説明

レジスト下層膜形成方法及びそれに用いるレジスト下層膜用組成物並びにパターン形成方法

【課題】反射防止膜としての機能を有するとともに、パターン転写性能及びエッチング耐性に優れ、微細化したパターンの転写時においてもパターンが曲がらないレジスト下層膜形成方法及びそれに用いるレジスト下層膜用組成物並びにパターン形成方法を提供することである。
【解決手段】本レジスト下層膜形成方法は、レジスト下層膜用組成物(例えば、フェノール性水酸基を有する化合物、溶剤及び促進剤を含有する組成物等)を被加工基板に塗布する塗布工程と、得られた塗膜を、酸素濃度が1容量%以上、且つ温度が300℃以上の酸化性雰囲気下において成膜させる成膜工程と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の放射線を用いるリソグラフィープロセスにおける微細加工、特に高集積回路素子の製造に好適なレジスト下層膜形成方法及びそれに用いるレジスト下層膜用組成物並びにパターン形成方法に関する。更に詳しくは、反射防止膜としての機能を有するとともに、パターン転写性能及びエッチング耐性が良好なレジスト下層膜を形成でき、微細化したパターン転写時においてもパターンが曲がらないレジスト下層膜形成方法及びそれに用いるレジスト下層膜用組成物並びにパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子の製造方法においては、より高い集積度を得るために、多層レジストプロセスを用いる加工サイズの微細化が進んでいる。このプロセスにおいては、まず液状のレジスト下層膜用組成物を基板上に塗布したのち、液状のフォトレジスト組成物を更に塗布する。次いで、縮小投影露光装置(ステッパー)によってマスクパターンを転写し、適当な現像液で現像することによりフォトレジストパターンを得る。その後、ドライエッチングによりこのパターンをレジスト下層膜に転写する。そして、最後にドライエッチングによりレジスト下層膜パターンを基板に転写することにより、所望のパターン付き基板を得ることができる。この際、レジスト下層膜を1種類用いる多層プロセスについては、2層レジストプロセスと呼ばれ、レジスト下層膜を2種類用いる場合には、3層レジストプロセスと呼ばれる。
一般にレジスト下層膜は、基板から反射した放射線を吸収する反射防止膜としての機能を有する。また、一般に基板直上のレジスト下層膜は炭素含有量の多い材料が用いられる。炭素含有量が多いと基板加工時のエッチング耐性が向上し、より正確なパターン転写が可能となる。このようなレジスト下層膜としては、特に熱硬化フェノールノボラックがよく知られている。また、アセナフチレン骨格を有する重合体を含有する組成物がレジスト下層膜として良好な特性を示すことが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−143937号公報
【特許文献2】特開2001−40293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、エッチングパターンの更なる微細化に伴い、レジスト下層膜のオーバーエッチングが大きな問題となり、精密なパターン転写性能及びエッチング耐性の向上が求められている。特に、微細なパターン転写時において、レジスト下層膜をフォトマスクとして、基板加工する際に、レジスト下層膜のパターンが曲がらないことが求められている。
本発明の課題は、反射防止膜としての機能を有するとともに、パターン転写性能及びエッチング耐性が良好なレジスト下層膜を形成することができ、微細化したパターン転写時においてもパターンが曲がらないレジスト下層膜形成方法及びそれに用いるレジスト下層膜用組成物並びにパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、レジスト下層膜用組成物により得られた塗膜を、酸化性雰囲気下において成膜させることで、エッチング耐性及びパターン転写性能に優れ、且つ精密なパターン転写の際においても下層膜のパターンが曲がらないレジスト下層膜を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、以下の通りである。
[1]レジスト下層膜用組成物を被加工基板に塗布する塗布工程と、
得られた塗膜を、酸素濃度が1容量%以上、且つ温度が300℃以上の酸化性雰囲気下において成膜させる成膜工程と、を備えることを特徴とするレジスト下層膜形成方法。
[2]前記レジスト下層膜用組成物は、フェノール性水酸基を有する化合物、及び溶剤を含有する前記[1]に記載のレジスト下層膜形成方法。
[3]前記レジスト下層膜用組成物は、更に、促進剤として、(a)第3〜第11族元素及び第13〜第15族元素から選ばれる金属元素を含む金属化合物、(b)過酸化物、(c)ジアゾ化合物、(d)ハロゲン又はハロゲン酸から選ばれる少なくとも1種を含有する前記[2]に記載のレジスト下層膜形成方法。
[4]前記促進剤における(b)過酸化物として、過酸、過酸化ジアシル、過酸エステル、過酸ケタール、ペルオキシ二炭酸塩、過酸化ジアルキル、過酸化ケトン及びアルキルヒドロキシペルオキシドから選ばれる過酸化物を少なくとも1種含む前記[3]に記載のレジスト下層膜形成方法。
[5]前記促進剤における(c)ジアゾ化合物として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを含む前記[3]に記載のレジスト下層膜形成方法。
[6]前記促進剤における(a)金属化合物として、セリウム、鉛、銀、マンガン、オスミウム、ルテニウム、バナジウム、タリウム、銅、鉄、ビスマス及びニッケルから選ばれる金属元素を含む金属化合物を少なくとも1種含む前記[3]に記載のレジスト下層膜形成方法。
[7]前記促進剤における(d)ハロゲン又はハロゲン酸として、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン、過ハロゲン酸、ハロゲン酸、亜ハロゲン酸及び次亜ハロゲン酸から選ばれる化合物もしくはその塩を少なくとも1種含む前記[3]に記載のレジスト下層膜形成方法。
[8](1)前記[1]乃至[7]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成方法により、被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程と、(2)レジスト組成物溶液を用いて、前記レジスト下層膜の上にレジスト被膜を形成する工程と、(3)前記レジスト被膜の所用領域に放射線を照射し、露光する工程と、(4)露光されたレジスト被膜を現像し、レジストパターンを形成する工程と、(5)前記レジストパターンをマスクとし、ドライエッチング法を用いて前記レジスト下層膜及び前記被加工基板を加工する工程と、を備えることを特徴とするパターン形成方法。
[9]フェノール性水酸基を有する化合物と、溶剤と、促進剤と、を含有しており、
前記促進剤として、(a)第3〜第11族元素及び第13〜第15族元素から選ばれる金属元素を含む金属化合物、(b)過酸化物、(c)ジアゾ化合物、(d)ハロゲン又はハロゲン酸から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とするレジスト下層膜用組成物。
[10]前記促進剤における(b)過酸化物として、過酸、過酸化ジアシル、過酸エステル、過酸ケタール、ペルオキシ二炭酸塩、過酸化ジアルキル、過酸化ケトン及びアルキルヒドロキシペルオキシドから選ばれる過酸化物を少なくとも1種含む前記[9]に記載のレジスト下層膜用組成物。
[11]前記促進剤における(c)ジアゾ化合物として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを含む前記[9]に記載のレジスト下層膜用組成物。
[12]前記促進剤における(a)金属化合物として、セリウム、鉛、銀、マンガン、オスミウム、ルテニウム、バナジウム、タリウム、銅、鉄、ビスマス及びニッケルから選ばれる金属元素を含む金属化合物を少なくとも1種含む前記[9]に記載のレジスト下層膜用組成物。
[13]前記促進剤における(d)ハロゲン又はハロゲン酸として、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン、過ハロゲン酸、ハロゲン酸、亜ハロゲン酸及び次亜ハロゲン酸から選ばれる化合物もしくはその塩を少なくとも1種含む前記[9]に記載のレジスト下層膜用組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明のレジスト下層膜の形成方法によれば、反射防止膜としての機能を有するとともに、パターン転写性能及びエッチング耐性に優れ、微細化したパターン転写時においてもパターンが曲がらないレジスト下層膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[1]レジスト下層膜形成方法
