説明

レチノイドとβ−アミノイソ酪酸誘導体とを含む組成物

【課題】上皮細胞分化へのレチノイド活性を高め、皮膚の状態を損なう多くの現象の予防と治療のために使用される化粧用または医療用組成物を提供する。
【解決手段】レチノールに代表されるレチノイドを約0.001重量%〜約2重量%に対し、少なくとも1種のβ−アミノイソ酪酸、または、その塩もしくはエステルを約0.00l重量%〜約10重量%併用すれば、レチノイドの活性に有意な相乗的増大が起こることを見出し、皮膚、毛髪、または、爪への局所的塗布の組成物を得た。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の背景〕
ヒトの皮膚はある種の老化過程を受けるが、それらの老化過程には内因性のプロセス(たとえば、経時老化)に起因するものもあれば、外因性の要因(たとえば、光線老化)に起因するものもある。更に、にきび、脂性の皮膚もしくは乾燥した皮膚、角化症、酒さ、光過敏反応、炎症反応、紅斑反応、および、アレルギー反応もしくは自己免疫反応性の反応(たとえば、皮膚病および光線皮膚症)のような、皮膚への一時的な変化もしくは永続的な変化さえ生じ得る。
【0002】
上記の老化過程の結果には、皮膚が薄くなること、表皮と真皮との交絡が弱まること、および、細胞数と供給血管数の減少が含まれ得る。このことによって、結果的に、しばしば、細線および皺が生じ、色素異常が起こり得る。
【0003】
レチノイド類(たとえば、レチノイン酸、レチノール、および、それらのエステル)、ならびに、タゾロテン(tazorotene)は、上皮細胞の分化に作用し、それゆえ、皮膚の状態を損なう多くの現象の予防と治療のために使用される。たとえば、にきび、乾癬、老人性角化症、皮膚の変色および皺に対する使用が開示されてきた。たとえば、PCT特許出願WO93/19743号および同WO02/02074号を参照されたい。
【0004】
出願人は、意外にも、β−アミノイソ酪酸とその誘導体が、レチノイド活性に対し、有意な相乗的増大を引き起こすことを見出した。
【0005】
〔発明の概要〕
本発明は、(i)少なくとも1種のレチノイドと、(ii)少なくとも1種の式Iの化合物、または、その塩もしくはエステルとを含む組成物、および、皮膚、毛髪、もしくは、爪への局所的塗布のために使用される物品の製造のための、その組成物の使用に関する。
【0006】
本発明のその他の特徴および利点は、本発明の詳細な説明、および、請求項から明らかになるであろう。
【0007】
〔発明の詳細な説明〕
当業者ならば、本明細書の記載に基づいて、本発明を十分に利用できるであろう。以下の具体的な実施形態は、単なる例示に過ぎず、いかなる意味においても本開示の残りの部分を制限するものではないと解することができる。
【0008】
別に定義されない限り、本明細書で使用される全ての専門用語および科学用語は、当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有している。また、本明細書で言及される全ての出版物、特許出願、特許、および、その他の引用文献は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書で使用される全ての割合%は、別に指定されない限り、重量による。
【0009】
(定義)
本明細書で使用される「局所的塗布」および「局所的に塗布する」は、たとえば、手もしくはワイプ等の塗布具の使用により、治療が必要な皮膚、毛髪、もしくは、爪の上に、直接置くこと、もしくは、塗り拡げることを意味する。
【0010】
本明細書で使用される「化粧学上許容できる」は、この用語が説明している、化粧学的に活性な薬剤、不活性な成分、または、組成物が、適切な利益/リスク比に見合って、過度の毒性、不適合性、不安定性、炎症、アレルギー反応等を起こすことなく、組織(たとえば、皮膚)と接触した状態における(たとえば、美容品または医療品としての)使用に適することを意味する。
【0011】
(レチノイド類)
