説明

レプリカモールド、および微細凹凸構造を表面に有する成形体とその製造方法

【課題】浸透性の高い活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて転写を行う場合でも、被転写体から容易に剥離できるレプリカモールド、およびこのレプリカモールドを用いて製造した微細凹凸構造を表面に有する成形体とその製造方法の提供。
【解決手段】本発明のレプリカモールド10は、隣り合う凸部16の平均間隔が400nm以下の微細凹凸構造を表面に有し、前記微細凹凸構造が、硬化後の表面自由エネルギーが39mJ/m以上である活性エネルギー線硬化性樹脂(α)を(100−Y)質量%と、シリコーンアクリレート(β)をY質量%含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)の硬化物14からなり、前記活性エネルギー線硬化性樹脂(α)の硬化後の表面自由エネルギーをXmJ/mとしたときに、XとYが式(−0.66X+30≦Y(ただし、39≦X<43.4))または(0.2≦Y(ただし、43.4≦X))を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レプリカモールド、および微細凹凸構造を表面に有する成形体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
凸部間の平均間隔が可視光の波長以下である微細凹凸構造は、空気の屈折率から材料の屈折率に連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。該微細凹凸構造する方法としては、微細凹凸構造が形成されたモールドを用い、該モールドの微細凹凸構造を被転写体の表面に転写する、いわゆるナノインプリント法が注目されている。
【0003】
ナノインプリント法としては、例えば、下記の方法が知られている。
微細凹凸構造を表面に有するモールドと基材との間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を充填し、これに活性エネルギー線を照射して硬化させた後、モールドを剥離して、基材の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる微細凹凸構造を形成する方法。
【0004】
また、微細凹凸構造が形成されたモールドが高価であることから、該モールドをマスターモールドとし、該マスターモールドの表面の微細凹凸構造をナノインプリント法にて被転写体に転写して、該被転写体をレプリカモールドとして用いることが行われている。または、マスターモールドの表面の微細凹凸構造をナノインプリント法にて被転写体に転写して、該被転写体をマザーモールドとし、該マザーモールドの表面の微細凹凸構造をナノインプリント法にて被転写体に転写して、該被転写体をレプリカモールドとして用いることが行われている(例えば、特許文献1、2)。
【0005】
特許文献1では、微細な凹凸を有する原版(マスターモールド)から微細な凹凸形成用のスタンパ版(マザーモールド)を作成し、該スタンパ版を用いて、表面の微細な凹凸が複製された樹脂製の賦型フィルム(レプリカモールド)を作成する。この賦型フィルムは、基材と、反応性オリゴマー(アクリレートオリゴマー)およびシリコーン系離型剤等の離型剤を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物からなる凹凸形成層とを備え、該凹凸形成層の表面には凹凸が形成されている。
また、特許文献2では、陽極酸化アルミナの表面の微細凹凸構造をフィルム状のモールド本体の表面に転写して、フィルム状レプリカモールドを製造する。このレプリカモールドによれば、大面積化(シームレス化)が可能であるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−284178号公報
【特許文献2】特開2010−719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のレプリカモールドでは離型性を十分に発揮できない場合があり、レプリカモールドの微細凹凸構造が転写された硬化物を表面に備えた基材(被転写体)から剥離しにくいことがあった。特に、レプリカモールドの凹凸の隣り合う凸部の間隔が可視光の波長以下である場合、離型性の低下が顕著であった。
また、特許文献1に記載のレプリカモールドは射出成形用のモールドであるため、粘度が低く、レプリカモールドへの浸透性が高い活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて転写を行うことを想定しておらず、このような樹脂組成物を用いた場合、特に離型性に劣っていた。
【0008】
一方、特許文献2に記載のレプリカモールドでは、基材と活性エネルギー線硬化性樹脂組成物との密着性を十分高くするために、基材に対する浸透性が高い樹脂組成物を用いた場合、レプリカモールドに対する浸透性も高くなるため、被転写体から剥離しにくくなることがあった。そのため、特許文献2に記載のレプリカモールドは、必ずしも低浸透性の樹脂組成物から高浸透性の樹脂組成物まで幅広く対応できるものではなかった。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、浸透性の高い活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて転写を行う場合でも、被転写体から容易に剥離できるレプリカモールド、およびこのレプリカモールドを用いて製造した微細凹凸構造を表面に有する成形体とその製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討した結果、レプリカモールドを構成する樹脂の表面自由エネルギーと離型剤の含有量との関係が、レプリカモールドの離型性に影響することを見出した。そして、樹脂の極性および含有量を最適化することで、離型剤であるシリコーンアクリレートがより効果的に作用する樹脂組成を明らかにした。そして、浸透性の高い活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いた場合でも優れた離型性を発揮し、被転写体から容易に剥離できるようになることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のレプリカモールドは、隣り合う凸部の平均間隔が400nm以下の微細凹凸構造を表面に有するレプリカモールドであって、前記微細凹凸構造が、硬化後の表面自由エネルギーが39mJ/m以上である活性エネルギー線硬化性樹脂(α)を(100−Y)質量%と、シリコーンアクリレート(β)をY質量%含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)の硬化物からなり、前記活性エネルギー線硬化性樹脂(α)の硬化後の表面自由エネルギーをXmJ/mとしたときに、XとYが下記式(1)または(2)を満たすことを特徴とする。
−0.66X+30≦Y (ただし、39≦X<43.4) ・・・(1)
0.2≦Y (ただし、43.4≦X) ・・・(2)
【0012】
