説明

リードフレーム

【課題】ワイヤ等超音波ボンディング接合性を向上させることができるリードフレーム及びそれを用いた信頼性の高い半導体装置を提供すること。
【解決手段】アウターリード31から段差形成されたステッチ部32を有し、ステッチ部32の一部がアウターリード31側へ延在した、ステッチ部延在部32aを有するリードフレーム30及びそれを用いた半導体装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリードフレームに関し、特にワイヤボンディング性を向上したリードフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造に用いられるリードフレームは、チップ表面電極とインナーリード(以下、「ステッチ」という。)をワイヤで接続する際の容易性、ワイヤのエッジタッチ等の不具合を防止する目的でアイランドとステッチ間に高低差を設ける場合が多い。
【0003】
また、図6に示すように、ステッチをアウターリードに接続する際も途中に段差部(ディプレス形状)を設け、パッケージによって定まる高さにアウターリードを導出する場合がある(特許文献1)。
【0004】
特許文献2に記載の従来技術は、上記アイランドとステッチ間に高低差がある場合のワイヤボンディングに関するものである。図7に記載したこの従来技術によるステッチの固定は、リード端子A2(ステッチに相当)を押さえ体5の下面における押圧部7にて押さえ込み固定することが開示されている。これにより、ワイヤボンディング時に印加される超音波が逃げることなく有効に伝わり、良好なボンディング性が得られる。
【0005】
また、特許文献3に記載の、別の従来技術である図8に示すリードフレームは、アイランドとステッチ間の高低差に加え、ステッチとアウターリード間にも段差部(ディプレス形状)を設けている。この場合のステッチの固定は、ステッチを受け用クランプ治具上に戴置した状態でアウターリードを押え用クランプ治具で押下することで行なっている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−49184号公報
【特許文献2】特開平7−142529号公報
【特許文献3】特開2006−173284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図9は、ステッチとアウターリード間にも段差部を設けたリードフレームにおいて、発明者の知見に基づく課題を模式図で示した図である。図9(a)は、受け用クランプ治具35の上方突起部35aとその上方に配置されるステッチ部32の平面図及びD−Dでの断面図を示す。このような構造のリードフレーム30では、クランプ固定時にステッチ全体が浮くことを防止するため、設備側でステッチ部32のアップディプレス量より受け用クランプ治具35の高さを高くして上方突起部35aとし、ステッチ部32を支えている。なお、図9(a)に示す状態はリードフレーム30のステッチ部32が受け用クランプ治具35の上方突起部35aにまだ載置されていない状態である。
【0008】
しかしながら、この固定時に以下に示すような問題が発生する。即ち、押え用クランプ治具36によりアウターリード31にクランプ固定押圧力F1が加えられると、図9(b)に示すように、ディプレスリード33に引っ張られる力F2が加わり、これによりステッチ部先端部32bを持ち上げようとするF3方向の力が発生し、ステッチ部先端部32bの浮き上がりが発生する。その結果、ワイヤ等ボンディング時の超音波漏れが発生し、接合性が低下する。
【0009】
本発明の課題は、ワイヤ等超音波ボンディング接合性を向上させることができるリードフレーム及びそれを用いた信頼性の高い半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一視点において、本発明に係るリードフレームは、アウターリードから段差形成されたステッチ部を有し、ステッチ部の一部がアウターリード側へ延在した、ステッチ部延在部を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の他の視点において、本発明に係る半導体装置は、上記のリードフレームを含んで構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
ステッチ部延在部が受け用クランプ治具と協働することにより、クランプ固定時にディプレスリードが引っ張られる力を受けても、該延在部が引っ張る力を受け止めることからステッチ先端の浮き上がりを防止できる。これにより、ワイヤボンディング時の超音波漏れが発生せず、ワイヤボンディング接続性の低下を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
延在部は、アウターリードとステッチ部を接続するディプレスリードの間に少なくとも1つ、水平方向に延在することが好ましい。なお、延在部の形状、寸法、個数は特に制限されないが、あまり短いとクランプ時にディプレスリードが受ける引張力によるステッチ先端部の浮き上がりを抑止することができない。
【0014】
延在部は、延在部の先端部からさらに、アウターリードの下面の高さまで下方に延在する下方延在部を有することが好ましい。下方延在部は、垂直に形成されてもよいし、斜め方向に形成されていても良い。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の一実施例に係るリードフレーム30の部分鳥瞰図である。このリードフレーム30は、アウターリード31から上方にディプレスされたステッチ部(インナーリード)32を有し、ステッチ部32の一部がアウターリード31側に延在した複数の部分32aを有している。このステッチ部延在部32aはディプレスリード33の間に設けることが有利である。ディプレスリード33が受ける引張力に対抗するためである。
【0016】
なお、延在部32aの形状は必ずしも図示のように矩形でなくとも良い。またその大きさも特に限定されるものではなく、長いほうが引張力に対抗する意味では好ましいが、押え用クランプ等の他の部材との干渉の面からは短いほうが良く、ディプレスリード33の水平方向投影部程度の長さが好ましい。またその数も特に限定されないが、図示の実施例のようにディプレスリード33の間にそれぞれ1つずつ設けることが簡便で、かつ各ディプレスリード33からの引張力をそれぞれ支持する上で好ましい。
