畳していないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電することによって励磁作用を発揮するリニアソレノイド及びそれを用いたバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ソレノイドの励磁作用によって可動コアを変位させ、当該可動コアの変位が伝達されることによりインレットポートとアウトレットポートの連通状態と非連通状態とを切り換える弁体を有するリニアソレノイドバルブが用いられている。
【0003】
この種のリニアソレノイドバルブに関し、本出願人は、小型化することができるとともに、ヒステリシス特性を向上させることが可能なリニアソレノイドバルブを提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1に開示されたリニアソレノイドバルブは、固定コアと、コイルに対する通電作用下に前記固定コアに吸引される円柱状の可動コアと、前記可動コアの外周面を囲繞する円筒状ヨークを有するとともに、前記円筒状ヨークの内周面に前記可動コアを摺動可能に支持する円筒状の軸受部材が圧入嵌合されている。
【0005】
また、リニアソレノイドバルブに関し、固定コアと円筒状ヨークとを、リング部材を用いて連結(両部材の外周面にリング部材を嵌合させて連結)する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−267749号公報
【特許文献2】特開2006−118701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示されたリニアソレノイドバルブは、固定コアと円筒状ヨークとが別体により構成されていることから、固定コアと円筒状ヨークとの軸がずれる可能性が存在するため、両部材の同軸度の向上という点において限界がある。その結果、ヒステリシス特性を十分に良好とすることができない、という問題を有している。
そこで、特許文献1に開示されたリニアソレノイドバルブの固定コアと円筒状ヨークとを、特許文献2に開示されたリング部材を用いて連結し、両部材の同軸度を向上させるという手段が考えられる。
【0008】
しかしながら、リング部材を用いて固定コアと円筒状ヨークとを連結(両部材の外周面にリング部材を嵌合させて連結)した場合、リング部材の厚さ分だけ径方向に装置全体が大きくなってしまう。
ここで、リング部材を用いて固定コアと円筒状ヨークとを連結するに際し、装置全体の小型化を維持するためには、リング部材が嵌合(圧入等)する円筒状ヨークの外周面を縮径する必要がある。しかし、円筒状ヨークの外周面を縮径すると、軸受部材が圧入嵌合されている箇所の円筒状ヨークの径方向の厚さが薄くなってしまい、円筒状ヨークが軸受部材を径方向に適切に固定できなくなってしまう。その結果、軸受部材が可動コアを精密に軸受することができず、ヒステリシス特性が低下してしまう。
つまり、特許文献1、2に開示された技術によると、装置全体の小型化の維持と、ヒステリシス特性の向上を両立することができなかった。
【0009】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、小型化を維持することができるとともに、ヒステリシス特性を向上させることが可能なリニアソレノイド及びそれを用いたバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明のリニアソレノイドは、コイルと、前記コイルに対する通電作用下に軸方向に沿って変位し固定コアに吸引される円柱状の可動コアと、前記可動コアの外周面を囲繞する円筒状ヨークと、前記可動コアと前記円筒状ヨークとの間に設けられるとともに前記可動コアを摺動可能に支持する円筒状の軸受部材と、を有するリニアソレノイド部をハウジング内に備え、前記固定コアは、前記可動コア側の外周面に第1縮径部が形成され、前記円筒状ヨークは、前記固定コア側の外周面に第2縮径部が形成され、前記第1縮径部に一端を嵌合するとともに、前記第2縮径部に他端を嵌合し、前記固定コアと前記円筒状ヨークとを同軸で連結する非磁性のリング部材を備え、前記第2縮径部と前記軸受部材とが、径方向において重畳していないことを特徴とする。
【0011】
本発明のリニアソレノイドによれば、固定コアと円筒状ヨークとを同軸で連結するリング部材を備えることにより、固定コアと円筒状ヨークとの軸がずれる可能性を低減させ、両部材の同軸度を向上させることができる。その結果、ヒステリシス特性を向上させることができる。
【0012】