本発明の組成物は、1種以上のレチノイド類を含む。レチノイド類の例には、レチノール、レチノイン酸、レチナール、ならびに、それらの塩およびエステル(たとえば、レチニルパルミテート、レチニルプロピオネート、および、レチニルアセテート)が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、本組成物は、レチノール(たとえば、オールトランスレチノール)を含む。その他のレチノイド類は、米国特許第5,051,449号に開示されている。本発明の組成物では、2種または3種以上のレチノイド類の混合物を使用することができる。
【0012】
一実施形態では、本組成物は、化粧学上許容できる量のレチノイドまたは複数のレチノイドを含む。このレチノイドまたは複数のレチノイドは、組成物中、典型的には、少なくとも0.001重量%、好ましくは約0.001重量%〜約5重量%の量で存在し、特に、約0.005重量%〜約2重量%、たとえば、約0.01重量%〜約0.5重量%の量で存在する。
【0013】
(β−アミノイソ酪酸、および、その誘導体)
本発明の組成物は、1種または複数種の式Iの化合物、または、その塩もしくはエステルを含み、
【0014】
【化1】

式中、
は、−O−R、または、
【化2】

であり、
、R、R5、および、Rは、独立に、H;−OH;アルコキシ;直鎖のまたは枝分かれしたC〜C20のアルキル基(たとえば、メチル;エチル;n−プロピル、もしくは、イソプロピル;n−ブチル、イソブチル、もしくは、t−ブチル;ペンチル;ヘキシル;ヘプチル;オクチル;または、ノニル)であって、アルキル基が任意で酸素原子により割り込まれているアルキル基;直鎖のまたは枝分かれしたC〜C20のアルケニル基(たとえば、プロペニルまたはブテニル);および、直鎖のまたは枝分かれしたC〜C20のヒドロキシアルキル基であって、ヒドロキシル基が任意でアルキル基の第1級炭素原子または第2級炭素原子に結合しており、かつ、アルキル基が任意で酸素原子により割り込まれているヒドロキシアルキル基;からなる群から選択されており、
は、H;直鎖のまたは枝分かれしたC〜C20のアルキル基(たとえば、メチル;エチル;n−プロピル、もしくは、イソプロピル;n−ブチル、イソブチル、もしくは、t−ブチル;ペンチル;ヘキシル;ヘプチル;オクチル;または、ノニル)であって、アルキル基が任意で酸素原子により割り込まれているアルキル基;直鎖のまたは枝分かれしたC〜C20のアルケニル基(たとえば、プロペニル、もしくは、ブテニル);および、直鎖のまたは枝分かれしたC〜C20のヒドロキシアルキル基であって、ヒドロキシル基が任意でアルキル基の第1級炭素原子または第2級炭素原子に結合しており、かつ、アルキル基が任意で酸素原子により割り込まれているヒドロキシアルキル基;からなる群から選択されており、
は、直鎖のまたは枝分かれしたC〜Cのアルキル基、特にはメチルである。
【0015】
一実施形態では、Rは−O−Rである。更なる一実施形態では、Rは、H;または、直鎖のもしくは枝分かれしたC〜Cのアルキル基(たとえば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、および、t−ブチル)であって、アルキル基が任意で酸素原子により割り込まれているアルキル基;である。
【0016】
一実施形態では、R、R、R、および、Rは、独立に、H;または、直鎖のもしくは枝分かれしたC〜Cのアルキル基(たとえば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、および、t−ブチル)であって、アルキル基が任意で酸素原子により割り込まれているアルキル基;である。
【0017】
一実施形態では、本化合物は、β−アミノイソ酪酸(「BAIBA」)、または、その塩もしくはエステルであり、特に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、および、t−ブチルのエステルである。
【0018】
一実施形態では、本組成物に、化粧学上許容できる量の式Iの化合物もしくは複数の化合物、または、その塩もしくはエステルが含まれる。一実施形態では、そのような化合物もしくは複数の化合物は、組成物中に、約0.001重量%〜約10重量%の量で存在し得、特に、約0.01重量%〜約5重量%、たとえば、約0.1重量%〜約1重量%の量で存在し得る。
【0019】
(カルニチン)
本発明の組成物には、更に、カルニチン、または、その塩もしくはエステルから選択された1種以上の化合物を含むことができる。
【0020】
