説明

レンズシート製造方法

【課題】シートの反りの発生を抑制しつつ、透光性基材と活性エネルギ線硬化性組成物との密着性を向上させることができるレンズシート製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のレンズシート製造方法は、外周面にレンズ部転写パターンが形成されたロール金型14の外周面と、透光性基材12の間に活性エネルギ線硬化性組成物18を配置し、透光性基材を通して活性エネルギ線硬化性組成物に活性エネルギ線を照射して活性エネルギ線硬化性組成物を硬化させレンズ部転写パターンと相補的な形状を有するレンズ部を透光性基材の表面に活性エネルギ線硬化樹脂によって形成するレンズシート製造方法であって、活性エネルギ線硬化性組成物が、硬化前に摂氏40度以上摂氏80度未満の温度範囲とされ、硬化時に、摂氏20度以上摂氏40度未満の範囲とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、レンズシート製造方法に関し、詳細には、レンズシート、特に、プリズムシート、レンチキュラーレンズシート及びフレネルレンズシート等のレンズシートを長尺レンズシートとして連続的に製造するレンズシート製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等のバックライト、立体写真や投影スクリーン、オーバーヘッドプロジェクターのコンデンサーレンズ等として使用される、プリズムシート、レンチキュラーレンズシート、フレネルレンズシート等のレンズシートが知られている。
【0003】
このようなプリズムシートの製造方法として、プリズムシートの微小プリズム部と相捕的な溝が表面に形成されたロール金型を使用して、長尺状のプリズムシートを連続的に生産する方法が知られている。この製造方法では、ロール金型と長尺状の透光性基材の間に活性エネルギ線硬化性組成物を挟持し、活性エネルギ線照射装置からの活性エネルギ線で活性エネルギ線硬化性組成物を硬化させ、硬化した活性エネルギ線硬化性組成物で形成された微小プリズム部を透光性基材の表面に形成することによってプリズムシートを製造している。
【0004】
このようなプリズムシートがバックライトに使用されるノートパソコンの液晶表示装置等には、輝度が高く、輝度斑が無いことが求められるが、レンズシートの反りが大きいと、シートが浮いてバックライト上に暗部が生じ、輝度斑を有する液晶表示装置となってしまう。
【0005】
このようなシートの反りを防止するため、硬化時の活性エネルギ線硬化性組成物の温度を低くし、熱収縮分を小さくする方法が提案されているが、この方法には、透明基材と活性エネルギ線硬化性組成物と密着性が低下するという問題があった。
【0006】
一方、密着性を向上させる方法として、透明基材をあらかじめ摂氏25度以上摂氏80度未満の温度範囲に加熱して透明基材の表面の活性を良くする方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平3−73319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法では、硬化時の透明基材の樹脂の温度が高いと熱収縮分が大きくなり、レンズシートの反りが大きくなるという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、シートの反りの発生を抑制しつつ、透光性基材と活性エネルギ線硬化性組成物との密着性を向上させることができるレンズシート製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、
外周面にレンズ部転写パターンが形成されたロール金型の外周面と、透光性基材の間に活性エネルギ線硬化性組成物を配置し、前記透光性基材を通して前記活性エネルギ線硬化性組成物に活性エネルギ線を照射して前記活性エネルギ線硬化性組成物を硬化させ前記レンズ部転写パターンと相補的な形状を有するレンズ部を前記透光性基材の表面に活性エネルギ線硬化樹脂によって形成するレンズシート製造方法であって、
前記活性エネルギ線硬化性組成物が、前記硬化前に摂氏40度以上摂氏80度未満の温度範囲とされ、前記硬化時に、摂氏20度以上摂氏40度未満の範囲とされている、
ことを特徴とするレンズシート製造方法が提供される。
【0011】
このような構成によれば、
シートの反りの発生を抑制しつつ、透光性基材と活性エネルギ線硬化性組成物との密着性を向上させることができる。
