説明

リン含有化合物並びにその調製方法及び使用

【課題】リン含有ジフェノールから誘導されるポリアミド合成原料となる新規リン含有化合物とそれを用いたリン含有ポリアミドの提供。
【解決手段】下記式の一連の新規なリン含有化合物を合成し、さらに、これを用いてポリアミドも合成する。


(式中、R1〜R4は、水素原子、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルキル、C3〜C7シクロアルキル、−CF3、−OCF3、及びハロゲン原子から成る群よりそれぞれ選択され、Aは、−O−又は−OOC−であり、Qは、−NO2、−NH2などから成る群より選択され、mは、1〜4の整数である)。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
[0001]本発明は、リン含有化合物並びにその調製方法及び使用、特にリン含有ジフェノール(HPP)由来の化合物及びその調製方法に関する。さらにその誘導体をポリアミド及びポリイミドなどのポリマー材料の合成に使用することができる。
【0002】
[先行技術の説明]
[0002]伝統的に使用されている難燃性組成物は、一般的に難燃性材料、例えばハロゲン含有化合物、又は高耐熱性組成物を形成するための成分としてアンチモン若しくはバナジウムを含有する酸化剤を含み、これらの材料の使用は、深刻な環境汚染問題を引き起こすことが多い。例えば、臭素含有エポキシ樹脂は、特に難燃性電子材料に有用であるが、燃焼中に臭化水素、ジベンゾ−p−ジオキシン及びジベンゾフランなどの腐食性及び毒性物質を放出する。ハロゲン含有化合物に加え、別の難燃剤手法は、プラスチックの外側に追加の不燃性層をコーティングすることであり、効率の点でリン含有化合物が最も好ましい。例えば、リン含有化合物9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン10−オキシド(DOPO)は、ベンゾキノン[1]、オキシラン[2]、マレイン酸[3]、ビスマレイミド[4]、ジアミノベンゾフェノン[5〜6]、及びテレフタルジカルボキシアルデヒド[7]などの電子欠乏化合物と反応できる活性水素原子を有し、その誘導体は学界及び工業界から大きな注目を集めている。DOPOの誘導体は、エポキシ樹脂、ポリアミド又はポリイミドなどのポリマー材料の原材料として使用できる。
【0003】
[0003]台湾特許第498084号明細書は、リン含有ジフェノール(HPP)の合成方法を開示しており、DOPOとベンゾキノン[1]から合成される、より高価な非ハロゲンリン含有難燃剤(DOPOBQ)をより安価なHPPで置き換えることに成功している。この発明は、エポキシ樹脂、ポリアミド又はポリイミドなどのポリマー材料の原材料として使用できるHPP誘導体の合成方法をさらに開示している。HPP及びDOPOBQは下記構造を有する。
【化1】

