説明

リバーシブルシートベルトプリテンショナを制御する方法及び装置

本発明は、車両のリバーシブルベルトプリテンショナ(1)を制御するための方法であって、アクセルペダル(4)及びブレーキ(2)に関する特性変数(K1〜K4)が、アクセルペダル(4)の解放及び引き続くブレーキ(2)の操作の形態で、危機的状況に対する運転者の反応に関して決定及び監視され、危機的状況に対する運転者の反応を特定した際に、プリベルトテンショナ(1)が作動される方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のリバーシブルシートベルトプリテンショナを制御するための方法、特に、危機的状況が特定された場合に、シートベルトプリテンショナを作動させるための方法に関する。さらに、本発明は、本方法を行うための制御ユニットを有するリバーシブルシートベルトプリテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の車両では、車両乗員に関する事故の結果を軽減するために、作動させることができる拘束手段、例えばシートベルトプリテンショナが使用される。シートベルトプリテンショナを制御するための方法が経験的に知られている。
【0003】
特許文献1は、例えば、リバーシブル車両乗員保護システムを作動させることによって車両シートの車両乗員を拘束するための方法を開示している。この場合、運転状態データは、センサシステムを使用して取得される。特定された緊急制動操作によって特徴付けられた危機的な運転状態が検出された場合、車両乗員保護システムは、衝突時の前に起動されて作動位置に配置される。この場合、車両乗員は、リバーシブルシートベルトプリテンショナによって特定の力で車両シートに向かって移動され、拘束力を伴う引き戻し位置で車両シートに保持される。この拘束力は、検出された危機的な運転状態中に持続する。危機的な運転状態は、ハンドル角、車輪速度、ヨーレート及び加速度のような運転状態データを用いて取得される。リバーシブルシートベルトプリテンショナに関する別の起動基準として、例えば、先行車両又は先行物体あるいは停止車両又は静止物体との相対速度、及び先行車両又は先行物体あるいは停止車両又は静止物体までの距離のような運転状態データに加えて、アクセルペダル及び/又はブレーキペダルの操作の評価も行われる。
【0004】
リバーシブルシートベルトプリテンショナの早期作動により、結果的に生じる衝突の激しさが低減されるが、この理由は、車両乗員がシートベルト内で最小の慣性加速度移動距離のみを有し、この結果、減速力が最小になるからである。
【0005】
特許文献2は、「緊急制動」状態が特定された場合、衝突の前にリバーシブル車両乗員保護手段を作動位置に移動させる、リバーシブル車両乗員保護手段を作動させるための別の方法を開示している。この場合、予想できる最も危険な方向が、緊急制動状態とアンダーステアとオーバーステアとを用いた運転状態データから得られ、最も危険な方向に従って、保護効果が得られるように、車両乗員保護システムが作動される。
【0006】
一般に、既知の方法において、例えば、ブレーキペダルの予め規定された変化(略して、BAS(ブレーキアシストシステム)閾値とも呼ばれる)を用いる場合に、緊急制動操作の検出が必要である。この場合、緊急制動操作を検出するために用いられる閾値、例えば、BAS閾値にしばしば達せず、この結果、危機的状況にもかかわらず、リバーシブルシートベルトプリテンショナが作動されず、ブレーキシステムが予め調整されない。相対速度、及び周囲に関するデータ、例えば他の車両までの距離のような運転状態データをさらに取得するには、高価な測定装置が必要となる。このような測定工程は、周囲に関するデータが考慮されることが原因となって比較的時間がかかり、この結果、貴重な反応時間が浪費される。
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第10005010A1号明細書
【特許文献2】独国特許発明第10121386C1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、シートベルトプリテンショナを制御するための改良された方法と、車両乗員に対する衝突の結果を軽減するシートベルトプリテンショナとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有する方法と、請求項15に記載の特徴を有するシートベルトプリテンショナとによって達成される。
