説明

レリーフ印刷版の製造方法

【課題】感光性素子から床部上のレリーフ面を有する印刷版の製造方法を提供すること。
【解決手段】この方法は、化学線源のエネルギー密度に対する素子の床部の厚さまたは1つまたは複数のレリーフ画像特性などの硬化応答性を測定することによってステップ露光テストから感光性素子の重合率曲線を作成するステップを含んでいる。この方法は、化学線源に使用されるランプの光強度の変化を考慮に入れたエネルギー密度に基づいて感光性素子を化学線源に露光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レリーフ表面を有する印刷版を製造する方法に関し、特に、光重合可能な印刷素子から印刷版を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷版、プレートオンスリーブ、および印刷胴などのフレキソ印刷版は、段ボール箱からカートンボックス、およびプラスチックフィルムの連続ウエブに及ぶ梱包材の印刷用に広く使用されている。フレキソ印刷版は、インキが隆起画像の表面から搬送され基板に転写されるレリーフ印刷において用いられる。フレキソ印刷版は、特許文献1、および2に記載されている組成物のような光重合可能な組成物から作製することができる。光重合可能な組成物は一般に弾性結合剤、少なくとも1つの単量体、および光開始剤を含んでいる。感光性素子は一般に、支持体とカバーシートまたは多層カバー素子との間に挿入された光重合可能な組成物の固体層を有している。フレキソ印刷版は化学線に曝されて架橋結合または硬化する能力があることにその特徴がある。典型的には、印刷版はその裏側を通して特定量の化学線に均一に露光、すなわちバックフラッシュされて(backflashed)床部が形成される。次いで、版はバックフラッシュ露光用に使用されたものと同じ化学線で前側を通して画像様露光される。画像様露光はネガフィルム、または透明フィルム(例えばハロゲン化銀フィルム)などの画像付帯版下またはテンプレートを通して、または光重合可能な層上に以前に形成された放射線不透過領域を有するインサイチュ(in−situ)マスクを通して行われる。化学線露光は紫外線(UV)またはブラックライトで行うことができる。化学線は透明領域を通って感光性素子に入り、透過原稿またはインサイチュマスクのブラックまたは不透過領域に入ることが阻止される。化学線に露光された光重合可能層の領域は架橋結合および硬化し、かつ/または現像中に使用される溶剤に対して不溶性になる。露光中に透過原稿またはインサイチュマスクの不透過領域の下にあった光重合可能層の非露光部分は硬化されず、かつ/または可溶性状態に留まる。非露光領域は洗浄液または熱で処理されて、印刷に適するレリーフ画像が残される。洗浄液で処理される場合は、版は乾燥される。印刷版は完全な重合を完了するために(すなわち後露光)、かつ表面の厚みを除去するために(すなわち仕上げ露光)、さらに露光される。全ての所望の処理ステップの後、版は次いで胴に取り付けられ、印刷用に使用される。
【0003】
3つの露光ステップ、すなわち、バックフラッシュ、画像様露光、および後露光は、例えばランプなどの多様な化学線源からの化学線を使用して達成可能である。ほとんどの場合は、印刷版は所定の時間長、すなわち露光期間に基づいて露光ユニット内のランプ群に露光される。露光時間はランプの出力、ランプからの距離、所望のレリーフ深さ、および版の厚さに応じて数秒から数分まで変化する。所定の露光時間は、印刷版を作製するために通常使用されるものと同一の、または類似の条件で印刷版の代表的なサンプルでのテストから導き出すことができる。テストにはサンプルを一連の異なる時間だけ露光し、サンプルを処理して重合されない材料を除去し、結果として生じたサンプルを分析するステップが含まれる。テストはバックフラッシュテストまたは主露光テストと呼ばれることがある。バックフラッシュテストでは、サンプルは支持体を通して露光され、結果として生じたサンプルの床部の厚さが測定される。床部の所望の厚さをもたらす時間が所定の後露光時間である。主露光テストでは、サンプルはテストターゲット画像(すなわちフォトツールまたはインサイチュマスク層)を通して露光され、結果として生じたサンプルはレリーフ画像の画質について分析される。例えばレリーフ構造は細線または強調されたドット領域や、反転画像の適切な深さを保持している。所望のレリーフ画像をもたらす時間が所定の主露光時間である。
【0004】
しかし、安定した結果を得るために所定の露光時間(1つまたは複数)を頻繁に再較正する必要があることがある。露光時間はランプの光強度、放射源から放射される放射線のスペクトルエネルギー分布、感光性素子からの距離、所望の解像度、および素子内の光重合可能な組成物の性質と量によって影響され得る。ランプの光強度は使用に伴って低減し、版を作製するために用いられた所定の露光時間は後続の印刷版を硬化または架橋結合させるには不適切になる。1つまたは複数のランプを交換したとしても、ランプの光強度はランプの寿命の最初の20時間で低下するので、ランプのこのような初期老化全体にわたる再較正が必要である。ランプの交換に影響する要因はフード内のランプの物理的位置、経過した動作時間、および隣接する全てのランプの経過動作時間である。頻繁な再較正は、相当な版製造時間および労力、ならびに印刷版を消費することがある不要なステップである。
【0005】
露光ユニットは、場合によっては積分器と呼ばれる放射積分システムを有することが知られており、これは印刷版が置かれる台を照射するランプの光強度を評価する。積分器を有する露光ユニットの例はCYREL(商標登録)4260ECLFである。積分システムはランプによって放射される放射線の光強度に従って露光時間を補償する。このシステムは入射する放射線を検知する光電池と、光電池からの信号を積分する回路とを含んでいてもよい。これらの露光ユニット内の光電池は典型的には、放射された放射線の波長の広域スペクトルについてランプの光強度を測定する。この回路は、特定の露光値に対応する所定の回路出力信号が達成されるまで光電池信号を積分する。このような露光制御システムは、理論上は設計された露光値をもたらすはずである。しかし実際には、露光は多くの可変要素の関数であるため、いずれかのこのようなシステムによって実際に生成される露光値は設計された値とは異なる可能性がある。露光値のこのような変動は、典型的には光学、電子などのシステムの既定の許容差内の変動の累積効果から生ずることが多い。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,323,637号明細書
【特許文献2】米国特許第4,427,759号明細書
【特許文献3】米国特許第4,922,078号明細書
【特許文献4】米国特許第4,956,252号明細書
【特許文献5】米国特許第5,707,773号明細書
【特許文献6】米国特許第5,015,556号明細書
【特許文献7】米国特許第4,323,636号明細書
【特許文献8】米国特許第4,753,865号明細書
【特許文献9】米国特許第4,726,877号明細書
【特許文献10】米国特許第4,894,315号明細書
【特許文献11】米国特許第5,798,019号明細書
【特許文献12】米国特許第4,460,675号明細書
【特許文献13】米国特許第5,262,275号明細書
【特許文献14】米国特許第5,719,009号明細書
【特許文献15】欧州特許第0741330A1号明細書
【特許文献16】米国特許第5,506,086号明細書
【特許文献17】米国特許第5,705,310号明細書
【特許文献18】米国特許第5,607,814号明細書
【特許文献19】米国特許第5,766,819号明細書
【特許文献20】米国特許第5,840,463号明細書
【特許文献21】欧州特許第0891877A号明細書
【特許文献22】米国特許第5,760,880号明細書
【特許文献23】米国特許第5,654,125号明細書
【特許文献24】独国特許出願公開第3828551号明細書
【特許文献25】米国特許第3,796,602号明細書
【特許文献26】米国特許第5,015,556号明細書
【特許文献27】米国特許第5,175,072号明細書
【特許文献28】米国特許第5,215,859号明細書