【0012】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記活性エネルギ線硬化性組成物は、前記透光性基材の一方の面に塗布されることにより供給され、前記活性エネルギ線硬化性組成物の供給時の温度が、摂氏40度以上摂氏80度未満の範囲である。
【0013】
本発明の他の好ましい態様によれば、活性エネルギ線硬化性組成物が、前記ロール金型の外周面の温度を調節することによって、前記硬化時に、前記摂氏20度以上摂氏40度未満の温度範囲に制御される。
本発明の他の好ましい態様によれば、前記ロール金型の内部に媒体を流すことによって、前記ロール金型の外周面の温度を調節される。
【0014】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記活性エネルギ線硬化性組成物は、前記透光性基材の一方の面に塗布されることにより供給され、前記透光性基材に塗布された後、摂氏40度以上摂氏80度未満の範囲に加熱される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シートの反りの発生を抑制しつつ、透光性基材と活性エネルギ線硬化性組成物との密着性を向上させることができるレンズシート製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
未満、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態のレンズシート製造方法について説明する。
先ず、本発明の好ましい実施形態のレンズシート製造方法によって製造されるレンズシートについて説明する。図1は、本発明の好ましい実施態様のレンズシート製造方法によって製造されるレンズシートであるプリズムシート1の構成を示す模式的な断面図である。
【0017】
プリズムシート1は、カラー液晶表示装置を備えた携帯用ノートパソコンや、携帯用液晶テレビ、携帯電話、携帯ゲーム機、携帯カメラ、携帯ビデオカメラ等で使用される液晶表示装置用バックライト等の面光源素子の正面輝度を向上させるために使用されるレンズシートである。
【0018】
図1に示されているように、プリズムシート1は、シート状の透光性基材2と、透光性基材2の一方の面に設けられたレンズ部4と、透光性基材2とレンズ部4の間に配置された緩和層6とを備えている。
【0019】
透光性基材2は、可視光、および紫外線、電子線等の活性エネルギ線を透過する、例えば、硝子、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリメタクリルイミド系樹脂等の材料をフィルム、またはシート状に加工したものである。
【0020】
緩和層6との密着性を向上させるために、透光性基材2の表面に密着性向上のための表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などからなる易接着層を形成する方法や、粗面化などが挙げられる。また、透光性基材2には、帯電防止、反射防止、基材同士の密着防止などの他の処理を施すこともできる。
【0021】
レンズ部4は、シート状の透光性基材2の一方の面に並列配置された活性エネルギ線硬化樹脂の三角柱状のレンズ単位(プリズム)から構成されている。
【0022】
本実施態様のプリズムシート1においては、レンズ部4の各プリズム(レンズ単位)の高さは10〜150μm程度であり、レンズ単位のピッチは10から150μm程度とされている。本実施態様では、レンズ単位のピッチが10〜100μmの範囲であることが好ましく、10〜50μmの範囲であることが更に好ましい。
【0023】
本実施態様のプリズムシート1においては、各プリズムの頂角は50〜160°の範囲が好ましい。プリズムシート1を、いわゆるエッジライト方式の液晶表示装置用面光源素子でレンズ部を液晶パネル側に向けて使用する場合には、プリズムの頂角は80〜100°程度の範囲とされ、好ましくは85〜95°の範囲とされる。また、エッジライト方式の液晶表示装置用面光源素子でレンズ部を導光体側に向けて使用する場合には、プリズムの頂角は50〜75°程度の範囲とされ、好ましくは55〜70°の範囲とされる。
【0024】
レンズ部4は、面光源素子の輝度の向上等の点から、比較的高い屈折率を有するものが好ましく、具体的には、その屈折率が1.50以上であることが好ましい。特に、前者のようにプリズム部が液晶パネル側を向くようにプリズムシート1を配置する場合には、レンズ部4の屈折率は、1.55以上であることが好ましく、1.6以上であるのがさらに好ましい。
