説明

レリーフパターンの製造方法、及び電子部品

【課題】残膜率が向上するレリーフパターンの製造方法、及び当該製造方法で形成されたレリーフパターンを有する電子部品を提供する。
【解決手段】ネガ型感光性樹脂組成物を用いて塗膜又は成形体を形成し、当該塗膜又は成形体に所定パターン状に電磁波を照射後、未露光部の塗膜を除去してパターンを形成する現像工程の前に、当該塗膜又は成形体を加熱する工程を有するレリーフパターンの製造方法であって、前記加熱する工程が、系外から積極的かつ継続的に気体が供給され、且つ、当該塗膜又は成形体から発生する揮発性成分が系外に積極的に除去される雰囲気下で、熱媒体を介するか、電磁波の輻射により、当該塗膜又は成形体を加熱する工程であることを特徴とする、レリーフパターンの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光後現像前の加熱工程が必要なネガ型感光性樹脂組成物を用いたレリーフパターンの製造方法、及び、当該レリーフパターンの製造方法を用いて形成されたレリーフパターンを有する電子物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂組成物は、例えば、電子部品、光学製品、光学部品の成形材料、層形成材料などに用いられ、特に、電磁波によるパターニング工程を経て形成される製品又は部材に好適に利用されてきている。代表的なパターン形成方法の一つとして、上記感光性樹脂組成物からなる塗膜又は成形体の表面に、所定のパターン状に、電磁波を照射(以後、単に「露光」という場合がある)し、必要に応じて加熱処理を行って前記塗膜又は成形体の電磁波照射部位の溶解性を選択的に低下させた後、当該溶解性が低下する溶媒を現像液として用いて現像する方法がある。
【0003】
感光性樹脂組成物にはポジ型とネガ型があり、ネガ型は、露光部のみを選択的に現像液に不溶化することによりパターン形成をする。
ネガ型感光性樹脂組成物には、露光後現像前に加熱工程が不要なものと必要なものがある。露光後現像前に加熱工程が必要なネガ型感光性樹脂組成物は、露光により発生する化学種を用いて熱反応により硬化を促進する、すなわち、露光部において、露光後発生した化学種が加熱により架橋を促進する等により不溶化する。
【0004】
電磁波照射後の加熱処理において、従来一般的に、加熱装置としては、ホットプレート(例えば、特許文献1〜5)、循環式オーブン(例えば、特許文献6〜10)等が用いられている。ネガ型の感光性レジスト、特に感光性ポリイミドについては、塗膜表面の膜荒れを防止するために、一般的にホットプレートが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−227154号公報
【特許文献2】特開2009−265637号公報
【特許文献3】特開2009−265294号公報
【特許文献4】特許第4154955号公報
【特許文献5】特許第4154954号公報、
【特許文献6】特開2008−247747号公報
【特許文献7】特開2007−262276号公報
【特許文献8】特開2007−249013公報
【特許文献9】特開2007−101685号公報
【特許文献10】特開2006−282880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の加熱方法によるパターン形成方法では、未露光部の深部が溶解する前に、露光部の表面が溶解してしまう傾向があり、残膜率が低くなるという課題があった。例えば、図8(A)に示したように、基材1上に塗膜2を形成し、加熱手段として多用されているホットプレート3を用いて露光後加熱を行った場合、通常、ホットプレート3上に基材1側を向けて塗膜を載せるため、塗膜2の基材側8から加熱4される。この場合、露光部5において、塗膜の表面7よりも塗膜の基材側8がより加熱されて硬化反応が進行し易く、塗膜の表面7は塗膜の基材側8と比べて硬化反応が進行し難い状況であると推定される。しかしながら、露光後加熱後の現像液は、比較的硬化反応が進行していない、塗膜の表面7から現像される。そのため、未露光部6の塗膜の基材側8が溶解する前に、比較的硬化反応が進行していない、塗膜の表面7側の露光部5が溶解してしまう傾向があり、図8(B)に示したように残膜率が低くなっていたと推定される。
そのため、従来のパターン形成方法では、現像液の濃度や光塩基発生剤の量を調整したり、溶解促進剤の添加が必要であり、プロセスマージンが小さくなってしまっていた。
なお、本発明において残膜率とは、ネガ型感光性樹脂組成物からなる層の露光部の現像前の膜厚に対する現像後の膜厚の割合である。
【0007】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、その主目的は、露光後現像前の加熱工程が必要なネガ型感光性樹脂組成物において、結果的に十分なプロセスマージンを保ちつつ、残膜率を向上することができるレリーフパターンの製造方法、及び当該レリーフパターンの製造方法を用いて形成されたレリーフパターンを有する電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、系外から積極的かつ継続的に気体が供給され、且つ、当該塗膜又は成形体から発生する揮発性成分が系外に積極的に除去される雰囲気下で、熱媒体を介するか、電磁波の輻射により、露光後加熱工程を行うことにより、未露光部と露光部の溶解速度の差が大きくなり、露光部表層の残膜率が向上することを見出した。
【0009】
本発明に係るレリーフパターンの製造方法は、ネネガ型感光性樹脂組成物を用いて塗膜又は成形体を形成し、
当該塗膜又は成形体に所定パターン状に電磁波を照射後、未露光部の塗膜を除去してパターンを形成する現像工程の前に、当該塗膜又は成形体を加熱する工程を有するレリーフパターンの製造方法であって、
前記加熱する工程が、系外から積極的かつ継続的に気体が供給され、且つ、当該塗膜又は成形体から発生する揮発性成分が系外に積極的に除去される雰囲気下で、熱媒体を介するか、電磁波の輻射により、当該塗膜又は成形体を加熱する工程であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るレリーフパターンの製造方法においては、前記加熱する工程が、系外から継続的に供給される気体が15分間に加熱系内の内容積に対して体積比1以上となるように、雰囲気を制御して行われることが、レリーフパターンの残膜率を向上する点から好ましい。
【0011】
本発明に係るレリーフパターンの製造方法においては、前記加熱する工程が、当該塗膜又は成形体に対して少なくとも1つの方向から、気体を吹き付けながら行われることが、レリーフパターンの残膜率を向上する点から好ましい。更に、当該塗膜又は成形体に対して少なくとも1つの方向から、上記の系外から積極的かつ継続的に供給された気体を吹き付けながら行われることが、レリーフパターンの残膜率を向上する点から好ましい。また、前記吹き付ける気体としては、流速が0.1m/sec以上の気体であることが好ましい。
【0012】
本発明に係るレリーフパターンの製造方法においては、前記上記熱媒体が、系外から継続的に供給される気体であることが、レリーフパターンの残膜率を向上する点から好ましい。
【0013】
本発明に係るレリーフパターンの製造方法において、前記ネガ型感光性樹脂組成物としては、高耐熱性のパターンを形成できる点から、ポリイミド前駆体を含むネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物が好適に用いられる。中でも、前記ネガ型感光性樹脂組成物としては、イミド化率の差によって、電磁波照射部の現像液に対する溶解速度が未照射部の溶解速度よりも小さくなることでパターンを形成する、ポリイミド前駆体と、光塩基発生剤又は光酸発生剤とを含むネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物が好適に用いられる。
【0014】
本発明に係るレリーフパターンの製造方法において、前記ネガ型感光性樹脂組成物としては、更に、ポリイミド前駆体と光塩基発生剤とを含むネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物が好適に用いられる。上記光塩基発生剤としては、塩基として脂肪族アミンもしくはアミジンを発生するものであることが、塩基性の強さ、すなわちポリイミド前駆体をイミド化する触媒能の点から好ましい。
【0015】
本発明に係るレリーフパターンの製造方法において、前記ネガ型感光性樹脂組成物に用いられる前記ポリイミド前駆体は、少なくともひとつはカルボキシル基を有することが、アルカリ現像液に対する溶解性が高まる点から好ましい。
【0016】
また、本発明は、上記本発明のレリーフパターンの製造方法を用いて形成されたレリーフパターンを有する電子部品も提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のレリーフパターンの製造方法によれば、残膜率を向上することができる。
本発明のレリーフパターンの製造方法によれば、残膜率が向上するため、露光部、未露光部の溶解性の差を大きくすることが可能となる。露光部と未露光部とで大きな溶解性コントラストが得られる結果、十分なプロセスマージンを保ちつつ、形状が良好なパターンを得ることができる。
また、本発明によれば、形状が良好なパターンを有する電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】現像性評価1における未露光部の溶解速度を示したグラフである。
【図2】現像性評価1における露光部の溶解速度を示したグラフである。
【図3】現像性評価2における未露光部の溶解速度を示したグラフである。
【図4】現像性評価2における露光部の溶解速度を示したグラフである。
【図5】実施例1で得られたパターンのSEM写真である。
【図6】比較例1で得られたパターンのSEM写真である。
【図7】比較例2で得られたパターンのSEM写真である。
【図8】ホットプレートで加熱した場合に残膜率が低下することを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳しく説明する。
なお、本発明において、電磁波とは、波長を特定した場合を除き、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。本明細書では、電磁波の照射を露光ともいう。なお、波長365nm、405nm、436nmの電磁波をそれぞれ、i線、h線、g線とも表記することがある。
【0020】
I.レリーフパターンの製造方法
本発明のレリーフパターンの製造方法は、ネガ型感光性樹脂組成物を用いて塗膜又は成形体を形成し、
当該塗膜又は成形体に所定パターン状に電磁波を照射後、未露光部の塗膜を除去してパターンを形成する現像工程の前に、当該塗膜又は成形体を加熱する工程を有するレリーフパターンの製造方法であって、
前記加熱する工程が、系外から積極的かつ継続的に気体が供給され、且つ、当該塗膜又は成形体から発生する揮発性成分が系外に積極的に除去される雰囲気下で、熱媒体を介するか、電磁波の輻射により、当該塗膜又は成形体を加熱する工程であることを特徴とする。
【0021】
本発明のレリーフパターンの製造方法は、露光後現像前の加熱工程として、系外から積極的かつ継続的に気体が供給され、且つ、当該塗膜又は成形体から発生する揮発性成分が系外に積極的に除去される雰囲気下で、熱媒体を介するか、電磁波の輻射により、当該塗膜又は成形体を加熱する工程としたことにより、残膜率を向上することができる。残膜率が向上すると、露光部、未露光部の溶解性の差を大きくすることが可能となる。露光部と未露光部とで大きな溶解性コントラストが得られる結果、十分なプロセスマージンを保ちつつ、形状が良好なパターンを得ることができる。更に、残膜率が向上すると、同じ最終膜厚でも使用する材料を減らせるというメリットがある。
【0022】
このような加熱工程を有することにより、上記のような効果を発揮する作用としては、未解明であるが以下のように推測される。
熱の伝達方法には、伝導、対流、放射があるが、本発明の加熱工程においては、ホットプレートのような熱伝導を用いずに、熱媒体を介した対流と、電磁波の輻射を用いる。
熱媒体を介するか、電磁波の輻射により加熱するため、ホットプレートのように当該塗膜又は成形体の一部分のみから加熱することなく、当該塗膜又は成形体の表面全体から加熱することが可能である。そのため、塗膜又は成形体の露光部は、後で現像液が最初に接触される表面から十分適切に硬化反応が進行し、一方で、未露光部の一部が局所的に加熱されて溶解し難くなるといった現象も起こらない。
また、系外から積極的かつ継続的に気体が供給され、且つ、当該塗膜又は成形体から発生する揮発性成分が系外に積極的に除去される雰囲気下で加熱すると、当該塗膜又は成形体中の残留溶媒や、硬化性成分が硬化反応をする際に発生する水等の低分子成分が、塗膜又は成形体から積極的に除去されるようになり、当該塗膜又は成形体中に含まれる硬化性成分の硬化反応も進行し易くなる。当該塗膜又は成形体中に水や残留溶剤が多く残っていると、現像液に溶解しやすい傾向もある。以上のことから、塗膜又は成形体から発生する揮発性成分が系外に積極的に除去されない、循環式オーブンのような加熱手段と比べて、露光部表面が溶解し難い塗膜乃至成形体が形成されるのではないかと推定される。
本願においては、一部分のみから加熱することなく、当該塗膜又は成形体の表面全体から加熱することが可能であり、塗膜又は成形体に存在していた残留溶媒や硬化反応で生じる揮発性成分が十分除去され、露光部は表面から硬化反応が十分に進行しやすいことにより、未露光部の深部が溶解する前に、露光部の表面が溶解してしまう現象が抑制され、残膜率が高くなると推定される。
また、本願のように系外から積極的かつ継続的に気体が供給され、且つ、当該塗膜又は成形体から発生する揮発性成分が系外に積極的に除去される雰囲気下で加熱すると、硬化性成分が硬化反応をする際に発生する水等の低分子成分が塗膜又は成形体から積極的に除去される結果、塗膜表面の結晶性が上がり、緻密な膜構造を形成することにより、表面部の現像液に対する溶解性が低下し、露光部表面が溶解し難い塗膜乃至成形体が形成されるのではないかと推定される。
【0023】
パターンにはポジ型とネガ型があるが、本発明に係るレリーフパターンは、ネガ型パターンであり、露光部のみを選択的に現像液に不溶化することによりパターン形成をする。
ネガ型パターンには、露光後加熱が不要なものと必要なものがあるが、本発明は露光後加熱が必要なネガ型感光性樹脂組成物を用いたレリーフパターンの製造方法に関する。
露光後現像前に加熱工程が必要なネガ型感光性樹脂組成物を用いたレリーフパターンの製造方法の利点としては、露光により発生する化学種を用いて熱反応により硬化を促進し、不溶化するため、光のみを利用して硬化反応を行うものよりも、必要な光エネルギーが少なくて済むことや、発生する化学種が触媒的に働く場合、添加量の削減もしくは高感度化が可能なことなどが挙げられる。
【0024】
本発明のレリーフパターンの製造方法は、少なくとも、
(1)ネガ型感光性樹脂組成物を用いて塗膜又は成形体を形成する工程、
(2)当該塗膜又は成形体に所定パターン状に電磁波を照射する工程、
(3)電磁波を照射後現像する前に、当該塗膜又は成形体を加熱する工程、及び
(4)現像する工程
とを有し、必要に応じて更に別の工程を有していても良いものである。
以下各工程を順に説明する。
【0025】
(1)ネガ型感光性樹脂組成物を用いて塗膜又は成形体を形成する工程
<ネガ型感光性樹脂組成物>
本発明で用いられるネガ型感光性樹脂組成物は、露光後加熱が必要なネガ型感光性樹脂組成物である。このようなネガ型感光性樹脂組成物は、露光部において、露光により発生する化学種を用いて熱反応により硬化を促進し不溶化するものである。そのため、露光後加熱が必要なネガ型感光性樹脂組成物は、露光により触媒として作用する化学種を発生させる化合物(感光性成分)と、当該化学種の存在下での加熱によって最終生成物への反応が促進される高分子前駆体(硬化性成分)を少なくとも含む。
【0026】
露光後加熱が必要なネガ型感光性樹脂組成物としては、所謂、光酸発生剤型感光性樹脂組成物や化学増幅型感光性樹脂組成物などが挙げられる。例えば、光酸発生剤、酸により分解する置換基を有する化合物(架橋剤)、及び、アルカリ可溶性樹脂を含むネガ型感光性樹脂組成物が挙げられる。
前記アルカリ可溶性樹脂としては、ノボラック樹脂や、ポリヒドロキシスチレン、カリックスレゾルシンアレン等が挙げられる。酸により分解する置換基を有する化合物(架橋剤)としては、メラミン樹脂や、フェノール性水酸基に隣接したメチロール基を複数個有するフェノール樹脂等が挙げられる。光酸発生剤としては、トリアジンやその誘導体、スルホン酸オキシムエステル化合物、スルホン酸ヨードニウム塩、スルホン酸スルフォニウム塩等、公知の光酸発生剤を用いることができる。
【0027】
また、露光後加熱が必要なネガ型感光性樹脂組成物としては、高耐熱性パターンが形成可能な、ポリイミド前駆体を含むネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物が好適に用いられる。ポリイミド前駆体は、硬化反応をする際に脱水するため、生じた水が塗膜又は成形体から積極的に排除される本願に特徴的な加熱方法により、硬化反応がより進行しやすくなり、本願のレリーフパターンの製造方法を用いるのに適した高分子前駆体である。
ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物としては、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸のカルボキシル基に、感光性成分として上記ポリイミド前駆体にエステル結合やイオン結合でエチレン性二重結合を導入し、さらに光ラジカル開始剤を混合した溶剤現像ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物であっても良いが、中でも、イミド化率の差によって、電磁波照射部の現像液に対する溶解速度が未照射部の溶解速度よりも小さくなることでパターンを形成するネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物であることが好ましい。
【0028】
イミド化率の差によって、電磁波照射部の現像液に対する溶解速度が未照射部の溶解速度よりも小さくなることでパターンを形成するネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物としては、例えば、ポリアミック酸等のポリイミド前駆体に、感光性成分として光酸発生剤を添加したネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物やポリアミック酸等のポリイミド前駆体に感光性成分として光塩基発生剤を添加したネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物などが挙げられる。
また、電磁波照射部と未照射部のイミド化率の差を出すことによって、副次的に残膜率が向上していると推測されるネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物として、酸架橋性の置換基を導入したポリイミド前駆体に、感光性成分として光酸発生剤を添加したネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物;ポリアミック酸等のポリイミド前駆体に、感光性成分としてニフェジピン系化合物等を添加したネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物などが挙げられる。
中でも、ポリイミド前駆体と、光塩基発生剤又は光酸発生剤とを含むネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物が好適に用いられる。以下、本発明に好適に用いられる、上記のようなネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物に用いられるポリイミド前駆体、及び感光性成分を詳細に説明する。
【0029】
(ポリイミド前駆体)
本発明の感光性樹脂組成物に用いられるポリイミド前駆体としては、具体的には、下記式(1)又は式(2)で表される構造を有するポリイミド前駆体が挙げられる。
【0030】
【化1】