【0010】
本発明の有利な発展形態は従属請求項の主題である。本発明は、特に、予防措置としてのシートベルトプリテンショナの作動に関する。
【0011】
本発明により、危機的状況に対する運転者の反応を特定するために用いられるアクセルペダル及びブレーキの特性変数を得て相互作用を監視することが可能になり、危機的状況に対する運転者の反応が生じた場合に、シートベルトプリテンショナが作動される。本発明による方法の利点は、車両に既に存在しているセンサシステムを使用して運転者の反応を分析することによって、また周囲に関するデータを考慮することなく、危機的状況に対する運転者の反応、例えば、緊急制動操作の開始が特に迅速かつ確実に特定されるので、リバーシブルシートベルトプリテンショナが早期に作動されることである。結果として、衝突が発生する前に、シートベルトプリテンショナの予防的作動が保証される。危機的状況におけるシートベルトプリテンショナのこのような予測作動により、結果的に生じる衝突の激しさを低減することが可能になる。本発明による方法により、車両データ又は車両特性変数を用いるだけで、危機的状況を特に迅速にまた低コストで検出することが可能になる。データ量は非常に少なくて済み、前記データを、迅速に測定し、電子バスシステム(CAN)で評価された後に、車両で利用可能にすることができる。
【0012】
本方法の一つの実施形態では、アクセルペダルは、少なくとも1つ以上の関連する特性変数を用いて、その作動及び/又は操作に関して監視される。アクセルペダルの作動及び/又は操作が特定された場合、それぞれの特性変数が、対応するアクセルペダル閾値と比較される。この場合、アクセルペダルの操作は2つの段階で監視される。第1段階において、アクセルペダルの位置が特性変数として監視され、ゼロよりも大きい又は第1の下位アクセルペダル閾値を超えているかどうかを決定する。アクセルペダルに係る値がアクセルペダル閾値よりも小さいか又はペダル値がゼロに等しかった場合、シートベルトプリテンショナは非作動のままである。さもなければ、第2段階において、第2の上位アクセルペダル閾値に達しているか又はそれを超えているかどうかを決定するために、ペダル値が監視される。第1のアクセルペダル閾値を超え、かつ第2のアクセルペダル閾値に達していない場合、シートベルトプリテンショナは非作動のままである。第2のアクセルペダル閾値を超えた場合、運転者がアクセルペダルの反射的な解放操作を行っていると結論され、このようにして、危機的状況にある可能性があることが特定される。言い換えれば、2段階の閾値分析により、アクセルペダルの突然の解放の簡単な、したがって迅速な特定が可能になる。この場合、アクセルペダルの操作の種類が、より詳細に分析される。例えば、アクセルペダルが解放されることによって使用可能な位置に移動される速度が、分析のために用いられる。対応する及び予め規定された閾値に達しているか又はそれを超えているかどうかを決定するために、アクセルペダルの解放によって生じる圧力の変化速度を得て監視することもできる。
【0013】
別形態により、第2のアクセルペダル閾値に達した場合及び/又はそれを超えた場合に、ブレーキペダルの操作の開始までの監視期間を開始することが可能になる。このために、ブレーキの特性変数の1つが、連続的に又は少なくとも監視期間中に、ブレーキの作動又は操作に関して監視される。このようにして、アクセルペダルからブレーキペダルまでのペダルの変更を十分に正確に、特に、簡単にまた非常に迅速に取得することができる。
【0014】
起こり得る危機的状況を特定するために、ブレーキの操作が特定された後、対応するブレーキペダル閾値に達しているか又はそれを超えているかどうかを決定すべく、ブレーキのそれぞれの特性変数が監視される。その代わりに又はそれに加えて、特性変数の1つ、例えばブレーキランプを作動に関して監視してもよい。ブレーキが作動されているかどうか、及び/又は閾値を超えているか及び/又はそれよりも小さいかどうかを決定するために、ブレーキの複数の特性変数を同時に監視することもできる。ブレーキの動作のこのような監視及び分析により、例えば緊急制動操作が必要となる起こり得る危険な状況又は緊急事態の迅速かつ簡単な特定が可能になる。この場合、運転者によるブレーキの動作及びブレーキの操作の種類がより詳細に分析される。例えば、ブレーキペダルが作動される速度が、分析のために用いられる。対応する及び予め規定された閾値に達しているか又はそれを超えているかどうかを決定するために、ブレーキペダルの操作によって生じる圧力の変化速度を得て監視することもできる。
