説明

リピータ機能を有する携帯電話

【課題】一般ユーザが使用する携帯電話において、他の携帯電話と基地局との間の通信を中継するリピータ機能を付加した携帯電話を提供する。
【解決手段】携帯電話10は、少なくとも第1の通信回路141と第2通信回路142と、通信可能な範囲内に位置する他の携帯電話の位置登録情報を受信してビジターリスト記憶部27に登録するビジターリスト登録処理部26と、切り換え制御部25とを備える。位置登録処理部28は基地局にして自携帯電話の位置登録を行う。この際、ビジターリスト記憶部27に登録した他の携帯電話の位置登録も行う。切り換え制御部25は、自携帯電話の通信信号を第1の通信回路141または第2の通信回路142の何れかにより処理し、ビジターリスト記憶部27に登録した他の携帯電話の1つとの間の通信信号を第1の通信回路141または第2の通信回路142により中継処理するように切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話システム、パーソナル・ハンディフォン・システム(以下、PHSと略す)、あるいは携帯データ通信システム等の、いわゆる移動体通信用の中継技術に関するものであり、特に、一般ユーザが使用する携帯電話に、当該携帯電話が通信可能なエリアに位置する他の携帯電話の位置登録情報をビジターリストとして登録し、自身の位置登録情報とともにビジターリストの位置登録情報を基地局に送信し、当該ビジターリストに登録した他の携帯電話の通信を中継可能としたリピータ機能を有する携帯電話に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のデジタル通信技術の発展により、携帯電話、PHS、携帯情報端末の利用が飛躍的に増大してきている。一般に移動体通信は、移動体通信用の基地局と移動体通信端末との間で電波を利用した無線通信を行っている。
【0003】
例えば、PHSは、図5に示すように、通話サービスエリアを多数のマイクロセル4に区分けし、各マイクロセル4にPHS端末3との間で電波を送受信する基地局1が設置されており、基地局1、PHS用接続装置5、交換機6、7等は専用線あるいは公衆線網など適宜の回線網によって接続されている。
【0004】
ここで、基地局1とPHS端末3との間の無線通信は、(財)電波システム開発センターによって制定されたRCR STD−28によって行われている。PHSでは、広範囲の通話サービスエリアを確保するために、半径100〜300mの小さなマイクロセルをカバーする基地局を多数設置していた。PHSでは、基地局の電波が携帯電話に比べて小さいので、各基地局のカバーする範囲が狭くなっている。したがって、PHS端末の送信電力も携帯電話に比べて10mWと低く設定されており、PHS端末の小型化、電池の長寿命化を図ることができた。
【0005】
このような通信システムの構成は携帯電話システムにおいても同様な構成であり、通信事業者によって基地局の設置密度や出力、使用周波数が異なり、個々の通信エリアの範囲が定まる。何れの通信システムであっても携帯電話が通信を行うためには、基地局との通信が可能なエリア内に位置していることが条件となる。
【0006】
従って、基地局の設置密度が低い山間部などで携帯電話を使用する場合には基地局の通信エリア内にない、いわゆる通信圏外である場合には通信できないことになる。これは着信の場合も同様であって、通信の相手方の携帯電話が基地局の通信圏外にある時には呼(回線)の接続ができず通信できないことになる。
【0007】
また、PHSや携帯電話システムにおいて、電波は障害物を通過しにくいため、従来は、利用者が電波の到達しにくい環境にいる場合には通信圏外にいるのと同じであり、使用できないことが多かった。例えば、携帯電話の場合には、利用者がビルの内部にいる場合には、電波がコンクリート壁などに阻まれるため通話できない状態になる。従って、利用者が電波の到達しにくい環境や、電波の弱くなる距離にいる場合には、利用者が自分の位置を変えて、電波が十分に届く場所に移動して回線を確保する必要があった。
【0008】
このようにPHSや携帯電話システムでは、電波の到達範囲が限られるために、移動体通信端末の使用可能な場所が制限され、任意の場所で移動体通信を使用できない場合があり、このことは利用者にとって非常に不便なことであった。
