説明

レーザ加工用マスクの姿勢検出方法及びステージ精度評価方法

【課題】 従来の方法に比べて、より簡便に、かつ精度よく、加工対象物の走行方向に対するマスクの姿勢を検出することができるマスクの姿勢検出方法を提供する。
【解決手段】 評価用マスクを通して評価用基板にレーザビームを入射させて、第1及び第2の評価用パターンが転写された第1及び第2の転写イメージを形成する。評価用基板を、走行軸に平行に、かつ第1の転写イメージが第2の転写イメージよりも移動方向の前方に配置される向きに、該評価用基板を並進移動させる。評価用マスクを通して評価用基板にレーザビームを入射させて、第1及び第2の評価用パターンがそれぞれ転写された第3及び第4の転写イメージを形成する。第2の転写イメージと第3の転写イメージとの位置関係を計測する。計測された位置関係、及び評価用マスクに形成されている第1の評価用パターンと第2の評価用パターンとの間隔に基づいて、走行軸に対する評価用マスクの姿勢を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工用マスクの姿勢検出方法及びステージ精度評価方法に関し、特にステージの走行軸に対するマスクの姿勢を検出する方法、及びステージの走行距離の精度を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1に、マスクを用いて断面を矩形に整形したレーザビームを加工対象物(ワーク)に入射させてレーザアニールを行う技術が開示されている。以下、特許文献1に開示されたレーザ加工を行う際に、ワークとマスクとの位置合せを行う方法について説明する。
【0003】
ワークには、グローバルアライメント用のマークと、ファインアライメント用のマークが形成されている。マスクには、ファインアライメント用のマークに整合するマスクマークが形成されている。まず、ワークをプロセスステージ上に配置し、グローバルアライメントマークを検出することにより、ワークのグローバルアライメントを行う。次に、ワークのファインアライメントマークを検出してファインアライメントを行い、マスクを通してレーザビームを照射する。このときのレーザビームの照射痕とファインアライメントマークとの相対位置のずれを補正するように、マスクの位置を修正する。マスクの位置を修正することにより、所望の位置にレーザビームを入射させることができる。
【0004】
次に、シーケンシャルラテラルソリディフィケーション(SLS)方式によってガラス基板上のアモルファスシリコン膜を結晶化する方法について説明する。SLS方式では、ビーム断面の幅が数μmの長尺断面を持つパルスレーザビームをアモルファスシリコン膜に入射させながら、1ショットの入射領域と次のショットの入射領域とが部分的に重なるように、ビーム断面の幅方向にワークを移動させる。1ショットの照射で生じた結晶が連続的に横方向に成長していく。これにより、多結晶シリコン膜が形成される。上述の方式はnショット方式と呼ばれる。
【0005】
多結晶シリコン膜に薄膜トランジスタを形成する場合には、10μmを超えるような大きな結晶粒は必要とされない。このような場合には、2ショット方式と呼ばれるSLS方式が採用される。
【0006】
図7Aに、2ショット方式に用いられるマスクのパターンの一例を示す。マスク面にUV直交座標系を定義する。マスクパターンは、透過領域と遮光領域とが、V軸に平行に、かつ交互に周期的に配列された2つのラインアンドスペースパターン100A及び100Bで構成される。2つのラインアンドスペースパターン100A及び100Bは、V軸方向に関して位相が180°ずれている。ラインアンドスペースパターン100A及び100Bの各々のU軸方向の幅は例えば1mmであり、V軸方向の長さは10mmである。透過領域の各々のV軸方向の幅が遮光領域の幅よりもやや広い。U軸方向に関しては、2つのラインアンドスペースパターン100A及び100Bが接している。すなわち、2本のラインアンドスペースパターン100A及び100Bの合計の幅は2mmになる。なお、上述の寸法は、ガラス基板上に転写されたイメージに換算した寸法を示している。
【0007】
図7Bに示すように、ガラス基板表面にXY直交座標系を定義する。マスク表面に定義されたUV座標のU軸がX軸と平行になるように、マスクの姿勢が調整されている。マスクを通して1ショットの照射を行うことにより、マスクパターンの転写イメージ101に相当する領域が多結晶化される。ガラス基板をX軸方向に1mm移動させて、2ショット目の照射を行う。これにより、2ショット目の転写イメージ102に相当する領域が多結晶化される。1ショット目の一方のラインアンドスペースパターン100Bの遮光領域に対応する領域が、2ショット目の他方のラインアンドスペースパターン100Aの透過領域に対応する領域と重なるため、ラインアンドスペースパターン内の領域がY軸方向に関して隈なく多結晶化される。ガラス基板の移動とレーザ照射とを繰り返すことにより、広い領域を多結晶化させることができる。