一実施形態では、本組成物に、化粧学上許容できる量の、カルニチン、または、その塩もしくはエステルから選択された化合物または複数の化合物が含まれる。一実施形態では、そのような化合物または複数の化合物が、本組成物中に、少なくとも0.001重量%の量で存在し得、好ましくは、約0.001重量%〜約10重量%、特に、約0.01重量%〜約5重量%の量(たとえば、約0.05重量%〜約1重量%)の量で存在し得る。
【0021】
(塩)
本発明に係る、レチノイド類、式Iの化合物、または、カルニチンのような化合物は、化粧学上許容できる塩の形でも存在し得る。医療用途においては、本発明の化合物の塩は、非毒性の「化粧学上許容できる塩」、すなわち、化粧学上許容できる酸性/アニオン性の塩、または、塩基性/カチオン性の塩を意味する。化粧学上許容できる酸性/アニオン性の塩には、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、酒石酸水素塩、臭化物、カルシウムエデト酸塩、カンシル酸塩(camsylate)、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩(edisylate)、エストル酸塩(estolate)、エシル酸塩(esylate)、フマル酸塩、グリセプテート(glyceptate)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート、ヘキシルレゾルシネート、ヒドラバミン(hydrabamine)、臭酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエート、ヨウ化物、イセチオネート、乳酸塩、ラクトビオン酸塩(lactobionate)、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシレート(mesylate)、メチル臭化物、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムコ酸塩(mucate)、ナプシレート(napsylate)、硝酸塩、パモン酸塩(pamoate)、パントテン酸塩、リン酸塩/ピロリン酸塩、ポリガラクツロ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、琥珀酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩(teoclate)、トシル酸塩(tosylate)、および、トリエチオダイド(triethiodide)が含まれるが、これらに限られない。化粧学上許容できる塩基性/カチオン性の塩には、アルミニウム、ベンザチン(benzathine)、カルシウム、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、リチウム、マグネシウム、メグルミン(meglumine)、カリウム、プロカイン、ナトリウム、および、亜鉛が含まれるが、これらに限られない。しかしながら、本発明に係る化合物、または、それらの化粧学上許容できる塩の作製には、その他の塩も有用であり得る。有機酸、または、無機酸には、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、リン酸、プロピオン酸、グリコール酸、メタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、シュウ酸、2−ナフタレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サッカリン酸(saccharinic acid)、または、トリフルオロ酢酸も含まれるが、これらに限られない。
【0022】
(局所用組成物)
本発明のこのような組成物を含む組成物と製品は、当業者に周知の方法を用いて作製することができる。
【0023】
本発明に有用な組成物には、対象組織(たとえば、ヒトの皮膚のような哺乳類の皮膚)に局所的に投与するのに適した調合が含まれる。一実施形態では、本組成物に、化粧学上許容できる量の(i)1種以上のレチノイド類(たとえば、レチノール)(ii)BAIBA、または、その塩もしくはエステルから選ばれた1種以上の化合物、(iii)任意で、カルニチン、または、その塩もしくはエステルから選択された1種以上の化合物、および、(iv)化粧学上許容できるキャリア(たとえば、乳剤)が含まれる。