【0031】
【化2】

【0032】
(式(1)及び式(2)中、R1は4価の有機基、R2は2価の有機基であり、Rは水素原子もしくは1価の有機基であり、繰り返されるR1同士およびR2同士、R同士はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。nは1以上の自然数である。)
【0033】
また、式(2)については、左右非対称であるが、1つのポリマー分子鎖中に左右の向きが異なるものが含まれていてもよい。
【0034】
本発明におけるポリイミド前駆体としては、上記式(1)及び式(2)の各繰り返し単位のみを有するポリマーのみを用いても良いし、上記式(1)及び式(2)の各繰り返し単位のみを有するポリマーを2種以上混合して用いても良いし、1つのポリマー分子鎖中に上記式(1)及び式(2)の繰り返し単位が含まれる共重合体を用いても良い。
【0035】
が1価の有機基である場合としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及び、これらにエーテル結合を含有したC2nOC2m+1などで表される構造等を挙げることができる。
【0036】
ポリイミド前駆体としては、少なくともひとつはカルボキシル基を有することが、アルカリ現像液に対する溶解性が高まる点から好ましい。中でも、式(1)においてRがいずれも水素原子であるようなポリアミック酸が、アルカリ現像性の点から好適に用いられる。
【0037】
上記式(1)及び式(2)において、一般に、Rはテトラカルボン酸二無水物由来の構造であり、Rはジアミン由来の構造である。
【0038】
本発明に用いられるポリイミド前駆体を製造する方法としては、従来公知の手法を適用することができる。例えば、上記式(1)で表される構造を有するポリイミド前駆体の形成方法としては、(i)酸二無水物とジアミンからポリアミック酸を合成する手法や、(ii)酸二無水物に1価のアルコールやアミノ化合物、エポキシ化合物等を反応させ合成したエステル酸やアミド酸モノマーのカルボン酸に、ジアミノ化合物やその誘導体を反応させて形成する手法などが挙げられるがこれに限定されない。
また、上記(2)で表される構造を有するポリイミド前駆体の製造方法としては、上記(1)で表されるポリイミド前駆体の一部を加熱によりイミド化する方法が挙げられる。
また、上記(1)で表されるポリイミド前駆体の一部を加熱によりイミド化する際には、下記式のような、ポリイミドが混ざっていても良い。
【0039】
【化3】

【0040】
また、露光部と未露光部のイミド化率の差を大きくする観点から、式(2)、式(2’)に含まれるイミド化後の環構造の割合よりも、式(1)、式(2)に含まれるイミド化前のカルボン酸部分の構造を多く含む、ポリイミド前駆体を用いることが望ましい。酸無水物由来のカルボキシル基(もしくはそのエステル)が全体の50%以上あることが望ましく、75%以上であることがさらに好ましく、全て、式(1)からなるポリアミック酸(および)その誘導体であることが好ましい。
【0041】
本発明において上記ポリイミド前駆体に適用可能なテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、ピリジンテトラカルボン酸二無水物、スルホニルジフタル酸無水物、m−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス−(トリフルオロメチル)キサンテンテトラカルボン酸二無水物、9−フェニル−9−(トリフルオロメチル)キサンテンテトラカルボン酸二無水物、12,14−ジフェニル−12,14−ビス(トリフルオロメチル)−12H,14H−5,7−ジオキサペンタセン−2,3,9,10−テトラカルボン酸二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物、1,4−ビス(トリフルオロメチル)−2,3,5,6−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1−(トリフルオロメチル)−2,3,5,6−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物,p−フェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物、p−ビフェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0042】
一方、上記ポリイミド前駆体に適用可能なジアミン成分も、1種類のジアミン単独で、または2種類以上のジアミンを併用して用いることができる。用いられるジアミン成分は、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンのような芳香族アミン;1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカンのような脂肪族アミン;1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンのような脂環式ジアミンなどが挙げられる。グアナミン類としては、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどを挙げることができ、また、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
さらに目的に応じ、架橋点となるエチニル基、ベンゾシクロブテン−4’−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、及びイソプロペニル基のいずれか1種又は2種以上を、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てに置換基として導入しても使用することができる。
【0043】
耐熱性や薄膜での絶縁性に優れ、また、5%重量減少温度が高くなり、アウトガスが低減される点から、ポリイミド前駆体としては、酸二無水物由来の部分もジアミン由来の部分も芳香族構造を含むことが望ましい。特に、酸二無水物由来の部分およびジアミン由来の部分のすべてが芳香族構造を含む全芳香族ポリイミドもしくは全芳香族ポリイミド前駆体であることが好ましい。
【0044】
ここで、全芳香族ポリイミド前駆体とは、芳香族酸成分と芳香族アミン成分の共重合、又は、芳香族酸/アミノ成分の重合により得られるポリイミド前駆体及びその誘導体である。また、芳香族酸成分とは、ポリイミド骨格を形成する4つの酸基が全て芳香族環上に置換している化合物であり、芳香族アミン成分とは、ポリイミド骨格を形成する2つのアミノ基が両方とも芳香族環上に置換している化合物であり、芳香族酸/アミノ成分とはポリイミド骨格を形成する酸基とアミノ基がいずれも芳香族環上に置換している化合物である。ただし、前述した原料の芳香族酸二無水物および芳香族ジアミンの具体例から明らかなように、全ての酸基又はアミノ基が同じ芳香環上に存在する必要はない。
以上の理由から、ポリイミド前駆体は、最終的に得られるポリイミド樹脂に耐熱性及び寸法安定性を求める場合には、芳香族酸成分及び/又は芳香族アミン成分の共重合割合ができるだけ大きいことが好ましい。具体的には、イミド構造の繰り返し単位を構成する酸成分に占める芳香族酸成分の割合が50モル%以上、特に70モル%以上であることが好ましく、イミド構造の繰り返し単位を構成するアミン成分に占める芳香族アミン成分の割合が40モル%以上、特に60モル%以上であることが好ましく、全芳香族ポリイミドもしくは全芳香族ポリイミド前駆体であることが好ましい。
【0045】
本発明で用いられるポリイミド前駆体としては、上記式(1)で表されるポリイミド前駆体が好ましく、中でも、合成の容易さおよびアルカリ現像液に対する溶解性の高さから、R3が全て水素原子であるポリアミック酸であることが特に好ましい。
【0046】
本発明においては、なかでも、上記式(1)〜(2)で表される構造を有するポリイミド前駆体におけるRのうち33モル%以上が、下記式(3)で表されるいずれかの構造であることが好ましい。この場合、耐熱性に優れ、低線熱膨張係数を示すポリイミド樹脂となる。下記式で表される構造の含有量は上記式(1)〜(2)中のRのうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、中でも、上記式で表される構造の含有量は上記式(1)〜(2)中のRのうち50モル%以上であることが好ましく、さらに70モル%以上であることが好ましい。
【0047】
【化4】