【0004】
[0004]高分子量の通常の芳香族ポリイミドフィルムは、一般に靭性(tenacity)、可撓性、耐溶媒性、高ガラス転移温度(Tg)及びより良い熱安定性などの利点を有する。しかし、ポリイミドフィルムは、一般に黄色と琥珀色の間の色を有するので、高い光吸収作用を有する。電荷移動錯体(CTC)の形成がポリイミドフィルムの色を深くすると指摘している研究もある。かさ高い基を有する芳香族ジアミンの使用は、CTCの形成を効果的に低減でき、そのためポリイミドフィルムの色を淡くさせる。
【0005】
[0005]Varmaらは、ポリフェニレンオキシド(PPO)の構造を有するポリイミドを合成した[8]。しかし、組み込んだPPO基が十分にかさ高くはなかったので、効果的にCTCの形成を阻止できず、したがって、まだPPOを含有するポリイミドは暗すぎる色を有した。2001年に、Connellらは、PPO基を有する新規ジアミンを開発し[9]、原材料としてこのジアミン及び一連の二無水物を使用して、主鎖にリンを含有するポリイミドを合成した。しかし、このようにして調製されたポリイミドフィルムは、やや高いパリパリさ及び不良な機械的性質を有した。
【0006】
[0006]2002年に、Connellらは、側鎖にリンを含有する別の新規ジアミンを合成し[10]、このジアミン及び一連の二無水物を使用して、側鎖にリンを含有するポリイミドを合成した。側鎖でのかさ高いリン基の組み込みは明らかにCTCの形成を阻止したので、ポリイミドは淡色を有し、機械的性質については、ピロメリット酸二無水物(PMDA)以外の無水物で形成された全てのポリイミドは、靭性、より良い機械的性質及び212〜251℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有した。したがって、側鎖にリンを含有するポリイミドは、そのフィルムの色を低減することができる。
【0007】
[0007]本発明は、側鎖にリンを含有する新規ジアミンを合成し、このジアミン及び一連の二無水物又は二酸を使用して、より良い透明性を有し、且つ側鎖にリンを含有するポリアミド又はポリイミドを調製した。結果として生じたリン含有ポリマーは、フレキシブルプリント回路基板材料として使用できる。
【0008】
[0008]参考文献
[1] Wang,C.S.;Lin,C.H.Polymer 1999;40;747.
[2] Lin,C.H.;Wang,C.S.Polymer 2001,42,1869.
[3] Wang,C.S.;Lin,C.H.;Wu,C.Y.J.Appl.Polym.Sci.2000,78,228.
[4] Lin,C.H.;Wang,C.S.J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem.2000,38,2260.
[5] Liu,Y.L.;Tsai,S.H.Polymer 2002,43,5757.
[6] Wu,C.S.;Liu,Y.L.;Chiu,Y.S.Polymer 2002,43,1773.
[7] Liu,Y.L.;Wu,C.S.;Hsu,K.Y.;Chang,T.C.J.Polym.Sci.Part A:Polym Chem.2002,40,2329.
[8] Varma,K.;Rao,B.S.J Appl Polym Sci 1983,28,2805.
[9] Connell,J.W.;Watson,K.A.High Perform Polym 2001,13,23.
[10] Watson,K.A.;Palmeri,F.L.;Connell,J.W.Macromolecules 2002,35,4968.
【0009】
[発明の概要]
[0009]本発明は、下記化学式を有するリン含有化合物を提供する。
【化2】


(式中、
〜Rは、水素原子、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルキル、C〜Cシクロアルキル、−CF、−OCF、及びハロゲン原子から成る群よりそれぞれ選択され、
Aは、−O−又は
【化3】


であり、
Qは、−NO、−NH
【化4】


及び
【化5】


から成る群より選択され、
mは、1〜4の整数である。)
【0010】
[0010]本発明は、溶媒中、触媒の存在下で、式(II)の有機リン化合物を式(III)の化合物と反応させて式(I)の化合物を形成するステップを含む、式(I)の化合物の調製方法をも提供する。
【化6】


(式中、Bはハロゲン又は
【化7】


であり、Xはハロゲンであり、且つQは上記定義どおりである。)
【0011】
[0011]本発明は、式(PA)の化合物及びその調製方法をも提供する。本発明は、さらに式(PI)の化合物及びその調製方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】化合物HPP−AのH NMRスペクトルである。
【図2A】化合物HPP−Aの13C NMRスペクトルである。
【図2B】化合物HPP−Aの13C NMRスペクトルである。
【図3】化合物HPP−BのH NMRスペクトルである。
【図4A】化合物HPP−Bの13C NMRスペクトルである。
【図4B】化合物HPP−Bの13C NMRスペクトルである。
【図5】ポリマーHPP−PIのDSC分析図である。
【0013】
[詳細な説明]
[0017]本発明は、エポキシ樹脂、ポリアミド及びポリイミドなどのポリマー材料の原材料として使用でき、さらに難燃性材料で使用できる一連の新規リン含有化合物に関する。
【0014】
[0018]本発明は、下記化学式を有するリン含有化合物を提供する。
【化8】


