説明

リリーフバルブ

【課題】異音が生じないリリーフバルブを提供する。
【解決手段】流体が流入する第1ポート11、及び流体を排出する第2ポート12を有するバルブボディ2と、第1ポート11に対して近接又は離間移動可能にバルブボディ2に収容され、第1ポート11に連通する流入口7及び第2ポート12に連通する排出口8を有するスリーブ4と、第1ポート11に対して近接又は離間移動可能にスリーブ4に収容されるバルブ5と、スリーブ4及びバルブ5を第1ポート11側に付勢する付勢部材6と、バルブボディ2とスリーブ4及びバルブ5との相対位置を変更するバルブ位置変更機構13とを備え、スリーブ4が第1ポート11を流通する流体の流体圧を受けて第1ポート11から離間する方向に移動する際に、第1ポート11と第2ポート12とが直接連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リリーフバルブ、特にエンジン潤滑系の油圧調整に用いられるバルブ開弁圧が変更可能なリリーフバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
リリーフバルブは、油圧回路の圧力が設定圧以上になると、リリーフバルブの内部に設けられている余剰油の逃し路を開くことによって、油圧回路の圧力上昇を抑制するものである。
【0003】
この種のリリーフバルブは、例えば、非特許文献1のように、ボディ、バルブ、スプリング、リテーナ、プラグ、リテーナとプラグ間にオイルを導入する油路、及びオイル導入をコントロールする背圧用コントロールバルブで構成される。
【0004】
このリリーフバルブにおいて、リテーナとプラグ間にオイルが導入されない場合には、リテーナはプラグ端面位置にありスプリング長が長くセットされて、オイルポンプにより吐出されるオイルをリリーフバルブよりもオイルの流通方向上流側にリリーフするのに必要なバルブ開弁圧が低圧に設定される。一方、リテーナとプラグ間にオイルが導入される場合には、リテーナが上昇してスプリングを収縮させ、バルブ開弁圧が高圧に設定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】公開技報2006−505946
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1のリリーフバルブの場合、バルブ開弁圧を高圧から低圧に設定する際にリテーナが下降してプラグと接触したり、あるいは、オイルポンプの吐出による流体の脈動によってバルブが小刻みに振動してボディと接触することなどが原因となり、種々の異音が発生する場合があった。
従って、本発明の目的はこのような異音が生じ難いリリーフバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るリリーフバルブの第1特徴構成は、流体が流入する第1ポート、及び流体を排出する第2ポートを有するバルブボディと、前記第1ポートに対して近接又は離間移動可能に前記バルブボディに収容され、前記第1ポートに連通する流入口及び前記第2ポートに連通する排出口を有するスリーブと、前記第1ポートに対して近接又は離間移動可能に前記スリーブに収容され、前記第1ポート側に移動することにより前記流入口と前記排出口との連通を禁止し、前記第1ポートから離間する方向に移動することにより前記流入口と前記排出口とを連通させるバルブと、前記スリーブ及び前記バルブを前記第1ポート側に付勢する付勢部材と、前記バルブボディと前記スリーブ及び前記バルブとの相対位置を変更するバルブ位置変更機構とを備え、前記スリーブが前記第1ポートを流通する流体の流体圧を受けて前記第1ポートから離間する方向に移動する際に、前記第1ポートと前記第2ポートとが直接連通する点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
本構成においては、スリーブが第1ポートを流通する流体の流体圧を受けて第1ポートから離間する方向に移動する際、流体が第1ポートから第2ポートへと直接流出するように構成されている。