【0009】
この不便さを解消するために、例えば、PHSにおいては、下記の特許文献1(特開2002−271256号公報)に開示されるように、エリア内にリピータと称する中継装置を設置する技術が知られている。特許文献1に開示された中継装置は、図6に示すように、移動通信局(移動体通信端末)と基地局との間を中継接続するものである。
【0010】
図6に示すようにこの中継装置は、周辺の複数の基地局が放送する制御チャネル信号をサーチするサーチユニット107aを備え、各基地局の放送する制御チャネル信号をそれぞれ受信して、この制御チャネル信号に含まれる基地局の識別情報(ID)、受信レベル、および空きチャネル情報を取得する情報取得ユニット107bと、前記各基地局の識別情報、前記受信レベル、および前記空きチャネル情報(空きの通話スロット数)を基地局ごとに格納するメモリ105と、前記受信レベルおよび前記空きチャネル情報に基づいて、接続対象の基地局を選択する選択ユニット107cと、この選択ユニット107cにより選択された基地局と前記移動体端末との間を接続する接続ユニット107dとから構成されるものである。
【0011】
この中継装置においては、移動体通信端末が放送している信号が、アンテナ101bに受信されて、無線ユニット102bに入力される。この信号によって、中継装置は、移動体通信端末と基地局とをリンクするためのリンクチャネル確立要求を受ける。そして中継装置は基地局の空きチャネル情報から通話可能(中継可能)な空きチャネルを有する基地局を選択してリンクチャネル確立要求を送出することによって中継すべき基地局の決定を短時間で行うようにしたものである。
【0012】
また、下記の特許文献2(特開平9−261144号公報)にはPHS用中継システムが開示されている。PHSは都心部では主に昼間使用され、住宅地区では主に夜間使用されている。このため上記特許文献2に開示されたPHS用中継システムにおいては、基地局が都心部に設置され、都心部内のPHS端末の電波を加入者線に中継し、一方、住宅地区にはリピータが設置されており、リピータは都心部の基地局から送信された電波を受信して、住宅地区内のPHS端末に再送信し、また、リピータは住宅地区内のPHS端末から送信された電波を受信して、都心部の基地局へ再送信するように構成されている。これにより住宅地区内のPHS端末は、リピータ及び都心部の基地局を介して加入者線に接続される。
【0013】
更に、下記の特許文献3(特開平8−97762号公報)には、移動体通信用中継装置が開示されている。このシステムにおいては、基地局の電波を中継する装置(リピータ1)
と、移動体端末の電波を中継する装置(リピータ2)から構成され、リピータ1は、移動体通信に用いられる第1周波数の電波を送受信する回路と、該第1周波数とは異なる第2周波数の電波を送受信する回路と、該第1周波数を該第2周波数とを相互に変換する周波数変換回路とを合わせ持ち、リピータ2は、該第2周波数の電波を送受信する回路と、該第1周波数を該第2周波数に相互に変換する周波数変換回路とを合わせ持つように構成されたものである。
【特許文献1】特開2002−271256号公報(図2、図7)
【特許文献2】特開平9−261144号公報(図1)
【特許文献3】特開平8−97762号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、上記特許文献1ないし特許文献3に開示されるような中継装置は、各通信事業者がインフラの一環として適宜設置し、あるいは特定の通信事業者のサービスに加入している移動体通信端末の所有者が、通信事業者あるいはその販売代理店を介して購入し、自身の利用のために家屋内あるいはビル内等に設置するものであって、設置もしくは購入の際、中継装置には該当通信事業者の識別符号(通信事業者コード)が不揮発性メモリに書き込まれ、当該通信事業者コードに合致する信号のみを中継するように構成されている。これは各通信事業者のサービスに加入する加入者が通信事業者等から購入する移動体通信端末と同様である。
【0015】