ここで、前記活性エネルギー線硬化性樹脂(α)が、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートと2官能以下のモノマーとからなり、活性エネルギー線硬化性樹脂(α)とシリコーンアクリレート(β)の合計100質量%中、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートの含有量が30〜97質量%、2官能以下のモノマーの含有量が1〜63質量%、シリコーンアクリレート(β)の含有量(Y)が65質量%以下であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の成形体の製造方法は、前記レプリカモールドと透明基材との間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(II)を充填し、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(II)に活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(II)を硬化させた後、前記レプリカモールドを剥離し、前記透明基材の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(II)の硬化物からなる微細凹凸構造を形成することを特徴とする。
また、本発明の微細凹凸構造を表面に有する成形体は、前記成形体の製造方法で得られた、微細凹凸構造を表面に有する成形体であって、前記微細凹凸構造の隣り合う凹部の平均間隔が400nm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、浸透性の高い活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて転写を行う場合でも、被転写体から容易に剥離できるレプリカモールド、およびこのレプリカモールドを用いて製造した微細凹凸構造を表面に有する成形体とその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のレプリカモールドの一例を示す断面図である。
【図2】本発明のレプリカモールドの製造装置の一例を示す構成図である。
【図3】本発明の微細凹凸構造を表面に有する成形体の製造装置の一例を示す構成図である。
【図4】本発明の微細凹凸構造を表面に有する成形体の製造装置の他の例を示す構成図である。
【図5】本発明の微細凹凸構造を表面に有する成形体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートを意味する。また、活性エネルギー線は、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等を意味する。
【0017】
[レプリカモールド]
図1は、本発明のレプリカモールドの一例を示す断面図である。
この例のレプリカモールド10は、フィルム状のモールド基材12と、モールド基材12の表面に形成された、微細凹凸構造を有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)の硬化物14とを有する。また、レプリカモールド10は表面に微細凹凸構造を有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)の硬化物14のみで形成されていてもよい。
【0018】
<モールド基材>
図1に示すモールド基材12は、光を透過できるフィルムである。
モールド基材12の材料としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、ポリエステル、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン、脂環式ポリオレフィン等が挙げられる。
モールド基材12は、所定長の枚葉フィルムであってもよく、不定長の帯状(ウェブ状)フィルムであってもよい。大面積化(シームレス化)の点からは、帯状フィルムが好ましい。
【0019】
<硬化物>
本発明のレプリカモールドの微細凹凸構造は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)(以下、単に「樹脂組成物(I)」ということがある。)の硬化物14からなる。
【0020】
(樹脂組成物(I))
樹脂組成物(I)は、活性エネルギー線硬化性樹脂(α)(以下、「(α)成分」ということがある。)を(100−Y)質量%と、シリコーンアクリレート(β)(以下、「(β)成分」ということがある。)をY質量%含む。
【0021】
(α)成分は、硬化後の表面自由エネルギーが39mJ/m以上である。表面自由エネルギーが39mJ/m以上であれば、レプリカモールド10の離型性が向上する。従って、特に、本発明のレプリカモールド10の微細凹凸構造を被転写体に転写する際に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(II)(以下、単に「樹脂組成物(II)」ということがある。)として浸透性の高いものを用いる場合でも、被転写体から容易に剥離できるようになる。特に、表面自由エネルギーが42mJ/m以上であれば離型性がより向上するため、浸透性の高い樹脂組成物(II)を用いる場合に特に好適である。
(α)成分の表面自由エネルギーの上限値については時制限されないが、50mJ/m以下が好ましい。(α)成分の表面自由エネルギーが50mJ/m以下であれば、(β)成分との相溶性が向上するため、樹脂組成物(I)が硬化したときに、透明な硬化物14からなる微細凹凸構造が形成できる。(β)成分との相溶性が不十分であると、硬化物14が白濁し、モールド基材12に対する密着性が低下したり、レプリカモールド10の離型性が低下したりすることがある。
【0022】
ここで、表面自由エネルギーは、(α)成分を平滑な基材上に硬化させ、(α)成分の硬化物上に水とエチレングリコールをそれぞれ滴下したときの接触角からFowkes法を用いて算出できる。
【0023】
本発明においては、(α)成分の表面自由エネルギーをXmJ/mとしたときに、XとYが下記式(1)または(2)を満たすことを特徴とする。
−0.66X+30≦Y (ただし、39≦X<43.4) ・・・(1)
0.2≦Y (ただし、43.4≦X) ・・・(2)
【0024】
式(1)について:
(α)成分の表面自由エネルギーが39mJ/m以上43.4mJ/m未満、好ましくは42mJ/m以上43.4mJ/m未満の場合、(β)成分の含有量(Y)は、(−0.66X+30)質量%以上である。(β)成分の含有量(Y)が上記範囲内であれば、レプリカモールド10の離型性が向上するので、浸透性の高い樹脂組成物(II)を用いる場合でも、被転写体から容易に剥離できるようになる。
(β)成分の含有量(Y)は65質量%以下が好ましい。(β)成分の含有量(Y)が65質量%以下であれば、マスターモールドを用いてレプリカモールドを作製する際に、微細凹凸構造の隣り合う凸部16同士の合一を防止できる。
【0025】
式(2)について:
(α)成分の表面自由エネルギーが43.4mJ/m以上、好ましくは43.4mJ/m以上50mJ/m以下の場合、(β)成分の含有量(Y)は、0.2質量%以上である。(β)成分の含有量(Y)が上記範囲内であれば、レプリカモールド10の離型性が向上するので、浸透性の高い樹脂組成物(II)を用いる場合でも、被転写体から容易に剥離できるようになる。
(β)成分の含有量(Y)は1質量%以上が好ましい。また、65質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。(β)成分の含有量(Y)が65質量%以下であれば、マスターモールドを用いてレプリカモールドを作製する際に、微細凹凸構造の隣り合う凸部16同士の合一を防止できる。
【0026】
(α)成分:
(α)成分は、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートと2官能以下のモノマーとからなるものが好ましい。
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタン・アクリル酸・無水コハク酸縮合エステル等が挙げられる。