また、リング部材は、一端が固定コアの第1縮径部に嵌合するとともに、他端が円筒状ヨークの第2縮径部に嵌合していることから、径方向にリング部材が突出してしまうような事態を回避することができる。その結果、径方向においてリニアソレノイドが大型化することを回避し、小型化を維持することができる。
さらに、リング部材は、軸方向において固定コアと円筒状ヨークとの間に備えられていることから、両部材の間の軸方向の空間を有効に利用することができるため、軸方向においてリニアソレノイドが大型化することを回避し、小型化を維持することができる。
【0013】
さらにまた、円筒状ヨークの第2縮径部と軸受部材とが径方向において重畳していないことから、軸受部材が設けられている円筒状ヨークの径方向の厚さが薄くなることを回避することができる。その結果、円筒状ヨークが軸受部材を径方向に適切に固定できないために、軸受部材が可動コアを精密に軸受することができず、ヒステリシス特性が低下してしまうといった事態を回避することができる。
【0014】
また、本発明のリニアソレノイドは、前記第1縮径部の前記可動コア側の外周面には、前記可動コア側の外径が小さくなるように環状のテーパ部が形成されており、前記テーパ部の径方向外側に前記第2縮径部の前記固定コア側の端部が位置していることを特徴とする。
【0015】
本発明のリニアソレノイドによれば、第1縮径部に形成されたテーパ部の径方向外側に第2縮径部の固定コア側の端部が位置していることから、軸方向において固定コアと円筒状ヨークとが近接することとなる。その結果、軸方向においてリニアソレノイドを小型化することができる。
【0016】
また、本発明のリニアソレノイドの前記円筒状ヨークは、内周面に前記軸受部材が圧入される軸受圧入部と、前記軸受圧入部の前記固定コア側に形成されるとともに、前記リング部材が圧入される前記第2縮径部が外周面に形成されたリング圧入部と、からなることを特徴とする。
【0017】
本発明のリニアソレノイドによれば、円筒状ヨークのリング圧入部が軸受圧入部の固定コア側に設けられていることにより、径方向における軸受圧入部の圧入代(厚さ)を確保することができる。その結果、円筒状ヨークが軸受部材を径方向に適切に固定できないために、軸受部材が可動コアを精密に軸受することができず、ヒステリシス特性が低下してしまうといった事態を回避することができる。
【0018】
また、本発明のバルブ装置は、圧力流体が流通する複数のポートを有するバルブボデイと、前記リニアソレノイドと、前記バルブボデイ内に設けられ、前記可動コアの変位によって前記複数のポート間の連通状態と非連通状態とを切り換える弁体を有する弁機構部と、を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明のバルブ装置によれば、小型化が維持され、しかもヒステリシス特性を向上させたリニアソレノイドを備えたバルブ装置とすることができる。その結果、バルブ装置全体の小型化・軽量化を達成するとともに、ヒステリシス特性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、小型化を維持することができるとともに、ヒステリシス特性を向上させることが可能なリニアソレノイドを得ることができる。
また、本発明によれば、小型化が維持され、しかもヒステリシス特性を向上させたリニアソレノイドを備えたバルブ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るリニアソレノイドが組み込まれた油圧制御装置(バルブ装置)の軸方向に沿った縦断面図である。
【図2】図1に示す油圧制御装置(バルブ装置)のリニアソレノイド部の拡大縦断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、円筒状ヨークに対して、リング部材および固定コアが組み付けられる工程を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係るリニアソレノイド部の変形例を示した拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下の説明において、「先端」、「基端」を言うときは、図1に示す方向を基準としている。
【0023】
(バルブ装置の概略構成)
図1に示されるように、油圧制御装置(以下、適宜、バルブ装置という)10は、例えば、磁性金属材料によって有底円筒状に形成され、内部にリニアソレノイド部(リニアソレノイド)12が配設されたハウジング70と、当該ハウジング70と一体的に結合され、内部に弁機構部16が設けられたスリーブ状のバルブボデイ18とを備える。
なお、リニアソレノイド部12の可動コア22が軸方向に変位することにより、弁機構部16がバルブボデイ18の複数のポート44、46、48、50間の連通状態と非連通状態とを切り替える。