【0025】
本実施態様においては、レンズシートとして、多数の三角柱状プリズム(レンズ単位)からレンズ部4が構成されているプリズムシート1が挙げられているが、本発明のレンズシートはこれに限定されるものではなく、半円柱状あるいは半楕円柱等のレンズ単位からレンズ部が構成されているレンチキュラーレンズシート、波型レンズ面、モスアイ型レンズ面等によってレンズ部が構成されているレンズシートであってもよい。
【0026】
緩和層6は、レンズ部4と同一の活性エネルギ線硬化樹脂で一体的に形成されている。この緩和層6は、レンズ部4の形成に際して、活性エネルギ線硬化型樹脂の重合収縮によるレンズ型内での樹脂の不足を補充することによりレンズ形状(レンズ部の表面形状)の変形を緩和させる機能を有する。
【0027】
緩和層6を、レンズ部4の高さ(H)の1〜30%の厚さに形成することによって、活性エネルギ線硬化性組成物の硬化時の重合収縮による斑点状模様の発生を抑止することができる。緩和層6の厚さがレンズ高さの1%未満であると、緩和層6での重合収縮によるレンズ形状の変形の緩和の効果が不十分となる傾向にあり、逆にレンズ高さの30%を超えると緩和層6の厚みの制御が困難となり、厚み斑(不均一)による光学特性の低下を招く傾向にある。
【0028】
本実施態様では、緩和層6の厚さは、レンズ部4の高さの1〜25%の範囲であり、さらに好ましくは3〜15%の範囲である。
また、図1に示したように液晶表示装置の面光源素子用のプリズムシート等のピッチまたは厚さが数十μm程度の詳細なレンズ単位を形成する場合には、緩和層6は薄いものが好ましく、例えば、1〜10μm程度の範囲とすることが好ましく、1〜5μmの範囲がより好ましい。
【0029】
レンズシートの緩和層6およびレンズ部4を形成する活性エネルギ線硬化樹脂としては、紫外線、電子線等の活性エネルギ線で硬化させたものであれば特に限定されるものではない。
【0030】
例えば、ポリエステル類、エポキシ系樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系樹脂等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリレート系樹脂がその光学特性の観点から特に好ましい。このような硬化樹脂に使用される活性エネルギ線硬化性組成物としては、取扱性や硬化性等の点で、多価アクリレートおよび/または多価メタクリレート(未満、多価(メタ)アクリレートと記載)、モノアクリレートおよび/またはモノメタアクリレート(未満、モノ(メタ)アクリレートと記載)、および活性エネルギ線による光重合開始剤を主成分とするものが好ましい。代表的な多価(メタ)アクリレートとしては、ポリオールポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、エポキシポリ(メタ)アクリレート、ウレタンポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上の混合物として使用される。
【0031】
また、モノ(メタ)アクリレートとしては、モノアルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリオールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられるが、後者の場合には、金属型を使用する場合には水酸基の影響であると思われる金属型との離型困難性を低減するために、少量で使用するのがよい。また、金属型を使用する場合には、(メタ)アクリル酸およびその金属塩についても、高い極性を有していることから、少量で使用するのがよい。
【0032】
次に、本発明の好ましい実施態様のレンズシート製造方法を実施するプリズムシート製造装置の構成を説明する。図2は、プリズムシート1を製造するプリズムシート製造装置10の概略構成を示す図面である。
【0033】
図2に示されているように、プリズムシート製造装置10は、長尺状の透光性基材12が、矢印A方向に回転駆動される円筒状のロール金型14の外周面に巻回されながら矢印B方向に搬送されるように構成されている。ロール金型14の外周面には、製造するプリズムシート1のプリズム部4と相補的な形状のプリズムパターン(レンズ部転写パターン)が形成されている。
【0034】