流体が第1ポートから第2ポートに直接流入することにより、スリーブが受ける流体圧が低減されるため、スリーブの第1ポートからの離間移動は、付勢部材の付勢力と流体圧とのバランスがとれる位置で止まることになる。
その結果、スリーブとバルブボディとの接触が回避されるため、異音の発生を防止することができる。
【0009】
第2特徴構成は、前記バルブ位置変更機構は、前記第1ポートを流通する流体の流体圧を前記スリーブに作用させて前記付勢部材の付勢方向と同一方向に移動させる点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
このように、バルブボディとスリーブ及びバルブとの相対位置を変更するために、第1ポートを流通する流体の流体圧をスリーブに作用させるので、スリーブを移動させるための動力を別途必要とせず、リリーフバルブの構造を簡素化できる。また、付勢部材の付勢方向と同一方向にスリーブを移動させるので、スリーブに対して第1ポートを流通する流体の流体圧と付勢部材の付勢力とを効率よく作用させることができる。
【0011】
第3特徴構成は、前記バルブ位置変更機構は、前記第1ポートを流通する流体の流体圧を前記スリーブに作用させて前記付勢部材の付勢方向と同一方向に移動させるか否かを切換えるOSVを備える点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
このように、バルブボディとスリーブ及びバルブとの相対位置を変更するために、第1ポートを流通する流体の流体圧をスリーブに作用させて付勢部材の付勢方向と同一方向に移動させるか否かを切換えるOSVを備えるので、スリーブを移動させるための動力を別途必要とせず、リリーフバルブの構造を簡素化できる。また、OSVによって第1ポートを流通する流体の流体圧をスリーブに作用させて移動させるか否かの切換えを確実に行うことができる。
【0013】
第4特徴構成は、前記バルブ位置変更機構の作動時には、前記バルブに前記流体の流体圧を第1開弁圧以上作用させることにより前記排出口から前記流体が排出され、前記バルブ位置変更機構の非作動時には、前記スリーブに前記流体の流体圧を第2開弁圧以上作用させることにより、前記スリーブが前記第1ポートから離間する方向に移動して前記第1ポートと前記第2ポートとが連通し、前記流体が前記第1ポートから前記第2ポートに排出され、前記第2開弁圧は、前記第1開弁圧よりも高い流体圧である点にある。
【0014】
〔作用及び効果〕
この構成により、バルブ位置変更機構の作動時には、バルブ内の流体の流体圧が第1開弁圧以上であるとリリーフする低圧設定となり、バルブ位置変更機構の非作動時には、バルブ内の流体の流体圧が第1開弁圧より高い流体圧である第2流体圧以上であるとリリーフする高圧設定となる。こうして、リリーフバルブにおけるバルブ開弁圧の設定変更を容易に行うことができる。
【0015】
第5特徴構成は、前記バルブ位置変更機構の非作動時において、前記バルブと前記スリーブとが一体的に移動する点にある。
【0016】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、バルブとスリーブとが一体的に移動するため、バルブ位置変更機構の非作動時において流体の脈動によって生じるバルブとスリーブとの接触音の発生を防止することができると共に、スリーブとバルブとの磨耗を低減する効果もある。
【0017】
第6特徴構成は、前記スリーブの両端面のうち、一方の端面が前記第1ポートに面し、他方の端面が前記バルブ位置変更機構の流路に面しており、前記他方の端面の面積を前記一方の端面の面積よりも大きく設定してある点にある。
【0018】
〔作用及び効果〕
この構成により、第1ポートの液圧を他方の端面に作用させたとき、両端面の面積の差によって、一方の端面に作用する流体圧による押付け力に比べて他方の端面に作用する流体圧により押付け力の方が大きくなり、簡単な構成でありながらスリーブを第1ポートの側に確実に位置させることができる。