【0024】
本組成物は、多種多様な物品に作ることができる。これらの物品には、ローション、クリーム、ゲル、スティック、スプレー、軟膏、クレンジング洗剤液およびクレンジング棒状固形物(cleansing liquid washes and solid bars)、シャンプーおよびヘアコンディショナー、ペースト、フォーム、パウダー、ムース、シェービングクリーム、ワイプ(wipe)、小片(strips)、パッチ、電気駆動パッチ、創傷包袋および粘着性包帯、ヒドロゲル、フィルム形成性製品、フェーシャルマスクおよびスキンマスク、化粧品(たとえば、ファウンデーション、アイライナー、および、アイシャドー)、ならびに、同様のものが含まれるが、これらに限られない。これらの製品のタイプには、溶液、懸濁液、乳剤(マイクロエマルジョンおよびナノエマルジョン)、ゲル、固形物およびリポソームを含むが、これらに限られない、数種類の化粧学上許容できるキャリアが含まれ得る。そのような物品は、医薬品、市販薬、または、化粧品として流通し得る。次のものは、このようなキャリアの非限定的な例である。その他のキャリアもまた、当業者は配合し得る。
【0025】
本発明に有用な組成物は、溶液として配合し得る。溶液には、一般的に、水性溶媒または有機溶媒(たとえば、約50%〜約99.99%、または、約90%〜約99%の化粧学上許容できる水性溶媒または有機溶媒)が含まれる。適切な有機溶媒の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリセロール(たとえば、分子量200〜600)、ポリプロピレングリコール(たとえば、分子量425〜2025)、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、ソルビトールエステル、1,2,6−ヘキサントリオール、エタノール、および、これらの混合物が含まれるが、これらに限られない。
【0026】
このような溶液からローションを作ることができる。ローションには、一般的に、約1%〜約20%(たとえば、約5%〜約10%)の皮膚軟化剤もしくは複数の皮膚軟化剤、および、約50%〜約90%(たとえば、約60〜約80%)の水が含まれる。本明細書で使用される「皮膚軟化剤」は、乾燥の防止または緩和のため、および、皮膚または毛髪の保護のために用いられる材料を意味する。
【0027】
溶液から配合し得るもう1つのタイプの製品には、クリームがある。クリームは、一般的に、約5%〜約50%(たとえば、約10%〜約20%)の皮膚軟化剤もしくは複数の皮膚軟化剤、および、約45%〜約85%(たとえば約50%〜約75%)の水が含まれる。
【0028】
溶液から配合し得る、更にもう1つのタイプの製品には、軟膏がある。軟膏は、単一基剤の、動物油、植物油、もしくは、合成油、または、半固形炭化水素を含み得る。軟膏には、約2%〜約10%の皮膚軟化剤もしくは複数の皮膚軟化剤に加えて、約0.1%〜約2%の増粘剤もしくは複数の増粘剤が含まれ得る。
【0029】
本発明に有用な組成物は、乳剤として配合することもできる。キャリアが乳剤である場合、一般的には、キャリアの約1〜約10%(たとえば、約2%〜約5%)の乳化剤もしくは複数の乳化剤が含まれる。乳化剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性イオン性であってもよい。
【0030】
ローションとクリームは乳剤として配合し得る。一般的に、このようなローションには、0.5%〜約5%の乳化剤もしくは複数の乳化剤が含まれ、このようなクリームには、一般的に、約1%〜約20%(たとえば、約5〜約10%)の皮膚軟化剤もしくは複数の皮膚軟化剤;約20%〜約80%(たとえば、30%〜約70%)の水;および、約1%〜約10%(たとえば、約2%〜約5%)の乳化剤もしくは複数の乳化剤が含まれる。水中油型および油中水型の単一の乳剤スキンケア製品(たとえば、ローションやクリーム)は、当技術分野で周知であり、本発明に有用である。これらには、水中シリコーン型およびシリコーン中水型乳剤が含まれるが、これらに限られない。水中油中水型または油中水中油型の多相乳剤組成物も本発明に有用である。一般的に、このような単一または多相の乳剤には、水、皮膚軟化剤、および、乳化剤が必須成分として含まれる。
