説明

リヤピラー部のゲートステー取付部構造

【課題】 ベルトアンカー部とステー取付部の剛性向上を、最小限の部材にて両立させ、局所となる当該部位の結合剛性を向上させる。
【解決手段】 リヤゲート用のゲートステー取付部6とシートベルト用のショルダーアンカー取付部5が近接配置されたリヤピラー部1のゲートステー取付部構造において、前記両取付部5、6を連結する補強部材2がリヤピラー部1のアウタ部材1Aとインナ部材1Bとを連結したことにより、補強部材2がリヤピラー部1の中間部のセパレータとして機能し、ショルダーアンカー取付部5に作用する荷重が補強部材2を介してリヤピラー部1のアウタ部材1Aに分散され、ゲートステー取付部6に作用する荷重も補強部材2を介してリヤピラー部1のインナ部材1Bに分散されるので、これらリヤピラー部1と補強部材2とが互いに補完し合い、前記両取付部5、6の剛性向上が最小限の部材にて両立できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヤゲート用のゲートステー取付部とシートベルト用のショルダーアンカー取付部が近接配置されたリヤピラー部のゲートステー取付部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体後部構造において、リヤゲート開口部周囲は、開口部であるが故に強度が不足しがちになる。このようなリヤゲート開口部の補強やリヤサスペンションからの突上げ荷重に対する剛性確保の観点から、補強体としてのリヤピラーが車体屋根部近傍からタイヤハウスにかけて配設されている。通常、高い剛性が確保されたこのリヤピラーの上部には、リヤゲートの開閉を助成するゲートステーの基部が取り付けられている。また、このリヤピラーの上部近傍には、後部に座乗する乗員のためのシートベルトショルダーアンカーが取り付けられる。このシートベルトショルダーアンカー取付部には、万一の衝突時に乗員確保のための大きな荷重がかかることから、適宜の補強部材を設置してショルダーアンカーを取り付けていた。そのような構造の典型例として下記特許文献1に開示されたものが提案されている。
【特許文献1】特開2001−63622号公報(段落0036、0037および0049参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図7を用いて、前記特許文献1に開示された自動車の車体後部補強構造について説明する。この補強構造は、車体101の後壁104にバックドア開口123を形成し、リヤピラー107に結合させられるとともに、前記バックドア開口123の上部開口縁125に結合させられる補強材133を設けたもので、補強材133とは別体として形成され、前記リヤピラー107に結合させられるとともに、ルーフサイドレール108に結合させられる他の補強材134を設け、前記補強材133、134を互いに結合した。これにより、リヤピラー107が他の補強材134により補強され、シートベルトアンカー130に大きな外力が作用しても充分に対抗できることになる。
【0004】
また、バックドアのヒンジは、前記補強材133がバックドア開口部の上部側に回り込んだ位置に配設される。補強材133は、互いに別体の上補強部材136と下補強部材137とで構成されているので、下部側で形状が大きく相違する補強材133であっても、その成形が容易であり、成形の自由度が向上することとなった。このように、シートベルトアンカー130は補強材134に、バックドアのヒンジは補強材133にそれぞれ取り付けられ、強度確保のためには、それぞれに剛性を確保する必要があり、全体としての重量増加を引き起こしたり、部品点数も増加しがちであった。
【0005】
そこで本発明は、このような従来の自動車の車体後部補強構造の課題を解決して、ベルトアンカー部とステー取付部の剛性向上を、最小限の部材にて両立させるとともに、局所となる当該部位の結合剛性を向上させたリヤピラー部のゲートステー取付部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため本発明は、リヤゲート用のゲートステー取付部とシートベルト用のショルダーアンカー取付部が近接配置されたリヤピラー部のゲートステー取付部構造において、前記両取付部を連結する補強部材がリヤピラー部のアウタ部材とインナ部材とを連結したことを特徴とする。また本発明は、前記補強部材が皿状を呈し、ショルダーアンカー取付部の周囲で前記ピラー部にほぼ全周で接合したことを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リヤゲート用のゲートステー取付部とシートベルト用のショルダーアンカー取付部が近接配置されたリヤピラー部のゲートステー取付部構造において、前記両取付部を連結する補強部材がリヤピラー部のアウタ部材とインナ部材とを連結したことにより、補強部材がリヤピラー部の中間部のセパレータとして機能し、ショルダーアンカー取付部に作用する荷重が補強部材を介してリヤピラー部のアウタ部材に分散され、ゲートステー取付部に作用する荷重も補強部材を介してリヤピラー部のインナ部材に分散されるので、これらリヤピラー部と補強部材とが互いに補完し合い、前記両取付部の剛性向上が最小限の部材にて両立させることができる。