【0008】
【特許文献1】特開2001−7043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図7Cに、マスク表面に定義されたU軸とガラス基板の移動方向であるX軸とが平行ではなく、ややずれている場合のマスクパターンの転写イメージを示す。1ショット目の転写イメージ101の遮光領域に対応する領域と、2ショット目の転写イメージ102の透過領域に対応する領域とが完全には重ならない。このため、全面を隈なく多結晶化することができない。
【0010】
図8A〜図8Cを参照して、マスク表面に定義されたU軸とガラス基板の走行方向であるX軸とのずれを検出する方法について説明する。
【0011】
図8Aに示すように、マスクに、そのU軸方向に間隔を隔てて配置された2つの評価用パターンが形成されている。
【0012】
図8Bに示すように、アモルファスシリコン膜が形成されたガラス基板上に、マスクを通してレーザビームを入射させることにより、評価用パターン110及び111の転写イメージ110A及び111Aを形成する。ガラス基板を移動させて、転写イメージ110Aを撮像装置の視野112内に配置する。転写イメージ110Aの画像データを解析することにより、転写イメージ110Aの位置を検出する。
【0013】
図8Cに示すように、もう一方の転写イメージ111Aが視野112内に配置されるように、ガラス基板を移動させる。転写イメージ111Aの画像解析を行うことにより、その位置を検出する。
【0014】
2つの転写イメージ110A及び111AのY軸方向に関する位置ずれ量から、X軸に対するU軸の傾きの大きさを算出することができる。
【0015】
本発明の目的は、従来の方法に比べて、より簡便に、かつ精度よく、加工対象物の走行方向に対するマスクの姿勢を検出することができるマスクの姿勢検出方法を提供することである。本発明の他の目的は、加工対象物を移動させるステージの移動距離の精度を評価する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一観点によれば、(a)ある間隔を隔てて配置された第1及び第2の評価用パターンが形成された評価用マスクを通して、評価用基板にレーザビームを入射させて、該第1及び第2の評価用パターンを該評価用基板上に転写し、該第1及び第2の評価用パターンがそれぞれ転写された第1及び第2の転写イメージを形成する工程と、(b)前記評価用基板を、走行軸に平行に、かつ前記第1の転写イメージが前記第2の転写イメージよりも移動方向の前方に配置される向きに、該評価用基板を並進移動させる工程と、(c)前記工程bにおける並進移動後、前記評価用マスクを通して、前記評価用基板にレーザビームを入射させて、前記第1及び第2の評価用パターンを該評価用基板上に転写し、該第1及び第2の評価用パターンがそれぞれ転写された第3及び第4の転写イメージを形成する工程と、(d)前記第2の転写イメージと前記第3の転写イメージとの位置関係を計測する工程と、(e)前記工程dで計測された位置関係、及び前記評価用マスクに形成されている第1の評価用パターンと第2の評価用パターンとの間隔に基づいて、前記走行軸に対する前記評価用マスクの姿勢を求める工程とを有するレーザ加工用マスクの姿勢検出方法が提供される。
【0017】
本発明の他の観点によると、(a)ある間隔を隔てて配置された第1及び第2の評価用パターンが形成された評価用マスクを通して、ステージに保持された評価用基板にレーザビームを入射させて、該第1及び第2の評価用パターンを該評価用基板上に転写し、該第1及び第2の評価用パターンがそれぞれ転写された第1及び第2の転写イメージを形成する工程と、(b)前記評価用基板を、走行軸に平行に、かつ前記第1の転写イメージが前記第2の転写イメージよりも移動方向の前方に配置される向きに、該評価用基板が第1の距離だけ並進移動するように前記ステージを制御する工程と、(c)前記工程bにおける並進移動後、前記評価用マスクを通して、前記評価用基板にレーザビームを入射させて、前記第1及び第2の評価用パターンを該評価用基板上に転写し、該第1及び第2の評価用パターンがそれぞれ転写された第3及び第4の転写イメージを形成する工程と、(d)前記第2の転写イメージと前記第3の転写イメージとの位置関係を計測する工程と、(e)前記工程dで計測された位置関係、及び前記評価用マスクに形成されている第1の評価用パターンと第2の評価用パターンとの間隔に基づいて、前記ステージの移動距離の精度を算出する工程とを有するレーザ加工用のステージ精度評価方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