【0015】
他の実施形態では、ブレーキペダル閾値に達した場合及び/又はそれを超えた場合に、及び/又はブレーキの特性変数の1つがアクティブ化された場合に、監視期間が終了される。さらに、時間値が、予め規定された時間閾値よりも小さいかどうかを決定するために、終了された監視期間がチェックされ、ここで、アクセルペダルからブレーキペダルへの変更に関する、したがって、ブレーキペダルの操作に関する監視期間が閾値に達しない場合、危機的状況、例えば事故状況又は危険な状況に対する運転者の反応が特定される。危険な状況又は緊急事態が生じているときのアクセルペダルとブレーキペダルとの相互作用は、監視期間の分析を用いて簡単に監視される。特に、アクセルペダルの及び/又はブレーキペダルの操作の急で反射的な変化を迅速かつ確実に特定できる。危険な状況又は緊急事態の存在及び種類を正確に決定するために、ブレーキペダルを一時的に踏むことと、ブレーキペダルを強くかつ継続的に操作することとの間において、又はアクセルペダルを一時的に解放することと、アクセルペダルを急にまた継続的に解放することとの間において、ペダルの間の変更の正確な時間分析及び特性変数に関連する分析を行うことによって、区別が行われる。
【0016】
危機的状況に対する反応が特定された場合、シートベルトプリテンショナは自動的に作動される。操作の種類と操作手段の実施形態とに応じて、シートベルトプリテンショナを一時的に又は長時間にわたって作動させることができる。シートベルトプリテンショナの作動の種類は、この場合、特定された危機的状況の種類によって決定される。例えば、一時的な危機的状況、例えばパニック反応が特定されまた存在している場合、シートベルトプリテンショナの一時的な作動のみで済ませることが可能である。シートベルトプリテンショナをある間隔で作動させることもでき、この結果、運転者は、起こり得る危機的状況を認識することになる。
【0017】
アクセルペダルの位置及び/又は解放速度及び/又は解放加速度は、アクセルペダルの特性変数(アクセルペダル値とも呼ばれる)として取得されることが有利である。これらの特性変数は、特に、従来のセンサシステムを有する車両において、容易かつ迅速に測定することができ、さらに、CANバスが備えられる車両において、前記特性変数は、シートベルトプリテンショナを作動させるための制御ユニットに容易かつ迅速に伝送される。
【0018】
ブレーキペダルの位置及び/又は操作速度、及び/又はブレーキランプの切換状態、及び/又はブレーキ圧力は、ブレーキの特性変数(ブレーキペダル値とも呼ばれる)として取得されることが好ましい。これらの特性変数は、従来のセンサシステムによって車両で測定することもでき、CANバスを介してシートベルトプリテンショナ用の制御ユニットに容易かつ迅速に伝送される。
【0019】
本発明の他の実施形態では、車両自体の速度が速度閾値未満である限り、シートベルトプリテンショナを非作動のままとする。結果として、シートベルトプリテンショナは、危険が生じる可能性が高まった状況においてのみ作動される。
【0020】
危機的な状況が特定された場合のシートベルトプリテンショナの作動に加えて、制動補助動作が、シートベルトプリテンショナの作動時に行われる。このようにして、起こり得る事故の激しさ、特に、結果的に生じる衝突の激しさを低減するために、増強された制動効果が、最適な制動距離とシートベルトプリテンショナの早期作動とに組み合わせられる。
【0021】
さらに、例えば、危機的状況の存在を特定する妥当性チェックのために、周囲センサシステムからのデータを考慮できる。例えば、閾値の少なくとも1つは、周囲センサシステムからのデータを用いて動的に設定される。結果として、危機的状況を特定する信頼性が向上する。
【0022】
特定の一実施形態において、先行車両又は後続車両との相対速度、及び/又は先行車両又は後続車両までの距離が、周囲センサシステムのデータとして取得される。結果として、特に、現在予想されている制動距離と当該車両の運転者の反応時間とに関して、ブレーキペダル閾値及びアクセルペダル閾値の両方を、運転している車両と先行車両との間の時間間隔及び空間距離に適合させることができる。
【0023】
本発明は、制御ユニットを有するリバーシブルシートベルトプリテンショナも提供し、この場合、前記制御ユニットは、アクセルペダルの解放及び引き続くブレーキの操作に関してアクセルペダル及びブレーキの特性変数を監視し、危機的状況に対する運転者の反応を特定できた場合、前記制御ユニットによって、シートベルトプリテンショナが自動的に作動される。