(式中、
〜Rは、水素原子、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルキル、C〜Cシクロアルキル、−CF、−OCF、及びハロゲン原子から成る群よりそれぞれ選択され、
Aは、−O−又は
【化9】


であり、
Qは、−NO、−NH
【化10】


及び
【化11】


から成る群より選択され、
mは、1〜4の整数である。)
【0015】
[0019]R〜Rが水素原子であり、Aが−O−であり、且つQが−NOである場合、式(I)の化合物の一実施形態は、下記構造式を有し得る。
【化12】

【0016】
[0020]R〜Rが水素原子であり、Aが−O−であり、且つQが−NHである場合、式(I)の化合物の一実施形態は、下記構造式を有し得る。
【化13】

【0017】
[0021]R〜Rが水素原子であり、Aが
【化14】


であり、且つQが−NOである場合、式(I)の化合物の一実施形態は、下記構造式を有し得る。
【化15】

【0018】
[0022]R〜Rが水素原子であり、Aが
【化16】


であり、且つQが−NHである場合、式(I)の化合物の一実施形態は、下記構造式を有し得る。
【化17】

【0019】
[0023]R〜Rが水素原子であり、Aが−O−であり、且つQが
【化18】


である場合、式(I)の化合物の一実施形態は、下記構造式を有し得る。
【化19】

【0020】
[0024]R〜Rが水素原子であり、Aが−O−であり、且つQが
【化20】


である場合、式(I)の化合物の一実施形態は、下記構造式を有し得る。
【化21】

【0021】
[0025]R〜Rが水素原子であり、Aが
【化22】


であり、且つQが
【化23】


である場合、式(I)の化合物の一実施形態は、下記構造式を有し得る。
【化24】

【0022】
[0026]R〜Rが水素原子であり、Aが
【化25】


であり、且つQが
【化26】


である場合、式(I)の化合物の一実施形態は、下記構造式を有し得る。
【化27】

【0023】
[0027]本発明は、溶媒中、触媒の存在下で式(II)の有機リン化合物を式(III)の化合物と反応させて式(I)の化合物を形成するステップを含む、式(I)の化合物の調製方法をも提供する。
【化28】


(式中、Bはハロゲン又は
【化29】


であり、Xはハロゲンであり、且つQは上記定義どおりである。)
【0024】
[0028]R〜Rが水素原子である場合、上記方法は以下のステップ
(a)溶媒中、触媒の存在下で式(II)の有機リン化合物を、Bがハロゲンである式(III)の化合物と反応させて、Aが−O−であり、且つQが−NOである式(HPP−A)の化合物を形成するステップ、又は
(b)ステップ(a)を繰り返して、まず式(HPP−A)の化合物を生成した後、溶媒中での水素化によって生成物、すなわちAが−O−であり、且つQが−NHである式(HPP−B)の化合物を形成するステップ、又は
(c)溶媒中で式(II)の有機リン化合物を、Bが
【化30】


である式(III)の化合物と反応させて、Aが
【化31】


であり、且つQが−NOである式(HPP−C)の化合物を形成するステップ、又は
(d)ステップ(c)を繰り返して、まず式(HPP−C)の化合物を生成した後、溶媒中での水素化によって生成物、すなわちAが
【化32】


であり、且つQが−NHである式(HPP−D)の化合物を形成するステップ
を含む。
【0025】
[0029]本発明による方法は、さらに以下のステップ
(e)ステップ(b)の後、溶媒中で式(HPP−B)の化合物を無水マレイン酸と反応させて生成物、すなわちAが−O−であり、且つQが
【化33】


である式(HPP−E)の化合物を形成するステップ、又は
(f)ステップ(b)の後、溶媒中で式(HPP−B)の化合物をエピクロロヒドリンと反応させて生成物、すなわちAが−O−であり、且つQが
【化34】