工程aで第2の転写イメージを形成し、工程cで第3の転写イメージを形成した後は、評価用基板を移動させても2つの転写イメージの相対位置は変動しない。このため、工程dにおいて、2つの転写イメージの相対位置関係を高精度に計測することができる。これにより、走行軸に対するマスクの姿勢を精度よく検出することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1に、実施例によるマスクの姿勢検出方法で用いられるレーザ加工装置の概略図を示す。基台1の上にXYステージ2が取り付けられている。XYステージ2に加工対象物25が保持される。XY面が水平面に平行であり、Z軸が鉛直上方を向くXYZ直交座標系を定義する。XYZ直交座標系は基台1に固定されている。XYステージ2は、加工対象物25をX軸方向及びY軸方向に並進移動させることができる。加工対象物25は、ガラス基板の表面にアモルファスシリコン膜が形成された積層基板である。
【0020】
レーザ光源10から出射したパルスレーザビームが、ホモジナイザ11、折返しミラー13、マスク20、及びイメージングレンズ系14を経由して、XYステージ2に保持された加工対象物25に入射する。ホモジナイザ11は、マスク20が配置された位置におけるビーム断面内の光強度分布を均一化する。マスク20に、転写すべきパターンが形成されている。イメージングレンズ系14は、マスク20に形成されている転写パターンを加工対象物25の表面に結像させる。
【0021】
マスク20は、マスクステージ3に装着されている。マスクステージ3は、上側支持部材5に取り付けられており、上側支持部材5は基台1に固定されている。マスクステージ3は、マスク20をX軸方向及びY軸方向に変位させるとともに、Z軸に平行な回転軸を中心としてマスク20を回転方向に変位させる。
【0022】
マスク用撮像装置21が、マスク20に形成されているアライメントマークを撮像し、その画像データを生成する。加工対象物用撮像装置26が、加工対象物25に形成されているアライメントマークを撮像し、その画像データを生成する。マスク用撮像装置21及び加工対象物用撮像装置26で生成された画像データは、制御装置30に入力される。制御装置30は、XYステージ2及びマスクステージ3を制御する。
【0023】
図2に、評価用マスク20Aの平面図を示す。評価用マスク20Aの表面上にUV直交座標系を定義する。ほぼ正方形の遮光領域内に、第1の評価用パターン40及び第2の評価用パターン41が配置されている。第1の評価用パターン40及び第2の評価用パターン41は、正方形の外周線に沿った環状の透過領域で構成される。透過領域の内側は遮光領域とされている。第1の評価用パターン40及び第2の評価用パターン41は、その中心同士を結ぶ直線がU軸に平行になるように配置されている。中心間の間隔をLとする。なお、間隔Lは、評価用パターン40及び41を加工対象物に転写したときの両者の転写イメージの中心間の間隔に換算したものである。
【0024】
第2の評価用パターン41は、第1の評価用パターン40よりも小さい。第2の評価用パターン41を、第1の評価用パターン40に向かって、U軸方向に距離Lだけ移動させると、第1の評価用パターン40内の遮光領域内に納まる大きさである。
【0025】
正方形の遮光領域の四隅近傍に、それぞれアライメントマーク42が配置されている。1つのアライメントマーク42がUV座標の原点を画定し、原点に配置されたアライメントマーク42と他の1つのアライメントマーク42がU軸を画定し、原点に配置されたアライメントマーク42とさらに他の1つのアライメントマーク42がV軸を画定する。これらのアライメントマーク42の各々は、図1に示したマスク用撮像装置21の視野内に配置されており、その位置を検出することができる。
【0026】
図3に、加工用マスク20Bの平面図を示す。加工用マスク20Bの表面上にも、評価用マスク20Aと同様に、UV直交座標系を定義する。正方形の遮光領域内に、マスクパターン45が配置されている。マスクパターン45は、2つのラインアンドスペースパターンで構成される。ラインアンドスペースパターンの各々は、U軸方向に長い長方形状を有する複数の透過領域がV軸方向に一定のピッチPVで配置された構成を有する。透過領域の各々のU軸方向の長さをLU、V軸方向の幅をLVとする。隣り合う2つの透過領域の間隔は、V軸方向の幅LVよりもやや狭い。一方のラインアンドスペースパターンは、他方のラインアンドスペースパターンをV軸方向にピッチPVの1/2だけずらし、U軸方向に長さLUだけずらした位置に配置されている。