【0019】
第7特徴構成は、前記スリーブの外周面のうち、前記スリーブの両端部の部位に前記バルブボディとの摺動面を形成し、前記両端部に挟まれた部位には前記摺動面を形成しない点にある。
【0020】
〔作用及び効果〕
本構成のスリーブは、例えば、第1ポートの流体圧を利用して位置変更させるものである。よって、バルブボディに対する摺動抵抗はできるだけ小さい方が望ましい。そのため、バルブボディとの摺動面をスリーブの両端部近傍に振り分けることで、摺動時における摺動面の面積を低減し、かつ、スリーブの傾きを最小限に留めて、スリーブとの間に生じる摩擦力を極力少なくしている。
【0021】
第8特徴構成は、前記スリーブの内部の流体または空気のうち、前記バルブを隔てて前記第1ポートの側とは反対側の流体または空気を排出する第1連通孔を、前記スリーブに設けてある点にある。
【0022】
〔作用及び効果〕
この構成により、バルブ位置変更機構によってスリーブの位置を変更する際には、スリーブの内部の流体または空気のうちバルブを隔てて第1ポートの側とは反対側の流体または空気の体積が増減する。その際に当該反対側の流体または空気を排出しておくことで流体の出入りが自由となり、スリーブの位置移動に際しての抵抗を低減することができる。
【0023】
第9特徴構成は、前記スリーブの内部の流体または空気のうち、前記バルブを隔てて前記第1ポートの側とは反対側の流体または空気を排出する第2連通孔を、前記バルブに設けてある点にある。
【0024】
〔作用及び効果〕
この構成により、第1ポートからの流体圧によってバルブが押し下げられる場合、前記バルブを隔てて前記第1ポートの側とは反対側の流体または空気が抵抗となる。よって、当該流体または空気と第2ポートを連通させて流体または空気の排出を促進させることで、バルブの動作を円滑なものにしている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るリリーフバルブの低圧設定における閉じ状態を示す図である。
【図2】本発明に係るリリーフバルブの低圧設定における開き状態を示す図である。
【図3】本発明に係るリリーフバルブの高圧設定における閉じ状態を示す図である。
【図4】本発明に係るリリーフバルブの高圧設定における開き状態を示す図である。
【図5】本発明に係るリリーフバルブの横断面図である。
【図6】本発明に係るリリーフバルブの高圧設定における閉じ状態を示す図である。
【図7】本発明に係るリリーフバルブの高圧設定における開き状態を示す図である。
【図8】本発明に係るリリーフバルブの他の実施形態を示す図である。
【図9】本発明に係るリリーフバルブの他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態として、エンジンへオイルを供給する供給流路10の圧力を制御するリリーフバルブ1を図面に基づいて説明する。
〔実施形態〕
【0027】
図1〜図7に示すように、エンジン作動状態では、オイルポンプ20によって、オイルパン21の内部に貯留された流体(オイル)を吸出し、供給用流路10を用いて各被潤滑部材に向けて送出する。
【0028】
リリーフバルブ1は、バルブボディ2と、このバルブボディ2に収容される筒状のスリーブ4と、このスリーブ4に収容されるバルブ5と、スリーブ4とバルブ5に付勢力を付与する付勢部材6(例えば、スプリングバネ)とを備え、供給用流路10の経路中に配置される。
【0029】
バルブボディ2は、流体が流入する第1ポート11と、流体を排出する第2ポート12と、スリーブ4を収容する内孔2aと、内孔2aと後述するOSV15とを連通接続する流路2bとを有している。
【0030】
スリーブ4は、第1ポート11に連通する流入口7と第2ポート12と連通する排出口8と、バルブ5を収容する内孔4cとを備える。内孔4cには、バルブ5の被係止部5bが係止可能な係止部4eが形成されている。尚、図5に示すようにスリーブ4の排出口8は、平面視において90度間隔で4箇所に設けられている。
