説明

ルチン高含有そば茶飲料

【課題】ルチンを高濃度に含有する韃靼そば茶飲料において、韃靼そば特有の生臭さ、苦味及び後味の悪さ(ぬめり)が低減された、風味の良い韃靼そば茶飲料を提供すること。
【解決手段】40ppm以上のルチンと、10〜105ppbのインドールとを含有する飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度のルチンを含有し、かつ風味が良好な、ルチン高含有韃靼そば茶飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ルチンは、主としてエンジュの蕾、そばの実から抽出される淡黄色の天然物であり、天然色素としての利用を始め、ルチンの数々の薬効(生理活性)を機能性食品等の素材としての利用することが検討されている。ルチンの薬効としては、例えば1日常用量50〜150mgの投与によって血管補強作用を示すことが知られており、その他にも酸化防止作用、紫外線吸収作用、毛細血管拡張作用、血圧降下作用などが知られている。
【0003】
近年、健康志向の高まりから、特にルチンを高く含むそば茶飲料の開発が注目されている。そば茶飲料の原料としては、普通そば(甘蕎麦ともいわれる)、韃靼そば(苦蕎麦ともいわれる)等が知られているが、ルチンを豊富に含む原料としては、韃靼そばが好適に用いられる。しかしながら、韃靼そば(苦蕎麦ともいわれる)には、特有の苦味や後口の悪さ(ぬめり)を有するという問題がある。
【0004】
そば茶は、通常、そば茶原料となる穀粒を焙煎することで、香ばしい焙煎香とそば由来のまろやかですっきりとした味わいとを実現しているが、韃靼そばの場合、焙煎度を高めると、韃靼そば特有の苦味や後口の悪さをマスキングすることはできるが、ルチン等の機能性物質が低減してしまうことから、韃靼そばに甘蕎麦を配合し、その甘蕎麦の焙煎度を高めることで、香ばしい焙煎香を付与する手段がとられている。しかし、この場合、甘蕎麦由来の焙煎香に加えて、苦渋味や焦げ臭といった雑味も生じてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、韃靼そばの風味を改善する方法が報告されている。例えば、韃靼そばの実および/またはそば粉に、香ばしくなるまで焙煎した微粉末状または微細粒状の大豆および黒ゴマを混入することにより得られる、風味良好なそば茶(特許文献1)や、苦そば(韃靼そば)に茶葉を混合することにより、苦そばのえぐみを低減してまろやかですっきりした味のお茶(特許文献2)や、そば殻(外皮)を除去することなくそば種子を焙煎し、その後、焙煎した前記そば種子をそば殻と共に粉砕することで、すっきり感を向上させたそば茶飲料(特許文献3)や、韃靼そば茶原料を、脱塩水又は蒸留水と還元性物質とからなる、80〜100℃の温水により10〜30分かけて抽出する工程を含む製造方法により得られる、焦げ臭や雑味のない韃靼そば茶飲料(特許文献4)が挙げられる。また、脱穀したそば種子に適量のアミノ酸およびアミノ酸天然調味料を浸透添加し、アルファ化、乾燥したものを焙煎して、焙煎後の香ばしさを増強したそば茶飲料の製造方法(特許文献5)も提案されている。
【0006】
一方、インドールについては、オレンジやジャスミンなど多くの花に含まれる香気成分である。インドールは、加熱殺菌処理によって生ずるレトルト臭等の不快な加熱臭の要因となる香気成分として挙げられており(非特許文献1)、このインドールの発生を抑制した緑茶飲料の製造方法も開示されている(特許文献6)。
【特許文献1】特許第2972174号
【特許文献2】特開平11−137221号公報
【特許文献3】特開平10−313836号公報
【特許文献4】特許第3796362号
【特許文献5】特開2005−6569号公報
【特許文献6】特開2004−147606号公報
【非特許文献1】農芸化学会誌、Vol.63, No.1, pp.29-35, 1989
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、ルチンは様々な有用な作用を示すものであるが、ルチンを高濃度に含有する飲料(特に、常温以下で飲用される飲料)は、これまでほとんど知られていない。そこで、本発明者らは、韃靼そばの実の抽出物にルチンが高濃度に含まれることに着目し、この韃靼そばの実の抽出物を利用したルチン高含有飲料の開発に着手したところ、ルチンを高い濃度で含む場合では、韃靼そば特有の生臭さ、苦味及び後味の悪さ(ぬめり)があり、風味的に好ましくないものであることが判明した。
【0008】