【0024】
(各部の構成)
以下、バルブ装置10の各部について説明する。
図1及び図2に示されるように、ハウジング70は、軸方向に沿って長尺に形成され最も外径側に設けられた円筒部71と、円筒部71の径方向内側に所定間隔離間して形成され円筒部71と略平行に延在し且つ短尺に形成された円筒状ヨーク72と、円筒部71及び円筒状ヨーク72の軸方向の一端部(先端側の結合部位)に形成され軸方向の厚さが円筒部71の径方向の厚さと比較して厚肉に形成されたハウジング底部73とを備える。
【0025】
さらに、ハウジング70は、ハウジング底部73に連続し円筒部71と略平行に延在する円筒突出部74と、円筒突出部74から延在し後記する第1ストッパ部材19が略中央部に固着される突出底部75とを有する。この場合、円筒部71、円筒状ヨーク72、ハウジング底部73、円筒突出部74及び突出底部75が一体化されて形成される。
【0026】
そして、円筒状ヨーク72は、環状凹部32が内周面に形成された軸受圧入部72cと、軸受圧入部72cから固定コア20側(基端側)に延在するとともに、第2縮径部72aが外周面に形成されたリング圧入部72bと、から構成される。そして、当該軸受圧入部72cの環状凹部32の内周面には後記する軸受部材36が圧入されるとともに、当該リング圧入部72bの第2縮径部72aの外周面には後記するリング部材80が圧入される。
なお、円筒状ヨーク72とリング部材80との関係については、後記で詳細に説明する。
【0027】
また、前記円筒状ヨーク72は、例えば、ハウジング70と別体で構成された略円筒体からなる他のヨーク(図示せず)を、ハウジング底部73の内周面に形成した図示しない圧入嵌合部に圧入嵌合するように形成してもよい。
【0028】
図2に示されるように、第1ストッパ部材19は、非磁性材料で形成された縦断面略H状部材からなり、後記する可動コア22の軸方向の一端部が当接して前記可動コア22の一方の変位(先端側の変位)を規制するストッパとして機能するものである。そして、第1ストッパ部材19は、突出底部75の貫通孔21内に保持(クリアランスを介して遊嵌されてもよい)される円柱部19aと、突出底部75の内壁側に係合する一方の円板部19bと、突出底部75の外壁側に係合する他方の円板部19cとが一体的に構成される。なお、後記する可動コア22と対向する突出底部75の内壁との間には、可動コア22の一方の流路孔30aと他方の流路孔30bとを連通させる環状間隙部23が形成される。
【0029】
(リニアソレノイド部)
図1及び図2に示されるように、前記リニアソレノイド部(リニアソレノイド)12は、ハウジング70内に収容されるコイル組立体と、ハウジング70の閉塞端側(先端側)に当該ハウジング70と一体的に形成されコイル組立体の内部に配置される円筒状ヨーク72と、ハウジング70の円筒部71の開口端部に結合されるとともに、コイル組立体の内側で軸方向に沿って円筒状ヨーク72と所定のクリアランスを介して配置される固定コア20と、円筒状ヨーク72の内側に軸方向に沿って変位自在に配置された可動コア22と、円筒状ヨーク72と可動コア22との間に配置されるとともに、可動コア22を変位自在に支持する軸受部材36と、固定コア20と円筒状ヨーク72とを同軸で連結する非磁性のリング部材80と、を有する。
【0030】
図2に示されるように、固定コア20は、所定間隔離間して可動コア22と対向する先端側の外周面に、リング部材80の径方向の厚さ分(W)だけ縮径した第1縮径部20dが形成されているとともに、当該第1縮径部20dの外周面が先端側に向かうにしたがって徐々に縮径し(可動コア22側の外径が小さくなるように縮径し)、縦断面が鋭角状に形成された環状のテーパ部20cが形成されている。
なお、固定コア20とリング部材80との関係については、後記で詳細に説明する。
【0031】
第2ストッパ部材25は、非磁性材料によって形成され、固定コア20の凹部20aに係合する環状のフランジ部25aと、当該フランジ部25aに連続し固定コア20の孔部20b内に圧入される円筒部25bとから構成される。円筒部25bには、後記するスプール(変位伝達部材)40のシャフト部40bが挿通する挿通孔25cが設けられる。
【0032】
第2ストッパ部材25は、非磁性材料によって形成されることにより、コイル26に対する通電が停止されたとき、残留磁気の影響によって可動コア22が固定コア20に吸着されたままになることを防止する機能(貼り付き防止機能)を有する。
【0033】
この場合、図示しない電源をオンにしてコイル26に電流を流すことにより励磁作用が発生し、前記励磁作用によって可動コア22が固定コア20側に向かって一体的に変位することにより、後記するスプール40を作動(進退動作)させることができる。
