説明

レジスト除去用組成物

【課題】酸性で、しかも100℃以下の低温で、レジストを除去する。
【解決手段】硫酸及び有機ニトリルを含んでなるレジスト除去用組成物を用いる。
さらにアルコール、ケトン、エステルを含んでも良い。各成分の組成としては、例えば硫酸が0.5〜98重量%、有機ニトリルが1〜99重量%、アルコールが0〜30重量%、ケトン及び/又はエステルが0〜50重量%の範囲が好ましい。有機ニトリルとしてはアセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル、アジポニトリル等が例示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレジスト除去用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体、LCDの製造工程において、現像、エッチングの工程を経た後の不要なレジストは、そのまま、或いはアッシングした後に、レジスト剥離液によって剥離、除去されている。
【0003】
従来、フォトレジストを基体上から除去するため、あるいはレジスト残渣を基体上から除去するため、様々なレジスト剥離剤が提案されてきた。例えばアルカノールアミン類を用いたレジスト剥離用組成物等が開示されている(特許文献1参照)。一般にこれらのレジスト剥離液は塩基性下で使用するが、近年、塩基性下ではダメージを受ける半導体材料が多くなってきており、塩基性のアルカノールアミンを含むレジスト剥離液では使用できない場合がある。
【0004】
酸性原料を使用したレジスト剥離液として、硫酸を過酸化水素と組み合わせたものが古くから知られている。これはSPM洗浄と呼ばれ、レジストなどの有機物を除去するために広く使用されている。しかし、SPM洗浄は100℃以上の処理温度を必要とするため、最先端の微細化された半導体などの電子デバイスは、ダメージを受けやすくなっている。
【0005】
そこで、酸性で、しかも100℃以下の低温でレジストを除去できる組成物がが求められている。
【0006】
【特許文献1】特開平04−289866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、酸性で、しかも100℃以下の低温でレジストを除去できる組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、レジスト除去用組成物について鋭意検討した結果、硫酸及び有機ニトリルを含んでなるレジスト除去用組成物がレジストの除去性に極めて優れていることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0009】
すなわち本発明は、硫酸及び有機ニトリルを含んでなるレジスト除去用組成物である。
【0010】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0011】
本発明のレジスト除去用組成物は、硫酸及び有機ニトリルを含んでいる。
【0012】
本発明のレジスト除去用組成物に使用する硫酸には特に制限はなく、濃硫酸、希硫酸、発煙硫酸など問題無く使用することができ、一般に工業的に流通している硫酸を使用することができる。
【0013】
本発明のレジスト除去用組成物に使用する硫酸は、レジスト、反射防止膜、ギャップフィル材などの有機ポリマー被膜の結合を切断し、これらの除去を促進する効果がある。
【0014】
本発明のレジスト除去用組成物に使用する有機ニトリルは、シアノ基を有する有機物であればいずれも使用することができる。沸点、溶媒への溶解度、価格から、好ましい有機ニトリルを例示すると、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル、アジポニトリルが挙げられるが、これらのうち、特に、アセトニトリルが好ましい。これらは単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。これらの有機ニトリルはレジスト除去を促進することができる。
【0015】
本発明のレジスト除去用組成物には、アルコールを添加しても良い。使用できるアルコールには特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、プロポキシプロパノール、ブトキシプロパノールなどが挙げられる。これらは単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。これらのうち、ブトキシプロパノール、ブトキシエトキシエタノールが好ましい。これらのアルコールはレジスト除去を促進することができる。
【0016】
本発明のレジスト除去用組成物には、さらにケトン及び/又はエステルを添加しても良い。本発明のレジスト除去用組成物に添加できるケトン及び/又はエステルに特に制限はないが、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルなどのエステル、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトンが挙げられる。これらのうち、特に、炭酸エチレンが好ましい。これらは単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。これらのケトン及び/又はエステルはレジスト除去を促進させることができる。
【0017】
本発明のレジスト除去用組成物において、各成分の比率は成分の種類により変動するため一概に決めることはできないが、例えば硫酸が0.5〜98重量%、有機ニトリルが1〜99重量%、アルコールが0〜30重量%、ケトン及び/又はエステルが0〜50重量%の範囲の中から適宜選択できる。
【0018】
硫酸が0.5重量%未満であるとレジスト等の除去能力が低く、98重量%を越えると危険性が高いため、特に1〜50重量%が好ましい。有機ニトリルが1重量%未満あるいは99重量%を超えると除去能力が低下する。特に20〜95重量%が好ましい。アルコールは30重量%を越えるとレジスト除去能力が低下する。ケトン及び/又はエステルは50重量%を超えると、レジスト除去能力が低下する。
【0019】
本発明のレジスト除去用組成物を使用する温度は、0℃〜85℃の範囲が好ましく、20〜80℃の範囲がさらに好ましい。0℃以下の温度では、レジストの除去速度が工業的でないほど遅くなり、85℃を超えると有機ニトリルが蒸発するため、組成が変動してしまう。
【0020】
本発明のレジスト除去用組成物は、レジストを除去する様々な分野で使用できる。例示すると、半導体製造工程又はLCDモジュール製造工程で発生した不要なレジスト及びアッシング後のレジスト残渣を除去することができる。
【0021】
また本発明のレジスト除去用組成物は、レジストと共に使用されることが多い、反射防止膜、ギャップフィル剤などを除去するのにも使用することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のレジスト除去用組成物は、酸性で、しかも100℃以下の低温で、レジストを除去することができる。
【実施例】
【0023】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、表記を簡潔にするため、以下の略記号を使用した。
AcCN:アセトニトリル
PrCN:プロピオニトリル
BuCN:ブチロニトリル
BzCN:ベンゾニトリル
ApCN:アジポニトリル
EG:エチレングリコール
BP:ブトキシプロパノール
BEE:ブトキシエトキシエタノール
EtOH:エタノール
EC:炭酸エチレン
PC:炭酸プロピレン
AC:アセトン
DMC:炭酸ジメチル
HPO:過酸化水素水(31重量%水溶液)
実施例1〜14、比較例1〜4
シリコンウエハ上に、市販のi線用レジストを2μmの厚みで塗布し、120℃でベーク処理して、イオン種としてひ素を1014個/cmイオン注入した。
上記、シリコンウエハを表1記載の組成の溶液中に所定の時間、及び所定の温度で浸漬した。その後、水洗、乾燥し、表面状態を観察した結果を表1に記載した。なお、レジスト除去性は以下のように評価した。
【0024】
○:除去性良好
△:一部残存物有り
×:大部分残存
【0025】
【表1】

