説明

レベリングバルブ

【課題】レベリングバルブの流量特性の設定の自由度を拡大する。
【解決手段】レベリングバルブ1は、負荷の昇降に応じてスプール孔8内を軸方向に変位する中空のスプール3と、スプール3の外周に形成した大径部3Cと、スプール3に相対してスプール孔8の開口部を閉鎖する弁体11と、空気圧供給源及びドレーンの一方をスプール3の中空部3Aに接続する第1の通路5と、負荷を支持する空気ばねに連通し、スプール3の外周に臨む空気ばね通路4とを備える。スプール孔8を大径に形成する一方、大径部3Cとの間に環状隙間を形成する縮径部8Aをスプール孔8に形成し、大径部3Cと縮径部8Aの軸方向長さを互いに異なる値a,bに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道車両の空気ばねへの圧縮空気の供給と、空気ばねからの空気の放出とを行うレベリングバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の空気ばねに圧縮空気を供給し、あるいは空気ばねから空気を放出することで、空気ばねによる鉄道車両の支持位置を一定に保つレベリングバルブが、特許文献1と2に開示されている。
【0003】
これらのレベリングバルブは、車体の荷重が増加して車体が台車に対して沈み込むと、コンプレッサから空気ばねに圧縮空気を供給して車体の支持位置を上昇させる。車体の荷重が減少して車体が台車から浮き上がると、空気ばねの空気を大気中にドレーンすることで、車体の支持位置を下降させる。
【0004】
鉄道車両は台車に対する車体の支持位置に応じて回動するレバーを備えている。レベリングバルブは空気ばねに至る空気ばね通路を、レバーの回動位置に応じて、コンプレッサとドレーンに選択的に接続する。
【0005】
特許文献1によれば、レベリングバルブは先端を開口した中空のスプールと、スプール先端に形成した大径部と、スプールを収装するスプール孔と、スプールに軸方向から相対してスプール孔を閉鎖する弁体とを備える。
【0006】
スプールはレバーに連結され、レバーの回動位置に応じてスプール孔内を軸方向に変位する。弁体はスプリングに付勢されてスプール孔の開口部に着座する。弁体の周囲にはコンプレッサからの圧縮空気が導かれる。スプールの中空部はドレーンに連通する。ドレーンは大気に解放されている。大径部を挟んで弁体と反対側のスプールの外周に臨んで空気ばね通路のポートがスプール孔に開口する。
【0007】
レバーがニュートラル位置にある場合には、弁体は弁座に着座し、スプールは先端を弁体に当接している。この状態では空気ばね通路はコンプレッサからもドレーンからも遮断される。レバーがニュートラル位置にある時の車体の支持位置を車体のニュートラル位置と称する。
【0008】
ニュートラル位置の車体が台車に対して沈み込むと、回動するレバーが弁体をリフトさせる方向にスプールを駆動する。弁体がリフトすると弁体の周囲にコンプレッサから導かれた圧縮空気が、スプール孔とスプールの大径部とがなす環状隙間を介して空気ばね通路に流入する。
【0009】
車体が台車に対してさらに沈み込むと、スプールは弁体をより大きくリフトさせるとともに、大径部がスプール孔の外側へ突出することで、大径部とスプール孔との間に形成されていた環状隙間が消滅する。その結果、空気ばね通路に流入する圧縮空気の流通断面積が急激に増大し、大量の圧縮空気が空気ばね通路に供給される。_
一方、ニュートラル位置から車体が台車に対して浮き上がると、レバーは弁体から後退する方向にスプールを駆動する。その結果、弁体はスプール孔を閉鎖状態に保持するが、スプールの先端と弁体とが離間するので、スプールの中空部とスプールの外周に臨む空気ばね通路とが、スプール孔と大径部との環状隙間を介して接続される。その結果、空気ばねの空気が空気ばね通路から環状隙間とスプールの中空部を介して大気中に放出される。
【0010】
車体が台車に対してさらに浮き上がると、スプールは空気ばね通路の開口部付近まで大きく後退し、結果として空気ばねの空気は、スプール孔と大径部との環状隙間を介さずに、空気ばね通路から直接スプールの中空部へ流出する。これにより、空気ばね通路からスプールの中空部に至る流路の流通断面積が急激に拡大し、大量の空気が空気ばね通路を介して大気中に放出される。