【特許文献29】国際公開第98/13730号パンフレット
【特許文献30】米国特許第5,279,697号明細書
【特許文献31】米国特許第6,797,454号明細書
【特許文献32】欧州特許出願公開第0017927号明細書
【特許文献33】米国特許第4,806,506号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、露光ユニット内のランプ(1つまたは複数)の有効寿命にわたって感光性素子が一貫して適切に露光されることを保証することが望ましい。さらに、感光性素子の適切な露光期間を決定するためにランプの再較正に要する時間、労力および材料の消費を避けることが望ましい。さらに、印刷版の満足なレリーフ構造の結果を達成するために必要な感光性素子の適切な露光を保証することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、所望の硬化応答性、Rcを有する印刷版の製造方法であって、
a)弾性結合剤と、単量体と、化学線により活性化可能な吸収スペクトルを有する光開始剤とを含む光重合可能な組成物層を有する感光性素子を準備するステップと、
b)発光スペクトルとピーク発光とを有する化学線源を準備するステップと、
c)化学線源のピーク発光に整合した吸収ピークを有するセンサを使用して放射源の光強度を測定するステップと、
d)
1)時間T1およびT2において、感光性素子を化学線源に露光し、
2)時間T1およびT2にそれぞれ対応する硬化応答性Rc1、Rc2を有する重合された部分を形成するように処理し、
3)硬化応答性Rc1、Rc2を測定することを含む、
段階的露光テストを行うステップと、
e)感光性素子の硬化応答性と、ステップc)の光強度と時間T1およびT2との積によって判定されるエネルギー密度とを対比する重合率曲線を作成するステップと、
f)弾性結合剤と、単量体と、光開始剤とを含む組成物層を有する第2の感光性素子を準備するステップと、
g)ステップe)で作成された重合率曲線から判定されたエネルギー密度に基づいて、第2の素子を化学線源に露光して、所望の硬化応答性Rcを有する重合された部分を形成するステップと、
を含む方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は印刷版、特に光開始剤を含む光重合可能な組成物の層を有する感光性素子からフレキソレリーフ印刷版を製造する方法に関する。この方法は、素子の床部の厚さ、またはレリーフ画像特性(1つまたは複数)などの硬化応答性を測定することによって、ステップ露光テストから化学線源のエネルギー密度(または露光)に対する感光性素子の重合率曲線を作成するステップを含んでいる。エネルギー密度は、ステップ露光テストで用いられる露光時間を考慮に入れて、化学線源の放射感度に整合された吸収感度を有するセンサを使用して、化学線源の光強度を測定することによって判定される。感光性素子は、所望の硬化応答性をもたらす重合率曲線からエネルギー密度に基づいて化学線源に露光される。
【0010】
本発明は、フレキソ印刷工程における印刷版の結果として得られるレリーフ画像の画質を制御し、向上させる簡単で経済的な方法を提供する。この方法は、化学線源用に使用されるランプの光強度の変化を考慮に入れたエネルギー密度に基づいて、感光性素子を化学線源に露光する。この方法は、露光ユニット内のランプ(1つまたは複数)の有効寿命にわたって一貫して感光性素子の適切な露光を保証する。この方法によってさらに、所定の期間に基づく感光性素子の露光が回避され、ひいては、ランプの光強度は使用に伴って低減するので、適当な露光期間を決定するためのランプ(1つまたは複数)の再較正が回避される。
【0011】
「化学線」は、感光性組成物の物理的または化学的特性を変化させるために1つまたは複数の反応を開始できる放射を意味する。一実施形態では、化学線は紫外光領域内の波長を有する放射を意味する。別の実施形態では、化学線は可視光領域内の波長を有する放射を意味する。別の実施形態では、化学線は紫外光および可視光領域内の波長を有する放射を意味する。
【0012】
「吸収ピーク」または「ピーク活性化放射」は、材料に光波が照射されるたびに材料が光パワーを最も吸収する波長または周波数を意味する。「吸収スペクトル」は、吸収媒体を介した連続放射源からの放射エネルギーの通過により生ずる吸収線および吸収帯の配列を意味する。
【0013】
「発光ピーク」または「ピーク発光」は、放射源が光パワーを最も放出する波長または周波数を意味する。
【0014】
「発光スペクトル」は、様々な形態のエネルギーのいずれかによって励起されたいずれかの発光源からの放射線が分散されると生成される電磁スペクトルを意味する。
【0015】
本発明の工程のステップa)は感光性素子を準備するステップである。一実施形態では、感光性素子はレリーフ印刷版として使用するのに適する光重合可能な素子である。別の実施形態では、レリーフ印刷版はフレキソ印刷工程で使用するのに適している。別途指摘されない限り、「感光性素子または版」という用語は、フラットシート、プレートオンスリーブ、継ぎ目付き連続版および継ぎ目なし連続版を含むがそれに限定されない、フレキソ印刷に適するように作製可能などの版の素子をも包含する。感光性素子は、弾性結合剤、単量体、および光開始剤を含む光重合可能な組成物の層を含んでいる。光開始剤は化学線により活性化可能であり、放射に対する吸収スペクトルに応じた感度を有している。光開始剤の吸収スペクトルは、化学線の発光スペクトル内の波長で吸収ピークを含んでいる。
【0016】
本発明の方法のステップb)は、ピーク発光を含む発光スペクトルを有する化学線源を提供する。化学線源は異なる波長で1つ以上のピーク発光を有していてもよい。最も関心がある放射源のピーク発光は、光開始剤の活性化に関連するピーク波長である。放射源の発光スペクトルは光開始剤の吸収スペクトルと重複する。本発明の方法では、どのタイプのどの放射源からの化学線でも使用できる。典型的には、化学線源は露光ユニット内に備えられる。露光ユニットは、本件特許出願人、アンダーソン&ブリーランド(Anderson & Vreeland)、およびフリントグループ(Flint Group)を含む様々なメーカーまたは発売元から市販されている。放射は複数のランプから、または点光源から発して、感光材料が露光ユニット内に置かれると感光材料全体を均一またはほぼ均一に露光することができる。放射線は平行光または発散ビームの形態で発することができる。ほとんどの感光性素子は310から400nmの領域で吸収し、この領域で発光する放射源は周知である。印刷版として使用される最も一般的な感光性素子の好ましい光感度はスペクトルの紫外光および深紫外光領域にあり、それはこれらが室内光の安定性をもたらすからである。化学線の適切な可視光源および紫外光源の例には、炭素アーク、水銀蒸気アーク、アルゴングローランプ、蛍光ランプおよび蛍光管、キセノンフラッシュランプ、電子フラッシュユニット、電子ビームユニット、および写真用フラッドランプが含まれる。一実施形態では、適切な紫外光放射源は複数の水銀蒸気ランプ群である。業界基準の放射源の例には、シルバニア(Sylvania)350ブラックライト蛍光ランプ、およびフィリップス(Philips)UV−A“TL”シリーズの低電圧水銀蒸気蛍光ランプが含まれる。放射源はさらに、例えば中電圧水銀アークランプ、および(特定の波長領域で放射されるエネルギー強度を高めるために)添加剤でドーピングされた水銀アーク金属ハロゲン化物ランプなどの高光強度ランプを含むことができる。放射源は感光性素子の表面から約4から180cmの距離に設置することができ、典型的には5から160cmの距離である。一実施形態では、化学線源は310から400nmの範囲の発光スペクトルを有し、約370nmにピーク発光がある。別の実施形態では、化学線源は310から400nmの範囲の発光スペクトルを有し、約365nmにピーク発光がある。更に別の実施形態では、化学線源は310から400nmの範囲の発光スペクトルを有し、約360nmにピーク発光がある。更に別の実施形態では、化学線源は310から400nmの範囲の発光スペクトルを有し、約355nmにピーク発光がある。一実施形態では、化学線源は200から310nmの範囲の発光スペクトルを有し、約255nmにピーク発光がある。