本発明のレジスト下層膜形成方法は、レジスト下層膜用組成物を被加工基板に塗布する塗布工程と、得られた塗膜を、酸化性雰囲気下において成膜させる成膜工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
〔1−1〕塗布工程
前記塗布工程では、被加工基板上にレジスト下層膜用組成物が塗布され、塗膜が形成される。
前記被加工基板としては、例えば、シリコンウエハー、アルミニウムで被覆したウエハー等を使用することができる。
また、被加工基板へのレジスト下層膜用組成物の塗布方法は特に限定されず、例えば、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の方法で実施することができる。
【0010】
<レジスト下層膜用組成物>
また、前記レジスト下層膜用組成物としては、通常、樹脂等の化合物(樹脂でないものを含む)と、この化合物を溶解する溶剤と、を含む液状の組成物が用いられる。
【0011】
(A)化合物
前記化合物としては、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物等(以下、「化合物(A)」ともいう。)を挙げることができる。
フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノールの誘導体、カリックスアレーン系化合物、及びカリックスアレーン系化合物の誘導体等が挙げられる。尚、これらの化合物(A)は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0012】
前記ノボラック樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ビスフェノールA、パラターシャリーブチルフェノール、パラオクチルフェノール等のフェノール類、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロナフタレン、2,7−ジヒドロナフタレン等のナフトール類からなる群より選ばれた一種或いは二種以上のフェノール性化合物とホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、フルフリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド等のアルデヒド源となる1種以上のアルデヒド類とを酸性触媒を用いて反応させて得られる樹脂等が挙げられる。
また、前記レゾール樹脂の具体例としては、前記フェノール性化合物とアルデヒド類とをアルカリ性触媒を用いて反応させて得られる樹脂等が挙げられる。
【0013】
前記ポリビニルフェノール及びその誘導体としては、例えば、下記一般式(1)で記載される重合体を挙げることができる。
【0014】
【化1】

〔一般式(1)において、Mはラジカル重合性モノマーを示し、mは正の数であり、nは0又は正の数であって、5≦m+n≦200、m/(m+n)≧0.5の関係を満たす。尚、OHの結合部位は、主鎖に対してパラ、オルト及びメタ位のいずれかである。〕
【0015】
共重合成分である前記ラジカル重合性モノマーMとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド等のアクリル系モノマー、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、無水マレイン酸、酢酸ビニル、ビニルピリジン等の種々の重合性不飽和結合を有する化合物が挙げられる。
このラジカル重合性モノマーMは、重合体中50モル%未満であることが好ましい。
【0016】
また、これらポリビニルフェノール系の重合体は商業的に入手でき、例えば、丸善石油化学製の「マルカリンカーM」(ポリ−p−ビニルフェノール)、「リンカーMB」(臭素化ポリ−p−ビニルフェノール)、「リンカーCMM」(p−ビニルフェノール/メタクリル酸メチル共重合体)、「リンカーCHM」(p−ビニルフェノール/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体)、「リンカーCST」(p−ビニルフェノール/スチレン共重合体)等が挙げられる。
【0017】
前記カリックスアレーン系化合物及びその誘導体としては、例えば、下記一般式(2)で記載される化合物を挙げることができる。
【0018】
【化2】

〔一般式(2)において、各Rは相互に独立に、水素原子、置換若しくは非置換の鎖状構造の1価の酸解離性基、又は、置換若しくは非置換の鎖状構造の1価の熱分解性基である。但し、少なくとも1つのRは、置換又は非置換の鎖状構造の1価の酸解離性基である。各Xは相互に独立に、炭素数1〜8の置換又は非置換のアルキレン基であり、各Yは相互に独立に、炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルキル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルキニル基、炭素数7〜10の置換若しくは非置換のアラルキル基、炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のフェノキシ基である。qは相互に独立に0又は1である。〕
【0019】
前記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、2−ブチルレゾルシノール等のフェノール類からなる群より選ばれる1種或いは2種以上のフェノール性化合物と、1,5−ペンタンジアール、1,7−ヘプタンジアール、1,9−ノナンジアール、1,10−デカンジアール等のジアルデヒド化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を縮合反応させて得られる化合物等が挙げられる。
【0020】
前記縮合反応の条件(方法)は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができるが、例えば、酸触媒等の触媒の存在下、60〜90℃で12〜50時間反応させる方法等を挙げることができる。
【0021】
前記酸解離性基及び熱分解性基は、それぞれ、酸及び熱の作用によって解離するものである限り特に限定されないが、例えば、tert−ブトキシカルボニル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基等が挙げられる。
また、前記一般式(2)におけるRの全量を100モル%とした場合、酸解離性基及び熱分解性基の割合の合計は、10〜90モル%であることが好ましい。これらの合計が10モル%未満の場合、前記カリックスアレーン系化合物の溶解性が著しく低下し、所定の膜厚の下層膜を形成することができないおそれがある。
【0022】
(B)溶剤
本発明におけるレジスト下層膜用組成物は、前記化合物(A)を溶解する溶剤(以下、「溶剤(B)」という。)を含有するものであり、通常、液状の組成物である。
この溶剤(B)としては、化合物(A)を溶解しうるものであれば特に限定されず、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のトリエチレングリコールジアルキルエーテル類;
【0023】
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエテルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
【0024】
乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸i−プロピル、乳酸n−ブチル、乳酸i−ブチル等の乳酸エステル類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸n−プロピル、ギ酸i−プロピル、ギ酸n−ブチル、ギ酸i−ブチル、ギ酸n−アミル、ギ酸i−アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸i−アミル、酢酸n−ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸i−プロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、酪酸i−ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;
【0025】
ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類等が挙げられる。
【0026】
これらの溶剤(B)のうち、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、酢酸n−ブチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン等が好ましい。尚、これらの溶剤(B)は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0027】