【0027】
正方形の遮光領域の四隅近傍にそれぞれアライメントマーク46が配置されている。アライメントマーク46と、図2に示した評価用マスク20Aのアライメントマーク42とは、UV座標上の同じ位置に形成されている。
【0028】
次に、図4及び図5を参照して、実施例によるマスクの姿勢検出方法について説明する。
【0029】
図4に、実施例によるマスクの姿勢検出方法のフローチャートを示し、図5に、評価用基板に転写された評価用パターンの転写イメージを示す。まず、工程S1において、図2に示した評価用マスク20Aを、図1に示したレーザ加工装置のマスクステージ3に装着する。このとき、マスク20Aを、そのU軸がX軸とほぼ平行になるような姿勢で保持する。工程S2において、ガラス基板の表面にアモルファスシリコン膜が形成された評価用基板を、XYステージ2に載置する。
【0030】
XYステージ2を初期位置に配置して、評価用基板にパルスレーザビームを1ショット入射させる。これにより、図5に示すように、評価用基板に第1の評価用パターン40が転写された第1の転写イメージ40a及び第2の評価用パターン41が転写された第2の転写イメージ41aが形成される。第1の転写イメージ40a及び第2の転写イメージ41aは、アモルファスシリコンが結晶化した領域に整合し、結晶化していない周囲の領域と区別することができる。
【0031】
工程S4において、XYステージ2を動作させて、評価用基板をX軸方向に距離Lだけ移動させる。評価用基板の移動の向きは、第1の転写イメージ40aが第2の転写イメージ41aよりも移動方向の前方に配置されるような向きとする。
【0032】
工程S5において、評価用基板にパルスレーザビームを1ショット入射させる。これにより、図5に示すように、評価用基板に第1の評価用パターン40が転写された第3の転写イメージ40b及び第2の評価用パターン41が点shされた第4の転写イメージ41bが形成される。第3の転写イメージ40bの内側に、工程S3で形成された第2の転写イメージ41aが配置される。
【0033】
工程S6において、第2の転写イメージ41aと第3の転写イメージ40bとを、加工対象物用撮像装置26の視野内に配置する。加工対象物用撮像装置26が画像データを生成し、生成された画像データを制御装置30に送信する。
【0034】
工程S7において、評価用マスク20Aの姿勢の評価を行う。以下、図5を参照して、評価方法を説明する。
【0035】
評価用マスク20AのU軸を仮想的に転写したイメージとX軸とのなす角度をθとする。評価用マスク20Aは、そのU軸がX軸に平行になるように装着されているが、角度θは完全には0にならず、装着時の機械的精度に起因する大きさを持つ。第1の転写イメージ40aと第3の転写イメージ41aとの中心間の間隔はLである。
【0036】
工程S6における画像処理により、第2の転写イメージ41aの中心と第3の転写イメージ40bの中心との相対的な位置関係を算出する。両者のY軸方向に関するずれ量をDyとすると、
L×sinθ=Dy
が成り立つ。間隔Lは既知であるため、ずれ量Dyを測定することにより、角度θを求めることができる。
【0037】
工程S8において、マスクステージ3を動作させて、角度θのずれ量を解消する向きに、マスク20を回転させる。回転後、マスク用撮像装置21で、評価用マスク20Aのアライメントマーク42の画像を取得し、その位置を算出する。算出されたアライメントマーク42の位置を「目標位置」と呼ぶこととする。なお、マスク20を実際に回転させることなく、アライメントマーク42の位置と、角度θとから、計算により目標位置を算出することも可能である。
【0038】
工程S9において、評価用マスク20Aをマスクステージ3から取り外し、図3に示した加工用マスク20Bをマスクステージ3に装着する。工程S10において、マスク用撮像装置21で加工用マスク20Bのアライメントマーク46を観察し、その位置を検出する。アライメントマーク46が、工程S8で算出した目標位置に配置されるようにマスクステージ3を動作させて、加工用マスク20Bの姿勢を調節する。アライメントマーク46が目標位置に配置された状態では、加工用マスク20Bに定義されたUV座標系のU軸を仮想的に転写した方向がX軸と平行になる。
【0039】
以下、上記実施例による方法と、図8A〜図8Cに示した参考例による方法との相違点について説明する。
【0040】
