説明

レーザ加工状態検査装置、レーザ加工装置及びソーラパネル製造方法

【課題】レーザ加工後のワークの加工状態を絶縁抵抗などの電気的特性に基づいて容易かつ安価に検査できるようにする。
【解決手段】プレート部材の両端にプラグ挿入部材を設け、この2個のプラグ挿入部材を回転軸として自在に回転する円板状接触子部材を設け、この円板状接触子部材をスクライブ線の両側の薄膜に接触させながらその接触位置を回転移動させるようにした。これによって、スクライブ線の両側の薄膜間の抵抗を容易に測定することができる。また、ワーク上に複数のスクライブ線が形成された場合でも、円板状接触子部材を回転移動することによって、複数のスクライブ線の抵抗を容易に測定することができる。プレート部材の長さをそのピッチ幅に応じて種々交換する。ワークの両面にレーザ加工状態検査装置を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を用いて加工された薄膜等の加工状態を検査するレーザ加工状態検査装置、レーザ加工装置及びソーラパネル製造方法に係り、特にレーザ加工が適切に行われたか否かの検査を加工箇所の電気特性を測定することによって行うレーザ加工状態検査装置、レーザ加工装置及びソーラパネル製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソーラパネルの製造工程では、透光性基板(ガラス基板)上に透明電極層、半導体層、金属層などの薄膜を順次形成し、形成後の各工程で各層をレーザ光で短冊状に加工してソーラパネルモジュールを完成している。レーザ光でスクライブ線を形成する場合、通常は定速度で移動するガラス基板上にレーザ光を照射していた。これによって、深さ及び線幅の安定したスクライブ線を形成することが可能である。このようなソーラパネル(光電変換装置)の製造方法においては、スクライブ線の加工後に別装置で絶縁抵抗を全数チェックしている。ソーラパネルの製造工程で絶縁抵抗などの電気的特性をチェックするものについては、特許文献1に記載のようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−047838公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のものは、各製造工程の各所に専用の検査装置を設置するものである。従って、検査の度に、製造工程の各所でワークを検査装置に接続したり、外したりという作業を繰り返し行わなければならず、検査に手間や時間がかかり問題であった。また、検査装置自体が高価であるため、製造工程の各所に設けることは製造装置全体の高価格化を招いて問題となっていた。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、レーザ加工後のワークの加工状態を絶縁抵抗などの電気的特性に基づいて容易かつ安価に検査することのできるレーザ加工状態検査装置、レーザ加工装置及びソーラパネル製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るレーザ加工状態検査装置の第1の特徴は、ワーク上の薄膜にレーザ光を照射してスクライブ線の加工を施し、その直後に前記スクライブ線の両側の薄膜に電気的接触子を接触させて前記スクライブ線の抵抗値を測定するレーザ加工状態検査装置であって、前記電気的接触子はプラグ挿入部材を回転軸として回転自在に取り付けられている回転ローラ方式の第1及び第2の円板状接触子部材で構成され、前記第1及び第2の円板状接触子部材は絶縁材からなるプレート部材によって保持され、前記スクライブ線の両側の薄膜に接触しながらその接触位置を回転移動するように構成したことにある。
レーザ光によるスクライブ線の加工は、レーザ発生装置から出射されたレーザ光を基板上の薄膜の加工面に略垂直に照射することによって行なわれる。このスクライブ線の加工によって薄膜が切断されたか否かは、スクライブ線の両側の薄膜間の電気抵抗を測定することによって容易に行うことができる。そこで、この発明では、プレート部材の両端にプラグ挿入部材を設け、この2個のプラグ挿入部材を回転軸として自在に回転する円板状接触子部材を設け、この円板状接触子部材をスクライブ線の両側の薄膜に接触させながらその接触位置を回転移動させるようにした。これによって、スクライブ線の両側の薄膜間の抵抗を容易に測定することができる。また、ワーク上に複数のスクライブ線が形成された場合でも、円板状接触子部材を回転移動することによって、複数のスクライブ線の抵抗を容易に測定することができる。
【0007】
本発明に係るレーザ加工状態検査装置の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載のレーザ加工状態検査装置において、前記第1及び第2の円板状接触子部材の回転軸間の距離が前記スクライブ線のピッチ幅に対応した長さとなるような長尺板で前記プレート部材を構成したことにある。スクライブ線のピッチ幅は加工処理に応じて種々変化するので、この発明では、プレート部材の長さをそのピッチ幅に応じて種々交換することによって、容易に対応することができる。
【0008】
本発明に係るレーザ加工状態検査装置の第3の特徴は、前記第1又は第2の特徴に記載のレーザ加工状態検査装置において、前記レーザ加工状態検査装置を前記ワークの両面に配置したことにある。ソーラパネル(光電変換装置)を製造する場合には、薄膜の加工をワークの表面又は裏面で行う場合がある。この発明では、ワークの両面にレーザ加工状態検査装置を配置することによってワークの表面又は裏面のいずれの面が加工されても容易に抵抗を測定することができるようにした。
【0009】