【0031】
スリーブ4は、バルブボディ2の内孔2aを摺動しながら第1ポート11に対して近接又は離間移動できるように嵌挿されており、第1ポート11側に移動することにより第1ポート11と第2ポート12との連通を禁止する。尚、スリーブ4の下部は、バルブボディ2の内孔2aの下端に設けた突起部16に対して摺動可能に外嵌される。
【0032】
バルブ5の第1ポート側11の端面には、スリーブ4の係止部4eに係止可能な被係止部5bが設けられている。
バルブ5は、スリーブ4の内孔4cを摺動しながら第1ポート11に対して近接又は離間移動できるように嵌挿されており、第1ポート11側に移動することにより流入口7と排出口8との連通を禁止し、第1ポート11から離間する方向(図1及び図2の紙面下方向)に移動することにより流入口7と排出口8とを連通させる。
【0033】
付勢部材6は、スリーブ4及びバルブ5を第1ポート11からの流体圧に抗う方向(第1ポート11側)に付勢するよう構成されている。
【0034】
図5〜図7に示すように、第2ポート12は、バルブボディ2の内孔2aの中心軸を含む面を基準に対称に一対、即ち2箇所に設けられている。図6及び図7に示すように、2つの第2ポート12の断面形状は略台形に形成されている。
【0035】
リリーフバルブ1は、図1及び図2に示すように、バルブボディ2に対するスリーブ4の相対位置を変更する、バルブ位置変更機構13を備えている。このバルブ位置変更機構13は、供給用流路10から分岐しスリーブ4の第1ポート11の側とは反対側(以下、反第1ポート11の側という)に接続される背圧用流路14と、背圧用流路14の経路中に設けられ、第1ポート11の流体圧の作用を入切するOSV15とによって構成されている。
【0036】
OSV15をONにすると、図1、図2に示すように、背圧用流路14から供給用流路10の流体がスリーブ4の反第1ポート11の側に導入され、スリーブ4に対して、第1ポート11からの流体圧に抗う方向に第1ポート11の流体圧が作用する。
【0037】
一方、OSV15をOFFにすると、図3、図4、図6、図7に示すように、背圧用流路14から供給用流路10の流体がスリーブ4の反第1ポート11の側に導入されなくなり、スリーブ4に対して、第1ポート11からの流体圧に抗う方向に第1ポート11の流体圧が作用しなくなる。
【0038】
スリーブ4の両端面4A、4Bのうち、一方の端面4Aは第1ポート11に面し、他方の端面4Bはバルブ位置変更機構13の背圧用流路14に繋がる流路2bに面している。ここで、端面4Bの面積は端面4Aの面積よりも大きく設定してある。こうすることで、第1ポート11の液圧を他方の端面4Bに作用させたとき、両端面4A、4Bの面積の差によって、一方の端面4Aに作用する押圧力に比べて他方の端面4Bに作用する押圧力の方が大きくなり、スリーブ4を第1ポート11の側に位置させることができる。よって、OSV15を入切操作することで、スリーブ4を第1ポート11の側または第2ポート12の側(第1ポート11とは反対側)に位置させることができる。
【0039】
(通常運転におけるバルブ位置変更機構の作動時)
図1及び図2に示すように、OSV15をONにすると、スリーブ4に対して、第1ポート11からの流体圧に抗う方向に第1ポート11の流体圧が作用し、スリーブ4を第1ポート11に近接させる方向に移動させる。スリーブ4が第1ポート11に近づくと、それに伴い、排出口8の位置も第1ポート11の側に近づく。
【0040】
さらに、スリーブ4とともにバルブ5も付勢部材6で付勢されて第1ポート11の側に位置するので、付勢部材6が伸張状態となる。伸張状態となった付勢部材6は反第1ポート11の側に押し戻され易い。よって、供給流路10の流体圧が低圧であっても、図2のように、付勢部材6を反第1ポート11の側に押戻して、バルブ5が第1ポート11から離間してスリーブ4の排出口8を開く開き状態となる。
【0041】