日本国内においては、同一の地域内に複数の通信事業者がそれぞれのインフラを設置し、あるいは他の通信事業者が設置した既存のインフラを借り受けてサービスしており、中継装置も同一の地域内に、それぞれの通信事業者の加入者間における通信を中継するために設置されることになる。このため、上記のように中継装置や移動体通信端末には該当する通信事業者の事業者コードが書き込まれるのである。従って、上記特許文献1に開示された中継装置においても、該中継装置は特定通信事業者の基地局の配下で中継動作を行うものであって、サーチする周辺の基地局の制御チャネル信号も、中継装置に設定された通信事業者コードに基づいて受信信号を選別するものである。
【0016】
そして上記特許文献1ないし特許文献3に開示されたリピータ装置は、何れも携帯電話間の通信を中継する専用の中継装置であり、通信エリアの補完のために適宜設置されるものである。従って、携帯電話が基地局、リピータ装置の何れかの通信エリア内に位置していない場合に通信ができないという基本的な問題点は、依然として未解決のまま残ってしまう。
【0017】
本願の発明者は上記の問題点を解消すべく種々検討を重ねた結果、一般ユーザが使用する携帯電話に、当該携帯電話が通信可能なエリアに位置する他の携帯電話の位置登録情報をビジターリストとして登録し、携帯電話の位置登録情報とともにビジターリストの位置登録情報を基地局に送信するように構成すれば、基地局と自携帯電話との通信、基地局と他の携帯電話との中継通信行えることに想到し、本発明を完成するに至ったものである。
【0018】
すなわち、本発明は、一般ユーザが使用する携帯電話において、他の携帯電話と基地局との間の通信を中継するリピータ機能を付加した携帯電話を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、基地局に対して自携帯電話の位置登録処理を行う位置登録処理部を備えた携帯電話において、前記携帯電話は、少なくとも第1の通信回路と第2通信回路と、自携帯電話が通信可能な範囲内に位置する他の携帯電話が送信する位置登録情報を受信してビジターリスト記憶部に登録するビジターリスト登録処理部と、切り換え制御部と、を備え、前記位置登録処理部は基地局に対する自携帯電話の位置登録処理に際して、自携帯電話の位置登録情報と前記ビジターリスト記憶部に登録した他の携帯電話の位置登録情報を基地局に送信し、前記切り換え制御部は、自携帯電話の通信信号を前記第1の通信回路または第2の通信回路の何れかにより処理し、前記ビジターリスト記憶部に登録した他の携帯電話の1つとの間の通信信号を前記第1の通信回路または第2の通信回路により中継処理するように前記第1の通信回路と第2の通信回路を切り換えるように構成したことを特徴とする。
【0020】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる携帯電話において、前記リピータ機能を有する携帯電話は、前記第1の通信回路と第2の通信回路の他に更に通信回路を備え、前記ビジターリスト記憶部に登録した他の携帯電話の1つ以上との間の通信信号を前記通信回路の複数を用いて中継処理するように構成したことを特徴とする。
【0021】
また、本願の請求項3にかかる発明は、請求項1または請求項2にかかる携帯電話において、前記ビジターリスト記憶部に登録する他の携帯電話は、自携帯電話と同一の通信事業者に加入した携帯電話であることを特徴とする。
【0022】
また、本願の請求項4にかかる発明は、請求項1または請求項2にかかる携帯電話において、前記ビジターリスト記憶部に登録する他の携帯電話は、自携帯電話と同一の通信事業者に加入した携帯電話および他の通信事業者に加入した携帯電話を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1にかかる発明においては、携帯電話は、少なくとも第1の通信回路と第2通信回路と、自携帯電話が通信可能な範囲内に位置する他の携帯電話が送信する位置登録情報を受信してビジターリスト記憶部に登録するビジターリスト登録処理部と、切り換え制御部と、を備え、位置登録処理部は基地局に対する自携帯電話の位置登録処理に際して、自携帯電話の位置登録情報と前記ビジターリスト記憶部に登録した他の携帯電話の位置登録情報を基地局に送信し、切り換え制御部は、自携帯電話の通信信号を前記第1の通信回路または第2の通信回路の何れかにより処理し、前記ビジターリスト記憶部に登録した他の携帯電話の1つとの間の通信信号を前記第1の通信回路または第2の通信回路により中継処理するように前記第1の通信回路と第2の通信回路を切り換える。