である式(HPP−F)の化合物を形成するステップ、
(g)ステップ(d)の後、溶媒中で式(HPP−D)の化合物を無水マレイン酸と反応させて生成物、すなわちAが
【化35】


であり、且つQが
【化36】


である式(HPP−G)の化合物を形成するステップ、又は
(h)ステップ(d)の後、溶媒中で式(HPP−D)の化合物をエピクロロヒドリンと反応させて生成物、すなわちAが
【化37】


であり、且つQが
【化38】


である式(HPP−H)の化合物を形成するステップ
を含むことができる。
【0026】
[0030]本発明の方法では、例えば、ステップ(a)の式(III)の化合物が1−フルオロ−4−ニトロベンゼンであり、またステップ(c)の式(III)の化合物が4−ニトロベンゾイルクロリドである。
【0027】
[0031]本発明の方法では、ステップ(a)の触媒は、IA〜VIIA族の元素で形成された化合物から成る群より選択され、無機塩基及びハロゲン化物が好ましい。例えば、触媒は、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カリウム(KF)、塩化セシウム(CsCl)、塩化カリウム(KCl)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、水酸化カリウム(KOH)及び水酸化ナトリウム(NaOH)から成る群より選択される。
【0028】
[0032]本発明の方法では、各ステップで使用する溶媒は当技術分野で従来既知である。例えば、ステップ(a)で使用する溶媒はN−N−ジメチルアセトアミド(DMAc)であり、ステップ(b)及び(d)で使用する溶媒はジメチルホルムアミド(DMF)であり、ステップ(c)で使用する溶媒はテトラヒドロフラン(THF)である。
【0029】
[0033]別の態様では、本発明は、下記化学式
【化39】


(式中、A、R〜R及びmは上記定義どおりであり、Ar’は、
【化40】


から成る群より選択され、且つnは30〜300の整数である)
を有するリン含有ポリアミドを提供する。
【0030】
[0034]式(PA)のリン含有ポリアミドは、フレキシブルプリント回路基板材料として使用できる。
【0031】
[0035]Aが−O−であり、R〜Rが水素原子であり、且つAr’がフェニルである場合、上記式(PA)のポリアミドの一実施形態は、下記構造式を有し得る。
【化41】

【0032】
[0036]本発明は、溶媒中で式(I)の化合物を式(IV)
HOOC−Ar’COOH
(IV)
(式中、Ar’は、
【化42】


から成る群より選択される)
の二酸化合物と反応させて式(PA)のリン含有ポリアミドを生成するステップを含む、上記式(PA)のリン含有ポリアミドの調製方法を提供する。
【0033】
[0037]上記方法で使用する溶媒は、当技術分野で従来既知であり、例えば、N−メチル−ピロリドン(NMP)である。
【0034】
[0038]本発明による上記方法では、塩化カルシウム又は亜リン酸トリフェニル(TPP)を用いて重合を促進することができる。さらに、上記方法ではピリジンを用いて脱水を促進することもできる。
【0035】
[0039]本発明は、下記化学式
【化43】


(式中、A、R〜R及びmは上記定義どおりであり、Ar”は、
【化44】


から成る群より選択され、且つnは30〜300の整数である)
を有するリン含有ポリイミドをさらに提供する。
【0036】
[0040]式(PI)のリン含有ポリイミドは、フレキシブルプリント回路基板材料として使用できる。
【0037】
[0041]Aが−O−であり、R〜Rが水素原子であり、且つAr”が
【化45】