【0024】
図面を参照して、本発明の典型的な実施形態についてより詳細に説明する。
【0025】
互いに対応する部分には、すべての図面において同一の参照符号が付せられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、ブレーキ2を有する車両(より詳細には図示せず)のリバーシブルシートベルトプリテンショナ1のブロック図である。シートベルトプリテンショナ1及びブレーキ2は、制御ユニット3によって制御される。種類及び構造に応じて、ブレーキ2及びシートベルトプリテンショナ1の各々は、関連する制御ユニット3を有することができる。
【0027】
危機的状況、例えば、起こり得る事故状況又は危険な状況の場合に、シートベルトプリテンショナ1を迅速かつ早期に、特に予測的に作動させるために、制御ユニット3は、車両のアクセルペダル4の及びブレーキ2の特性変数K1〜Knを取得する複数のセンサS1〜Snに接続される。
【0028】
例えば、アクセルペダルの位置W、アクセルペダル4の解放速度v及び/又は解放加速度aが、アクセルペダル4の特性変数K1(アクセルペダル値とも呼ばれる)として取得される。この場合、アクセルペダルの位置Wは、例えば、アイドリングからフルスロットルまでの範囲で取得される。アクセルペダルの位置W、解放速度v及び/又は解放加速度aを取得するために、センサS1は、例えば、ポテンショメータとして又は圧力センサとして具体化される。アクセルペダル4が操作されたときの圧力の変化速度は、圧力センサによって決定される。端部位置の一方、すなわち、フルスロットル位置又はアクセルペダル解放端部位置におけるアクセルペダル4の位置を取得するための、あるいはアクセルペダル4の角度位置を取得するための位置センサの形態の別のセンサを設けることもできる。
【0029】
ブレーキ2の構成要素の種々の測定変数はブレーキ2の特性変数K2〜K4として取得される。例えば、ブレーキペダル5のブレーキペダル位置W及び/又は操作速度v(ブレーキペダル値とも呼ばれる)は、例えば、ブレーキペダル5用のブレーキ2の特性変数K2として取得される。
【0030】
車両の運転中に、アクセルペダル4とブレーキペダル5との間の相互作用が、アクセルペダル4又はブレーキペダル5に関する取得された特性変数K1とK2を用いて制御ユニット3によって決定され、危機的状況に対する運転者の反応に関する分析及び監視が行われる。危機的状況にあることを示している運転者の反応が特定された場合、シートベルトプリテンショナ1は自動的に作動される。
【0031】
言い換えれば、制御ユニット3は、アクセルペダル4の位置Wとブレーキペダル5の位置Wとを用いて、又はペダルの操作速度を用いて、アクセルペダル4とブレーキペダル5との間のペダルの変更速度を監視する。ペダルの変更が高速になった場合、危機的状況に対する運転者の反応が特定され、リバーシブルシートベルトプリテンショナ1が作動される。必要に応じて、制動補助動作をとることも可能であり、この結果、ブレーキ2に対するブレーキ圧力pは、車両のアンチロックブレーキシステムの制御範囲にあり、結果として、最適な制動距離が実現される。両方の作動工程、すなわち、シートベルトプリテンショナ1の作動及びブレーキ2の調整は、危機的状況の迅速かつ予測的な特定によって、予防的な車両乗員保護を行うように機能し、前記シートベルトプリテンショナ及び前記ブレーキは、予防安全システム(プリセーフシステム)と呼ばれるものの一体構成要素であり得る。
【0032】
その代わりに又はそれに加えて、延長形態において、ブレーキランプの切換状態L、及び/又はブレーキ圧力pを、ペダルの急激な変更に関する監視のための特性変数K3とK4として用いてもよい。ブレーキ2のそれぞれのセンサS2〜S4は、制動トルク、制動力、又は目標値減速度を測定するための従来のセンサ、例えば、ブレーキセンサ、ポテンショメータ又は位置センサである。
【0033】
別の実施形態により、車両自体が低速vで、例えば10km/hよりも低速で移動している場合に、シートベルトプリテンショナ1が非作動のままにすることが可能になる。このようにして、シートベルトプリテンショナ1の不要な作動が回避される。このために、車両自体の速度vは、適切なセンサS5によって取得され、制御ユニット3に供給される。
【0034】