ロール金型14としては、プリズムパターンが形成されている外周面のレンズ単位転写部が、アルミニウム、黄銅、鋼等の金属や、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ABS樹脂、フッ素樹脂、ポリメチルペンテン樹脂等の樹脂で形成されている。プリズムパターンは、切削加工や、Ni電鋳法で作成されている。耐熱性や強度等の観点からレンズ単位転写部、その他が金属製のものを使用することが望ましい。
【0035】
ロール金型14の透光性基材12搬送方向上流側には、活性エネルギ線硬化性組成物の塗布装置16が配置され、透光性基材12の一方の面に活性エネルギ線硬化性組成物18を製品有効幅で塗布するように構成されている。塗布装置16の構造は、特に限定されるものでなく、樹脂粘度や塗布膜厚に応じて公知の塗布方法の中から選択することができるが、好ましくは塗工用ダイを用いることが良い。尚、製品有効幅とは、レンズシートを製品として使用する範囲である。
【0036】
ロール金型14に対向して、硬化前の活性エネルギ線硬化性組成物18の厚さを均一にさせるためのニップローラ20が配置されている。一方の面に活性エネルギ線硬化性組成物18を塗布された透光性基材12は、活性エネルギ線硬化性組成物18が塗布された面をロール金型14に向けるようにして、ロール金型14とニップローラ20の間に挟持されながら搬送される。透光性基材12が、ロール金型14とニップローラ20の間に挟持される部分には、挟持によって押し出された活性エネルギ線硬化性組成物18によって樹脂だまり24が形成される。
【0037】
ニップローラ20としては、金属製ロール、ゴム製ロール等が使用される。また、透光性基材12の表面における活性エネルギ線硬化性組成物12の厚さを均一にさせるため、ニップローラ20は真円度、表面粗さ等について高い精度で加工されたロールであるのが好ましい。ゴム製ロールの場合にはゴム硬度は活性エネルギ線硬化性組成物の粘度に対応して適宜決定すればよく、20°以上90°未満の範囲内のものが好ましい。
【0038】
このニップローラ20は、活性エネルギ線硬化性組成物12の厚さを正確に調整することが必要であるため、圧力調整機構24によって、ロール金型14との間で透光性基材12を挟持する圧力を制御することができるように構成されている。
この圧力調整機構24としては、油圧シリンダー、空気圧シリンダー、各種ネジ機構等が使用できるが、機構の簡便さ等の観点から空気圧シリンダーが好ましい。空気圧は、圧力調整弁等によって制御される。
【0039】
また、ニップローラ20の透光性基材12搬送方向下流側のロール金型14の下方位置には、活性エネルギ線照射装置26が設けられている。活性エネルギ線照射装置26は、活性エネルギ線を、透光性基材12を通して活性エネルギ線硬化性組成物18に照射し、透光性基材12上で活性エネルギ線硬化性組成物18を硬化させる。
このとき、ロール金型表面のプリズムパターンが活性エネルギ線硬化性組成物18へ転写されるので、透光性基材12の表面に金型外周面のプリズムパターンと相補的な形状のプリズム部4が形成される。
【0040】
活性エネルギ線照射装置26としては、化学反応用ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、可視光ハロゲンランプ等を用いることができる。活性エネルギ線は、例えば、200〜600nm、好ましくは、320〜390nmの波長の波長範囲における積算エネルギが、例えば、0.1〜10J/cm2、好ましくは0.5〜8J/cm2となるように照射することが適当である。また、活性エネルギ線の照射雰囲気としては、空気 または窒素、アルゴン等の不活性ガスが挙げられる。
【0041】
また、活性エネルギ線硬化性組成物の塗布装置16には、活性エネルギ線硬化性組成物を収容するタンクTが管路28を介して接続されている。タンクTには、温度調節可能なヒータ30が連結され、タンクT内の活性エネルギ線硬化性組成物の温度を、摂氏40度以上摂氏80度未満の温度範囲に加熱あるいは維持するように構成されている。タンクT内の、活性エネルギ線硬化性組成物の温度は、摂氏40度以上摂氏70度以下が好ましく、摂氏40度以上摂氏60度以下がより好ましい。
【0042】
また、本実施態様の製造装置10は、温度調整された媒体が流れるジャケット32がタンクTを覆うように設けられ、タンクT内の活性エネルギ線硬化性組成物の温度を、摂氏40度以上摂氏80度未満の温度範囲に加熱あるいは維持するように構成されている。タンクT内の活性エネルギ線硬化性組成物の温度は、摂氏40度以上摂氏70度以下が好ましく、摂氏40度以上摂氏60度以下がより好ましい。