【0024】
このような構成により、携帯電話は自携帯電話の通信エリア内の他の携帯電話の位置登録情報をビジターリストとして登録して基地局に位置登録処理し、自携帯電話の通信の他に、ビジターリストに登録した他の携帯電話の1つとの間の中継を行うリピータ装置として機能することができるようになる。従って、通信事業者は基地局の増加を抑制しながら、通信エリアを拡張することができるようになる。
【0025】
また、請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかる携帯電話において、前記携帯電話は、前記第1の通信回路と第2の通信回路の他に更に通信回路を備え、前記ビジターリスト記憶部に登録した他の携帯電話の1つ以上との間の通信信号を前記通信回路の複数を用いて中継処理する。このように構成すれば、携帯電話はビジターリスト記憶部に登録した他の携帯電話の複数との間の中継処理を行うことができるようになる。従って、通信事業者は基地局の増加を抑制しながら、通信エリアを拡張することができるようになる。
【0026】
また、請求項3にかかる発明においては、請求項1または請求項2にかかる携帯電話において、ビジターリスト記憶部に登録する他の携帯電話は、自携帯電話と同一の通信事業者に加入した携帯電話である。これにより、通信事業者は基地局の増加を抑制しながら、通信エリアを拡張することができるようになる。また、携帯電話の利用者はリピータ機能を有する本発明にかかる携帯電話を利用することによって、料金面での優遇を受けることが期待できる。
【0027】
また、請求項4にかかる発明においては、請求項1または請求項2にかかる携帯電話において、ビジターリスト記憶部に登録する他の携帯電話は、自携帯電話と同一の通信事業者に加入した携帯電話および他の通信事業者に加入した携帯電話を含む。これにより、通信事業者は基地局の増加を抑制しながら、通信エリアを拡張することができるようになる。また、携帯電話の利用者はリピータ機能を有する本発明にかかる携帯電話を利用することによって、料金面での優遇を受けることが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための携帯電話システムを例示するものであって、本発明をこの携帯電話システムに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるPHSシステムなどその他の実施形態の移動体通信システムにも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0029】
図1は本発明の実施例にかかる携帯電話システムの概念を示すシステム構成図である。図1において、基地局X、Yは、それぞれ通信エリアA1、通信エリアA2の範囲内に位置する携帯電話から位置登録情報を受信して記憶し、通信エリア圏内に位置登録されている携帯電話から発信があった場合は当該携帯電話からの発信信号を受信し、相手方の電話との回線を接続し、通話信号を回線に送出する。また、通信エリア圏内に位置登録されている携帯電話に対する着信があった場合は当該携帯電話に着信信号、呼出し信号を送信し、発信元電話と接続された回線からの通話信号を着信電話に送出する。なお、各携帯電話の位置登録情報は、各基地局を統合する通信事業者の管理サーバ(図示せず)に集約され、各呼の回線接続は管理サーバによって制御される。
【0030】
図1において、携帯電話Aは基地局Xの通信エリアA1の通信圏内に位置し、基地局Xに位置登録情報を送信している。携帯電話Bは何れの基地局の通信エリアA1、A2の通信圏内にも位置しておらず、いわゆる、通信圏外にある。いま、携帯電話Aから携帯電話Bに発信した場合、携帯電話Bは通信圏外にあるので従来の携帯電話システムにおいては通信することはできない。
【0031】
しかしながら、本実施例において各携帯電話には後述するリピータ装置(中継装置)の機能が搭載されており、例えば、基地局Yの通信エリアA2の通信圏内に位置している携帯電話Zがあり、かつ、携帯電話Bが携帯電話Zの通信可能なエリアZ(以下、中継エリアZということとする)の範囲内にある場合、携帯電話Zが携帯電話Aと携帯電話Bとの間の通信を中継することができる。この場合の通信経路は、携帯電話A〜基地局X〜基地局Y〜携帯電話Z〜携帯電話Bとなる。
