説明

レーザ光成形装置とそれを用いた治療装置

【解決手段】 レーザ光Lを成形する成形手段6は、入射側カライドスコープ7と出射側カライドスコープ8とを軸心を一致させて一直線上に連結して構成されている。
両カライドスコープ7,8の内面7B、8Bの断面形状は正方形となっており、入射側カライドスコープ7の内面7Bよりも出射側カライドスコープ8の内面8Bの寸法を大きくしている。両カライドスコープ7、8は、軸心を回転中心として、両カライドスコープ7、8の鏡面7C、8Cが相互に45度ねじれた位置となるように連結されている。
【効果】 断面が円に近い形状であって、かつ断面方向における強度分布も均一なレーザ光Lを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ光成形装置とそれを用いた治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からレーザ光を利用して患者の皮膚に生じたあざの治療が行われており、そのためのレーザ光成形装置として例えば特許文献1が知られている。
上記特許文献1に開示された装置においては、断面が方形をした筒状のカライドスコープにレーザ光を導入し、その内壁面によってレーザ光を多重反射させることにより、レーザ光の断面方向における強度分布を均一化させるようにしている。
【特許文献1】特許第3285957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した従来の装置のように、断面が方形のカライドスコープを用いると強度分布が均一化されるけれどもレーザ光の断面が方形となる。そのため、このようなレーザ光成形装置をあざの治療をするための治療装置として用いると、あざの治療痕がレーザ光の断面形状に倣って方形となるため、外観上好ましくないという欠点があった。
このような欠点を解消するためには、断面形状が円形のレーザ光が得られるように、内面の断面形状が円形のカライドスコープを用いてレーザ光の強度分布を均一化すればよい。しかしながら、断面形状が円形となるカライドスコープを鏡面仕上げすることは、現在の技術では実質的に困難である。また、断面が円に近い多角形ではカライドスコープの製造コストが高くなるという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した事情に鑑み、本発明は、筒状に形成されるとともに断面が方形となる内面を鏡面として形成した成形手段を備えて、レーザ光を上記成形手段の内部に入射させて上記内面によって多重反射させることにより、レーザ光の断面形状を成形するとともにレーザ光の断面方向における強度分布を均一化するようにしたレーザ光成形装置において、
上記成形手段は、内面の断面形状を方形としてレーザ光が入射される入射側カライドスコープと、内面の断面形状を方形とし、かつ上記入射側カライドスコープよりも大きな内面を有する出射側カライドスコープとを備え、
上記両カライドスコープの軸心を一致させて、両カライドスコープを一直線上に配置するとともに、上記両カライドスコープの軸心を回転中心として両カライドスコープの鏡面が相互にねじれた位置となるように両カライドスコープを位置させたものである。
【発明の効果】
【0005】
このような構成によれば、内面の断面形状が方形である複数のカライドスコープを組み合わせることにより、断面方向における強度分布が均一であって、しかも断面が円に近い形状のレーザ光を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下図示実施例について本発明を説明すると、図1及び図2において、レーザ治療装置1は、レーザ光LをQスイッチパルス発振するレーザ発振器2と、このレーザ発振器2から発振されたレーザ光Lの断面形状を成形するレーザ光成形装置3とを備えている。
レーザ光成形装置3は、レーザ発振器2からレーザ光Lが発振される側に配置された入射レンズ4と、入射レンズ4の隣接位置に水平に配置されて入射レンズ4を介して入射口6Aから入射したレーザ光Lを成形する成形手段6と、この成形手段6におけるレーザ光Lの出射口6Bの隣接位置に配置される出射レンズ5とから構成されている。なお、上記成形手段6と入射レンズ4、出射レンズ5は筒状のハンドピース10内に所定間隔を維持して保持されている。