また、溶剤(B)の使用量は、得られるレジスト下層膜用組成物の固形分濃度が、通常、5〜80質量%、好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは10〜30質量%となる範囲である。
【0028】
また、本発明におけるレジスト下層膜用組成物には、所期の効果を損なわない限り、必要に応じて、(C)促進剤、(D)酸発生剤、(E)架橋剤、及び、バインダー樹脂、放射線吸収剤、界面活性剤等の各種の(F)添加剤を配合することができ、特に、(C)促進剤を配合することが好ましい。
【0029】
(C)促進剤
前記促進剤(C)は、後述する成膜工程において、脱水素反応を促進させることができる助剤である。具体的には、一電子酸化剤等が挙げられる。
一電子酸化剤とは、それ自身が1電子移動を受ける酸化剤を意味する。例えば、硝酸セリウム(IV)アンモニウムの場合では、セリウムイオン(IV)が一電子を得てセリウムイオン(III)へと変化する。また、ハロゲン等のラジカル性の酸化剤は、一電子を得てアニオンへと転化する。このように、一電子を被酸化物(基質や触媒等)から奪うことにより、被酸化物を酸化する現象を一電子酸化と称し、このとき一電子を受け取る成分を一電子酸化剤という。
【0030】
前記一電子酸化剤の代表的な例としては、(a)金属化合物、(b)過酸化物、(c)ジアゾ化合物、(d)ハロゲン又はハロゲン酸等が挙げられる。
前記(a)金属化合物としては、第3〜第11族元素[旧IIIA族、IVA族、VA族、VIA族、VIIA族、VIII族及びIB族元素(遷移元素)]、並びに第13〜第15族元素(旧IIIB族、IVB族及びVB族)から選ばれる金属元素等を含む金属化合物が挙げられる。例えば、セリウム、鉛、銀、マンガン、オスミウム、ルテニウム、バナジウム、タリウム、銅、鉄、ビスマス、ニッケルを含む金属化合物が挙げられる。具体的には、(a1)硝酸セリウム(IV)アンモニウム(CAN;ヘキサニトラトセリウム(IV)酸アンモニウム)、酢酸セリウム(IV)、硝酸セリウム(IV)、硫酸セリウム(IV)等のセリウム塩(例えば、四価のセリウム塩)、(a2)四酢酸鉛、酸化鉛(IV)等の鉛化合物(例えば、四価の鉛化合物)、(a3)酸化銀(I)、酸化銀(II)、炭酸銀(Fetizon試薬)、硝酸銀等の銀化合物、(a4)過マンガン酸塩、活性二酸化マンガン、マンガン(III)塩等のマンガン化合物、(a5)四酸化オスミウム等のオスミウム化合物、(a6)四酸化ルテニウム等のルテニウム化合物、(a7)VOCl、VOF、V、NHVO、NaVO等のバナジウム化合物、(a8)酢酸タリウム(III)、トリフルオロ酢酸タリウム(III)、硝酸タリウム(III)等のタリウム化合物、(a9)酢酸銅(II)、銅(II)トリフルオロメタンスルホネート、銅(II)トリフルオロボレート、塩化銅(II)、酢酸銅(I)等の銅化合物、(a10)塩化鉄(III)、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム等の鉄化合物、(a11)ビスマス酸ナトリウム等のビスマス化合物、(a12)過酸化ニッケル等のニッケル化合物等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0031】
前記(b)過酸化物としては、例えば、過酢酸、m−クロロ過安息香酸等の過酸、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロキシペルオキシド類、過酸化ジアシル、過酸エステル、過酸ケタール、ペルオキシ二炭酸塩、過酸化ジアルキル、過酸ケトン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
前記(c)ジアゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
前記(d)ハロゲン又はハロゲン酸としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンや、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンから選ばれる、過ハロゲン酸、ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、次亜ハロゲン酸、及びこれらの塩等が挙げられる。具体的なハロゲン酸の塩としては、過塩素酸ナトリウム、臭素酸ナトリム等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0032】
前記の一電子酸化剤のなかでも、(b)過酸化物、(c)ジアゾ化合物が好ましく、特に、m−クロロ過安息香酸、t−ブチルヒドロペルオキシド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルが好ましい。これらを用いた場合には、基板上に金属残留物等が付着するおそれがないので好ましい。
また、本発明におけるレジスト下層膜用組成物においては、前記促進剤(C)を2種以上含有するものとすることができる。特に、前記(a)金属化合物及び(b)過酸化物のうちから選ばれる一電子酸化剤を2種以上含有するものとすることができる。
【0033】
前記促進剤(C)の配合量は、化合物(A)100質量部に対して、通常、1,000質量部以下、好ましくは0.01〜500質量部、更に好ましくは0.1〜100質量部である。
【0034】
(D)酸発生剤
本発明におけるレジスト下層膜用組成物には、所期の効果を損なわない限り、必要に応じて、酸発生剤〔以下、「酸発生剤(D)」ともいう。〕を含有させることができる。
この酸発生剤(D)は、露光或いは加熱により酸を発生する成分である。露光により酸を発生する酸発生剤(以下、「光酸発生剤」という。)としては、例えば、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムナフタレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムナフタレンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムナフタレンスルホネート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−ヒドロキシフェニル・フェニル・メチルスルホニウムp−トルエンスルホネート、4−ヒドロキシフェニル・ベンジル・メチルスルホニウムp−トルエンスルホネート、
【0035】
シクロヘキシル・メチル・2−オキソシクロヘキシルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2−オキソシクロヘキシルジシクロヘキシルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2−オキソシクロヘキシルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シアノ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シアノ−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ニトロ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ニトロ−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メチル−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メチル−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0036】
1−(4−ヒドロキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−メトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−エトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−メトキシメトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−エトキシメトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−〔4−(1−メトキシエトキシ)ナフタレン−1−イル〕テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−〔4−(2−メトキシエトキシ)ナフタレン−1−イル〕テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−メトキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−エトキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−プロポキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0037】
