説明

レジスト回収装置

【課題】第1に、レジストの回収効率が向上し、アルカリ溶液のライフ寿命が長くなり、清掃作業も簡単容易化され、第2に、消泡剤の添加が不要化されて、回路基板の不良発生が防止され、第3に、目詰まりが防止され、メッシュ密度を密に可能であり、第4に、装置が小型化される、レジスト回収装置を提案する。
【解決手段】このレジスト回収装置11は、回路基板の製造工程で使用され、感光性のレジストAとアルカリ溶液Bの混合体Dから、レジストAを分離,回収する。そして、プレ脱液部13,レジスト濃縮部14,レジスト回収部15,泡回収部30等を有している。プレ脱液部13は、まず、混合体Dからアルカリ溶液Bを分離,回収し、レジスト濃縮部14は、次に、レジストAを濃縮して、アルカリ溶液Bを分離,回収し、レジスト回収部15は、最後に、レジストAを捕集,回収して、アルカリ溶液Bを分離,回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト回収装置に関する。すなわち、回路基板の製造工程おいて、現像機や剥離機に付設され、現像液や剥離液等のアルカリ溶液と感光性のレジストとを、混合体から分離,回収する、レジスト回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
電子機器の高性能化,高機能化,小型軽量化に伴い、プリント配線基板等の回路基板も、高精度化,ファイン化,極薄化,多様化が進み、形成される回路の高密度化,微細化が著しい。
そして、このような回路基板の製造工程では、銅張り積層板たる基板材の外表面に、感光性のレジストを膜状に塗布又は張り付けてから、→回路のネガフィルムを当てて、露光した後、→回路形成部分以外のレジストを、現象により溶解除去し、→回路形成部分以外の銅箔を、エッチングにより溶解除去してから、→回路形成部分のレジストを、剥膜除去することにより、→基板材の外表面に、銅箔にて回路が形成され、→もって、回路基板が製造されている。
【0003】
《従来技術》
図4は、この種従来例の説明に供し、正断面説明図である。同図にも示したように、上述した現像工程や剥膜工程では、現像機1や剥離機2が用いられており、回路形成部分以外のレジストAや、硬化して残っていた回路形成部分のレジストAが、→現像液や剥離液等のアルカリ溶液Bを、噴射することにより、→基板材Cの外表面から、溶解除去,剥膜除去される。
→そして、このように現像機1や剥離機2にて使用されたアルカリ溶液Bと、感光膜として用いられた後に除去された小さな破片状のレジストAとは、→混じり合った混合体Dとなって、流下する。
→そこで、このような混合体Dを、現像機1や剥離機2から、付設されたレジスト回収装置3に供給して、アルカリ溶液BとレジストAを分離し、→現像液や剥離液等のアルカリ溶液Bは、現像機1や剥離機2に循環供給されて再使用され、レジストAは廃棄されている。
【0004】
そして、この種のレジスト回収装置3としては、図4に示したフィルター4式や網目ドラム式のものが、代表的に使用されていた。
すなわち、この種従来例のレジスト回収装置2では、混合体Dを、現像機1や剥離機2のチャンバー5の下部の液槽6から、→ポンプ7や配管8を介して、フィルター4や網目ドラムに供給し、→もって、フィルター4や網目ドラムを通過することにより、濾過,分離する。→そして、回収された現像液や剥離液等のアルカリ溶液Bは、配管8を介して、現像機1や剥離機2のスプレーノズル9に供給して、噴射,再使用し、フィルター4や網目ドラムを通過しなかったレジストAは、捕集,回収,廃棄していた。
図中10は、現像機1や剥離機2において、基板材Cを搬送するローラーコンベヤである。
【0005】
《先行技術文献情報》
このような従来例としては、例えば、次の特許文献1の従来技術欄に示されたものが、挙げられる。
【特許文献1】特開2004−325502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような従来例のレジスト回収装置3については、次の問題が指摘されていた。
《第1の問題点》
第1に、レジストAとアルカリ溶液Bとの分離,回収が不確実であり、レジストAの回収効率が悪く、アルカリ溶液Bの消耗が激しい、という問題が指摘されていた。
すなわち、回路基板は、高精度化,ファイン化,極薄化が進み、形成される回路の高密度化,微細化が著しい。→もって、このような回路形成部分や回路形成部分以外から除去されたレジストAも、微細化が著しい。
→そこで、従来のフィルター4式や網目ドラム式のレジスト回収装置3では、混合体D中からレジストAを濾過,分離,捕集,回収することが、最近ますます容易でなく、不確実化,困難化する傾向にある。
【0007】
→従って、レジスト回収装置3を経て回収された現像液や剥離液等のアルカリ溶液B中には、レジストAが多量に混入しやすい状態にある。→そこで、このようなアルカリ溶液Bは、現像機1や剥離機2に循環供給して再使用を繰り返すと、→本来機能である基板材CからのレジストAの溶解除去,剥膜除去機能が、次第に低下してしまうことになる。
→もって、現像機1の現像液や剥離機2の剥離液等のアルカリ溶液Bは、ライフ寿命が短く、新鮮液の補充頻度や新鮮液への交換頻度が高くなり、その分、コスト負担も大きくなっていた。例えば、1週間に1回程度の交換が必要とされていた。
又、現像機1や剥離機2にレジストAが混入したアルカリ溶液Bを、循環供給して繰り返し使用していると、→レジストAが白濁化,クリーム状化,のり状化して、→液槽6内壁に沈澱,付着してしまい、配管8その他の目詰まりの原因ともなる。→そこで、その清掃や除去作業が行われているが、非常に面倒であり手間や時間を要していた。
【0008】
《第2の問題点》
第2に、現像液や剥離液等のアルカリ溶液Bには、従来より消泡剤が添加されているが、この消泡剤は、基板材Cの回路形成に悪影響を及ぼし、回路基板の不良原因となる、という問題が指摘されていた。
すなわち、現像機や剥離機では、スプレーノズル9から基板材Cに対し、現像液や剥離液等のアルカリ溶液Bが噴射される。→そこで、基板材C付近では、噴射に伴いアルカリ溶液Bの泡が発生するが、→この泡が、混合体Dと共にレジスト回収装置3のフィルター4や網目ドラムに、流れ込むと、→この泡にて、レジストAが液面に浮いてしまい、→レジストAの分離,回収が不確化し、レジストAの回収効率が低下してしまう。
→そこでその対策として、従来は、予めアルカリ溶液Bに消泡剤、例えばエマルジョンタイプのエーテル型油質の消泡剤が、添加されていた。
→しかしながら、このように添加された消泡剤が、基板材Cの処理に悪影響を及ぼし、現像不良,エッチング不良,剥離不良が生じ易くなり、→製造される回路基板に、不良品が発生していた。
【0009】
《第3の問題点》