本発明に係るレーザ加工装置の第1の特徴は、ワークを保持する保持手段と、前記ワーク上の薄膜にレーザ光を照射して所定の加工処理を施すレーザ光照射手段と、前記レーザ光照射による加工後に前記スクライブ線の両側の薄膜に電気的接触子を接触させて前記スクライブ線の抵抗値を測定するためのレーザ加工状態検査手段であって、前記電気的接触子はプラグ挿入部材を回転軸として回転自在に取り付けられている回転ローラ方式の第1及び第2の円板状接触子部材で構成され、前記第1及び第2の円板状接触子部材は絶縁材からなるプレート部材によって保持され、前記スクライブ線の両側の薄膜に接触しながらその接触位置を回転移動するように構成されたレーザ加工状態検査手段とを備えたことにある。これは、前記レーザ加工状態検査装置の第1の特徴に記載のものを用いたレーザ加工装置の発明である。
【0010】
本発明に係るレーザ加工装置の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載のレーザ加工装置において、前記第1及び第2の円板状接触子部材の回転軸間の距離が前記スクライブ線のピッチ幅に対応した長さとなるような長尺板で前記プレート部材を構成したことにある。これは、前記レーザ加工状態検査装置の第2の特徴に記載のものを用いたレーザ加工装置の発明である。
【0011】
本発明に係るレーザ加工装置の第3の特徴は、前記第1又は第2の特徴に記載のレーザ加工装置において、前記レーザ加工状態検査手段を前記ワークの両面に配置したことにある。これは、前記レーザ加工状態検査装置の第3の特徴に記載のものを用いたレーザ加工装置の発明である。
【0012】
本発明に係るソーラパネル製造方法の特徴は、前記第1若しくは第2の特徴に記載のレーザ加工状態検査装置又は前記第1若しくは第2の特徴に記載のレーザ加工装置を用いて、ソーラパネルを製造することにある。これは、前記レーザ加工状態検査装置又はレーザ加工装置のいずれか1を用いて、ソーラパネルを製造するようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レーザ加工後のワークの加工状態を絶縁抵抗などの電気的特性に基づいて容易かつ安価に検査することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係るレーザ加工状態検査装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るレーザ加工によってソーラパネルを製造するソーラパネル製造装置(レーザ加工装置)の概略構成を示す図である。
【図3】ガラス基板の上面及び下面の両側にスクライブ加工状態検査装置を設けた場合の一例を示す図である。
【図4】図2の光学系部材50の詳細構成を示す図である。
【図5】第1検出光学系部材及び第2検出光学系部材の構成を示す模式図である。
【図6】図2の制御装置80の処理の詳細を示すブロック図である。
【図7】パルス抜け判定手段82の動作の一例を示す図である。
【図8】図5の高速フォトダイオード94から出力される波形の一例を示す図である。
【図9】図2の光学系部材を下側(基板側)から見た図である。
【図10】光学系部材の回転量とスクライブ線のピッチ幅との関係を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るレーザ加工状態検査装置の概略構成を示す図である。このレーザ加工状態検査装置は、ソーラパネル製造装置のレーザ光加工処理工程の1つであるレーザスクライブ加工工程後にスクライブ線の絶縁抵抗を測定するものであり、ワーク表面の薄膜に直接接触される接触子部分の一例を示すものである。
【0016】
ソーラパネルモジュールを製造する場合、ガラス基板上の薄膜に例えば約10mmピッチでレーザ光でスクライブ線を形成している。スクライブ線の線幅は約30μmで、線と線の間隔は約30μmとなるような3本の線で構成されている。図1のレーザ加工状態検査装置は、このようにして形成されたスクライブ線の深さ及び線幅が安定しているか否かを、その部分の絶縁抵抗を測定することによって簡易に検査するものである。
【0017】
図1のレーザ加工状態検査装置の接触子部分は、導電材からなる円板状接触子部材131,132、絶縁材からなるプレート部材133,134及びプラグの挿入されるプラグ挿入部材135,136から構成される。円板状接触子部材131,132は、導電部材(金属板など)から構成される電気接触子である。円板状接触子部材131,132の外周部がガラス基板上の薄膜に押圧接触される。円板状接触子部材131,132はプラグ挿入部材135,136を回転軸として回転自在に取り付けられている回転ローラ方式である。円板状接触子部材131,132とプラグ挿入部材135,136の導電部との間は電気的に接続される。プラグ挿入部材135,136には、バナナプラグ等のプラグが挿入される。プレート部材133,134は、スクライブ線のピッチ幅に対応した長さの長尺板で構成されている。円板状接触子部材131,132はこのプレート部材133,134を両側から挟むように取り付けられている。スクライブ線のピッチを変更する場合には、このプレート部材133,134の長手方向の長さをピッチに合わせて交換すればよい。また、補助板などを用いてプレート部材133,134の長手方向の長さを可変調整可能な構造としてもよい。
【0018】
図2は、レーザ加工によってソーラパネルを製造するソーラパネル製造装置(レーザ加工装置)の概略構成を示す図である。図2のソーラパネル製造装置は、台座10、スクライブ加工状態検査装置(絶縁抵抗検査装置)13、XYテーブル20、レーザ発生装置40と、光学系部材50、アライメントカメラ装置60、リニアエンコーダ70、制御装置80、第1検出光学系部材、第2検出光学系部材等によって構成されている。台座10上にはX軸方向及びY軸方向(XY平面)に沿って駆動制御されるXYテーブル20が設けられている。