1−(4−i−プロポキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−t−ブトキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−〔4−(2−テトラヒドロフラニルオキシ)ナフタレン−1−イル〕テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−〔4−(2−テトラヒドロピラニルオキシ)ナフタレン−1−イル〕テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−ベンジルオキシ)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート等のオニウム塩系光酸発生剤類;
【0038】
フェニルビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−メトキシフェニルビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−ナフチルビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン含有化合物系光酸発生剤類;1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニルクロリド、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロリド、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等のジアゾケトン化合物系光酸発生剤類;4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタン等のスルホン化合物系光酸発生剤類;ベンゾイントシレート、ピロガロールのトリス(トリフルオロメタンスルホネート)、ニトロベンジル−9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネート、トリフルオロメタンスルホニルビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフルオロメタンスルホネート等のスルホン酸化合物系光酸発生剤類等が挙げられる。
【0039】
これらの光酸発生剤のなかでも、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムナフタレンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムナフタレンスルホネート等が好ましい。尚、これらの光酸発生剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0040】
また、加熱により酸を発生する酸発生剤(以下、「熱酸発生剤」という。)としては、例えば、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2−ニトロベンジルトシレート、アルキルスルホネート類等が挙げられる。これらの熱酸発生剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
尚、酸発生剤(D)として、光酸発生剤と熱酸発生剤とを併用することもできる。
【0041】
酸発生剤(D)の配合量は、化合物(A)100質量部に対して、通常、5000質量部以下、好ましくは0.1〜1000質量部、更に好ましくは0.1〜100質量部である。
本発明のレジスト下層膜用組成物は、光酸発生剤及び/又は熱酸発生剤を含有させることで、常温を含む比較的低温で各重合体の分子鎖間に有効に架橋反応を生起させることができる。
【0042】
(E)架橋剤
本発明におけるレジスト下層膜用組成物には、所期の効果を損なわない限り、必要に応じて、架橋剤〔以下、「架橋剤(E)」ともいう。〕を含有させることができる。この架橋剤(E)は、得られるレジスト下層膜と、その上に形成されるレジスト被膜との間のインターミキシングを防止し、更にはレジスト下層膜におけるクラックの発生を防止する作用を有する成分である。
【0043】
このような架橋剤としては、多核フェノール類や、種々の市販の硬化剤を使用することができる。
前記多核フェノール類としては、例えば、4,4’−ビフェニルジオール、4,4’−メチレンビスフェノール、4,4’−エチリデンビスフェノール、ビスフェノールA等の2核フェノール類;4,4’,4’’−メチリデントリスフェノール、4,4’−[1−〔4−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}フェニル〕エチリデン]ビスフェノール等の3核フェノール類;ノボラック等のポリフェノール類等が挙げられる。これらのなかでも、4,4’−[1−〔4−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}フェニル〕エチリデン]ビスフェノール、ノボラック等が好ましい。尚、これらの多核フェノール類は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0044】
また、前記硬化剤としては、例えば、2,3−トリレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナート、3,4−トリレンジイソシアナート、3,5−トリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、1,4−シクロヘキサンジイソシアナート等のジイソシアナート類や、以下商品名で、エピコート812、同815、同826、同828、同834、同836、同871、同1001、同1004、同1007、同1009、同1031〔以上、油化シェルエポキシ(株)製〕、アラルダイト6600、同6700、同6800、同502、同6071、同6084、同6097、同6099〔以上、チバガイギー社製〕、DER331、同332、同333、同661、同644、同667〔以上、ダウケミカル社製〕等のエポキシ化合物;サイメル300、同301、同303、同350、同370、同771、同325、同327、同703、同712、同701、同272、同202、マイコート506、同508〔以上、三井サイアナミッド(株)製〕等のメラミン系硬化剤;サイメル1123、同1123−10、同1128、マイコート102、同105、同106、同130〔以上、三井サイアナミッド(株)製〕等のベンゾグアナミン系硬化剤;サイメル1170、同1172〔以上、三井サイアナミッド(株)製〕、ニカラックN−2702〔三和ケミカル(株)製〕等のグリコールウリル系硬化剤等が挙げられる。これらのなかでも、メラミン系硬化剤、グリコールウリル系硬化剤等が好ましい。尚、これらの硬化剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、架橋剤(E)として、多核フェノール類と硬化剤とを併用することもできる。
【0045】
架橋剤(E)の配合量は、化合物(A)100質量部に対して、通常、5,000質量部以下、好ましくは1〜1000質量部、更に好ましくは1〜20質量部である。
【0046】
(F)添加剤
本発明におけるレジスト下層膜用組成物には、所期の効果を損なわない限り、必要に応じて、バインダー樹脂、放射線吸収剤、界面活性剤等の各種の添加剤を配合することがでる。
前記バインダー樹脂としては、種々の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を使用することができる。前記熱可塑性樹脂は、添加した熱可塑性樹脂の流動性や機械的特性などを下層膜に付与する作用を有する成分である。
