説明

リーフスプリング式懸架装置

【課題】 メインリーフとヘルパーリーフとの間に配置される中間リーフの長手方向変位を規制してヘルパーリーフクリップを確実に機能させるリーフスプリング式懸架装置を提供すること。
【解決手段】 メインリーフ11とヘルパーリーフ14との間に積層される中間リーフ12,13と、メインリーフ11および中間リーフ12,13を一体的に固定するメインリーフクリップ15と、ヘルパーリーフ14に一体的に固定されてメインリーフ11および中間リーフ12,13の幅方向への変位を規制するヘルパーリーフクリップ16とを含んで構成されるリーフスプリング10を備えた懸架装置において、メインリーフ11のアイ部11aから所定距離だけ離間した位置にて、メインリーフ11に対して変位不能に固定されて中間リーフ12,13の長手方向変位を規制するストッパ17を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の懸架装置に関し、特に、リーフスプリングを備えたリーフスプリング式懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に示された重ね板ばね用クリップは知られている。この従来の重ね板ばね用クリップは、板ばね間に配置されるクリップ本体と、このクリップ本体の両側部に形成されてばね板の側縁部に嵌合する側壁部と、クリップ本体の底部に形成されてばね板に形成した係止部(嵌合孔または凹部)に係合する突出部を備えるようになっている。このように構成された従来の重ね板ばね用クリップにおいては、ばね板に形成した係止部がクリップ本体に形成した突出部を係止することにより、ばね板間に生じるずれを防止するとともにクリップ自体の位置がずれることも防止するようになっている。
【0003】
また、従来から、例えば、下記特許文献2に示されたリーフスプリングのずれ防止構造も知られている。この従来のリーフスプリングのずれ防止構造は、ボルトまたはナットの一方を、第1リーフのリーフスプリング内側に位置する面に突設させるとともに、この突設させたボルトまたはナットが遊嵌可能な貫通孔を第1リーフ以外のリーフに設け、さらに、ボルトまたはナットの他方を、前記貫通孔の第1リーフとは逆側の開口部近傍に配置し、ボルトおよびナットを前記貫通孔を挟んだ状態で締結させるようになっている。このような従来のリーフスプリングのずれ防止構造においては、前記貫通孔とボルトナット間の間隙以上に各リーフが相互にずれることを防止することができる。また、このような従来のリーフスプリングのずれ防止構造においては、リーフスプリングの外側に位置する部材がボルト頭部やナットなどの小さな部材のみになるため、リーフスプリングの周囲に大きなスペースを必要としないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−77335号公報
【特許文献2】実開平1−180031号公報
【発明の概要】
【0005】
ところで、上記特許文献1に示された従来の重ね板ばね用クリップおよび特許文献2に示されたリーフスプリングのずれ防止構造においては、突出部(ボルトまたはナット)を係止することにより、通常時ではばね板間(第1リーフと第1リーフ以外のリーフ間)のずれを防止することができる。しかしながら、車体側に固定されるメインリーフと車軸側に固定されるヘルパーリーフ間に積層される中間リーフが、例えば、寿命により折損した場合には、中間リーフの折損部分がリーフスプリングの長手方向に変位する場合がある。
【0006】
この場合、図8(a)に示すように、例えば、折損部分がメインリーフクリップとともにメインリーフに設けられたアイ部に当接するまで大きく変位すると、折損部分の基端側が、通常時にリーフスプリングの幅方向への変位を規制するためにヘルパーリーフに固定されたヘルパーリーフクリップよりもアイ部側に位置するようになる。この状況においては、ヘルパーリーフクリップによる幅方向への規制が不能となり、図8(b)に示すように、例えば、折損部分が幅方向に変位(メインリーフクリップを中心として回転)する可能性がある。そして、折損部分が幅方向に変位して突出した状態で路面からの入力によって振動が発生すると、折損部分が周辺に配置された周辺部品と接触する可能性が高くなり、周辺部品を破損することが懸念される。
【0007】
この場合、ヘルパーリーフクリップを、例えば、メインリーフに設けられたアイ部方向に近づけて配置することが考えられる。しかし、ヘルパーリーフクリップは、ヘルパーリーフに一体的に固定されるものであり、ヘルパーリーフの長手方向長さに依存してその配置が決定されるものである。ここで、ヘルパーリーフの長手方向長さは、車両の操安性や乗り心地を確保するように決定されるものである。したがって、ヘルパーリーフクリップの配置を、言い換えれば、ヘルパーリーフの長手方向長さを変更することは容易ではない。