【0048】
(式(3)中、aは0または1以上の自然数、Aは単結合(ビフェニル構造)、酸素原子(エーテル結合)、エステル結合のいずれかであり、全てが同じであっても、各々異なっていてもよい。結合基は、芳香環の結合部位から見て、芳香環の2,3位もしくは3,4位に結合する。)
【0049】
上記式(1)〜(2)中のRを上記式(3)で表されるいずれかの構造とするために用いられる酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、p−フェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物、p−ビフェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物などが挙げられる。これらは、吸湿膨張係数を低減させる観点ならびに、ジアミンの選択性を広げる観点から好ましい。
【0050】
併用するテトラカルボン酸二無水物として、フッ素原子を有するテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。フッ素が導入されたテトラカルボン酸二無水物を用いると、最終的に得られるポリイミド樹脂の吸湿膨張係数が低下する。少なくとも1つのフッ素原子を有するテトラカルボン酸二無水物としては、中でも、フルオロ基、トリフルオロメチル基、またはトリフルオロメトキシ基を有することが好ましい。具体的には、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物などが挙げられる。しかしながら、ポリイミド前駆体がフッ素を含んだ骨格を有する場合、ポリイミド前駆体が、塩基性水溶液に溶解しづらい傾向にあるため、パターニングを行う際には、アルコール等の有機溶媒と塩基性水溶液との混合溶液によって現像を行う必要がある場合がある。後述のジアミン成分としてフッ素を含んだ骨格を含む場合も同様である。
【0051】
また、上記ポリイミド前駆体においては、上記式(1)〜(2)中のRのうち33モル%以上が下記式(4)で表されるいずれかの構造であることが好ましい。この場合、耐熱性に優れ、低線熱膨張および低吸湿膨張を示すポリイミド樹脂となる。下記式(4)で表される構造の含有量は上記式(1)〜(2)中のRのうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、中でも、上記式で表される構造の含有量は上記式(1)〜(2)中のRのうち50モル%以上であることが好ましく、さらに70モル%以上であることが好ましい。
【0052】
【化5】

【0053】
(式(4)中、Rは2価の有機基、酸素原子、硫黄原子、またはスルホン基である。また、芳香環上の水素原子の一部若しくは全てをハロゲン原子、アルキル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、またはトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換されていてもよい。)
【0054】
上記式(1)〜(2)中のRを上記式(4)で表されるいずれかの構造とするために用いられるジアミンとしては、具体的には、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2、6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノアントラセン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルのように、芳香環の置換基としてフッ素を導入すると、上記ポリイミド樹脂の吸湿膨張係数を低減させることができ、好ましい。
【0055】
本発明に用いられるポリイミド前駆体は、上記感光性ポリイミド樹脂組成物とした際の感度を高め、マスクパターンを正確に再現するパターン形状を得るために、1μmの膜厚のときに、露光波長に対して少なくとも5%以上の透過率を示すことが好ましく、15%以上の透過率を示すことが更に好ましい。
【0056】
また、一般的な露光光源である高圧水銀灯を用いて露光を行う場合には、少なくとも436nm、405nm、365nmの波長の電磁波のうち1つの波長の電磁波に対する透過率が、厚み1μmのフィルムに成膜した時で好ましくは5%以上、更に好ましくは15%、より更に好ましくは50%以上である。
露光波長に対してポリイミド前駆体の透過率が高いということは、それだけ、光のロスが少ないということであり、高感度の感光性ポリイミド樹脂組成物を得ることができる。
【0057】
ポリイミド前駆体として、透過率を上げるためには、上述したような、フッ素が導入された酸二無水物やジアミンを用いることが、耐熱性を維持しつつ、吸湿膨張も低減することが可能である点から好ましい。透過率を上げるために脂環骨格を有する酸二無水物やジアミンを用いても良いが、耐熱性が低下する恐れがある。
【0058】
一方、ジアミンや酸二無水物として、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどのシロキサン骨格を有するジアミンや酸二無水物を用いると、基板との密着性を改善したり、上記ポリイミド樹脂の弾性率が低下し、ガラス転移温度を低下させたりすることができる。
【0059】
本発明に用いられるポリイミド前駆体の重量平均分子量は、その用途にもよるが、3,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、5,000〜500,000の範囲であることがさらに好ましく、10,000〜500,000の範囲であることがさらに好ましい。重量平均分子量が3,000未満であると、塗膜又はフィルムとした場合に十分な強度が得られにくい。また、加熱処理等を施しポリイミド樹脂などの高分子とした際の膜の強度も低くなる。一方、重量平均分子量が1,000,000を超えると粘度が上昇し、溶解性も落ちてくるため、表面が平滑で膜厚が均一な塗膜又はフィルムが得られにくい。
ここで用いている重量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値のことをいい、ポリイミド前駆体そのものを測定した分子量でも良いし、無水酢酸等で化学的イミド化処理を行った後測定したものでも良い。
【0060】
本発明に用いられるポリイミド前駆体の含有量としては、得られるパターンの膜物性、特に膜強度や耐熱性の点から、上記ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物の固形分全体に対し、50重量%以上であることが好ましく、なかでも、70重量%以上であることが好ましい。
なお、固形分とは溶剤以外の全成分であり、液状のモノマー成分も固形分に含まれる。
【0061】
(感光性成分)
ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物に含まれる感光性成分は、上記ポリイミド前駆体を露光後、露光部のみ硬化させるために含まれるものであり、典型的には光ラジカル発生剤、光酸発生剤、光塩基発生剤のような、光照射にともない化合物自体の溶解性が変化するような感光性主成分や、このような感光性主成分と共に用いられる増感剤等の感光性補助成分などが挙げられる。
【0062】
本発明に用いられる感光性成分の含有量としては、所望のパターンを形成できるものであれば特に限定されるものではなく、一般的な含有量とすることができる。
本発明においては、上記感光性成分が、上記ポリイミド前駆体100重量部に対して、0.1重量部以上30重量部未満の範囲内であることが好ましく、なかでも、0.5重量部〜20重量部の範囲内であることが好ましく、特に、0.5重量部〜15重量部の範囲内であることが好ましい。
【0063】
本発明に用いられる感光性成分のなかでも、光酸発生剤もしくは光塩基発生剤を主成分とするものであることが好ましい。特に、ポリアミック酸などのポリイミド前駆体に光酸発生剤もしくは光塩基発生剤を添加し、光照射において、発生する酸もしくは塩基によりイミド化反応を触媒的に促進し、露光部を選択的に不溶化する系では、光酸発生剤もしくは光塩基発生剤のみの添加でパターニング可能であり、架橋成分や分解性の置換基を導入する必要がないため、添加剤量をさらに削減することが可能だからである。
一般的な感光性ポリイミド樹脂組成物に含まれる感光性成分の含有量が、上記ポリイミド前駆体100重量部に対して30重量部以上のものが多いのに対して、光酸発生剤または光塩基発生剤は、上述のように発生化学種が触媒的に働くため、含有量を上述した範囲内とした場合であっても十分に硬化可能な露光感度を有するからである。また、上記感光性成分は、ポリイミド前駆体に比べて耐熱性が低く、硬化膜となった後のアウトガスの主成分となり得ることから、上記含有量を上述した範囲内のように低減することにより、硬化膜となった後のアウトガス発生量が十分に少ないものとすることができる。
【0064】
本発明においては、特に、上記感光性成分が上記光塩基発生剤を主成分とするものであることが好ましい。発生化学種である塩基は、酸と比べて、金属等への影響が小さいことから望ましい。
なお、主成分とするとは、上記感光性成分中の上記光塩基発生剤等の含有量が、50質量%以上であることをいうものである。
本発明に用いられる光塩基発生剤としては、常温常圧の通常の条件下では活性を示さないが、外部刺激として電磁波の照射と加熱が行なわれると、塩基(塩基性物質)を発生するものであれば特に限定されるものではない。
【0065】
本発明においては、光塩基発生剤として公知のものを用いることが出来る。例えば、M. Shirai, and M Tsunooka, Prog. Polym. Sci., 21, 1 (1996); 角岡正弘, 高分子加工, 46, 2 (1997); C. Kutal, Coord. Chem. Rev., 211, 353 (2001); Y. Kaneko, A. Sarker, and D. Neckers, Chem. Mater., 11, 170 (1999); H. Tachi, M. Shirai, and M. Tsunooka, J. Photopolym. Sci. Technol., 13, 153 (2000); M. Winkle, and K. Graziano, J. Photopolym. Sci. Technol., 3, 419 (1990); M. Tsunooka, H. Tachi, and S. Yoshitaka, J. Photopolym. Sci. Technol., 9, 13 (1996); K. Suyama, H. Araki, M. Shirai, J. Photopolym. Sci. Technol., 19, 81 (2006)に記載されているように、遷移金属化合物錯体や、アンモニウム塩などの構造を有するものや、アミジン部分がカルボン酸と塩形成することで潜在化されたもののように、塩基成分が塩を形成することにより中和されたイオン性の化合物や、カルバマート誘導体、オキシムエステル誘導体、アシル化合物などのウレタン結合やオキシム結合などにより塩基成分が潜在化された非イオン性の化合物を挙げることができる。
【0066】
光塩基発生剤としては、1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
ここで、光塩基発生剤として用いられるイオン性化合物としては、具体的には、下記構造式で示されるものを挙げることができる。
【0067】
【化6】