【0019】
XYテーブル20は、X方向及びY方向へ移動制御される。なお、XYテーブル20の駆動手段としては、ボールネジやリニアモータ等が用いられるが、これらの図示は省略してある。XYテーブル20の上側にはレーザ加工の対象となる基板1が保持されている。また、台座10の上には光学系部材を保持しながらY軸方向にスライド駆動されるスライドフレーム30が設けられている。XYテーブル20は、Z軸を回転軸としてθ方向に回転可能に構成されている。なお、スライドフレーム30によりY軸方向の移動量が十分に確保できる場合には、XYテーブル20は、X軸方向の移動だけを行なう構成であってもよい。この場合、XYテーブル20はX軸テーブルの構成でもよい。
【0020】
スクライブ加工状態検査装置(絶縁抵抗検査装置)13は、図1のレーザ加工状態検査装置が適用され、図1のソーラパネル製造装置では、ガラス基板1の上側の薄膜に対してスクライブ加工されたスクライブ線の加工状態、すなわちスクライブ線の抵抗を測定するのに利用される。スクライブ加工状態検査装置13のプラグ挿入部材135,136に挿入されたバナナプラグ等からの信号線は、制御装置80に接続されている。制御装置80は、スクライブ加工状態検査装置13からの信号に基づいてスクライブ線の抵抗を測定する。図2では、被加工対象である薄膜がガラス基板1の上側に存在するので、ガラス基板1の上側にスクライブ加工状態検査装置13の円板状接触子部材131,132が接触するように構成されている。従って、ガラス基板1の下側の薄膜に対してスクライブ加工が行われる場合には、スクライブ加工状態検査装置13の円板状接触子部材131,132はガラス基板1の下面側の薄膜に接触するように構成される。
【0021】
なお、図2ではXYテーブル20は一体構成の場合について説明しているが、図のX軸方向に沿った長尺状のテーブル部材の複数でXYテーブル20が構成されいるものがあるので、このような構成のテーブルの場合は、図3に示すようにガラス基板1の上面及び下面の両側にスクライブ加工状態検査装置13a,13bを設け、ガラス基板1の両側から押圧して挟み込むようにスクライブ加工状態検査装置13a,13bを移動可能な構成とすることが好ましい。このように、両側にスクライブ加工状態検査装置13a,13bが存在すると、ガラス基板1の上面又は裏面を加工する場合に、図3のスクライブ加工状態検査装置13a,13bを用いてガラス基板1の上面及び下面のスクライブ加工状態(絶縁抵抗などの電気的特性)を容易に測定することが可能となる。
【0022】
スライドフレーム30は、台座10上の四隅に設けられた移動台に取り付けられている。スライドフレーム30は、この移動台によってY方向へ移動制御される。ベース板31と移動台との間には除振部材(図示せず)が設けられている。スライドフレーム30のベース板31には、レーザ発生装置40、光学系部材50及び制御装置80が設置されている。光学系部材50は、ミラーやレンズの組み合わせで構成され、レーザ発生装置40で発生したレーザ光を4系列に分割してXYテーブル20上のワーク1上に導くものである。なお、レーザ光の分割数は4系列に限るものではなく、2系列以上であればよい。
【0023】
アライメントカメラ装置60は、XYテーブル20上であってワーク1の両端部(X軸方向の前後縁部)付近の画像を取得する。このアライメントカメラ装置60で取得された画像は、制御装置80に出力される。制御装置80は、アライメントカメラ装置60からの画像を、ワーク1のIDデータと共にデータベース手段に格納し、これ以降のワーク1のアライメント処理に利用する。
【0024】
リニアエンコーダ70は、XYテーブル20のX軸移動テーブルの側面に設けられたスケール部材と検出部で構成される。リニアエンコーダ70の検出信号は、制御装置80に出力される。制御装置80は、リニアエンコーダ70からの検出信号に基づいてXYテーブル20のX軸方向の移動速度(移動周波数)を検出し、レーザ発生装置40の出力(レーザ周波数)を制御する。
【0025】
光学系部材50は、図示のように、ベース板31の側面側に設けられており、ベース板31の側面に沿って移動するように構成されている。光学系部材50は、先端部がZ軸を中心に回転可能となっている。レーザ発生装置40から出射されるレーザ光を光学系部材50に導くためのガルバノミラー33はベース板31上に設けられている。ガルバノミラー33は、2つのモーター(ロータリーエンコーダー)を使用してXY2次元エリアにレーザー光を走査させるものである。ガルバノミラー33は、2軸式(X,Y)で構成され、2個のモーターと、このモータに取り付けられるミラーとで構成される。ガルバノ制御裝置331は、モータを動かすためのドライバおよび電源、これらを制御するマイクロコンピュータなどで構成される。
【0026】
ミラー34,35は、光学系部材50上に設けられており、光学系部材50のスライド移動に連動するようになっている。レーザ発生装置40から出射されたレーザ光は、ガルバノミラー33によってミラー34へ向かって反射され、ミラー34に向かうレーザ光はミラー34によってミラー35に向かって反射される。ミラー35は、ミラー34からの反射レーザ光をベース板31に設けられた貫通穴を介して光学系部材50内に導く。なお、レーザ光発生装置40から出射されたレーザ光は、ベース板31に設けられた貫通穴から光学系部材50に対して上側から導入されるように構成されれば、どのような構成のものであってもよい。例えば、レーザ発生装置40を貫通穴の上側に設け、貫通穴を介して光学系部材50に直接レーザ光を導くようにしてもよい。
【0027】