である場合、上記式(PI)のポリイミドの一実施形態は、下記構造式を有し得る。
【化46】

【0038】
[0042]本発明は、溶媒中で上記式(I)の化合物を式(V)
【化47】


(式中、Ar”は、
【化48】


から成る群より選択される)
の二無水化合物と反応させて式(PI)のリン含有ポリイミドを生成するステップを含む、上記式(PI)のリン含有ポリイミドの調製方法をも提供する。
【0039】
[0043]上記方法で使用する溶媒は、当技術分野で従来既知であり、例えば、m−クレゾールである。
【0040】
[0044]以下の実施形態を用いて本発明をさらに例示するが、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の精神から逸脱することなく、当業者によって達成されるいずれの修正及び変更も、本発明の範囲に包含される。
【0041】
[0045]上述した本発明の実施の特定の実施形態を下記スキーム1で表すことができる。
【化49】

【0042】
実施例1
化合物HPP−Aの合成
[0046]以下のステップを経て、溶媒中及び触媒の存在下で、出発材料リン含有ジフェノール(HPP)及び1−フルオロ−4−ニトロベンゼンからモノマーリン含有ジニトロベンゼンHPP−Aを合成した。
【0043】
[0047]8.2880g(0.02mol)のリン含有ジフェノール(HPP)、6.2085g(0.044mol)の1−フルオロ−4−ニトロベンゼン、2.9025g(0.021mol)の炭酸カリウム(KCO)及び80gのN−N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を250mlの反応器に添加した。
【0044】
[0048]次に、反応温度を80℃に上げ、撹拌しながら24時間反応を続けた。それから反応器を室温に冷却し、反応物を1000mlの飽和食塩水に滴下し、撹拌して淡黄色固体、すなわち化合物HPP−Aを沈殿させた。その後、合成された化合物HPP−Aをろ過し、多量の脱イオン水で洗浄し、真空オーブン内で80℃にて乾燥させて12.04gの生成物HPP−Aを92%の収率で得、それから無水酢酸で再結晶させて10.46gの淡黄色生成物を高純度で得た。収率は80%であり、融点は253℃である。化合物HPP−AのH NMR並びに13C NMRスペクトルは、それぞれ図1並びに2A及び2Bに示される。
【0045】
実施例2
化合物HPP−Bの合成
[0049]以下のステップを経て、溶媒DMF中及び触媒Pd/Cの存在下で、出発材料HPP−A及び水素からモノマーHPP−Bを合成した。
【0046】
[0050]まず6gのHPP−A、0.10gのPd/C及び50gのジメチルホルムアミド(DMF)を50mlのガラス反応器に添加して撹拌した。窒素で3回及び水素で3回パージ及び空にするステップを繰り返し、3.5kg/cmの制御圧力下で反応を12時間続けた。反応後、Pd/Cをろ別し、ろ液を500mlの飽和食塩水に滴下して化合物HPP−Bを沈殿させ、それから多量の脱イオン水で洗浄した。ろ過後、沈殿物を60℃で乾燥させると、重さ5.07g、収率93%だった。その後、加熱しながら沈殿物をメタノールに溶かし、熱いうちにろ過し、それから脱イオン水に注いで沈殿させて3.75gの白色生成物をより高い純度で得た。収率は74%であり、融点は104℃である。HPP−BのH NMR並びに13C NMRスペクトルは、それぞれ図3並びに4A及び4Bに示される。
【0047】
実施例3
化合物HPP−Cの合成
[0051]以下のステップを経て、化合物HPP−Cを合成した。
【0048】
[0052]41.00g(0.10mol)のHPP及び200mlのTHFを500mlの反応器に添加し、溶解するまで撹拌した。22.00g(0.22mol)のトリエチルアミンを加え、反応器を10℃に冷却し、それから41.00g(0.22mol)の4−ニトロベンゾイルクロリドを80mlのTHFに溶かし、供給漏斗に注ぎ、2時間でゆっくり反応器に滴下した。20℃の制御温度で2時間反応を続け、それから生成物をろ過し、氷酢酸で再結晶させて黄色のDOPO誘導体、HPP−Cを得た。
【0049】
実施例4
化合物HPP−Dの合成
[0053]以下のステップを経て、溶媒DMF中及び触媒Pd/Cの存在下で、出発材料HPP−C及び水素からモノマーHPP−Dを合成した。
【0050】