第3に、レジスト回収装置3のフィルター4や網目ドラムについて、目詰まりが発生し易く、もって、フィルター4や網目ドラムの交換頻度やメインテナンス頻度が高く、コストがかさむという問題が指摘されていた。
すなわち、前記第1の問題への対応策、つまり微細化が進むレジストAの濾過,分離,回収を確実化し、レジストAの回収効率を向上させる対応策としては、→レジスト回収装置3について、目がより密なフィルター4や網目ドラムを、採用することが必要となる。→しかしながらその結果、フィルター4や網目ドラムに、レジストAが捕集,蓄積されて、詰まり易かった。
因に、従来のレジスト回収装置3では、網目について、1インチ(25.4mm)当たりの網目数で20メッシュ程度が限界とされており、微細なレジストA回収にとって十分ではないと共に、目詰まりも多発していた。
【0010】
《第4の問題点》
第4に、レジスト回収装置3が大型化してしまい、据付スペースを取ると共に、コスト高となる、という問題も指摘されていた。
すなわち、従来のレジスト回収装置3では、現像機1や剥離機2から供給された混合体Dを、→フィルター4や網目ドラムにて、一度に濾過,分離して、→レジストAを捕集しアルカリ溶液Bを回収していた。
つまり、供給された多量の混合体Dを、→1回の処理で一挙に濾過,分離していたので、→どうしても、レジスト回収装置3が大型化してしまっていた。
【0011】
《本発明について》
本発明のレジスト回収装置は、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべく、なされたものである。
そして、本発明は、第1に、レジストの回収効率が向上し、第2に、消泡剤の添加が不要化され、第3に、目詰まりが防止され、第4に、装置が小型化される、レジスト回収装置を提案すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである。まず、請求項1については次のとおり。
請求項1のレジスト回収装置は、回路基板の製造工程において使用され、供給された噴射後のアルカリ溶液と除去された感光性のレジストとの混合体から、該レジストを回収する。そして、液槽,プレ脱液部,レジスト濃縮部,レジスト回収部を有している。
該プレ脱液部は、該混合体から該アルカリ溶液を分離して、該液槽へと回収させる。該レジスト濃縮部は、該プレ脱液部から供給された該混合体について、該レジストを濃縮すると共に、該アルカリ溶液を分離して該液槽へと回収させる。該レジスト回収部は、該レジスト濃縮部から供給された該混合体について、該レジストを捕集,回収すると共に、該アルカリ溶液を該液槽へと分離,回収させること、を特徴とする。
請求項2については次のとおり。請求項2のレジスト回収装置では、請求項1において、該プレ脱液部は、脱液ネットを備えている。そして、供給された該混合体は、まず該脱液ネット上を流れることにより、かなりの該アルカリ溶液が、分離,落下されて該液槽へと回収される。
該レジスト濃縮部は、該液槽中に立設された略逆円錐状の捕集ネットを備えている。そして、該プレ脱液部の脱液ネット上から供給された該混合体は、該捕集ネット内で下方に向け吸引,流下されることにより、かなりの該アルカリ溶液が、該捕集ネット外に流出し下方に向け吸引,流下されて該液槽へと吸引,回収されると共に、該レジストが、該捕集ネット内下部に向け順次濃縮されて行く。
該レジスト回収部は、濾過ネットを備えている。そして、該レジスト濃縮部の捕集ネット内下部から供給され濃縮された該レジストを含んだ該混合体は、該レジストが、該濾過ネットにて捕集,回収されると共に、該アルカリ溶液が、該液槽へと回収されること、を特徴とする。
【0013】
請求項3については次のとおり。請求項3のレジスト回収装置は、請求項2において、回路基板の製造工程の現像機に付設され、該アルカリ溶液が現像液よりなること、を特徴とする。
請求項4については次のとおり。請求項4のレジスト回収装置は、請求項2において、回路基板の製造工程の剥離機に付設され、該アルカリ溶液が剥離液よりなること、を特徴とする。
請求項5については次のとおり。請求項5のレジスト回収装置は、請求項3又は4において、更に、泡回収ボックス,液化ノズル,消泡ネットを備えた、泡回収部が配設されている。
そして該泡回収ボックスは、該レジスト濃縮部上に間隔を存して配設され、下面が開放されており、該混合体上部の該アルカリ溶液の泡を吸引する。該液化ノズルは、該泡回収ボックスから供給された該泡を、該消泡ネットへと噴射する。該消泡ネットは、噴射された該泡を液化し該アルカリ溶液に戻して、該液槽へ回収させること、を特徴とする。
【0014】
請求項6については次のとおり。請求項6のレジスト回収装置では、請求項3又は4において、該プレ脱液部は、下降傾斜して配設された該脱液ネットと、該脱液ネット下に上下間隔を存して配設された多孔プレートと、該多孔プレート上に立設された各突起と、を備えた構造よりなる。
そして、該脱液ネット下に落下した該アルカリ溶液は、該多孔プレートと該突起にてバウンド,浮沈運動され、もって該脱液ネットを下から揺らすと共に、該多孔プレート上から該液槽へと落下,回収されること、を特徴とする。
請求項7については次のとおり。請求項7のレジスト回収装置は、請求項3又は4において、該レジスト濃縮部の捕集ネットの外側に、間隔を存して多孔カバーが周設されている。そして、該液槽内の該アルカリ溶液は、該多孔カバー内に流入すると共に、該捕集ネットの外面に沿って下方に向け吸引,流下され、もって該液槽へと吸引,回収されること、を特徴とする。
請求項8については次のとおり。請求項8のレジスト回収装置は、請求項5又は7において、該混合体,該アルカリ溶液,又は該泡を吸引するポンプは、間欠駆動タイプよりなること、を特徴とする。
【0015】
《作用等》
本発明のレジスト回収装置は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)回路基板の製造工程において、現像機や剥離機で噴射使用された現像液や剥離液等のアルカリ溶液と、感光膜として用いられ基板材から除去された小さな破片状の感光性レジストとの混合体は、付設されたレジスト回収装置に供給される。
(2)そして混合体は、まず、プレ脱液部の脱液ネット上を流れることにより、かなりの量のアルカリ溶液が、分離,落下されて液槽に回収される。
その際、脱液ネット下に落下したアルカリ溶液が、突起付きの多孔プレートにてバウンド,浮沈運動して、脱液ネットを下から揺らすので、脱液ネットは、常時リフレッシュされ、混合体中のレジストによる目詰まりが防止される。
【0016】
(3)次に混合体は、レジスト濃縮部の捕集ネットに供給され、略逆円錐状の捕集ネット内を、下方に吸引,流下される。もって、かなりの量のアルカリ溶液が、捕集ネット外に流出して下方に吸引,流下されて液槽へと吸引,回収され、レジストが、捕集ネット下部に向け順次集められ,濃縮されて行く。