【0068】
また、光塩基発生剤としてのオキシムエステル誘導体としては、例えば、下記構造式で示されるものを挙げることができる。
【0069】
【化7】

【0070】
アシル化合物としては、例えば、下記構造式で示されるものを挙げることができる。
【0071】
【化8】

【0072】
また、光塩基発生剤としてのカルバメート化合物としては、下記化合物が挙げられる。
【0073】
【化9】

【0074】
【化10】

【0075】
また、本発明において好適に用いられる光塩基発生剤としては、下記式(5)に示すような化合物が挙げられる。
【0076】
【化11】

(式(5)中、Rは、それぞれ独立に、水素又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。Rは、それらが結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。但し、Rの少なくとも1つは1価の有機基である。また、化17における、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、水酸基、ニトロ基、ニトロソ基、メルカプト基、シリル基、シラノール基又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R、R、R及びRは、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。)
【0077】
本発明に係る光塩基発生剤において発生する塩基性物質としては、下記式(A)で表されるアミンや下記式(B)で表されるアミジンが挙げられる。
【0078】
【化12】

(Rは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。Rは、それらが結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。但し、Rの少なくとも1つは1価の有機基である。また、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。Rは、それらが結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。)
【0079】
なお、上記式(A)のRにおいて、式(B)に含まれるようなアミジン構造を有していている場合は、発生塩基としては上記式(A)のアミンではなく、上記式(B)のアミジンに属することとする。
【0080】
上記のような触媒効果等の、発生した塩基性物質が与える効果が大きい点から、発生する塩基性物質が脂肪族アミンもしくはアミジンであることが、塩基性の高いアミンである点から好ましい。その中でも、塩基性の観点からは、2級や3級の脂肪族アミンもしくはアミジンが好ましい。しかしながら脂肪族1級アミンを用いた場合でも、芳香族アミンを用いた場合に比べて、十分な触媒効果を得ることができる。そのため、脂肪族アミンの中でも、更に、5%重量減少温度や50%重量減少温度、熱分解温度といった熱物性や、溶解性といった他の物性面や、合成の簡便性やコストといった観点から、アミンやアミジンを適宜選択することが望ましい。
【0081】
本発明においては、上記脂肪族アミンを発生させ、高感度を達成し、さらには、露光部未露光部の溶解性コントラストを大きくする観点から、式(A)中のRの窒素原子などの、発生するアミンのアミノ基を構成する窒素原子と直接結合している全ての原子が、水素原子もしくはSP3軌道を有する炭素原子である(但し、Rの全てが水素原子である場合を除く。)ことが好ましい。
このような窒素原子と直接結合している原子がSP3軌道を有する炭素原子となるような置換基としては、直鎖脂肪族炭化水素基、分岐脂肪族炭化水素基、及び、環状脂肪族炭化水素基、又はこれらの組み合わせからなる脂肪族炭化水素基が挙げられる。なお、当該脂肪族炭化水素基は、芳香族基等の置換基を有していても良く、或いは、炭化水素鎖中にヘテロ原子等の炭化水素以外の結合を含んでいても良い。好適なものとして、炭素数1〜20の直鎖又は分岐の飽和又は不飽和アルキル基、炭素数4〜13のシクロアルキル基、炭素数7〜26のフェノキシアルキル基、炭素数7〜26のアリールアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基が挙げられる。
ここでRが上記環状脂肪族炭化水素基又は上記シクロアルキル基を有する場合には、Rの2つが連結して環状になって、Rが結合している窒素原子を含む複素環構造を形成している場合を含む。
【0082】
上記脂肪族炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、エチニル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、ベンジル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、Rの2つが連結して環状になって、Rが結合している窒素原子を含む複素環構造を形成している場合の複素環構造としては、例えば、アジリジン(3員環)、アゼチジン(4員環)、ピロリジン(5員環)、ピペリジン(6員環)、アゼパン(7員環)、アゾカン(8員環)等が挙げられる。これら複素環構造には直鎖又は分岐のアルキル基等の置換基を有していても良く、例えば、アルキル置換体として、メチルアジリジンなどのモノアルキルアジリジン、ジメチルアジリジンなどのジアルキルアジリジン、メチルアゼチジンなどのモノアルキルアゼチジン、ジメチルアゼチジンなどのジアルキルアゼチジン、トリメチルアゼチジンなどのトリアルキルアゼチジン、メチルピロリジンなどのモノアルキルピロリジン、ジメチルピロリジンなどのジアルキルピロリジン、トリメチルピロリジンなどのトリアルキルピロリジン、テトラメチルピロリジンなどのテトラアルキルピロリジン、メチルピペリジンなどのモノアルキルピペリジン、ジメチルピペリジンなどのジアルキルピペリジン、トリメチルピペリジンなどのトリアルキルピペリジン、テトラメチルピペリジンなどのテトラアルキルピペリジン、ペンタメチルピペリジンなどのペンタアルキルピペリジン等が挙げられる。
【0083】
本発明に係る光塩基発生剤の分解時に発生するアミンとしては、具体的には、n−ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、ベンジルアミンなどの第1級アミン類、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、などの直鎖状2級アミン類、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカンなどの環状2級アミンおよびこれらのアルキル置換体のような第2級アミン類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、キヌクリジンおよび、3−キヌクリジノールのような脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン、およびイソキノリン、ピリジン、コリジン、ベータピコリンなどの複素環第3級アミンなどが挙げられる。
【0084】
本発明に係る光塩基発生剤の分解時に発生するアミジンとしては、具体的には、イミダゾール、プリン、トリアゾール、グアニジンなどの2級アミジン及びこれらの誘導体、ピリミジン、トリアジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)及び1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)などの3級アミジンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。
【0085】
本発明においては、上述の塩基発生剤のなかでも、上記式(5)で表される化合物であることが好ましい。式(5)で表される化合物は、現像後に行う加熱のプロセスで分解、又は揮発しやすいものであるため、その後のプロセスで、高温雰囲気下や真空雰囲気下に曝された場合であっても、揮発しアウトガスとなる成分の少ないレリーフパターンを製造することができる。
【0086】
上記式(5)で表される塩基発生剤は、電磁波が照射されるだけでも塩基を発生するが、適宜加熱をすることにより、塩基の発生が促進される。そのため、電磁波の照射と加熱を組み合わせることにより、少ない電磁波照射量で、効率的に塩基を発生することが可能であり、従来の所謂光塩基発生剤と比べて高い感度を有する。
上記式(5)で表される塩基発生剤は、上記特定構造を有するため、電磁波が照射されることにより、下記式で示されるように、式(5)中の(−CH=CH−C(=O)−)部分がシス体へと異性化し、さらに加熱によって環化し、塩基(NHR)を生成する。アミンの触媒作用によって、上記ポリイミド前駆体が最終生成物となる際の反応が開始される温度を下げたり、上記ポリイミド前駆体が最終生成物となる硬化反応を開始することができる。
【0087】
【化13】