【0017】
図2は、図1に示すリードフレーム30を受け用クランプ治具35で支持した場合の部分鳥瞰図である。ステッチ部延在部32aの底面部を支持するように、ステッチ部延在部の受け用クランプ治具突起部35bを、各ステッチ部延在部32aに対応して設けている。なお、図2では分かりやすいように、受け用クランプ治具35の上方突起部35a及びステッチ部延在部32aの受け用クランプ治具突起部35bのみを図示した。
【0018】
この効果を図3により説明する。図3(a)は、本発明の一実施例に係るリードフレーム30と、受け用クランプ治具35の平面図、及びそのC−C断面図である。図3(a)ではリードフレーム30がまだ受け用クランプ治具35に載置されていない状態である。なお、図3(a)の平面図では、分かりやすいように受け用クランプ治具35のうち、上方突起部35a及びステッチ部延在部32aの受け用クランプ治具突起部35bのみを図示した。図3(b)は、リードフレーム30が受け用クランプ治具35に載置され、さらに押え用クランプ治具36により押圧力F1で固定された時の断面図である。
【0019】
各ステッチ部延在部32aの底面部を、ステッチ部延在部32aの受け用クランプ治具突起部35bで支持することにより、図3(b)に示すようにリードフレーム30を押え用クランプ治具36で固定する時に発生する、ディプレスリード33を下方へ引っ張る力F2を前記ステッチ部延在部32aで受けるように支持力F4が発生し、ステッチ部先端の浮き上がりが防止できる。
【0020】
図4は本発明に係るリードフレーム30を複数並べた平面図である。図5は、アイランド38にマウントした半導体チップ37の周囲に、本発明に係るリードフレーム30を配置した半導体装置の一実施例(平面図)と、そのA−A断面及びB−B断面図である(ボンディングワイヤは図示せず)。A−A断面図はステッチ部32とアウターリード31がディプレスリード33で接続されている部分の断面図、B−B断面図はステッチ部延在部32aを含む断面図である。
【0021】
また、図3に示すアウターリード31の押え用クランプ治具36の押下に加え、第2の押え用クランプ治具によって前記延在部32aを押下しても良い(図示せず)。これにより、リードフレーム30の製造ばらつきによって受け用クランプ治具35の高さよりもディプレス量が大きい場合が生じても、第2の押え用クランプ治具によって前記延在部32aを押下することでステッチ部32が受け用クランプ治具の上方突起部35aに密着するため、ワイヤ等ボンディング時の超音波漏れが発生せず、良好な接合性が得られる。
【0022】
また、ステッチ部延在部32aを、さらにその先端から下方にアウターリード下面まで延ばし、受け用クランプ治具35に接するようにすることもできる(図示せず)。これにより、ステッチ部延在部の受け用クランプ治具突起部35bを設けなくともステッチ部延在部32aが受け用クランプ治具35によって支持され、同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例に係るリードフレームの部分鳥瞰図である。
【図2】図1に示すリードフレームを受け用クランプ治具に載置した場合の部分鳥瞰図である。
【図3】(a)は、本発明の一実施例に係るリードフレームと、受け用クランプ治具の平面模式図及び断面模式図である。(b)は、リードフレームが押え用クランプ治具により固定された時の断面模式図である。
【図4】本発明の一実施例に係るリードフレームを複数並べた平面図である。
【図5】アイランドにマウントした半導体チップの周囲に、本発明の一実施例に係るリードフレームを配置した半導体装置の平面図及び断面図である。
【図6】段差部(ディプレス形状)を設けた従来技術のリードフレームである。
【図7】ステッチの固定方法を示す従来技術である。
【図8】ステッチとアウターリード間にも段差部(ディプレス形状)を設けた従来技術である。
【図9】(a)ステッチとアウターリード間にも段差部を設けたリードフレームと受け用クランプ治具の平面模式図及び断面模式図である。(b)(a)に示すリードフレームにおける課題を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0024】
30 リードフレーム
31 アウターリード
32 ステッチ部(インナーリード)
32a ステッチ部延在部
32b ステッチ部先端部
33 ディプレスリード
35 受け用クランプ治具
35a 受け用クランプ治具の上方突起部
35b ステッチ部延在部の受け用クランプ治具突起部
36 押え用クランプ治具
37 半導体チップ
38 アイランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターリードから段差形成されたステッチ部を有するリードフレームであって、該ステッチ部の一部が該アウターリード側へ延在した、ステッチ部延在部を有することを特徴とするリードフレーム。
【請求項2】
前記延在部は、前記アウターリードと前記ステッチ部を接続するディプレスリードの間に少なくとも1つ、水平方向に延在することを特徴とする、請求項1に記載のリードフレーム。
【請求項3】
前記延在部は、前記延在部の先端部からさらに、前記アウターリードの下面の高さまで下方に延在する下方延在部を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のリードフレーム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一に記載のリードフレームを含んで構成される半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−289969(P2009−289969A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140850(P2008−140850)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】