【0031】
本発明の組成物は、ゲル(たとえば、適切なゲル化剤もしくは複数のゲル化剤を使用した、水性ゲル、アルコールゲル、アルコール/水ゲル、または、オイルゲル)としても配合し得る。水性ゲルおよび/またはアルコール性ゲルに適したゲル化剤には、天然ゴム、アクリル酸、および、アクリレートのポリマーとコポリマー、ならびに、セルロース誘導体(たとえば、ヒドロキシメチルセルロース、および、ヒドロキシプロピルセルロース)が含まれるが、これらに限定されない。オイル(たとえば、鉱油)に適したゲル化剤には、水素化されたブチレン/エチレン/スチレンコポリマー、および、水素化されたエチレン/プロピレン/スチレンコポリマーが含まれるが、これらに限られない。このようなゲルには、一般的に、そのようなゲル化剤が約0.1%〜5重量%含まれる。
【0032】
本発明の組成物は、固形剤(たとえば、ワックスベースのスティック、棒状石鹸組成物、パウダー、および、パウダー含有ワイプ)に配合することもできる。
【0033】
本発明の組成物はまた、懸濁液として配合することもできる。この懸濁液には固形脂質のナノ微粒子化した粒子懸濁液が含まれるが、これに限られない。
【0034】
本発明に有用な組成物には、前記の構成要素の他に、多種多様の付加的な油溶性材料および/または水溶性材料であって、皮膚への使用のための組成物中に慣用的に使用される材料を、それらの技術分野で確立されている濃度で含むことができる。
【0035】
(付加的な活性薬剤)
一実施形態では、本局所的組成物は更に、その他の活性薬剤を含む。「活性薬剤」が意味するものは、皮膚、毛髪、または、爪に対して、美容上または医療上の効果を有する化合物[たとえば、明色化剤、暗色化剤(たとえば、セルフタンニング剤)、抗にきび剤、光沢抑制剤、抗菌剤、抗炎症剤、抗真菌剤、抗寄生虫剤、外用鎮痛薬、日焼け止め剤、光線保護剤、酸化防止剤、角質溶解剤、洗剤/界面活性剤、保湿剤、栄養剤、ビタミン類、エネルギー増強剤、制汗剤、収斂剤、体臭防止剤、除毛剤、固定化剤(firming agent)、抗皮膚硬化剤、ならびに、毛髪、爪、および/または、皮膚のコンディショニングのための薬剤]である。活性薬剤には、美容上および医療上の活性薬剤が含まれる。
【0036】
一実施形態では、本活性薬剤は、ヒドロキシ酸、過酸化ベンゾイル、硫黄レゾルシノール、カフェイン、アスコルビン酸、D−パンテノール、ヒドロキノン、オクチルメトキシシンナメート、二酸化チタン、サリチル酸オクチル、ホモサレート、アボベンゼン、ポリフェノール類、カロチノイド類、フリーラジカル捕集剤、セラミド、多価不飽和脂肪酸、必須脂肪酸、酵素、酵素阻害剤、ミネラル類、ホルモン類(たとえば、エストロゲン)、ステロイド類(たとえば、ヒドロコルチゾン)、2−ジメチルアミノエタノール、銅塩(たとえば、塩化銅)、補酵素Q10、リポ酸、アミノ酸(たとえば、プロリンおよびチロシン)、ビタミン類、ラクトビオン酸、アセチル補酵素A、ナイアシン、リボフラビン、チアミン、リボース、電子伝達体(たとえば、NADHおよびFADH2)、ならびに、その他の植物抽出物[たとえば、アロエベラ、ナツシロギク、ダイズ、ノボリヅタ(Hedera helix)、アルニカ(Arnica Montana)、ローズマリー(Rosmarinus officinalis N)、セージ(Salvia officinalis N)、朝鮮人参(Panax ginseng)、セントジョンズ−ワート(Hypericum perforatum)、ルスクス(Ruscus aculatus)、シモツケ(Filipendula ulmaria L)、オルトシフォン(Ortosifon stamincus Benth)、フォルスコリン(Forskolin)]ならびに、それらの誘導体および混合物からなる群から選択されるが、これらに限られない。
【0037】
一実施形態では、本組成物には、更に、レチノイドに加えて、ビタミン類が含まれる。ビタミン類の例には、ビタミンB群(たとえば、ビタミンB3、ビタミンB5、および、ビタミンB12)、ビタミンC、ビタミンK、および、ビタミンE、ならびに、それらの誘導体が含まれるが、これらに限られない。