【0088】
式(5)で表される塩基発生剤は、環化することで、フェノール性水酸基を消失し、溶解性が変化し、塩基性水溶液等の場合には溶解性が低下する。これにより、上記ポリイミド前駆体の最終生成物への反応による溶解性の低下を更に補助する機能を有し、露光部と未露光部の溶解性コントラストを大きくすることが可能となる。
【0089】
式(5)中、Rcは、上記式(A)のRcと同様であって良いのでここでの説明を省略する。発生する塩基(NHR)は、上述の塩基のうち、NH基を含む1級、2級アミン、NH基を含むアミジンが挙げられる。
中でも、発生する塩基が、2級アミン、及び/又は、アミジンである場合には、塩基発生剤としての感度が高くなる点から好ましい。これは、2級アミンやアミジンを用いることで、アミド結合部位の活性水素がなくなり、このことにより、電子密度が変化し、異性化の感度が向上するからではないかと推定される。
【0090】
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R、R、R及びRは、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素などが挙げられる。
1価の有機基としては、特に制限がなく、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、ヒドロキシイミノ基等が挙げられる。これらの有機基は、当該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでよく、これらは、直鎖状でも分岐状でも良い。
【0091】
上記R〜Rの有機基中の炭化水素基以外の結合としては、本発明の効果が損なわれない限り、特に限定されず、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合等が挙げられる。
耐熱性の点から、有機基中の炭化水素基以外の結合としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:ここでRは水素原子又は1価の有機基)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合が好ましい。
【0092】
上記R〜Rの有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、本発明の効果が損なわれない限り、特に限定されず、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基、アミノ基(−NH2, −NHR, −NRR':ここで、R及びR’はそれぞれ独立に炭化水素基)、アンモニオ基等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素は、炭化水素基によって置換されていても良い。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖、分岐、及び環状のいずれでも良い。
中でも、R〜Rの有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基が好ましい。
【0093】
1価の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜20のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数4〜23のシクロアルキル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数4〜23のシクロアルケニル基;フェノキシメチル基、2−フェノキシエチル基、4−フェノキシブチル基等の炭素数7〜26のアリールオキシアルキル基(−ROAr基);ベンジル基、3−フェニルプロピル基等の炭素数7〜20のアラルキル基;シアノメチル基、β−シアノエチル基等のシアノ基をもつ炭素数2〜21のアルキル基;ヒドロキシメチル基等の水酸基をもつ炭素数1〜20のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基、アセトアミド基、ベンゼンスルホナミド基(CHSONH−)等の炭素数2〜21のアミド基、メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1〜20のアルキルチオ基(−SR基)、アセチル基、ベンゾイル基等の炭素数1〜20のアシル基、メトキシカルボニル基、アセトキシ基等の炭素数2〜21のエステル基(−COOR基及び−OCOR基)、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、トリル基等の炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、及びメチルチオ基(−SCH)であることが好ましい。また、上記のアルキル部分は直鎖でも分岐状でも環状でも良い。
【0094】
また、R〜Rは、それらのうち2つ以上が結合して環状構造になっていても良い。
環状構造は、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環、並びに当該脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環よりなる群から選ばれる2種以上が組み合されてなる構造であっても良い。例えば、R〜Rは、それらの2つ以上が結合して、R〜Rが結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成している場合も、吸収波長が長波長化する点から好ましい。
【0095】
本発明においては、R、R、R及びRの少なくとも1つが、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、又はアンモニオ基であることが望ましい。置換基R〜Rに、上記のような置換基を少なくとも1つ導入することにより、吸収する光の波長を調整することが可能であり、置換基を導入することで所望の波長を吸収させるようにすることもできる。また、溶解性や組み合わせる高分子前駆体との相溶性が向上するようにすることもできる。これにより、組み合わせる上記ポリイミド前駆体の吸収波長も考慮しながら、感度を向上させることが可能である。
【0096】
所望の波長に対して吸収波長をシフトさせる為に、どのような置換基を導入したら良いかという指針として、Interpretation of the Ultraviolet Spectra of Natural Products(A.I.Scott 1964)や、有機化合物のスペクトルによる同定法第5版(R.M.Silverstein 1993)に記載の表を参考にすることができる。
【0097】
中でも、本発明における塩基発生剤において、R、R、R及びRの少なくとも1つが水酸基である場合、R、R、R及びRに水酸基を含まない化合物と比べ、塩基性水溶液等に対する溶解性の向上、および吸収波長の長波長化が可能な点から好ましい。また、特にRがフェノール性水酸基である場合、シス体に異性化した化合物が環化する際の反応サイトが増えるため、環化しやすくなる点から好ましい。
【0098】
化学式(5)で表される構造は、(−CH=CH−C(=O)−)部分で幾何異性体が存在するが、トランス体のみを用いることが好ましい。しかし、合成および精製工程および保管時などにおいて幾何異性体であるシス体が混ざる可能性もあり、この場合トランス体とシス体の混合物を用いても良いが、溶解性コントラストを高められる点から、シス体の割合が10%未満であることが好ましい。
【0099】
本発明に用いられる光ラジカル発生剤、光酸発生剤のような光開始剤等の感光性主成分や、増感剤等の感光性補助成分については、一般的な感光性ポリイミド樹脂組成物に用いられるものを使用することができる。
【0100】
(溶媒)
本発明のネガ型感光性樹脂組成物に用いられる溶媒としては、上記ポリイミド前駆体等の硬化性成分や感光性成分を均一に分散または溶解することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノエーテル類(いわゆるセロソルブ類);メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、前記グリコールモノエーテル類の酢酸エステル(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート)、メトキシプロピルアセテート、エトキシプロピルアセテート、蓚酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1−クロロプロパン、1−クロロブタン、1−クロロペンタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドンなどのピロリドン類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、その他の有機極性溶媒類等が挙げられ、更には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び、その他の有機非極性溶媒類等も挙げられる。これらの溶媒は単独若しくは組み合わせて用いられる。
中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスホアミド、N−アセチル−2−ピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン等の極性溶媒が好適なものとして挙げられる。
【0101】
また、ポリイミド前駆体としてポリアミック酸を用いる場合には、ポリアミック酸の合成反応により得られた溶液をそのまま溶媒として用い、そこに必要に応じて他の成分を混合しても良い。
【0102】
(その他の成分)
本発明に用いられるネガ型感光性樹脂組成物は、少なくともポリイミド前駆体等の高分子前駆体(硬化性成分)、感光性成分、および通常溶剤を含むものであるが、必要に応じて他の成分を含むものであっても良い。
このような他の成分としては、熱硬化性成分、非重合性バインダー樹脂、その他の添加剤が挙げられる。
【0103】
本発明においては、上記ネガ型感光性樹脂組成物に加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、それらは多孔質や中空構造であってもよい。また、その機能又は形態としては顔料、フィラー、繊維等がある。
【0104】
また、本発明における他の任意成分の配合割合は、上記感光性樹脂組成物の固形分全体に対し、0.1重量%〜20重量%の範囲が好ましい。0.1重量%未満だと、添加物を添加した効果が発揮されにくく、20重量%を超えると、最終的に得られる樹脂硬化物の特性が最終生成物に反映されにくいからである。
【0105】
<塗膜又は成形体を形成する工程>
本発明に係るネガ型感光性樹脂組成物を何らかの基材上に塗布するなどして塗膜を形成したり、適した成形方法で成形体を形成する。
塗布する方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法、バーコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷、インクジェット法など公知の印刷技術を用いた方法を用いることができる。
成形方法としては、射出成形(インジェクション成形)、ブロー成形、シート成形(真空成形・圧空成型)、チューブ成形(押出成形)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0106】
また、塗膜を形成する際の基材としては、特に限定されないが、シリコンウエハ、金属基板、セラミック基板、ガラス基板、樹脂製基板等を上げることができる。後述する本発明の製造方法に特徴的な加熱工程を用いると、ホットプレートを用いた加熱では十分に硬化反応が進行し難かったSUS等の金属基板であっても、十分に加熱を行うことができるので、基材の選択肢も広げることが可能である。
【0107】
ネガ型感光性樹脂組成物を塗布又は成形した後は、乾燥、すなわち加熱して溶剤の大部分を除くことにより、基材表面に粘着性のない塗膜ないし、成形体を与えることができる。塗膜の厚みには特に制限はないが、乾燥後の膜厚が0.5〜50μmであることが好ましく、感度および現像速度面から1.0〜20μmであることがより望ましい。塗布した塗膜の乾燥条件としては、当該組成物の成分、使用割合、有機溶剤の種類等により適宜決めればよく、通常、30〜250℃、好ましくは50〜200℃、さらに好ましくは70〜150℃である。また、プリベーク時間は、通常、30秒〜60分程度である。
【0108】
(2)当該塗膜又は成形体に所定パターン状に電磁波を照射する工程
得られた塗膜又は成形体に、所定のパターンを有するマスクを通して、電磁波を照射しパターン状に電磁波を照射する。
【0109】
電磁波を照射する露光工程に用いられる露光方法や露光装置は特に限定されることなく、密着露光でも間接露光でも良く、g線ステッパ、i線ステッパ、超高圧水銀灯を用いるコンタクト/プロキシミティ露光機、ミラープロジェクション露光機、又はその他の紫外線、可視光線、X線、電子線などを照射可能な投影機や線源を使用することができる。
【0110】
(3)電磁波を照射後現像する前に、当該塗膜又は成形体を加熱する工程
本発明の加熱する工程は、系外から積極的かつ継続的に気体が供給され、且つ、当該塗膜又は成形体から発生する揮発性成分が系外に積極的に除去される雰囲気下で、熱媒体を介するか、電磁波の輻射により、当該塗膜又は成形体を加熱する工程であることを特徴とする。
【0111】
本出願における系外から積極的かつ継続的に気体が供給され、且つ、当該塗膜又は成形体から発生する揮発性成分が系外に積極的に除去される雰囲気下とは、加熱系内、すなわち、通常加熱装置内もしくは、開放系の加熱装置においては加熱装置が置かれた空間において、系外から圧送装置などにより継続的に気体が供給されるとともに、雰囲気内外の圧力差によって、系外への気体の流れを生じることにより、揮発性成分が気体の流れに沿って、系外に排出される系をいう。気体供給の圧送時により生じる内圧を利用して、系外に排出しても良いが、排気装置などを設けて、揮発性成分をより系外に排出することが望ましい。
また、上記、雰囲気下が加熱装置内にあることが、雰囲気の範囲を限定することにより、系外から積極的かつ継続的に気体が供給される気体の量を削減することができることから好ましい。
【0112】
装置外から空気や窒素などの気体を取り入れる吸気システムがあり、且つ、気体を装置内から装置外へ排出する排気システムがある加熱装置内で、当該塗膜又は成形体自体に気体が供給され且つ当該塗膜又は成形体から発生する揮発性成分が除去される状態が、好ましい態様として挙げられる。
なお、当該塗膜又は成形体から発生する揮発性成分とは、該塗膜又は成形体中の残留溶媒や、硬化性成分が硬化反応をする際に発生する水等の揮発性の低分子成分をいう。
【0113】
更に、本発明においては、熱媒体を介するか、電磁波の輻射により、当該塗膜又は成形体を加熱する。本発明における熱媒体とは、装置を一定の操作温度に維持するために加熱に使用する流体をいい、空気や窒素などの気体、水、油などの液体、プラズマ等が挙げられる。熱媒体としては、空気や窒素などの気体であることが好ましく、中でも、系外から継続的に供給される気体であることが好ましい。熱媒体と継続的に供給される気体を同一にすることにより、残留する溶媒の制御と温度分布制御を一元化することが可能である。
電磁波の輻射を用いて加熱する手段としては、赤外線、遠赤外線、マイクロ波、高周波等の電磁波の照射が挙げられる。
【0114】
従って、例えばホットプレートは固体から熱伝導により加熱されるので、本発明で用いられる加熱装置から除外される。また、ホットプレート等の開放系の加熱装置は、通常、気体は自然供給であって積極的に気体が供給されているわけではなく、且つ積極的に気体を排出する排気システムも有しないので、本発明で用いられる雰囲気下から除外される。
また、例えば、循環式オーブンのような、積極的に気体を排出する排気システムを持たない加熱装置は、本発明で用いられる加熱装置から除外される。
【0115】
本発明で用いられる加熱装置としては、熱媒体を介するか、電磁波の輻射により、当該塗膜又は成形体を加熱する装置であれば、用いることができる。
系外から積極的かつ継続的に気体が供給され、且つ、当該塗膜又は成形体から発生する揮発性成分が系外に積極的に除去される雰囲気下で、開放系の熱媒体を介するか、電磁波の輻射により加熱する加熱装置を用いて加熱しても良い。
中でも、装置外から積極的かつ継続的に気体が供給され、且つ、当該塗膜又は成形体から発生する揮発性成分が装置外に積極的に除去され、熱媒体を介するか、電磁波の輻射により加熱する加熱装置を好適に用いることができる。本発明において用いられる市販で入手可能な、このような加熱装置としては、例えば、電子部品をプリント配電板にはんだ付けする装置であるリフロー炉、気体供給及び排気システムを有する(搬送型の)赤外線炉などから、上記条件に合致するものを適宜選択して用いることができる。
【0116】
本発明においては、当該加熱する工程が、系外から継続的に供給される気体が15分間に加熱系内の内容積に対して体積比1以上となるように、雰囲気を制御して行われることが、残膜率を向上する点から好ましい。加熱系内とは、加熱装置内もしくは加熱装置が設置された雰囲気内が挙げられる。中でも、系外から継続的に供給される気体が、10分間に加熱系内の内容積に対して体積比1以上となるように、更に5分間に加熱系内の内容積に対して体積比1以上となるように、雰囲気を制御して行われることが好ましい。また、温度の安定性の点から、通常、系外から継続的に供給される気体は、1分間に加熱系内の内容積に対して体積比100以下となるように、好ましくは10分間に加熱系内の内容積に対して体積比100以下となるように設定される。
気体供給システムと排気システムを有する加熱装置内では、系外から供給される気体量に合わせて、排気量を調整することにより、系外からの大気の進入を防ぎ、系中の水分量を制御することが可能であることが好ましい。
【0117】
また、系外から継続的に供給される気体としては、気体中に含まれる単位体積あたりの水分量が10g/m3以下、更に1g/m3以下、より更に0.1g/m3以下、特に0.01g/m3以下であることが、残膜率を向上する点から好ましい。
系外から継続的に供給される気体に含まれる単位体積あたりの水分量が高いと、塗膜の硬化反応を阻害する恐れがある。一方で、供給される気体に含まれる単位体積あたりの水分量が10g/m3以下と制御されていると、硬化反応を進行しやすく、残膜率を向上することができる。
【0118】
また、前記加熱する工程が、当該塗膜又は成形体に対して少なくとも1つの方向から、気体を吹き付けながら加熱を行うことが好ましい。
当該塗膜又は成形体に対して少なくとも1つの方向から、気体を吹き付けながら加熱を行うと、塗膜又は成形体から発生する揮発性成分が除去されやすくなり、塗膜又は成形体中の残留溶剤量が低減されやすく、且つ、硬化反応で生じる水等の生成物が除去されやすく、硬化反応が進行されやすくなる点から、好ましい。
【0119】
本発明における、塗膜又は成形体に対して少なくとも1つの方向から、気体を吹き付けるとは、塗膜又は成形体の近くに気体が滞留することを防ぐために、塗膜又は成形体の近くに新鮮な気体を送り込むことをいう。塗膜又は成形体の表面に対して、垂直方向から気体を吹きつけても良いし、90°とは異なる角度から気体を吹き付けても良い。
例えば、基材上に形成された塗膜については、基材に対して、垂直方向から気体を吹きつけても良いし、90°とは異なる角度から気体を吹き付けても良いし、基材表面及び/又は塗膜表面上において、基材の平行方向に気体を吹き付けても良い。
【0120】
中でも、基材上に形成された塗膜の場合、塗膜表面及び/又は基材表面に、気体を吹き付けながら加熱を行うと、特に残膜率を向上することができる点から好ましい。特に、少なくとも塗膜表面に気体を吹き付けながら加熱を行うと、特に残膜率を向上することができる点から好ましい。
【0121】
また、上記の熱媒体が、系外から継続的に供給される気体である場合においては、前記吹き付ける気体が、熱媒体である系外から継続的に供給される気体であることが好ましい。この場合、塗膜又は成形体の表面に対して、垂直方向もしくは垂直方向に近い角度から当該気体を吹き付けることにより、熱効率が高くなる点から好ましい。また、塗膜又は成形体の表面に対して平行方向もしくは平行方向に近い角度から流した際には、塗膜又は成形体の表面荒れを抑制することができることが可能であることから、特性にあわせて選択することが望ましい。
【0122】
また、当該塗膜又は成形体に対して少なくとも1つの方向から、気体を吹き付けながら行われる場合、流速が0.1m/sec以上の気体を吹き付けることが好ましく、流速が1m/sec以上の気体を吹きつけることがさらに好ましく、流速が3〜12m/secの気体を吹き付けることが、残膜率を向上する点からより更に好ましい。
吹き付ける気体は、空気又は窒素等の気体からなり、気体中に含まれる単位体積あたりの水分量は、10g/m3以下、更に1g/m3以下、より更に0.1g/m3以下、特に0.01g/m3以下であることが、残膜率を向上する点から好ましい。
【0123】
当該塗膜又は成形体に対して少なくとも1つの方向から、気体を吹き付けながら塗膜又は成形体を加熱する場合には、流速を各々独立に制御可能な2つ以上の気体供給源を有する加熱装置を用いることが、当該塗膜又は成形体に対して2つ以上の方向から特性に合わせて吹き付ける気体量を調整できる点から好ましい。
【0124】
また、前記加熱する工程が、2つ以上の熱源を用いて、又は、2つ以上の熱源を有している加熱装置内で、当該塗膜又は成形体に対して2つ以上の方向から、当該塗膜又は成形体を加熱することが好ましい。この場合、形状やその後の現像条件に合わせて、塗膜又は成形体の場所に応じて適宜最適な加熱条件を設定でき、或いは、全方向に均一に加熱をすることが可能になる。
例えば、基材に塗布された塗膜を用いる場合、塗膜表面側から、及び、塗膜の基材側からの両方向から加熱することが、塗膜の膜厚方向全体で良好に硬化反応が進行し、残膜率を向上させることができる点から、好ましい。この場合には、塗膜の露光部の基材側付近のみ硬化反応が進行して露光部の表面が溶解し易くなったり、塗膜表面の加熱が強すぎて、未露光部でも硬化反応が進行して未露光部の表面も現像液に溶解しなくなる等の不具合を抑制できるからである。
【0125】
また、2つ以上の熱源が各々独立に加熱温度を制御可能な場合、例えば、基材に塗布された塗膜の場合に、塗膜の表面側の加熱温度と塗膜の基材側の加熱温度を独立に制御可能であることから、現像液に最初に接触される塗膜表面側の温度を、塗膜の基材側の温度よりも適宜高くし、塗膜表面側の露光部の硬化反応をより進行させることが可能である。
但し、塗膜表面の加熱が強すぎると、未露光部でも硬化反応が進行して未露光部の表面も現像液に溶解しなくなる場合があるので、塗膜表面の加熱は、未露光部の表面が溶解する範囲で適宜行われる。
【0126】
また、塗膜又は成形体の表面において、面内の加熱のばらつきが少ないように制御されていることが好ましい。面内のばらつきが生じると、残膜率に差が生じ、面内での寸法精度に影響がでるためである。
搬送型の装置において、塗膜の搬送方向をx軸、塗膜面内での搬送方向の直角方向をy軸とすると、塗膜面の熱履歴のx軸、y軸方向についてばらつきが少ないことが好ましい。搬送速度を一定とし、塗膜面内での搬送方向の直角方向(y軸)における装置内の温度のばらつきが、目標温度に対して±7℃以下、更に±5℃以下、より更に3℃以下であることが好ましい。また、塗膜面内での搬送方向の直角方向における気体の流速のばらつきが、±30%以下、更に±15%以下であることが好ましい。
また、搬送型の装置において、基材の垂直方向から加熱する場合においては、塗膜の搬送方向をx軸、加熱方向をz軸、塗膜面内での搬送方向の直角方向をy軸とすると、x軸、y軸方向についてばらつきが生じない範囲内で、z軸方向に対し、加熱強度(温度、熱媒体量、熱放射量)を別々に設定できるようにすることが好ましい。
ただし、熱の制御方向は、厳密に上記の3軸方向で行われていなくても、xy方向のばらつきが少なく、z軸方向に独立で制御可能であれば、基材に対して、斜め方向から行われていてもよく、基材面に対して平行方向に行われていてもよい。
【0127】
加熱温度としては、露光部と未露光部とで硬化反応の反応率が異なるようになる温度で行う。例えば、イミド化率の差によって、電磁波照射部の現像液に対する溶解速度が未照射部の溶解速度よりも小さくなることでパターンを形成するネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物を用いる場合には、露光部と未露光部とでイミド化率が異なるようになる温度で行う。光塩基発生剤とポリイミド前駆体を含むネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物の場合、電磁波の照射及び加熱により発生した塩基の作用により、塩基が存在する部位と、未照射で塩基が存在しない部位とでイミド化率等の硬化反応の反応率が異なるようになる温度で行う。
【0128】
加熱温度としては、ネガ型感光性樹脂組成物中の硬化性成分により適宜選択されればよいが、通常、30℃〜350℃程度である。特にポリイミドの場合は、通常、50℃〜350℃である。さらに、光酸発生剤又は光塩基発生剤を含む感光性ポリイミド樹脂組成物の場合は、80℃〜300℃、好ましくは120℃〜250℃であり、より好ましくは150℃〜200℃である。熱処理温度が30℃より低いと、硬化反応の効率が悪く、現実的なプロセス条件で露光部、未露光部の硬化反応率の差を生ずることが難しくなる。一方、熱処理温度が350℃を超えると、未露光部でも硬化反応が進行する恐れがあり、露光部と未露光部の溶解性の差を生じ難い恐れがある。
【0129】
加熱時間としては、膜厚やネガ型感光性樹脂組成物中の硬化性成分により適宜選択されればよいが、通常、30秒〜1時間、好ましくは1分〜30分である。
【0130】
(4)現像する工程
現像工程に用いられる現像液としては、前記電磁波照射部位の溶解性が変化する溶剤を現像液として用いれば、特に限定されず、塩基性水溶液、有機溶剤など、用いられる高分子前駆体に合わせて適宜選択することが可能である。
【0131】
塩基性水溶液としては、特に限定されないが、例えば、濃度が、0.01重量%〜10重量%、好ましくは、0.05重量%〜5重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液の他、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムなどの水溶液等が挙げられる。
溶質は、1種類でも2種類以上でも良く、全体の重量の50%以上、さらに好ましくは70%以上、水が含まれていれば有機溶媒等を含んでいても良い。
【0132】
また、有機溶剤としては、特に限定されないが、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクロン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、その他テトラヒドロフラン、クロロホルム、アセトニトリルなどを、単独であるいは2種類以上を組み合わせて添加してもよい。現像後は水または貧溶媒にて洗浄を行う。この場合においてもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えても良い。
【0133】
現像方法としては、スプレー法、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法等が挙げられる。
【0134】
(5)その他の工程
現像後は必要に応じて水または貧溶媒でリンスを行い、80〜100℃で乾燥しパターンを安定なものとしてよい。
また、パターンを、更に必要に応じ加熱して熱硬化を完結させることが好ましい。ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物のような、耐熱性が高い樹脂組成物の場合には、レリーフパターンを、耐熱性のあるものとするために180〜500℃、好ましくは200〜350℃の温度で数十分から数時間加熱しても良い。これによりパターン化された高耐熱性樹脂層が形成される。
【0135】
II.電子部品
本発明に係る電子部品は、前記本発明に係るレリーフパターンの製造方法を用いて形成されたレリーフパターンを有する電子部品である。
本発明に係る電子部品は、電子部品中のレジストを用いて形成されるレリーフパターンのいずれかに、前記本発明に係るレリーフパターンの製造方法を用いて形成されたレリーフパターンを含めば、他の構成は、従来公知と同様のものとすることができる。
【0136】
本発明に係る電子部品としては、例えば、MEMS(マイクロ電気機械装置)部品、マイクロ機械部品、マイクロ流体工学部品、μ−TAS(マイクロ全分析装置)部品、インクジェット・プリンター部品、マイクロ反応器部品、電気伝導性層、金属バンプ接続部、LIGA(リソグラフィー電鋳成形)部品、マイクロ射出成形及びマイクロ圧印加工のための鋳型及び押型、精密印刷用スクリーン又はステンシル、MEMS及び半導体パッケージ用部品、及び紫外線(UV)リトグラフにより処理することができるプリント配線基板等が挙げられる。
【0137】
特に、ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物を用いた場合、レリーフパターンはポリイミド樹脂膜となり、永久膜として耐熱性及び絶縁性を付与する構成成分として機能する。
【実施例】
【0138】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。尚、実施例中、部は特に特定しない限り重量部を表す。
また、以下に示す装置を用いて各測定、実験を行った。
(合成例1:ポリイミド前駆体の合成)
2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル 16.0g(50mmol)と2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル 10.6g(50mmol)とを500mlのセパラブルフラスコに投入し、200gの脱水されたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させ、窒素気流下、オイルバスによって液温が50℃になるように熱電対でモニターし加熱しながら撹拌した。それらが完全に溶解したことを確認した後、そこへ、少しずつ30分かけて3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸2無水物(BPDA) 29.1g(99mmol)を添加し、添加終了後、50℃で5時間撹拌した。その後室温まで冷却し、ポリイミド前駆体溶液1を得た。
下記式で表される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体溶液1を得た。
【0139】
【化14】