【0008】
本発明は、上記した問題に対処するためになされたものであり、その目的は、メインリーフとヘルパーリーフとの間に配置される中間リーフの長手方向への変位を規制して、ヘルパーリーフクリップを確実に機能させるリーフスプリング式懸架装置を提供することにある。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、車体側に配置されて前記車体に固定するためのアイ部を有するメインリーフと、車軸側に配置されたヘルパーリーフと、前記メインリーフと前記ヘルパーリーフとの間に配置される中間リーフと、前記メインリーフおよび前記中間リーフを一体的に固定するメインリーフクリップと、前記ヘルパーリーフに一体的に固定されて前記メインリーフおよび前記中間リーフの幅方向への変位を規制するヘルパーリーフクリップとを含んで構成されるリーフスプリングを備えたリーフスプリング式懸架装置において、前記メインリーフの前記アイ部から所定距離だけ離間した位置にて前記メインリーフに対して変位不能に固定されて、前記中間リーフの長手方向における変位を規制するストッパを設けたことにある。この場合、前記中間リーフは、例えば、複数設けられるものであり、前記複数の中間リーフが前記メインリーフと前記ヘルパーリーフとの間にて積層した状態で配置されるとよい。
【0010】
また、この場合、前記ストッパは、前記中間リーフが長手方向に変位したときに、変位した前記中間リーフの端面と当接して長手方向における変位を規制するとよい。また、これらの場合、前記メインリーフクリップは、前記中間リーフに対して一体的に固定されており、前記ストッパは、前記中間リーフが長手方向に変位したときに、前記中間リーフとともに一体的に変位したメインリーフクリップと当接して長手方向における変位を規制するとよい。
【0011】
これらによれば、メインリーフに変位不能に固定されたストッパは、例えば、中間リーフが折損し、中間リーフの折損部分がリーフスプリングの長手方向に変位する状況において、中間リーフ(折損部分)の変位(より詳しくは、メインリーフのアイ部方向への変位)を確実に規制することができる。この場合、ストッパは、変位する中間リーフの端面(すなわち折損部分の先端面)と当接することにより、中間リーフ(折損部分)の変位を確実に規制することができる。また、ストッパは、中間リーフに一体的に固定されたメインリーフクリップが折損部分と一体的に変位するときには、メインリーフクリップと当接することにより、中間リーフ(折損部分)の変位を確実に規制することができる。
【0012】
このように、ストッパが中間リーフ(すなわち折損部分)の長手方向への変位を規制することにより、折損部分およびメインリーフクリップがメインリーフのアイ部方向に大きく変位することを防止することができ、その結果、中間リーフの折損部分の基端側が、ヘルパーリーフクリップよりもアイ部側に位置することがない。したがって、ヘルパーリーフクリップは、中間リーフの折損部分の幅方向への変位を確実に規制することができ、折損部分が周辺部品を破損することを確実に防止することができる。
【0013】
また、メインリーフに対して変位不能に固定したストッパを設けて中間リーフの変位を規制することにより、ヘルパーリーフクリップの配置を変更する必要がない。すなわち、車両の操安性や乗り心地が確保できるように決定されたヘルパーリーフの長手方向長さを変更する必要がないため、車両の操安性や乗り心地を損なうことがない。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記ストッパが、前記メインリーフの外面との間に配置される充填部材を有することにもある。この場合、前記充填部材は、例えば、ゴム材料や樹脂材料であるとよい。
【0015】
これによれば、充填部材を設けることにより、メインリーフに対してストッパを密着させることができる。これにより、メインリーフに対してストッパを組み付ける際の傷つきを防止することができるとともに、例えば、泥水や塩水の浸入によってストッパの組み付け位置におけるメインリーフの錆腐食を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のリーフスプリング式懸架装置を形成するリーフスプリングの主要部の構成を概略的に示す概略図である。
【図2】図1のストッパの構成を説明するための概略図である。