(4)捕集ネットの外側には、多孔カバーが周設されており、液槽内のアルカリ溶液が、多孔カバーを介し、捕集ネット外面に沿って下方に吸引,流下され、もって捕集ネット内から流出したアルカリ溶液と共に、液槽へと吸引,回収される。
このようにして、捕集ネット内外には、同方向,同圧の流れが形成されるので、混合体中のレジストによる捕集ネットの目詰まりが防止される。
(5)さて、濃縮されたレジストを含んだ混合体は、それから、捕集ネット下部からレジスト回収部に供給され、レジストが濾過ネットにて捕集,回収されると共に、アルカリ溶液が液槽へと回収される。
(6)なお、混合体やアルカリ溶液を吸引するポンプについて、間欠駆動タイプを採用すると、捕集ネットや濾過ネットが、混合体中のレジストにて目詰まりすることが、より確実に防止される。
【0017】
(7)ところで、現像機又は剥離機における噴射に伴い、レジスト回収装置に供給された混合体は、アルカリ溶液の多量の泡を伴っている。
そこで、レジスト回収装置には、泡回収部が配設されている。そして泡は、泡回収ボックスに吸引されて、液化ノズルから消泡ネットへと噴射され、もって液化されアルカリ溶液に戻されて、液槽に回収される。なお、泡を吸引するポンプについて、間欠駆動タイプを採用すると、泡の液化が助長される。
このようにして泡、つまり混合体の液面にレジストを浮かせて、レジストの分離,回収を不確実化させる泡は、解消される。そしてこれは、基板材の処理に悪影響を及ぼす消泡剤を使用することなく、実現される。
(8)このレジスト回収装置では、このようにして、レジストとアルカリ溶液とが、確実に分離,回収される。
(9)又、プレ脱液部で、予めかなりの量のアルカリ溶液を分離,回収するので、その分だけ、レジスト濃縮部に供給される混合体の量が削減され、更に、レジスト濃縮部でもアルカリ溶液を分離,回収するので、その分だけ、レジスト回収部に供給される混合体の量が削減される。もって、レジスト濃縮部やレジスト回収部が小型化され、レジスト回収装置も小型化される。
(10)さてそこで、本発明のレジスト回収装置は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0018】
《第1の効果》
第1に、レジスト回収効率が向上し、アルカリ溶液のライフ寿命が長くなり、清掃作業も簡単容易化される。
すなわち、本発明のレジスト回収装置では、混合体について、まずプレ脱液部において、レジストの少ない下部側から現像液や剥離液等のアルカリ溶液を分離,回収してから、次にレジスト濃縮部において、レジストを濃縮すると共に、更にアルカリ溶液を分離,回収し、最後にレジスト回収部において、濃縮されたレジストを捕集,回収すると共に、アルカリ溶液を分離,回収する。
このようにして、レジストとアルカリ溶液がスムーズかつ確実に分離,回収される。最近の微細化されたレジストでも、確実に分離,回収される。又、泡が解消されることや、目詰まりが防止される面からも、このような分離,回収の確実化が促進される。
そこで、フィルター式や網目ドラム式の前述したこの種従来例のレジスト回収装置のように、回収されたアルカリ溶液中に多量のレジストが混入してしまうことは、回避される。回収されたアルカリ溶液は、何回も現像機や剥離機に供給して、再使用,循環利用可能である。
もって、この種従来例に比べ、レジストの回収効率が大幅に向上し、アルカリ溶液の消耗が1/3程度に削減されて、アルカリ溶液のライフ寿命が長くなり、その補充頻度や交換頻度が低下し、コスト負担が軽減される。例えば、2〜3週間に1回程度の交換で済むようになる。
又、循環使用されるアルカリ溶液中に混入していたレジストが、現像機や剥離機内において、白濁化,クリーム状化,のり状化して沈澱,付着することも減少し、面倒で手間や時間がかかる清掃除去作業の回数も、大幅に削減される。
【0019】
《第2の効果》
第2に、消泡剤の添加が不要化され、もって製造される回路基板の不良発生が防止される。
すなわち、本発明のレジスト回収装置では、泡回収部により、アルカリ溶液の泡を解消させるシステムを採用してなる。前述したこの種従来例のように、予め現像液や剥離液等のアルカリ溶液に、消泡剤を添加しておくシステムではないので、消泡剤による現像不良,エッチング不良,剥離不良等の発生の虞はなく、消泡剤による基板材の処理に対する悪影響は発生しない。もって、製造される回路基板について、消泡剤に起因した不良品発生は回避される。
【0020】
《第3の効果》
第3に、目詰まりが防止され、メッシュ密度をより密にすることも可能である。すなわち、本発明のレジスト回収装置では、プレ脱液部における脱液ネットの揺れによるリフレッシュや、レジスト濃縮部における捕集ネット内外の同方向,同圧流れの形成や、間欠駆動タイプのポンプの採用等により、脱液ネット,捕集ネット,濾過ネットについて、目詰まりが阻止される。
そこで、前述したこの種従来例のレジスト回収装置に比し、ネット等の交換頻度が大幅に減少し、メインテナンスの頻度も少なく、コスト面に優れている。
又、最近の回路の微細化に伴い、レジストも微細化傾向が顕著であるが、このように目詰まりが防止されるので、200メッシュ程度の網目のネットも採用可能となった。脱液ネット,捕集ネット,濾過ネット等について、微細レジストへの対応に優れた、1インチ(25.4mm)当たりの網目数で200メッシュ程度のものを、採用できるようになった。そこで、20メッシュ程度が限界とされていた前述したこの種従来例のレジスト回収装置に比し、この面からもレジスト回収効率が向上する。
【0021】
《第4の効果》
第4に、装置が小型化される。すなわち、本発明のレジスト回収装置では、プレ脱液部,レジスト濃縮部,レジスト回収部の順に、順次段階的に、現像液や剥離液等のアルカリ溶液が分離,回収されて行く。
そこで、レジストとアルカリ溶液とを、一度に濾過,分離,回収する方式よりなり、もって装置が大型化していた前述したこの種従来例のレジスト回収装置に比し、装置が小型化される。もって、据付スペースを取らないと共に、価格も半分程度になる等、コスト面にも優れている。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
《図面について》
以下、本発明のレジスト回収装置を、図面に示した発明を実施するための最良の形態に基づいて、詳細に説明する。
図1,図2,図3は、本発明の実施の形態の説明図に供する。そして図1は、正断面説明図、図2は、要部の側断面説明図、図3は、全体の側断面説明図である。
図5は、基板(基板材)の模式化した平面説明図である。
【0023】
《回路基板Eについて》
このレジスト回収装置11は、回路基板Eの製造工程で使用される。そこでまず、図5を参照しつつ、回路基板Eの概略について説明しておく。
回路基板Eは、AV機器,パソコン,携帯電話,デジカメ,その他各種の電子機器において、電気的接続用に用いられており、部品間を接続するための回路Fパターンを、絶縁層の外表面や内部に形成してなる。