【0140】
(合成例2:ポリイミド前駆体2の合成)
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)20.0g(100mmol)を500mlのセパラブルフラスコに投入し、181gの脱水されたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させ窒素気流下、オイルバスによって液温が50℃になるように熱電対でモニターし加熱しながら撹拌した。それらが完全に溶解したことを確認した後、そこへ、少しずつ30分かけて3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸2無水物(BPDA)27.4g(93mmol)を添加し、添加終了後、50℃で5時間撹拌した。その後室温まで冷却し、下記式で表される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体溶液2を得た。
【0141】
【化15】

【0142】
(合成例3:光塩基発生剤1の合成)
100mLフラスコ中、炭酸カリウム2.00gをメタノール15mLに加えた。50mLフラスコ中、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウムブロミド2.67g(6.2mmol)、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド945mg(6.2mmol)をメタノール10mLに溶解し、よく撹拌した炭酸カリウム溶液にゆっくり滴下した。3時間撹拌した後、TLCにより反応の終了を確認したうえでろ過を行い炭酸カリウムを除き、減圧濃縮した。濃縮後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を50mL加え1時間撹拌した。反応終了後、ろ過によりトリフェニルホスフィンオキシドを除いた後、濃塩酸を滴下し反応液を酸性にした。沈殿物をろ過により集め、少量のクロロホルムにより洗浄することで2−ヒドロキシ−4−メトキシ桂皮酸を1.00g得た。続いて、100mL三口フラスコ中、2−ヒドロキシ−4−メトキシ桂皮酸500mg(3.0mmol)を脱水テトラヒドロキシフラン40mLに溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩0.586g(3.0mmol)を加えた。30分後、ピペリジン0.3ml(3.0mmol)を加えた。反応終了後、反応溶液を濃縮し、水に溶解した。ジエチルエーテルで抽出した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、1N塩酸、飽和食塩水で洗浄した。その後、シリカゲルカラムクマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール100/1〜10/1)により精製することにより、下記式で表される光塩基発生剤1を64mg得た。
【0143】
【化16】