こうして、第1ポート11と第2ポート12とが連通し、余剰流体(オイル)がオイルポンプ20の吸入口に還流する。つまり、この場合は、リリーフバルブ1のバルブ開弁圧が低圧設定(第1開弁圧)となる。換言すれば、OSV15(バルブ位置変更機構13)の作動時には、バルブ5に流体の流体圧を第1開弁圧以上作用させることにより排出口8から流体が排出する。
【0042】
ここで、第1開弁圧とは、OSV15(バルブ位置変更機構13)の作動時において、スリーブ4の流入口7と排出口8とを連通させるのに必要な流体圧のことをいう。具体的には、オイルポンプ20から吐出される流体(オイル)がバルブ5に作用し、付勢部材6の付勢力に抗してバルブ5が第1ポート11から離間する方向に移動して流入口7と排出口8とが連通するのに必要な流体圧である。
【0043】
(通常運転におけるバルブ位置変更機構の非作動時)
図3及び図6に示すように、OSV15をOFFにすると、スリーブ4に対して、第1ポート11からの流体圧に抗う方向に第1ポート11の流体圧が作用しなくなる。スリーブ4には第1ポート11からの流体圧のみが作用し、スリーブ4を第1ポート11から離間する方向(第2ポート12の側)に移動させる。そして、図4及び図7に示すように、スリーブ4が第2ポート12の側(第1ポート11とは反対側)に移動する際に、第1ポート11と第2ポート12とが直接連通する。このとき、スリーブ4とともにバルブ5も第2ポート12の側(第1ポート11とは反対側)に位置して付勢部材6が収縮状態となるため、付勢部材6は反第1ポート11の側に押し戻され難くなる。
【0044】
そのため、供給用流路10の流体圧が低圧では、バルブ5が反第1ポート11の側に押戻されず、図3及び図6に示すように、バルブ5の被係止部5bがスリーブ4の係止部4eに係止してスリーブ4の排出口8が閉じ状態に維持されるとともに、スリーブ4が第1ポート11と第2ポート12との連通を禁止する。
【0045】
そして、図4及び図7に示すように、供給用流路10の流体圧が高圧になると、スリーブ4が第1ポート11を流通する流体の流体圧を受けて、スリーブが第1ポートから離間する方向に移動する。このとき、収縮状態の付勢部材6が反第1ポート11の側に押し戻されると共に、第1ポート11と第2ポート12とが直接連通して開き状態となる。
【0046】
そして、流体が第1ポート11から第2ポート12に直接流入することとなる。これによりスリーブ4の端面4Aが受ける流体圧が低減されるため、スリーブの第1ポートからの離間移動は、付勢部材6の付勢力と流体圧とのバランスがとれる位置で止まることになる。その結果、スリーブ4とバルブボディ2との接触が回避されるため、異音の発生を防止することができる。
【0047】
また、バルブ5がスリーブ4の係止部4eで係止したままスリーブ4と一体的に移動するため、流体の脈動によって生じるバルブ5とスリーブ4との接触音の発生を防止することができると共に、スリーブ4とバルブ5との磨耗を低減する効果もある。
【0048】
こうして、第1ポート11と第2ポート12とが連通し、余剰流体(オイル)がオイルポンプ20の吸入口に還流する。つまり、この場合は、リリーフバルブ1のバルブ開弁圧が高圧設定(第2開弁圧)となる。換言すれば、OSV15(バルブ位置変更機構13)の非作動時には、スリーブ4に流体の流体圧を第2開弁圧以上作用させることにより流体が第1ポート11から第2ポート12に直接排出される。
【0049】
ここで、第2開弁圧とは、OSV15(バルブ位置変更機構13)の非作動時において、バルブボディ2の第1ポート11と第2ポート12とを連通させるのに必要な流体圧のことをいい、第1開弁圧よりも高い流体圧となる。具体的には、オイルポンプ20から吐出される流体(オイル)がスリーブ4に作用し、付勢部材6の付勢力に抗してスリーブ4が第1ポート11から離間する方向に移動して第1ポート11と第2ポート12とが直接連通するのに必要な流体圧である。
【0050】
(背圧用流路の詰まり等による故障時)