【0007】
しかして、本実施例は、成形手段6を以下のように構成することで、断面が円形に近い形であって、かつ断面方向において強度分布が均一なレーザ光Lが得られるようにしたものである。
すなわち、図2ないし図3に示すように、成形手段6は、入射レンズ4側に配置した筒状の入射側カライドスコープ7と、出射レンズ5側に配置した筒状の出射側カライドスコープ8とから構成されており、これら両カライドスコープ7、8の軸心を一致させて一直線上に配置している。
図3ないし図4に示すように、上記両カライドスコープ7、8の外面は同じ外径で断面が円形となっている。これに対して、両カライドスコープ7,8の内面7B、8Bは、断面が正方形となっており、出射側カライドスコープ8の内面8Bの寸法は、レーザ光Lの損失をなくすために入射側カライドスコープ7の内面7Bを囲繞できる程度の大きな寸法に設定されている。
【0008】
入射側カライドスコープ7における一端に環状突出部7Aを形成し、他方、出射側カライドスコープ8における他端の内周面に係合凹部8Aを形成している。そして、上記環状突出部7Aを係合凹部8Aに嵌合させると同時に両カライドスコープ7、8の対向する端面を相互に当接させている。これにより、軸心が一致するように両カライドスコープ7、8を一直線上で接続している。両カライドスコープ7,8を上述したように接続したことで、それらの内面7B、8Bからなる内部空間が一直線上で連続した状態となっている。本実施例では、各カライドスコープの内面7B、8Bの長さを45mmとし、両カライドスコープ7,8を合わせた成形手段6の全長は約90mmに設定している。
また、上記入射側カライドスコープ7の環状突出部7Aの周面には、45°の間隔で凹部が2箇所設けられ、出射側カライドスコープ8の係合凹部8Aにはボールプランジャ12が組込まれており、ボールプランジャ12のボールが環状突出部7Aの一方の凹部に係合して、両カライドスコープ7、8を接続している。両カライドスコープ7、8はそれらの軸心を回転中心として、相対回転することにより各カライドスコープ7,8の内面が平行となる位置と、直交する位置とに保持できるようになっている。
入射側カライドスコープ7の内面7Bは、同一寸法で平坦な四面の鏡面7Cから構成されており、出射側カライドスコープ8の内面8Bも同一寸法の平坦な四面の鏡面8Cから構成されている。各鏡面7C、8Cは平坦なアルミニウムの表面を研磨することで形成されている。
【0009】
そして、本実施例では、両カライドスコープ7、8の軸心を中心として、入射側カライドスコープ7の鏡面7Cに対して、出射側カライドスコープ8の鏡面8Cが相互に45度ねじれた位置となるように、両カライドスコープ7,8を位置させている(図4参照)。
本実施例では、入射側カライドスコープ7の鏡面7Cの幅(図4の内面7Bの一辺の長さ)は4mmに設定してあり、また、出射側カライドスコープ8の鏡面8Cの幅(図4の内面8Bの一辺の長さ)は入射側カライドスコープ7の内面7B断面の対角線の長さにほぼ等しい5.7mmに設定している。
上述したように、本実施例においては、図4に示すように出射口6B側から見た時に、入射側カライドスコープ7の鏡面7Cに対して出射側カライドスコープ8の鏡面8Cが45度の角度を成すようなねじれた位置となるように両カライドスコープ7,8の相対位置を設定してあり、しかも入射側カライドスコープ7の内面7Bが出射側カライドスコープ8により隠れることがないようにしている。
上記入射側カライドスコープ7の内面7Bの自由端側の開口が上記入射口6Aとなっており、出射カライドスコープ8の内面8Bの自由端側の開口が上記出射口6Bとなっている。
また、上記成形手段6を構成する両カライドスコープ7、8の軸心と上述した両レンズ4、5の軸心は一致させている。本実施例のレーザ光成形装置3は以上のように構成されている。
【0010】
以上の構成において、上記レーザ治療装置1によって患者のあざを治療する場合には、図1ないし図2に示すように、治療すべき患者の皮膚11の患部に合わせて上記ハンドピース10を出射レンズ5と患部の間隔を所定距離に維持するようにして移動させる。