【0144】
(合成例4:光塩基発生剤2の合成)
窒素雰囲気下、ディーン・スターク装置を装着した200mL三口フラスコ中、4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンズアルデヒド8.2g(39mmol)を脱水2−プロパノール100mLに溶解し、アルミニウムイソプロポキシド2.0g(10mmol,0.25eq.)を加え105℃で7時間加熱攪拌を行った。途中溶媒の蒸発減少に伴い、2−プロパノール40mLを4回追加した。0.2N塩酸150mLにて反応を停止した後、クロロホルムにより抽出を行い、溶媒を減圧留去することにより6−ニトロベラトリルアルコール7.2gを得た。
窒素雰囲気下、200mL三口フラスコ中、6−ニトロベラトリルアルコール5.3g(25mmol)を脱水ジメチルアセトアミド100mLに溶解しトリエチルアミン7.0mL(50mmol,2.0eq)を加えた。氷浴下で、p−ニトロフェニルクロロフォルメイト5.5g(27mmol,1.1eq)を加えた後、室温で16時間攪拌した。反応液を水2Lに注ぎ込み、生じた沈殿をろ過した後、シリカゲルカラムクマトグラフィーにより精製することにより、4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル−p−ニトロフェニルカルボネートを6.4g得た。
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコ中、4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル−p−ニトロフェニルカルボネート3.6g(9.5mmol)を脱水ジメチルアセトアミド50mLに溶解し、2,6−ジメチルピペリジン5 mL(37mmol,3.9eq)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール0.36g(0.3eq)を加え90℃で18時間加熱攪拌した。反応溶液を1%炭酸水素ナトリウム水溶液1Lに注ぎ込み、生じた沈殿をろ過した後、水にて洗浄することにより、下記式で表される光塩基発生剤2(N−{[(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2,6−ジメチルピペリジン)2.7gを得た。
【0145】
【化17】

【0146】
(製造例1:感光性ポリイミド樹脂組成物1の調製)
合成例1で得られたポリイミド前駆体溶液1の固形分100重量部に対し、合成例3で得られた光塩基発生剤1を15重量部添加し、製造例1の感光性ポリイミド樹脂組成物1を調製した。
【0147】
(製造例2:感光性ポリイミド樹脂組成物2の調製)
合成例1で得られたポリイミド前駆体溶液1の固形分100重量部に対し、合成例4で得られた光塩基発生剤2を15重量部添加し、製造例2の感光性ポリイミド樹脂組成物2を調製した。
【0148】
(製造例3:感光性ポリイミド樹脂組成物3の調製)
合成例2で得られたポリイミド前駆体溶液2の固形分100重量部に対し、合成例3で得られた光塩基発生剤1を15重量部添加し、製造例3の感光性ポリイミド樹脂組成物3を調製した。
【0149】
[現像性評価1]
感光性ポリイミド樹脂組成物1を、クロムめっきされたガラス(50mm×50mm)上に乾燥後膜厚20μmになるようにスピンコートし、100℃のホットプレート上で15分間乾燥させて、感光性ポリイミド樹脂組成物1の塗膜を作製した。この塗膜に対し、露光部の評価を行う塗膜については、手動露光機を用いて高圧水銀灯により、900mJ/cm露光を行った。未露光部の評価を行う塗膜については、露光を行わなかった。その後、下記に示す加熱方法で各塗膜を加熱し、現像性評価サンプルを得た。各現像性評価サンプルにおいては、露光部の評価を行う塗膜1枚と未露光部の評価を行う塗膜1枚の2枚をセットにして評価に用いた。
それぞれの塗膜について、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2.5重量%、イソプロパノール20重量%を混合した水溶液に浸漬し、塗膜の溶解速度を測定した。各溶解速度の測定結果を図1及び図2、並びに、表1に示す。
【0150】
(加熱方法)
現像性評価サンプル1:小型窒素雰囲気リフロー装置(RN-S ANUR820iN:松下電工(株)製)内、170℃、熱媒体:気体、加熱時間:5分、リフロー炉の内容積:約320L、リフロー炉の気体の供給量:約300L/分、リフロー炉に供給した気体:窒素(酸素濃度0.1ppm以下、純度99.999%、気体中に含まれる単位体積あたりの水分量0.0022g/m3以下)、塗膜の両面から風を吹き付けて加熱(塗膜表面側:平均風速7m/s、基板側:平均風速7m/s)
なお、リフロー装置は、搬送装置により装置内を搬送する間に加熱を行う装置であり、リフロー装置内は予備加熱ゾーンと本加熱ゾーンなど、複数のゾーンに分かれて加熱するため、170℃での加熱時間は以下のように概算した。
上記リフロー装置内は7つのゾーンに分かれ、装置内の温度プロファイルは、リフロー装置の上下共に7つのゾーンにおいて110℃/130℃/150℃/170℃/170℃/170℃/170℃で、1ゾーンの長さは200mmであった。従って、160mm/分で搬送したため、170℃で加熱されている時間は200mm×4÷160=5分、と算出した。
現像性評価サンプル2: ホットプレート(HP:三連ホットプレート TH−900:アズワン製)により、170℃、10分加熱
現像性評価サンプル3:循環式オーブン(定温乾燥機 DVS402:ヤマト科学(株)製)により、170℃、2.5分加熱(扉の開閉等により装置内の温度が低下している場合、オーブン内温度が設定温度まで上昇してから加熱開始とする。)
現像性評価サンプル4:循環式オーブン(定温乾燥機 DVS402:ヤマト科学(株)製)により、170℃、5分加熱(扉の開閉等により装置内の温度が低下している場合、オーブン内温度が設定温度まで上昇してから加熱開始とする。)
【0151】
現像性を評価する方法として、時間あたりの残膜量(溶解速度)から、各塗膜の露光部と未露光部の半減期を算出し、比較を行った。半減期は、露光後加熱後膜厚の半分となった時間をいう。個々のサンプルの膜厚の違いや溶解速度の変化に依存しないということから、塗膜の半減期を評価に用いた。塗膜の露光部は硬化反応が進行するため基本的に全て溶解することは無く、溶解しても塗膜の表面から表面近傍のわずかな部分のみなので、塗膜露光部の半減期は、図2の近似直線から求めた仮想の値である。
未露光部の塗膜の半減期に対する露光部の塗膜の半減期の比の値が大きいほど、残膜率が高くなると評価できる。
【0152】
塗膜の溶解速度に関しては以下の評価基準で評価し、表1に記載した。
○:未露光部が半減期500sec未満で溶解され、且つ、露光部の塗膜の半減期が未露光部の塗膜の半減期の30倍以上である
△:未露光部が半減期500sec未満で溶解され、且つ、露光部の塗膜の半減期が、未露光部の塗膜の半減期の10倍以上30倍未満である
×:上記のいずれにも該当しない
【0153】
【表1】

【0154】
表1の結果から、リフロー炉を用いて、系外から積極的かつ継続的に気体が供給され、且つ、当該塗膜又は成形体から発生する揮発性成分が系外に積極的に除去される雰囲気下で、固体以外を熱媒体として加熱した現像性評価サンプル1においては、露光部と未露光部の溶解速度の差が大きくなり、残膜率が高くなるという評価が得られた。
一方、ホットプレートを用いた現像性評価サンプル2では、露光部と未露光部の溶解速度の差がとても小さく、残膜率が低くなると評価された。
循環式オーブンを用いた現像性評価サンプル3及び4でも、露光部と未露光部の溶解速度の差が小さくなり、残膜率が低くなると評価された。
【0155】
[現像性評価2]
リフロー炉を用いて、より詳細な現像性評価を行った。
下記に示す加熱方法で各塗膜を加熱し、現像性評価サンプルを得た以外は、上記現像性評価1と同様にして、現像性の評価を行った。各溶解速度の測定結果を図3及び図4、並びに、表2に示す。
【0156】
(加熱方法)
現像性評価サンプル1:小型窒素雰囲気リフロー装置(RN-S ANUR820iN:松下電工(株)製)内、170℃、熱媒体:気体、加熱時間:5分、リフロー炉の内容積:約320L、リフロー炉の気体の供給量:約300L/分、リフロー炉に供給した気体:窒素(酸素濃度0.1ppm以下、純度99.999%、気体中に含まれる単位体積あたりの水分量0.0022g/m3以下)、塗膜の両面から風を吹き付けて加熱(塗膜表面側:平均風速7m/s、基板側:平均風速7m/s)
現像性評価サンプル5:塗膜の両面から風を吹き付けて加熱(塗膜表面側:平均風速4m/s、基板側:平均風速7m/s)以外は、現像性評価サンプル1と同じ加熱条件
現像性評価サンプル6:塗膜の片面から風を吹き付けて加熱(塗膜表面側:風なし、基板側:平均風速7m/s)以外は、現像性評価サンプル1と同じ加熱条件
現像性評価サンプル7:塗膜表面をポリイミドフィルム(ユーピレックスS 50S:宇部興産(株)製)で風が当たらないように覆い、これをポリイミドテープ(カプトンテープ:幅12.7mm 厚み0.069mm 日東電工(株)製)で基板に固定し、塗膜表面を密閉した以外は、現像性評価サンプル1と同じ加熱条件
【0157】
【表2】