【0032】
各携帯電話の中継機能は、携帯電話の制御を司るオペレーティングシステム上でバックグラウンド動作するものであり、上記の例で携帯電話Zが携帯電話Aと携帯電話Bとの間の通信を中継する場合、携帯電話Zのユーザが携帯電話Zを操作する必要はない。また、中継機能が動作中に携帯電話Zのユーザが携帯電話Zを使用するため何らかの操作を行った場合、基地局Yは携帯電話Zと同様の条件化下にある更に他の携帯電話の回線を代替回線として接続し、通信経路を切り換える制御を行う。
【0033】
図2は本発明の実施例にかかる中継機能を有する携帯電話10の構成を示す概略ブロック図である。携帯電話10は、通話部11と操作制御部21から構成されている。操作制御部21は、主制御部22、表示部23、操作部24、切り換え制御部25、リスト登録処理部26、ビジターリスト記憶部27、位置登録処理部28などを備えて構成されている。
【0034】
主制御部22は、マイクロコンピュータ、RAM、ROM等からなりコンピュータ装置として機能し、無線部14および操作制御部21の上記各部を制御する。また、表示部23、操作部24は、携帯電話10における通話のための表示および操作の他に、インターネット網を介したデータ通信のための操作および表示にも使用される。操作部24は、通話時に電話番号入力をするため、また、電子メールをはじめとするインターネット網を介した各種のデータ通信サービスを利用するために所望の文字列を入力するために使用される。
【0035】
図3は携帯電話10の外観を示す図である。携帯電話10は図3に示すように液晶表示ユニットなどで構成された表示部23とを備えており、操作部24には、通話キー241、機能選択キー243、テンキー245が設けられ、通話時にはテンキー245を操作して電話番号を入力し、通話キー241を操作すると発信できる。また、テンキー245には英文字、カタカナ、ひらがなの文字が割り当てられ、図示していない英数カナ変換制御部により文字コード変換が行われる。
【0036】
文字コード変換は、入力モードが英数カナあるいはかな漢字変換モードであるかによりそれぞれ操作されたキーに応じた入力文字コードに変換される。機能選択キー243は携帯電話10の種々の機能が割り当てられ、この機能選択キーを操作することにより所望の機能を選択することができる。また、表示部23に表示されたメニューや機能項目を選択するためのカーソルキーなども備えられている。
【0037】
位置登録処理部28は携帯電話10から基地局に対して一定周期で位置登録信号を送信する処理を行う。位置登録信号には、当該携帯電話10が加入している通信事業者コード、携帯電話10の電話番号などが含まれ、これにより基地局は当該基地局の通信エリアに通信可能な状態(電源オンしている状態)で位置している全ての携帯電話の存在を把握し、携帯電話10からの発信、携帯電話10への着信を接続することができる。
【0038】
本実施例における携帯電話10は、携帯電話10が無線通信し得る範囲内に通信可能な状態で存在する他の携帯電話の位置登録信号を受信してビジターリストとして記憶し、自携帯電話10の位置登録処理時に、ビジターリストに記憶した他の携帯電話の位置登録信号を自身の位置登録信号と組み合わせて基地局に送信する。これにより基地局に対して携帯電話10と当該携帯電話10が中継な他の携帯電話の位置登録が行われる。
【0039】
このため、携帯電話10はリスト登録処理部26を備え、自携帯電話10の通信エリア内から送信される他の携帯電話の位置登録信号を受信し、ビジターリスト記憶部27に登録する。
【0040】
一方、通話部11は、マイク12とスピーカ13と無線部14とから構成されており、無線部14は、アンテナ15、送受信回路、変復調回路、圧縮伸長回路、音声コーデック等を含む通信回路141と142を備えており、自機宛の通信の場合、無線部14を介してマイク12から入力された音声を音声信号として送信し、通話の相手方の音声信号を受信してスピーカ13に出力する。
【0041】