図8A〜図8Cに示した参考例では、転写イメージ110A及び111Aを形成した後、図8Bの状態に至るまでに、転写イメージ110Aが視野112内に配置されるまで加工対象物を移動させる。この移動時に、ステージの真直度やヨーイング等の影響により、2つの転写イメージ110A及び111AのY軸方向に関する相対位置関係がわずかに変動する。さらに、図8Bの状態から図8Cの状態に移行する際にも、加工対象物を移動させるため、この移動時にも相対位置関係がわずかに変動する。従って、取得された転写イメージ110A及び111Aの相対位置関係には、加工対象物の2回の移動時に発生し得る誤差が含まれていることになる。
【0041】
上記実施例の場合には、工程S4でXYステージ2を移動させる際に、工程S3で形成された第2の転写イメージ41aと、工程S5で形成される第3の転写イメージ40bとの相対位置関係に、ステージの機械的精度に起因する誤差が生じ得る。ところが、2つの転写イメージ41a及び40bを加工対象物用撮像装置26の視野内に配置するためにステージを移動させる際には、2つの転写イメージ41a及び40bの相対位置関係は変動しない。
【0042】
このため、実施例による方法を適用することにより、マスクの姿勢の検出精度を高めることができる。
【0043】
また、図8A〜図8Cに示した比較例においては、図8Bの状態から図8Cの状態に移行する際に、加工対象物を保持するステージは、実際にレーザビームを照射する時の位置とは異なる位置で移動動作が行われる。ステージの位置によって。ステージの挙動が微妙に異なるような場合、図8Bの状態から図8Cの状態に移行する際に生じ得る転写イメージの相対位置の誤差は、実際にレーザビームを照射する時のステージの移動に起因して生じ得る誤差とは無関係である。
【0044】
これに対し、実施例の工程S4では、実際にレーザビームが照射される時のステージの位置で移動動作が行われる。この移動時におけるステージの挙動は、実際に加工するときのステージの挙動とほぼ同一であると考えられる。このため、実施例による方法では、実際に加工を行う際に生じ得るステージの動作特性を加味して、マスクの姿勢が検出される。このため、実際の加工時における転写イメージの位置精度を高めることができる。
【0045】
次に、工程S4において、実際にXYステージ2が移動する距離が、指令距離Lからわずかにずれている場合について考察する。このずれ量をΔLとする。
【0046】
図5において、第2の転写イメージ41aと第3の転写イメージ40bとの中心位置同士のX軸方向のずれ量をDxとする。このとき、
L×cosθ+Dx=L+ΔL
L×sinθ=Dy
が成立する。ずれ量Dx及びDyを測定すると、上記2つの式から、角度θ及びずれ量ΔLを算出することができる。このように、ずれ量Dx及びDyの2つを測定することにより、XYステージの移動距離の精度を評価することも可能になる。
【0047】
上記実施例では、図2に示したように、2つの評価用パターン40及び41を、正方形の外周に沿った環状パターンとしたが、その他のパターンとしてもよい。第2の評価用パターン41を第1の評価用パターン40に向かって距離Lだけ並進移動させて2つの評価用パターンを重ねたとき、2つの評価用パターンの中心位置を独立して検出することが可能なパターンであればよい。例えば、図6Aに示すように、第2の評価用パターン41を円周に沿った形状としてもよいし、図6Bに示すように、十字形状としてもよい。また、第1の評価用パターン40を円周に沿った形状としてもよいし、十字形状としてもよい。
【0048】
上記実施例では、レーザビームを2回照射して転写イメージを形成することにより、マスクの姿勢を検出した。レーザビームの照射と、加工対象物のX軸方向への移動とを交互に3回以上繰り返してもよい。さらに、Y軸方向に関して複数の位置で、上記工程を繰り返してもよい。3回以上転写イメージを形成することにより、XYステージの複数の現在位置ごとに、マスクの好ましい姿勢を検出することができる。
【0049】
XYステージの移動が、ステージの現在位置に依存した特徴的な挙動を示す場合には、加工時に、ステージの現在位置に応じて加工用マスクの姿勢を変化させることにより、加工用マスクの姿勢補正を、高精度に行うことが可能になる。
【0050】
上記実施例では、SLS方式によるレーザ加工について説明したが、上述のマスクの姿勢検出方法は、マスクを用いたその他のレーザ加工にも適用可能である。
【0051】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施例によるマスクの姿勢検出方法で用いられるレーザ加工装置の概略図である。
【図2】評価用マスクの平面図である。
【図3】加工用マスクの平面図である。
【図4】実施例によるマスクの姿勢検出方法のフローチャートである。
【図5】実施例によるマスクの姿勢検出方法で形成される転写イメージの平面図である。
【図6】評価用マスクに形成されている評価用パターンの他の構成例を示す平面図である。