[0054]まず6gのHPP−C、0.10gのPd/C及び50gのDMFを50mlのガラス反応器に添加して撹拌した。窒素で3回及び水素で3回パージ及び空にするステップを繰り返し、7kg/cmの制御圧力下で反応を8時間続けた。反応後、Pd/Cをろ別し、ろ液を500mlの脱イオン水に滴下して化合物HPP−Dを沈殿させ、それからろ過し、100℃で乾燥させて純粋な白色生成物HPP−Dを得た。
【0051】
実施例5
化合物HPP−Eの合成
[0055]以下のステップを経て、化合物HPP−Eを合成した。
【0052】
[0056]29.83g(0.05mol)のHPP−B、9.81g(0.1mol)の無水マレイン酸及び200mlのアセトンを500mlの反応器に添加し、氷浴内で4時間反応させた。次に、50mlの無水酢及び8.50gの酢酸ナトリウムを添加し、60℃に温めて4時間反応させた後、減圧蒸留で溶媒を除去し、エタノールで沈殿させてからエタノールで再結晶させて純粋化合物HPP−Eを得た。
【0053】
実施例6
化合物HPP−Fの合成
[0057]以下のステップを経て、化合物HPP−Fを合成した。
【0054】
[0058]300gのHPP−B及び1000gのエピクロロヒドリンを3Lの反応器に添加し、常圧下で均質に混ざった溶液が形成されるまで撹拌した。190mmHgの絶対圧力下で反応温度を70℃に上げ、4時間49%の水酸化ナトリウム溶液80.20gを少しずつ加えながら、共沸蒸留によって反応器中の水を除去した。反応後、減圧蒸留でエピクロロヒドリンと溶媒を除去し、生成物をメチルエチルケトン及び脱イオン水に溶かし、樹脂中の塩化ナトリウムを水で洗い流し、それから減圧蒸留で溶媒を除去して淡黄色のエポキシ含有DOPO誘導体HPP−Fを217g/当量のエポキシ当量で得た。
【0055】
実施例7
ポリマーHPP−PAの合成
[0059]以下のステップを経て、ジアミンベースモノマー(HPP−B)でリン含有ポリアミドHPP−PAを合成した。
【0056】
[0060]0.7458g(1.25mmol)のジアミンモノマーHPP−B、0.2079g(1.25mmol)のテレフタルアミド酸、0.3gの塩化カルシウム(CaCl)、0.9mlの亜リン酸トリフェニル(TPP)、1.2mlのピリジン、及び5mlのN−メチル−ピロリドン(NMP)を、30分間窒素でパージした100mlの三つ口フラスコに添加して撹拌した。100℃の高温での4時間の反応後、反応を室温に冷却し、結果として生じたポリマー溶液を300mlのメタノールにゆっくり滴下して沈殿させた。生じた繊維状沈殿物をろ過し、メタノール及び熱水で洗浄し、収集し、150℃で乾燥させて0.8973gの生成物を得た。次に、合成されたポリエーテルアミドポリマーを約20%の固形分までDMAc又はNMPに溶解し、それからポリアミド溶液をコーターでガラス基材上にコーティングして、厚さ約45μmのフィルムを形成した。これを熱風循環オーブン内で80℃にて12時間加熱処理してほとんどの溶媒を除去し、それからさらに2時間200℃の高温で処理した。最後に、これを水に浸漬してガラス基材からHPP−PAフィルムを分離した。ガラス転移温度は、DSCで246℃と決定された。
【0057】
実施例8
ポリマーHPP−PIの合成
[0061]以下のステップを経て、モノマーHPP−Bでリン含有ポリイミドHPP−PIを合成した。
【0058】
[0062]0.8949g(1.5mmol)のジアミンモノマーHPP−B、0.4653g(1.5mmol)の4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)及び7.8gのm−クレゾールを100mlの三つ口フラスコ内で撹拌し、それから反応温度を200℃に上げ、反応を2時間続けた。次に反応物をメタノールに注いで沈殿させ、ろ過した後、生成物を熱メタノールで24時間洗浄し、ろ過し、100℃で乾燥させて1.2310gの生成物を得た。この乾燥生成物を約20%の固形分までDMFに溶解してからポリイミド溶液をコーターでガラス基材上にコーティングして、厚さ約20μmのフィルムを形成した。これを熱風循環オーブン内で80℃にて12時間加熱処理してほとんどの溶媒を除去し、それからさらに2時間200℃の高温で処理して淡色ポリイミドを得た。ガラス転移温度は、DSCで259℃と決定された。図5は、ポリマーHPP−PIのDSC分析図を示す。
【0059】
[0063]以下の請求項を用いて本発明の正当な範囲を定義する。当然のことながら、本発明の開示に基づいて当業者によって達成されるいずれの明白な修正も本発明の正当な範囲に包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)のリン含有化合物
【化1】