そして回路基板Eは、片面基板と両面基板とに分けられる他、多層基板(含、最近のビルドアップ法のもの)、その他各種のものがあり、硬質のリジット系基板とフィルム状のフレキシブル系基板にも分けられる。
又、このような回路基板Eの一環として、IC,LSI素子,受動部品,駆動部品,コンデンサー等々の半導体部品が、回路Fと一体的に組み込まれたモジュール基板(半導体一体型のパッケージ基板)や、ガラスベースに回路Fと共に半導体部品が埋め込まれたガラス基板、つまりプラズマディスプレイPDP用のガラス基板や液晶LCD用のガラス基板、更にはCSP,PBGA等も出現している。勿論、本明細書において回路基板Eとは、従来よりのプリント配線基板の外、このようなものも広く包含する。
そして回路基板Eは、電子機器の高性能化,高機能化,小型軽量化に伴い、高精度化,ファイン化,そして極薄化,フレキシブル化,更には多層化,多様化等が進み、外表面(表面や裏面の一方又は双方)に形成される回路F、更には内部に形成される回路Fの高密度化,微細化が著しい。
回路基板E例えばプリント配線基板は、製造に際しての1枚の縦横のカットサイズが、例えば500mm×500mm程度よりなる。肉厚は、絶縁層(コア材)部分が、従来の1.6mmから1.0mm〜60μm程度、昨今では50μmから10μm前後まで、極薄化されている。回路F部分(銅箔部分)の肉厚も、75μm〜35μm、昨今では16μm〜10μm前後まで、極薄化されている。多層基板の場合でも、全体の肉厚が1.0mm〜0.4mm程度まで、極薄化されつつある。回路F幅や回路F間スペースも、30μm〜15μm程度、昨今では10μm前後と微細化傾向にある。
回路基板Eは、概略このようになっている。
【0024】
《回路基板Eの製造方法の1例について》
次に、このレジスト回収装置11が使用される、回路基板Eの製造方法について、図5,図1等を参照して説明する。まず、第1例の製造方法について述べる。この製造方法において、回路基板E例えばプリント配線基板は、次のステップを辿って製造される。
最初に、ガラスクロス製,セラミックス製や,フィルム状のポリイミド製,その他の樹脂製の絶縁層(コア材)の外表面に、銅箔が熱プレス等により張り付けられた、銅張り積層板たる基板材Cが準備される。
そして、このように準備された基板材Cについて、張り付けられた銅箔表面を粗化する表面粗化処理(ソフトエッチング)が行われた後、短尺のワークサイズの各葉に切断される。表面粗化処理は、従来は機械研磨によって行われていたが、最近は処理液の噴射によって行われることが多い。
そして多くの場合、スルホール用の孔あけ加工が、レーザ等を使用して実施される。スルホールは、基板材C(回路基板E)の両外表面間の微細な貫通孔よりなり、1枚について、極小径のものが数百個以上形成され、その径は、0.5mm〜0.2mm程度以下のものが多くなっている。そしてスルホールは、両外表面の回路F(銅箔)間や多層基板の回路F(銅箔)間の導通接続用や、回路Fに実装される半導体部品の取付け用として使用される。
なお最近は、孔あけ加工を要するスルホールに代えて、小突起状・略円錐台状の接点たるバンプを形成し、もって多層基板等について、このバンプにより、スルホールと同様の機能を実現する技術も開発されている。バンプは、回路Fに準じ、現像工程,エッチング工程,剥膜工程を辿って製造される。
【0025】
さてしかる後、基板材Cの銅箔の外表面に、感光性のレジストAが、膜状に塗布又は張り付けられる。レジストAのドライフィルムが、圧着されることも多い。それから、回路Fのネガフィルムつまり予め回路F設計された回路F写真を当てて、露光することにより、外表面のレジストAは、露光されて硬化した回路F形成部分(保護膜部分)を残し、その他の不要部分が、処理液たる現像液つまりアルカリ溶液Bの噴射により、溶解除去される。
それから、このような基板材Cの銅箔は、レジストAが硬化して被覆された回路F形成部分(保護膜部分)を残し、現像によりレジストAが溶解除去されて露出した不要部分が、処理液たるエッチング液(塩化第二銅,塩化第二鉄,その他の腐食液)の噴射により、溶解除去・エッチングされる。それから、残っていた回路F形成部分のレジストAが、処理液たる剥離液つまりアルカリ溶液Bの噴射により剥膜除去され、もって、残った回路F形成部分の銅箔にて、基板材Cの外表面に、所定導体パターンの回路Fが形成され、回路基板Eが製造される。
なお、上述した現像工程,エッチング工程,剥膜工程には、それぞれ後処理用に、又は剥膜工程の後にまとめて後処理用に、水洗液,中和剤液,その他の洗浄液を噴射する洗浄工程が付設されている。洗浄工程では、基板材Cの外表面(含むスルホール内等)に付着していた現像液,エッチング液,剥離液等の処理液が、洗浄,除去される。更に、洗浄工程の後には、乾燥工程が付設されている。すなわち、洗浄工程で洗浄された基板材Cの外表面(含むスルホール内等)には、水洗液その他の洗浄液や,それらの水分が付着しているので、酸化防止等のためこれらを除去すべく、事後直ちに乾燥工程において乾燥処理される。
第1例の製造方法は、このようなウェットプロセス法よりなる。第1例の製造方法は、このようになっている。
【0026】
《回路基板Eの製造方法の他の例について》
次に、第2例の製造方法について述べる。回路基板E例えばプリント配線基板の製造方法としては、上述した第1例のウェットプロセス法が代表的であるが、第2例のセミアディティブ法も多用されつつある。
セミアディティブ法では、まず、予めスルホールが形成された基板材Cの外表面に、無電解銅メッキが施される。→それから、この無電解銅メッキに、感光性のレジストAを膜状に塗布又は張り付けた後、→回路Fフィルムである回路F写真を当て、露光する。→そしてレジストAは、露光されて硬化した部分を残し、他の部分つまり回路F形成部分が、処理液たる現像液つまりアルカリ溶液Bの噴射により溶解除去される。
しかる後、→回路F形成部分、つまり現像によりレジストAが溶解除去されたメッキパターン部分、つまり無電解銅メッキが露出した部分に対し、電解銅メッキが施されて、→回路Fが形成される。→なお、残っていた回路F形成部分以外の硬化したレジストAは、処理液たる剥離液つまりアルカリ溶液Bの噴射により剥膜除去され、→露出した無電解銅メッキが、処理液たるエッチング液の噴射によりクイックエッチングされて、融解除去される。→なお、各工程の後処理用として、前述した所に準じ、洗浄液による洗浄工程や、乾燥工程が付設される。
第2例のセミアディティブ法では、このようにして、電解銅メッキにて回路Fが形成され、もって回路基板Eが製造される。第2例の製造方法は、このようになっている。