【0034】
コイル組立体は、樹脂製材料によって形成され軸方向に沿って両端部にフランジを有するコイルボビン24と、当該コイルボビン24に巻回されるコイル26とから構成される。
そして、コイル26とハウジング70との間には、当該コイル26の外周面等をモールドした樹脂封止体28が設けられ、当該樹脂封止体28は、コイル26に接続されたカプラ部60を含んで樹脂製材料によって一体成形される。カプラ部60には、コイル26と電気的に接続されるターミナル61の端子部61aが露呈するように設けられる。
【0035】
可動コア22は、その中心部を貫通する従来のシャフトが設けられていないシャフトレスの円柱体からなり、当該円柱体には、周方向に沿って約180度の離間角度で且つ軸方向に沿って貫通する複数の流路孔30a、30bが設けられる。この流路孔30a、30bによって、可動コア22の軸方向に沿った一端側の圧油と他端側の圧油を流通させることができる。
【0036】
そして、可動コア22の軸方向に沿った一端部と他端部との間の中間部には、円筒状ヨーク72の内周面に形成された環状凹部32内に圧入される単一の軸受部材36が設けられ、当該軸受部材36を介して可動コア22が軸方向に沿って摺動可能に支持される。なお、可動コア22は、後記するスプール40のシャフト部40bを含んで一体成形するようにしてもよい。
【0037】
図2に示される縦断面において、軸受部材36は、軸方向に沿って一定の内径を有する環状体によって構成される。そして、当該環状体は、例えば、SPCC(JIS規格)等の金属製材料によって形成された外径層(バックメタル層)と、青銅等を焼結して形成される青銅焼結層(中間層)と、可動コア22との摺動面であって4フッ化エチレン樹脂等の樹脂材料からなる樹脂層(内径層)とが積層されて構成されたベアリングが用いられるとよい。このベアリングとしては、例えば、自己潤滑性を有するすべり軸受けからなり、このような自己潤滑性を有するすべり軸受けを用いることにより、耐摩耗性を向上させることができる。
【0038】
可動コア22の外周面に摺接する軸受部材36の内周面は、円筒状ヨーク72の内周面から径方向に向かって所定長Tだけ突出するように設けられる(図2参照)。従って、可動コア22は、軸受部材36のみと摺接し、円筒状ヨーク72の内周面と可動コア22の外周面との間には、前記突出量(所定長T)に対応する径方向の間隙が形成される。この径方向の間隙は、可動コア22と円筒状ヨーク72との径方向における磁気ギャップとして機能するものである。
【0039】
本実施形態では、円筒状ヨーク72と別体で形成された軸受部材36を円筒状ヨーク72の固定コア20に近接する側に配置するように構成しているが、例えば、円筒状ヨーク72の内周面から可動コア22側に向かって所定長Tだけ突出する環状凸部(図示せず)を円筒状ヨーク72と一体的に形成するようにしてもよい。また、前記構成とは反対に、円筒状ヨーク72側に向かって所定長Tだけ突出する環状凸部(図示せず)を可動コア22の外周面に一体的に形成するようにしてもよい。
【0040】
(リング部材と各部材との関係)
リング部材80は、固定コア20と円筒状ヨーク72とを同軸で連結する非磁性の部材であり、軸方向に沿って一定の厚さ(W)を有する環状体によって構成される。なお、非磁性の部材とは、例えば、ステンレス鋼等である。
リング部材80の一端(基端側)は固定コア20の外周面に形成された第1縮径部20dに圧入されるとともに、他端(先端側)は円筒状ヨーク72の外周面に形成された第2縮径部72aに圧入される。このように構成されることにより、固定コア20と円筒状ヨーク72との軸がずれる可能性を低減させ、両部材の同軸度を向上させることができる。
【0041】
また、固定コア20の第1縮径部20dは、基端側に延在する固定コア20の外径と比較し、リング部材80の径方向の厚さ分(W)だけ縮径している。また、円筒状ヨーク72の第2縮径部72aは、先端側に延在する円筒状ヨーク72の外径と比較し、リング部材80の径方向の厚さ分(W)だけ縮径している。このように構成されることにより、リング部材80により固定コア20と円筒状ヨーク72とを連結した場合に、径方向にリング部材80が突出してしまうような事態を回避することができる。その結果、リニアソレノイド部(リニアソレノイド)12が径方向に大きくなることを防止することができる。
【0042】