【0011】
このようにして、台車に対する車体の支持位置がニュートラル位置の近くにある場合には、空気ばねへの圧縮空気の供給と、レベリングバルブは空気ばねからの空気の放出のいずれについても、環状隙間の流通抵抗のもとで微少流量の空気を流通させ、空気ばねによる車体の支持位置をニュートラル位置へと修正する。一方、台車に対する車体の支持位置がニュートラル位置から大きくはずれた場合には、空気ばねへの空気の供給と空気ばねからの空気の放出のいずれについても、レベリングバルブは環状隙間に規制されない大きな流通断面積のもとで空気を移動させる。大量の空気の移動により空気ばねによる車体の支持位置は速やかにニュートラル位置付近へと修正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−52889号公報
【特許文献2】特開2001−315516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
レベリングバルブの以上の流量特性は図4に示される。すなわち、スプールを駆動するレバーがニュートラル位置付近で回動する場合には、空気ばねへの圧縮空気の供給、空気ばねからの空気の放出のいずれについても、環状隙間の流通抵抗のためにレベリングバルブの空気流量は小さい。レバーが一定角度を超えて回動すると、環状隙間が消滅し、レベリングバルブは大流量の空気を流通させる。
【0014】
図4から分かるように、レベリングバルブは空気ばねへの圧縮空気の供給時と、空気ばねからの空気の放出時とで同じ特性を発揮する。すなわち、流量特性の曲線は図4の縦軸を中心に左右対称形をなしている。しかしながら、空気ばねの設計の自由度を確保し、あるいはニュートラル位置付近における空気の給排に関してハンチングが生じないようにするには、空気ばねへの圧縮空気の供給時と、空気ばねからの空気の放出時とで異なる流量特性の設定が必要になる場合がある。
【0015】
この発明はレベリングバルブの流量特性に関する上記の必要を満たすべく、空気ばねへの圧縮空気の供給時と、空気ばねからの空気の放出時とで異なる流量特性を備えたレベリングバルブを簡易な構成で実現することを目的とする。`
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明によるレベリングバルブは、スプール孔と、負荷の昇降に応じてスプール孔内を軸方向に変位する中空のスプールと、スプールの外周に形成した大径部と、スプールに相対してスプール孔の開口部を閉鎖する弁体と、弁体をスプール孔の閉鎖方向に付勢するスプリングと、空気圧供給源及びドレーンの一方をスプールの中空部に接続する第1の通路と、負荷を支持する空気ばねに連通し、スプールの外周に臨む空気ばね通路と、空気圧供給源及びドレーンのもう一方を、弁体のスプール孔の開口部からのリフトに応じて、スプール孔と大径部とがなす環状隙間に接続する第2の通路とを備えたレベリングバルブにおいて、スプール孔を大径に形成する一方、大径部との間に前記環状隙間を形成する縮径部をスプール孔に形成し、大径部と縮径部の軸方向長さを互いに異なる値に設定している。
【発明の効果】
【0017】
大径部と縮径部の軸方向長さを互いに異なる値に設定することで、スプールが弁体との当接位置から弁体をリフトさせる方向へ変位する場合と、スプールが弁体との当接位置から、弁体から遠ざかる方向へ変位する場合とで、縮径部と大径部の間に環状隙間が形成されなくなるまでのスプールの移動距離に違いが生じる。したがって、空気ばねに空気圧を供給する動作と、空気ばねの空気を放出する動作とに関して、異なる流量特性を設定することが可能になる。その結果、流量特性に関する設計の自由度が増し、空気ばね剛性との最適なマッチングを実現できる。さらに、空気の供給と放出に関して異なる流量特性を備えたレベリングバルブは、高い応答性を維持しつつニュートラル位置付近でのハンチングを起こしにくい特性をもつことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施例を示すレベリングバルブの縦断面図である。