ビームサンプラ332は、ガルバノミラー33と反射ミラー34との間の光学系部材50上に、光学系部材50のスライド移動と共に移動するように設けられている。ビームサンプラ332はレーザ光の一部(例えば、レーザ光の約0.4割程度又はそれ以下の光量)をサンプリングして外部に分岐出力する素子である。4分割フォトダイオード333は、ビームサンプラ332で分岐されたレーザ光の一部(サンプリングビーム)を受光面のほぼ中央付近で受光するように配置されている。4分割フォトダイオード333によって検出されたレーザ光の強度に対応した4種類の出力信号がガルバノ制御裝置331に出力される。ガルバノ制御裝置331は、4分割フォトダイオード333からの4種類の出力信号に応じてガルバノミラー33の2個のモータ33xy,33yzをリアルタイムで駆動制御する。モータ33xyは、ガルバノミラー33の反射レーザ光がベース板31の上面(XY平面)と平行な面内で回転移動するように制御し、モータ33zyは、ガルバノミラー33の反射レーザ光がベース板31の上面と直交する面(YZ平面)と平行な面内で回転移動するようにリアルタイムで制御する。
【0028】
図4は、光学系部材50の詳細構成を示す図である。実際の光学系部材50の構成は、複雑であるが、ここでは説明を簡単にするために図示を簡略化して示している。図4は、光学系部材50の内部を図2の−X軸方向から見た図である。図4に示すようにベース板31にはミラー35で反射されたレーザ光を光学系部材50内に導入するための貫通穴37を有する。この貫通穴37の直下には、ガウシアン強度分布のレーザ光をトップハット強度分布のレーザ光に変換する位相型回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)500が設けられている。
【0029】
DOE500によってトップハット強度分布のレーザ光(トップハットビーム)に変換されたレーザ光はハーフミラー511によって反射ビームと透過ビームにそれぞれ分岐され、反射ビームは右方向のハーフミラー512に向かって、透過ビームは下方向の反射ミラー524に向かって進む。ハーフミラー511で反射したビームは、ハーフミラー512によってさらに反射ビームと透過ビームに分岐され、反射ビームは下方向の反射ミラー522に向かって、透過ビームは右方向の反射ミラー521に向かって進む。ハーフミラー512を透過したビームは反射ミラー521によって反射され、下方向の集光レンズ541を介してワーク1に照射される。ハーフミラー512で反射したビームは、反射ミラー522,523によって反射され、下方向の集光レンズ542を介してワーク1に照射される。ハーフミラー511を透過したビームは、反射ミラー524によって反射され、左方向に向かって進む。反射ミラー524で反射したビームは、ハーフミラー513によって反射ビームと透過ビームに分岐され、反射ビームは下方向の反射ミラー526に向かって、透過ビームは左方向の反射ミラー528に向かって進む。ハーフミラー513で反射したビームは、反射ミラー526,527によって反射され、下方向の集光レンズ543を介してワーク1に照射される。ハーフミラー513を透過したビームは反射ミラー528によって反射され、下方向の集光レンズ544を介してワーク1に照射される。
【0030】
DOE500によって変換されたトップハットビームは、上述のハーフミラー511〜513及び反射ミラー521〜528によって、透過・反射されて集光レンズ541〜544に導かれる。このとき、DOE500から各集光レンズ541〜544までの光路長は等しくなるように設定されている。すなわち、ハーフミラー511で反射したビームがハーフミラ512を透過して反射ミラー521で反射して集光レンズ541に到達するまでの光路長、ハーフミラー511で反射したビームがハーフミラー512、反射ミラー522,523でそれぞれ反射して集光レンズ542に到達するまでの光路長、ハーフミラー511を透過したビームが反射ミラー523、ハーフミラー513、反射ミラー526,527でそれぞれ反射して集光レンズ543に到達するまでの光路長、ハーフミラー511を透過したビームが反射ミラー523で反射してハーフミラー513を透過して反射ミラー528で反射して集光レンズ544に到達するまでの光路長は、それぞれ等しい距離である。これによって、ビームが分岐される直前にDOE500を配置しても、トップハット強度分布のレーザ光を集光レンズ541〜544に同様に導くことが可能となる。
【0031】
シャッター機構531〜534は、光学系部材50の各集光レンズ541〜544から出射されるレーザ光がワーク1から外れた場合にレーザ光の出射を遮蔽するものである。オートフォーカス用測長システム52,54は、図示していない検出光照射用レーザとオートフォーカス用フォトダイオードとから構成され、検出光照射用レーザから照射された光の中でワーク1の表面から反射した反射光を受光し、その反射光量に応じて光学系部材50内の集光レンズ541〜544を上下に駆動し、ワーク1に対する高さ(集光レンズ541〜544のフォーカス)を調整する。なお、フォーカス調整用駆動機構は図示していない。なお、DOE500は、ミラー34とミラー35の間に設けてあってもよい。
【0032】