リング部材80が外周面に圧入される第2縮径部72aと、軸受部材36とは、径方向において重畳しないように構成される。言い換えると、軸方向において、第2縮径部72aの先端側の端部と、軸受部材36の基端側の端部とが、所定の間隔(図2のΔX)離間するように構成される。このように構成されることにより、第2縮径部72aが形成されるリング圧入部72bの径方向の厚さ(W−W)は、リング部材80の径方向の厚さ分(W)だけ薄くなるにもかかわらず、軸受圧入部72cの径方向の厚さ(W)は、薄くならない。したがって、円筒状ヨーク72が軸受部材36を径方向に適切に固定できないために、軸受部材36が可動コア22を精密に軸受することができず、ヒステリシス特性が低下してしまうといった事態を回避することができる。
【0043】
第2縮径部72aの固定コア20側(基端側)の端部が、固定コア20の可動コア22側(先端側)に形成されたテーパ部20cの径方向外側に位置するように構成される。このように構成されることにより、軸方向において固定コア20と円筒状ヨーク72との設置位置を近づけることができる。その結果、軸方向においてリニアソレノイド部(リニアソレノイド)12を小型化することができる。
【0044】
(弁機構部およびバルブボデイ)
図1に戻って、弁機構部16は、インレットポート44、アウトレットポート46、ドレンポート48、50がそれぞれ設けられたバルブボデイ18内に設けられ、リニアソレノイド部12の可動コア22の端面と当接し前記可動コア22によって押圧されることにより、前記バルブボデイ18内部の空間部に沿ってそれぞれ摺動可能に配設されたスプール(弁体)40を備える。
【0045】
なお、ドレンポート50は、可動コア22の進退動作に対応してハウジング70内の圧油を導入・導出するものである。また、前記インレットポート44、アウトレットポート46及びドレンポート48は、圧力流体が流通する複数のポートとして機能するものである。
【0046】
前記スプール40は、弁本体を有し、前記弁本体は、半径外方向に向かって膨出形成された複数のランドを有するランド部40aと、固定コア20の貫通孔内に進退自在に挿通され、一端部が可動コア22の端面に当接するシャフト部40bとから構成される。
【0047】
また、前記スプール40の外周面には、前記スプール40の変位位置に対応して、インレットポート44とアウトレットポート46とを連通させ、又は、アウトレットポート46とドレンポート48とを連通させる環状凹部52が形成される。
【0048】
さらに、弁機構部16は、図1に示されるように、前記スプール40の基端側の端面と対向するように配置されバルブボデイ18の空間部を閉塞する閉塞部材54と、前記スプール40と閉塞部材54との間に介装されスプール40を原位置に復帰させるリターンスプリング56とを備える。なお、前記閉塞部材54の外周面には、環状溝を介して装着部位を液密乃至気密に保持するシールリング58が設けられる。
【0049】
例えば、前記インレットポート44は、供給油路を介して油圧ポンプ等の図示しない油圧源(圧力流体供給源)にそれぞれ接続され、前記アウトレットポート46は、出力油路を介して図示しない油圧機器の油圧作動部に接続され、ドレンポート48は、図示しないリザーバタンクに接続される。なお、本実施形態では、圧油を用いて説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、圧縮エア等を含む圧力流体を作動媒体として用いることが可能である。
【0050】
本実施形態に係るバルブ装置10は、基本的に以上のように構成されるものである。
次に、ハウジング70の円筒状ヨーク72に対する各部材の組み付け手順、油圧制御装置10の動作、並びに本実施形態の作用効果について説明する。
【0051】
(円筒状ヨークに対する各部材の組み付け手順)
先ず、ハウジング70の円筒状ヨーク72に対するリング部材80および固定コア20の組み付け手順を図3に基づいて説明する。
【0052】
円筒状ヨーク72の軸方向に沿った基端側にリング部材80を配置し(図3(a)参照)、リング部材80の内径よりも若干大径に形成された第2縮径部72aの外周面に対してリング部材80を先端側に押圧して圧入する(図3(b)参照)。
その後、円筒状ヨーク72の軸方向に沿った基端側に固定コア20を配置し(図3(b)参照)、固定コア20の第1縮径部20dの外径よりも若干小径に形成されたリング部材80の内周面に対して固定コア20を先端側に押圧して圧入する(図3(c)参照)。
【0053】
なお、図3は、コイル組立体のハウジング70への組み込み手順については考慮していないが、コイル組立体をハウジング70へ組み込む場合は、固定コア20をリング部材80の内周面に圧入する前に(図3(b)と図3(c)との間に)、コイル組立体をハウジング70の円筒部71と円筒状ヨーク72との間に組み込めばよい。
【0054】
(バルブ装置の動作)
次に、バルブ装置10の動作について説明する。