エンジン作動状態において、背圧用流路14がスラッジ等の影響で詰まった場合は、仮にOSV15がONの状態であっても、図3、図4、図6、図7に示すOSV15のOFF状態と同様に、供給用流路10の流体がスリーブ4の反第1ポート11の側に導入されなくなる。この場合、スリーブ4に対して、第1ポート11からの流体圧に抗う方向に第1ポート11の流体圧が作用しない。よって、リリーフバルブ1は、第1ポート11からの流体圧のみがスリーブ4に作用し、スリーブ4は第2ポート12の側(第1ポート11とは反対側)に位置して、バルブ開弁圧が高圧設定(第2開弁圧)となる。
【0051】
このように、本発明のリリーフバルブは、スラッジ等の影響で背圧用流路14が詰まる等の故障時に、リリーフバルブ1のバルブ開弁圧が高圧設定となるように構成されている。そのため、供給用流路10の流体圧が低圧のときはスリーブ4とバルブ5が閉じ状態のままとなって、エンジンにオイルが供給され続けることとなる。よって、エンジンにオイルが供給されないことにより発生するエンジンの焼付け等の不具合を未然に防止できる。
【0052】
また、図1〜図4に示すように、スリーブ4の外周面のうち、スリーブ4の両端部の部位(両端部に近接した部位にのみ)にバルブボディ2の内孔2aとの摺動面4aが形成されており、両端部(両摺動面4a)に挟まれた部位(外周面4b)はバルブボディ2の内孔2aとは摺動しない。スリーブ4の位置は、第1ポート11の流体圧を利用して変更されるから、バルブボディ2に対する摺動抵抗はできるだけ小さい方が望ましい。そのため、バルブボディ2との摺動面4aをスリーブ4の両端部近傍に振り分けることで、摺動時における摺動面の面積を低減し、かつ、スリーブ4の傾きを最小限に留めて、スリーブ4との間に生じる摩擦力を極力少なくしている。摺動面4aによって、バルブボディ2の内部のスリーブ4は、バルブボディ2の内部の軸方向に対して傾斜姿勢になることはなく、バルブボディ2の内部でその軸方向に沿った姿勢を保持したまま、第1ポート11と第2ポート12との間を移動することとなる。
〔他の実施形態〕
【0053】
(1)本発明に係るリリーフバルブ1は、スリーブ4の内部の流体または空気のうち、バルブ5を隔てて第1ポート11の側とは反対側の流体または空気を排出する第1連通孔4dを、スリーブ4に設けてあることが好ましい。スリーブ4に第1連通孔4dを設ける場合は、例えば、図8に示すように、スリーブ4の第1ポート11の側とは反対側の外周面に第1連通孔4dを設ける。バルブ位置変更機構13によってスリーブ4の位置を変更する際には、スリーブ4の内部の流体または空気のうち、バルブ5を隔てて第1ポート11の側とは反対側の流体または空気の体積が増減する。その際にこの第1ポート11の側とは反対側の流体または空気を第1連通孔4dによって排出しておくことで流体の出入りが自由となり、スリーブ4の位置移動に際しての抵抗を低減することができる。
【0054】
(2)本発明に係るリリーフバルブ1は、図9に示すように、スリーブ4の内部の流体または空気のうち、バルブ5を隔てて第1ポート11の側とは反対側の流体または空気を排出する第2連通孔5aを、バルブ5に設けてあることが好ましい。第1ポート11からの流体圧によってバルブ5が押し下げられる場合、バルブ5を隔てて第1ポート11の側とは反対側の流体または空気が抵抗となる。バルブ5に第2連通孔5aを設けると、図9(a)のように、第1ポート11からの流体圧によってバルブ5が押し下げられる途中で、当該流体または空気が、第2連通孔5aからスリーブ4の排出口8を通り第2ポート12に排出されることとなる。よって、当該空間の流体のスリーブ4の排出口8を介して排出が促進されることとなり、バルブ5の動作を円滑なものとなる。図9(b)のように、バルブ5がスリーブ4の流入口7から離間して排出口8を開く開き状態となると、第2連通孔5aと排出口8とは連通しなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係るリリーフバルブは、エンジン潤滑系の油圧調整に限らず、広く、さまざまな液圧調整に用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