【0038】
一実施形態では、本組成物には酸化防止剤も含まれる。酸化防止剤の例には、スルフヒドリル化合物およびそれらの誘導体(たとえば、ナトリウムメタビスルファイト(sodium metabisulfite)およびN−アセチルシステイン)、リポ酸およびジヒドロリポ酸、レスベラトロール、ラクトフェリン、アスコルビン酸およびアスコルビン酸誘導体(たとえば、アスコルビルパルミテート、および、アスコルビルポリペプチド)のような水溶性酸化防止剤が含まれるが、これらに限られない。本発明の組成物への使用に適した油溶性酸化防止剤には、ブチル化ヒドロキシトルエン、トコフェロール類(たとえば、トコフェリルアセテート)、トコトリエノール、および、ユビキノンが含まれるが、これらに限られない。本発明の組成物への使用に適した酸化防止剤を含む天然抽出物には、フラボノイド類およびイソフラボノイド類ならびにそれらの誘導体(たとえば、ゲニステインおよびダイゼイン)を含有する抽出物、レスベラトロールを含有する抽出物等が含まれるが、これらに限られない。このような天然抽出物の例には、ブドウの種、緑茶、松皮、および、プロポリスが含まれる
【0039】
本活性薬剤は、一般的に、本発明の組成物中に、本組成物の約0.001重量%〜約20重量%、たとえば、約0.01重量%〜約10重量%(たとえば、約0.1重量%〜約5重量%)の量で存在する。
【0040】
(その他の材料)
スキンケア製品には、その他の種々の化粧学的に活性な薬剤も含まれる。これらには、皮膚保護剤、湿潤剤、および、皮膚軟化剤が含まれるが、これらに限られない。本組成物には、キレート剤(たとえば、EDTA)、防腐剤(たとえば、パラベン類)、顔料、染料、乳白剤(たとえば、二酸化チタン)、および、香料も含まれ得る。
【0041】
本発明のこのような組成物を含む組成物および製品は、当業者に周知の方法を用いて作製することができる。
【0042】
(用途)
本発明に係る組成物は、(i)加齢の徴候の現れを少なくすること(たとえば、皺や細線の現れを少なくすること)、セルライト、皮膚線条、明色領域もしくは暗色領域、毛穴、および、皮膚上の油分を少なくすること、(ii)乾燥肌およびにきびの治療、ならびに、(iii)皮膚の固さおよび/または皮膚の弾力性の向上といった、毛髪、爪、および、皮膚の種々の容態を治療するために使用し得る。
【0043】
〔実施例〕
下記の実施例により本発明を更に例示するが、本発明はこれらによって制限されない。
【0044】
〔実施例1〕
(局所的ゲル組成物)
表1の4種の局所的ゲル組成物を次のようにして作製した。
【表1】

【0045】
10〜30のアルキルアクリレートクロスポリマー(crosspolymer)を水に添加して混合すると共に、この混合物を75℃まで加熱することにより、水相を作製した。加熱処理中、ジナトリウムEDTA溶液と水酸化ナトリウム溶液の両方を添加した。75℃で、メチルパラベン、プロピルパラベン、および、フェノキシエタノールを混合物として添加した。BHTとオクチルパルミテートとを別々に75℃まで加熱し、次いで、一緒に混ぜ合わせることで、油相を作製した。次いで、この油相を水相に添加し、次いで得られた混合物を約30℃まで冷却し、そして、残りの成分をすべて添加した。
【0046】
〔実施例2〕
(レチノイド活性の向上)
実施例1の4種の局所的ゲル製品に関し、ヒトの細胞増殖を向上させる能力についてテストした。形成外科手術から得られたヒトの腹部の生検材料から、皮膚の外植片を得た。この皮膚外植片に穴を開け、維持培地中で培養した。これらの外植片に対し、これら4種の製品を、1日1回塗布した。2日の処置の後、外植片における細胞の増殖を、特定のモノクローナル抗体を使用して、処置された細胞由来の基底のケラチノサイト中における、細胞増殖特異的なマーカーであるKi67タンパク質の発現を検出することにより測定した。Ki67発現が陽性であった細胞を数えた。結果を、異なる処置によって誘発される、1cm当たりのKi67陽性細胞数の、プラセボに対する変化割合%として表した。分析結果を表2に示す。
【表2】

レチノール製品は、細胞増殖の点で、プラセボ製品に比べ、僅かではあるが有意な増大を示した。これに対し、BAIBA製品は、プラセボ製品に比べ、細胞増殖を増大させなかった。しかしながら、出願人は、意外にも、レチノール製品とBAIBA製品とが、細胞増殖における4倍の増大によって明確なように、レチノール活性に対し、有意な相乗的増大を引き起こすことを見出した。