ところで、プリント配線基板その他の回路基板Eの製造方法は、最近ますます多様化しつつあり、上述した第1例,第2例以外にも、その他各種の方法が開発,使用されている。本発明は勿論、このような各種の回路基板Eの製造方法にも、適用される。
回路基板Eの製造方法は、このようになっている。
【0027】
《レジスト回収装置11の概要について》
以下、本発明のレジスト回収装置11について、図1,図2,図3を参照して、説明する。
まず前提として、前述したように、回路基板Eの製造工程中、現像工程や剥膜工程では、搬送される基板材Cに対し、現像液や剥離液等のアルカリ溶液Bが噴射されて、基板材Cの外表面から、感光性のレジストAが除去される。
すなわち、図1中に示したように、現像機1や剥離機2のチャンバー5内では、ローラーコンベヤ10等のコンベヤにて水平搬送される基板材Cに対し、上下に対向配設された各スプレーノズル9から、例えば3%程度の苛性ソーダを含有したアルカリ性の薬液、つまり現像液又は剥離液よりなるアルカリ溶液Bが、噴射される。
もって、基板材Cの外表面の感光性のレジストAが除去される。つまり、現像機1では、回路F形成部分以外のレジストAが溶解除去され、剥離機2では、回路F形成部分のレジストAが、剥膜除去される。
【0028】
レジスト回収装置11は、回路基板Eの製造工程において、このような現像工程や剥膜工程の付帯工程として、現像機1や剥離機2にそれぞれ付設使用される。
現像工程の場合は、現像機1から、噴射使用後のアルカリ溶液Bである現像液と、除去されたレジストAとの混合体Dが、付設されたレジスト回収装置11に供給される。剥膜工程の場合は、剥離機2から、噴射使用後のアルカリ溶液Bである剥離液と、除去されたレジストAとの混合体Dが、付設されたレジスト回収装置11に供給される。
レジスト回収装置11は、このように供給されたアルカリ溶液Bと感光性のレジストAとの混合体Dから、レジストAを分離,回収する。そして、液槽12,プレ脱液部13,レジスト濃縮部14,レジスト回収部15,泡回収部30等、を有してなる。
レジスト回収装置11は、概略このようになっている。以下、その詳細について説明する。
【0029】
《プレ脱液部13について》
まず、図2等を参照して、プレ脱液部13について説明する。レジスト回収装置11のプレ脱液部13は、脱液ネット16を備えており、供給された混合体Dは、まず脱液ネット16上を流れることにより、かなりの量のアルカリ溶液Bが、分離,落下されて、液槽12へと回収される。
すなわちプレ脱液部13は、下降傾斜して配設された脱液ネット16と、脱液ネット16下に上下間隔を存して配設された多孔プレート17と、多孔プレート17上に多数立設された突起18と、を備えた構造よりなる。
そして脱液ネット16下に流下,落下したアルカリ溶液Bは、多孔プレート17と突起18にて反転,バウンド,浮沈運動され、もって脱液ネット16を下から揺らすと共に、多孔プレート17上から液槽12へと落下,回収される。
【0030】
このようなプレ脱液部13について、更に詳述する。まず混合体Dは、図1に示したように、現像機1や剥離機2のチャンバー5内の若干傾斜した仕切床19上に、落下した後、その傾斜に沿って流れる。そして、排出口20から供給管21を介し、受入口22を経由してレジスト回収装置11へと、流し込まれる。
そして、このようにレジスト回収装置11に供給された混合体Dは、まず、液槽12の液面上に上下間隔を存して配設されたプレ脱液部13の脱液ネット16上を流れる。
図2に示したように、脱液ネット16は、微細なネット孔が密に多数形成されると共に、略長板ネット状をなしており、ネット孔の径は、微細化したレジストAでも通過不能な網目寸法に設定されており、例えば、数10μm〜数μm程度、200メッシュ程度に設定されている。そして、このような脱液ネット16が、長手方向に若干下降傾斜して配設されている。
混合体Dは、このような脱液ネット16上を、受入口22下の上流側から下流側へと、その傾斜に沿って流れる。もって、混合体Dに混入されていたアルカリ溶液Bのかなりの部分が、脱液ネット16のネット孔にて濾過,分離されて、下位の多孔プレート17を介し、下方の液槽12に向けて落下して行く。
【0031】
次に、プレ脱液部13の多孔プレート17は、脱液ネット16下に上下間隔を存しつつ、平行に並んで配設されており、回収孔が多数形成されている。
多孔プレート17としては、例えばパンチングプレートが使用され、多数の小さな回収孔(孔径は、脱液ネット16のネット孔よりは遥かに大)を備えると共に、上位の脱液ネット16と見合った寸法の長板状をなし、見合った傾斜角度で配設,固定されている。
そして、このような多孔プレート17上には、リキッドカットバーとして機能する突起18が多数、立設,固定されている。突起18は、前後(上下流方向)に相互間隔を存しつつ配設され、その高さ寸法が、脱液ネット16と多孔プレート17間の上下間隔の例えば半分程度に設定されている。
そこで、前述により脱液ネット16にて混合体Dから分離,落下されたアルカリ溶液Bは、下位の多孔プレート17の回収孔を経由して、下方の液槽12に向けて落下するが、かなりの部分が途中で、多孔プレート17の回収孔以外の表面部分にて、反転され,跳ね返される。
そしてアルカリ溶液Bは、バウンド,浮沈運動しつつ多孔プレート17上を流れる。又、このアルカリ溶液Bのバウンド,浮沈運動は、プレート17上に立設された各突起18の流れ止め機能にて、大きく助長される。
もって、このようなバウンド,浮沈運動により、上位の脱液ネット16が上下に揺らされるので、脱液ネット16上を流れる混合体D中のレジストAが、脱液ネット16上に沈殿,付着することが阻止される。つまり、脱液ネット16の目詰まりが防止される。
プレ脱液部11は、このようになっている。
【0032】
《レジスト濃縮部14について》
次に、図2,図3を参照して、レジスト濃縮部14について説明する。レジスト回収装置11のレジスト濃縮部14は、プレ脱液部13から供給された混合体Dについて、レジストAを濃縮すると共に、アルカリ溶液Bを分離して液槽12へと回収させる。
すなわち、レジスト濃縮部14は、液槽12中に立設された略逆円錐状の捕集ネット23を備えており、プレ脱液部13の脱液ネット16上から供給された混合体Dは、捕集ネット23内を下方に向け吸引,流下される。
もって混合体Dは、かなりのアルカリ溶液Bが、捕集ネット23外に流出し、下方に向け吸引,流下されて、液槽12へと吸引,回収されるので、レジストAが、捕集ネット23内の下部に向けて、順次濃縮されて行く。
又、レジスト濃縮部14の捕集ネット23の外側には、間隔を存して多孔カバー24が、周設されている。そこで、液槽12内のアルカリ溶液Bが、多孔カバー24内に流入すると共に、捕集ネット23の外面に沿って下方に向け吸引,流下され、もって液槽12へと吸引,回収される。
【0033】
このようなレジスト濃縮部14について、更に詳述する。液槽12の中央部には、捕集ネット23と多孔カバー24とが、同心状に立設されている。