本発明のレジスト除去用組成物は、レジストの除去性に優れていたが、比較例の組成物は特にレジストの除去性が不十分であった。
【0026】
なお、レジスト除去用組成物の除去性能は低温になるほど低下するため、同じ浸漬時間の場合、低い浸漬温度で除去できるものほど除去性能に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸及び有機ニトリルを含んでなるレジスト除去用組成物。
【請求項2】
有機ニトリルがアセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル、アジポニトリルから成る群より選ばれる少なくとも1種を含んでなる請求項1記載のレジスト除去用組成物。
【請求項3】
アルコールを含んでなる請求項1〜請求項2に記載のいずれかに記載のレジスト除去用組成物。
【請求項4】
アルコールがメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、プロポキシプロパノール、ブトキシプロパノールから選ばれる少なくとも1種を含んでなる請求項3のいずれかに記載のレジスト除去用組成物。
【請求項5】
ケトン及び/又はエステルを含んでなる請求項1〜請求項4のいずれかに記載のレジスト除去用組成物。
【請求項6】
ケトン及び/又はエステルが、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、イソホロン、シクロヘキサノンから成る群より選ばれる少なくとも1種を含んでなる請求項1〜請求項5に記載のレジスト除去用組成物。
【請求項7】
硫酸が0.5〜98重量%、有機ニトリルが1〜99重量%、アルコールが0〜30重量%、ケトン及び/又はエステルが0〜50重量%である請求項1〜請求項6のいずれかに記載のレジスト除去用組成物。

【公開番号】特開2006−91238(P2006−91238A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−274646(P2004−274646)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】