さらに、監視のために、運転者自身の車両と周囲車両又は周囲物体との間の時間距離及び空間距離のような周囲条件にシートベルトプリテンショナ1の制御動作を適合させるように、周囲センサシステムS6及び/又は関連する警告音の切換状態によって取得される車両の相対速度vrelを用いることが可能である。
【0035】
例えば、ガソリンエンジンの場合のスロットルバルブ、又はディーゼルエンジンの場合の噴射システムが、アクセルペダル4によって、もはや機械的に操作されず、電気的に操作されるEガス制御システムと呼ばれるもので具体化される車両において、ペダル値と呼ばれる特性変数K1〜K4はCANバスを介して伝送される。この場合、制御ユニット3により、必要なデータが取得される。
【0036】
シートベルトプリテンショナ1を作動させるための方法のフローチャートの一つの典型的な実施形態は、アクセルペダル4とブレーキペダル5との間におけるペダルの変更に基づいて図2a、図2bに示されている。
【0037】
ステップS1では、アクセルペダル4の位置Wが、例えば、特性変数K1として取得される。ステップS2では、位置Wを用いて、アクセルペダル4が操作されているかどうかがチェックされる。操作されていない場合、本方法はステップS1から再び開始される。
【0038】
ステップS3では、アクセルペダル4の解放速度vがさらに取得される。ステップS4では、ペダル値として取得される解放速度vが、ゼロよりも大きい値又は第1の下位アクセルペダル閾値QG1を超えているかどうかがチェックされる。ペダル値がアクセルペダル閾値QG1よりも小さく、ペダル値がゼロ以上であった場合、本方法はステップS1から再び開始するように行われる。シートベルトプリテンショナ1は作動されない。
【0039】
さもなければ、ステップS5では、第2段階において、第2の上位アクセルペダル閾値QG2に達しているか又はそれを超えているかどうかを決定するために、解放速度vの特性変数がチェックされる。第2の上位アクセルペダル閾値QG2は、この実施例において、第1のアクセルペダル閾値QG1よりも大きい。
【0040】
上位アクセルペダル閾値QG2に達していないか又はそれを超えていない場合、本方法はステップS3又はステップS1から再び開始するように行われる。より詳細に記載されていない方法において、時間的アボート状態を提供することも可能であり、この結果、ステップS3〜S5の予め規定可能な繰り返し周期の後に、プログラムフローが中断され、本方法がステップS1から再び開始されるが、この理由は、例えば、アクセルペダル4が素速く解放されなかったからである。このことは、例えば、並列監視工程によって行うことが可能である。
【0041】
種々の方法に応じて、複数の段階で、ペダル値に関する閾値分析を行うことができる。実施例では、2段階の閾値分析について説明する。
【0042】
ここで、上位アクセルペダル閾値QG2を超えた場合、アクセルペダル4の反射的な解放がステップS6で特定され、この結果、危機的状況にある可能性があることが特定され、アクセルペダル4とブレーキペダル5との間におけるペダルの変更の時間を測定するための監視期間Tが開始される。
【0043】
ステップS7aとS7bでは、ブレーキペダル5の位置Wが特性変数K2として取得され、この特性変数がブレーキペダル閾値Qを超えているかどうかがチェックされる。このことが当てはまらなかった場合、ブレーキペダル5は操作されていないか又は未だ操作されていないので、条件が満たされるまで、ステップS7aとS7bが、図示されている実施形態で繰り返され、条件が満たされれば、本方法はステップS8に続く。
【0044】
この場合も、時間的アボート状態が、より詳細に記載されていない方法で実現され、この結果、ステップS7aとS7bの予め規定可能な繰り返し周期の後に、プログラムフローが中断され、本方法がステップS1から再び開始されるが、この理由は、ブレーキが操作されなかったからである。
【0045】
ここで、ブレーキペダル閾値Qに達しているか又はそれを超えた場合、及び/又はブレーキランプLが作動された場合、及び/又は予め規定されたブレーキ圧力閾値QpBに達しているか又はそれを超えた場合、監視期間TがステップS8で終了される。監視期間Tは、ペダルの変更中に経過した時間を示している。
【0046】
ステップS9では、監視期間Tが、例えば100msである予め規定された時間閾値Q未満かどうかがチェックされる。このことが当てはまらなかった場合、例えば、ペダルはゆっくりと移行しているので、危機的状況にはない。次に、本方法がステップS1から再び開始される。
【0047】