【0008】
また、前記補強部材が皿状を呈し、ショルダーアンカー取付部の周囲で前記リヤピラー部にほぼ全周で接合したことにより、衝突時等における特にショルダーアンカー取付部に作用する大きな荷重が、補強部材の全周を介してリヤピラー部に分散されるので、局所となる結合剛性を効果的に向上させることができる。しかも、補強部材の全周の一部にリヤピラー部とともにゲートステー取付部が配設されているので、ゲートステー取付部に作用するバックドア開閉時の荷重をもリヤピラー部に効果的に分散することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明のリヤピラー部のゲートステー取付部構造の1つの実施例を示すもので、図1(A)はリヤピラー部のゲートステー取付部近傍の車体後部側面図、図1(B)は図1(A)のC−C断面図、図2は補強部材の正面図、図3は図2のA−A断面図、図4は図2のB−B断面図、図5は図2のD矢視図、図6は図2のE詳細図である。本発明の基本的な構造は、図1に示すように、リヤゲート用のゲートステー取付部6とシートベルト用のショルダーアンカー取付部5が近接配置されたリヤピラー部1のゲートステー取付部構造において、前記両取付部5、6を連結する補強部材2がリヤピラー部1のアウタ部材1Aとインナ部材1Bとを連結したことを特徴とする。
【0010】
図1(A)に示すように、車体後部の側面からバックドア開口部にかけて、リヤゲート開口部の補強やリヤサスペンションからの突上げ荷重に対する剛性確保のために、太線で示す補強体としてのリヤピラー1が車体屋根部近傍からタイヤハウスにかけて配設されている。該リヤピラー1は同時に燃料供給口であるフィラー8を衝突時の衝撃から保護する。該リヤピラー1の上部(クォータウィンドガラス10の後方)には、本願発明の一部を構成する補強部材2(太点線)が重合・連結される。図1(A)は車体左側に配設されたリヤピラー1等を示している。
【0011】
補強部材2は、図2に示すような正面図形状を呈しており、ショルダーアンカー取付部5が位置するショルダアンカー取付面3が最も高い位置にあって、その周囲は皿状に一段低い位置に形成される。補強部材2がリヤピラー1のアウタ部材1Aとインナ部材1Bとの間に接合・連結される。その補強部材2とリヤピラー1との連結状態は、図2の各部の断面図によって、詳細に知られる。
【0012】
図2のC−C断面図は、図1(B)に示される。これによると、リヤピラー1の上部における補強部材2との接合・連結形態は、アウタ部材1Aとインナ部材1Bとで構成される閉断面形状のリヤピラー1の内部に皿状の補強部材2が配設されているのがよく理解される。補強部材2におけるショルダーアンカー取付面3が最も高い位置にあってリヤピラー1のインナ部材1Bに接合され、皿状の補強部材2の裾部を形成する第1連結部2Aを経て一方側がリヤピラー1のアウタ部材1Aに接合される。補強部材2の他方側も第2連結部2Bを経てリヤピラー1のアウタ部材1Aに接合される。該接合部には、車体パネルアウタ7が折り返されてバックドア開口部を構成する縁部も共に接合され、ゲートステー取付面4を構成する。該ゲートステー取付面4にゲートステー取付部6が設置される。補強部材2のゲートステー取付面4からさらに外方に折曲フランジ2Cが形成され、ゲートステー取付面4の補強と密封ゴムの嵌挿に供される。
【0013】
図2のA−A断面図は、図3に示される。リヤピラー1の上部における補強部材2との接合・連結部を上方から見た断面図である。ここでは、リヤピラー1の形状が幾分L字形状に形成されるとともに、補強部材2におけるショルダーアンカー取付面3に設置されたショルダーアンカー取付部5に対向するリヤピラー1のアウタ部材1Aの一部に切欠き部9が設けられているのが分かる。該切欠き9を通じて、補強部材2におけるショルダーアンカー取付面3とリヤピラー1のインナ部材1Bとの接合を行うことができる。
【0014】
本断面部では、補強部材2における第1連結部2Aの末端は、リヤピラー1のアウタ部材1Aの末端、インナ部材1Bの末端および車体パネルアウタ7の末端の重合部に重合されて、クォータウィンドガラス10の接着部を構成する。なお、タイヤハウス13の直上に位置するリヤピラー1は閉断面に形成されていることから、トンネル状となってタイヤ騒音を上方へ伝えてくるが、皿状の補強部材2の裾部が有効にリヤピラー1の内部に接合されており、図3の斜線部11、12の閉断面部のみをウレタン等の遮音材により閉塞すれば、タイヤハウスからの騒音の乗員の耳元への伝達が解消されるので、遮音材が最小限の量で済む。