【図3】(a),(b)は、図1の第1中間リーフが折損した場合におけるストッパの変位規制を説明するための図である。
【図4】(a),(b)は、図1の第2中間リーフが折損した場合におけるストッパの変位規制を説明するための図である。
【図5】本発明の変形例に係るストッパを説明するための概略図である。
【図6】本発明の変形例に係るストッパを説明するための概略図である。
【図7】本発明の変形例に係るストッパを説明するための概略図である。
【図8】(a),(b)は、従来のリーフスプリング式懸架装置において、中間リーフが折損した場合に折損部分が幅方向に変位することを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態に係るリーフスプリング式懸架装置を形成するリーフスプリング10の主要部の構成を概略的に示している。
【0018】
本実施形態に係るリーフスプリング10は、メインリーフ11、中間リーフとしての第1中間リーフ12および第2中間リーフ13と、ヘルパーリーフ14とを備えている。メインリーフ11は、その長手方向両端部に固定用のアイ部11a,11bを有している。そして、例えば、車両の前方側に配置されるアイ部11aは車体に形成されたスプリングブラケット(図示省略)に対してピン結合され、車両の後方側に配置されるアイ部11bはリーフスプリング10の撓みによるスパンの変化を逃がすためのシャックル(図示省略)を介して車体に組み付けられる。第1中間リーフ12および第2中間リーフ13は、それぞれ、異なる長さに設定されており、互いに積層された状態で、メインリーフ11とヘルパーリーフ14との間に配置される。
【0019】
また、リーフスプリング10は、メインリーフ11、第1中間リーフ12および第2中間リーフ13を積層状態により一体的に組み付けるためのメインリーフクリップ15と、メインリーフ11、第1中間リーフ12および第2中間リーフ13のリーフスプリング10の幅方向への変位を防止するヘルパーリーフクリップ16を備えている。メインリーフクリップ15は、断面略ロの字状に形成されるものであり、メインリーフ11、第1中間リーフ12および第2中間リーフ13を互いに固定するものである。そして、メインリーフクリップ15は、第2中間リーフ13に対して、例えば、リベット結合によって一体的に固着されており、メインリーフ11に対して変位可能に組み付けられる。ヘルパーリーフクリップ16は、断面略コの字状に形成されていて、ヘルパーリーフ14に対して、例えば、リベット結合によって一体的に固着されており、第1中間リーフ12および第2中間リーフ13のリーフスプリング10の幅方向への変位(ずれ)を防止するものである。
【0020】
また、本実施形態に係るリーフスプリング10は、図1に示すように、メインリーフ11に対して変位不能に固定されて組み付けられるストッパ17を備えている。ここで、ストッパ17がメインリーフ11に対して組み付けられる位置は、例えば、車両の懸架装置(サスペンション)がフルストロークする間に、メインリーフ11に形成したアイ部11aに接触しないように設定される。以下、ストッパ17を詳細に説明する。
【0021】
ストッパ17は、有限寿命部品である第1中間リーフ12および第2中間リーフ13が、例えば、長期間の使用によって折損する、すなわち、一次破損が生じたとき、折損部分がメインリーフ11のアイ部11aに向けて大きく変位することを規制するものである。このため、ストッパ17は、図2に示すように、例えば、メインリーフ11の上面側に組み付けられるストッパ本体17aとメインリーフ11の下面側に組み付けられるストッパ本体17bとを備えている。ストッパ本体17aおよびストッパ本体17bは、それぞれ、例えば、所定の金属材料から形成されるものであり、メインリーフ11の板厚方向にて所定量だけ突出する寸法(具体的には、第1中間リーフ12が折損した場合に折損部分の先端と当接可能な寸法)に形成されるとともに、メインリーフ11の幅方向にて所定量だけ突出する寸法(具体的には、第2中間リーフ13が折損した場合に折損部分とともに変位するメインリーフクリップ15と当接可能な寸法)に形成されている。さらに、ストッパ本体17aおよびストッパ本体17bの両端には、ボルトおよびナットによる締結を可能とする貫通孔17a1および貫通孔17b1がそれぞれ2か所ずつ形成されている。
【0022】