【0158】
表2の結果から、リフロー炉を用いて、系外から積極的かつ継続的に気体が供給され、且つ、当該塗膜又は成形体から発生する揮発性成分が系外に積極的に除去される雰囲気下で、特に、基材側から塗膜に向かって風を吹き付けると、露光部と未露光部の溶解速度の差が大きくなり、残膜率が高くなるという評価が得られた。
一方、塗膜を密閉して、当該塗膜又は成形体から発生する揮発性成分が系外に積極的に除去されない雰囲気下で加熱を行うと、露光部の硬化反応が進行し難くなり、露光部と未露光部の溶解速度の差がとても小さくなり、残膜率が低くなると評価された。
【0159】
[現像性評価3]
樹脂の種類、光塩基発生剤の種類を変えたサンプルを作製し、さらに詳細な評価を行った。
(1)塗膜の作製
感光性ポリイミド樹脂組成物2を、クロムめっきされたガラス(50mm×50mm)上に乾燥後膜厚20μmになるようにスピンコートし、100℃のホットプレート上で15分間乾燥させた。この塗膜に対し、露光部の評価を行う塗膜については、手動露光機を用いて高圧水銀灯により、5000mJ/cm露光を行った。未露光部の評価を行う塗膜については、露光を行わなかった。
同様に、感光性ポリイミド樹脂組成物3を、クロムめっきされたガラス(50mm×50mm)上に乾燥後膜厚16μmになるようにスピンコートし、100℃のホットプレート上で15分間乾燥させた。この塗膜に対し、露光部の評価を行う塗膜については、手動露光機を用いて高圧水銀灯により、2000mJ/cm露光を行った。未露光部の評価を行う塗膜については、露光を行わなかった。
その後、下記に示す加熱方法で各塗膜を加熱し、現像性評価サンプル8〜13を得た。各現像性評価サンプルにおいては、露光部の評価を行う塗膜1枚と未露光部の評価を行う塗膜1枚の2枚をセットにして評価に用いた。
【0160】
(2)加熱方法
現像性評価サンプル8:感光性ポリイミド樹脂組成物2の塗膜を小型窒素雰囲気リフロー装置(RN-S ANUR820iN:松下電工(株)製)内、170℃、熱媒体:気体、加熱時間:5分、リフロー炉の内容積:約320L、リフロー炉の気体の供給量:約300L/分、リフロー炉に供給した気体:窒素(酸素濃度0.1ppm以下、純度99.999%、気体中に含まれる単位体積あたりの水分量0.0022g/m3以下)、塗膜の両面から風を吹き付けて加熱(塗膜表面側:平均風速7m/s、基板側:平均風速7m/s)
なお、リフロー装置は、搬送装置により装置内を搬送する間に加熱を行う装置であり、リフロー装置内は予備加熱ゾーンと本加熱ゾーンなど、複数のゾーンに分かれて加熱するため、170℃での加熱時間は以下のように概算した。
上記リフロー装置内は7つのゾーンに分かれ、装置内の温度プロファイルは、リフロー装置の上下共に7つのゾーンにおいて110℃/130℃/150℃/170℃/170℃/170℃/170℃で、1ゾーンの長さは200mmであった。従って、160mm/分で搬送したため、170℃で加熱されている時間は200mm×4÷160=5分、と算出した。
現像性評価サンプル9:感光性ポリイミド樹脂組成物2の塗膜をホットプレート(HP:三連ホットプレート TH−900:アズワン製)により、170℃、10分加熱
現像性評価サンプル10:感光性ポリイミド樹脂組成物2の塗膜を循環式オーブン(定温乾燥機 DVS402:ヤマト科学(株)製)により、170℃、2.5分加熱(扉の開閉等により装置内の温度が低下している場合、炉内温度が設定温度まで上昇してから加熱開始とする。)
現像性評価サンプル11:感光性ポリイミド樹脂組成物3の塗膜を小型窒素雰囲気リフロー装置(RN-S ANUR820iN:松下電工(株)製)内、155℃、熱媒体:気体、加熱時間:5分、リフロー炉の内容積:約320L、リフロー炉の気体の供給量:約300L/分、リフロー炉に供給した気体:窒素(酸素濃度0.1ppm以下、純度99.999%、気体中に含まれる単位体積あたりの水分量0.0022g/m3以下)、塗膜の両面から風を吹き付けて加熱(塗膜表面側:平均風速7m/s、基板側:平均風速7m/s)
なお、リフロー装置は、搬送装置により装置内を搬送する間に加熱を行う装置であり、リフロー装置内は予備加熱ゾーンと本加熱ゾーンなど、複数のゾーンに分かれて加熱するため、155℃での加熱時間は以下のように概算した。
上記リフロー装置内は7つのゾーンに分かれ、装置内の温度プロファイルは、リフロー装置の上下共に7つのゾーンにおいて100℃/120℃/140℃/155℃/155℃/155℃/155℃で、1ゾーンの長さは200mmであった。従って、160mm/分で搬送したため、155℃で加熱されている時間は200mm×4÷160=5分、と算出した。
現像性評価サンプル12:感光性ポリイミド樹脂組成物3の塗膜をホットプレート(HP:三連ホットプレート TH−900:アズワン製)により、155℃、10分加熱
現像性評価サンプル13:循環式オーブン(定温乾燥機 DVS402:ヤマト科学(株)製)により、155℃、5分加熱(扉の開閉等により装置内の温度が低下している場合、炉内温度が設定温度まで上昇してから加熱開始とする。)
【0161】
上記のようにして作製した現像性評価サンプル8〜13に加えて、現像性評価1で得た現像性評価サンプル1〜4と、現像性評価2で得た現像性評価サンプル5〜7を加えた計13種類の塗膜について、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2.5重量%、イソプロパノール20重量%を混合した水溶液に浸漬し、塗膜の未露光部の現像抜け時間(現像液に完全に溶解し膜厚が0となったときの時間)とその時間における露光部の残膜率(=未露光部現像抜け時間後の露光部の膜厚÷現像前の膜厚×100)を測定した。各測定結果を表3に示す。
【0162】
各サンプルについて以下の評価基準で評価し、表3に記載した。
○:露光部残膜率が90%以上
△:露光部残膜率が80%以上90%未満
×:露光部残膜率が80%未満
【0163】
【表3】

【0164】
表3の結果から、リフロー炉を用いて、系外から積極的かつ継続的に気体が供給され、且つ、当該塗膜又は成形体から発生する揮発性成分が系外に積極的に除去される雰囲気下で加熱を行った場合、樹脂や光塩基発生剤の種類によらず残膜率が高くなるという評価が得られた。
【0165】
(実施例1:レリーフパターンの製造)
感光性ポリイミド樹脂組成物1を、クロムめっきされたガラス(50mm×50mm)上に乾燥後膜厚20μmになるようにスピンコートし、100℃のホットプレート上で15分間乾燥させて、感光性ポリイミド樹脂組成物1の塗膜を作製した。この塗膜に対し、パターン状に露光を行った。その後、上記現像性評価サンプル1と同様にして、小型窒素雰囲気リフロー装置(RN-S ANUR820iN:松下電工(株)製)内、170℃、熱媒体:気体、加熱時間:5分、リフロー炉の内容積:約320L、リフロー炉の気体の供給量:約300L/分、リフロー炉に供給した気体:窒素(酸素濃度0.1ppm以下、純度99.999%、気体中に含まれる単位体積あたりの水分量0.0022g/m3以下)を用いて、塗膜の両面から風を吹き付けて加熱(塗膜表面側:平均風速7m/s、基板側:平均風速7m/s)した。
塗膜について、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2.5重量%、イソプロパノール20重量%を混合した水溶液に2400秒間浸漬して現像し、純水にて60秒間リンス処理を行い、その後350℃で60分間加熱することにより後硬化を行い、ラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。その結果、パターンの残膜率は98%であった。膜厚等と残膜率と合わせて、表4に示す。また、得られたパターンのSEM写真を図5に示す。膜減りがなく、エッジ・コーナー形状も良好なパターンが得られることがわかった。
【0166】
(実施例2:レリーフパターンの製造)
加熱方法を、上記現像性評価サンプル1の方法から、上記現像性評価サンプル6の方法に変更した以外は、実施例1と同様にして、ラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。膜厚、現像時間、残膜率は表4に示す。
【0167】
(比較例1:比較レリーフパターンの製造)
加熱方法を、上記現像性評価サンプル1の方法から、ホットプレートを用いた上記現像性評価サンプル2の方法に変更した以外は、実施例1と同様にして、ラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。膜厚、現像時間、残膜率は表4に示す。また、得られたパターンのSEM写真を図6に示す。実施例1に比べてエッジ・コーナー形状が丸みを帯びたパターンが得られた。
【0168】
(比較例2:比較レリーフパターンの製造)
加熱方法を、上記現像性評価サンプル1の方法から、循環式オーブンを用いた上記現像性評価サンプル3の方法に変更した以外は、実施例1と同様にして、ラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。膜厚、現像時間、残膜率は表4に示す。また、得られたパターンのSEM写真を図7に示す。膜減りが多いために、線が細くなったパターンが得られた。
【0169】
(比較例3:比較レリーフパターンの製造)
加熱方法を、上記現像性評価サンプル1の方法から、塗膜を密閉して加熱した上記現像性評価サンプル7の方法に変更した以外は、実施例1と同様にして、ラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。膜厚、現像時間、残膜率は表4に示す。
【0170】
【表4】

【0171】
表4の結果から、リフロー炉を用いて、系外から積極的かつ継続的に気体が供給され、且つ、当該塗膜又は成形体から発生する揮発性成分が系外に積極的に除去される雰囲気下で、固体以外を熱媒体として加熱した実施例1及び2では、残膜率が高く、良好な形状のパターンが得られることが明らかにされた。
一方、ホットプレートを用いた比較例1では、残膜率が劣り、パターンのエッジ・コーナー形状が悪くなった。
また、循環式オーブンを用いた比較例2では、残膜率が更に低くなり、図7に示されるように、膜減りの影響でパターンの線が細くなってしまった。
塗膜を密閉して加熱された比較例3では、残膜率が更に低くなり、パターンの線が顕著に細くなってしまった。
また、 樹脂の種類、光塩基発生剤の種類を変えたネガ型感光性樹脂組成物の場合でも、表4の結果と同様に、リフロー炉を用いた場合は、残膜率が高く良好な形状のパターンが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネガ型感光性樹脂組成物を用いて塗膜又は成形体を形成し、
当該塗膜又は成形体に所定パターン状に電磁波を照射後、未露光部の塗膜を除去してパターンを形成する現像工程の前に、当該塗膜又は成形体を加熱する工程を有するレリーフパターンの製造方法であって、
前記加熱する工程が、系外から積極的かつ継続的に気体が供給され、且つ、当該塗膜又は成形体から発生する揮発性成分が系外に積極的に除去される雰囲気下で、熱媒体を介するか、電磁波の輻射により、当該塗膜又は成形体を加熱する工程であることを特徴とする、レリーフパターンの製造方法。
【請求項2】
前記加熱する工程が、系外から継続的に供給される気体が15分間に加熱系内の内容積に対して体積比1以上となるように、雰囲気を制御して行われることを特徴とする、請求項1に記載のレリーフパターンの製造方法。
【請求項3】
前記加熱する工程が、当該塗膜又は成形体に対して少なくとも1つの方向から、気体を吹き付けながら行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載のレリーフパターンの製造方法。
【請求項4】
前記加熱する工程が、当該塗膜又は成形体に対して少なくとも1つの方向から、上記の系外から積極的かつ継続的に供給された気体を吹き付けながら行われることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のレリーフパターンの製造方法。
【請求項5】
前記加熱する工程が、当該塗膜又は成形体に対して少なくとも1つの方向から、流速が0.1m/sec以上の気体を吹き付けながら行われることを特徴とする、請求項3又は4に記載のレリーフパターンの製造方法。
【請求項6】
上記熱媒体が、系外から継続的に供給される気体である、請求項1乃至5のいずれかに記載のレリーフパターンの製造方法。
【請求項7】
前記加熱する工程において、系外から継続的に供給される気体中に含まれる単位体積あたりの水分量が10g/m以下であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載のレリーフパターンの製造方法。
【請求項8】
前記ネガ型感光性樹脂組成物が、ポリイミド前駆体を含むネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載のレリーフパターンの製造方法。
【請求項9】
前記ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物が、ポリイミド前駆体と、光塩基発生剤又は光酸発生剤とを含むネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物であることを特徴とする、請求項8に記載のレリーフパターンの製造方法。
【請求項10】
前記ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物が、ポリイミド前駆体と光塩基発生剤とを含むネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物であることを特徴とする、請求項8又は9に記載のレリーフパターンの製造方法。
【請求項11】
前記光塩基発生剤が、塩基として脂肪族アミンもしくはアミジンを発生することを特徴とする、請求項9又は10に記載のレリーフパターンの製造方法。
【請求項12】
前記ポリイミド前駆体が、少なくとも1つはカルボキシル基を有することを特徴とする、請求項8乃至10のいずれかに記載のレリーフパターンの製造方法。
【請求項13】
前記請求項1乃至12のいずれかに記載のレリーフパターンの製造方法を用いて形成されたレリーフパターンを有する電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−227485(P2011−227485A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70715(P2011−70715)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】