2 バルブボディ
4 スリーブ
5 バルブ
6 付勢部材
7 流入口
8 排出口
11 第1ポート
12 第2ポート
13 バルブ位置変更機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する第1ポート、及び流体を排出する第2ポートを有するバルブボディと、
前記第1ポートに対して近接又は離間移動可能に前記バルブボディに収容され、前記第1ポートに連通する流入口及び前記第2ポートに連通する排出口を有するスリーブと、
前記第1ポートに対して近接又は離間移動可能に前記スリーブに収容され、前記第1ポート側に移動することにより前記流入口と前記排出口との連通を禁止し、前記第1ポートから離間する方向に移動することにより前記流入口と前記排出口とを連通させるバルブと、
前記スリーブ及び前記バルブを前記第1ポート側に付勢する付勢部材と、
前記バルブボディと前記スリーブ及び前記バルブとの相対位置を変更するバルブ位置変更機構とを備え、
前記スリーブが前記第1ポートを流通する流体の流体圧を受けて前記第1ポートから離間する方向に移動する際に、前記第1ポートと前記第2ポートとが直接連通するリリーフバルブ。
【請求項2】
前記バルブ位置変更機構は、前記第1ポートを流通する流体の流体圧を前記スリーブに作用させて前記付勢部材の付勢方向と同一方向に移動させる請求項1に記載のリリーフバルブ。
【請求項3】
前記バルブ位置変更機構は、前記第1ポートを流通する流体の流体圧を前記スリーブに作用させて前記付勢部材の付勢方向と同一方向に移動させるか否かを切換えるOSVを備える請求項1に記載のリリーフバルブ。
【請求項4】
前記バルブ位置変更機構の作動時には、前記バルブに前記流体の流体圧を第1開弁圧以上作用させることにより前記排出口から前記流体が排出され、
前記バルブ位置変更機構の非作動時には、前記スリーブに前記流体の流体圧を第2開弁圧以上作用させることにより、前記スリーブが前記第1ポートから離間する方向に移動して前記第1ポートと前記第2ポートとが連通し、前記流体が前記第1ポートから前記第2ポートに排出され、
前記第2開弁圧は、前記第1開弁圧よりも高い流体圧である請求項1〜3の何れかに記載のリリーフバルブ。
【請求項5】
前記バルブ位置変更機構の非作動時において、前記バルブと前記スリーブとが一体的に移動する請求項4に記載のリリーフバルブ。
【請求項6】
前記スリーブの両端面のうち、一方の端面が前記第1ポートに面し、他方の端面が前記バルブ位置変更機構の流路に面しており、
前記他方の端面の面積を前記一方の端面の面積よりも大きく設定してある請求項1〜5の何れかに記載のリリーフバルブ。
【請求項7】
前記スリーブの外周面のうち、前記スリーブの両端部の部位に前記バルブボディとの摺動面を形成し、前記両端部に挟まれた部位には前記摺動面を形成しない請求項1〜6の何れかに記載のリリーフバルブ。
【請求項8】
前記スリーブの内部の流体または空気のうち、前記バルブを隔てて前記第1ポートの側とは反対側の流体または空気を排出する第1連通孔を、前記スリーブに設けてある請求項1〜7の何れかに記載のリリーフバルブ。
【請求項9】
前記スリーブの内部の流体または空気のうち、前記バルブを隔てて前記第1ポートの側とは反対側の流体または空気を排出する第2連通孔を、前記バルブに設けてある請求項1〜8の何れかに記載のリリーフバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−17800(P2012−17800A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155133(P2010−155133)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】