【図7】(7A)は、SLS方式で用いられるマスクのパターンを示す図であり、(7B)及び(7C)は、SLS方式でレーザビームによって照射される領域の形状を示す図である。
【図8】(8A)は、比較例によるマスクの姿勢検出方法で用いられる評価用マスクのパターンを示す平面図であり、(8B)及び(8C)は、評価用基板に転写された転写イメージを示す平面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 基台
2 XYステージ
3 マスクステージ
5 上側支持部材
10 レーザ光源
11 ホモジナイザ
13 折返しミラー
14 イメージングレンズ系
20 マスク
20A 評価用マスク
20B 加工用マスク
21 マスク用撮像装置
25 加工対象物
26 加工対象物用撮像装置
30 制御装置
40 第1の評価用パターン
40a、41a、40b、41b、101、102、110A、111A 転写イメージ
41 第2の評価用パターン
42、46 アライメントマーク
45 マスクパターン
100A、100B ラインアンドスペースパターン
110、111 評価用パターン
112 視野

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ある間隔を隔てて配置された第1及び第2の評価用パターンが形成された評価用マスクを通して、評価用基板にレーザビームを入射させて、該第1及び第2の評価用パターンを該評価用基板上に転写し、該第1及び第2の評価用パターンがそれぞれ転写された第1及び第2の転写イメージを形成する工程と、
(b)前記評価用基板を、走行軸に平行に、かつ前記第1の転写イメージが前記第2の転写イメージよりも移動方向の前方に配置される向きに、該評価用基板を並進移動させる工程と、
(c)前記工程bにおける並進移動後、前記評価用マスクを通して、前記評価用基板にレーザビームを入射させて、前記第1及び第2の評価用パターンを該評価用基板上に転写し、該第1及び第2の評価用パターンがそれぞれ転写された第3及び第4の転写イメージを形成する工程と、
(d)前記第2の転写イメージと前記第3の転写イメージとの位置関係を計測する工程と、
(e)前記工程dで計測された位置関係、及び前記評価用マスクに形成されている第1の評価用パターンと第2の評価用パターンとの間隔に基づいて、前記走行軸に対する前記評価用マスクの姿勢を求める工程と
を有するレーザ加工用マスクの姿勢検出方法。
【請求項2】
前記工程dにおいて、前記第2の転写イメージと前記第3の転写イメージとの両方を、撮像装置の視野内に同時に配置して画像データを取得し、画像分析を行うことにより、両者の位置関係を計測する請求項1に記載のレーザ加工用マスクの姿勢検出方法。
【請求項3】
(a)ある間隔を隔てて配置された第1及び第2の評価用パターンが形成された評価用マスクを通して、ステージに保持された評価用基板にレーザビームを入射させて、該第1及び第2の評価用パターンを該評価用基板上に転写し、該第1及び第2の評価用パターンがそれぞれ転写された第1及び第2の転写イメージを形成する工程と、
(b)前記評価用基板を、走行軸に平行に、かつ前記第1の転写イメージが前記第2の転写イメージよりも移動方向の前方に配置される向きに、該評価用基板が第1の距離だけ並進移動するように前記ステージを制御する工程と、
(c)前記工程bにおける並進移動後、前記評価用マスクを通して、前記評価用基板にレーザビームを入射させて、前記第1及び第2の評価用パターンを該評価用基板上に転写し、該第1及び第2の評価用パターンがそれぞれ転写された第3及び第4の転写イメージを形成する工程と、
(d)前記第2の転写イメージと前記第3の転写イメージとの位置関係を計測する工程と、
(e)前記工程dで計測された位置関係、及び前記評価用マスクに形成されている第1の評価用パターンと第2の評価用パターンとの間隔に基づいて、前記ステージの移動距離の精度を算出する工程と
を有するレーザ加工用のステージ精度評価方法。
【請求項4】
前記工程dにおいて、前記第2の転写イメージと前記第3の転写イメージとの両方を、撮像装置の視野内に同時に配置して画像データを取得し、画像分析を行うことにより、両者の位置関係を計測する請求項3に記載のレーザ加工用のステージ精度評価方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−258348(P2007−258348A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78923(P2006−78923)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】