(式中、
〜Rは、水素原子、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルキル、C〜Cシクロアルキル、−CF、−OCF、及びハロゲン原子から成る群よりそれぞれ選択され、
Aは、−O−又は
【化2】


であり、
Qは、−NO、−NH
【化3】


及び
【化4】


から成る群より選択され、
mは、1〜4の整数である)。
【請求項2】
〜Rがそれぞれ水素原子であり、
(a)Aが−O−であり、且つQが−NOである場合、式(HPP−A)
【化5】


の化合物であり、
(b)Aが−O−であり、且つQが−NHである場合、式(HPP−B)
【化6】


の化合物であり、
(c)Aが
【化7】


であり、且つQが−NOである場合、式(HPP−C)
【化8】


の化合物であり、
(d)Aが
【化9】


であり、且つQが−NHである場合、式(HPP−D)
【化10】


の化合物であり、
(e)Aが−O−であり、且つQが
【化11】


である場合、式(HPP−E)
【化12】


の化合物であり、
(f)Aが−O−であり、且つQが
【化13】


である場合、式(HPP−F)
【化14】


の化合物であり、
(g)Aが、
【化15】


であり、且つQが
【化16】


である場合、式(HPP−G)
【化17】


の化合物であり、
(h)Aが
【化18】


であり、且つQが
【化19】


である場合、式(HPP−H)
【化20】


の化合物である、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
溶媒中、触媒の存在下で、式(II)の有機リン化合物を式(III)の化合物と反応させて式(I)の化合物を形成するステップを含む、請求項1に記載の式(I)の化合物の調製方法
【化21】


(式中、Bはハロゲン又は
【化22】


であり、Xはハロゲンであり、且つQは請求項1の定義どおりである)。
【請求項4】
〜Rがそれぞれ水素原子であり、以下のステップ
(a)溶媒中、触媒の存在下で、式(II)の有機リン化合物を、Bがハロゲンである式(III)の化合物と反応させて、Aが−O−であり、且つQが−NOである式(HPP−A)の化合物を形成するステップ、
(b)ステップ(a)を繰り返して、まず式(HPP−A)の化合物を生成した後、溶媒中での水素化によって生成物、すなわちAが−O−であり、且つQが−NHである式(HPP−B)の化合物を形成するステップ、
(c)溶媒中で式(II)の有機リン化合物を、Bが
【化23】


である式(III)の化合物と反応させて、Aが
【化24】


であり、且つQが−NOである式(HPP−C)の化合物を形成するステップ、又は
(d)ステップ(c)を繰り返して、まず式(HPP−C)の化合物を生成した後、溶媒中での水素化によって生成物、すなわちAが
【化25】


であり、且つQが−NHである式(HPP−D)の化合物を形成するステップ
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
さらに以下のステップ
(e)ステップ(b)の後、溶媒中で式(HPP−B)の化合物を無水マレイン酸と反応させて生成物、すなわちAが−O−であり、且つQが
【化26】