リニアソレノイド部12の非通電時には、リニアソレノイド部12の電磁力(電磁推力)が何ら発生しないため、図1に示されるように、スプール40はリターンスプリング56のばね力によってリニアソレノイド部12側に向かって押圧された状態となる。
【0055】
したがって、リニアソレノイド部12のオフ状態では、図1に示されるように、スプール40の外周面に形成された環状凹部52によって、インレットポート44とアウトレットポート46とが連通した状態にあり(図1の太線矢印参照)、インレットポート44から導入された圧油が環状凹部52及びアウトレットポート46を経由して図示しない他の部材に供給される。
【0056】
このように、リニアソレノイド部12のオフ状態では、可動コア22が何ら変位することがなく原位置にあって、インレットポート44とアウトレットポート46とが連通したノーマルオープン状態にある。
【0057】
次に、図示しない電源によってリニアソレノイド部12へ電流を流すことにより、リニアソレノイド部12がオン状態となる。このオン状態では、コイル26へ流れる電流値に比例した電磁力によって可動コア22が軸受部材36に沿って摺動しながら固定コア20側(基端側)に向かって吸引され、可動コア22が固定コア20に設けられた第2ストッパ部材25に当接した変位終端位置で停止する。
【0058】
すなわち、リニアソレノイド部12の励磁作用による可動コア22の変位がスプール40に伝達され、前記スプール40がリターンスプリング56のばね力に抗して閉塞部材54側(基端側)に向かって接近する方向に変位する。
【0059】
従って、スプール40のランドによってインレットポート44とアウトレットポート46との連通状態が遮断されるとともに、スプール40の外周面に形成された環状凹部52によってアウトレットポート46とドレンポート48との間が連通した状態に弁位置が切り換えられる。
【0060】
この結果、アウトレットポート46は、スプール40の外周面に形成された環状凹部52を介してドレンポート48と連通した状態となり、前記アウトレットポート46に残存する圧油がドレンポート48から好適に排出される。
【0061】
以上説明した本実施形態のリニアソレノイド部12によれば、固定コア20と円筒状ヨーク72とを同軸で連結するリング部材80を備えることにより、固定コア20と円筒状ヨーク72との軸がずれる可能性を低減させ、両部材の同軸度を向上させることができる。その結果、ヒステリシス特性を向上させることができる。
【0062】
また、リング部材80は、一端が固定コア20の第1縮径部20dに嵌合するとともに、他端が円筒状ヨーク72の第2縮径部72aに嵌合していることから、径方向にリング部材80が突出してしまうような事態を回避することができる。その結果、径方向においてリニアソレノイド部12が大型化することを回避し、小型化を維持することができる。
さらに、リング部材80は、軸方向において固定コア20と円筒状ヨーク72との間に備えられていることから、両部材の間の軸方向の空間を有効に利用することができるため、軸方向においてリニアソレノイド部12が大型化することを回避し、小型化を維持することができる。
【0063】
さらにまた、円筒状ヨーク72の第2縮径部72aと軸受部材36とが径方向において重畳していないことから、軸受部材36が設けられている円筒状ヨーク72の径方向の厚さが薄くなることを回避することができる。その結果、円筒状ヨーク72が軸受部材36を径方向に適切に固定できないために、軸受部材36が可動コア22を精密に軸受することができず、ヒステリシス特性が低下してしまうといった事態を回避することができる。
【0064】
またさらに、第1縮径部20dに形成されたテーパ部20cの径方向外側に第2縮径部72aの固定コア20側の端部が位置していることから、軸方向において固定コア20と円筒状ヨーク72とが近接することとなる。その結果、軸方向においてリニアソレノイド部12を小型化することができる。
【0065】
そして、円筒状ヨーク72のリング圧入部72bが軸受圧入部72cの固定コア20側に設けられていることにより、径方向における軸受圧入部72cの圧入代を確保することができる。その結果、円筒状ヨーク72が軸受部材36を径方向に適切に固定できないために、軸受部材36が可動コア22を精密に軸受することができず、ヒステリシス特性が低下してしまうといった事態を回避することができる。
【0066】
また、本実施形態のバルブ装置10によれば、小型化が維持され、しかもヒステリシス特性を向上させたリニアソレノイド部12を備えたバルブ装置10とすることができる。その結果、バルブ装置10全体の小型化・軽量化を達成するとともに、ヒステリシス特性を向上させることができる。