【図2】レベリングバルブの大径部と縮径部の寸法設定に関する一例を説明するレベリングバルブ要部の拡大側面図と、その流量特性を示すダイアグラムである。
【図3】レベリングバルブの大径部と縮径部の寸法設定に関する別の一例を説明するレベリングバルブ要部の拡大側面図と、その流量特性を示すダイアグラムである。
【図4】従来技術によるレベリングバルブの流量特性を示すダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、この発明の一実施形態によるレベリングバルブ1について説明する。
【0020】
図1を参照すると、この発明の一実施形態によるレベリングバルブ1は、鉄道車両の台車と、台車に空気ばねを介して支持された車体との間に介装され、車体の台車に対する支持高さを一定に保持する役割をもつ。
【0021】
レベリングバルブ1は車体に装着され、レバー2とリンクとを介して台車に連結される。レバー2の先端はレベリングバルブ1のスプール3に連結される。車体の荷重変化により空気ばねによる車体の支持高さが変化すると、この変化がリンクを介してレバー2を揺動させ、レバー2の先端に連結したスプール3を軸方向に駆動する。レベリングバルブ1はスプール3の変位に応じて、空気ばねに接続された空気ばね通路4に、空気圧供給源としてのコンプレッサに接続された第1の通路5と、ドレーンに接続された第2の通路6を選択的に接続する。なお、ドレーンは大気に解放される。
【0022】
レベリングバルブ1は車体に固定されるバルブハウジング7を備える。バルブハウジング7にはスプール3を収装するスプール孔8が形成される。スプール孔8の両端はそれぞれバルブハウジング7内のスペース9、10に開口する。一方のスペース9にはスプール3とレバー2の連結部が収装される。スペース9には第2の通路6が接続される。
【0023】
スペース10には弁体11が収装される。弁体11はスペース10内に配置されたスプリング12により、スプール3と反対側からスプール孔8の開口部に向けて付勢され、開口部に形成された弁座に着座することで開口部をスペース10に対して閉鎖する。スペース10には第1の通路5が接続される。
【0024】
空気ばね通路4はスプール3の外周に臨んでスプール孔8の内側に開口する。スプール3には中空部3Aが形成される。中空部3Aはスプール3の弁体11に向いた端面に開口する。中空部3Aはまた、スプール3の反対側の端部にラジアル方向に形成したドレーンポート3Bを介してスペース9に常時連通する。
【0025】
スプール3の弁体11に向いた端部には大径部3Cが形成される。これに対して、スプール孔8には縮径部8Aが形成される。縮径部8Aから空気ばね通路4の開口部に至る区間においてスプール孔8はスプール3に対して十分な大径に形成される。スプール孔8のこの部分を拡径部8Bと称する。拡径部8Bよりスペース9側においては、スプール孔8はスプール3に摺接する径に形成される。この摺接部にはリングシール13が配置される。
【0026】
拡径部8Bとスプール3との間のスペースは空気の流通に格別の抵抗を与えない程度に十分な断面積を備える。一方、縮径部8Aと大径部3Cとがなす環状隙間はこれより大幅に狭く、空気の通過に対して明らかな抵抗を発生させる。
【0027】
図2と図3を参照すると、ここでは縮径部8Aの軸方向長さをa、大径部3Cの軸方向長さをbとする。このレベリングバルブ1においてはa≠bの関係を満足するように、縮径部8Aの軸方向長さaと大径部3Cの軸方向長さbを設定する。
【0028】
再び図1を参照すると、このレベリングバルブ1においてはレバー2の中心線とスプール3の中心軸とが直角をなす位置が、スプール3のニュートラル位置に設定される。スプール3はニュートラル位置において先端を閉鎖位置の弁体11に当接する。ただし、ニュートラル位置ではスプール3は弁体11にいかなるリフト力をも及ぼさない。この状態が得られるように、スプール3の位置とレバー2の揺動角との関係をあらかじめ調整する。
【0029】
