説明

リレー回路

【課題】リレー回路の出力段のスイッチング素子のオン抵抗特性が増加するという問題が生じる。
【解決手段】本発明は、入力電気信号に応じて光信号を出力する発光素子と、前記光信号を電気信号に変換し、両端に電位差を生成する光電変換素子と、所定の閾値を有し、前記所定の閾値を超える前記光電変換素子が生成する電位差に応じて、出力状態を決定するスイッチング素子と、前記光電変換素子の両端に接続され、前記光電変換素子が生成する電位差を前記スイッチング素子に伝達する第1の経路および第2の経路と、前記光電変換素子の生成する電位差が所定の値まで低下した場合、前記第1の経路と前記第2の経路とを、導通する放電回路と、前記放電回路と前記スイッチング素子間に配置され、前記第1の経路と前記第2の経路との間に接続される第1の抵抗素子と、を有するリレー回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレー回路に関するものであり、特に光半導体リレー回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの大容量化、高速化が進み、それらを検査する半導体テスタにおいても測定時間短縮が求められている。このような半導体テスタに使用される光半導体リレーにおいては、低容量特性・低オン抵抗特性ならびに高速動作特性が重要となる。また、半導体テスタの誤動作の要因となり得るオフリーク電流に関しても、低リーク特性である事が望まれる。
【0003】
半導体テスタに使用される光半導体リレーの高速動作特性を実現するための手段の1つとして、特許文献1のような技術がある。図4に特許文献1の光半導体リレー回路1の回路構成を示す。図4に示すように、光半導体リレー回路1は、入力端子IN1、IN2と、出力端子OUT1、OUT2と、発光素子LED1と、受光素子PD1と、放電回路10と、MOSFET(以後、MOSトランジスタと称す)MN1、MN2(以後、MOSトランジスタと称す)とを有する。
【0004】
発光素子LED1は、入力端子間IN1、IN2間に接続される。発光素子LED1は、入力端子IN1、IN2間に制御信号として与えられる電気信号に応じて発光する。
【0005】
MOSトランジスタMN1、MN2は、出力端子間OUT1、OUT2間に直列に接続される。MOSトランジスタMN1、MN2は、出力端子間OUT1、OUT2に接続される外部負荷回路(不図示)をオンもしくはオフするリレースイッチとしての機能を有する。MOSトランジスタMN1は、ドレインが出力端子OUT1、ソースがノードA、ゲートが放電回路10に接続される。MOSトランジスタMN2は、ドレインが出力端子OUT2、ソースがノードAに接続される。このように、MOSトランジスタMN1、MN2は、ソース及びドレインが互いに逆方向に直列接続された構成となっている。これは、光半導体リレー回路は、出力端子OUT1およびOUT2間に交流信号を通す状態が多く、出力端子OUT1およびOUT2間のオフ状態を保つために、双方向に逆阻止状態を保つ事が可能な構造とする必要が有るためである。
【0006】
受光素子PD1は、発光素子LED1からの光を受け電気信号に変換するフォトダイオードアレイを有する。この複数のフォトダイオードは、ノードC、E間に直列接続されている。
【0007】
放電回路10は、抵抗素子R1と、バイポーラトランジスタT1、T2と、ダイオードD1、D2とを有する。抵抗素子R1は、ノードC、E間に接続されている。ダイオードD1は、アノードがノードC、カソードがノードBに接続されている。ダイオードD2は、アノードがノードA、カソードがノードEに接続されている。バイポーラトランジスタT1は、pnpトランジスタである(以後、pnpトランジスタT1と称す)。pnpトランジスタT1は、エミッタがノードB、コレクタがノードE、ベースがノードCに接続されている。バイポーラトランジスタT2は、npnトランジスタである(以後、npnトランジスタT2と称す)。npnトランジスタT2は、コレクタがノードC、エミッタがノードA、ベースがノードEに接続されている。pnpトランジスタT1と、npnトランジスタT2は、サイリスタ11を構成している。放電回路10は、MOSトランジスタMN1、MN2のオフ動作を行うため、MOSトランジスタMN1、MN2のゲートに蓄積されたキャリアを迅速に放電する機能を有する。