すなわち、捕集ネット23は、上面が開放されると共に下方ほど小径となった、漏斗状,略逆円錐状をなすと共に、微細なネット孔が密に多数形成されている。ネット孔の径は、微細化したレジストAも通過不能な網目寸法に設定されており、例えば、数10μm〜数μm程度、200メッシュ程度に設定されている。
そして、このような捕集ネット23の外側に、左右間隔を存して例えば円筒状の多孔カバー24が立設されており、多孔カバー24は、多数の小さな孔(孔径は、捕集ネット23のネット孔よりは遥かに大)を備えている。
捕集ネット23の上部は、液槽12の液面上に突出すると共に、プレ脱液部13の脱液ネット16下流側より、一段低く配されており、捕集ネット23の下部は、液槽12下に連通して垂下付設された下ボックス部25内に、至っている。多孔カバー24の上部は、捕集ネット23と共に液槽12の液面上に突出し、下部は、液槽12底面に固定されている。
【0034】
そこで、プレ脱液部13の脱液ネット16下流からの混合体Dは、捕集ネット23上に供給された後、捕集ネット23内部を下へと流下する。
そして混合体Dは、捕集ネット23内部を自然流下すると共に、捕集ネット23下端に接続された配管26のポンプ27にて、吸引,流下される。混合体D中のレジストAも、液面に浮上することなく、下方に向けて吸引,流下される。
そして混合体Dは、下方ほど径小となって捕集ネット23内部を、このように吸引,流下されるので、混入されていたかなりの量のアルカリ溶液Bが、徐々に捕集ネット23外へと流出して行く。
そこで混合体Dは、下方ほど径小となった捕集ネット23下部に向け、残ったレジストAが次第に濃縮されて行く。そして混合体Dは、捕集ネット23下端に接続された配管26,ポンプ27を介し、レジスト回収部15へと供給される。
【0035】
これに対し、捕集ネット23外では、次のようになる。すなわち、液槽12内のアルカリ溶液Bが、多孔カバー24の孔を介し流入して、捕集ネット23の外面に至ると共に、下ボックス部25に接続された配管26のポンプ28にて吸引される。もって、前述により捕集ネット23外へと流出してきたアルカリ溶液Bと共に、多孔カバー24と捕集ネット23の間を、下方に向けて吸引,流下される。
そして、このようなアルカリ溶液Bは、配管26,ポンプ28を介し、液槽12へと循環,供給される。
ところで、ポンプ27を介しレジスト回収部15へと供給される混合体Dと、ポンプ28を介し液槽12へと供給されるアルカリ溶液Bとを比較すると、前者は、濃いレジストA,比較的大きな破片のレジストAが混入しているのに対し、後者は、極めて薄いレジストA,ミクロ的に小さなレジストAしか混入されていないと、表現することもできる。
なお、配管26に介装されたポンプ27,28は、間欠駆動タイプよりなり、吸引駆動と停止とが、明確に順次繰り返されるタイプよりなる。
【0036】
《レジスト回収部15について》
次に、図3を参照して、レジスト回収部15について説明する。レジスト回収装置11のレジスト回収部15は、レジスト濃縮部14から供給された混合体Dから、レジストAを捕集すると共に、アルカリ溶液Bを液槽12へと分離,回収させる。
すなわちレジスト回収部15は、槽状をなし濾過ネット29を備えており、レジスト濃縮部14の捕集ネット23下部から配管26やポンプ27を介して供給され濃縮されたレジストAを含んだ混合体Dは、大部分のレジストAが濾過ネット29にて捕集,回収される。
そして、濾過ネット29にて濾過された後のアルカリ溶液B、つまり混合体Dから大部分のレジストAが除去されて得られたアルカリ溶液Bが、配管26を経由して、液槽12へと供給される。
レジスト回収部15は、このようになっている。
【0037】
《液槽12について》
次に、液槽12について説明する。図1等に示したように、レジスト回収装置11の回収室Hの下部が、液槽12となっており、レジスト回収装置11そして回収室Hは、現像機1や剥離機2に隣接配設されている。
そして液槽12は、図2,図3に示したように、上位のプレ脱液部13からアルカリ溶液Bが落下,回収,貯留される。又、下ボックス部25からのアルカリ溶液Bが、配管26やポンプ28を介して、供給,回収,貯留される。更に、レジスト回収部15からもアルカリ溶液Bが、配管26やポンプ27を介して、供給,回収,貯留される。又、泡回収部30の消泡ネット31からも、アルカリ溶液Bが、落下,回収,貯留される。
これと共に、図1に示したように、貯留されたアルカリ溶液Bは、配管26やポンプ32を介し、現像機1や剥離機2へと再使用のため循環供給されて、そのスプレーノズル9から噴射された後、レジストAと共に混合体Dとなって、レジスト回収装置11のプレ脱液部13に供給される。
液槽12は、このようになっている。
【0038】
《泡回収部30について》
次に、図2,図3を参照して、泡回収部30について説明する。レジスト回収装置11には、更に、泡回収ボックス33,液化ノズル34,消泡ネット31を備えた、泡回収部30が配設されている。
そして泡回収ボックス33は、レジスト濃縮部14上に間隔を存して配設され、下面が開放されており、混合体D上部のアルカリ溶液Bの泡Gを吸引する。
液化ノズル34は、該泡回収ボックス33から供給された泡Gを、消泡ネット31へと噴射する。消泡ネット31は、噴射された泡Gを液化し、アルカリ溶液Bに戻して、液槽12へ回収させる。
【0039】
このような泡回収部30について、更に詳述する。レジスト回収装置11の回収室Hの中央上部、つまり液槽12の中央部上には、泡回収部30の泡回収ボックス33が配設されている。
この泡回収ボックス33は、下面が開放された例えば円筒箱状をなし、開放された下面が、上下間隔を存し下位の捕集ネット23の上面開口に、対向位置している。
又、回収ボックス33の外側には、泡回収壁35が周設形成されている。泡回収壁35は、例えば円筒状をなし、回収室29の天井から液槽12内まで垂下設されており、プレ脱液部13の脱液ネット16上に横から臨んで、大きな開口36が形成されている。
【0040】
そこで、プレ脱液部13の脱液ネット16上から供給された混合体D上部の泡Gは、開口36,泡回収ボックス33を経由し、泡回収ボックス33頂端に接続された配管26のポンプ37にて吸引され、もって液化ノズル34に供給される。
そして泡Gは、液化ノズル34から消泡ネット31に噴射される。消泡ネット31は、多数のネット孔が密に多数形成されると共に、液槽12の液面上に上下間隔を存して配設されている。
そこで消泡ネット31に噴射された泡Gは、圧射とネット孔の凹凸により、潰され破壊されて液化し、元のアルカリ溶液Bとなって、液槽12に落下,回収,貯留される。このようにして回収されたアルカリ溶液Bも、前述により貯留されていたアルカリ溶液Bと共に、再使用される。
泡回収部30は、このようになっている。
【0041】