また、ストッパ17は、その内周面側、詳しくは、ストッパ本体17aおよびストッパ本体17bの内面とメインリーフ11の外面(外表面)との間に配置される充填部材としてのゴムグロメット17cを備えている。ゴムグロメット17cは、装着状態において、メインリーフ11の外面に密着するとともにストッパ17の内周面(より詳しくは、ストッパ本体17aおよびストッパ本体17bの内面)に密着する板厚寸法に形成されている。これにより、ゴムグロメット17cは、メインリーフ11に対してストッパ17を組み付ける際の傷つきを防止するとともに、例えば、泥水や塩水の浸入によってストッパ17の組み付け位置におけるメインリーフ11の錆腐食を防止するようになっている。
【0023】
ここで、ストッパ17は、以下のように、メインリーフ11に対して組み付けられる。すなわち、作業者は、ゴムグロメット17cをストッパ17の組み付け位置に巻き付けた後、ゴムグロメット17cを覆うようにストッパ本体17aおよびストッパ本体17bを仮組み付けする。そして、作業者は、ストッパ本体17aおよびストッパ本体17bに形成された貫通孔17a1および貫通孔17b1に対してボルトを挿通しナットを締め付けることにより、最終的にストッパ17をメインリーフ11の所定位置に組み付ける。このように、ストッパ17の組み付け作業は、極めて容易であるため、車両組み立て工場以外に、例えば、ディーラーなどにおいても特殊工具を使用することなく容易に組み付けることができる。
【0024】
このように構成されるリーフスプリング10は、図1に示すように、車両の車軸20に対して、例えば、U字ボルト21を用いて一体的に組み付けられる。これにより、車両の走行時において、路面から入力に伴って車軸20が車両上下方向に変位すると、この変位に対してリーフスプリング10が適切な弾発力を発生させることができ乗り心地を良好に確保することができる。また、リーフスプリング10が発生する弾発力を適宜調整することにより、車両の操安性を確保することができる。
【0025】
ところで、上記のように構成されるリーフスプリング10においては、メインリーフ11に対して変位不能にストッパ17を設けることができる。このようにストッパ17を設けることにより、長期間の使用によって有限寿命部品である第1中間リーフ12または第2中間リーフ13が折損した場合であっても、リーフスプリング10の周囲に配置される周辺部品を損傷することを効果的に防止することができる。
【0026】
具体的に説明すると、今、第1中間リーフ12が折損して一次破損が発生した場合を想定する。この場合、折損した第1中間リーフ12においては、図3(a)に示すように、例えば、路面からの入力に伴う振動によって、折損部分がメインリーフ11のアイ部11a方向に変位する場合がある。ところが、第1中間リーフ12の折損部分は、その先端側がメインリーフ11に組み付けられたストッパ17に当接するため、図3(b)に示すように、アイ部11a方向への変位が規制される。その結果、図3(b)に示すように、第1中間リーフ12の折損部分は、その基端側の側面がヘルパーリーフクリップ16と当接することよって、リーフスプリング10の幅方向への変位(回転)が規制される。すなわち、ヘルパーリーフクリップ16は、第1中間リーフ12が折損して一次破損が発生した状況であっても、折損部分がリーフスプリング10の幅方向に変位(回転)することを防止することができる。これにより、第1中間リーフ12が折損する一次破損が発生した場合であっても、折損部分がリーフスプリング10の幅方向に突出して、周辺部品に接触することがなく、周辺部品を破損する二次破損の発生を効果的に防止することができる。
【0027】
次に、第2中間リーフ13が折損して一次破損が発生した場合を想定する。この場合、第2中間リーフ13においては、先端近傍にメインリーフクリップ15が一体的に固着されているため、折損部分は、図4(a)に示すように、例えば、路面からの入力に伴う振動によって、メインリーフクリップ15とともにアイ部11a方向に変位する場合がある。ところが、メインリーフクリップ15は、メインリーフ11に組み付けられたストッパ17に当接するため、図4(b)に示すように、メインリーフクリップ15に一体的に固着された第2中間リーフ13の折損部分のアイ部11a方向への変位が規制される。その結果、図4(b)に示すように、第2中間リーフ13の折損部分は、その側面がヘルパーリーフクリップ16と当接することによって、リーフスプリング10の幅方向への変位(回転)が規制される。すなわち、ヘルパーリーフクリップ16は、第2中間リーフ13が折損して一次破損が発生した状況であっても、折損部分がリーフスプリング10の幅方向に変位(回転)することを防止することができる。これにより、第2中間リーフ13が折損する一次破損が発生した場合であっても、折損部分がリーフスプリング10の幅方向に突出して、周辺部品に接触することがなく、周辺部品を破損する二次破損の発生を効果的に防止することができる。