【0043】
さらに、本実施態様の製造装置10は、管路28ならびに塗布装置16にも、温度調節装置が設けられ、これらの部分内の活性エネルギ線硬化性組成物の温度を、摂氏40度以上摂氏80度未満の温度範囲に加熱あるいは維持するように構成されている。これらの部分での活性エネルギ線硬化性組成物の温度も、摂氏40度以上摂氏70度以下が好ましく、摂氏40度以上摂氏60度以下がより好ましい。温度調節装置は、特に限定されるものではないが、電熱による温度調節装置が好ましい。
【0044】
本実施態様の製造装置10では、このような構成によって、摂氏40度以上80度未満好ましくは摂氏40度以上摂氏70度以下、より好ましくは摂氏40度以上摂氏60度以下がより好ましい。温度調節装置の温度範囲に維持された活性エネルギ線硬化性組成物を、透光性基材12に表面に塗布することができる。
【0045】
本実施態様の製造装置10は、透光性基材12の搬送経路のロール金型14と塗布装置16との間に、透光性基材12に塗布された活性エネルギ線硬化性組成物18を、摂氏40度以上80度未満の温度、好ましくは摂氏40度以上摂氏70度以下の温度、より好ましくは摂氏40度以上摂氏60度以下の温度に加熱あるいは維持するための加熱装置34が設けられている。加熱装置34としては、赤外線照射装置、熱風吹き付け装置等が挙げられる。
【0046】
図3は、ロール金型14の長手方向軸線に沿った断面図である。図3に示されているように、ロール金型14は、内部に流路形成用の入れ子14aが配置されている。入れ子14aによって形成された流路14bに所望温度の流体を流入させ、ロール金型14の表面温度を調整できるように構成された温度調節機構が設けられている。
また、図4に示すように、ロール金型14の内部に邪魔板14cを設け、屈曲形状の流路14dを形成した構成でもよい。
【0047】
本実施態様では、流路に所望温度の流体を流入させてロール金型14の外周面の温度を調整することにより、ロール金型14に巻回される透光性基材12の表面に塗布された活性エネルギ線硬化性組成物18の温度を、硬化時に摂氏20度以上摂氏40度未満の範囲内に保持することができる。
【0048】
ロール金型14の温度制御は、市販のヒートパイプ式冷却ロール、精密誘導発熱ロールジャケットロール、精密流体循環ロールハイブリッドロール等で行ってもよい。
【0049】
このような構成を有するプリズムシート製造装置10は、ジャケット32に供給される媒体の温度制御装置、管路28ならびに塗布装置16の温度調節装置の作動を制御し、透光性基材12に塗布される際の活性エネルギ線硬化性組成物18の温度を、摂氏40度以上80度未満の温度範囲、好ましくは摂氏40度以上摂氏70度以下の温度範囲、より好ましくは摂氏40度以上摂氏60度以下の温度範囲とすることできるように構成されている。
【0050】
この活性エネルギー線硬化性組成物18の温度が摂氏40度未満であると、製品有効幅でにあらかじめ塗布する効果がなく、透光性基材12との密着性が向上せず、ロール金型14に活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物が付着するなどの不具合が生じる。一方、摂氏80度を超えると透光性基材12が軟化するので好ましくない。
【0051】
また、加熱装置34を作動も制御され、透光性基材12に塗布された後の活性エネルギ線硬化性組成物の温度が、摂氏40度以上80度未満の範囲、好ましくは摂氏40度以上摂氏70度以下の範囲、より好ましくは摂氏40度以上摂氏60度以下の範囲に維持されるように構成されている。
【0052】
本実施態様は、ジャケット32による温度調整、管路28ならびに塗布装置16における温度調整、加熱装置34による温度調整に加え、ロール金型14の温度調節機構によって、ロール金型14に巻回される透光性基材12の表面に塗布された活性エネルギ線硬化性組成物18の温度を、硬化開始点に摂氏20度以上摂氏40度未満の範囲内に保持することができるように構成されている。
硬化開始点とは活性エネルギ線硬化性組成物18が、透光性基材12とロール金型14との間に挟まれた状態で、活性エネルギ線によって硬化する点である。
【0053】
硬化開始点での温度が摂氏20度未満であると、透光性基材12に製品有効幅であらかじめ塗布した活性エネルギー線硬化性組成物18の温度制御する効果がなく、透光性基材12と活性エネルギ線硬化性組成物18との密着性が向上せず、ロール金型14に活性エネルギ線硬化樹脂の硬化物が付着するなどの不具合が生じる。