このような熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−ペンテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリ−1−ヘプテン、ポリ−1−オクテン、ポリ−1−デセン、ポリ−1−ドデセン、ポリ−1−テトラデセン、ポリ−1−ヘキサデセン、ポリ−1−オクダデセン、ポリビニルシクロアルカン等のα−オレフイン系重合体類;ポリ−1,4−ペンタジエン、ポリ−1,4−ヘキサジエン、ポリ−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジエン系重合体類;α,β−不飽和アルデヒド系重合体類;ポリ(メチルビニルケトン)、ポリ(芳香族ビニルケトン)、ポリ(環状ビニルケトン)等のα,β−不飽和ケトン系重合体類;(メタ)アクリル酸、α−クロルアクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物等のα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体の重合体類;ポリ(メタ)アクリル酸無水物、無水マレイン酸の共重合体等のα,β−不飽和カルボン酸無水物の重合体類;メチレンマロン酸ジエステル、イタコン酸ジエステル等の不飽和多塩基性カルボン酸エステルの重合体類;ソルビン酸エステル、ムコン酸エステル等のジオレフィンカルボン酸エステルの重合体類;(メタ)アクリル酸チオエステル、α−クロルアクリル酸チオエステル等のα,β−不飽和カルボン酸チオエステルの重合体類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル又はその誘導体の重合体類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体の重合体類;スチリル金属化合物の重合体類;ビニルオキシ金属化合物の重合体類;ポリイミン類;ポリフェニレンオキシド、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリオキシラン、ポリテトラヒドロフラン、ポリテトラヒドロピラン等のポリエーテル類;ポリスルフィド類;ポリスルホンアミド類;ポリペプチド類;ナイロン66、ナイロン1〜ナイロン12等のポリアミド類;脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、脂環族ポリエステル、ポリ炭酸エステル等のポリエステル類;ポリ尿素類;ポリスルホン類;ポリアジン類;ポリアミン類;ポリ芳香族ケトン類;ポリイミド類;ポリベンゾイミダゾール類;ポリベンゾオキサゾール類;ポリベンゾチアゾール類;ポリアミノトリアゾール類;ポリオキサジアゾール類;ポリピラゾール類;ポリテトラゾール類;ポリキノキサリン類;ポリトリアジン類;ポリベンゾオキサジノン類;ポリキノリン類;ポリアントラゾリン類等が挙げられる。
【0047】
また、前記熱硬化性樹脂は、加熱により硬化して溶剤に不溶となり、得られるレジスト下層膜と、その上に形成されるレジスト被膜との間のインターミキシングを防止する作用を有する成分である。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性アクリル系樹脂類、フェノール樹脂類、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、アミノ系樹脂類、芳香族炭化水素樹脂類、エポキシ樹脂類、アルキド樹脂類等が挙げられる。これらのなかでも、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、芳香族炭化水素樹脂類等が好ましい。
尚、これらのバインダー樹脂は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0048】
バインダー樹脂の配合量は、化合物(A)100質量部に対して、通常、20質量部以下、好ましくは1〜10質量部である。
【0049】
前記放射線吸収剤としては、例えば、油溶性染料、分散染料、塩基性染料、メチン系染料、ピラゾール系染料、イミダゾール系染料、ヒドロキシアゾ系染料等の染料類;ビクシン誘導体、ノルビクシン、スチルベン、4,4’−ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体等の蛍光増白剤類;ヒドロキシアゾ系染料、商品名「チヌビン234」、「チヌビン1130」(チバガイギー社製)等の紫外線吸収剤類;アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体等の芳香族化合物等が挙げられる。尚、これらの放射線吸収剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0050】
放射線吸収剤の配合量は、化合物(A)100質量部に対して、通常、100質量部以下、好ましくは1〜50質量部である。
【0051】
また、前記界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、ぬれ性、現像性等を改良する作用を有する成分である。このような界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン−n−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−n−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤や、以下商品名で、KP341〔信越化学工業(株)製〕、ポリフローNo.75、同No.95〔以上、共栄社油脂化学工業(株)製〕、エフトップEF101、同EF204、同EF303、同EF352〔以上、トーケムプロダクツ社製〕、メガファックF171、同F172、同F173〔以上、大日本インキ化学工業(株)製〕、フロラードFC430、同FC431、同FC135、同FC93〔以上、住友スリーエム(株)製〕、アサヒガードAG710、サーフロンS382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106〔以上、旭硝子(株)製〕等が挙げられる。尚、これらの界面活性剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0052】
界面活性剤の配合量は、化合物(A)100質量部に対して、通常、15質量部以下、好ましくは0.001〜10質量部である。
【0053】
また、本発明におけるレジスト下層膜用組成物には、前記添加剤(F)以外にも、例えば、保存安定剤、消泡剤、接着助剤等の他の添加剤を配合することができる。
【0054】
〔1−2〕成膜工程
前記成膜工程は、前記レジスト下層膜用組成物を塗布して得られた塗膜を、酸化性雰囲気下において成膜させる工程である。
この工程では、塗膜を形成しているレジスト下層膜用組成物中の化合物(A)の一電子酸化(例えば、化合物(A)が有するフェノール性水酸基の一電子酸化)により脱水素反応が起こり、化合物の分子量が増大すると考えられる。
前記成膜工程は、通常、酸化性雰囲気下で加熱することにより行われる。ここでいう、酸化性雰囲気とは、23℃、常圧において、1容量%以上の酸素と不活性ガスとの混合気体(空気を含む)、或いは酸素濃度100容量%を意味する。
前記不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、水蒸気、及びこれらの混合物等が挙げられる。これらのなかでも、窒素が経済的で好ましい。
【0055】
前記酸化性雰囲気における酸素濃度(23℃、常圧)は、1容量%以上であり、好ましくは5〜100容量%、より好ましくは5〜70容量%、更に好ましくは10〜50容量%である。この酸素濃度が1容量%以上である場合、脱水素反応が速やかに進行するため好ましい。
【0056】
前記成膜工程における加熱温度は、通常、300℃以上〔上限は、通常、使用される化合物(A)の融点以下〕であり、好ましくは300〜500℃、より好ましくは350〜500℃、更に好ましくは350〜450℃である。この加熱温度が300℃以上である場合、脱水素反応が十分に進行するため好ましい。
また、この加熱時間は特に限定されないが、10〜900秒であることが好ましく、より好ましくは30〜600秒、更に好ましくは60〜300秒である。
【0057】
また、この成膜工程においては、300℃以上の温度で加熱する前に、100〜250℃、好ましくは150〜200℃の温度で予備加熱しておいてもよい。
予備加熱における加熱時間は特に限定されないが、10〜300秒であることが好ましく、より好ましくは30〜120秒である。
この予備加熱を行うことにより、溶剤を予め気化させて、膜を緻密にしておくことで、脱水素反応を効率良く進めることができる。
【0058】
また、この成膜工程における、レジスト下層膜の脱水素率[脱水素反応前後における水素含量の減少率(%)、即ち脱水素反応前の水素含量に対する、脱水素反応後の水素含量の減少率]は、10%以上であることが好ましく、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である。
尚、この脱水素率の測定方法は、後述する実施例と同様である。
【0059】
また、本発明のレジスト下層膜形成方法においては、通常、前記成膜工程により塗膜が硬化され、レジスト下層膜が形成されるが、前記レジスト下層膜用組成物に所定の光硬化剤(架橋剤)を含有させることにより、成膜工程後に、露光工程を設けて光硬化させ、レジスト下層膜を形成することもできる。この際に露光される放射線は、レジスト下層膜用組成物に配合されている酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択される。
【0060】
また、本発明のレジスト下層膜形成方法においては、前記レジスト下層膜用組成物に所定の熱硬化剤及び/又は光硬化剤(架橋剤)を含有させることにより、前記成膜工程の前に、露光及び/又は加熱による架橋工程を設けて、塗膜中の化合物(A)の一部を架橋させておいてもよい。
【0061】
[2]パターンの形成方法
