説明

レーザーファイバーの誘導カテーテル

【課題】レーザーファイバーのレーザー照射部分を確実に患部に固定でき光感受性物質PFを活性化して目的の狭窄部の治療を確実に行うことができるレーザーファイバーの誘導カテーテルを提供すること。
【解決手段】外側チューブ54の後端に、レーザーファイバーLFの挿入口47を形成し、前記バルーン52の外周に光感受性物質PFを固定し、位置決め用のマーカー48を、(A)前記バルーン52中央の前記内側チューブ55の外周に一箇所設けるか、または(B)前記バルーン52中央から等間隔にバルーン52両側の内側チューブ55の外周に二箇所設け、前記レーザーファイバーLFのストッパー43を、前記レーザーファイバーLFの先端がバルーン52の中央で止まるように、前記バルーン52中央の前記内側チューブ55内に設けたレーザーファイバーの誘導カテーテル41。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えばPTCA(経皮的血管形成術)後のPDT(Photodynamic Therapy)等に好適に使用されるレーザーファイバーの誘導カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
PTCA(経皮的血管形成術)が開始されてから20年が経過したが血管の再狭窄という現象が最大の課題となっている。PTCA後の血管の再狭窄の原因はリモデリングや平滑筋細胞を主とする新生内膜増殖が考えられる。リモデリングに対しては再PTCAやステント留置が有効な治療法として確立されているがステント留置後の再狭窄予防法としては選択的に新生内膜増殖細胞(中膜細胞)のみを死滅させれば良いことがわかっている。
【0003】
従来血管の再狭窄の治療法として次の放射線治療法が報告されている。
(1)γ線による冠動脈内放射線治療法γ線源の192Irワイヤーを血管の狭窄部に挿入固定して20から25Gyの放射線照射を行う方法。
(2)β線による冠動脈内放射線治療法
(A)β線源の90Y(90Sr/Y)ワイヤーを血管の狭窄部に挿入固定して4Gyの放射線照射を行う方法。
(B)β線源の30PをPSステントに付着させPSステントを血管の狭窄部に挿入固定して放射線照射を行う方法。
(C)β線源の188Reを含む液体をPTCAバルーンに注入し、バルーンを血管の狭窄部に挿入固定して放射線照射を行う方法。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第97/43966号(特表2001−525687号公報、第10から第15頁、図1)
【特許文献2】特表平6−510450号公報(第10頁から第11頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする問題点は、前記の放射線治療方法では、
(a)放射線治療後も血管の再狭窄が起こりPTCA後の再狭窄予防としては十分に満足がゆくものではない。
(b)またγ線では患者の他の臓器や医療スタッフの被曝が起きやすい。
(c)さらにγ、β線の双方とも至適線量の問題が未解決である。
等の点である。そこで本発明者らは以上の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果次の発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明は、シャフト(42)は、内側チューブ(55)と外側チューブ(54)とを有し、
前記外側チューブ(54)の先端にバルーン(52)を配置し、
前記内側チューブ(55)を前記外側チューブ(54)の後方から前記バルーン(52)の内部を経て前記バルーン(52)の先端に至るまで配置し、
少なくとも前記内側チューブ(55)の内部にレーザーファイバー(LF)を挿入可能なルーメン(45)を有し、
前記外側チューブ(54)の後端に、レーザーファイバー(LF)の挿入口(47)を形成し、
前記バルーン(52)の外周に光感受性物質(PF)を固定し、
位置決め用のマーカー(48)を、
(A)前記バルーン(52)中央の前記内側チューブ(55)の外周に一箇所設けるか、または
(B)前記バルーン(52)中央から等間隔にバルーン(52)両側の内側チューブ(55)の外周に二箇所設け、
前記レーザーファイバー(LF)のストッパー(43)を、前記レーザーファイバー(LF)の先端がバルーン(52)の中央で止まるように、前記バルーン(52)中央の前記内側チューブ(55)内に設けた、レーザーファイバーの誘導カテーテル(41)を提供する。
【発明の効果】
【0007】
レーザーファイバーLFのレーザー照射部分を確実に患部に固定でき光感受性物質PFを活性化して目的の狭窄部の治療を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】参考例のレーザーファイバーの誘導カテーテル1を示す概略図
【図2】その他の参考例のレーザーファイバーの誘導カテーテルを示すカテーテル21の概略図
【図3】本発明のレーザーファイバーの誘導カテーテル41の実施例を示す概略図
【図4】図3のバルーン52付近の拡大図