一方、摂氏40度以上になると、活性エネルギ線硬化性組成物の粘度、密度が低くなり、重合硬化したときの収縮率が大きく、シートの反りが大きくなり好ましくない。
【0054】
しかしながら、本実施態様のプリズムシート製造装置では、硬化時(硬化開始点)に活性エネルギ線硬化性組成物の温度が、摂氏20度以上摂氏40度未満の範囲とされているので、このような問題が生じない。
【0055】
このような本実施態様のプリズムシート製造装置では、ロール金型14に向けて搬送される長尺状の透光性基材12の一方の面に、塗布装置16から活性エネルギ線硬化性組成物18を塗布される。このときの活性エネルギ線硬化性組成物18の温度は、ジャケット32に供給される媒体の温度制御装置、管路28ならびに塗布装置16の温度調節装置の作動を制御し、摂氏40度以上80度未満の温度、好ましくは摂氏40度以上摂氏70度以下の温度、より好ましくは摂氏40度以上摂氏60度以下の温度とされる。
【0056】
さらに、ロール金型14への搬送経路に設けられた加熱装置34によって、透光性基材12に塗布された活性エネルギ線硬化性組成物18は、摂氏40度以上80度未満の温度、好ましくは摂氏40度以上摂氏70度以下の温度、より好ましくは摂氏40度以上摂氏60度以下の温度に維持される。
【0057】
このように、摂氏40度以上80度未満の温度、好ましくは摂氏40度以上摂氏70度以下の温度、より好ましくは摂氏40度以上摂氏60度以下の温度に維持された活性エネルギ線硬化性組成物18が、塗布された透光性基材12は、活性エネルギ線硬化性組成物18がロール金型14の外周面に当接するようにロール金型14に巻回され、活性エネルギ線照射装置26から活性エネルギ線を受け、透光性基材12上の活性エネルギ線硬化性組成物18が硬化させられる。
【0058】
このとき、ロール金型14の外周面のプリズムパターンが活性エネルギ線硬化性組成物18へ転写されるので、透光性基材12の表面に金型外周面のプリズムパターンと相補的な形状のプリズム部4が形成され、透光性基材12は長尺状のプレートシートとなる。
【0059】
ロール金型14は、内部の流路14bを含む温度調節機構14aによって、外周面に巻回される透光性基材12の表面に塗布された活性エネルギ線硬化性組成物18の温度を、硬化開始点に摂氏20度以上摂氏40度未満の範囲内に保持している。
【0060】
本発明の前記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【0061】
上記実施態様のプリズムシート製造装置は、活性エネルギ線硬化性組成物は透光性基材12に塗布される前に所定の温度に加熱されている構成であるが、ジャケット32、管路28ならびに塗布装置16に温度調節機構を設けず、透光性基材12に塗布された後に、活性エネルギ線硬化性組成物が所定の温度に加熱される構成でもよい。
【0062】
また、ジャケット32による温度調整、管路28ならびに塗布装置16における温度調整、加熱装置34による温度調整、ロール金型14の温度調節のいずれか1つ、あるいはこれらのうちの適当な組み合わせによって、活性エネルギ線硬化性組成物18の温度を、ロール金型の外周面における硬化開始点に、摂氏20度以上摂氏40度未満の範囲内に保持する構成でもよい。
【実施例】
【0063】
次に、本発明を実施例により更に詳しく説明する。
[実施例1]
φ200mm、画長600mmの鋼製ロールに表面研磨仕上げを行い、外表面に厚さ200μm、ビッカース硬度200Hvの硬質銅めっきを施し、表面に硬質銅めっきが施されたロール本体に、ピッチ50μm、高さ25μm、頂角90°の断面直角二等辺三角形状のプリズム列を多数並列してなるプリズム部を転写形成するためのプリズム部転写パターンを形成し、プリズム部転写パターン加工部に厚さ3μmの無電解ニッケルめっき処理を施しロール金型を得た。
【0064】
ロール金型は、図3に示されている実施態様のように、内部に温度制御された媒体が流通のための流路が形成されており、この流路に流通させる媒体の温度を適宜設定することで外周面の温度が調節とされている。
【0065】
以上のように得たロール金型に近接するようにゴム硬度80°のNBR製ゴムロール(ニップローラ)を配置した。ロール金型とニップローラとの間にロール金型より若干幅の広い厚さ125μmの東洋紡製ポリエステルフィルム(透光性基材)を、ロール金型に沿って供給し、NBR製ゴムロールに接続した空気圧シリンダー(圧力調整機構)により、NBR製ゴムロールとロール金型との間で東洋紡製ポリエステルフィルムをニップした。