図5は、第1検出光学系部材及び第2検出光学系部材の構成を示す模式図である。第1検出光学系部材は、集光レンズ高さ測長システム26と、フォーカス及び光軸調整用CCDカメラ28とから構成される。図5では、集光レンズ高さ測長システム26とフォーカス及び光軸調整用CCDカメラ28が重複して示されているので、符号で区別するようにしている。図4に記載のオートフォーカス用測長システム52,54によって、ワーク1から光学系部材50の両側下面までの高さを調整した場合、光学系部材50の下面の高さを同じにすることはできても、ワーク1から各集光レンズ541〜544までの高さを同じにすることができるとは限らない。そこで、この実施の形態では、XYテーブル20のX軸方向の側面のいずれか一方(図ではXYテーブル20の−X軸方向の側面)に集光レンズ高さ測長システム26を取り付け、ワーク1から各集光レンズ541〜544までの高さをそれぞれ測長するようにした。集光レンズ高さ測長システム26によって検出された各集光レンズ541〜544の高さに対応した信号は、制御装置80に出力される。制御装置80は、ワーク1から各集光レンズ541〜544までの高さが適正であるか否かの判定を行なう。集光レンズ高さ測長システム26の測長結果に応じて、各集光レンズ541〜544の配置(高さ)は調整されるようになっている。この場合、この集光レンズ541〜544の配置(高さ)の調整は、手動又は自動で行なえるように構成する。なお、集光レンズ高さ測長システム26を用いて、光学系部材50の下面の高さを測長するようにすれば、オートフォーカス用測長システム52,54を省略することが可能である。
【0033】
フォーカス及び光軸調整用CCDカメラ28は、XYテーブル20のX軸方向の側面のいずれか一方(図ではXYテーブル20の−X軸方向の側面)であって、集光レンズ高さ測長システム26の隣接する位置(近傍)に設けられている。フォーカス及び光軸調整用CCDカメラ28は、XYテーブル20と光学系部材50の各集光レンズ541〜544との位置を関連付けるものであり、XYテーブル20の上空側を視認可能に設置されている。フォーカス及び光軸調整用CCDカメラ28によって撮像された映像は、制御装置80に出力される。制御装置80は、各集光レンズ541〜544から出射されるレーザ光の光軸が適正であるか否かの判定を行なう。すなわち、フォーカス及び光軸調整用CCDカメラ28は、光学系部材50の各集光レンズ541〜544から出射するレーザ光を直接観察することができるので、これを画像化することによって、制御装置80は、各集光レンズ541〜544のフォーカス及び光軸が適正であるか否かを判断することができる。また、レーザ発生装置40、光学系部材50などのレーザ光に係わる各光学系の交換した時に、交換前と交換後の画像を取得し数値化しておくことによって、交換後のフォーカス及び光軸の調整を容易に行なうことができる。さらに、複数ヘッドの場合、各レーザ光の画像を取得して数値化することによって、バラツキを適正に調整することができる。
【0034】
第2検出光学系部材は、図2に示すように、ビームサンプラ92,93、高速フォトダイオード94及び光軸検査用CCDカメラ96から構成される。ビームサンプラ92,93は、光学系部材50内に導入されるレーザ光の光路中に設けられている。この実施の形態では、レーザ発生装置40と反射ミラー33との間に設けられている。ビームサンプラ92,93はレーザ光の一部(例えば、レーザ光の約0.4割程度又はそれ以下の光量)をサンプリングして外部に分岐出力する素子である。高速フォトダイオード94は、ビームサンプラ92で分岐出力されたレーザ光の一部(サンプリングビーム)を受光面のほぼ中央付近で受光するように配置される。高速フォトダイオード94によって検出されたレーザ光の強度に対応した出力信号は、制御装置80に出力される。光軸検査用CCDカメラ96は、ビームサンプラ93で分岐出力されたレーザ光の一部(サンプリングビーム)を受光面のほぼ中央付近で受光するように配置される。光軸検査用CCDカメラ96によって撮像された映像は、制御装置80に出力される。なお、光軸検査用CCDカメラ96は、高速フォトダイオード94に照射されるレーザ光の位置を示す画像を取り込み、その画像を制御装置80に出力するようにしてもよい。
【0035】
制御装置80は、アライメント処理以外にも、リニアエンコーダ70からの検出信号に基づいてXYテーブル20のX軸方向の移動速度(移動周波数)を検出し、レーザ発生装置40の出力(レーザ周波数)を制御し、集光レンズ高さ測長システム26、フォーカス及び光軸調整用CCDカメラ28、高速フォトダイオード94、光軸検査用CCDカメラ96及びスクライブ加工状態検査装置13から出力される各信号に基づいて、基板1から各集光レンズ541〜544までの高さが適正であるか否かを判断したり、各集光レンズ541〜544のフォーカス及び光軸が適正であるか否かを判断したり、レーザ発生装置40から出射されるレーザ光のパルス抜けを検出したり、レーザ光の光軸ずれ量などの基板加工状態に基づいてレーザ発生装置40の出射条件を制御したり、光学系部材50内にレーザ光を導入するための各種ミラーの配置等をフィードバック制御したり、各集光レンズ541〜544の配置を調整したり、スクライブ線の抵抗値を測定したりする。
【0036】
図6は、制御装置80の処理の詳細を示すブロック図である。制御装置80は、分岐手段81、パルス抜け判定手段82、アラーム発生手段83、基準CCD画像記憶手段84、光軸ずれ量計測手段85、レーザコントローラ86、レンズ変位量計測手段87、レンズ高さ調整手段88、照射レーザ状態検査手段89、照射レーザ調整手段8A、抵抗測定手段8B及び表示手段8Cから構成される。
【0037】
分岐手段81は、リニアエンコーダ70の検出信号(クロックパルス)を分岐して後段のレーザコントローラ86に出力する。パルス抜け判定手段82は、高速フォトダイオード94からのレーザ光強度に対応した出力信号(ダイオード出力)と分岐手段81から出力される検出信号(クロックパルス)とを入力し、それに基づいてレーザ光のパルス抜けを判定する。図7は、パルス抜け判定手段82の動作の一例を示す図である。図7において、図7(A)は分岐手段81から出力される検出信号(クロックパルス)の一例、図7(B)は高速フォトダイオード94から出力されるレーザ光強度に対応した出力信号(ダイオード出力)の一例、図7(C)はパルス抜け判定手段82がパルス抜け検出時に出力するアラーム信号の一例をそれぞれ示す。
【0038】