【0017】
特定の化学線源の適合性は少なくとも光開始剤の感光性によって、また必要に応じて感光性素子から印刷版を作製する際に使用される少なくとも1つの単量体の感光性によって左右される。化学線源は、感光システム、すなわち光開始剤/単量体がその感度を示す波長領域で有効な放射量を供給すべき発光スペクトルを有している。したがって、化学線源の発光スペクトルは光開始剤の吸収スペクトルと重複する。例えば、多くの感光システムは紫外光領域で最大感度を示し、放射源は約310と400nmとの間の波長領域を有する有効放射量を供給するであろう。一実施形態では、化学線源の発光スペクトルは光開始剤の吸収スペクトルと完全に重複する。別の実施形態では、化学線源の発光スペクトルは光開始剤の吸収スペクトルと部分的に重複する。別の実施形態では、化学線源の発光スペクトルは光開始剤の吸収スペクトルと部分的に重複するが、少なくとも光開始剤のピーク吸収で重複する。
【0018】
本発明の方法のステップc)は、化学線源のピーク発光に適合された吸収ピークを有するセンサを使用して化学線源の光強度を測定するステップである。化学線源は、露光ユニット内の版台上の面などでの露光のために感光性素子が置かれる位置で測定される光強度を有している。放射源の光強度は、化学線源のピーク発光に適合された吸収ピークを有するセンサを使用して測定される。センサの吸収ピークはピーク感度、またはピーク感度波長とも呼ばれる。この文脈での「適合される」という用語は、センサのピーク感度が化学線源のピーク発光の25nmの波長内にあることを意味している。一実施形態では、センサは化学線源の最大発光波長と同じ波長であるピーク感度波長、すなわちピーク発光で光強度を測定する。別の実施形態では、センサは化学線源の最大発光波長から±20ナノメートル以内(ピークツウピーク)にあるピーク感度波長で光強度を測定する。別の実施形態では、センサは化学線源の最大発光波長から±10ナノメートル以内(ピークツウピーク)にあるピーク感度波長で光強度を測定する。別の実施形態では、センサは化学線源の最大発光波長から±5ナノメートル(ピークツゥピーク)以内にある最大吸収のピーク感度波長で光強度を測定する。フォトダイオードと呼ばれることもある紫外光放射検出用に適するセンサは、ハママツ(Hamamatsu)(ニュージャージー)、ロイテルナー レーザテクニック有限会社(Roitherner Laset Technik GmbH)(オーストリア)、およびエレクトロ オプティカル コンポーネンツ(Electro Optical Componennts)(カリフォルニア)から入手できる。適当なセンサは、370nmにピーク感度があるハママツ(Hamamatsu)(ニュージャージー州ブリッジウオーター)のGaAsPフォトダイオード モデルナンバーG5842である。センサは、センサから信号を受信し、放射源の光強度を表示する読み取りデバイスに接続される。適宜の読み取りデバイスはソーラーテック社(SolarTeck Inc.)(ハリソン タウンシップ、ミシガン)性の携帯デジタル放射計モデル5.0である。放射源の光強度は台面の1つまたは複数の位置で測定可能であり、複数の測定値が平均される。光強度はセンサを(感光性素子が置かれる)台上に配置し、化学線源を起動して露光台を照射することによって測定され、放射源の光強度はセンサに接続された放射計から読み取られる。光強度の測定(およびその後の露光ステップ)は周囲条件で行うことができる。
【0019】
選択肢として、光強度の測定前に化学線源が加熱されてもよい。化学線源の加熱は工程の一貫性を向上させる。一実施形態では、放射源は、光強度の測定(およびステップ露光テストの実施)前に、例えば5分から30分の期間だけ露光ユニット内の放射源を付勢することによって加熱される。化学線源は約20°から約35℃の温度に加熱可能である。別の実施形態では、化学線源は、光強度を測定する前に、例えばウーリッヒ(Ulrich)等の特許文献3に記載されているように、ヒータで能動的に加熱される。化学線源の光強度は放射照度(irradiance)と呼ばれることもあり、一般にミリジュール/cm−秒またはミリワット/cmなどの単位面積当たりの電力で表わされる。
【0020】
本発明の方法のステップd)はステップ露光テストを実施する。ステップ露光テストは、印刷版として使用される感光性素子の代表的なサンプルで実施される。感光性素子の代表的なサンプルは限定されず、印刷版として使用可能なフルサイズの感光性素子、または一連のステップ露光を実施するのに十分なサイズの感光性素子の一部であってもよい。一連のステップ露光での各々の露光時間で別個の代表的なサンプルを使用することも可能である。ステップ露光テストは、サンプルが少なくとも2つ以上の期間にわたって同様に成功裏に化学線源に露光されるテストである。一実施形態では、ステップ露光テストに2つの期間だけが用いられる。別の実施形態では、4から8つの期間が用いられる。別の実施形態では、6から10の期間が用いられる。ステップ露光テストはブランケット露光でもよく、画像またはテストターゲットを通した画像様露光でもよい。テストターゲットは典型的には、印刷能力および印刷版の画質を評価するため、1から99%のハーフトーンドット、およびポジラインおよびネガラインなどの予測される最大範囲の印刷画像特性を表す反復画像を含んでいる。フレキソ印刷版として使用される感光性素子の場合は、テストターゲットは、露光および処理が行われると印刷版内の反復レリーフ画像を形成する反復画像を含んでいる。テストターゲットはフォトツールであってもよく、または密着するインサイチュマスクとして(支持体の反対側の)サンプル面上に形成されてもよい。各期間の時間の長さは一般に同じであり、例えば30秒増分されると、サンプルは少なくとも0秒、30秒、および60秒間露光される結果になる。ステップ露光テストに用いられる露光時間の範囲は、感光性素子にとって有効な、あり得る適切な露光条件の範囲を表すものであるべきである。ステップ露光テストでは、サンプルはほぼ同じ部分にマークが付される。サンプルは露光ユニットの台上に適当な向きに置かれる。放射線がサンプルを露光することを防止するために、ボール紙などの不透明材料がサンプルの近傍に置かれ、前記部分の1つを覆う。そこでサンプルが化学線源に露光される。時間がそれぞれ増分されたあと、不透明材料がサンプルを横切ってマークが付された各部分へと移動されることでより多くのサンプルを連続的に遮蔽し、各部分の露光時間を制限する。一連の露光後、(1)光重合可能層が適宜の現像液に接触して未重合領域を洗浄する「湿式」現像、および(2)感光性素子が現像温度まで加熱されて、光重合可能層の未重合領域が融解、または軟化、または流動化され、吸収剤との接触により除去される「乾式」現像を利用してサンプルを処理することによって未重合材料が除去される。典型的には、サンプルは感光性素子が最終的には未重合材料を除去するように同様に処理される。処理されたサンプルは、少なくとも2つの各期間で感光性素子の硬化応答性を示す重合部分、または硬化部分を有する。少なくとも2つの各期間の硬化応答性が測定される。
【0021】
一実施形態では、ステップ露光テストは、裏側を通して、すなわち支持体を通してサンプルを異なる期間でブランケット露光して、サンプルを掘り下げて重合または硬化させることによって実施される。この実施形態では、硬化応答性は硬化の深さ、または各期間で生成される床部の高さであり、次いでこれが測定される。感光性素子から印刷版を作製する工程は通常は、バック露光またはバックフラッシュ露光を含んでいる。これは支持体を通した化学線へのブランケット露光である。光重合可能層の支持体側に重合された材料の層または床部を作製するため、および光重合可能層を感光性にするためにブランケット露光が使用される。床部は光重合可能層と支持体との粘着性を高め、強調されたドット解像度を補助し、版レリーフの深さをも達成する。感光性素子からフレキソ印刷版を作製する際には、他の結像ステップの前、後または途中でバックフラッシュ露光を実施することができる。
【0022】