通信回路141と142は本質的に同等な回路であり、携帯電話10自身の通信と、携帯電話10のビジターリスト記憶部27に登録された他の携帯電話の通信のいずれであっても通信回路141と142のいずれかを使用して通信することができる。従って、通信回路141と142を使用して携帯電話10自身の通信と他の携帯電話の通信の中継動作を行うことができる。他の携帯電話の通信を中継する場合、マイク12からの音声入力、スピーカ13への音声出力は必要なく、通信回路141または142内の送受信回路で折り返すいわゆるリピータ装置と同様の動作を行う。
【0042】
携帯電話10は自携帯電話宛またはビジターリストに登録された他の携帯電話宛の信号を捕捉すると、通信回路141または142の何れかを使用して通信または中継を行う。図4は、図2のブロック図における通信回路141、142の構成を示す図である。携帯電話10から送信される電波あるいは携帯電話10で受信する電波は送受波器143を介してアンテナから送受信される。
【0043】
携帯電話10は、自携帯電話10宛の通信およびビジターリストに登録した他の携帯電話宛の通信を同時に受信し、通話と中継処理を行うことができる。アンテナを介して送受波器143で受信した電波は、捕捉した順に、送受フィルタ144a、144bにおいて分離される。最初に捕捉した電波が自携帯電話10宛の通信である場合、送受フィルタ144aを介して送受信される。また、自携帯電話10宛の通信中に、次に受信した電波が他の携帯電話に対する通信である場合、送受フィルタ144bを介して送受信される。
【0044】
送受フィルタ144aに受信された信号は受信側の第1BFF(第1バッファ)146aにバッファされ、受信回路148を介して変復調回路に送られる。一方、他の携帯電話への中継信号は、送受フィルタ144bに受信された信号は受信側の第2BFF(第2バッファ)146bにバッファされ、受信回路148を介して送信回路147に中継される。
【0045】
また、自携帯電話10からの通話信号は変復調回路から送信回路147を介して送信側の第1BFF(第1バッファ)145aにバッファされ、送受フィルタ144a、送受波器143、アンテナを介して送信される。また、他の携帯電話へ送る中継信号は、送信回路147を介して送信側の第2BFF(第2バッファ)145bにバッファされ、送受フィルタ144a、送受波器143、アンテナを介して送信される。切り換え制御部25は捕捉した信号が自携帯電話10の通信であるか、ビジターリスト記憶部27に登録した他の携帯電話の通信の中継であるかを判別し、上記通信回路141、142の切り換えを制御するものである。
【0046】
以上説明したように、本発明によれば一般のユーザが使用する携帯電話10にリピータ装置の機能を持たせることができ、自携帯電話10の通信とビジターリストに登録された他の携帯電話の通信の中継を同時に実行することができる。このため、基地局の設置場所が密でないエリアにおける場所における通信環境を改善することができ、通信事業者にとっては通信インフラの投資を抑制することができる。また、本発明にかかるリピータ機能を有する携帯電話10を使用するり加入者には、利用料金を割引することによって投資抑制のコスト還元を行えばより普及を促進することができる。
【0047】
なお、本実施例において、携帯電話10が中継のためにビジターリスト記憶部27に登録する他の携帯電話は、自携帯電話10が加入している通信事業者と同じ通信事業者に加入している携帯電話に限定することができる。これは他の携帯電話が送信する位置登録信号に含まれる通信事業者コードにより容易に判別することができる。
【0048】
また、通信事業者の間でローミングシステムが確立していれば、携帯電話10は当該ローミング処理により複数の通信事業者の基地局と通信することが可能であるから、ビジターリスト記憶部27に登録する他の携帯電話が加入する通信事業が他の通信事業者であっても登録するように構成し、通信事業者が相違する携帯電話間の通信も中継することができるようになる。
【0049】
更に、本発明の携帯電話10によれば、複数の通信回路141、142を備えており、捕捉した電波を分離して処理する構成により自携帯電話10の通信と、他の携帯電話に対する中継を同時に行うことができる。このような構成によれば、PHSや他の移動体通信システムのようにシステムが異なる移動体端末装置との間の通信の中継を行うこともできる。
【0050】