本発明の課題は、機能性物質であるルチンを高濃度に含有する韃靼そば茶飲料において、韃靼そば特有の生臭さ、苦味及び後味の悪さ(ぬめり)が低減された、風味の良いルチン高含有韃靼そば茶飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、インドールが韃靼そば特有の香味を改善するのに有効であることを見出した。そして驚くべきことに、不快な加熱臭の要因となる香気成分として知られているインドールが、特定量のルチンを含有する飲料においては、加熱殺菌処理をしても不快臭を発生しないことを確認し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下のものに関する。
1.40ppm以上のルチンと10〜105ppbのインドールとを含有する韃靼そば茶飲料。
2.インドールが、植物抽出物として配合されたものである、1に記載の飲料。
3.さらに、20〜300ppbのベンズアルデヒドを含有する、1または2に記載の飲料。
4.ベンズアルデヒドが、植物抽出物として配合されたものである、3に記載の飲料。
5.植物抽出物が、そばの甘皮の抽出物である、2または4に記載の飲料。
6.容器詰飲料である、1〜5のいずれかに記載の飲料。
7.10〜105ppbのインドールを含有させることにより、40ppm以上のルチンを含有する韃靼そば茶飲料の呈味を改善する方法。
8.さらに、20〜300ppbのベンズアルデヒドを含有させる、7に記載の方法
【発明の効果】
【0011】
本発明により、機能性物質であるルチンを高濃度に含有する飲料が得られる。本発明の飲料は、常温以下の飲用であっても韃靼そば特有の風味の問題点が改善されるので、容器詰飲料の形態にして、長期に渡って日常的に摂取することで、健康維持等に役立てることができる。
【発明の実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、40ppm以上のルチンと、10〜105ppbのインドールとを含有する韃靼そば茶飲料に関する(なお、本明細書において、濃度(ppm、ppb)は質量に基づくものである)。
【0013】
本明細書でいうルチン(Rutin)とは、式(I):
【0014】
【化1】

【0015】
で示される化合物で、ルトサイド又はケルセチン−3−ルチノシドとも呼ばれる化合物である。
本発明で韃靼そば茶飲料とは、韃靼そばの実の抽出物を用いて製造される飲料を意味する。そして、本発明のルチンを高濃度で含有する韃靼そば茶飲料は、ルチンを含有する韃靼そばの実の抽出物、インドール(またはインドールを含む植物抽出物)及び任意の添加剤を用いて製造することができる。
【0016】
韃靼そばの実の抽出物は、適当な条件で焙煎、粉砕した韃靼そばの実を親水性溶媒で抽出することによって得ることができる。具体的には、例えば、韃靼そばの実から、浸漬抽出あるいはドリップ式等の製造設備にて、30〜100℃、好ましくは50〜98℃、より好ましくは70〜98℃の水などの抽出溶媒(水性溶媒)で、1〜60分、好ましくは5〜40分、より好ましくは10〜30分かけて抽出することによって、抽出物を得ることができる。本発明の飲料の製造においては、そのような抽出物をそのまま使用することができる。また、その抽出物の濃縮や乾燥を行なって濃縮エキス又は乾燥粉末の形態とした後、本発明の飲料の製造に用いることもできる。韃靼そばの実の抽出条件は、抽出物に少なくとも40ppm、または100ppm、または500ppm、のルチンが含まれるような条件とすることができる。ルチンの濃度は、公知のいずれかの方法により測定することができ、例えば後記実施例のように、高速液体クロマトグラフ法により測定することができる。
【0017】
本発明のルチン高含有の韃靼そば茶飲料は、上記のようなルチンを高濃度で含有しても風味を損なわないことを特徴とする。本発明者らの検討によると、韃靼そば特有の生臭さ、苦味及び後味の悪さ(ぬめり)が発現するのは、ルチンが40ppm以上(特に80ppm以上または100ppm以上)の飲料であった。韃靼そば特有の生臭さを消すには焙煎処理等を施す方法もあるが、ルチンが焙煎により減少するため、ルチン量を担保しながら、ルチン特有の好ましくない風味をマスキングする方法は、本発明によって初めて実現されるものである。
【0018】
本明細書でいうインドール(Indole)とは、式(II)
【0019】
【化2】

【0020】
で示されるベンゼン環とピロール環が縮合した構造をとる有機化合物で、別名2.3-ベンゾピロールと呼ばれる化合物である。本発明に用いるインドールは、その形態や製造方法等によって何ら制限されるものではなく、天然物、化学合成されたもの等、いずれのものも用いることができる。天然物のインドールとしては、オレンジ、ジャスミンの花、緑茶葉等から抽出して得る方法が例示される。また、本発明者らは、そばの実の甘皮部分の熱水抽出物に、インドールが極めて高濃度に含まれることを見出している。本発明のインドールとしては、このようなそばの実の甘皮部分の熱水抽出物も用いることができる。ここで、熱水とは80〜100℃の水をいう。