別の実施形態では、サンプルを前面、すなわち支持体とは反対側の光重合可能層の側の近傍で異なる期間でマスクを通して画像様露光し、サンプルを像に従って重合または硬化させることによってステップ露光テストが実施される。この実施形態では、サンプルは既に床部を形成する所望の深さまでブランケット露光されていてもよい。この実施形態では、硬化応答性は、画質を評価するため、微細強調ドットまたは極細線の保持度などの1つまたは複数のレリーフ画像特性である。感光性素子の硬化応答性に対してレリーフ画像の画質を評価するために他の重要な特性を識別することは当業者の技能範囲内にある。感光性素子から印刷版を作製する工程には、フォトツールまたはインサイチュマスクであってよいマスクを通して感光性素子を化学線に全体(または主)露光することが含まれる。マスクは不透明領域と、画像を形成する「透明」領域とを含んでいる。マスクの不透明領域は下に位置する光重合可能材料が放射線に露光されることを防止し、したがって暗領域によって覆われた光重合可能層の領域が重合しない。マスクの「透明」部分は光重合可能層を化学線に露光し、重合または架橋結合する。
【0023】
ステップe)で、測定された硬化応答性とエネルギー密度とを対比する感光性素子の重合率曲線が作成される。エネルギー密度はステップc)で測定された化学線源の光強度と、ステップd)1)のステップ露光テストで用いられる時間との積によって判定される。床部の高さ、または強調ドットの保持度(画像様露光の画像特性)などの各時間で測定された硬化応答性は対応するエネルギー密度と対比してプロットされ、座標間の最良の適合線が引かれる。重合率曲線は代表的なサンプル(および印刷版として使用される感光性素子)に関連する光重合可能な特定の組成物に固有のものである。重合率曲線は手動的に、または容易に入手できるコンピュータソフトウエアを使用して作成可能である。一般に、重合率曲線は線形であるが、それに限定されない。エネルギー密度は露光と呼ばれることもあり、ミリジュール/cmまたはミリワット/秒−cmで表わされる。
【0024】
本発明の方法のステップf)は、代表的なサンプルと少なくともほぼ同一の第2の感光性素子を備える。ステップ露光テストに使用される代表的なサンプルと同じ感光性素子から印刷版が作製される。印刷版用の感光性素子、すなわち第2の感光性素子は、双方とも少なくとも同じまたはほぼ同じ光重合可能組成物を有している場合は代表的なサンプルと同一である。第2の感光性素子が代表的なサンプルと少なくも同一の弾性結合剤、単量体および光開始剤を光重合可能な組成物に含んでいる場合は、第2の感光性素子は代表的なサンプルとほぼ同一であり、光重合可能な組成物の全ての成分が代表的なサンプルと同一である場合は、第2の感光性素子は代表的なサンプルと同一である。一実施形態では、光重合可能な組成物が同一であることに加えて、印刷版用に使用される感光性素子の構造も代表的なサンプルの構造と同一である。感光性素子の構造とは、ある特定の付加的な任意選択層の有無、および光重合可能層に対する付加層の位置のことを言う。別の実施形態では、光重合可能な組成物が同一であること加えて、印刷版用に使用される感光性素子の光重合可能層の厚さが、代表的なサンプルの光重合可能層の厚さと同じであるか、ほぼ同じである。印刷版は、少なくとも1つの露光ステップ、すなわちバックフラッシュおよび画像様露光用に使用される化学線への露光が時間ではなくエネルギー密度に基づくものであることを除いては、第2の感光性素子から従来の方法で作製される。ステップe)で作成された重合率曲線から、結果として生ずる印刷版の床部の厚さまたは(レリーフ)画像特性などの所望の硬化応答性、Rcに基づいて第2の感光性素子を露光するために必要なエネルギー密度が選択される。ステップg)で、エネルギー密度に基づく感光性素子の化学線源への露光が、所望の硬化応答性、Rcを有する重合部分を形成する。エネルギー密度に基づく露光によって、感光性素子を硬化させ、次いで感光性素子を作製するために一定量の化学線が使用され、化学線源の使用に伴って光強度が低減することを補償することで、感光性素子の適切な露光が保証される。化学線源による露光の時間は、露光ユニットの長期の使用期間にわたって一定に保たれることはないであろうが、エネルギー密度は一定に、またはほぼ一定に保たれる。ステップc)で使用されたものと少なくとも同じセンサが感光性素子の近傍に設置され、読み取りデバイスに接続されて、露光中に感光性素子に当たるエネルギーの密度が判定される。
【0025】
本発明の方法のステップa)からf)は、代表的なサンプルとほぼ同じ光重合可能な組成物を有する特定の感光性素子について一回しか実施する必要がない。印刷版へと作製される第2の感光性素子、およびその後の全ての感光性素子は、作成された重合率曲線を用いて所望の硬化応答性、Rcに基づく露光に必要なエネルギー密度を判定することができる。一実施形態では、化学線へのバックフラッシュ露光はエネルギー密度に基づく。一実施形態では、化学線への主(画像様)露光はエネルギー密度に基づく。一実施形態では、化学線への後露光はエネルギー密度に基づく。一実施形態では、化学線への非粘着化(detackification)は露光密度に基づく。別の実施形態では、バックフラッシュ露光と主露光の双方とも、所望の硬化応答性をもたらすのに適したエネルギー密度に基づく。一実施形態では、感光性素子には床部の高さの所望の硬化応答性Rc向けのエネルギー密度に基づいてバックフラッシュ露光が与えられる。別の実施形態では、感光性素子にはレリーフ画像特性の所望の硬化応答性Rc向けのエネルギー密度に基づいて画像様露光が与えられる。別の実施形態では、感光性素子には特定の露光、および所望の硬化応答性Rcに適したエネルギー密度に基づいてバックフラッシュ露光と画像様露光の両方が与えられる。本発明の方法、特にステップa)からステップf)を利用して、(処理後の重合工程を完了するための)後露光に必要なエネルギー密度ならびに(後処理後の印刷版の表面の粘着性を除去するための)非粘着化に必要なエネルギーを判定することができる。非粘着化ステップのためのエネルギー密度を判定するための実施形態では、非粘着化のための放射源のピーク発光と整合させるため、254nmでピーク感度を有するセンサが使用されよう。
【0026】
感光性素子
感光性素子は弾性結合剤、少なくとも1つの単量体、および光開始剤を含む光重合可能な組成物の層を含んでいる。本明細書で用いられる「光重合可能な」という用語は、光重合可能、光架橋結合可能、または双方のシステムを包含することを意図している。光開始剤は化学線に対する感受性を有している。
【0027】
結合剤は単一の重合体または重合体の混合物である。結合剤はポリイソプレン、1,2-ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、およびブタジエン/アクリロニトリルを含む、共役ジオレフィン炭化水素の天然または合成重合体を含む。好ましくは、熱可塑性結合剤はA−B−A型ブロック共重合体の弾性ブロック共重合体であり、ただしAは非弾性ブロック、好ましくはビニル重合体、最も好ましくはポリスチレンを表し、Bは弾性ブロック、好ましくはポリブタジエンまたはポリイソプレンを表している。このタイプの適当な熱可塑性の弾性結合剤には、好ましいポリ(スチレン/イソプレン/スチレン)ブロック共重合体と、ポリ(スチレン/ブタジエン/スチレン)ブロック共重合体とが含まれる。非弾性と弾性の結合剤の比率は好ましくは10:90から35:65の範囲内にある。結合剤は光重合可能層の少なくとも50%の質量百分率の量で含まれる。
【0028】
本明細書で用いられる結合剤と言う用語は、フリッド(Flid)等の特許文献4、およびクイン(Quinn)等の特許文献5に記載されているようなコアシェル構造のマイクロゲル、およびマイクロゲルのブレンド、および事前成形された高分子重合体を包含する。
【0029】
使用できるその他の適切な感光エラストマーにはポリウレタンエラストマーが含まれる。適切なポリウレタンエラストマーの例は、(i)有機ジイソシアナート、(ii)イソシアナート基と重合可能な少なくとも2つの遊離水素基を有し、かつ分子当たり少なくとも1つのエチレン性不飽和の付加重合可能基を有する少なくとも1つの鎖拡張剤(chain−extending agent)、および(iii)最小分子量が500で、イソシアナート基と重合可能な少なくとも2つの遊離水素含有基を有する有機ポリオールの反応生成物である。これらの材料の幾つかのより完全な説明は特許文献6を参照されたい。