この状態においてレーザ発振器2からレーザ光Lが発振されると、該レーザ光Lは入射レンズ4によって集光されてから入射口6Aを介して入射側カライドスコープ7内に導入される。
すると、レーザ光Lは入射側カライドスコープ7の内面7Bを構成する4つの鏡面7Cによって多重反射されながら該入射側カライドスコープ7内を通過した後に出射側カライドスコープ8内に導入される。次に、レーザ光Lは出射側カライドスコープ8の内面8Bを構成する4つの鏡面8Cによって多重反射されてから出射口6Bを介して出射側カライドスコープ8の外部へ出射され、出射レンズ5によって集光されてから患者の皮膚11に照射結像されるようになっている。これにより、患者の皮膚11に生じたあざに対してレーザ治療が施されるようになっている。
【0011】
以上のように、本実施例においては、先ず入射側カライドスコープ7の鏡面7Cによってレーザ光Lを多重反射させ、次に、入射側カライドスコープ7の鏡面7Cに対して45度ねじれた配置状態である出射側カライドスコープ8の鏡面8Cによってレーザ光Lを多重反射させている。そのため、入射側カライドスコープ7でレーザ光Lの断面形状が円から正方形に成形され、出射側カライドスコープ8により正方形の辺部が拡張するように成形されることで出射口6Bから出射されるレーザ光の断面形状は円に近い形となり、かつ断面方向の略全域におけるレーザ光Lの強度分布は均一なものとなる。
【0012】
さらに、本願の発明者が研究したところ、レーザ光Lの断面方向における均一な強度分布が得られて、かつ断面が丸に近い形状のレーザ光Lを得るために好適な成形手段6の形状と入射レンズ4の焦点距離との関係が判明した。
すなわち、図5に示すように、光学手段である入射レンズ4の焦点距離をfとし、入射口6Aとなる入射側カライドスコープ7の鏡面7Cの幅(図4の内面7Bの一辺の寸法)をDとし、さらに両カライドスコープ7,8からなる成形手段6の全長をL1としたときに、それらの寸法の関係を示す比率を下記の範囲とするのが好ましい。
1.5≦f*D/L1≦3.3
【0013】
このような本実施例のレーザ治療装置1によれば、患者の皮膚11のあざを治療するために、患者の皮膚11へレーザ光Lを照射した際に、該レーザ光Lの断面は円に近い形となっており、しかも断面方向におけるレーザ光Lの強度分布もほぼ均一となっている。
したがって、患者の皮膚11のあざに対して満遍なく効率的にレーザ治療を施すことが可能であり、しかも、レーザ光Lの断面形状は丸に近い形であるため、治療後における治療痕がほぼ円に近いものとなり、外観も良好なものとなる。
そして、本実施例の成形手段6は、両カライドスコープ7,8として従来公知の安価なものを用いることができる。したがって、本実施例によれば、安価な製造コストによって断面が円に近い形であって、しかも断面方向における強度分布が均一なレーザ光Lを得ることができる。
なお、必要に応じて両カライドスコープ7、8の内面7B、8B(鏡面7C、8C)が相互に平行となるように両カライドスコープ7、8のねじれた位置を調整することにより、断面が方形をしたレーザ光Lを得ることも可能である。
【0014】
次に図6ないし図7は本発明の第2実施例としての成形手段6を示したものである。上述した第1の実施例においては、両カライドスコープ7,8を直列に接続して成形手段6を構成していたが、この第2実施例においては、内面の大きさが順次大きくなる3本のカライドスコープを一直線上に配置して成形手段6を構成したものである。
すなわち、入射レンズ4の隣接位置に入射側カライドスコープ7を配置し、その入射側カライドスコープ7に中間カライドスコープ9の一端を接続し、さらにこの中間カライドスコープ9の他端に出射側カライドスコープ8の一端を連結している。
【0015】
図7に示すように、各カライドスコープ7〜9の内面7B〜9Bは全て断面正方形にしてあるが、中間カライドスコープ9の内面9Bは、入射側カライドスコープ7の内面7Bよりも少し大きく設定してあり、また出射側カライドスコープ8の内面8Bは中間カライドスコープ9の内面9Bよりも大きく設定している。
各カライドスコープ7〜9の軸心は一致させてあり、各カライドスコープ7〜9における内部空間は一直線に連続した状態となっている。