【0066】
この時の空気圧シリンダーの動作圧は0.1Mpaであった。空気圧シリンダーとして、エアチューブ直径32mmのSMC製エアシリンダーを使用した。さらに、ロール金型の下方に紫外線照射装置(活性エネルギ線照射装置)を設置した。紫外線照射装置はランプ発光長70cm、160W/cmの高圧水銀灯を用いた。
【0067】
紫外線硬化性組成物(活性エネルギ線硬化性組成物)を樹脂タンク(タンク)に投入した。樹脂タンクは、紫外線硬化性組成物に接する部分は全てステンレススチール(SUS304)製とした。また、紫外線硬化性組成物の液温度を制御するためのジャケットを有しており、
【0068】
ヒータにより摂氏25度に調節された水をジャケットに供給し、樹脂タンク内の紫外線硬化性組成物の液温を摂氏25度に保持した。さらに、真空ポンプにより樹脂タンク内を真空状態にすることにより、投入時に発生した泡を脱泡除去した。
【0069】
紫外線硬化性組成物は未満の通りで、粘度は150mPa・S/摂氏40度
フェノキシエチルアクリレート 50重量部
(大阪有機化学工業社性ビスコート#192)
ビスフェノールA−ジエポキシ−アクリレート 50重量部
(共栄社油脂化学工業社製エポキシエステル3000A)
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン
(チバガイキ−社製ダロキュア1173) 1.5重量部
に調整した。
【0070】
樹脂タンク内を常圧に戻し、タクミナ製ギヤポンプにより、摂氏25度に温度制御された紫外線硬化性組成物を由利ロール製Tダイから東洋紡製ポリエステルフィルム(透光性基材)に製品有効幅560mmに塗布した。塗布された紫外線硬化性組成物の温度は摂氏25度であった。次に、竹綱製作所製熱風発生装置(加熱装置)により、摂氏40度の熱風を東洋紡製ポリエステルフィルム上の紫外線硬化性組成物に吹き付けて紫外線硬化性組成物を摂氏40度に温度制御した。
【0071】
次に、ロール金型の流通路に摂氏25度の温調制御された水を70リットル/分の流量で流通させることで、紫外線硬化性組成物が東洋紡製ポリエステルフィルムとロール金型との間に挟まれた状態で、硬化開始点のロール金型の外周面の温度を摂氏25度に制御した。
【0072】
三菱電機製ACサーボ200W(減速比1/100)で毎分8mの周速で矢印方向にロール金型を回転させながら、紫外線硬化性組成物が東洋紡製ポリエステルフィルムとロール金型との間に挟まれた状態にあるうちに、紫外線照射装置から紫外線を照射し、紫外線硬化性組成物を重合・硬化させロール金型のプリズム部転写パターンを転写させた。その後、ロール金型より離型し、長尺プリズムシート(レンズシート)を得た。
【0073】
<特性の評価方法>
得られた実施例1のプリズムシートを未満の方法で評価を行った。
(1) 初期密着性
製造直後のプリズムシートを用いて、碁盤目法(JIS K5400)に従った、次の基準で評価した(○以上で実用性有り)
○:6点以上
×:6点未満
(2) 反り
縦188mm、横250mmに切断したプリズムシートを、プリズム面を上側にして平らなステージの上に置き、ステージ面から四隅の垂直距離を測定し、平均値で評価する。
平均値が0.5mm未満を反り良好、0.5より大きいものを反り不良とした。
【0074】
<特性の評価結果>
表1に結果を示す。
【0075】
[実施例2]
摂氏45度に温度制御された紫外線硬化性組成物を由利ロール製Tダイから東洋紡製ポリエステルフィルム(透光性基材)に塗布し、竹綱製作所製熱風発生装置(加熱装置)により、摂氏60度の熱風を東洋紡製ポリエステルフィルム上の紫外線硬化性組成物に吹き付けて紫外線硬化性組成物を摂氏60度に温度制御し、紫外線硬化性組成物の硬化開始点の温度を摂氏35度に制御したこと以外は、実施例1と同様にして長尺プリズムシートを得た。
実施例1と同様に特性を評価した。この結果を表1に示す。
【0076】
[比較例1]
摂氏25度に温度制御された紫外線硬化性組成物を由利ロール製Tダイから東洋紡製ポリエステルフィルム(透光性基材)に塗布し、竹綱製作所製熱風発生装置(加熱装置)により、摂氏35度の熱風を東洋紡製ポリエステルフィルム上の紫外線硬化性組成物に吹き付けて紫外線硬化性組成物を摂氏35度に温度制御し、紫外線硬化性組成物の硬化開始点の温度を摂氏25度に制御したこと以外は、実施例1と同様にして長尺プリズムシートを得た。
実施例1と同様に特性を評価した。この結果を表1に示す。
【0077】