【0030】
光重合可能な組成物は、透明で、曇りのない光重合可能層が生成される範囲で結合剤との融和性がある、付加重合が可能な少なくとも1つの化合物を含んでいる。付加重合可能な少なくとも1つの化合物は単量体と呼ばれることもあり、単一の単量体でもよく、または単量体の混合物でもよい。光重合可能な組成物に使用可能な単量体はよく知られており、少なくとも1つの熱エチレン基を有する付加重合エチレン性不飽和化合物を含むが、これに限定されない。適切な単量体の例にはアルコールおよびポリオールのアクリレートおよびメタクリレートモノエステルならびにアルコールおよびポリオールのアクリレートおよびメタクリレートポリエステルが含まれるがこれに限定されない。アルコールおよびポリオールの例にはルカノール、アルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、ポリアクリロールオリゴメール、などが含まれる。単官能性および多感応性アクリレートおよびメタクリレートの混合物を使用してもよい。適切な単量体の他の例には、イソシアナート、エステル、エポキシド等のアクリレートおよびメタクリレート誘導体が含まれる。単量体は光重合可能な組成物に弾性特性を付与するために当業者によって適宜選択されることができる。弾性単量体の例には、アクリル化液体ポリイソプレン、アクリル化液体ブタジエン、高ビニル含有量の液体ポリイソプレン、および高ビニル含有量の(すなわち、1−2ビニル基の含有量が質量百分率で20%以上)液体ポリブタジエンが含まれるが、それに限定されない。単量体のさらなる例はチェン(Chen)の特許文献7、フリッド(Fryd)等の特許文献8、フリッド等の特許文献9、およびファインベルグ(Feinberg)等の特許文献10に記載されている。付加重合可能な化合物(単量体)は弾性組成物の質量百分率で少なくとも5%の量、好ましくは10から20%の量で含まれる。
【0031】
光開始剤は、化学線に感受性があり、過度の反応停止がない1つまたは複数の単量体の重合を開始する遊離基を生成するいずれかの単一化合物または化合物の組み合わせでよい。光開始剤は化学線によって活性化され、吸収スペクトルに基づく放射感受性を有している。光開始剤の吸収スペクトルは典型的には、化学線に対する最大吸収波長に吸収ピークを含んでいる。これらの特定の紫外光源に対して感受性があるフレキソ印刷版として使用される感光性素子は、典型的には310から400nmの間を吸収する光開始剤を使用する。知られているいずれの種類の光開始剤、特に、キノン、ベンゾフェノン、ベンゾインエーテル、アリルケトン、ペルオキシド、ビイミダゾール、ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシルアルキルフェニルアセトフォン、ジアルコキシアセトフェノン、トリメチルベンゾイルフォスフィンオキシド誘導体、アミノケトン、ベンゾイルシクロヘキサノール、メチルチオフェニルモリホリノケトン、モルホリノフェニルアミノケトン、アルファハロゲノアセトフェノン、オキシスルフォニルケトン、スルフォニルケトン、オキシスルフォニルケトン、スルフォニルケトン、ベンゾイルオキシムエステル、チオキサントロン、カンファーキノン、ケトコウマリン(ketocouumarin)、ミヒラ−ケトン(Michler’s ketone)などの遊離基光開始剤を使用してもよい。あるいは、光開始剤は、放射によって活性化される増感剤(sensitizer)によって誘発された場合に、そのうちの1つが遊離基を形成する化合物の混合物でもよい。一実施形態では、開始剤は紫外光放射に対して感受性がある。別の実施形態では、開始剤は可視光放射に対して感受性がある。光開始剤は一般に、光重合可能な組成物の重量の0.001%から10.0%の量である。
【0032】
光重合可能な組成物は、所望の最終的な特性に応じて他の添加材を含むことができる。光重合可能な組成物に追加される添加材には、増感剤、可塑剤、流動性調整材、熱重合抑止剤、着色剤、処理助剤、抗酸化剤、抗オゾン化物質および充填物が含まれる。
【0033】
光重合可能層の厚さは、所望の印刷版のタイプに応じて、約0.020インチから約0.250インチ以上まで(約0.05cmから約0.64cm以上まで)の広い範囲にわたって変わり得る。
【0034】
感光性素子は典型的には、少なくとも1つの光重合可能層の近傍の支持体を含んでいる。支持体は、フレキソ印刷版の作製に使用される感光性素子と共に従来から使用されているいずれかの可撓性材料でよい。一実施形態では、支持体は支持体を通した「バックフラッシュ」露光に適応させるために化学線に対して透過性がある。適当な支持体材料の例には、付加重合体および線形凝縮重合体によって形成されるような高分子フィルム、透明フォームおよび繊維が含まれる。ある最終用途条件では、金属支持体が放射に対して透過性ではなくても、アルミニウムなどの金属も支持体として使用してもよい。好ましい支持体はポリエステルフィルムであり、特に好ましいのはポリエチレンテレフタレートである。支持体はシートの形状でもよく、スリーブなどの円筒形でもよい。スリーブは単層または多層の可撓性材料から製造されてもよい。スリーブはさらに、ニッケルまたはガラスエポキシなどの不透過性の化学線遮断材料から製造されてもよい。支持体の厚さは典型的には0.002から0.050インチ(0.0051から0.127cm)である。シート形状の好ましい厚さは0.003から0.016インチ(0.0076から0.040cm)である。スリーブは、所望の印刷版のタイプに応じて、例えば約0.002インチから約1インチ以上(0.005から2.54cm以上)の広い範囲にわたって変わり得る壁厚を有している。
【0035】
光重合可能層自体は、結合剤、単量体、光開始剤、およびその他の成分を添加することによって多くの方法で作製可能である。光重合可能な混合物をホットメルトに形成し、次いで所望の厚さにカレンダ加工することが好ましい。組成物を融解、混合、脱気および濾過する機能を実施するために押出機を使用することができる。押出加工された混合物は次いで支持体と暫定カバーシートとの間でカレンダ加工される。あるいは、光重合可能な材料を鋳型内で支持体と暫定カバーシートとの間においてもよい。次いで材料層は熱および/または圧力を加えて平坦にプレスされる。円筒形の継ぎ目なし光重合可能素子の作製は限定されるものではなく、例えば特許文献11でクシュナー(Cushner)等によって開示されている方法および装置によって作製されてもよい。
【0036】
感光性素子は、2層または多層構造であり得る少なくとも1つの光重合可能層を含んでいる。さらに、感光性素子は少なくとも1つの光重合可能層上の弾性キャップ層を含んでいてもよい。任意選択で第2の高分子結合剤および非移動性染料または顔料が弾性キャップ層内に含まれてもよい。弾性組成物はさらに1つまたは複数の単量体と、光開始系とを含み得る。弾性組成物内の弾性高分子結合剤は一般に光重合可能層内に含まれる弾性結合剤と同一であるか、またはこれと類似している。弾性キャップ層は典型的には、光重合可能層のカレンダ加工中に感光印刷素子の一部になる多層カバー素子の一部である。弾性キャップ層の厚さは典型的には1.5から3.0ミル(38.1から76.2ミクロン)、好ましくは1.8から2.8ミル(45.7から71.1ミクロン)である。弾性キャップ層として適するこのような多層カバー素子および組成物はグルツマッヒャー(Gruetzmacher)等の特許文献2、および特許文献12に開示されている。弾性キャップ層は必ずしも光反応成分を含まなくてもよいが、この層は最終的には光重合可能層と接触すると感光性になる。したがって、化学線に画像様露光されると、弾性キャップ層は重合または架橋結合が生じた部分と、重合されずに、すなわち架橋結合されずに留まる部分とを有する。弾性キャップ層の未重合部分は処理によって、レリーフ表面を形成するため光重合可能層と共に除去される。化学線に露光された弾性キャップ層は光重合可能層の重合された領域の表面上に留まり、印刷版の実際の印刷面になる。
【0037】