【0008】
図5を用いて、このような光半導体リレー回路1の動作を説明する。なお、図5には、出力端子OUT1、OUT2間にDCバイアス電圧が印加された状態を示す。よって、出力端子OUT1、OUT2間が導通状態となった場合、DCバイアス電圧に応じた電圧が印加されることになる。
【0009】
まず、時刻t1に、入力端子IN1、IN2間に制御信号として電気信号が入力され、入力端子IN1、IN2間に電流が流れる。このため、発光素子LED1が発光する。この光は同じパッケージ内にある受光素子PD1に入力され、ノードC、E間に電圧を発生させる。このことにより、ノードA、B間に電圧が発生する。
【0010】
時刻t2に、ノードA、B間の電圧がMOSトランジスタMN1、MN2の閾値Vtnを超えるとMOSトランジスタMN1、MN2がオン状態となる。このことにより、出力端子OUT1、OUT2間が導通状態となる(以後、この状態をリレーターンオン状態と称す)。なお、このとき、放電回路10のサイリスタ11はオフ状態であり、放電動作を停止している。
【0011】
次に、時刻t3に、入力端子IN1、IN2間の電気信号が入力されなくなり、発光素子LED1への電流の供給が止まる。このため、受光素子PD1もノードC、E間に電圧を発生しなくなる。このとき、MOSトランジスタMN1およびMN2のゲートに蓄積された電荷が放電されようとする。しかし、ダイオードD1が逆方向に接続されているため、ダイオードD1およびサイリスタ11のリーク電流のみが放電される。
【0012】
一方、発光素子LED1の発光がなくなるため、受光素子PD1のフォトダイオードアレイは内部でキャリアの再結合が進行する。更に、抵抗素子R1を介したアノード電荷の放電が行われる。このため、フォトダイオードアレイのアノード電位、つまりノードCの電位はMOSトランジスタMN1およびMN2のゲート電位、つまりノードBの電位が低下する速度よりも速く低下する。
【0013】
ノードCとノードBとの電位差がサイリスタ11の閾値電圧を超えた時点でサイリスタ11がオン状態となる。よって、MOSトランジスタMN1およびMN2のゲートに蓄積された電荷がサイリスタ11を介して急速に放電される。時刻t4に、MOSトランジスタMN1およびMN2のゲート−ソース間電圧がMOSトランジスタの閾値電圧Vtnを下回る。このため、MOSトランジスタMN1およびMN2はオフ状態となる。これにより出力端子OUT1およびOUT2間が遮断される(以後、この状態をリレーターンオフ状態と称す)。
【0014】
このように、光半導体リレー回路1は、MOSトランジスタMN1およびMN2のゲートに蓄積された電荷の放電を放電回路10を介して行うため、オフ動作が速いという利点がある。
【特許文献1】特開2004−260047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
光半導体リレー回路1の放電回路10は、発光素子LED1の発光停止後、受光素子PD1のフォトダイオードアレイのアノード電位(ノードCの電位)が低下し、このアノード電位とMOSトランジスタMN1およびMN2のゲート電位(ノードBの電位)との電位差がサイリスタ11の閾値電圧以上になることで放電動作を開始する。しかし、この放電動作は、ノードBとCの電位差がサイリスタ11の閾値電圧、例えば約0.6Vを下回った時点で停止する。このため、リレーターンオフ状態においても、MOSトランジスタMN1およびMN2のゲート−ソース電極間にはサイリスタ11の閾値電圧程度、つまり約0.6Vの電圧が印加されたままの状態となる。このため、MOSトランジスタMN1およびMN2のゲート−ソース間が短絡された状態とオフリーク電流特性を同等とするためには、MOSトランジスタMN1およびMN2の閾値電圧Vtnをあらかじめサイリスタ11の閾値電圧、つまり0.6V程度高く設計しておく必要が生じる。しかし、これにはMOSトランジスタMN1およびMN2のオン抵抗特性が増加するという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様は、入力電気信号に応じて光信号を出力する発光素子と、前記光信号を電気信号に変換し、両端に電位差を生成する光電変換素子と、所定の閾値を有し、前記所定の閾値を超える前記光電変換素子が生成する電位差に応じて、出力状態を決定するスイッチング素子と、前記光電変換素子の両端に接続され、前記光電変換素子が生成する電位差を前記スイッチング素子に伝達する第1の経路および第2の経路と、前記光電変換素子の生成する電位差が所定の値まで低下した場合、前記第1の経路と前記第2の経路とを、導通する放電回路と、前記放電回路と前記スイッチング素子間に配置され、前記第1の経路と前記第2の経路との間に接続される第1の抵抗素子と、を有するリレー回路である。