図7に示すように、パルス抜け判定手段82は、分岐手段81からのクロックパルスの立ち下がり時点をトリガ信号として、ダイオード出力値が所定のしきい値Th以上であるか否かの判定を行い、ダイオード出力値がしきい値Thよりも小さい場合には、ハイレベル信号をアラーム発生手段83に出力する。アラーム発生手段83は、パルス抜け判定手段82からの信号がローレベルからハイレベルに変化した時点でパルス抜けが発生したことを示すアラームを外部に報知する。アラームの報知は、画像表示、発音等の種々の方法で行なう。アラームの発生によって、オペレータはパルス抜けが発生したことを認識することができる。また、このアラームが頻繁に発生する場合には、レーザ発生装置の性能が劣化したか又は寿命になったことを意味する。
【0039】
基準CCD画像記憶手段84は、図6に示すような基準CCD画像84aを記憶している。この基準CCD画像84aは、光軸検査用CCDカメラ96の受光面の中央にレーザ光が受光した状態の画像を示すものである。光軸検査用CCDカメラ96からは、図6に示すような被検査画像85aが出力される。光軸ずれ量計測手段85は、光軸検査用CCDカメラ96からの被検査画像85aを取り込み、これと基準CCD画像84aとを比較し、光軸のずれ量を計測し、そのずれ量をレーザコントローラ86に出力する。例えば、図6に示す被検査画像85aのような画像が光軸検査用CCDカメラ96から出力された場合には、光軸ずれ量計測手段85は、両者を比較して、X軸及びY軸方向のずれ量を計測し、それをレーザコントローラ86に出力する。レーザコントローラ86は、被検査画像85aと基準CCD画像84aとが一致するように、レーザ光の光軸に関係する装置、すなわちレーザ発生装置40の出射条件や光学系部材50内にレーザ光を導入するための反射ミラー33〜35の配置等をフィードバックして調整する。
【0040】
レンズ変位量計測手段87は、集光レンズ高さ測長システム26によって検出された各集光レンズ541〜544の高さに対応した信号を入力し、各集光レンズ541〜544の高さが許容範囲内にあるか、この許容範囲よりも大きくずれているかを判定し、大きくずれている集光レンズ541〜544の高さをどの程度調整すればよいかを示す制御信号をレンズ高さ調整手段88に出力する。レンズ高さ調整手段88は、レンズ変位量計測手段87からの制御信号に応じて各集光レンズ541〜544の配置を調整する。なお、集光レンズ541〜544の高さ調整機構が存在しない場合には、レンズ高さ調整手段88は、レンズ変位量計測手段87からの制御信号に基づいて、集光レンズ541〜544のどれをどの程度調整すればよいのか、その調整情報をオペレータに伝達(視認表示、音声発音など)するようにしてもよい。
【0041】
照射レーザ状態検査手段89は、フォーカス及び光軸調整用CCDカメラ28からの画像89aを取り込み、これに基づいてフォーカス及び光軸のずれ量を計測し、そのずれ量を照射レーザ調整手段8Aに出力する。例えば、図6に示すような画像89aがフォーカス及び光軸調整用CCDカメラから出力された場合には、照射レーザ状態検査手段89は、画像89a内の円状の輪郭線89b(集光レンズ541〜544の外縁に対応した線)を基準にフォーカス円89c(画像89a内の小円)の位置を検出し、フォーカス円89cが輪郭線89bのほぼ中央に位置しているか否かに基づいて光軸のX軸及びY軸方向のずれ量を計測し、それを照射レーザ調整手段8Aに出力する。また、照射レーザ状態検査手段89は、フォーカス円89cの大きさ(面積)を計測し、それも基づいたフォーカス位置を照射レーザ調整手段8Aに出力する。照射レーザ調整手段8Aは、照射レーザ状態検査手段89からの光軸のずれ量及びフォーカス位置に対応した信号に基づいて、光学系部材50内の各ハーフミラー511〜513及び反射ミラー521〜528の配置等をフィードバックして調整する。なお、レンズ高さ調整手段88及び照射レーザ調整手段8Aを省略して、これらの機能をレーザコントローラ86に持たせるようにしてもよい。
【0042】
上述の実施の形態では、レーザ加工(スクライブ加工)時に光軸ずれ量計測手段85でレーザ光の光軸ずれを、パルス抜け判定手段82でパルス抜けをそれぞれ検査する場合について説明したが、図8に示すように高速フォトダイオード94からの出力波形に基づいてレーザ光のパルス状態を検査するようにしてもよい。例えば、図8では、レーザ光のパルス幅及びパルス高さを計測し、これらに異常が発生した場合にはアラームを発生するようにしてもよい。なお、レーザ光のパルス幅は、高速フォトダイオード94からの出力波形が所定値以上になっている期間が所定の範囲にある場合を正常とし、この範囲よりも大きかったり小さい場合にはパルス幅異常と判定し、アラームを出力する。また、レーザ光のパルス高さは、高速フォトダイオード94からの出力波形の最大値が許容範囲内に存在する場合を正常とし、この許容範囲よもも大きかったり小さい場合にはパルス高さ異常と判定し、アラームを出力する。このように、レーザ光を常時サンプリングしているので、リアルタイムでパルス幅、パルス高さ(パワー)などのレーザ光の品質を管理することができる。上述のようなパルス抜けが頻発するようになったら、レーザ発生装置40の劣化あるいは寿命と判断できる。
【0043】