本発明の感光印刷素子はさらに、少なくとも1つの光重合可能層上に1つまたは複数の付加層を備えていてもよい。光重合可能層上の付加層は剥離層と、化学線不透過層と、障壁層と、感光性素子の表面特性を変化させる層とを含んでいる。1つの付加層が感光性素子に複数の機能を提供してもよい。1つまたは複数の付加層が光重合可能層をカバーすることができる。化学線不透過層がある場合は、少なくとも1つの障壁層が光重合可能層と放射線不透過層との間に挿入されてもよい。障壁層がある場合は、これは光重合可能層と放射線不透過層との間での材料の移動を最小限にする。単量体および可塑剤は、これらが隣接層の材料と適合する場合は時間が経過すると移動することがある。このような移動は例えば、光重合可能層から放射線不透過層へとなされることがある。このような場合は、放射線不透過層の赤外光感度が変化することがある。加えて、このような移動によって結像後に放射線不透過層が汚れたり粘着したりすることがある。
【0038】
光重合可能層の表面が粘着性を持つことがあるので、ほぼ非粘着性の表面を有する剥離層が光重合可能層の表面に貼着されてもよい。このような剥離層は任意選択の暫定カバーシートの除去中の光重合可能層の表面を損傷から保護することができ、かつ光重合可能層がカバーシートに粘着しないことを保証することができる。画像の露光中、剥離層は画像付帯マスクが光重合可能層と結合することを防止できる。剥離層は化学線に対する感受性がない。剥離層はさらに、任意選択で光重合可能層と化学線不透過層との間に挿入される障壁層の第1の実施形態としても適している。弾性キャップ層も障壁層の第2の実施形態として機能してもよい。剥離層に適する材料の例は当分野でよく知られており、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルセルロース、エチレンおよびビニルアセテートの共重合体、両性共重合体およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0039】
感光印刷素子はさらに、支持体の反対側の光重合可能層の表面の上に配置された化学線不透過層を含んでいてもよい。化学線不透過層は表面のほとんどをカバーしてもよく、または光重合可能層の結像可能な部分だけをカバーしてもよい。化学線不透過層は、化学線にほぼ不透過性で赤外線に感受性であるのが好ましい。化学線不透過層は障壁層を設けて、またはこれを設けずに使用してもよい。障壁層を設けて使用する場合は、障壁層は光重合可能層と放射線不透過層との間に挿入される。化学線不透過層は放射線不透過材料、赤外光吸収材料、および任意選択の結合剤を含んでいる。カーボンブラックおよび黒鉛などの黒い無機顔料、顔料、金属、および金属合金の混合物は一般に、赤外感光性材料および放射線不透過材料の双方として機能する。任意選択の結合剤は、自然酸化重合体、非自然酸化重合体、熱化学分解可能な重合体、スチレンおよび/またはオレフィンを含むブタジエンおよびイソプレンの重合体および共重合体、ピロライズ可能(pyrolyzable)重合体、両性共重合体、ポリエチレンワックス、従来から剥離層として使用されている上記の材料、およびそれらの組み合わせを含むがそれに限定されない高分子材料である。赤外感光性層の厚さは、感光性と不透過性の双方を最適化するため、一般に約20オングストロームから約50オングストロームの範囲内にあるべきである。化学線不透過層は、化学線と、下層の光重合可能層の重合とを有効に阻止するため、2.0を超える透過光学密度を有するべきである。
【0040】
化学線不透過層は、感光性素子用に画像マスクを形成するために、(従来の画像透過部分またはフォトツールではなく)典型的には赤外レーザ放射であるレーザ放射線が使用されるデジタルダイレクト刷版結像技術で使用される。デジタル方式は、レーザ放射によって光重合可能層上にインサイチュで、またはこの層の上方に配置されたマスク画像を生成する。マスク画像を生成するデジタル方式には、画像様露光に先立ち感光性素子を作製するための1つまたは複数のステップが必要である。一般に、インサイチュマスク形成のデジタル方式は、放射線不透過層を選択的に除去し、または支持体の反対側の感光性素子の表面から、または表面に移動する。感光性素子上の放射線不透過層によってマスクが形成される方法は限定されない。感光性素子は、光重合可能層上に配置され、またはその表面全体をカバーし、またはほとんどカバーする化学線不透過層を含んでいてもよい。この場合は、赤外レーザ放射線が放射線不透過層を像通りに除去し、すなわち切除または蒸発させて、ファン(Fan)の特許文献13、ファンの特許文献14、ファンの特許文献15、およびヴァン ツェーレン(Van Zoeren)の特許文献16、および17に開示されているようなインサイチュマスクを形成する。ヴァン ツェーレンの特許文献17に開示されているように、材料が感光性素子から除去される際にこれを捕獲するために、レーザ露光中に放射線不透過層の近傍に材料捕獲シートがあってもよい。感光性素子から除去されなかった放射線不透過層の部分だけが素子上に残り、インサイチュマスクを形成する。
【0041】
別のデジタルマスク形成方法では、感光性素子は最初には化学線不透過層を含んでいない。放射線不透過層を支持する別個の素子は、放射線不透過層が典型的には光重合可能層である支持体の反対側の感光性素子の表面に近接するように、感光性素子と共に集合体(assemblage)を形成する。別個の素子は、デジタル露光工程を補助するように放出層または加熱層などの1つまたは複数の別の層を含んでいてよい。そのために、放射線不透過層も赤外線に感受性がある。ファン等の特許文献18、およびブランシェット(Blanchett)の特許文献19、20および21に開示されているように、集合体は赤外光レーザ放射線で画像様露光されて、放射線不透過層を選択的に転写し、または放射線不透過層の接着バランスを選択的に変化させて光重合可能層上に、または層の上方に配置された画像を形成する。画像様の転写工程の結果、放射線不透過層の転写された部分だけが感光性素子上にあり、それがインサイチュマスクを形成する。
【0042】
赤外光レーザ露光によるインサイチュマスクの形成は、750から20,000nmの範囲で発光する様々なタイプの赤外光レーザを使用して行うことができる。780から2,000nmの範囲で発光するダイオードレーザ、および1064nmで発光するNd:YAGレーザを含む赤外光レーザが好ましい。感光性素子から化学線不透過層を画像様に除去するための好ましい赤外光レーザ露光のための装置および方法は、ファン等の特許文献22、および23に開示されている。インサイチュマスク画像は化学線への全体的な露光、および処理の後続ステップ用に感光性素子上に残される。
【0043】
さらに、デジタルマスク形成をインクジェットインクの形態で放射線不透過材料を画像様に塗布することによって達成可能であることも企図される。インクジェットインクの画像様塗布は、光重合可能層に直接行うことも、感光性素子の別の層上の光重合可能層の上方に配置することもできる。デジタルマスク形成を達成可能な企図される別の方法は、別個の担体上に放射線不透過層のマスク画像を作成し、次いで熱および/または圧力を加えて支持体の反対側の光重合可能層の表面に転写することによるものである。光重合可能層は典型的には粘着性であり、転写された画像を保持する。次いで別個の担体を画像様露光に先立って感光性素子から除去することができる。別個の担体は、放射線不透過材料を選択的に除去し、画像を形成するためにレーザ放射線に画像様露光される放射線不透過層を有していてもよい。
【0044】
さらに、2つ以上の追加層または複数のタイプの層を使用することができる。例えば、光重合可能層の近傍に弾性キャップ層を設け、この弾性キャップ層には剥離層が上塗りされてもよい。付加層(1つまたは複数)の正確な選択は、光重合可能層の性質、化学線不透過層が存在するか否か、放射線不透過層の性質および感光性素子のその他の物理的要件によって左右される。
【0045】