本発明のパターンの形成方法は、
(1)前記レジスト下層膜形成方法により、被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程(以下、「工程(1)」という。)と、
(2)レジスト組成物溶液を用いて、前記レジスト下層膜の上にレジスト被膜を形成する工程(以下、「工程(2)」という。)と、
(3)前記レジスト被膜の所用領域に放射線を照射し、露光する工程(以下、「工程(3)」という。)と、
(4)露光されたレジスト被膜を現像し、レジストパターンを形成する工程(以下、「工程(4)」という。)と、
(5)前記レジストパターンをマスクとし、ドライエッチング法を用いて前記レジスト下層膜及び前記被加工基板を加工する工程(以下、「工程(5)」という。)と、を備えることを特徴とする。
【0062】
前記工程(1)では、前記レジスト下層膜形成方法により、被加工基板上にレジスト下層膜が形成される。尚、レジスト下層膜形成方法については、前述の説明をそのまま適用することができる。
この工程(1)で形成されるレジスト下層膜の膜厚は、通常、0.1〜5μmである。
【0063】
また、本発明のパターン形成方法は、この工程(1)の後に、必要に応じて、レジスト下層膜上に中間層を形成する工程(1’)を更に備えていてもよい。
この中間層は、レジストパターン形成において、レジスト下層膜及び/又はレジスト被膜が有する機能を更に補ったり、これらが有していない機能を得るために、これらの機能が付与された層のことである。例えば、反射防止膜を中間層として形成した場合、レジスト下層膜の反射防止機能を更に補うことができる。
【0064】
この中間層は、有機化合物や無機酸化物により形成することができる。有機化合物としては、例えば、Brewer Science社製の「DUV−42」、「DUV−44」、「ARC−28」、「ARC−29」等の商品名で市販されている材料や、ローム アンド ハース社製の「AR−3」、「AR―19」等の商品名で市販されている材料等を用いることができる。また、無機酸化物としては、例えば、JSR社製の「NFC SOG01」、「NFC SOG04」等の商品名で市販されている材料やCVD法により形成されるポリシロキサン、酸化チタン、酸化アルミナ、酸化タングステン等を用いることができる。
【0065】
中間層を形成するための方法は特に限定されないが、例えば、塗布法やCVD法等を用いることができる。これらのなかでも、塗布法が好ましい。塗布法を用いた場合、レジスト下層膜を形成後、中間層を連続して形成することができる。
【0066】
また、中間層の膜厚は特に限定されず、中間層に求められる機能に応じて適宜選択されるが、10〜3000nmの範囲が好ましく、更に好ましくは20〜300nmである。この中間層の膜厚が10nm未満の場合、レジスト下層膜のエッチング途中で中間層が削れてなくなってしまうことがある。一方、3000nmを超える場合、レジストパターンを中間層に転写する際に、加工変換差が顕著に発生してしまうためである。
【0067】
前記工程(2)では、レジスト組成物溶液を用いて、レジスト下層膜及び/又は中間層上にレジスト被膜が形成される。
具体的には、得られるレジスト被膜が所定の膜厚となるようにレジスト組成物溶液を塗布したのち、プレベークすることによって、塗膜中の溶剤を揮発させ、レジスト被膜が形成される。
前記レジスト組成物溶液としては、例えば、光酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とからなるポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とからなるネガ型レジスト組成物等が挙げられる。また、レジスト下層膜や中間層上に塗布する際のレジスト組成物溶液の固形分濃度は、通常、5〜50質量%程度であり一般に、例えば、孔径0.2μm程度のフィルターでろ過したものが用いられる。尚、前記レジスト組成物溶液は、市販のものをそのまま使用することもできる。
【0068】
レジスト組成物溶液の塗布方法は特に限定されず、例えば、スピンコート法等により実施することができる。
また、プレベークの温度は、使用されるレジスト組成物溶液の種類等に応じて適宜調整されるが、通常、30〜200℃程度、好ましくは50〜150℃である。
【0069】
前記工程(3)では、レジスト被膜の所用領域にフォトマスクを介して放射線を照射し、選択的に露光が行われる。
前記露光に用いられる放射線としては、レジスト組成物に使用されている酸発生剤の種類に応じて、
可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択されるが、遠紫外線であることが好ましく、特にKrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(波長157nm)、Krエキシマレーザー(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー(波長134nm)、極紫外線(波長13nm等)等が好ましい。
【0070】
前記工程(4)では、露光後のレジスト被膜を現像液で現像することで、レジストパターンが形成される。
前記現像液は、使用されるレジスト組成物の種類に応じて適宜選択される。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性水溶液が用いられる。また、これらのアルカリ性水溶液には、水溶性有機溶剤、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤を適量添加することもできる。
【0071】
また、前記現像液での現像後、洗浄し、乾燥することによって、所定のレジストパターンが形成される。
尚、この工程では、解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるため、現像前の前記露光後に、ポストベークを行うことができる。このポストベークの温度は、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、通常、50〜200℃程度、好ましくは80〜150℃である。
【0072】
前記工程(5)では、前記レジストパターンをマスクとし、例えば、酸素プラズマ等のガスプラズマを用いて、レジスト下層膜のドライエッチングを行うことにより、中間層及び/又はレジスト下層膜にパターンが転写され、被加工基板等が加工される。
【0073】
本発明のパターン形成方法では、前記工程(1)〜(5)等を適宜行うことにより、所定の基板加工用のパターンを形成することができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0075】
[1]化合物(A)の調製
(合成例1)
コンデンサー、温度計及び攪拌装置を備えた反応装置に、2,7−ジヒドロキシナフタレン100部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部、及びパラホルムアルデヒド50部を仕込み、蓚酸2部を添加し、脱水しながら120℃に昇温、5時間反応させることにより、下記構造を有する重合体(Mw=1500)を得た。この重合体を化合物(A−1)とする。
【0076】
【化3】

【0077】
(合成例2)
コンデンサー、温度計及び攪拌装置を備えた反応装置に、フェノール100部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部、及びパラホルムアルデヒド50部を仕込み、蓚酸2部を添加し、脱水しながら120℃に昇温、5時間反応させることにより、下記構造を有する重合体(Mw=1300)を得た。この重合体を化合物(A−2)とする。
【0078】
【化4】

【0079】
(合成例3)
コンデンサー、温度計及び攪拌装置を備えた反応装置に、2,7−ジヒドロキシナフタレン100部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部、パラホルムアルデヒド30部、及びフルフリルアルデヒド20部を仕込み、蓚酸2部を添加し、脱水しながら120℃に昇温、5時間反応させることにより、下記構造を有する重合体(Mw=1600)を得た。この重合体を化合物(A−3)とする。
【0080】
【化5】

【0081】
(合成例4)
コンデンサー、温度計及び攪拌装置を備えた反応装置に、レゾルシノール100部、エタノール200部を仕込み、塩酸68部を加えた。この溶液を撹拌しながら5℃まで氷冷し、1,5−ペンタンジアールの50%水溶液45部をゆっくりと滴下した。その後、80℃で48時間加熱し、濁った黄色の懸濁液を得た。この懸濁液をメタノール中に注いだ後、ろ過し、沈殿物を得た。その後、得られた沈殿物をメタノールで3回洗浄した。洗浄した沈殿物を室温で24時間減圧乾燥し、粉末状の淡黄色固体を得た。ここで得られた淡黄色固体100部にテトラブチルアンモニウムブロマイド23部、脱水ピリジン350部を加え、1時間攪拌した。その後、ジ−t−ブチルジカーボネイト185部を徐々に加え、室温で48時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却し、反応液を3%のシュウ酸水溶液300mlに注ぎ、固体を析出させた。その後、得られた固体を塩化メチレンに溶解させ、3%のシュウ酸水100mlで3回洗浄した後、水100mlで2回洗浄した。水層を廃棄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。その後、ヘキサン:酢酸エチル=1:1(体積比)を溶離液としたシリカゲルカラムで精製して、下記構造を有する化合物(A−4)を得た。