【0017】
本発明の他の態様は、入力電気信号に応じて、第1の出力端子と第2の出力端子間の導通状態を制御するリレー回路であって、前記入力電気信号に応じて光信号を出力する発光素子と、前記光信号を電気信号に変換する光電変換素子と、前記第1の出力端子が一方の端子に接続され、前記第2の出力端子が他方の端子に接続され、制御端子と前記一方の端子間に印加される前記電気信号に応じた電圧により駆動されるトランジスタと、前記電気信号に応じた電圧が所定の値まで低下した場合、前記トランジスタの制御端子と一方の端子を導通するサイリスタを有する放電回路と、前記トランジスタの制御端子と一方の端子間に接続される第1の抵抗素子を有するリレー回路である。
【0018】
本発明にかかるリレー回路は、放電回路が、放電回路とスイッチング素子間にある第1の経路と第2の経路とが同電位になるまで導通できない場合であっても、第1の抵抗素子を通して導通させることできる。このことにより、当該リレー回路の出力段に低閾値電圧特性を有するスイッチング素子を使用できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、低オン抵抗特性のリレー回路を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発明の実施の形態1
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態1について、図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態1は、本発明を光半導体リレー回路に適用したものである。
【0021】
図1に本実施の形態にかかる光半導体リレー回路100の構成の一例を示す。ここで、本実施の形態1では、後述する出力端子OUT101、OUT102間にDCバイアス電圧が印加された場合を想定している。図1に示すように、光半導体リレー回路100は、入力端子IN101、IN102と、出力端子OUT101、OUT102と、発光素子LED101と、受光素子PD101と、放電回路110と、MOSFET(以後、MOSトランジスタと称す)MN101、MN102と、抵抗素子R102とを有する。
【0022】
発光素子LED101は、入力端子間IN101、IN102間に接続される。発光素子LED101は、発光ダイオード等で構成され、入力端子IN101、IN102間に制御信号として与えられる電気信号に応じて発光する。
【0023】
MOSトランジスタMN101、MN102は、NMOSトランジスタであり、出力端子OUT101、OUT102間に直列に接続される。MOSトランジスタMN101、MN102は、閾値電圧Vtnを有する。MOSトランジスタMN101、MN102は、ゲート−ソース間電位が閾値電圧Vtn以上になるとオン状態となり、出力端子OUT101、OUT102を導通するリレースイッチング素子としての機能を有する。
【0024】
MOSトランジスタMN101は、ドレインが出力端子OUT101、ソースがノードA、ゲートがノードBに接続される。また、ダイオードD103が、MOSトランジスタMN101に並列接続されている。ダイオードD103は、アノードがノードA、カソードが出力端子OUT101に接続されている。
【0025】
MOSトランジスタMN102は、ドレインが出力端子OUT102、ソースがノードA、ゲートがノードBに接続される。また、ダイオードD104が、MOSトランジスタMN102に並列接続されている。ダイオードD104は、アノードがノードA、カソードが出力端子OUT102に接続されている。
【0026】
このように、MOSトランジスタMN101、MN102は、ソース及びドレインが互いに逆方向に直列接続された構成となっている。これは、光半導体リレー回路が、出力端子OUT101およびOUT102間に交流信号を通す状態が多く、出力端子OUT101およびOUT102間のオフ状態を保つために、双方向に逆阻止状態を保つ事が可能な構造とする必要が有るためである。