【0021】
インドールの合成品は、香水や香料として汎用されている。インドールの合成法としては、フェニルヒドラゾンを酸触媒下に加熱するとインドールが生成するフィッシャー(Fischer)の合成法が例示される。本発明のインドールとしてはこのような合成品を用いることもできるが、合成品のインドールは、主にエタノール、エーテル等の有機溶媒に可溶であることから、飲料として用いる際は、天然物(例えばそばの甘皮)の抽出物として用いることが好ましい。なお、インドールは、抽出物として添加してもよいし、香料として添加してもよい。
【0022】
上記したとおり、インドールとしてそばの実の甘皮抽出物を用いることが、本発明の好ましい態様の一つである。
インドールを含むそばの実の甘皮抽出物は、例えば、次のようにして製造することができる。そばの穀粒は、外側から、外皮(ソバガラ)、種皮(甘皮)、胚乳、胚芽、の順で構成されているので、まず、そばの穀粒から甘皮部分を多量に含む組成物を製造し、その甘皮部分を多く含む組成物を熱水で抽出することによって、インドールを含む甘皮抽出物を得ることができる。
【0023】
具体的には、まず、そばの穀粒(そばの実、玄そば)の外皮を除去した後、平均粒径が1.0〜3.0mm程度になるように粉砕する。そして、これを焙煎(例えば、150℃、10分)した後、篩により、20メッシュよりも小さいものを選別して甘皮部分を多量に含む組成物を得ることができる。また、甘皮部分を多量に含む組成物は、特公平6−71418号公報に記載の方法と同様にして得ることもできる。
【0024】
そして、このようにして得られた甘皮部分を多く含む組成物を熱水で抽出することによって、インドールを含む甘皮抽出物を得ることができる。抽出条件は適宜選択することができるが、例えば、浸漬抽出あるいはドリップ式等の製造設備にて、30〜100℃、好ましくは50〜98℃、より好ましくは70〜98℃の熱水で、1〜60分、好ましくは5〜40分、より好ましくは10〜30分かけて抽出を行うことができる。熱水に対する組成物の割合は、例えば、2〜20質量%、または3〜10質量%である。
【0025】
なお、甘皮抽出物の製造に用いるそばとしては特に制限はないが、普通そば(日本そばを含む)または韃靼そばを用いることが好ましく、特に普通そばを用いるのが好ましい。
このようにして製造することができるインドールを含むそばの実の甘皮抽出物は、抽出液のまま使用することができ、また、濃縮や乾燥を行って、濃縮エキスまたは乾燥粉末の形態で使用することもできる。
【0026】
本発明の韃靼そば茶飲料はまた、韃靼そばの実、甘皮部分を多く含む組成物、及び任意の他の材料、を混合して親水性溶媒で抽出することによって抽出物を得た後、その抽出物を用いて製造することもできる。甘皮部分を多く含む組成物は、混合物全体に対して、例えば、5重量%以下、または0.25〜5.0重量%、または0.5〜2.5重量%で用いることができる。
【0027】
40ppm以上(または80ppm以上、または100ppm以上)のルチンを含む韃靼そば茶飲料にインドールを添加することによって、韃靼そば特有の好ましくない風味(生臭さ、苦味、後味の悪さ(ぬめり))をマスキングすることができる。インドールの含有量は、10ppb以上あれば韃靼そば特有の後味の悪さ(ぬめり)を改善する効果を発揮する。特に、飲料中のインドール量が、15ppb以上となると、韃靼そば特有の風味(生っぽさ)をマスキングする効果を発揮するため、好ましくは15ppb以上含有するようにするとよい。インドールの添加量に応じて韃靼そば特有の好ましくない風味をマスキングする作用を発揮する。したがって、インドールの添加量に実質的上限はないが、添加量が多過ぎると、インドールが持つ花香やその他の香りが強くなり、飲料自体の呈味を損なうことがあるので、150ppb以下、120ppb以下、110ppb以下、または100ppb以下とするのがよい。
【0028】
本発明の飲料は、上記のとおり、40ppm以上(好ましくは80ppm以上又は100ppm以上)のルチンと、韃靼そば特有の好ましくない風味をマスキングする濃度(例えば5〜105ppb)のインドールとを含有することを特徴とする。本発明の飲料は、加熱殺菌処理を施しても不快な加熱臭等を発生しない。したがって、容器に充填して殺菌処理を行い、又は殺菌処理を行って容器に充填される容器詰飲料の形態にして、機能性飲料の形態で提供することができる。
【0029】