【図5】図4のA−A断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は参考例のレーザーファイバーの誘導カテーテル(以下、「カテーテル」)の一例を示すカテーテル1の概略図である。カテーテル1は少なくとも内部にレーザーファイバーLFを挿入可能なルーメン4を有するシャフト2より構成され、シャフト2はレーザーの透過可能な材質より形成される。シャフト2前方の内部にはレーザーファイバーLFのストッパー3が形成され、シャフト2の先端近傍の外部には位置決め用のマーカー8が形成されている。シャフト2の内部は前記ストッパー3によりレーザーファイバーのルーメン4とガイドワイヤーのルーメン5により区画され、ストッパー3近傍のシャフト2の側壁にガイドワイヤーGWの挿入口6と洗浄液や造影剤の導出入を行う側孔9が形成されている。またシャフト2の後端には少なくともレーザーファイバーの挿入口7(必要に応じて洗浄液、造影剤等の液体の導出入口11)を形成したコネクタ10が装着されている。造影剤等は導出入口11からシャフト2のルーメン4に挿入されるレーザーファイバーLFの外周とシャフト2の内壁面の間に形成されるスペースSの間を経て側孔9より導出入される。
【0010】
図2は参考例のレーザーファイバーの誘導カテーテル(以下、「カテーテル」)のその他の例を示すカテーテル21の概略図である。カテーテル21は二つのマーカー28a、28bをシャフト22の先端近傍と前方の外部に形成し、レーザーファイバーLFの先端がマーカー28aとマーカー28bの中間Cで停止することができるようにマーカー28aとマーカー28bの中間位置Cにストッパー23の後端を配置したものである。このためレーザーファイバーLFの位置決めが容易となる。その他のレーザーファイバーの誘導カテーテル21の構成部材はカテーテル1の構成と実質的に同一であるから詳細な説明は省略する。
【0011】
次にカテーテル1の使用方法の一例について説明する。例えばセルジンガー法により大腿動脈を確保し、薬剤投与カテーテルを用いて光感受性物質PFを血管の目的の狭窄部に投与する。ガイドワイヤーGWによりガイディングカテーテルを前記狭窄部付近まで挿入する。続いてガイディングカテーテルのルーメン内にカテーテル1を挿入し、X線で透視しながらマーカー8が目的の狭窄部付近に位置するように位置決めを行う。レーザーファイバーLFをルーメン4内にその先端がストッパー3に突きあたるまで挿入する。レーザーをレーザーファイバーLFの先端から照射して光感受性物質PFを活性化させて目的とする細胞を死滅させる。カテーテル21もカテーテル1と同様に使用されるが、カテーテル21では前記のように二つのマーカー28a、28bを形成することによりレーザーファイバーLFの先端が目的の狭窄部に確実に位置するように位置決めできるので、レーザーの照射を確実に効率良く行うことができる。
【0012】
図3は本発明のレーザーファイバーの誘導カテーテル41(以下、「カテーテル41」)の実施例を示す概略図(図4は図3のバルーン52付近の拡大図で、図5は図4のA−A断面図)である。カテーテル41はシャフト42の外側チューブ54の先端にバルーン52を配置し、シャフト42の内側チューブ55を外側チューブ54の後方からバルーン52の内部を経てバルーン52の先端に至るまで配置し、外側チューブ54の後端にガイドワイヤーGW及びレーザーファイバーLFの挿入口47とバルーン拡張用流体の導入口58を有するコネクタ50を配置することにより構成される。前記挿入口47は内側チューブ55の内部(ガイドワイヤーGWとレーザーファイバーLFのルーメン45)を経て内側チューブ55の先端開口部59と連通し、導入口58はコネクタ50と外側チューブ54の内部、先端開口部60を経てバルーン52の内部と連通している。
本発明で光感受性物質PFとはレーザーの照射により活性化し、目的とする細胞を死滅させる物質であり、例えばフォトフリン等が使用される。また光感受性物質PFのバルーン52の外周への固定は例えばゲル化して行うことができる。また光感受性物質PFの投与は、バルーン52の外周以外に例えば局所注入カテーテルにより局所投与しても良いしまたは静注により投与して病変部に集積させることができる。また位置決め用のマーカー48をバルーン52中央の内側チューブ55の外周に一箇所設けても良いし、または前記バルーン52中央から等間隔にバルーン52両側の内側チューブ55の外周に二箇所設けても良い。またレーザーファイバーLFのストッパー43をレーザーファイバーLFの先端がバルーン52の中央で止まるようにバルーン52中央の内側チューブ55の内周に設けても良い。
次に本発明のカテーテル41の使用方法の一例について説明する。例えばセルジンガー法により大腿動脈を確保し、ガイドワイヤーによりガイディングカテーテルを目的の狭窄部付近まで挿入する。続いてガイディングカテーテルの内腔にカテーテル41を挿通し、バルーン52を狭窄部に位置させて膨張させる。これにより血流を遮断して、光感受性物質PFの局所物理的密着吸収性を高めるとともにレーザー光の透過性を確保することが可能となる。レーザーファイバーをバルーン52の先端まで挿入し、レーザーを照射して光感受性物質PFを活性化させて目的とする細胞を死滅させる。
【0013】