抵抗測定手段8Bは、スクライブ加工状態検査装置13の円板状接触子部材131,132間を流れる電流値に基づいてスクライブ加工後におけるスクライブ線の抵抗値を測定し、その抵抗値を表示手段8Cに出力する。例えば、スクライブ加工後におけるスクライブ線は絶縁状態となるので、抵抗値としては絶縁に近い抵抗値が測定されることとなる。スクライブ加工が適切に行われなかった場合にはスクライブ線を電流が流れることとなり、絶縁抵抗よりも比較的小さな抵抗値が測定される。表示手段8Cは、抵抗値を表示するのではなく、抵抗値に基づいてスクライブ加工が適切に行われたか否かを表示する。なお、測定された抵抗値をそのまま表示するようにしてもよい。スクライブ加工状態検査装置13はローラ方式で2個のピッチに跨がるようにして抵抗を測定しているので、どのスクライブ線の抵抗値が絶縁状態にない不良スクライブ線かを装置内で容易に特定することができる。スクライブ加工状態検査装置13は、ローラ方式なので検査部を小型化することができ、ガラス基板の表裏に容易に設けることができる。スクライブ加工状態検査装置13に対してバナナプラグ等の検査プラグを簡単に脱着可能である。このように、表示手段8Cと組み合わせることによって、不良スクライブ線の位置を特定し、リペアするシステムを構築することができる。プレート部材133,134の長さを適宜交換することによって測定可能ピッチを容易に変更することができる。なお、抵抗値を測定する場合について説明したが、抵抗値を測定することなく、電流が流れるか否かだけを検査するようにしてもよい。また、スクライブ加工状態検査装置13にバッテリー等を搭載して、絶縁性をLED等を点灯させるることによって簡易に検査するようにしてもよい。
【0044】
図9は、図2の光学系部材50を下側(基板側)から見た図である。図9は、光学系部材50とベース板31の一部を示している。図9(A)は、図1に示す光学系部材50とベース板31との位置関係を示す図であり、図に示すように、光学系部材50の端面(図の上側端部)とベース板31の端面(図の上側端部)とが一致している。図9(B)は、光学系部材50が貫通穴37の中心を回転軸としてベース板31に対して左回りに約30度回転した状態を示す図である。図9(C)は、光学系部材50が貫通穴37の中心を回転軸としてベース板31に対して左回りに約45度回転した状態を示す図である。
【0045】
この実施の形態に係るソーラパネル製造装置においては、光学系部材50がレーザ光の導入穴である貫通穴37の中心を回転軸として、自在に回転可能に構成されている。すなわち、分岐手段である光学系部材50は、図4の反射ミラー35からDOE500を通過してハーフミラー511に向かう垂直レーザ光の進行方向を中心軸として回転制御されている。これによって、レーザ光の分岐方向とレーザ光の基板に対する相対的な移動方向(図9の垂直方向)とのなす角度θを自在に可変制御することができる。なお、光学系部材50の回転駆動手段としては、ボールネジやリニアモータ等の既存の技術が用いられるが、これらの図示は省略する。
【0046】
図9に示すように、レーザ光の分岐方向とレーザ光の走査方向(図9の垂直方向)とのなす角度を可変制御した場合でも、レーザ光の相対的な移動方向に対してDOE500は回転しないように構成している。すなわち、DOE500を使用することによって、レーザ光の照射形状は、図9の集光レンズ541〜544内に示したように、点線正方形のような照射形状を示すことになる。従って、光学系部材50の回転制御と共にDOE500を回転させると、集光レンズ541〜544内の点線正方形もその回転量に応じて回転するようになる。この状態でレーザ光を走査照射すると、スクライブ線の両側稜線に正方形の角が位置するようになり、稜線が波打ち形状を示すようになる。そこで、この実施の形態のように、光学系部材50を回転制御しても、DOE500は回転させないような構成とすることで、図9(B)及び図9(C)に示すように、走査方向(図9の垂直方向)と集光レンズ541〜544内の点線正方形の左右両辺とが一致し、スクライブ線の両側稜線を極めて滑らかに形成することができ、また、光学系部材50を回転させてスクライブ線のピッチを適宜制御した場合でも滑らかな稜線のスクライブ線を形成することが可能となる。なお、上述の実施の形態では、DOEをレーザ光の光路中に1つだけ設ける場合について説明したが、DOEを分岐後の各集光レンズの直前にそれぞれ設けてもよい。この場合でも、光学系部材50を回転制御しても各DOEは回転させないように構成する必要がある。DOE500は、光学系部材50とは分離した形でベース板31に直結して設けることによって、光学系部材50の回転から独立させることが可能である。なお、レーザ光の相対的な移動方向に対してDOE500は回転しないように構成しているが、所定の角度(約10〜30度程度)を持たせてDOE500を傾斜させてもよい。
【0047】
図10は、光学系部材の回転量とスクライブ線のピッチ幅との関係を示す図である。図10(A)は図9(A)に示すように光学系部材50が回転していない状態、図10(B)は図9(B)に示すように光学系部材50が約30度回転した状態、図10(C)は図9(C)に示すように光学系部材50が約45度回転した状態でそれぞれレーザスクライブ加工処理を行なった場合のスクライブ線の状態を示す図である。図10(A)の場合のスクライブ線のピッチをP0とすると、図10(B)の場合のピッチP30はP0×cos30°となり、図10(C)の場合のピッチP45はP0×cos45°となる。このように、この実施の形態に係るソーラパネル製造装置は、光学系部材50の回転角度を適宜調整することによって、スクライブ線のピッチ幅を所望の値に適宜可変調整することができる。図10には、可変調整されたピッチ幅に対応した長さのプレート部材を用いて構成されたスクライブ加工状態検査装置13が図示してある。なお、プレト部材に対して円板状接触子部材を回転自在とし、図10に示したスクライブ加工状態検査装置13cのように、光学系部材50の回転角度に合わせてスクライブ加工状態検査装置13cのプレート部材を回転することによって、スクライブ線のピッチ幅に対応することができるようにしてもよい。
【0048】