この化合物(A−4)についてH−NMR分析を行ったところ、化合物(A−4)は、全てのRのうち50モル%が下記式(R−1)で表される基(t−ブトキシカルボニル基)であり、残りのRが水素原子であった。
【0082】
【化6】

【化7】

【0083】
(合成例5)
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素下で、アセナフチレン100部、トルエン78部、ジオキサン52部、及びアゾビスイソブチロニトリル3部を仕込み、70℃で5時間攪拌した。その後、p−トルエンスルホン酸1水和物5.2部、パラホルムアルデヒド40部を添加して、120℃に昇温し、更に6時間攪拌した。その後、反応溶液を多量のイソプロパノール中に投入し、沈殿した樹脂をろ過することにより、下記構造を有する重合体(Mw=20000)を得た。この重合体を化合物(A−5)とする。
【0084】
【化8】

【0085】
尚、前記合成例において得られる化合物(A)の重量平均分子量(Mw)は、東ソー社製「GPCカラム」(G2000HXL:2本、G3000HXL:1本)を用い、流量:1.0ml/分、溶出溶剤:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフ(検出器:示差屈折計)により測定した。
また、化合物(A)のH−NMR分析は、日本電子社製、型番「JNM−ECA−500型」を用い、測定溶媒としてDMSO−dを使用して実施した。
【0086】
[2]レジスト下層膜用組成物の調製
(合成例6)
前記化合物(A−1)10部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤)90部に溶解した。その後、この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過することにより、レジスト下層膜用組成物(I)を調製した。
【0087】
(合成例7)
前記化合物(A−2)10部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤)90部に溶解した。その後、この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過することにより、レジスト下層膜用組成物(II)を調製した。
【0088】
(合成例8)
前記化合物(A−3)10部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤)90部に溶解した。その後、この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過することにより、レジスト下層膜用組成物(III)を調製した。
【0089】
(合成例9)
前記化合物(A−4)10部を、シクロヘキサノン(溶剤)65部とγ−ブチロラクトン(溶剤)25部に溶解した。その後、この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過することにより、レジスト下層膜用組成物(IV)を調製した。
【0090】
(合成例10)
前記化合物(A−1)10部、及び、一電子酸化剤〔促進剤(C−1)〕としてt−ブチルヒドロペルオキシド1.0部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤)89部に溶解した。その後、この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過することにより、レジスト下層膜用組成物(V)を調製した。
【0091】
(合成例11)
前記化合物(A−2)10部、及び、一電子酸化剤〔促進剤(C−1)〕としてt−ブチルヒドロペルオキシド1.0部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤)89部に溶解した。その後、この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過することにより、レジスト下層膜用組成物(VI)を調製した。
【0092】
(合成例12)
前記化合物(A−3)10部、及び、一電子酸化剤〔促進剤(C−1)〕としてt−ブチルヒドロペルオキシド1.0部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤)89部に溶解した。その後、この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過することにより、レジスト下層膜用組成物(VII)を調製した。
【0093】
(合成例13)
前記化合物(A−5)10部、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート0.5部、及び、4,4‘−[1−〔4−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1―メチルエチル}フェニル〕エチリデン]ビスフェノール0.5部をシクロヘキサノン(溶剤)89部に溶解した。その後、この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過することにより、レジスト下層膜用組成物(VIII)を調製した。
【0094】
[3]ArF用レジスト組成物溶液の調製
各レジスト下層膜用組成物により形成されるレジスト下層膜の評価を行うため、以下のように、ArF用ポジ型レジスト組成物溶液を調製した。
還流管を装着したセパラブルフラスコに、窒素気流下で、8−メチル−8−t−ブトキシカルボニルメトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン〔単量体(イ)〕29部、8−メチル−8−ヒドロキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン〔単量体(ロ)〕10部、無水マレイン酸〔単量体(ハ)〕18部、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールジアクリレート4部、t−ドデシルメルカプタン1部、アゾビスイソブチロニトリル4部、及び1,2−ジエトキシエタン60部を仕込み、攪拌しつつ70℃で6時間重合した。その後、反応溶液を大量のn−ヘキサン/i−プロピルアルコール(質量比=1/1)混合溶媒中に注いで樹脂を凝固させた。凝固した樹脂を前記混合溶媒で数回洗浄した後、真空乾燥して、前記単量体(イ)、(ロ)及び(ハ)のそれぞれに由来する下記構造の繰り返し単位(a)、(b)及び(c)を有する樹脂を得た(収率60%)。尚、この樹脂は、モル比が64:18:18であり、Mwが27,000であった。また、この樹脂の分子量(Mw)は、前記[1]で調製された化合物(A)と同様の方法により測定した。
【0095】
【化9】

【0096】
その後、得られた樹脂80部、1−(4−メトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート1.5部、及びトリ−n−オクチルアミン0.04部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート533部に溶解して、ArF用レジスト組成物溶液を調製した。
【0097】
[4]レジスト下層膜の形成
(実施例1)
直径8インチのシリコンウエハー上に、レジスト下層膜用組成物(I)をスピンコート法により塗布した後、酸素濃度20容量%のホットプレート内にて、180℃で60秒間、引き続き、350℃で120秒間加熱して成膜し、膜厚0.3μmの実施例1のレジスト下層膜を形成した。
【0098】
(実施例2〜27)
直径8インチのシリコンウエハー上に、表1に示す各レジスト下層膜用組成物をスピンコート法により塗布した後、表1に示す酸素濃度のホットプレート内にて、180℃で60秒間、引き続き、表1に示す条件(温度及び時間)で加熱して成膜し、膜厚0.3μmの実施例2〜27の各レジスト下層膜を形成した。
【0099】
(比較例1〜16)
直径8インチのシリコンウエハー上に、表2に示す各レジスト下層膜用組成物をスピンコート法により塗布した後、表2に示す酸素濃度のホットプレート内にて、180℃で60秒間、引き続き、表2に示す条件(温度及び時間)で加熱して成膜し、膜厚0.3μmの比較例1〜16の各レジスト下層膜を形成した。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