飲料の種類は、茶飲料、コーヒー飲料、果汁飲料、炭酸飲料、スポーツドリンク等何ら制限されるものではなく、本発明の飲料には、上記の韃靼そばの実の抽出物及びインドールの他、通常飲料に用いられる各種原料を用いることができる。なお、ルチンとして韃靼そばの熱水抽出物を用い、インドールとして甘皮の熱水抽出物を用いた場合、甘皮の熱水抽出物を用いていない場合と比較して、韃靼そば特有の好ましくない風味が抑制された、飲用しやすい韃靼そば茶飲料が得られている。
【0030】
さらに、本発明の飲料においては、ベンズアルデヒド(Benzaldehyde)を添加することで、韃靼そばの風味に対するインドールの呈味改善作用を相加的又は相乗的に高めることができる。ベンズアルデヒドは、アーモンド、杏仁の香り成分であり安価な香料として用いられているものである。本発明の飲料においては、このような天然から抽出したものや香料として用いられているものを利用してもよいが、本発明者らは、そばの実の甘皮抽出物にベンズアルデヒドが多く含まれていることを見出しており、そばの実の甘皮抽出物を利用することもできる。ベンズアルデヒドは、例えば、質量割合で20〜300ppb、または50〜100ppbの濃度となるように、飲料に添加することができる。
【実施例】
【0031】
以下、試験例および実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
試験例1.高濃度ルチンの風味(呈味)
そば茶原料である韃靼そば200g(平均粒径:1.6mm)を5Lの水(90℃)で抽出し、韃靼そば茶抽出液(Bx:0.339、ルチン濃度:580ppm)を得た。この韃靼そば茶抽出液に0.3重量%のL−アスコルビン酸及び0.3重量%の炭酸水素ナトリウムを添加し、さらに純水を添加してルチン濃度が250ppmとなるように調製し、その後、130℃で1分間殺菌して韃靼そば茶飲料を得た。この韃靼そば茶飲料を所定のルチン濃度になるように水で希釈して試料1〜5を調製し、それぞれの官能評価を実施した(試料の温度:12℃)。また、対象として純水を用い、同様に評価した。官能評価は、苦味と後味の悪さ(ぬめり)の項目について、それぞれ6段階評価;5点(強く感じる)、4点(かなり感じる)、3点(感じる)、2点(やや感じる)、1点(ほとんど感じない)、0点(感じない)で行い、平均値を算出した。なお、ルチン濃度は以下の方法により測定した。
<ルチンの測定方法>
(サンプルの前処理)
各試料2.0gをそれぞれ、2.5重量%濃度の酢酸を含有するメタノール溶液30mlに溶解させ、5分間超音波にかける。そして、同メタノール溶液を追加し、全量を50mlに調整する。
(高速液体クロマトグラフィー)
・カラム:Unison UK-C18(4.6mmφx15cm、インタクト株式会社)
・移動相:A:水:リン酸=1000:4
B:アセトニトリル
・流速:1.0ml/分
・カラム温度:40℃
・グラディエント条件;0分 A:B=90:10
10分 A:B=85:15
20分 A:B=70:30
25分 A:B=65:35
30分 A:B=50:50
30.01分 A:B=10:90
35分 A:B=10:90
・検出波長:360nm、ピーク面積で定量。
・注入量:10μL
・標準物質:ルチン(ナカライテスク株式会社製)
<官能評価>
結果を表1に示す。ルチン濃度が42ppm以上になると後味にぬめりを感じるようになり、250ppm以上では苦味も感じられるようになった。
【0032】
【表1】

【0033】
試験例2.そば茶抽出液
原料として、韃靼そば(平均粒径1.6mm)、普通そば(平均粒径1.4mm)と、甘皮を多く含む普通そばの細粒品を用いた。甘皮を多く含む普通そばの細粒品は、普通そばから、篩により、20メッシュよりも小さいものを選別して得たものである。細粒品の粒度分布は850μm以上:28.2%、850〜630μm:37.9%、630〜450μm:19.7%、450〜355μm:5.0%、355μm以下:9.2%であり、平均粒径は0.7mm、であった。
【0034】
それぞれの原料200gを5Lの水(90℃)で抽出し、それぞれのそば茶抽出液(抽出液1:韃靼そば、抽出液2:普通そば、抽出液3:甘皮を多く含む普通そばの細粒品)を得た。得られた3種類のそば茶抽出液についてGC−MSを用いて、インドール及びベンズアルデヒドの分析を行った。
<インドールおよびベンズアルデヒドの測定方法>
(サンプルの前処理)
各抽出液5mlを10ml容量のバイアル瓶に入れ、気相部に固相マイクロ抽出(SPME)ファイバーを挿入し、60℃下30分間加熱し、攪拌した後に、揮発した成分を捕集し、GC/MS測定に供した。
(GC/MS)
装置:GC(Agilent Technologies製 GC689ON)
MS(Agilent Technologies製 5975inert)
カラム:HP-1 0.32mmφx30mm(薄膜5μm)