入射側カライドスコープ7の鏡面7Cに対して中間カライドスコープ9の鏡面9Cが約30度ねじれた位置となるように、両カライドスコープ7、9を接続している。また、中間カライドスコープ9の鏡面9Cに対して出射側カライドスコープ8の鏡面8Cが約30度ねじれた位置となるように両カライドスコープ8,9を接続している。
このような構成とした第2実施例のレーザ光成形装置3の成形手段6によっても、断面が円に近い形であって、しかも断面方向における強度分布が均一なレーザ光Lを得ることができる。また、各カライドスコープ7〜9そのものは、断面が正方形の内面7B〜9Bを備えた安価なものであるので、全体としてのレーザ光成形装置3の製造コストも比較的安価なものとなる。
【0016】
なお、本発明のレーザ光成形装置3はあざの治療だけでなく、皮膚のしわを除去する場合や医療以外の用途にも使用することができ、レーザ発振器としてはQスイッチパルス発振に限らず、パルス発振やCW発振するものも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示す概略の構成図。
【図2】図1の要部の拡大図。
【図3】図2の要部の断面図。
【図4】図3の矢印IVに沿う成形手段6の側面図。
【図5】図1に示した実施例の入射レンズ4と成形手段6との関係を示す図。
【図6】本発明の第2実施例としての成形手段6を示す概略の斜視図。
【図7】図6の矢印VIIに沿う側面図。
【符号の説明】
【0018】
1…レーザ治療装置 2…レーザ発振器
3…レーザ光成形装置 6…成形手段
7…入射側カライドスコープ 7B…内面
7C…鏡面 8…出射側カライドスコープ
8B…内面 8C…鏡面
L…レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成されるとともに断面が方形となる内面を鏡面として形成した成形手段を備えて、レーザ光を上記成形手段の内部に入射させて上記内面によって多重反射させることにより、レーザ光の断面形状を成形するとともにレーザ光の断面方向における強度分布を均一化するようにしたレーザ光成形装置において、
上記成形手段は、内面の断面形状を方形としてレーザ光が入射される入射側カライドスコープと、内面の断面形状を方形とし、かつ上記入射側カライドスコープよりも大きな内面を有する出射側カライドスコープとを備え、
上記両カライドスコープの軸心を一致させて、両カライドスコープを一直線上に配置するとともに、上記両カライドスコープの軸心を回転中心として両カライドスコープの鏡面が相互にねじれた位置となるように両カライドスコープを位置させたことを特徴とするレーザ光成形装置。
【請求項2】
上記両カライドスコープの鏡面が相互に45度ねじれた位置に両カライドスコープを位置させたことを特徴とする請求項1に記載のレーザ光成形装置。
【請求項3】
上記両カライドスコープは、それらの内面の断面が正方形となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザ光成形装置。
【請求項4】
上記入射側カライドスコープヘレーザ光を入射させる光学手段を設け、上記光学手段の焦点距離をfとし、入射側カライドスコープの内面における鏡面の幅をDとし、上記両カライドスコープからなる成形手段の全長をL1としたときに、上記f、D、L1の寸法の関係を下記の範囲に設定したことを特徴とする請求項3に記載のレーザ光成形装置。
5≦f*D/L1≦3.3
【請求項5】
上記成形手段から出射されるレーザ光を患者の皮膚に照射して所要の治療を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに1つに記載のレーザ光成形装置を用いた治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−296892(P2006−296892A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−125783(P2005−125783)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】