【0027】
受光素子PD101は、発光素子LED101からの光を受け電気信号に変換する光電変換素子であり、複数のフォトダイオードからなるフォトダイオードアレイを有する。このフォトダイオードアレイを構成するフォトダイオードは、アノードがノードC側、カソードがノードE側になるように直列接続されている。
【0028】
放電回路110は、抵抗素子R101(第2の抵抗素子)と、バイポーラトランジスタT101、T102と、ダイオードD101、D102とを有する。抵抗素子R101は、ノードC、E間に接続されている。ダイオードD101は、アノードがノードC、カソードがノードBに接続されている。ダイオードD102は、アノードがノードA、カソードがノードEに接続されている。バイポーラトランジスタT101は、pnpトランジスタである(以後、pnpトランジスタT101と称す)。pnpトランジスタT101は、エミッタがノードB、コレクタがノードE、ベースがノードCに接続されている。バイポーラトランジスタT102は、npnトランジスタである(以後、npnトランジスタT102と称す)。npnトランジスタT102は、コレクタがノードC、エミッタがノードA、ベースがノードEに接続されている。pnpトランジスタT101と、npnトランジスタT102は、サイリスタ111を構成している。サイリスタ111の閾値電圧は、例えば約0.6V程度である。放電回路110は、MOSトランジスタMN101、MN102のオフ動作を行うため、MOSトランジスタMN101、MN102のゲートに蓄積されたキャリアを迅速に放電する機能を有する。
【0029】
ここで、受光素子PD101のアノード(ノードC)とMOSトランジスタMN101、MN102のゲート(ノードB)は、ダイオードD101を介して接続されており、この配線を第1の経路とする。また、MOSトランジスタMN101、MN102のソース(ノードA)と受光素子PD101のカソード(ノードE)は、ダイオードD102を介して接続されており、この配線を第2の経路とする。
【0030】
抵抗素子R102(第1の抵抗素子)は、ノードB、A間に接続される。抵抗素子R102の抵抗値は、受光素子PD101のフォトダイオードアレイのアノード電位の方が、MOSトランジスタMN101およびMN102のゲート電位が低下する速度が速くなるようにR102>R101となることが望ましい。また、これらの放電用の抵抗素子R101、R102は数MΩ〜数百MΩの高抵抗、例えば、R101=50MΩ、R102=30MΩを使用するため、抵抗挿入によるリレーターンオン時間への影響は極めて小さい。なお、便宜上、符号「R101」「R102」は、抵抗素子名を示すと同時に、それらの抵抗値を示すものとする。
【0031】
図2を用いて、このような光半導体リレー回路100の動作を説明する。なお、図2には、出力端子OUT101、OUT102間にDCバイアス電圧が印加された状態を示す。よって、出力端子OUT101、OUT102間が導通状態となった場合、出力端子OUT101、OUT102間にDCバイアス電圧に応じた電圧が印加されることになる。
【0032】
まず、時刻t1に、入力端子IN101、IN102間に制御信号として電気信号が入力され、入力端子IN101、IN102間に電流が流れる。このため、発光素子LED101が発光する。この光は同じパッケージ内にある受光素子PD101に入力され、ノードC、E間に電圧を発生させる。このことにより、ノードA、B間に電圧が発生する。
【0033】
時刻t2に、ノードA、B間の電圧がMOSトランジスタMN101、MN102の閾値Vtnを超えるとMOSトランジスタMN101、MN102がオン状態となる。このことにより、出力端子OUT101、OUT102間が導通状態となり、リレーターンオンの状態となる。なお、このとき、放電回路110のサイリスタ111はオフ状態であり、放電回路110は放電動作を停止している。
【0034】
次に、時刻t3に、入力端子IN101、IN102間の電気信号が入力されなくなり、発光素子LED101への電流の供給が止まる。このため、発光素子LED101の発光が停止し、受光素子PD101もノードC、E間に電圧を発生しなくなる。
【0035】