本発明の感光印刷素子はさらに、素子の最上層の上の暫定カバーシートを含んでいてもよい。カバーシートの目的の1つは、保管および取扱い中に感光印刷素子の最上層を保護することである。カバーシートに適する材料の例には、剥離層で下塗り可能なポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、フッ素重合体、ポリイミド、またはポリエステルが含まれる。カバーシートは好ましくはマイラー(商標登録)ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルから作製され、最も好ましくは、カバーシートは5ミルマイラー(商標登録)である。
【0046】
いずれか1つの露光が(時間ではなく)エネルギー密度に基づいて行われる場合は、露光用のステップ露光テストは、第2の感光性素子と同じかほぼ同じ組成物および構造を有するサンプルを使用して行われるべきであり、露光は第2の感光性素子を露光するのに望ましい条件と同じかほぼ同じ条件で行われるべきである。
【0047】
化学線への感光性素子の全体的露光は、フォトツールまたはインサイチュマスクであってよいマスクを通して行われる。マスクは不透過領域と、画像を形成する「透明」領域とを含んでいる。マスクの不透過領域は下にある光重合可能材料が放射線に露光されることを防止し、したがって暗領域で覆われた光重合可能層の領域は重合しない。マスクの「透明」領域は光重合可能層を化学線に露光し、重合または架橋結合する。光重合可能層の画像様露光に必要な画像は、インクジェット塗布を含む従来のデジタル方式を含むいずれかの方法で生成可能であり、インサイチュマスク画像は支持体の反対側の光重合可能層表面上に形成され、または表面の上方に配置される必要があろう。
【0048】
感光性素子の画像様露光はマスクを通した化学線への露光である。感光性素子は前述のように、マスクを通して適宜の放射源からの化学線に露光される。デジタルマスクが感光性素子上にインサイチュで形成される場合は、素子全体がインサイチュマスク画像を通して露光される。従来の画像様露光方法は、マスクとして代表的にはハロゲン化銀フィルムである画像付帯透過性フィルムまたはフォトツールを使用する方法である。典型的には、フォトツールは厚さが5から7ミルのポリエステルベース上の画像を含んでいる。画像付帯透過性フィルムは剥離層上に配置され、マスクフィルムが素子と良好に接触することを確実にするため真空が引かれ、素子が露光される。画像付帯透過性フィルムは処理前に素子から除去される。画像様露光は時間に基づくものでもよいが、一実施形態では、前述のように露光された領域が下方の支持体まで、または裏露光層、すなわち床部まで架橋結合するのに十分なエネルギー密度に基づいて行われる。
【0049】
感光性素子の化学線への画像様露光は、インサイチュマスクを有する感光性素子用の大気酸素の存在下で行っても、存在しない状態で行ってもよい。大気酸素は露光が真空中で行われる場合は排除される。層内で発生する重合反応に対する酸素の影響を最小限にするため、露光が真空中で行われてもよい。インサイチュマスクを有する感光性素子の場合、露光は大気酸素の存在下で行うことができる。画像透過部分を通して露光される感光性素子の場合は、画像透過部分と感光性素子との良好な接触を確実にするために、露光は真空中で行われなければならない。
【0050】
感光印刷素子は光重合可能層内の未重合領域を除去し、それによってレリーフ画像を形成するように処理される。処理ステップは、光重合可能層の少なくとも化学線に露光されなかった領域、すなわち未露光領域または未硬化領域を除去する。弾性キャップ層を除いて、典型的には光重合可能層上に存在することがある付加層が、光重合可能層の重合された領域から除去、またはほとんど除去される。マスクがデジタル式に形成される感光性素子の場合は、処理ステップは、(既に化学線に露光された)マスク画像、および光重合可能層の下層の未露光領域をも除去する。
【0051】
感光印刷素子の処理には、(1)光重合可能層が適宜の現像液に接触して未重合領域を洗浄する「湿式」現像、および(2)感光性素子が現像温度まで加熱されて、光重合可能層の未重合領域が融解、または軟化、または流動化され、吸収材料との接触により除去される「乾式」現像が含まれる。乾式現像は熱現像とも呼ばれることがある。
【0052】
湿式現像は通常はおよそ室温で行われる。現像液は有機溶剤、水系または準水系溶液、および水でよい。現像液の選択は主として、除去される光重合可能材料の化学的性質に左右される。適当な有機溶剤現像液には、芳香族または、脂肪族炭化水素、および脂肪族または芳香族ハロ炭化水素、またはこのような溶剤と適宜のアルコールとの混合物が含まれる。その他の有機溶剤現像液は特許文献24に開示されている。適切な準水系現像液は通常水および水混和性有機溶剤およびアルカリ性材料を含んでいる。適切な水系現像液は、通常水およびアルカリ性材料を含んでいる。その他の適切な水系現像液の組み合わせは特許文献25に記載されている。
【0053】
現像時間は変わりうるが、好ましくは約2分から約25分の範囲にある。現像液は、浸漬、噴霧、およびブラシまたはローラ塗布を含むいずれかの便利な方法で塗布することができる。素子の未重合部分を除去するためブラシによる補助を利用できる。洗浄は、版の未露光部分を除去し、露光された画像および床部を構成するレリーフを残すために、現像液と機械的ブラシ動作を使用する自動処理ユニットで実施することができる。
【0054】
溶液中の現像処理に引き続いて、レリーフ印刷版は一般に拭き取るか拭い取られて乾燥され、次いで強制空気または赤外線オーブンでより完全に乾燥される。乾燥時間および温度は変わってもよいが、版は典型的には約60℃で60から120分間乾燥される。高温は支持体が収縮し、それによって位置合わせ問題が生ずることがあるので推奨されない。
【0055】
素子の熱処理には、少なくとも1つの光重合可能層(および1つまたは複数の付加層)を有する感光性素子を、光重合可能層の未硬化部分が軟化または溶解または流動化されるのに十分な温度まで加熱し、素子の最外面を吸収面に接触させて、融解または流動化部分を吸収し、または湿気を取る工程が含まれる。光重合可能層の重合領域は未重合領域よりも融点が高いので、熱現像温度では融解、軟化、または流動化しない。フレキソ印刷版を形成するために感光性素子の熱現像はマーテンス(Martens)等の特許文献26、27、28、およびワン(Wang)等の特許文献29に記載されている。
【0056】
「融解」という用語は、流動、および吸収材料による吸収を可能にするように軟化および粘性の低下をもたらす上昇された温度にさらされる光重合可能な弾性層の未照射部分の挙動を説明するために用いられる。光重合可能層の溶解可能部分の材料は、通常固体と液体との間の鋭い遷移がない粘弾性材料であるので、工程は吸収材料内のある吸収閾値を超えるいずれかの温度で加熱された組成物層を吸収する機能を果たす。本発明の目的のため、組成物層を「融解」するために広い温度範囲を用いてもよい。工程の成功裏の動作中、吸収は温度が低いほど遅く、温度が高いほど速い。
【0057】
感光性素子の加熱、および素子の最外面と吸収材料との接触からなる熱処理ステップは同じ時間に行われてもよく、または吸収材料と接触した場合に光重合可能層の未硬化部分が依然として軟らかく、または融解状態にある場合は順次行われてもよい。少なくとも1つの光重合可能層(および1つまたは複数の付加層)は伝導、対流、放射、またはその他の加熱方法で、未硬化部分の融解を生ずるのに十分な温度ではあるが、層の硬化部分を破壊させるほど高くはない温度まで加熱される。光重合可能層の上に配置される1つまたは複数の付加層は、吸収材料によっても軟化、または溶解または流動化され、吸収されてもよい。光重合可能層の未硬化部分の融解または流動化を生ずるため、感光性素子は約40℃を超える、好ましくは約40℃から約230℃(104〜446°F)の表面温度に加熱される。吸収材料と未硬化領域で融解される光重合可能層との程度の差こそあれ密接な接触を保つことによって、光重合可能層から吸収材料への未硬化の感光材料の転写が行われる。依然として加熱された状態で、吸収材料は支持層と接触する硬化した光重合可能層から分離されて、レリーフ構造が露わにされる。光重合可能層の加熱、および融解(部分)層と吸収材料との接触のステップサイクルは、未硬化材料を適切に除去し、十分なレリーフの深さを作製するのに必要な回数だけ繰り返すことができる。しかし、適切なシステム性能のためにサイクル数を最小限にすることが望ましく、典型的には光重合可能素子は5から15サイクルだけ熱処理される。吸収材料と、(未硬化部分が溶解されている)光重合可能層との密接な接触は、層と吸収材料とを互いに押圧することによって保たれる。