【0067】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されず、発明の主旨に応じた適宜の変更実施が可能である。
例えば、図4に示されるように、本発明は、複数の軸受部材36a、36bを有するリニアソレノイド部12およびバルブ装置10に適用することも可能である。この場合は、円筒状ヨーク72の基端側に軸受圧入部(基端側軸受圧入部)72c、先端側に軸受圧入部(先端側軸受圧入部)72dが形成され、それぞれの軸受圧入部72c、72dの内周面に軸受部材36a、36bが圧入される。そして、軸受部材36a、36bを軸方向に位置決めできるように、基端側軸受圧入部72cと先端側軸受圧入部72dとの間に軸受圧入部72c、72dよりも内径の小さな軸受位置決め部72eが形成される。なお、基端側軸受圧入部72cおよび先端側軸受圧入部72dは、第2縮径部72aと径方向において重畳しないように形成される。
このように構成されることにより、単一の軸受部材36を有する場合と同様の効果を奏することができる。
【0068】
また、リング部材80の先端側の内周面および基端側の内周面のうち少なくとも一方に、環状のテーパ面(端側の内径が大きくなるような環状の傾斜面)が形成されていてもよい。リング部材80に案内面として機能するテーパ面が形成されることにより、リング部材80を第2縮径部72aに簡便に組み込む(圧入する)ことができ、また、固定コア20をリング部材80に簡便に組み込む(圧入する)ことができるため(図3参照)、組み付け作業が容易となって組み付け性を向上させることができる。なお、第2縮径部72aの基端側の外周面に環状のテーパ面(端側の外径が小さくなるような環状の傾斜面)を形成させてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 バルブ装置(油圧制御装置)12 リニアソレノイド(リニアソレノイド部)
16 弁機構部 18 バルブボデイ
20 固定コア 20c テーパ部
20d 第1縮径部 22 可動コア
26 コイル 36 軸受部材
44 ポート(インレットポート)46 ポート(アウトレットポート)
48 ポート(ドレンポート) 50 ポート(ドレンポート)
70 ハウジング 72 円筒状ヨーク
72a 第2縮径部 72b リング圧入部
72c 軸受圧入部 80 リング部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、前記コイルに対する通電作用下に軸方向に沿って変位し固定コアに吸引される円柱状の可動コアと、前記可動コアの外周面を囲繞する円筒状ヨークと、前記可動コアと前記円筒状ヨークとの間に設けられるとともに前記可動コアを摺動可能に支持する円筒状の軸受部材と、を有するリニアソレノイド部をハウジング内に備え、
前記固定コアは、前記可動コア側の外周面に第1縮径部が形成され、
前記円筒状ヨークは、前記固定コア側の外周面に第2縮径部が形成され、
前記第1縮径部に一端を嵌合するとともに、前記第2縮径部に他端を嵌合し、前記固定コアと前記円筒状ヨークとを同軸で連結する非磁性のリング部材を備え、
前記第2縮径部と前記軸受部材とが、径方向において重畳していないことを特徴とするリニアソレノイド。
【請求項2】
前記第1縮径部の前記可動コア側の外周面には、前記可動コア側の外径が小さくなるように環状のテーパ部が形成されており、
前記テーパ部の径方向外側に前記第2縮径部の前記固定コア側の端部が位置していることを特徴とする請求項1に記載のリニアソレノイド。
【請求項3】
前記円筒状ヨークは、内周面に前記軸受部材が圧入される軸受圧入部と、前記軸受圧入部の前記固定コア側に形成されるとともに、前記リング部材が圧入される前記第2縮径部が外周面に形成されたリング圧入部と、からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリニアソレノイド。
【請求項4】
圧力流体が流通する複数のポートを有するバルブボデイと、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のリニアソレノイドと、
前記バルブボデイ内に設けられ、前記可動コアの変位によって前記複数のポート間の連通状態と非連通状態とを切り換える弁体を有する弁機構部と、
を備えることを特徴とするバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−216679(P2012−216679A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80837(P2011−80837)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】