【0015】
図2のB−B断面図は、図4に示される。この断面は、リヤピラー1との接合・連結部における補強部材2の最上部を示している。符号4は、補強部材2におけるリヤピラー1のアウタ部材1Aとの接合面であるゲートステー取付面4の最上部断面を示している。ゲートステー取付面4に作用するゲートステーからのゲート開閉荷重は第2連結部2Aを通じて補強部材2に分散される。リヤピラー1のアウタ部材1Aの一部に切欠き部9を通じて、補強部材2におけるショルダーアンカー取付面3とリヤピラー1のインナ部材1Bとの接合を行う。
【0016】
図2のD矢視図は、図5に示される。この矢視図によると、補強部材2とリヤピラー1のアウタ部材1Aとの接合面であるゲートステー取付面4に、ゲートステー取付部である植込みナット6等が溶接等により設置された状態がよく理解される。図2のE部詳細図は、図6に示される。補強部材2におけるショルダーアンカー取付面3を、該取付面3に直交する状態にて見た図である。ゲートステー取付面4およびこの面に設置されるゲートステー取付部6は幾分傾斜して示されている。
【0017】
なお、本実施例のゲートステー取付面4に設置されたゲートステー取付部6に一端部が支持されるゲートステーとしては、ガスステー等の伸縮装置が採用されるが、比較的高い位置にガスステーの基端部が支持されるので、リヤゲートの開閉の途中(死点を超えた時点)からガスステーの車体側とゲート側の各取付点の上下位置が逆転する反転式ゲートステーが採用される。
【0018】
以上、本発明の各実施の形態について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、リヤゲートの形状、形式、ゲートステーの形状、形式(好適には反転式ゲートステーの取付けに適用されるが、リヤピラーのやや下方にて補強部材が接合・連結されるものに適用されるなら、通常の伸縮式ゲートステーの取付けに適用されてもよい。)、取付面の形状を含むゲートステー取付部の形状、形式、取付面の形状を含むシートベルト用のショルダーアンカー取付部の形状、形式、アウタ部材およびインナ部材の形状を含むリヤピラー部の形状、補強部材の形状、形式およびリヤピラー部のアウタ部材とインナ部材との連結形態(皿状の補強部材の裾部の全周で接合される。ショルダーアンカー取付部の配設形態によっては、実施例のものと異なり、補強部材におけるショルダーアンカー取付部がリヤピラーのアウタ部材側に設置されてもよい。補強部材の裾部がリヤピラーのアウタ部材あるいはインナ部材に単独で接合されたり、アウタ部材とインナ部材との接合部に重合されたり、あるいは車体パネルアウタとリヤピラー部との重合部に重合されてもよい。)等については適宜選定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明のリヤピラー部のゲートステー取付部構造を示すもので、図1(A)は車体後部の要部側面図、図1(B)は図1(A)のC−C断面図である。 同、補強部材の正面図である。
【図2】同、補強部材の正面図である。
【図3】同、図2のA−A断面図である。
【図4】同、図2のB−B断面図である。
【図5】同、図2のD矢視図である。
【図6】同、図2のE詳細図である。
【図7】従来の自動車の車体後部補強構造の側面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 リヤピラー部
1A アウタ部材
1B インナ部材
2 補強部材
2A 第1連結部
2B 第2連結部
2C 折曲フランジ
3 ショルダーアンカー取付面
4 ゲートステー取付面
5 ショルダーアンカー取付部
6 ゲートステー取付部
7 車体パネルアウタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヤゲート用のゲートステー取付部とシートベルト用のショルダーアンカー取付部が近接配置されたリヤピラー部のゲートステー取付部構造において、前記両取付部を連結する補強部材がリヤピラー部のアウタ部材とインナ部材とを連結したことを特徴とするリヤピラー部のゲートステー取付部構造。
【請求項2】
前記補強部材が皿状を呈し、ショルダーアンカー取付部の周囲で前記リヤピラー部材にほぼ全周で接合したことを特徴とする請求項1に記載のリヤピラー部のゲートステー取付部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−103436(P2006−103436A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290918(P2004−290918)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】