[5]レジスト下層膜の評価
実施例1〜27及び比較例1〜16の各レジスト下層膜について、以下の評価を行った。その結果を表3及び表4に示す。
【0103】
〔5−1〕脱水素反応前後における水素含量の測定、及び脱水素率の測定
<脱水素反応後の水素含量>
実施例1〜27及び比較例1〜16の各レジスト下層膜において、炭素・水素・窒素同時定量装置JM10(ジェイ・サイエンス・ラボ社製)を用いて、各元素の重量換算値を算出した。その後、膜中に含まれる各元素の原子数を、[各元素の重量換算値(重量%)/各元素の質量(g)]により算出し、次いで、[膜中の水素原子数/膜中の全原子数]により、脱水素反応後の水素含量(atom%)を求めた。
【0104】
<脱水素反応前の水素含量>
直径8インチのシリコンウエハー上に、前記[2]で調製した各レジスト下層膜用組成物(I)〜(VIII)を、それぞれ、スピンコートした後、酸素濃度20容量%のホットプレート内にて200℃で60秒間加熱して形成した被膜を用いた際に、前記レジスト下層膜と同様にして算出された値を、脱水素反応前の水素含量とした。
【0105】
<脱水素率>
前記脱水素反応前後の各水素含量から、脱水素反応前の水素含量に対する脱水素反応後の水素含量の減少率を求めた。
【0106】
〔5−2〕基板加工後のパターン形状(パターン転写性能評価)
実施例1〜27及び比較例1〜16の各レジスト下層膜上に、3層レジストプロセス用中間層形成組成物溶液〔JSR(株)製、商品名「NFC SOG080」〕をスピンコートし、200℃のホットプレート上で60秒間加熱し、引き続き、300℃のホットプレート上で60秒間加熱して、膜厚0.05μmの中間層被膜を形成した。その後、中間層被膜上に、前記[3]で調製したArF用レジスト組成物溶液をスピンコートし、130℃のホットプレート上で90秒間プレベークして、膜厚0.2μmのレジスト被膜を形成した。その後、ArFエキシマレーザー露光装置(NIKON社製、レンズ開口数:0.78、露光波長:193nm)を用い、マスクパターンを介して、最適露光時間だけ露光した。その後、130℃のホットプレート上で90秒間ポストベークした後、2.38%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて、25℃で1分間現像し、水洗し、乾燥して、ArF用ポジ型レジストパターンを得た。このレジストパターンをマスクとし、中間被膜を加工し、続いて、加工した中間被膜をマスクとして、レジスト下層膜の加工を行った。その後、加工したレジスト下層膜をマスクとして、基板の加工を行った。
前記のようにして形成されたパターンを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、以下の基準にて評価した。
○:レジスト下層膜のパターンが立っている状態
×:レジスト下層膜のパターンが倒れたり、曲がったりしている状態
【0107】
〔5−3〕エッチング耐性
実施例1〜27及び比較例1〜16の各レジスト下層膜を、エッチング装置〔神鋼精機社製、「EXAM」〕を使用して、CF/Ar/O(CF:40mL/min、Ar:20mL/min、O:5mL/min;圧力:20Pa;RFパワー:200W;処理時間:40秒;温度:15℃)でエッチング処理し、エッチング処理前後の膜厚を測定して、エッチングレートを算出し、エッチング耐性を評価した。尚、評価基準は、以下のとおりである。
○;エッチングレートが150nm/min以下の場合
△;エッチングレートが150nm/minを超え、200nm/min未満の場合
×:エッチングレートが200nm/min以上の場合
【0108】
【表3】

【0109】
【表4】

【0110】
[6]実施例の効果
表3及び4から明らかなように、脱水素反応工程を経て形成された実施例1〜27のレジスト下層膜はパターン転写性能及びエッチング耐性に優れていることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジスト下層膜用組成物を被加工基板に塗布する塗布工程と、
得られた塗膜を、酸素濃度が1容量%以上、且つ温度が300℃以上の酸化性雰囲気下において成膜させる成膜工程と、を備えることを特徴とするレジスト下層膜形成方法。
【請求項2】
前記レジスト下層膜用組成物は、フェノール性水酸基を有する化合物、及び溶剤を含有する請求項1に記載のレジスト下層膜形成方法。
【請求項3】
前記レジスト下層膜用組成物は、更に、促進剤として、(a)第3〜第11族元素及び第13〜第15族元素から選ばれる金属元素を含む金属化合物、(b)過酸化物、(c)ジアゾ化合物、(d)ハロゲン又はハロゲン酸から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項2に記載のレジスト下層膜形成方法。
【請求項4】
前記促進剤における(b)過酸化物として、過酸、過酸化ジアシル、過酸エステル、過酸ケタール、ペルオキシ二炭酸塩、過酸化ジアルキル、過酸化ケトン及びアルキルヒドロキシペルオキシドから選ばれる過酸化物を少なくとも1種含む請求項3に記載のレジスト下層膜形成方法。
【請求項5】
前記促進剤における(c)ジアゾ化合物として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを含む請求項3に記載のレジスト下層膜形成方法。
【請求項6】
前記促進剤における(a)金属化合物として、セリウム、鉛、銀、マンガン、オスミウム、ルテニウム、バナジウム、タリウム、銅、鉄、ビスマス及びニッケルから選ばれる金属元素を含む金属化合物を少なくとも1種含む請求項3に記載のレジスト下層膜形成方法。
【請求項7】
前記促進剤における(d)ハロゲン又はハロゲン酸として、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン、過ハロゲン酸、ハロゲン酸、亜ハロゲン酸及び次亜ハロゲン酸から選ばれる化合物もしくはその塩を少なくとも1種含む請求項3に記載のレジスト下層膜形成方法。
【請求項8】
(1)請求項1乃至7のいずれかに記載のレジスト下層膜形成方法により、被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程と、
(2)レジスト組成物溶液を用いて、前記レジスト下層膜の上にレジスト被膜を形成する工程と、
(3)前記レジスト被膜の所用領域に放射線を照射し、露光する工程と、
(4)露光されたレジスト被膜を現像し、レジストパターンを形成する工程と、
(5)前記レジストパターンをマスクとし、ドライエッチング法を用いて前記レジスト下層膜及び前記被加工基板を加工する工程と、を備えることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
フェノール性水酸基を有する化合物と、溶剤と、促進剤と、を含有しており、
前記促進剤として、(a)第3〜第11族元素及び第13〜第15族元素から選ばれる金属元素を含む金属化合物、(b)過酸化物、(c)ジアゾ化合物、(d)ハロゲン又はハロゲン酸から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とするレジスト下層膜用組成物。
【請求項10】
前記促進剤における(b)過酸化物として、過酸、過酸化ジアシル、過酸エステル、過酸ケタール、ペルオキシ二炭酸塩、過酸化ジアルキル、過酸化ケトン及びアルキルヒドロキシペルオキシドから選ばれる過酸化物を少なくとも1種含む請求項9に記載のレジスト下層膜用組成物。
【請求項11】
前記促進剤における(c)ジアゾ化合物として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを含む請求項9に記載のレジスト下層膜用組成物。
【請求項12】
前記促進剤における(a)金属化合物として、セリウム、鉛、銀、マンガン、オスミウム、ルテニウム、バナジウム、タリウム、銅、鉄、ビスマス及びニッケルから選ばれる金属元素を含む金属化合物を少なくとも1種含む請求項9に記載のレジスト下層膜用組成物。
【請求項13】
前記促進剤における(d)ハロゲン又はハロゲン酸として、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン、過ハロゲン酸、ハロゲン酸、亜ハロゲン酸及び次亜ハロゲン酸から選ばれる化合物もしくはその塩を少なくとも1種含む請求項9に記載のレジスト下層膜用組成物。

【公開番号】特開2012−252343(P2012−252343A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−159880(P2012−159880)
【出願日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【分割の表示】特願2008−536338(P2008−536338)の分割
【原出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】