【0027】
多官能(メタ)アクリレートは、多官能(メタ)アクリレートのみの硬化物の表面自由エネルギーが35〜48mJ/mであることが好ましく、38〜45mJ/mであることがより好ましい。表面自由エネルギーが上記範囲内であれば、後述する2官能以下のモノマーと組み合わせて、比較的容易に(α)成分の硬化物の表面自由エネルギーを39mJ/m以上にすることができる。
【0028】
多官能(メタ)アクリレートの含有量は、(α)成分と(β)成分の合計100質量%中、30〜97質量%が好ましく、40〜90質量%がより好ましく、50〜80質量%が特に好ましい。多官能(メタ)アクリレートの含有量が30質量%以上であれば、架橋密度が上がり、硬化物14の弾性率が高くなるため、マスターモールドを用いてレプリカモールドを作製する際に、微細凹凸構造の隣り合う凸部同士の合一を防止できる。一方、多官能(メタ)アクリレートの含有量が97質量%以下であれば、硬化物14のモールド基材12に対する密着性や、レプリカモールド10の離型性がより向上する。
【0029】
一方、2官能以下のモノマーは、多官能(メタ)アクリレートと組み合わせて(α)成分全体としての表面自由エネルギーを調整するだけでなく、硬化物14のモールド基材12に対する密着性を向上させる役割をも有する。硬化物14からなる微細凹凸構造がモールド基材12に十分に密着していると、後述する成形体の製造においてレプリカモールド10を剥離する際に、レプリカモールド10内でモールド基材12と硬化物14とが層間剥離をするのを防止できる。
【0030】
2官能以下のモノマーとしては、例えばメチルアクリレート、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−コハク酸、2−アクリロイロキシエチル−フタル酸、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
【0031】
2官能以下のモノマーの含有量は、(α)成分と(β)成分の合計100質量%中、1〜63質量%が好ましく、3〜50質量%がより好ましく、5〜40質量%が特に好ましい。2官能以下のモノマーの含有量が1質量%以上であれば、モールド基材12に対する密着性がより向上する。一方、2官能以下のモノマーの含有量が63質量%以下であれば、硬化物14の弾性率が高くなるため、マスターモールドを用いてレプリカモールドを作製する際に、微細凹凸構造の隣り合う凸部同士の合一を防止できる。
【0032】
(β)成分:
(β)成分は、離型剤の役割を有する。
(β)成分としては特に限定されないが、ポリジメチルシロキサン鎖とアクリロイル基を1つ以上有するものが好ましい。アクリロイル基はポリジメチルシロキサン鎖の片末端や両末端にあってよく、グラフトしていてもよい。また、(α)成分との相溶性を考慮して、ポリジメチルシロキサン鎖とアクリロイル基の間にポリウレタンやプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ポリエステルなどを有するものが好ましい。
【0033】
このような(β)成分としては、具体的に、チッソ株式会社製のサイラプレーンシリーズ「FM7711」、「FM7721」、「FM7725」、「FM0711」、「FM0721」、「FM0725」;信越化学工業株式会社製の「x−22−1602」;ビックケミー・ジャパン株式会社製の「UV−3570」、「UV−3500」などが挙げられる。中でも、相溶性の点から信越化学工業株式会社製の「x−22−1602」、ビックケミー・ジャパン株式会社製の「UV−3570」、「UV−3500」が好ましい。
【0034】
その他の成分:
樹脂組成物(I)は、(α)成分および(β)成分以外のその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、(α)成分以外の活性エネルギー線硬化性樹脂(他の活性エネルギー線硬化性樹脂)、内部離型剤、スリップ剤、帯電防止剤、非反応性ポリマーなどが挙げられる。
【0035】
また、樹脂組成物(I)は、通常、重合開始剤を含有する。
重合開始剤としては光重合開始剤などが挙げられ、具体的にはベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤の含有量は、(α)成分および(β)成分の合計100質量部に、0.1〜10質量部が好ましい。光重合開始剤の含有量が0.1質量部未満では、重合が進行しにくい。一方、光重合開始剤の含有量が10質量部を超えると、硬化物14が着色したり、機械的強度が低下したりすることがある。
【0036】
(微細凹凸構造)
レプリカモールド10の微細凹凸構造は、図1に示すように、凸部16が複数並んだ、いわゆるMoth−Eye構造として機能し、該微細凹凸構造が形成されている面における光の反射が低減される。
この例のレプリカモールド10の表面には、円錐状の凸部16が複数形成されている。微細凹凸構造の凸部16の形状としては、図1に示す円錐状に限らず、例えば釣鐘状、先鋭状などが挙げられる。微細凹凸構造の断面形状は特に限定されないが、凸部16がその頂部から底部に向かって、連続的または階段状に拡径する形状が挙げられる。
【0037】
微細凹凸構造の隣り合う凸部16の平均間隔は400nm以下であり、250nm以下が好ましい。隣り合う凸部16の平均間隔が400nmより大きいと可視光を散乱するため、当該レプリカモールド10を用いて微細凹凸構造を転写した成形体を反射防止物品として使用する場合、透明性が低下する。
隣り合う凸部16の平均間隔は、凸部16の成形のしやすさの点から、20nm以上が好ましい。
隣り合う凸部16の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣り合う凸部16同士の間隔(凸部16の中心からこれに隣接する凸部16の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
【0038】
凸部16の高さは100〜750nmが好ましく、120〜500nmがより好ましく、140〜350nmが特に好ましい。凸部16の高さが100nm以上であれば、当該レプリカモールド10を用いて微細凹凸構造を転写した成形体の反射率が十分に低くなる。一方、凸部16の高さが750nm以下であれば、マスターモールドを用いてレプリカモールドを作製する際に、凸部16同士が合一することなく、比較的容易に微細凹凸構造を形成することができる。
凸部16の高さは、電子顕微鏡観察によって倍率50000倍で観察したときに凸部16の最頂部と、凸部16間に存在する凹部の最底部との間の距離を測定した値である。
【0039】
本発明のレプリカモールドの微細凹凸構造において、凸部16の高さ/凸部16の平均間隔で表されるアスペクト比は0.5〜5.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましく、1.4〜2.5が特に好ましい。アスペクト比が0.5以上であれば、当該レプリカモールド10を用いて微細凹凸構造を転写した成形体の反射率が十分に低くなり、その入射角依存性も十分に小さくなる。従って、得られる成形体が反射防止膜などの反射防止物品である場合には、特に好適である。一方、アスペクト比が5.0以下であれば、マスターモールドを用いてレプリカモールドを作製する際に、凸部16同士が合一することなく、微細凹凸構造を容易に形成することができる。
【0040】
<レプリカモールドの製造方法>
レプリカモールド10は、例えば図2に示す製造装置を用いて、下記のようにして製造される。
回転する、表面に微細凹凸構造(図示略)を有するロール状モールド22と、ロール状モールド22の表面に沿って移動する帯状のモールド基材12との間に、タンク24から上述した樹脂組成物(I)を供給する。