発光素子LED101の発光がなくなるため、受光素子PD101のフォトダイオードアレイは内部でキャリアの再結合が進行する。更に、抵抗素子R101を介したアノード電荷の放電が行われる。一方、MOSトランジスタMN101およびMN102のゲートに蓄積された電荷は、抵抗素子R101を介して放電が開始される。但し、フォトダイオードアレイのアノード電位、つまりノードCの電位の方がMOSトランジスタMN101およびMN102のゲート電位、つまりノードBの電位が低下する速度よりも速く低下する。
【0036】
ノードCとノードBとの電位差がサイリスタ111の閾値電圧を超えた時点でサイリスタ111がオン状態となる。よって、MOSトランジスタMN101およびMN102のゲートに蓄積された電荷がサイリスタ111を介して急速に放電される。時刻t4に、MOSトランジスタMN101およびMN102のゲート−ソース間電圧がMOSトランジスタの閾値電圧Vtnを下回る。このため、MOSトランジスタMN101およびMN102はオフ状態となる。これにより出力端子OUT101およびOUT102間が遮断され、リレーターンオフの状態となる。さらに、ノードCとノードBとの電位差がサイリスタ111の閾値電圧である約0.6Vを下回ると、サイリスタ111がオフ状態となる。しかし、サイリスタ111のターンオフ後も放電抵抗R102を介してMOSトランジスタMN101およびMN102のゲート電荷の放電が継続されるため、ゲート−ソース間電圧は、ほぼ接地電圧GND程度に低下する。
【0037】
ここで、従来の光半導体リレー回路1でも、リレーターンオフ動作の際、MOSトランジスタMN1およびMN2のゲートに蓄積された電荷はサイリスタ11を介して放電される。しかし、MOSトランジスタMN1およびMN2のゲート電位と受光素子PD1のフォトダイオードアレイのアノード電位との電位差がサイリスタ11の閾値電圧(約0.6V)を下回り、サイリスタがオフ状態となると、MOSトランジスタMN1およびMN2のゲートに蓄積されている電荷の放電経路は、MOSトランジスタのゲート酸化膜を介したゲート−ソース間リーク電流およびサイリスタ11を介したサイリスタオフリーク電流などの極めて微小なリーク電流経路しかなくなる。よって、ゲート電荷の放電がほとんど行われなくなり、MOSトランジスタMN1およびMN2のゲート−ソース電極間の電圧は、サイリスタ11の閾値電圧に近い電圧(約0.6V)が印加された状態を維持することになる。このため、リレーターンオフ時にはオフリーク電流の増大、リレーターンオン時にはオン抵抗特性の増大の要因となっていた。
【0038】
本実施の形態1の光半導体リレー回路100では、MOSトランジスタMN101およびMN102のオフリーク電流の増大あるいはオン抵抗特性の増大を引き起こす要因となっていた、サイリスタ111のターンオフ後のMOSトランジスタMN101およびMN102のゲート電荷の放電経路を確保するため、ゲート−ソース間(ノードB、A間)に放電抵抗R102を並列に接続している。このため、サイリスタ111のターンオフ後のMOSトランジスタMN101およびMN102のゲートの電荷の放電を可能とする。よって、オフリーク特性を増加させること無くMOSトランジスタMN101およびMN102の閾値電圧を低く設定する事が可能となる。このため、MOSトランジスタMN101およびMN102のオン抵抗特性の低減が可能となる。なお、抵抗素子R102を用いるにあたり、リレーターンオフ動作時の受光素子PD101のフォトダイオードアレイのアノード電位の低下速度に対し、MOSトランジスタMN101およびMN102のゲート電位の低下速度が上回らないように設計する必要がある。これは、MOSトランジスタMN101およびMN102のゲート電位の低下速度がフォトダイオードアレイのアノード電位の低下速度を上回ると、放電回路110のサイリスタ111が動作しなくなり、サイリスタ111のターンオフ時間が極端に遅くなるためである。
【0039】
発明の実施の形態2
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態2は、実施の形態1と同様、本発明を光半導体リレー回路に適用したものである。
【0040】