ニュートラル位置のレベリングバルブ1においては、弁体11がスプール孔8の開口部を閉鎖し、スプール3の先端が弁体11に当接している。したがって、環状隙間を介したスペース10と空気ばね通路4との連通は遮断されている。環状隙間を介したスプール3の中空部3Aと空気ばね通路4との連通も遮断されている。そのため、空気ばね通路4は実質的に閉鎖され、空気ばねへの空気の給排は行われない。この状態で、空気ばねは車体をあらかじめ設定された支持位置に保持する。この支持位置が車体のニュートラル位置に相当する。
【0030】
ところで、例えば車両の乗客の乗降により、車体が空気ばねに及ぼす負荷が変動すると、空気ばねが負荷の増減に応じて伸縮し、空気ばねによる車体の支持位置に変化が生じる。レベリングバルブ1はこうした負荷変動に対して車体をニュートラル位置に保つべく空気ばねの圧力を自動調整する。
【0031】
次にレベリングバルブ1の作用を説明する。
【0032】
車体の支持位置がニュートラル位置から僅かに上昇した場合には、レバー2を介してスプール3は図の左側へ駆動される。スプール3のこの変位により、スプール3の先端が弁体11から離間し、スプール3の先端と弁体11の間に生じる隙間を介してスプール3の内側と外側とが連通する。より詳しくは、縮径部8Aと大径部3Cの間の環状隙間を介してスプール3の中空部3Aと空気ばね通路4とが連通する。その結果、空気ばねの空気が空気ばね通路4、縮径部8Aと大径部3Cの間の環状隙間、スプール3と弁体11の隙間、スプール3の中空部3A、及びドレーンポート3Bを介して大気に放出される。この時、縮径部8Aと大径部3Cの環状隙間が通過する空気に対して流通抵抗を発生させる。したがって、車体はゆっくりと降下してニュートラル位置に至る。
【0033】
これに対して、車体の支持位置が大幅に上昇した場合には、スプール3は図の左側へ大きく変位する。その結果、スプール3の大径部3Cは縮径部8Aから図の左側へと抜け出し、環状隙間は存在しなくなる。この状態で空気ばねから大気中に向けて流出する空気は、環状隙間の流通抵抗を受けずに流出するので、大量の空気が空気ばねから放出され、車体は速やかに降下する。
【0034】
このように、車体の上昇位置がニュートラル位置に近い場合には、レベリングバルブ1は環状隙間の抵抗のもとで少量ずつ空気ばねから空気を放出して、車体の支持位置をゆっくりと降下させる。車体の上昇位置がニュートラル位置から大きく隔たっている場合には、レベリングバルブ1は環状隙間の抵抗なしに、空気ばねから空気を放出し、車体の支持位置を速やか降下させる。
【0035】
なお、この場合も車体の支持位置がニュートラル位置に近づくと、レバー2に駆動されるスプール3は弁体11に接近する方向へと変位し、大径部3Cが縮径部8Aに侵入して、大径部3Cと縮径部8Aの間に環状隙間を形成する。以後、車体の支持位置は環状隙間の流通抵抗により、ゆっくりと降下し、最終的にニュートラル位置に戻る。
【0036】
車体の支持位置がニュートラル位置に戻ると同時にスプール3は先端を弁体11に当接する。以後、空気ばね通路4とドレーンの接続は遮断され、空気ばねからの空気の放出も遮断される。車体は荷重条件に新たな変動が生じるまで、ニュートラル位置に保持される。
【0037】
一方、車体の支持位置がニュートラル位置から僅かに下降した場合には、レバー2はスプールを図の右方向へと駆動する。スプール3のこの変位により弁体11がスプール孔8の開口部からリフトし、スペース10と空気ばね通路4とが大径部3Cと縮径部8Aによる環状隙間を介して連通する。スプール3の先端が弁体11に当接しているため、空気ばね通路4とドレーンとの連通は遮断される。
【0038】
この状態では,コンプレッサからの圧縮空気が、大径部3Cと縮径部8Aによる環状隙間を介して空気ばね通路4に流入し、空気ばねは圧縮空気の供給により膨張する。この時、縮径部8Aと大径部3Cの環状隙間が通過する空気に対して流通抵抗を発生させる。したがって、車体はゆっくりと上昇してニュートラル位置に至る。
【0039】