上述の実施の形態では、光軸検査用CCDカメラ96を用いてビームサンプラ93で分岐出力されたレーザ光の一部(サンプリングビーム)を直接受光して、それを画像処理することによって、光軸ずれを検査する場合について説明したが、高速フォトダイオード94の受光面の中央にレーザ光が受光した状態を示す画像を被検査画像として光軸検査用CCDカメラ96あるいは分割型フォトダイオードで取得することによって光軸ずれを検査するようにしてもよい。
上述の実施の形態では、レーザ光の光軸ずれ及びパルス抜けを検査する場合について説明したが、光軸ずれ、パルス抜け、パルス幅及びパルス高さのそれぞれを適宜組み合わせてレーザ光の状態を検査するようにしてもよい。
上述の実施の形態では、薄膜の形成された基板1の表面からレーザ光を照射して薄膜にスクライブ線(溝)を形成する場合について説明したが、基板1の裏面からレーザ光を照射して、基板表面の薄膜にスクライブ線を形成するようにしてもよい。
上述の実施の形態では、ソーラパネル製造装置を例に説明したが、本発明はELパネル製造装置、ELパネル修正装置、FPD修正装置などのレーザ加工を行なう装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…基板
10…台座
13,13a,13b,13c…スクライブ加工状態検査装置
131,132…円板状接触子部材
133,134…プレート部材
135,136…プラグ挿入部材
20…XYテーブル
21,〜23…位置決めピン
27a,29a,27b,29b…画像
26…集光レンズ高さ測長システム
28…フォーカス及び光軸調整用CCDカメラ
30…スライドフレーム
31…ベース板
33…ガルバノミラー
331…ガルバノ制御裝置
332…ビームサンプラ
333…4分割フォトダイオード
33xy,33zy…モータ
34,35…ミラー
37…貫通穴
40…レーザ発生装置
50…光学系部材
500…位相型回折光学素子(DOE)
511〜513…ハーフミラー
521〜528…反射ミラー
531〜534…シャッター機構
541〜544…集光レンズ
52,54…オートフォーカス用測長システム
60…アライメントカメラ装置
70…リニアエンコーダ
80…制御装置
81…分岐手段
82…パルス抜け判定手段
83…アラーム発生手段
84…基準CCD画像記憶手段
85…光軸ずれ量計測手段
86…レーザコントローラ
87…レンズ変位量計測手段
88…レンズ高さ調整手段
89…照射レーザ状態検査手段
8A…照射レーザ調整手段
8B…抵抗測定手段
8C…表示手段
94…高速フォトダイオード
96…光軸検査用CCDカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク上の薄膜にレーザ光を照射してスクライブ線の加工を施し、その直後に前記スクライブ線の両側の薄膜に電気的接触子を接触させて前記スクライブ線の抵抗値を測定するレーザ加工状態検査装置であって、前記電気的接触子はプラグ挿入部材を回転軸として回転自在に取り付けられている回転ローラ方式の第1及び第2の円板状接触子部材で構成され、前記第1及び第2の円板状接触子部材は絶縁材からなるプレート部材によって保持され、前記スクライブ線の両側の薄膜に接触しながらその接触位置を回転移動するように構成したことを特徴とするレーザ加工状態検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工状態検査装置において、前記第1及び第2の円板状接触子部材の回転軸間の距離が前記スクライブ線のピッチ幅に対応した長さとなるような長尺板で前記プレート部材を構成したことを特徴とするレーザ加工状態検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーザ加工状態検査装置において、前記レーザ加工状態検査装置を前記ワークの両面に配置したことを特徴とするレーザ加工状態検査装置。
【請求項4】
ワークを保持する保持手段と、
前記ワーク上の薄膜にレーザ光を照射して所定の加工処理を施すレーザ光照射手段と、
前記レーザ光照射による加工後に前記スクライブ線の両側の薄膜に電気的接触子を接触させて前記スクライブ線の抵抗値を測定するためのレーザ加工状態検査手段であって、前記電気的接触子はプラグ挿入部材を回転軸として回転自在に取り付けられている回転ローラ方式の第1及び第2の円板状接触子部材で構成され、前記第1及び第2の円板状接触子部材は絶縁材からなるプレート部材によって保持され、前記スクライブ線の両側の薄膜に接触しながらその接触位置を回転移動するように構成されたレーザ加工状態検査手段と
を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザ加工装置において、前記第1及び第2の円板状接触子部材の回転軸間の距離が前記スクライブ線のピッチ幅に対応した長さとなるような長尺板で前記プレート部材を構成したことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のレーザ加工装置において、前記レーザ加工状態検査手段を前記ワークの両面に配置したことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項7】
請求項1から3までのいずれか1に記載のレーザ加工状態検査装置又は請求項4から6までのいずれか1に記載のレーザ加工装置を用いて、ソーラパネルを製造することを特徴とするソーラパネル製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−279952(P2010−279952A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132632(P2009−132632)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】