【0058】
感光性素子を熱現像するための好ましい装置は、ピーターソン(Peterson)等の特許文献30、およびジョンソン(Jhonson)等の特許文献31にも開示されている。感光性素子は熱処理を実行するためにドラムまたは平坦な表面上に配置されてもよい。
【0059】
光重合可能層の未硬化部分の溶解温度を超える融解温度を有し、同じ動作温度で良好な引裂き耐性を有する吸収材料が選択される。好ましくは、選択された材料は、加熱中の感光性素子を処理するのに必要な温度に耐性がある。吸収材料は不織材料、紙ストック、繊維織材料、開放発泡材、程度の差こそあれ含まれる容積の相当な部分を空隙容積として含む多孔質材料から選択される。吸収材料はウエブまたはシートの形態でよい。吸収材料はさらに、吸収材料の平方ミリメートル当たりで吸収可能なエラストマーのグラムで測定された融解弾性組成物の場合も高い吸収性を有するべきである。好ましいのは不織ナイロンウエブである。
【0060】
感光性素子は未硬化部分を十分に除去してレリーフを形成するために1つまたは複数の処理ステップを受けることも企図される。レリーフを形成するため、感光性素子には湿式現像と乾式現像の両方がどの順序で施されてもよい。光重合可能層の上方に配置された1つまたは複数の付加層を洗浄溶液および/または加熱によって除去できない場合は、現像前処理ステップはこのような付加層を除去することが必要なことがある。
【0061】
感光性素子から印刷版を作製する工程は通常、重合された材料の層、または床部を光重合可能層の支持体側上に作製し、光重合可能層を感光性にするために使用される、裏露光またはバックフラッシュステップを含んでいる。バックフラッシュ露光ステップには上記のどの化学線源を使用してもよい。バックフラッシュ露光は時間に基づくものでもよいが、一実施形態では前述のようにエネルギー密度に基づいて行われる。
【0062】
本発明の感光印刷素子は、光重合工程が完了し、素子が印刷および保管中に安定状態に留まることを保証するため、均一に後露光されることができる。この後露光ステップは全体露光と同じ放射源を使用することができる。後露光ステップは時間に基づくものでもよいが、一実施形態では前述のようにエネルギー密度に基づいて行われる。
【0063】
非粘着化は、感光印刷素子の表面が依然として粘着性である場合に適用可能な任意選択の現像後処理であり、このような粘着性は一般に後露光では除去されない。粘着性は、臭素または塩素溶液による処理などの当分野で周知の方法で除去することができる。好ましくは、非粘着化は、特許文献32およびギプソン(Gipson)の特許文献33に記載のように、300nm以下の波長を有する放射源による露光で達成される。非粘着化露光ステップは時間に基づくものでもよいが、一実施形態では前述のようにエネルギー密度に基づく。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の硬化応答性、Rcを有する印刷版の製造方法であって、
a)弾性結合剤と、単量体と、化学線により活性化可能な光開始剤とを含む光重合可能な組成物層を有する感光性素子を準備するステップと、
b)発光スペクトルとピーク発光とを有する化学線源を準備するステップと、
c)前記化学線源の前記ピーク発光に整合した吸収ピークを有するセンサを使用して前記放射源の光強度を測定するステップと、
d)
1)時間T1およびT2において、前記感光性素子を前記化学線源に露光し、
2)時間T1およびT2にそれぞれ対応する硬化応答性Rc1、Rc2を有する重合された部分を形成するように処理し、
3)前記硬化応答性Rc1、Rc2を測定することを含む、
段階的露光テストを行うステップと、
e)前記感光性素子の前記硬化応答性と、ステップc)の前記光強度と前記時間T1およびT2との積によって判定されるエネルギー密度との重合率曲線を作成するステップと、
f)前記弾性結合剤と、前記単量体と、前記光開始剤とを含む前記組成物の層を有する第2の感光性素子を準備するステップと、
g)ステップe)で作成された前記重合率曲線から判定されたエネルギー密度に基づいて、前記第2の素子を前記化学線源に露光して、所望の前記硬化応答性Rcを有する重合された部分を形成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
重合されない部分を除去するように前記第2の素子を処理するステップをさらに含むこと、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理ステップは、
(1)溶剤、水溶液、準水溶液、および水からなるグループから選択された少なくとも1つの洗浄溶液で前記露光された第2の素子を処理するステップと、
(2)前記露光された第2の素子を、領域を融解、流動化、または軟化させるのに十分な温度に加熱するステップ、
からなるグループから選択されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記印刷素子は、前記光重合可能な組成物層の近傍の化学線に対して透過性の支持体をさらに備え、前記露光ステップd)およびg)は前記素子の前記支持体側を通して行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
さらに、前記光重合可能な組成物層の近傍にマスクを有し、前記露光ステップd)およびg)は前記素子の前記マスクを通して行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記測定ステップc)の前に前記化学線源を加熱するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記硬化応答性は、前記重合された部分の床部の厚さと、1つまたは複数のレリーフ画像特性とからなるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記センサの前記吸収ピークは370nmの波長にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記化学線源は、前記センサの前記吸収ピークの25nmの波長以内のピーク発光波長を有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記化学線源は約370nmのピーク発光波長を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記化学線源は約365nmのピーク発光波長を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記化学線源は約360nmのピーク発光波長を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記化学線源は約355nmのピーク発光波長を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記化学線源は約255nmのピーク発光波長を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記化学線源は、炭素アーク、水銀蒸気アーク、アルゴングローランプ、蛍光ランプおよび蛍光管、キセノンフラッシュランプ、電子フラッシュユニット、電子ビームユニット、および写真用フラッドランプからなるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記化学線源は前記光開始剤の前記吸収スペクトルと重複する発光スペクトルを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2009−23343(P2009−23343A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−159254(P2008−159254)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】