危機的状況に対する運転者の反応が特定されたことにより、ステップS11でリバーシブルシートベルトプリテンショナ1が自動的に作動する前に、先行するステップS10において、車両自体の速度vが、予め規定された速度閾値Q、例えば10km/hを超えているかどうかを選択的にチェックすることが可能である。10km/hを超えない場合、本方法はステップS1から再び始まるように開始され、シートベルトプリテンショナ1は作動されず、すなわち、速度閾値Qよりも小さいときは、本方法は、この実施例において、シートベルトプリテンショナ1の制御に介入しない。
【0048】
アクセルペダル4とブレーキペダル5との間の相互作用に基づいてシートベルトプリテンショナ1を自動的に作動させるための方法の複数の典型的な代替実施形態について以下に説明する。
【0049】
例えば、ステップS3とS4において、解放速度vの代わりに、又はさらに、アクセルペダル4の特性変数K1として、解放加速度aと第1のアクセルペダル閾値QG1とを比較することが可能である。第1のアクセルペダル閾値QG1は、このような場合、加速度値である。
【0050】
ステップS5では、前記アクセルペダル4が依然として操作されているかどうかを決定するために、解放速度vの代わりに、又はさらに、アクセルペダル4の特性変数K1として、アクセルペダル4の位置Wをチェックできる。
【0051】
ステップS7aとS7bでは、ブレーキペダル5の操作を検出するために、ブレーキペダル5の位置Wの代わりに、又はさらに、ブレーキペダル5の特性変数K3として、ブレーキランプLの切換状態、制動力、制動トルク、目標値減速度又はブレーキ圧力pをチェックすることが可能である。ブレーキ圧力pの場合、閾値として圧力値が予め規定されている。
【0052】
好ましい一実施形態では、例えば、後続車両又は先行車両との相対速度vrel、及び/又は後続車両又は先行車両までの距離を取得して出力する周囲センサシステムS5からのデータを用いて、1つ以上の閾値を動的に変化させることができる。
【0053】
それに対応して、シートベルトプリテンショナ1の自動作動に加えて、ブレーキシステムを予め調整できる。
【0054】
本発明による方法では、ペダルの変更速度、ブレーキペダル5の予め規定可能な移動距離に至るまでの又は予め規定可能なブレーキ圧力pに達するまでの、アクセルペダル4の解放からの時間又は予め規定可能な解放速度vの超過、ブレーキペダル5の操作速度、及び/又は危機的状況を特定するための及びシートベルトプリテンショナ1が作動される場合の増大されたブレーキ圧力を考慮することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】制御ユニットを有するシートベルトプリテンショナのブロック回路図である。
【図2a】シートベルトプリテンショナを制御するための方法のフローチャートである。
【図2b】シートベルトプリテンショナを制御するための方法のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のリバーシブルシートベルトプリテンショナ(1)を制御する方法において、
アクセルペダル(4)及びブレーキ(2)の特性変数(K1〜Kn)が取得され、前記特性変数(K1〜Kn)は、前記アクセルペダル(4)とブレーキペダル(5)との間の相互作用を決定するために用いられ、危機的状況に対する運転者の反応に関して分析及び監視され、危機的状況にあることを示す運転者の反応が特定された場合に、前記シートベルトプリテンショナ(1)が作動されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記特性変数(K1)の少なくとも1つが、前記アクセルペダル(4)の作動及び/又は操作を監視するために用いられ、前記特性変数(K1)の1つが作動又は操作された場合に、該特性変数(K1)の1つが、対応するアクセルペダル閾値(QG1、QG2)と比較されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アクセルペダル閾値(QG1、QG2)に達した場合及び/又は前記アクセルペダル閾値を超えた場合、前記取得された特性変数(K1)の1つ以上が、危機的状況にある可能性があることを特定するために用いられ、前記ブレーキペダルの操作を監視する監視期間(T)が開始されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記監視期間(T)中に又は継続的