車体の支持位置がニュートラル位置から大幅に下降した場合には、スプール3は図の右側へ大きく変位する。スプール3の大径部3Cは弁体11を押圧しつつスプール孔8の外側へ突出し、環状隙間は存在しなくなる。この状態でスペース10から空気ばねへと流入する圧縮空気はスプール孔8とスプール3の間のスペースを通って空気ばね通路4に抵抗なく流入する。したがって、大量の圧縮空気が空気ばねに供給され、空気ばねは速やかに車体の支持位置を上昇させる。
【0040】
このように車体の下降位置がニュートラル位置に近い場合には、レベリングバルブ1は環状隙間の抵抗のもとで少量ずつスペース10から空気ばね通路4を介して空気ばねに圧縮空気を供給し、車体をゆっくりと上昇させる。車体の下降位置がニュートラル位置から大きく隔たっている場合には、レベリングバルブ1は環状隙間の抵抗なしに、空気ばねに大量の圧縮空気を供給し、車体の支持位置を速やかに上昇させる。
【0041】
なお、この場合も車体の支持位置がニュートラル位置に近づくと、レバー2に駆動されるスプール3は図の左側へと変位し、大径部3Cが再び縮径部8Aに侵入して、大径部3Cと縮径部8Aの間に環状隙間を形成する。以後、車体の支持位置は環状隙間の流通抵抗により、ゆっくりと上昇し、最終的にニュートラル位置に戻る。
【0042】
このレベリングバルブ1においては、前述のように、スプール孔8の縮径部8Aの軸方向長さaとスプール3の大径部3Cの軸方向長さbは異なる値に設定されている。この設定が及ぼす作用を次に説明する。
【0043】
図2(a)は大径部3Cの軸方向長さbが縮径部8Aの軸方向長さaを上回る場合を示す。この場合には、スプール3が図の左方向に変位する場合には、スプール3の変位距離がaに達すると環状隙間が消滅するのに対して、スプール3が図の右方向に変位する場合は、スプール3の変位距離がbに達するまで環状隙間は消滅しない。
【0044】
その結果、レベリングバルブ1の流量特性は図2(b)に示すように、空気ばねへの空気供給時と空気ばねからの空気放出時とで異なる流量特性を示す。すなわち、スプール3が図2(a)の左方向へ作動する空気放出時においては、スプール3の変位距離がaに達すると流通抵抗が急減して,流量が急増するのに対して、スプール3が図2(a)の右方向へ作動する空気供給時においては、同様の減少はスプール3の変位距離がbに達するまで生じない。つまり、車体のニュートラル位置からの下降に対しては、比較的早期に大量の空気が空気ばねに供給され、早期に車体の本格的な上昇操作が実行されるのに対して、車体のニュートラル位置からの上昇に対しては、車体が大幅に上昇するまで、空気ばねから大気に放出する空気の流量が小さく抑えられる。言い換えれば、一定範囲を超えた車体の昇降に関して、降下した車体の上昇操作は、上昇した車体の降下操作より迅速に行われることになる。
【0045】
一方、図3(a)は縮径部8Aの軸方向長さaが大径部3Cの軸方向長さbを上回る場合を示す。この場合も、スプール3が図の左方向に変位する場合には、スプール3の変位距離がaに達すると環状隙間が消滅し、スプールが図の右方向に変位する場合は、スプール3の変位距離がbに達すると環状隙間が消滅する。しかしながら、図2(a)のケースと逆にa>bの関係があるので、レベリングバルブ1の流量特性は図3(b)に示すように、、空気ばねへの空気供給時と空気ばねからの空気放出時とで異なる流量特性を示す。すなわち、車体のニュートラル位置からの上昇に対しては比較的早期に空気ばねから大量の空気が大気中に放出され、速やかに車体の降下操作が実行されるのに対して、車体のニュートラル位置からの下降に対しては、車体が大幅に下降するまで、スペース10から空気ばねへ供給される圧縮空気の流量が小さく抑えられる。言い換えれば、一定範囲を超えた車体の昇降に関して、上昇した車体の降下操作は、下降した車体の上昇操作より迅速に行われることになる。
【0046】
以上のように、このレベリングバルブ1においては、a>bの場合も、b>aの場合も、環状隙間による微小流領域の範囲が、空気の供給側と空気の放出側とで互いに異なる。このレベリングバルブ1においては、aとbの値の設定により流量特性の違いを任意に実現なため、車体を支持する空気ばねに求められる剛性に応じて、実際の空気ばねの特性を最適にマッチングさせることが可能になる。なお、a>bの設定とb>aの設定のいずれかを選択するかは、空気ばねによる車体の支持条件を考慮して決定すれば良い。