【0041】
ロール状モールド22と、空気圧シリンダ26によってニップ圧が調整されたニップロール28との間で、モールド基材12および樹脂組成物(I)をニップし、樹脂組成物(I)を、モールド基材12とロール状モールド22との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状モールド22の微細凹凸構造の凹部内に充填する。
【0042】
ロール状モールド22の下方に設置された活性エネルギー線照射装置30から、モールド基材12を通して樹脂組成物(I)に活性エネルギー線を照射し、樹脂組成物(I)を硬化させることによって、ロール状モールド22の表面の微細凹凸構造が転写された樹脂組成物(I)の硬化物14を形成する。
剥離ロール32により、表面に樹脂組成物(I)の硬化物14が形成されたモールド基材12を剥離することによって、レプリカモールド10を得る。
【0043】
活性エネルギー線照射装置30としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が好ましく、この場合の光照射エネルギー量は、100〜10000mJ/cmが好ましい。
【0044】
(ロール状モールド)
ロール状モールド22としては特に限定されないが、シームレスでロール状のものを簡便に製造できるという点で、表面に陽極酸化アルミナを有するモールドが好ましい。
陽極酸化アルミナは、アルミニウムの多孔質の酸化皮膜(アルマイト)であり、表面に複数の細孔(凹部)を有する。
【0045】
表面に陽極酸化アルミナを有するモールドは、例えば、下記(a)〜(e)工程を経て製造できる。
(a)ロール状のアルミニウムを電解液中、定電圧下で陽極酸化して酸化皮膜を形成する工程。
(b)酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
(c)ロール状のアルミニウムを電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)細孔の径を拡大させる工程。
(e)前記(c)工程と(d)工程を繰り返し行う工程。
【0046】
(a)工程:
(a)工程では、ロール状のアルミニウムを電解液中、定電圧下で陽極酸化して酸化皮膜を形成する。アルミニウムを陽極酸化すると、細孔を有する酸化皮膜が形成される。
アルミニウムの純度は、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましく、99.8%以上が特に好ましい。アルミニウムの純度が低いと、陽極酸化した時に、不純物の偏析により可視光を散乱する大きさの凹凸構造が形成されたり、陽極酸化で得られる細孔の規則性が低下したりすることがある。
【0047】
電解液としては、硫酸、シュウ酸、リン酸等が挙げられる。
シュウ酸を電解液として用いる場合、シュウ酸の濃度は、0.01Mから飽和濃度が好ましい。シュウ酸の濃度が0.01Mより薄いと陽極酸化時間が長くなりやすい。
化成電圧が30〜60Vの時、周期が100nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向にあるため、規則性が高い細孔を有する陽極酸化アルミナを製造する場合は、化成電圧を上述の範囲内とすることが好ましい。なお、規則性が低くても構わない場合は、化成電圧を上述の範囲外としてもよい。
また、周期が100nmより高く400nm以下の陽極酸化アルミナは、化成電圧が40Vより高く220V以下の条件で容易に作製することができる。この時、温度、電解液濃度を最適化することで、局所的に電流が流れすぎて酸化皮膜が壊れることを防ぐ必要がある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0048】
硫酸を電解液として用いる場合、硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
化成電圧が25〜30Vの時、周期が63nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向がある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がよりに好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0049】
(b)工程:
(b)工程では、(a)工程で形成された酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を形成する。陽極酸化の細孔発生点を形成することで細孔の規則性を向上することができる。
酸化皮膜を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜を選択的に溶解する溶液に溶解させて除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えばクロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
【0050】
(c)工程:
(c)工程では、酸化皮膜を除去したアルミニウムを電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に円柱状の細孔を有する酸化皮膜を形成する。
陽極酸化は、(a)工程と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
【0051】
(d)工程:
(d)工程では、(c)工程で形成された酸化皮膜の細孔の径を拡大させる処理(以下、「細孔径拡大処理」という。)を行う。細孔径拡大処理は、酸化皮膜を溶解する溶液に浸漬して陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、例えば5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。
細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
【0052】
(e)工程:
(e)工程では、(c)工程の陽極酸化と、(d)工程の細孔径拡大処理を繰り返す。すると、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔を有する陽極酸化アルミナが形成され、表面に陽極酸化アルミナを有するモールド(ロール状モールド)が得られる。
繰り返し回数は、合計で3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。繰り返し回数が2回以下では、非連続的に細孔の直径が減少するため、このような細孔を有する陽極酸化アルミナを用いて製造された微細凹凸構造の反射率低減効果は不十分である。
【0053】
陽極酸化アルミナの表面は、硬化膜14またはモールド基材12との分離が容易になるように、離型剤で処理されていてもよい。処理方法としては、例えばシリコーン樹脂またはフッ素含有ポリマーをコーティングする方法、フッ素含有化合物を蒸着する方法、フッ素含有シランカップリング剤またはフッ素含有シリコーン系シランカップリング剤をコーティングする方法等が挙げられる。
【0054】
陽極酸化アルミナの表面に形成される細孔の形状としては、略円錐形状、角錐形状、円柱形状等が挙げられ、円錐形状、角錐形状等のように、深さ方向と直交する方向の細孔断面積が最表面から深さ方向に連続的に減少する形状が好ましい。
隣り合う細孔の平均間隔は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましい。また、20nm以上が好ましい。