[比較例2]
摂氏50度に温度制御された紫外線硬化性組成物を由利ロール製Tダイから東洋紡製ポリエステルフィルム(透光性基材)に塗布し、竹綱製作所製熱風発生装置(加熱装置)により、摂氏60度の熱風を東洋紡製ポリエステルフィルム上の紫外線硬化性組成物に吹き付けて紫外線硬化性組成物を摂氏60度に温度制御し、紫外線硬化性組成物の硬化開始時点の温度を摂氏45度に制御したこと以外は、実施例1と同様にして長尺プリズムシートを得た。
実施例1と同様に特性を評価した。この結果を表1に示す。
【0078】
[比較例3]
摂氏25度に温度制御された紫外線硬化性組成物を由利ロール製Tダイから東洋紡製ポリエステルフィルム(透光性基材)に塗布し、紫外線硬化性組成物の硬化開始時点の温度を摂氏45度に制御したこと以外は、実施例1と同様にして長尺プリズムシートを得た。
実施例1と同様に特性を評価した。この結果を表1に示す。
【0079】

【0080】
表1から明らかな通り、本発明の範囲内にある実施例のプリズムシートは、初期密着性に優れるとともに、反りに関して良好なものであった。これに対して、比較例1のプリズムシートの反りに関しては良好なものの、初期密着性は劣った。また、比較例2のプリズムシートの初期密着性は優れるものの、反りに関しては劣っていた。さらに、比較例3のプリズムシートは初期密着性、反りともに劣った。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の好ましい実施態様のレンズシート製造方法によって製造されるレンズシート(プリズムシート)の構成を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の好ましい態様のレンズシート製造方法を実施するプリズムシート製造装置の概略構成を示す図面である。
【図3】図2のプリズムシート製造装置で使用するロール金型の長手方向軸線に沿った断面図である。
【図4】図3のロール金型の変形例の長手方向軸線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1:プリズムシート
2:透光性基材
4:レンズ部
6:緩和層
10:プリズムシート製造装置
12:長尺状透光性基材
14:ロール金型
16:塗布装置
18:活性エネルギ線硬化性組成物
20:ニップローラ
26:活性エネルギ線照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面にレンズ部転写パターンが形成されたロール金型の外周面と、透光性基材の間に活性エネルギ線硬化性組成物を配置し、前記透光性基材を通して前記活性エネルギ線硬化性組成物に活性エネルギ線を照射して前記活性エネルギ線硬化性組成物を硬化させ前記レンズ部転写パターンと相補的な形状を有するレンズ部を前記透光性基材の表面に活性エネルギ線硬化樹脂によって形成するレンズシート製造方法であって、
前記活性エネルギ線硬化性組成物が、前記硬化前に摂氏40度以上摂氏80度未満の温度範囲とされ、前記硬化時に、摂氏20度以上摂氏40度未満の範囲とされている、
ことを特徴とするレンズシート製造方法。
【請求項2】
前記活性エネルギ線硬化性組成物は、前記透光性基材の一方の面に塗布されることにより供給され、
前記活性エネルギ線硬化性組成物の供給時の温度が、摂氏40度以上摂氏80度未満の範囲である、
請求項1に記載のレンズシート製造方法。
【請求項3】
活性エネルギ線硬化性組成物が、前記ロール金型の外周面の温度を調節することによって、前記硬化時に、前記摂氏20度以上摂氏40度未満の温度範囲に制御される、
請求項1または2に記載のレンズシート製造方法。
【請求項4】
前記ロール金型の内部に媒体を流すことによって、前記ロール金型の外周面の温度を調節される、
請求項3に記載のレンズシート製造方法。
【請求項5】
前記活性エネルギ線硬化性組成物は、前記透光性基材の一方の面に塗布されることにより供給され、
前記透光性基材に塗布された後、摂氏40度以上摂氏80度未満の範囲に加熱される、
請求項1に記載のレンズシート製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−292060(P2009−292060A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148338(P2008−148338)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】