【0047】
本発明は詳細な説明と関連づけて説明されてきたが、先述の説明は、本発明を例示することを意図するものであり、本発明の範囲を制限することを意図するものではないことが理解される。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定されるものである。これらの特許請求の範囲内には、その他の態様、利点、および、変更点も含まれる。
【0048】
〔実施の態様〕
本発明の好ましい実施態様は以下の通りである。
(1)組成物において
(i)少なくとも1種のレチノイドと、
(ii)少なくとも1種の式Iの化合物、または、その塩もしくはエステルと、
を含み、
【化3】

式中、
は、−O−R、または、
【化4】

であり、
、R、R、および、Rは、独立に、H;−OH;アルコキシ;直鎖のまたは枝分かれしたC〜C20のアルキル基であって、アルキル基が任意で酸素原子により割り込まれているアルキル基;直鎖のまたは枝分かれしたC〜C20のアルケニル基;および、直鎖のまたは枝分かれしたC〜C20のヒドロキシアルキル基であって、ヒドロキシル基が任意でアルキル基の第1級炭素原子または第2級炭素原子に結合しており、かつ、アルキル基が任意で酸素原子により割り込まれているヒドロキシアルキル基;からなる群から選択されており、
は、H;直鎖のまたは枝分かれしたC〜C20のアルキル基であって、アルキル基が任意で酸素原子により割り込まれているアルキル基;直鎖のまたは枝分かれしたC〜C20のアルケニル基;および、直鎖のまたは枝分かれしたC〜C20のヒドロキシアルキル基であって、ヒドロキシル基が任意でアルキル基の第1級炭素原子または第2級炭素原子に結合しており、かつ、アルキル基が任意で酸素原子により割り込まれているヒドロキシアルキル基;からなる群から選択されており、
は、直鎖のまたは枝分かれしたC〜Cのアルキル基である、組成物。
(2)実施態様1に記載の組成物において、
前記式Iの化合物は、β−アミノイソ酪酸、または、その塩もしくはエステルである、組成物。
(3)実施態様1に記載の組成物において、
前記式Iの化合物は、β−アミノイソ酪酸である、組成物。
(4)実施態様1〜3のいずれかに記載の組成物において、
前記レチノイドは、レチノールである、組成物。
(5)実施態様1〜4のいずれかに記載の組成物において、
前記組成物は、前記レチノイドを約0.001重量%〜約2重量%、および、前記式Iの化合物、特には前記β−アミノイソ酪酸、または、その塩もしくはエステルを約0.00l重量%〜約10重量%含む、組成物。
(6)実施態様1〜5のいずれかに記載の組成物において、
前記組成物は、カルニチン、または、その塩もしくはエステルをさらに含む、組成物。
(7)実施態様6に記載の組成物において、
前記組成物は、前記カルニチン、または、その塩もしくはエステルを約0.001重量%〜約10重量%含む、組成物。
(8)実施態様1〜7のいずれかに記載の組成物において、
前記組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、ゲル、固形物、および、リポソームからなる群から選択されたキャリアをさらに含む、組成物。
(9)実施態様1〜8のいずれかに記載の組成物の使用において、
皮膚、毛髪、または、爪への局所的塗布のために使用される、化粧用または医療用物品の製造のための、使用。
(10)実施態様9に記載の使用において、
にきびの治療を必要とする皮膚への局所的塗布のために使用される物品の製造のための、使用。
(11)実施態様9に記載の使用において、
皺、細線、皮膚線条、または、セルライトの現れを少なくとすることを必要とする皮膚への局所的塗布のために使用される物品の製造のための使用。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物において、
(i)少なくとも1種のレチノイドと、
(ii)少なくとも1種の式Iの化合物、または、その塩もしくはエステルと、
を含み、
【化1】

式中、
は、−O−R、または、
【化2】

であり、