隣り合う細孔の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣り合う細孔同士の間隔(細孔の中心からこれに隣接する細孔の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
【0055】
細孔36の深さは、100〜750nmが好ましく、120〜500nmがより好ましく、140〜350nmが特に好ましい。
細孔の深さは、電子顕微鏡観察によって倍率50000倍で観察したときに細孔間に存在する凸部の最頂部と、細孔の最底部との間の距離を測定した値である。
【0056】
細孔のアスペクト比(細孔の深さ/細孔の平均間隔)は、0.5〜5.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましく、1.4〜2.5が特に好ましい。
【0057】
また、ロール状モールドは、平板状モールドを円筒状に巻き付けた形態のものであってもよいが、シームレスで連続的な製造を考えるとロール状アルミニウムから得るロール状モールドのほうが好ましい。
なお、平板状モールドは、平板状アルミニウムを用いてロール状モールド22と同様な上述の方法で製造できる。
【0058】
<作用効果>
以上説明した本発明のレプリカモールド10にあっては、特定の樹脂組成物(I)の硬化物14からなる微細凹凸構造を表面に有するので、離型性に優れる。従って、本発明のレプリカモールド10を用いて被転写体に微細凹凸構造を転写する際に、浸透性の高い樹脂組成物(II)を用いる場合でも、被転写体から容易に剥離できる。すなわち、本発明のレプリカモールド10は、浸透性の低い樹脂組成物(II)から浸透性の高い樹脂組成物(II)まで、幅広く対応できる。
【0059】
[微細凹凸構造を表面に有する成形体の製造方法]
本発明の微細凹凸構造を表面に有する成形体は、例えば図3に示す製造装置を用いて、下記のように連続式で製造される。
上述した本発明のレプリカモールド10をロール66に貼着させ、ロール状レプリカモールド68とする。
【0060】
ロール状レプリカモールド68と、ロール状レプリカモールド68の表面に沿って移動する帯状フィルムの透明基材48との間に、タンク24から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(II)を供給する。
【0061】
ロール状レプリカモールド68と、空気圧シリンダ26によってニップ圧が調整されたニップロール28との間で、透明基材48および樹脂組成物(II)をニップし、樹脂組成物(II)を、透明基材48とロール状レプリカモールド68との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状レプリカモールド68の微細凹凸構造の凸部間に充填する。
【0062】
ロール状レプリカモールド68の下方に設置された活性エネルギー線照射装置30から、透明基材48を通して樹脂組成物(II)に活性エネルギー線を照射し、樹脂組成物(II)を硬化させることによって、ロール状レプリカモールド68の表面の微細凹凸構造が転写された樹脂組成物(II)の硬化物60からなる微細凹凸構造(図示略)を透明基材48の表面に形成する。
剥離ロール32により、表面に硬化物60が形成された透明基材48を剥離することによって、微細凹凸構造を有する表面に有する成形体62を得る。
【0063】
活性エネルギー線照射装置30としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が好ましく、この場合の光照射エネルギー量は、100〜10000mJ/cmが好ましい。
【0064】
また、微細凹凸構造を表面に有する成形体は、例えば図4に示す製造装置を用いて、下記のようにして連続式で製造される。
無端ベルト42を2本のロール44に懸架した下側ベルトマシン46の上面に沿って移動する帯状フィルムまたはシートの透明基材48の表面にタンク50から樹脂組成物(II)を供給する。
【0065】
下側ベルトマシン46と、表面にレプリカモールド10が貼着された無端ベルト52を2本のロール54に懸架した上側ベルトマシン56との間で、透明基材48および樹脂組成物(II)をニップし、樹脂組成物(II)、透明基材48とレプリカモールド10との間に均一に行き渡らせると同時に、レプリカモールド10の微細凹凸構造の凸部間に充填する。
【0066】
上側ベルトマシン56のロール54間に設置された活性エネルギー線照射装置58から、無端ベルト52およびレプリカモールド10を通して樹脂組成物(II)に活性エネルギー線を照射し、樹脂組成物(II)を硬化させることによって、レプリカモールド10の表面の微細凹凸構造が転写された樹脂組成物(II)の硬化物60からなる微細凹凸構造(図示略)を透明基材48の表面に形成する。
レプリカモールド10を硬化物60から剥離することによって、微細凹凸構造を表面に有する成形体62を得る。
【0067】
活性エネルギー線照射装置58としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が好ましく、この場合の光照射エネルギー量は、100〜10000mJ/cmが好ましい。
上側ベルトマシン56の無端ベルト52としては、光を透過できるものを用いる。
【0068】
<透明基材>
透明基材48の材料としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、ポリエステル、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン、脂環式ポリオレフィン等が挙げられる。
透明基材48の表面には、樹脂組成物(II)との密着性や、帯電防止性、耐擦傷性、耐候性等の改良のために、例えば各種コーティングやコロナ放電処理が施されていてもよい。
【0069】
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(II)>
樹脂組成物(II)は、重合性化合物および重合開始剤を含む。
(重合性化合物)
重合性化合物としては、分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。
また、樹脂組成物(II)は、重合性化合物として非反応性のポリマー、活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物を含んでいてもよい。
【0070】
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、単官能モノマー、多官能モノマーが挙げられる。
単官能モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート誘導体;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;(メタ)アクリルアミド、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0071】
多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,2−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、1,4−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド等の2官能性モノマー;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等の3官能モノマー;エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸の縮合反応混合物、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能以上のモノマー;2官能以上のウレタンアクリレート、2官能以上のポリエステルアクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0072】
カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等を有するモノマーが挙げられ、エポキシ基を有するモノマーが特に好ましい。
【0073】
オリゴマーまたは反応性ポリマーとしては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル類;ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物、側鎖にラジカル重合性結合を有する上述のモノマーの単独または共重合ポリマー等が挙げられる。
【0074】
非反応性のポリマーとしては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン、セルロース系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、熱可塑性エラストマーが挙げられる。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、アルコキシシラン化合物、アルキルシリケート化合物等が挙げられる。
【0075】
(重合開始剤)
光硬化反応を利用する場合、光重合開始剤としては、樹脂組成物(I)の説明において先に例示した光重合開始剤が挙げられる。
【0076】
電子線硬化反応を利用する場合、重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド;メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
熱硬化反応を利用する場合、熱重合開始剤としては、例えばメチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物;前記有機過酸化物にN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン等のアミンを組み合わせたレドックス重合開始剤等が挙げられる。
【0078】
重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。重合開始剤の含有量が0.1質量部未満では、重合が進行しにくい。一方、重合開始剤の含有量が10質量部を超えると、樹脂組成物(II)の硬化物が着色したり、機械強度が低下したりすることがある。
【0079】
(その他の成分)
樹脂組成物(II)は、必要に応じて、帯電防止剤、離型剤、防汚性を向上させるためのフッ素化合物等の添加剤;微粒子、少量の溶剤を含んでいてもよい。
【0080】
<作用効果>
以上説明した本発明の成形体の製造方法にあっては、離型性に優れた本発明のレプリカモールド10を使用しているため、浸透性の高い樹脂組成物(II)を用いる場合でも、転写後に樹脂組成物(II)の硬化物60からなる微細凹凸構造が表面に形成された透明基材48からレプリカモールド10を容易に剥離できる。従って、透明基材48と硬化物60との密着性に優れた成形体10を安定性よく容易に製造できる。
【0081】
[微細凹凸構造を表面に有する成形体]
図5は、本発明の微細凹凸構造を表面に有する成形体の一例を示す断面図である。
この例の成形体62は、透明基材48と、透明基材48の表面に形成された、微細凹凸構造を有する樹脂組成物(II)の硬化物60とを有する。
【0082】
<透明基材>
図5に示す透明基材48はシート状またはフィルム状であるが、透明基材48の形状はこれらに限定されず、成形体62の用途に応じて適宜選択できる。ただし、成形体62を反射防止膜として用いる場合には、図5に示すようにシート状またはフィルム状が好ましい。
【0083】
<硬化物>
成形体62の微細凹凸構造は、上述した樹脂組成物(II)の硬化物60からなる。
この成形体62の表面には、略円錐状の凹部64が複数形成されている。
微細凹凸構造の凹部64の形状としては、図5に示す略円錐状に限らず、例えば角錐形状、円柱形状等が挙げられ、円錐形状、角錐形状等のように、深さ方向と直交する方向の細孔断面積が最表面から深さ方向に連続的に減少する形状が好ましい。
【0084】
微細凹凸構造の隣り合う凹部64の平均間隔は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましい。隣り合う凹部64の平均間隔が400nmより大きいと可視光を散乱するため、当該成形体62を反射防止物品として使用する場合、透明性が低下しやすくなる。
隣り合う凹部64の平均間隔は、凹部64の成形のしやすさの点から、20nm以上が好ましい。
隣り合う凹部64の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣り合う凹部64同士の間隔(凹部64の中心からこれに隣接する凹部64の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
【0085】
凹部64の深さは100〜750nmが好ましく、120〜500nmがより好ましく、140〜350nmが特に好ましい。凹部64の高さが100nm以上であれば、当該成形体62の反射率が十分に低くなる。一方、凹部64の高さが750nm以下であれば、成形体62の耐擦傷性が向上する。
凹部64の高さは、電子顕微鏡観察によって倍率50000倍で観察したときに凹部64の最頂部と、凹部64間に存在する凹部の最底部との間の距離を測定した値である。
【0086】
本発明の成形体62の微細凹凸構造において、凹部64の深さ/凹部64の平均間隔で表されるアスペクト比は0.5〜5.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましく、1.4〜2.5が特に好ましい。アスペクト比が0.5以上であれば、当該成形体62の反射率が十分に低くなり、その入射角依存性も十分に小さくなる。従って、成形体62が反射防止膜などの反射防止物品である場合には、特に好適である。一方、アスペクト比が5.0以下であれば、成形体62の耐擦傷性が向上する。
【0087】
<用途>
本発明の成形体62は、例えば液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、陰極管表示装置のような画像表示装置や、レンズ、ショーウィンドー、眼鏡レンズ等の対象物の表面に貼り付けて使用される。
また、前面板や保護板、内外装用部材、光学製品内部材、光学レンズ、電気製品用部材、包装容器、医療基材としても有用である。
【0088】
前面板や保護板としては、反射防止機能を利用したフラットパネルディスプレイ(液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、PDP、リアプロ等)の前面板、モバイル機器(ゲーム機、携帯電話等)の前面板、太陽電池の前面板等が挙げられる。
内外装用部材としては、建材の内外装用部材(窓、照明、壁紙等)、交通用ミラー、標識、看板、自動車内装用部材(インストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード等)、自動車外装用部材(ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロントグリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等)、自動車以外の各種乗り物(自動二輪車、電車、航空機、船舶等)の内外装用部材等が挙げられる。