上記実施例において、携帯電話10は2つの通信回路141と142を備え、自携帯電話10の通信の他に、ビシターリスト記憶部27に登録した他の携帯電話の1つに対する通信の中継を行うことができる構成としたが、携帯電話10を構成するマイクロコンピュータに高性能のチップを搭載すれば、更に通信回路を増加して同時に中継できる他の携帯電話数を複数に増加することも可能である。
【0051】
尚、時分割方式で本発明を実施しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、基地局の設置数を増加することなく、通信可能なエリアを拡大できるため、通信インフラへの投資を抑制することができ、移動体通信システムの利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施例にかかる携帯電話システムの概念を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の実施例にかかる中継機能を有する携帯電話の構成を示す概略ブロック図である。
【図3】本発明の実施例にかかる携帯電話の外観を示す図である。
【図4】図2のブロック図における通信回路の構成を示すブロック図である。
【図5】従来のリピータ装置を用いた通信システムの構成を示す図である。
【図6】従来のリピータ装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0054】
10・・・・携帯電話
11・・・・通話部
12・・・・マイク
13・・・・スピーカ
14・・・・無線部
15・・・・アンテナ
141・・・通信回路
142・・・通信回路
21・・・・操作制御部
22・・・・主制御部
23・・・・表示部
24・・・・操作部
25・・・・切り換え制御部
26・・・・リスト登録処理部
27・・・・ビジターリスト記憶部
28・・・・位置登録処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局に対して自携帯電話の位置登録処理を行う位置登録処理部を備えた携帯電話において、
前記携帯電話は、少なくとも第1の通信回路と第2通信回路と、自携帯電話が通信可能な範囲内に位置する他の携帯電話が送信する位置登録情報を受信してビジターリスト記憶部に登録するビジターリスト登録処理部と、切り換え制御部と、を備え、
前記位置登録処理部は基地局に対する自携帯電話の位置登録処理に際して、自携帯電話の位置登録情報と前記ビジターリスト記憶部に登録した他の携帯電話の位置登録情報を基地局に送信し、
前記切り換え制御部は、自携帯電話の通信信号を前記第1の通信回路または第2の通信回路の何れかにより処理し、前記ビジターリスト記憶部に登録した他の携帯電話の1つとの間の通信信号を前記第1の通信回路または第2の通信回路により中継処理するように前記第1の通信回路と第2の通信回路を切り換えるように構成したことを特徴とするリピータ機能を有する携帯電話。
【請求項2】
前記リピータ機能を有する携帯電話は、前記第1の通信回路と第2の通信回路の他に
更に通信回路を備え、前記ビジターリスト記憶部に登録した他の携帯電話の1つ以上との間の通信信号を前記通信回路の複数を用いて中継処理するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のリピータ機能を有する携帯電話。
【請求項3】
前記ビジターリスト記憶部に登録する他の携帯電話は、自携帯電話と同一の通信事業者に加入した携帯電話であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリピータ機能を有する携帯電話。
【請求項4】
前記ビジターリスト記憶部に登録する他の携帯電話は、自携帯電話と同一の通信事業者に加入した携帯電話および他の通信事業者に加入した携帯電話を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリピータ機能を有する携帯電話。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−135154(P2007−135154A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328756(P2005−328756)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】