【0047】
また、車両の好ましい安定度や好ましい乗り心地を実現するための空気ばねの特性の設定に関して、このレベリングバルブ1を用いることで設定の自由度を増加させることができる。
【0048】
さらに、図2(b)や図3(b)に示すように、このレベリングバルブ1は非対称形の流量特性を備えるため、レベリングバルブ1は高い応答性を維持しつつ、ニュートラル位置付近でハンチングを起こしにくいという好ましい特性をもつ。
【0049】
以上、この発明を特定の実施形態を通じて説明してきたが、この発明は上記の実施形態に限定されるものではない。当業者にとっては、特許請求の範囲内で上記の実施形態にさまざまな修正あるいは変更を加えることが可能である。
【0050】
例えば、上記の実施形態では、第1の通路5を空気圧供給源としてのコンプレッサに接続し、第2の通路6をドレーンに接続している。しかしながら、第1の通路5をドレーンに接続し、第2の通路を空気圧供給源としてのコンプレッサに接続することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明によるレベリングバルブは、鉄道車両の車体の空気ばねを用いた支持位置の自動調整に適している。
【符号の説明】
【0052】
1 レベリングバルブ
2 レバー
3 スプール
3A 中空部
3C 大径部
4 空気ばね通路
5 第1の通路
6 第2の通路
8 スプール孔
8A 縮径部
11 弁体
12 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプール孔と、
負荷の昇降に応じて前記スプール孔内を軸方向に変位する中空のスプールと、
前記スプールの外周に形成した大径部と、
前記スプールに相対して前記スプール孔の開口部を閉鎖する弁体と、
前記弁体を前記スプール孔の閉鎖方向に付勢するスプリングと、
空気圧供給源及びドレーンの一方を前記スプールの中空部に接続する第1の通路と、
負荷を支持する空気ばねに連通し、前記スプールの外周に臨む空気ばね通路と、
前記空気圧供給源及び前記ドレーンのもう一方を、前記弁体の前記スプール孔の前記大径部からのリフトに応じて、前記スプール孔と前記大径部とがなす環状隙間に接続する第2の通路とを備えたレベリングバルブにおいて、
前記スプール孔を大径に形成する一方、前記大径部との間に前記環状隙間を形成する縮径部を前記スプール孔に形成し、
前記大径部と前記縮径部の軸方向長さを互いに異なる値に設定したことを特徴とするレベリングバルブ。
【請求項2】
前記大径部を前記縮径部より軸方向に長く設定したことを特徴とする請求項1に記載のレベリングバルブ。
【請求項3】
前記縮径部を前記大径部より軸方向に長く設定したことを特徴とする請求項1に記載のレベリングバルブ。
【請求項4】
前記第1の通路は前記ドレーンを前記スプールの中空部に接続し、前記空気ばね通路は前記空気圧供給源を前記弁体の前記スプール孔の前記大径部からのリフトに応じて環状隙間に接続することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレベリングバルブ。
【請求項5】
前記第1の通路は前記空気圧供給源を前記スプールの中空部に接続し、前記空気ばね通路は前記ドレーンを前記弁体の前記スプール孔の前記大径部からのリフトに応じて環状隙間に接続することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレベリングバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−949(P2011−949A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145354(P2009−145354)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】