光学製品内部材としては、光学製品(カメラ等)の鏡筒、投射型表示装置(フロントプロジェクタ、リアプロジェクタ等)の内部材、これら投射型表示装置を複数備えたマルチビジョンシステムの内部材、撮像装置(デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等)の内部材、光ピックアップ装置の内部材、タッチパネルの内部材、太陽電池の内部材、光ファイバー通信システム、イメージスキャナーの原稿台ガラス及びラインセンサーのカバーガラス等、不要光の除去が必要な全ての光学機器の内部材等が挙げられる。
光学レンズとしては、ピックアップレンズ、カメラ用レンズ、眼鏡レンズ等の樹脂製のレンズが挙げられる。
電気製品用部材としては、ハウジング、ボタン、スイッチ等が挙げられる。
包装容器としては、瓶、化粧品容器、小物入れ等が挙げられる。
医療基材としては、生体細胞を増殖させるための培養シート等が挙げられる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、各種測定は以下の方法にて行った。
【0090】
(1)表面自由エネルギー(X)の測定
活性エネルギー線硬化性樹脂(α)を易接着性PETフィルムと易接着層を有さないPETフィルムとの間に充填し、高圧水銀灯を使用して積算光量1000mJ/cmで硬化させた。ついで、易接着層を有さないPETフィルムを剥いで(α)成分の硬化物の表面を露出させ、接触角を測定した。
接触角は接触角測定装置(KRUSS社製、「DSA10−Mk2」)を用いて、10μLの液体を硬化物の表面に滴下したときの接触角を5点測定して平均した。液体は水とエチレングリコールを使用した。得られた2種類の液体の接触角からFowkes法を用いて表面自由エネルギーを算出した。
【0091】
(2)マスターモールドの細孔の測定
陽極酸化ポーラスアルミナからなるマスターモールドの一部について、その縦断面を1分間プラチナ(Pt)蒸着し、電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、「JSM−7400F」)を用い、加速電圧3.00kVの条件で断面を観察した。そして、酸化皮膜の厚さ、細孔の間隔、細孔の径、細孔全体の深さを測定した。それぞれ10点ずつ測定しその平均値を求め、測定値とした。
【0092】
(3)レプリカモールドおよび成形体の微細凹凸構造の測定
レプリカモールドまたは成形体の縦断面を10分間Pt蒸着し、上記(2)の場合と同様の装置および条件にて、凸部または凹部の間隔、凸部の高さまたは凹部の深さを測定した。それぞれ10点ずつ測定しその平均値を求め、測定値とした。
【0093】
(4)離型性の評価
表1に示す組成の高浸透性の樹脂組成物(II−1)または低浸透性の樹脂組成物(II−2)を用いて成形体を製造し、樹脂組成物(II−1)または樹脂組成物(II−2)の硬化物が形成された透明基材からレプリカモールドを剥離したときの離型性について、以下の評価基準にて評価した。なお、「剥離痕」とは、剥離後のレプリカモールド表面に樹脂が残ったりレプリカモールド表面が白っぽくなったりすることを指す。
◎:剥離痕が生じることなく剥離可能である。
○:剥離可能であるが、剥離痕が全体の面積の5%以下である。
×:剥離できない。または剥離できるが剥離痕が全体の面積の5%超である。
【0094】
【表1】

【0095】
表1中の略号は以下の通りである。
・ATM−4E:エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業株式会社製)
・C6DA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)
・M260:ポリエチレングリコールジアクリレート(東亞合成株式会社製、「アロニックスM260」)
・HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
・Ir184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、「イルガキュア184」)
【0096】
なお、レプリカモールドの樹脂組成物(I)の硬化物への浸透性は、樹脂組成物(II)のアクリル系ポリマーの溶解性を定量化して判断した。すなわち、アクリル系ポリマーがより溶解する場合を浸透性が高いと判断した。
具体的には、50℃に加温した樹脂組成物(II−1)、樹脂組成物(II−2)に、それぞれアクリルフィルム(三菱レイヨン株式会社製、「アクリプレンHBK003」)を浸漬し、10分後の質量変化を調べた。外観上は両者共に変化ないが、樹脂組成物(II−1)に浸漬した場合は、4.2%、樹脂組成物(II−2)に浸漬した場合は0.67%の質量減少がみられ、樹脂組成物(II−1)が高浸透性であると判断した。
【0097】
(5)視感度反射率の測定
成形体の裏面(微細凹凸構造が形成されていない面)に艶消し黒色スプレーで塗り、これをサンプルとした。得られたサンプルについて分光光度計(株式会社日立製作所製、「U−4000」)を用いて入射角5°(5°正反射付属装置使用)の条件で、波長380〜780nmの範囲における成形体の表面(微細凹凸構造が形成された面)の相対反射率を測定した。測定した反射率の値から、JIS R3106に準拠して視感度反射率を計算した。
【0098】
[マスターモールドの製造]
電解液として0.5Mシュウ酸を用い、陰極・陽極それぞれに厚さ0.5mmのアルミ板を使用して、40V、16℃の条件で6時間陽極酸化を行い、酸化皮膜を形成した((a)工程)。
ついで、その陽極を70℃の6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混酸に浸漬して、酸化皮膜(アルミナ層)を溶解した((b)工程)。
ついで、二段目の陽極酸化を実施した。すなわち、純水で洗浄後、電解液として0.3Mシュウ酸を用い、40V、16℃の条件で25秒陽極酸化を行い、酸化皮膜を形成した((c)工程)。
そのまま、32℃、5質量%リン酸に8分間浸漬してエッチング処理を行い、細孔を拡径した((d)工程)。
その後、(c)工程の陽極酸化と、(d)工程の細孔径拡大処理を1セットとして合計5セット繰り返して行い((e)工程)、酸化皮膜の平均厚さ:200nm、細孔の平均間隔:100nm、細孔の平均径:95nm、細孔全体の平均深さ:180nmの略円錐状の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたマスターモールドを得た。
このようにして得られたマスターモールドを、ダイキン化成品販売株式会社製の「オプツールDSX」をダイキン化成品販売株式会社製の「デュラサーフHD−ZV」で0.1質量%に希釈した液に10分間浸漬した後、1晩風乾して離型処理を行った。
【0099】
[実施例1]
<レプリカモールドの製造>
マスターモールドの表面に、表2に示す配合組成の樹脂組成物(I−A)を流し込み、その上に透明なモールド基材としてPETフィルムを被せた後、高圧水銀灯を用い、積算光量1000mJ/cmの条件で紫外線を照射して、樹脂組成物(I−A)を硬化した。その後、マスターモールドを剥離することにより、図1に示すような微細凹凸構造を表面に有する樹脂組成物(I−A)の硬化物14と、モールド基材12とからなるレプリカモールド10を得た。
得られたレプリカモールド10について微細凹凸構造を測定したところ、凸部16の平均間隔は100nm、凸部16の平均高さは175nmであった。
なお、表2中、重合開始剤の量は、(α)成分と(β)成分の合計100質量部に対する量である。
【0100】
<成形体の製造>