に、前記ブレーキ(2)の特性変数(K2〜K4)の少なくとも1つが、その作動及び/又は操作に関して監視されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ブレーキ(2)が作動及び/又は操作された場合に、前記ブレーキ(2)の特性変数(K1〜K4)の1つ以上が、対応するブレーキペダル閾値(Q)に関して又は作動に関して監視されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ブレーキペダル閾値(Q)に達した場合及び/又は前記ブレーキペダル閾値を超えた場合に、又は前記ブレーキ(2)の前記特性変数(K2〜K4)の1つがアクティブ化された場合に、起こり得る危機的状況が、前記特性変数(K1〜K4)を用いて特定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ブレーキペダル閾値(Q)に達した場合及び/又は前記ブレーキペダル閾値を超えた場合に、あるいは前記ブレーキ(2)の前記特性変数(K2〜K4)の1つがアクティブ化された場合に、前記監視期間(T)が終了されることを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記監視期間(T)が、予め規定された時間閾値(Q)に達したかどうかに関してチェックされ、ブレーキペダルを操作するための前記監視期間(T)が該時間閾値に達していない場合、危機的状況に対する反応が特定されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アクセルペダル(4)の位置(W)及び/又は解放速度(V)及び/又は解放加速度(a)が、前記アクセルペダル(4)の特性変数(K1)として取得されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ブレーキペダル(5)の位置(W)及び/又は操作速度(V)、及び/又はブレーキランプ(L)の切換状態、及び/又はブレーキ圧力(p)、及び/又はブレーキ圧力の変化、及び/又は制動力、及び/又は制動トルクが、前記ブレーキ(2)の特性変数(K2〜K4)として取得されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
車両自体の速度(V)が、予め規定可能な速度閾値(Q)未満である限り、前記シートベルトプリテンショナ(1)が非作動とされることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記シートベルトプリテンショナ(1)が作動された場合、制動補助動作が行われることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記閾値(QG1、QG2、Q、Q、Q)の少なくとも1つが、周囲センサシステム(S6)によって取得される周囲に関するデータを用いて動的に設定されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
先行車両又は後続車両との相対速度(Vrel)、及び/又は先行車両又は後続車両までの距離が周囲データとして取得されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法を実行するための制御ユニット(3)を有するリバーシブルシートベルトプリテンショナ(1)であって、前記制御ユニット(3)が、アクセルペダル(4)の解放及び引き続くブレーキ(2)の操作に関して、前記アクセルペダル(4)及び前記ブレーキ(2)の特性変数(K1〜Kn)を監視し、危機的状況に対する運転者の反応を特定した場合、前記制御ユニットによって、前記シートベルトプリテンショナ(1)が自動的に作動される、リバーシブルシートベルトプリテンショナ(1)。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2009−527394(P2009−527394A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500078(P2008−500078)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001731
【国際公開番号】WO2006/094659
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】