カテーテル1(21)のシャフト2(22)構成材料は、レーザーが透過できる材質であれば何でも使用することができる。またカテーテル41のシャフト42(外側チューブ54、内側チューブ55)とバルーン52はレーザーが透過できかつレーザーがバルーン52の外周または局所投与、静注投与した光感受性物質PFを活性化できる程度の透過性を有する材料であれば何でも使用することができる。レーザーの透過性能は材料の透明性、肉厚等に依存するが、レーザーの種類、出力、照射時間等の諸条件等も考慮して、狭窄部等の治療目的に応じて自由に設定することができる。本発明ではレーザーが透過できる構成材料として例えばポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリアミド、ナイロン系等が使用できる。また本発明のカテーテル1(21)のシャフト2(22)は要するにレーザーファイバーLFの先端がストッパー3(23)に当接される部分が、またカテーテル41のシャフト42(外側チューブ54、内側チューブ55)とバルーン52はレーザーファイバーLFの先端のレーザーの照射部分がレーザーの透過できる材料で形成されておれば良いので、当該部分のみを他の部分(レーザーの透過できない材料でも可)と別パーツにより形成してレーザーの透過できる材料により形成しても良い。また前記マーカー8(28a、28b、48)は例えば金、プラチナ等のX線不透過性のものが使用される。
【実施例】
【0014】
ビーグル犬大腿動脈に対して薬剤投与カテーテルを用い光感受性物質PFとしてフォトフリン5mgを血管内投与した。ヒト冠動脈にも挿入可能なシャフト2の外径が4Fr.のカテーテルをシャフトの外径が7Fr.のガイディングカテーテルに通じフォトフリン投与部位まで挿入した。シリカ製のレーザーファイバーLFをガイドワイヤー1の先端の透明部分まですすめYag−OPOレーザーを2mj/pulse(50Hz)、20分間もしくは10分間照射しPDTを施行した。動脈造影をPDT施行前、直後及び一週間後に施行した後、同部位を組織学的に検討した。照射中のレーザーファイバーLF先端温度は37度であった。なお、フォトフリン投与部位の新鮮凍結切片を蛍光顕微鏡で観察し、同物質の集積性を確認した。
【0015】
蛍光顕微鏡で血管中膜にフォトフリンの赤い蛍光を認め、薬液投与カテーテルによるフォトフリン投与の有効性が示された。動脈造影では全経過を通じてPDTを施行した血管に異常は見られなかった。PDT部位の組織所見では、全例で中膜細胞は壊死・消滅しており、PDT非施行部位に比し優位に中膜細胞画数は減少していた。20分照射では一部中膜の内膜側が脱落消失していたが、10分照射では同所見は見られなかった。PDTにより中膜細胞を選択的に壊死させることが可能で、本法の再狭窄予防に対する有効性が示唆された。
【符号の説明】
【0016】
1、21、41 レーザーファイバーの誘導カテーテル(カテーテル)
2、22、42 シャフト
3、23 (レーサーファイバーの)ストッパー
4、24 (レーサーファイバーの)ルーメン
5、25 (ガイドワイヤーの)ルーメン
6、26 (ガイドワイヤーの)挿入口
7、27 (レーザーファイバーの)挿入口
8、28(28a、28b) マーカー
LF レーザーファイバー
GW ガイドワイヤー
9、29 側孔
10、30、50 コネクタ
11 (洗浄液、造影剤等の液体の)導出入口
PF 光感受性物質
43 ストッパー
45 (ガイドワイヤーとレーザーファイバーの)ルーメン
47 (ガイドワイヤーとレーザーファイバーの)挿入口
48 マーカー
52 バルーン
54 外側チューブ
55 内側チューブ
58 (バルーン拡張用流体の)導入口
59 (内側チューブの)先端開口部
60 (外側チューブの)先端開口部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト(42)は、内側チューブ(55)と外側チューブ(54)とを有し、
前記外側チューブ(54)の先端にバルーン(52)を配置し、
前記内側チューブ(55)を前記外側チューブ(54)の後方から前記バルーン(52)の内部を経て前記バルーン(52)の先端に至るまで配置し、
少なくとも前記内側チューブ(55)の内部にレーザーファイバー(LF)を挿入可能なルーメン(45)を有し、
前記外側チューブ(54)の後端に、レーザーファイバー(LF)の挿入口(47)を形成し、
前記バルーン(52)の外周に光感受性物質(PF)を固定し、
位置決め用のマーカー(48)を、
(A)前記バルーン(52)中央の前記内側チューブ(55)の外周に一箇所設けるか、または
(B)前記バルーン(52)中央から等間隔にバルーン(52)両側の内側チューブ(55)の外周に二箇所設け、
前記レーザーファイバー(LF)のストッパー(43)を、前記レーザーファイバー(LF)の先端がバルーン(52)の中央で止まるように、前記バルーン(52)中央の前記内側チューブ(55)内に設けた、
ことを特徴とするレーザーファイバーの誘導カテーテル(41)。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−160446(P2009−160446A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102963(P2009−102963)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【分割の表示】特願平11−316185の分割
【原出願日】平成11年11月8日(1999.11.8)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【Fターム(参考)】