【0028】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0029】
例えば、上記実施形態においては、ストッパ17をメインリーフ11に組み付けることによるメインリーフ11への傷つきの防止と泥水や塩水の浸入による錆腐食の防止を目的として、ストッパ17がゴムグロメット17cを備えるように構成して実施した。この場合、ストッパ17がゴムグロメット17cを備えることに代えて、または、加えて、図5に示すように、ストッパ17の内周面とメインリーフ11の外表面との間に、充填部材として他のゴム材料(例えば、シリコンシーラントなど)や樹脂材料(例えば、エポキシ系接着剤(エポキシ樹脂)など)を充填して実施することも可能である。この場合であっても、ストッパ17をメインリーフ11に変位不能に組み付けることができる。そして、ストッパ17をメインリーフ11に組み付けることによって、メインリーフ11に傷がつくことを防止することができるとともに、メインリーフ11に泥水や塩水が浸入して錆腐食が発生することを防止することができる。
【0030】
また、上記実施形態においては、ストッパ17をメインリーフ11に対して変位不能に組み付ける際、二組のボルト・ナットを用いて上下2枚一対のストッパ本体17a,17bをメインリーフ11に固定するように実施した。この場合、より作業性を向上させるために、図6に示すように、例えば、ストッパ本体17aの一端側にボルトを挿通する挿通孔17a1を形成するとともに他端側に断面略L字状の係合爪17a2を形成し、ストッパ本体17bの一端側にボルトを挿通する挿通孔17b1を形成するとともに他端側にストッパ本体17aに形成された係合爪17a2を挿通して嵌合させるための嵌合孔17b2を形成して実施することも可能である。
【0031】
この場合においては、作業者は、まず、メインリーフ11におけるストッパ17の組み付け位置に対してゴムグロメット17cを巻き付け、ストッパ本体17aに形成した係合爪17a2をストッパ本体17bに形成した嵌合孔17b2に対して挿通して嵌合させてゴムグロメット17cを覆うようにメインリーフ11に仮組み付けする。続いて、作業者は、メインリーフ11に対して仮組み付けされたストッパ本体17aに形成された挿通孔17a1およびストッパ本体17bに形成された挿通孔17b1にボルトを挿通した後、ナットを締めつける。これにより、ストッパ17をメインリーフ11に対して変位不能に組み付けることができる。すなわち、この場合には、ストッパ17をメインリーフ11に対して変位不能に組み付ける際に、一組のボルト・ナットを用いて一つのナットを締めつけることで組み付け作業が完了するため、作業者による作業を簡略化することができて作業効率を大幅に向上させることができる。なお、この場合においても、上述したように、ゴムグロメット17cをメインリーフ11に対して巻き付けることに代えて、または、加えて、メインリーフ11に対して仮組み付けしたストッパ本体17aおよびストッパ本体17bの内面(すなわち、ストッパ17の内周面)とメインリーフ11の外面との間に、シリコンシーラントやエポキシ系接着剤(エポキシ樹脂)を充填して実施することも可能である。
【0032】
また、上記実施形態においては、第1中間リーフ12が一次破損した場合、その折損部分がストッパ17に対して、より具体的には、ストッパ17を構成するストッパ本体17a(またはストッパ本体17b)に対して、直接当接するように実施した。すなわち、上記実施形態においては、メインリーフ11に対して変位不能に組み付けられたストッパ本体17a(またはストッパ本体17b)がその組み付け位置にて第1中間リーフ12の折損部分と当接し、折損部分のアイ部11a方向への変位を規制するように実施した。
【0033】
この場合、例えば、図7に示すように、メインリーフ11の下面側に組み付けられるストッパ本体17b(またはストッパ本体17a)に対して、鉤状の当接腕部17b3(または当接腕部17a3)を形成し、この当接腕部17b3(当接腕部17a3)の先端部分と第1中間リーフ12の折損部分の先端部とが当接するように実施することも可能である。なお、図7においては、ストッパ本体17bに対して当接腕部17b3を形成した場合を例示的に示している。この場合、当接腕部17b3(当接腕部17a3)のストッパ本体17b(またはストッパ本体17a)に対する突出長さを適宜設定することにより、第1中間リーフ12の折損部分がメインリーフ11のアイ部11a方向に変位する変位量を調整することができるため、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0034】