得られたレプリカモールドの表面に、上述した樹脂組成物(II−1)または樹脂組成物(II−2)を垂らし、その上に透明基材としてPETフィルムを被せた後、高圧水銀灯を用い、積算光量1000mJ/cmの条件で紫外線を照射して、樹脂組成物(II−1)または樹脂組成物(II−2)を硬化した。その後、レプリカモールドを剥離することにより、図5に示すような、微細凹凸構造を表面に有する成形体62を得た。
硬化物60が形成された透明基材48からレプリカモールドを剥離する際の離型性を評価した。結果を表2に示す。
また、得られた成形体62について微細凹凸構造を測定したところ、凹部64の平均間隔は100nm、凹部64の平均深さは170nmであった。
【0101】
[実施例2〜12、比較例1〜7]
樹脂組成物(I)として、表2、3に示す種類の樹脂組成物(I−B)〜樹脂組成物(I−Q)を用いた以外は、実施例1と同様にしてレプリカモールドを製造した。得られたレプリカモールドの凸部の平均間隔および凸部の平均高さは、実施例1で得られたレプリカモールドと同じであった。
また、得られたレプリカモールドを用いた以外は、実施例1と同様にして成形体を製造し、離型性を評価した。結果を表2、3に示す。また、得られた成形体の凹部の平均間隔および凹部の平均深さは、実施例1で得られた成形体と同じであった。
【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
表2、3中の略号は以下の通りである。
・ATM−4E:エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業株式会社製)
・TMPT−3EO:エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業株式会社製)
・TAS:トリメチロールエタン・アクリル酸・無水コハク酸縮合エステル(大阪有機化学工業株式会社製)
・HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
・C6DA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)
・x−22−1602:シリコーンジアクリレート(信越化学工業株式会社製)
・Ir184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、「イルガキュア184」)
・Ir819:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、「イルガキュア819」)
【0105】
表2、3から明らかなように、各実施例のレプリカモールドは離型性に優れていた。また、浸透性の高い活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(II−1)を用いて転写を行う場合でも、樹脂組成物(II−1)の硬化物が形成された透明基材から容易に剥離できた。
また、実施例12で得られた成形体の視感度反射率を測定したところ、0.23%と低く、優れた反射防止性能を有していた。
【0106】
一方、比較例1〜4のレプリカモールドは、浸透性の低い活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(II−2)に対しては離型性を発現できた。しかし、浸透性の高い活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(II−1)を用いた場合は、各実施例に比べて著しく離型性に劣っていた。また、比較例5〜7のレプリカモールドは、浸透性の低い活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(II−2)を用いた場合でも、離型性に劣っていた。
【符号の説明】
【0107】
10 レプリカモールド
12 モールド基材
14 活性エネルギー線硬化性樹脂(I)の硬化物
16 凸部
22 ロール状モールド
24 タンク
26 空気圧シリンダ
28 ニップロール
30 活性エネルギー線照射装置
32 剥離ロール
42 無端ベルト
44 ロール
46 下側ベルトマシン
48 透明基材
50 タンク
52 無端ベルト
54 ロール
56 上側ベルトマシン
58 活性エネルギー線照射装置
60 活性エネルギー線硬化性樹脂(II)の硬化物
62 微細凹凸構造を表面に有する成形体
64 凹部
66 ロール
68 ロール状レプリカモールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う凸部の平均間隔が400nm以下の微細凹凸構造を表面に有するレプリカモールドであって、
前記微細凹凸構造が、硬化後の表面自由エネルギーが39mJ/m以上である活性エネルギー線硬化性樹脂(α)を(100−Y)質量%と、シリコーンアクリレート(β)をY質量%含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)の硬化物からなり、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂(α)の硬化後の表面自由エネルギーをXmJ/mとしたときに、XとYが下記式(1)または(2)を満たすことを特徴とするレプリカモールド。
−0.66X+30≦Y (ただし、39≦X<43.4) ・・・(1)
0.2≦Y (ただし、43.4≦X) ・・・(2)
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂(α)が、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートと2官能以下のモノマーとからなり、
活性エネルギー線硬化性樹脂(α)とシリコーンアクリレート(β)の合計100質量%中、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートの含有量が30〜97質量%、2官能以下のモノマーの含有量が1〜63質量%、シリコーンアクリレート(β)の含有量(Y)が65質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のレプリカモールド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレプリカモールドと透明基材との間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(II)を充填し、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(II)に活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(II)を硬化させた後、前記レプリカモールドを剥離し、前記透明基材の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(II)の硬化物からなる微細凹凸構造を形成することを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の成形体の製造方法で得られた、微細凹凸構造を表面に有する成形体であって、
前記微細凹凸構造の隣り合う凹部の平均間隔が400nm以下であることを特徴とする微細凹凸構造を表面に有する成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−148481(P2012−148481A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8976(P2011−8976)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】