《作用等について》
本発明のレジスト回収装置11は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)回路基板Eの製造工程において、噴射使用後のアルカリ溶液Bと基板材Cから除去された感光膜つまりレジストAとの混合体Dは、レジスト回収装置11に供給される(図1を参照)。
すなわち、現像工程の現像機1で噴射使用された現像液又は剥離工程の剥離機2で噴射使用された剥離液、つまりアルカリ溶液Bと、基板材Cの外表面から除去された微少破片状の感光性のレジストAとが、混じり合った混合体Dは、→現像機1又は剥離機2から、それぞれに付設されたレジスト回収装置11に、供給される。
【0042】
(2)供給された混合体Dは、上部上を泡Gが覆うと共に、比重の軽いレジストAが上部ほど多く浮遊し、下部ほど少ない状態となっている。→そこで混合体Dは、まず、レジスト回収装置11の下降傾斜したプレ脱液部13の脱液ネット16上を流れることにより、→混合体Dの下部から、かなりの量のアルカリ溶液Bが、濾過,分離,落下されて、液槽12へと回収される(図2を参照)。
その際、プレ脱液部13は、脱液ネット16下に突起18付きの多孔プレート17を備えた構造よりなるので、→脱液ネット16下に流下,落下したアルカリ溶液Bは、多孔プレート17による反転と突起18による下部の流れ止めにより、跳ね返り,バウンドして、波立ち,浮沈運動し、→もって、脱液ネット16を下から上下に揺らすと共に、→多孔プレート17上から液槽12へと落下,回収される。
このように脱液ネット16は、常時下から揺らされてリフレッシュされるので、→その上を流れる混合体D中のレジストAにて、目詰まりすることが防止される。
【0043】
(3)さて、このレジスト回収装置11において、プレ脱液部16でかなりの量のアルカリ溶液Bが分離された混合体Dは、次に、プレ脱液部13からレジスト濃縮部14に供給され、もって、レジストAが濃縮されると共に、アルカリ溶液Bが分離されて液槽12へと回収される(図2,図3を参照)。
すなわち、プレ脱液部13の脱液ネット16上からレジスト濃縮部14に供給された混合体Dは、→液槽12中に立設されたレジスト濃縮部14の略逆円錐状の捕集ネット23内を、下方に向け吸引,流下される。
→もって、混合体D中から、かなりの量のアルカリ溶液Bが、捕集ネット23にて濾過,分離され、捕集ネット23外に流出して、→下方に向け吸引,流下され、もって配管26やポンプ28を介し、液槽12へと吸引,回収される。→そこで、混合体D中のレジストAが、捕集ネット23の内面、それから下部に向け順次引き込まれ,集められ,濃縮されて行く。
【0044】
(4)又、このようなレジスト濃縮部14の略逆円錐状の捕集ネット23の外側には、円筒状の多孔カバー24が周設されている。
→そこで、液槽12内のアルカリ溶液Bが、多孔カバー24内に流入した後、→捕集ネット23の外面に沿って下方に向け吸引,流下され、→もって、上述により捕集ネット23内から外に流出,流下してきたアルカリ溶液Bと共に、液槽12へと配管26やポンプ28を介し吸引,回収される(図2,図3を参照)。(なお、このように配管26やポンプ28を経由して回収されるアルカリ溶液B中には、若干混入していた泡Gが潰され破壊された後の空気も、併存している。)
このようにして、レジスト濃縮部14の捕集ネット23の内外には、同方向かつ同圧の流れが形成される。→つまり、捕集ネット23の内部では、濃縮されたレジストAを含んだ混合体Dが、下方に吸引,流下される流れが形成され、外部では、アルカリ溶液Bが下方に吸引,流下される流れが形成される。→そこで、混合体D中のレジストAにて、捕集ネット23が目詰まりすることが防止される。
【0045】
(5)さて、濃縮されたレジストAを含んだ混合体Dは、それから、レジスト濃縮部14の捕集ネット23下部から、→配管26やポンプ27を介し、レジスト回収部15に供給される。(なお、このように配管26やポンプ27を経由して供給される混合体D中には、若干混入していた泡Gが潰され破壊された後の空気も、併存している。)
→そして、レジスト回収部15に供給された混合体Dは、大部分のレジストAが、濾過ネット29にて濾過,捕集,回収されると共に、→アルカリ溶液Bが、配管26を介し液槽12へと回収される(図3を参照)。
【0046】
(6)なお、目詰まり防止に関しては、混合体Dやアルカリ溶液Bを吸引するポンプ27,28について、間欠駆動タイプを採用することにより、より確実に実現される(図3を参照)。
すなわち、間欠駆動タイプのポンプ27,28を採用して、→混合体Dを、レジスト回収部15に向け間欠的に吸引することにより、又、アルカリ溶液Bを、液槽12に向け間欠的に吸引することにより、→レジスト濃縮部14の捕集ネット23やレジスト回収部15の濾過ネット29が、吸引波動,吸引衝撃を受け、→もって、混合体D中のレジストAにて目詰まりすることが、より確実に防止される。
【0047】
(7)ところで、現像機1又は剥離機2において、現像液や剥離液として噴射使用されたアルカリ溶液Bは、アルカリ性で苛性ソーダ等を含有した薬液よりなると共に、加温されている。そこで噴射に伴い、多量の気泡つまり泡Gが生じているので、→現像機1又は剥離機2からレジスト回収装置11に供給された混合体Dも、アルカリ溶液Bの多量の泡Gを伴っている(図1を参照)。
→そこで、このレジスト回収装置11には、泡回収部30が配設されている(図2,図3を参照)。→そして、アルカリ溶液Bの泡Gは、気泡なので混合体D上部上に位置しており、→レジスト濃縮部14上において、泡回収部30の泡回収ボックス33にて吸引された後、→配管26やポンプ37を介し、液化ノズル34に供給され、→液化ノズル34から消泡ネット31へと噴射され,吹き付けられる。→もって、消泡ネット31上にて、泡Gが潰され破壊されて液化され、アルカリ溶液Bに戻されて、→液槽12に落下,回収される。
なお、泡Gを吸引するポンプ37について、間欠駆動タイプを採用することによっても、泡Gの潰し,液化が助長される。又、混合体D中に混入されてレジスト濃縮部14に流入した泡Gは、捕集ネット23を通過する際に潰され破壊されて、アルカリ溶液Bに戻されると共に、空気となってアルカリ溶液Bや混合体D中に併存する。
→このようなプロセスにより、→混合体Dの液面にレジストAを浮かせてしまう泡G、もってレジストAの分離,回収を不確実化させてしまう泡Gが、解消,消滅せしめられる。→そしてこれは、基板材Cの処理に悪影響を及ぼす虞のある消泡剤を使用することなく、実現される。
【0048】
(8)さて、このレジスト回収装置11は、このようなプレ脱液部13,レジスト濃縮部14,泡回収部30等を採用してなる。
→そこで、レジストAとアルカリ溶液Bとが、確実に分離,回収され、→もって、レジストAの回収効率が向上し、アルカリ溶液Bのライフ寿命が長くなり、→アルカリ溶液Bが、現像機1や剥離機2において、繰り返し循環再使用可能となる(図1を参照)。