図3に本実施の形態にかかる光半導体リレー回路200の構成の一例を示す。図3に示すように、光半導体リレー回路200は、入力端子IN101、IN102と、出力端子OUT101、OUT102と、発光素子LED101と、受光素子PD101と、放電回路110と、MOSトランジスタMN101、MN102と、抵抗素子R102とを有する。なお、図に示された符号のうち、図1と同じ符号を付した構成は、図1と同じか又は類似の構成を示している。実施の形態1と異なる点は抵抗素子R101の接続の構成のみである。よって、本実施の形態2では、その部分を重点で気に説明を記載する。その他の構成は、実施の形態1の光半導体リレー回路100と同様であり、説明は省略する。
【0041】
抵抗素子R101は、ノードC、A間に接続される。なお、本実施の形態2の光半導体リレー回路200の動作波形は、図2と同様なため説明は省略する。
【0042】
本実施の形態2の光半導体リレー回路200は、抵抗素子R102およびR101をMOSトランジスタMN101およびMN102のソース、つまりノードAと短絡しているため、実施の形態1の光半導体リレー回路100と比較して、リレーターンオフ時のサイリスタ動作をより確実なものとする事が可能となる。
【0043】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものでなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施の形態1、2では、MOSトランジスタMN101およびMN102のゲートを共通にノードBに接続しているが、受光素子PD101および放電回路110を2系統用意し、これら2系統の回路により、それぞれMOSトランジスタMN101、MN102を個別に駆動してもよい。このような構成による光半導体リレー回路は、上述した実施の形態1、2での効果に加え、さらに高周波信号での動作が可能となる。
【0044】
また、実施の形態1、2では、2つのMOSトランジスタ(MOSトランジスタMN101、MN102)を有しているが、出力端子OUT101、OUT102間に接続されるMOSトランジスタを1つにしてもよい。また、MOSトランジスタをバイポーラトランジスタに置き換えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施の形態1にかかる光半導体リレー回路の構成の一例である。
【図2】実施の形態1にかかる光半導体リレー回路の動作波形を示す図である。
【図3】実施の形態2にかかる光半導体リレー回路の構成の一例である。
【図4】従来の光半導体リレー回路の構成の一例である。
【図5】従来の光半導体リレー回路の動作波形を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
100、200 光半導体リレー回路
110 放電回路
111 サイリスタ
IN101、IN102 入力端子
OUT101、OUT102 出力端子
LED101 発光素子
PD101 受光素子(フォトダイオードアレイ)
R101、R102 抵抗素子
D101〜D104 ダイオード
MN101、MN102 MOSトランジスタ
T101、T102 バイポーラトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電気信号に応じて光信号を出力する発光素子と、
前記光信号を電気信号に変換し、両端に電位差を生成する光電変換素子と、
所定の閾値を有し、前記所定の閾値を超える前記光電変換素子が生成する電位差に応じて、出力状態を決定するスイッチング素子と、
前記光電変換素子の両端に接続され、前記光電変換素子が生成する電位差を前記スイッチング素子に伝達する第1の経路および第2の経路と、
前記光電変換素子の生成する電位差が所定の値まで低下した場合、前記第1の経路と前記第2の経路とを導通する放電回路と、
前記放電回路と前記スイッチング素子間に配置され、前記第1の経路と前記第2の経路との間に接続される第1の抵抗素子と、
を有するリレー回路。
【請求項2】
前記スイッチング素子は、トランジスタを有し、
前記第1の経路が前記トランジスタの制御端子に接続され、
前記第2の経路が前記トランジスタの第1の端子に接続される
請求項1に記載のリレー回路。
【請求項3】
前記トランジスタは、MOS型トランジスタであり、
前記第1の経路が前記トランジスタのゲートに接続され、
前記第2の経路が前記トランジスタのソースに接続される
請求項2に記載のリレー回路。
【請求項4】
前記放電回路は、