、R、R、および、Rは、独立に、H;−OH;アルコキシ;直鎖のまたは枝分かれしたC〜C20のアルキル基であって、アルキル基が任意で酸素原子により割り込まれているアルキル基;直鎖のまたは枝分かれしたC〜C20のアルケニル基;および、直鎖のまたは枝分かれしたC〜C20のヒドロキシアルキル基であって、ヒドロキシル基が任意でアルキル基の第1級炭素原子または第2級炭素原子に結合しており、かつ、アルキル基が任意で酸素原子により割り込まれているヒドロキシアルキル基;からなる群から選択されており、
は、H;直鎖のまたは枝分かれしたC〜C20のアルキル基であって、アルキル基が任意で酸素原子により割り込まれているアルキル基;直鎖のまたは枝分かれしたC〜C20のアルケニル基;および、直鎖のまたは枝分かれしたC〜C20のヒドロキシアルキル基であって、ヒドロキシル基が任意でアルキル基の第1級炭素原子または第2級炭素原子に結合しており、かつ、アルキル基が任意で酸素原子により割り込まれているヒドロキシアルキル基;からなる群から選択されており、
は、直鎖のまたは枝分かれしたC〜Cのアルキル基である、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、
前記式Iの化合物は、β−アミノイソ酪酸、または、その塩もしくはエステルである、組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物において、
前記式Iの化合物は、β−アミノイソ酪酸である、組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の組成物において、
前記レチノイドは、レチノールである、組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の組成物において、
前記組成物は、前記レチノイドを約0.001重量%〜約2重量%、および、前記式Iの化合物、特には前記β−アミノイソ酪酸、または、その塩もしくはエステルを約0.00l重量%〜約10重量%含む、組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の組成物において、
前記組成物は、カルニチン、または、その塩もしくはエステルをさらに含む、組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の組成物において、
前記組成物は、前記カルニチン、または、その塩もしくはエステルを約0.001重量%〜約10重量%含む、組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の組成物において、
前記組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、ゲル、固形物、および、リポソームからなる群から選択されたキャリアをさらに含む、組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の組成物の使用において、
皮膚、毛髪、または、爪への局所的塗布のために使用される、化粧用または医療用物品の製造のための、使用。
【請求項10】
請求項9に記載の使用において、
にきびの治療を必要とする皮膚への局所的塗布のために使用される物品の製造のための、使用。
【請求項11】
請求項9に記載の使用において、
皺、細線、皮膚線条、または、セルライトの現れを少なくすることを必要とする皮膚への局所的塗布のために使用される物品の製造のための、使用。

【公開番号】特開2008−247905(P2008−247905A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−70770(P2008−70770)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(500252718)ジョンソン・アンド・ジョンソン・コンシューマー・フランス・エスアーエス (9)
【氏名又は名称原語表記】Johnson and Johnson Consumer France, SAS.
【住所又は居所原語表記】1 Rue Camille Desmoulins, 92787 Issy−les−Moulineaux, CEDEX 9, France
【Fターム(参考)】