また、上記実施形態においては、ストッパ17をメインリーフ11のアイ部11a側(すなわち、車両の前方側)にのみ設けて実施した。しかしながら、図1にて破線により示すように、ストッパ17をメインリーフ11のアイ部11b側(すなわち、車両の後方側)にもメインリーフ11に対して変位不能に設けて実施可能であることはいうまでもない。この場合においては、第1中間リーフ12または第2中間リーフ13が折損した場合、ストッパ17は折損部分がアイ部11b方向に変位することを規制することができるため、ヘルパーリーフクリップ16は折損部分がリーフスプリング10の幅方向に変位(回転)することを防止することができる。したがって、この場合においても、上記実施形態と同様に、折損部分がリーフスプリング10の幅方向に突出して、周辺部品に接触することがなく、周辺部品を破損する二次破損の発生を効果的に防止することができる。
【0035】
さらに、上記実施形態においては、中間リーフとして、第1中間リーフ12および第2中間リーフ13の複数(2枚)を設けて実施した。しかしながら、メインリーフ11とヘルパーリーフ14との間に中間リーフとして1枚の中間リーフを設けて実施可能であることはいうまでもない。この場合、1枚の中間リーフにメインリーフクリップ15が一体的に組み付けられることにより、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0036】
10…リーフスプリング、11…メインリーフ、12…第1中間リーフ、13…第2中間リーフ、14…ヘルパーリーフ、15…メインリーフクリップ、16…ヘルパーリーフクリップ、17…ストッパ、17a,17b…ストッパ本体、17c…ゴムグロメット、20…車軸、21…U字ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に配置されて前記車体に固定するためのアイ部を有するメインリーフと、車軸側に配置されたヘルパーリーフと、前記メインリーフと前記ヘルパーリーフとの間に配置される中間リーフと、前記メインリーフおよび前記中間リーフを一体的に固定するメインリーフクリップと、前記ヘルパーリーフに一体的に固定されて前記メインリーフおよび前記中間リーフの幅方向への変位を規制するヘルパーリーフクリップとを含んで構成されるリーフスプリングを備えたリーフスプリング式懸架装置において、
前記メインリーフの前記アイ部から所定距離だけ離間した位置にて前記メインリーフに対して変位不能に固定されて、前記中間リーフの長手方向における変位を規制するストッパを設けたことを特徴とするリーフスプリング式懸架装置。
【請求項2】
請求項1に記載したリーフスプリング式懸架装置において、
前記ストッパは、
前記中間リーフが長手方向に変位したときに、変位した前記中間リーフの端面と当接して長手方向における変位を規制することを特徴とするリーフスプリング式懸架装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したリーフスプリング式懸架装置において、
前記メインリーフクリップは、前記中間リーフに対して一体的に固定されており、
前記ストッパは、
前記中間リーフが長手方向に変位したときに、前記中間リーフとともに一体的に変位したメインリーフクリップと当接して長手方向における変位を規制することを特徴とするリーフスプリング式懸架装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか一つに記載したリーフスプリング式懸架装置において、
前記ストッパは、
前記メインリーフの外面との間に配置される充填部材を有することを特徴とするリーフスプリング式懸架装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4に記載したリーフスプリング式懸架装置において、
前記中間リーフは、複数設けられるものであり、
前記複数の中間リーフが前記メインリーフと前記ヘルパーリーフとの間にて積層した状態で配置されることを特徴とするリーフスプリング式懸架装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−67859(P2012−67859A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213874(P2010−213874)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】