前記第1の経路上に配置された第1のダイオードと、
前記第2の経路上に配置された第2のダイオードと、
アノードが前記第1のダイオードと前記スイッチング素子間の前記第1の経路、カソードが前記第2のダイオードと前記スイッチング素子間の前記第2の経路、第1のゲートが前記第1のダイオードと前記光電変換素子間の前記第1の経路、第2のゲートが前記第2のダイオードと前記光電変換素子間の前記第2の経路に接続される4端子サイリスタと、
一方の端子が前記第1のダイオードと前記光電変換素子間の前記第1の経路、他方の端子が前記第2のダイオードと前記光電変換素子間の前記第2の経路に接続される第2の抵抗素子と、を有する
請求項1〜請求項3に記載のリレー回路。
【請求項5】
前記放電回路は、
前記第1の経路上に配置された第1のダイオードと、
前記第2の経路上に配置された第2のダイオードと、
アノードが前記第1のダイオードと前記スイッチング素子間の前記第1の経路、カソードが前記第2のダイオードと前記スイッチング素子間の前記第2の経路、第1のゲートが前記第1のダイオードと前記光電変換素子間の前記第1の経路、第2のゲートが前記第2のダイオードと前記光電変換素子間の前記第2の経路に接続される4端子サイリスタと、
一方の端子が前記第1のダイオードと前記光電変換素子間の前記第1の経路、他方の端子が前記第2のダイオードと前記スイッチング素子間の前記第2の経路に接続される第2の抵抗素子と、を有する
請求項1〜請求項3に記載のリレー回路。
【請求項6】
前記第1の抵抗素子の抵抗値は、前記第2の抵抗素子の抵抗値より大きい
請求項4または請求項5に記載のリレー回路。
【請求項7】
入力電気信号に応じて、第1の出力端子と第2の出力端子間の導通状態を制御するリレー回路であって、
前記入力電気信号に応じて光信号を出力する発光素子と、
前記光信号を電気信号に変換する光電変換素子と、
前記第1の出力端子が一方の端子に接続され、前記第2の出力端子が他方の端子に接続され、制御端子と前記一方の端子間に印加される前記電気信号に応じた電圧により駆動されるトランジスタと、
前記電気信号に応じた電圧が所定の値まで低下した場合、前記トランジスタの制御端子と一方の端子を導通するサイリスタを有する放電回路と、
前記トランジスタの制御端子と一方の端子間に接続される第1の抵抗素子と、
を有するリレー回路。
【請求項8】
前記放電回路は、
アノードが前記光電変換素子の一方の端子、カソードが前記トランジスタの制御端子に接続される第1のダイオードと、
カソードが前記光電変換素子の他方の端子、アノードが前記トランジスタの一方の端子に接続される第2のダイオードと、
前記光電変換素子の一方の端子と他方の端子間に接続される第2の抵抗素子と、
を更に有し、
前記サイリスタは、4端子サイリスタであり、
アノードが前記トランジスタの制御端子に接続され、
カソードが前記トランジスタの一方の端子に接続され、
Nゲートが前記光電変換素子の一方の端子と接続され、
Pゲートが前記光電変換素子の他方の端子と接続される
請求項7に記載のリレー回路。
【請求項9】
前記放電回路は、
アノードが前記光電変換素子の一方の端子、カソードが前記トランジスタの制御端子に接続される第1のダイオードと、
カソードが前記光電変換素子の他方の端子、アノードが前記トランジスタの一方の端子に接続される第2のダイオードと、
前記光電変換素子の一方の端子と前記トランジスタの一方の端子間に接続される第2の抵抗素子と、
を更に有し、
前記サイリスタは、4端子サイリスタであり、
アノードが前記トランジスタの制御端子に接続され、
カソードが前記トランジスタの一方の端子に接続され、
Nゲートが前記光電変換素子の一方の端子と接続され、
Pゲートが前記光電変換素子の他方の端子と接続される
請求項7に記載のリレー回路。
【請求項10】
前記第1の抵抗素子の抵抗値は、前記第2の抵抗素子の抵抗値より大きい
請求項8または請求項9に記載のリレー回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−67663(P2010−67663A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230574(P2008−230574)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】