【0049】
(9)又、プレ脱液部13で、予め、かなりの量のアルカリ溶液Bを、混合体D中から分離,回収してしまうので、→事後その分だけ、レジスト濃縮部14に運んで供給する混合体Dの量が、削減される。
→これに加え、レジスト濃縮部14でも、かなりの量のアルカリ溶液Bを、混合体D中から分離,回収するので、→更にその分だけ、レジスト回収部15に運び供給することが必要な混合体Dの量が、削減される。
→そこで、レジスト濃縮部14やレジスト回収部15が、小型化でき、→レジスト回収装置11も、全体的に小型化される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係るレジスト回収装置について、発明を実施するための最良の形態の説明に供し、正断面説明図である。
【図2】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、要部の側断面説明図である。
【図3】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、全体の側断面説明図である。
【図4】この種従来例の説明に供し、正断面説明図である。
【図5】基板(基板材)の模式化した平面説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 現像機
2 剥離機
3 レジスト回収装置(従来例)
4 フィルター
5 チャンバー
6 液槽(従来例)
7 ポンプ(従来例)
8 配管(従来例)
9 スプレーノズル
10 ローラーコンベヤ
11 レジスト回収装置(本発明)
12 液槽(本発明)
13 プレ脱液部
14 レジスト濃縮部
15 レジスト回収部
16 脱液ネット
17 多孔プレート
18 突起
19 仕切床
20 排出口
21 供給管
22 受入口
23 捕集ネット
24 多孔カバー
25 下ボックス部
26 配管(本発明)
27 ポンプ(本発明)
28 ポンプ(本発明)
29 濾過ネット
30 泡回収部
31 消泡ネット
32 ポンプ(本発明)
33 泡回収ボックス
34 液化ノズル
35 泡回収壁
36 開口
37 ポンプ(本発明)
A レジスト
B アルカリ溶液
C 基板材
D 混合体
E 回路基板
F 回路
G 泡
H 回収室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の製造工程において使用され、供給された噴射後のアルカリ溶液と除去された感光性のレジストとの混合体から、該レジストを回収するレジスト回収装置であって、液槽,プレ脱液部,レジスト濃縮部,レジスト回収部を有しており、
該プレ脱液部は、該混合体から該アルカリ溶液を分離して、該液槽へと回収させ、
該レジスト濃縮部は、該プレ脱液部から供給された該混合体について、該レジストを濃縮すると共に、該アルカリ溶液を分離して該液槽へと回収させ、
該レジスト回収部は、該レジスト濃縮部から供給された該混合体について、該レジストを捕集,回収すると共に、該アルカリ溶液を該液槽へと分離,回収させること、を特徴とするレジスト回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載したレジスト回収装置において、該プレ脱液部は、脱液ネットを備えており、供給された該混合体は、まず該脱液ネット上を流れることにより、かなりの該アルカリ溶液が、分離,落下されて該液槽へと回収され、
該レジスト濃縮部は、該液槽中に立設された略逆円錐状の捕集ネットを備えており、該プレ脱液部の脱液ネット上から供給された該混合体は、該捕集ネット内で下方に向け吸引,流下されることにより、かなりの該アルカリ溶液が、該捕集ネット外に流出し下方に向け吸引,流下されて該液槽へと吸引,回収されると共に、該レジストが、該捕集ネット内下部に向け順次濃縮され、
該レジスト回収部は、濾過ネットを備えており、該レジスト濃縮部の捕集ネット内下部から供給され濃縮された該レジストを含んだ該混合体は、該レジストが、該濾過ネットにて捕集,回収されると共に、該アルカリ溶液が、該液槽へと回収されること、を特徴とするレジスト回収装置。
【請求項3】
請求項2に記載したレジスト回収装置であって、回路基板の製造工程の現像機に付設され、該アルカリ溶液は現像液よりなること、を特徴とするレジスト回収装置。
【請求項4】
請求項2に記載したレジスト回収装置であって、回路基板の製造工程の剥離機に付設され、該アルカリ溶液は剥離液よりなること、を特徴とするレジスト回収装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載したレジスト回収装置において、更に、泡回収ボックス,液化ノズル,消泡ネットを備えた、泡回収部が配設されており、
該泡回収ボックスは、該レジスト濃縮部上に間隔を存して配設され、下面が開放されており、該混合体上部の該アルカリ溶液の泡を吸引し、
該液化ノズルは、該泡回収ボックスから供給された該泡を該消泡ネットへと噴射し、
該消泡ネットは、噴射された該泡を液化し該アルカリ溶液に戻して、該液槽へ回収させること、を特徴とするレジスト回収装置。
【請求項6】
請求項3又は4に記載したレジスト回収装置において、該プレ脱液部は、下降傾斜して配設された該脱液ネットと、該脱液ネット下に上下間隔を存して配設された多孔プレートと、該多孔プレート上に立設された各突起と、を備えた構造よりなり、
該脱液ネット下に落下した該アルカリ溶液は、該多孔プレートと該突起にてバウンド,浮沈運動され、もって該脱液ネットを下から揺らすと共に、該多孔プレート上から該液槽へと落下,回収されること、を特徴とするレジスト回収装置。
【請求項7】
請求項3又は4に記載したレジスト回収装置において、該レジスト濃縮部の捕集ネットの外側に、間隔を存して多孔カバーが周設されており、
該液槽内の該アルカリ溶液は、該多孔カバー内に流入すると共に、該捕集ネットの外面に沿って下方に向け吸引,流下され、もって該液槽へと吸引,回収されること、を特徴とするレジスト回収装置。
【請求項8】
請求項5又は7に記載したレジスト回収装置において、該混合体,該アルカリ溶液,又は該泡を吸引するポンプは、間欠駆動タイプよりなること、を特徴とするレジスト回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−300994(P2006−300994A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118120(P2005−118120)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000220240)東京化工機株式会社 (22)
【Fターム(参考)】