SPMEファイバー:Supelco製 65μm PDMS/DVB
昇温条件:35℃で3分間保持後、10℃/分で250℃まで昇温し、250℃で10分間保持
注入口温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム1.7ml/分
注入方法:スプリットレス 3分
モニターイオン:ベンズアルデヒド(m/z=77、106)、インドール(m/z=90、117)
標準品:ベンズアルデヒド(和光純薬製 特級)、インドール(和光純薬製 特級)
<測定結果>
結果を図1に示す。図は、抽出液3に含まれるインドール及びベンズアルデヒドの濃度を100%としたときの相対値を示している。甘皮を多く含む普通そばの細粒品からの抽出液(抽出液3)には、インドール及びベンズアルデヒドが顕著に多く存在することが明らかとなった。
実施例1.インドールによるルチンの呈味改善作用
試験例1で製造した、ルチン濃度を125ppmに調製した韃靼そば茶飲料(試料4)に、インドール(和光純薬社製)の0.005重量%エタノール溶液を添加し、所定量のインドールを含む試料を調製し、官能評価を実施した(なお、韃靼そば茶飲料自体に5ppbのインドールが含まれているので、例えば、下記表2のインドール濃度5ppbの試料にはインドールの添加は行われていない)。官能評価は、生っぽさ(生臭さ)、後味の悪さ(ぬめり)及び苦味の3項目について、それぞれ試験例1と同様に6段階評価して平均値を算出した。
【0035】
結果を表2に示す。インドールを添加することで、後口の悪さ(ぬめり)が大きく改善された。飲料中のインドール濃度が10ppb以上では、後口の悪さ(ぬめり)の改善作用がみられ、インドールを25ppb添加した場合(飲料中のインドール濃度30ppb)には、ぬめりが感じられなくなった。また、飲料中のインドール濃度が、15ppb以上となると、韃靼そば特有の風味(生っぽさ)をマスキングする効果を発揮した。さらに、インドールを添加することで、なめらか、まろやか、やわらかい、甘みがあるといった感想が得られ、ルチン高含有飲料が有する生っぽさや苦味も改善されることがわかった。
【0036】
【表2】

【0037】
実施例2.そば茶飲料
試験例2で得られた抽出液1及び抽出液3を任意の割合で混合し、ルチン:125ppm、インドール:15ppb、ベンズアルデヒド:73ppbを含有する韃靼そば茶飲料を得た。得られた飲料の官能評価を12℃下で行ったところ、韃靼そば特有の生臭さ、苦味及び後味の悪さ(ぬめり)が低減された、風味の良い飲料であった。
【0038】
また、この飲料に、0.3重量%のL−アスコルビン酸及び0.3重量%の炭酸水素ナトリウムを添加した後、殺菌(140℃、15秒)し、500mLペットボトルに充填して容器詰飲料を得た。この茶飲料についても官能評価を12℃下で実施したところ、韃靼そば特有の生臭さ、苦味及び後味の悪さ(ぬめり)が低減された、風味の良い飲料であった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】そば茶抽出液に含まれるインドール及びベンズアルデヒドの相対割合を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
40ppm以上のルチンと10〜105ppbのインドールとを含有する韃靼そば茶飲料。
【請求項2】
インドールが、植物抽出物として配合されたものである、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
さらに、20〜300ppbのベンズアルデヒドを含有する、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
ベンズアルデヒドが、植物抽出物として配合されたものである、請求項3に記載の飲料。
【請求項5】
植物抽出物が、そばの甘皮の抽出物である、請求項2または4に記載の飲料。
【請求項6】
容器詰飲料である、請求項1〜5のいずれかに記載の飲料。
【請求項7】
10〜105ppbのインドールを含有させることにより、40ppm以上のルチンを含有する韃靼そば茶飲料の呈味を改善する方法。
【請求項8】
さらに、20〜300ppbのベンズアルデヒドを含有させる、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−171856(P2009−171856A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11005(P2008−11005)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【Fターム(参考)】