である式(HPP−E)の化合物を形成するステップ、
(f)ステップ(b)の後、溶媒中で式(HPP−B)の化合物をエピクロロヒドリンと反応させて生成物、すなわちAが−O−であり、且つQが
【化27】


である式(HPP−F)の化合物を形成するステップ、
(g)ステップ(d)の後、溶媒中で式(HPP−D)の化合物を無水マレイン酸と反応させて生成物、すなわちAが
【化28】


であり、且つQが
【化29】


である式(HPP−G)の化合物を形成するステップ、又は
(h)ステップ(d)の後、溶媒中で式(HPP−D)の化合物をエピクロロヒドリンと反応させて生成物、すなわちAが
【化30】


であり、且つQが
【化31】


である式(HPP−H)の化合物を形成するステップ
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)の式(III)の化合物が1−フルオロ−4−ニトロベンゼンである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(c)の式(III)の化合物が4−ニトロベンゾイルクロリドである、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a)の触媒が、IA〜VIIA族の元素で形成された化合物から成る群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カリウム(KF)、塩化セシウム(CsCl)、塩化カリウム(KCl)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、水酸化カリウム(KOH)及び水酸化ナトリウム(NaOH)から成る群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
一般式(PA):
【化32】


(式中、
A、R〜R及びmは請求項1の定義どおりであり、Ar’は、
【化33】


から成る群より選択され、且つnは30〜300の整数である)
のリン含有ポリアミド。
【請求項11】
Aが−O−であり、R〜Rが水素原子であり、且つAr’がフェニルである場合、式(HPP−PA)
【化34】


のリン含有ポリアミドである、請求項10に記載の式(PA)のリン含有ポリアミド。
【請求項12】
式(PA):
【化35】


(式中、
A、R〜R及びmは請求項1の定義どおりであり、Ar’は、
【化36】


から成る群より選択され、且つnは30〜300の整数である)
のリン含有ポリアミドの調製方法であって、
溶媒中で請求項1に記載の式(I)の化合物を式(IV)
HOOC−Ar’COOH
(IV)
(式中、Ar’が前記定義どおりである)
の二酸化合物と反応させて式(PA)のリン含有ポリアミドを生成するステップを含む方法。
【請求項13】
前記溶媒がN−メチル−ピロリドン(NMP)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記反応で塩化カルシウムを使用する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記反応で亜リン酸トリフェニル(TPP)を使用する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
請求項10に記載の式(PA)のリン含有ポリアミドの、フレキシブルプリント回路基板材料としての使用。
【請求項17】
一般式(PI)
【化37】


(式中、
A、R〜R及びmは請求項1の定義どおりであり、Ar”は、
【化38】


から成る群より選択され、且つnは30〜300の整数である)
のリン含有ポリイミド。
【請求項18】
Aが−O−であり、R〜Rが水素原子であり、且つAr”が、
【化39】


である場合、式(HPP−PI)
【化40】


のリン含有ポリイミドである、請求項17に記載の式(PI)のリン含有ポリイミド。
【請求項19】
式(PI)
【化41】


(式中、
A、R〜R及びmは請求項1の定義どおりであり、Ar”は、
【化42】


から成る群より選択され、且つnは30〜300の整数である)
のリン含有ポリイミドの調製方法であって、
溶媒中で請求項1に記載の式(I)の化合物を式(V)
【化43】


(式中、Ar”は前記定義どおりである)
の二無水化合物と反応させて式(PI)のリン含有ポリイミドを生成するステップを含む方法。
【請求項20】
請求項17に記載の式(PI)のリン含有ポリイミドの、フレキシブルプリント回路基板材料としての使用。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−59145(P2010−59145A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−157907(P2009−157907)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(509104584)長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司 (2)
【出願人】(506187511)國立中興大學 (12)
【Fターム(参考)】