説明

レーザ加工装置

【課題】ワークに対するレーザ光の照射位置の温度ドリフトを防止することができるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】ケース11の内部にレーザ光源12と、ガルバノミラー13、偏向機構14及びガルバノモータ15よりなる光走査手段Mとを収容する。前記ガルバノモータ15に駆動回路26を接続する。前記ケース11内に収容された制御装置21の制御部22にエージング制御部43及びレーザ光照射停止部44を設ける。そして、ワークに対するマーキング(加工)動作が行われる以前に、レーザ光源12を停止し、前記エージング制御部43からの制御信号により前記駆動回路26を駆動し、光走査手段Mをエージングし、光走査手段Mの温度を予め適正温度に上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークにレーザ光を照射して、文字、記号或いは図形等のマークを形成したり、ワークを切断したり、或いはワークに穴明けしたりすることができるレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レーザマーカは、レーザ光源と、該レーザ光源から出射されたレーザ光を偏向走査してワークに照射する光走査手段と、前記レーザ光源及び光走査手段の動作を制御する制御装置とを備えている。前記光走査手段は、ガルバノミラー、該ミラーを偏向する偏向機構、該偏向機構を駆動するガルバノモータを備えている。前記ガルバノモータは駆動回路により作動されるようになっている。レーザマーカの電源スイッチがオンされた後、前記制御装置からの動作信号によりレーザ光源及び駆動回路が作動されて、レーザ光源から出射されたレーザ光によりワークのマーキング動作が行われると、レーザ光源及び光走査手段の温度が上昇し、レーザマーカのケース内部の温度も上昇する。この温度上昇の過程でガルバノミラー及びその偏向機構等が熱膨張して該ミラーの位置が変化したり、レーザ光源から出射されるレーザ光の出射角が変化したりする。このため、前記ケース内部の温度が上昇する途中で、マーキング動作が行われた場合と、ケース内部の温度が適正温度に達してからマーキング動作が行われた場合とで、ワークに対するマークの形成位置が異なり、温度ドリフトの問題があった。
【0003】
一方、従来のレーザマーカとして、特許文献1に開示されたものが提案されている。このレーザマーカは、レーザ光源としてのレーザダイオードにヒートシンクを密着したペルチェ素子を接触させ、素子制御部からペルチェ素子に制御信号を出力して、該ペルチェ素子によりレーザダイオードを加熱又は冷却し、該ダイオードを一定の温度に保持して、レーザ光出力の安定化を図るようになっている。
【特許文献1】特開2001−7433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載されたレーザマーカは、電源スイッチがオンされてからレーザダイオードが一定温度に上昇される以前にマーキング動作が行われた場合には、前述したようにワークに対するマークの形成位置の温度ドリフトが生じるという問題があった。
【0005】
レーザマーカ以外のワークをレーザ光により切断したり、穴明けしたりするレーザ加工装置においても、ワークの切断位置や穴明け位置の温度ドリフトの問題が生じる。
本発明の目的は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、ワークに対するレーザ光の照射位置の温度ドリフトを防止し、加工精度を向上することができるレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光を偏向走査する光走査手段と、上記光走査手段を駆動する駆動回路と、予め設定された加工情報に基づいて前記駆動回路を動作させて前記光走査手段を駆動することにより、ワークに前記レーザ光を照射して加工動作を行う制御装置とを備えたレーザ加工装置において、上記制御装置には、電源が投入された場合に、少なくともワークの最初の加工動作が行われる以前の非加工期間において、ワークに対して前記レーザ光を照射させない状態で前記駆動回路を所定時間だけ動作させるエージングを制御するエージング制御手段が備えられていることを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記エージング制御手段は、電源投入後に複数のワークの前記加工動作が行われる場合において、各非加工期間のそれぞれの全期間において前記エージングを行うように構成されていることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記エージング制御手段は、電源投入後に複数のワークの加工動作が行われる場合において、ワークの加工動作が終了してからの非加工時間を計測し、計測された非加工時間が予め設定された基準時間を超えたか否かを判定し、非加工時間が基準時間を越えた場合のみに前記エージングを行うように構成されていることを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1において、前記エージング制御手段は、電源投入後に複数のワークの加工動作が予め設定された所定間隔で行われる場合において、各非加工時間の長さを判定し、判定された非加工時間の長さに比例して、エージング時間の長さを設定し、この設定されたエージング時間に基づいて前記エージングを行うように構成されていることを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1において、温度測定手段が備えられ、前記エージング制御手段は、前記温度測定手段により測定された温度が予め設定された基準温度に達した場合に、前記エージングを停止させるように構成されていることを要旨とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1において、温度測定手段が備えられ、前記エージング制御手段は、前記温度測定手段により測定された温度が、予め設定された基準温度に低下した場合に、前記エージングを再開させるように構成されていることを要旨とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1において、温度測定手段が備えられ、前記エージング制御手段は、電源の投入時に前記温度測定手段により測定された温度に基づいてエージング時間を設定するように構成されていることを要旨とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項において、レーザ加工装置のケース内には、前記駆動回路を冷却する冷却手段が備えられ、前記制御装置は、前記駆動回路がエージングされている期間において、前記冷却手段の動作を停止させる機能を備えていることを要旨とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項において、レーザ加工装置のケース内には、前記レーザ光源から出射された前記レーザ光の光路を遮蔽可能な光吸収材よりなるシャッタ手段が備えられ、前記制御装置は、前記駆動回路がエージングされている期間において、前記シャッタ手段により前記光路を遮断した状態で、前記レーザ光源から前記レーザ光を出射する機能を備えていることを要旨とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項において、前記エージング制御手段は、ワークの加工動作に用いられる加工情報と同じ加工情報に基づいて前記駆動回路及び光走査手段をエージングさせる機能を備えていることを要旨とする。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項において、前記エージングに際して、前記光走査手段を構成するガルバノミラーは最大偏向角度範囲で往復回動されるように構成されていることを要旨とする。
【0017】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項において、前記レーザ光源及び制御手段の少なくともレーザ光源は、レーザ発振ユニットケースに収容され、前記光走査手段及び駆動回路は、走査ユニットケースに収容されていることを要旨とする。
【0018】
請求項13に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項において、レーザ加工装置の本体ケース内には、前記光走査手段を収容する防塵ケースが収容され、該防塵ケースの外面に前記駆動回路が配設されていることを要旨とする。
【0019】
(作用)
この発明は、電源投入判定部により電源が投入されたと判定された場合に、ワークの最初の加工動作が行われる以前の非加工期間において、レーザ光照射停止手段によりワークに対するレーザ光の照射が停止される。そして、前記非加工期間において、エージング制御部からの制御信号により前記駆動回路及び光走査手段が所定時間だけエージングされ、光走査手段の温度が適正温度に上昇され、その後にワークの加工動作が適正に行われる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ワークに対するレーザ光の照射位置の温度ドリフトを防止し、加工精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明のレーザ加工装置をレーザマーカとして具体化した一実施形態を図1〜図5に従って説明する。
最初に、図1に基づいて、レーザマーカの構成について説明する。この図1には、別の実施形態に用いられる複数の構成部品(温度センサ31、冷却ファン32、遮光板33)も組み込まれている。ケース11の内部には、レーザ光源12が所定位置に配設されている。同じくケース11内には前記レーザ光源12から出射されたレーザ光Lを偏向走査するためのガルバノミラー13が偏向機構14により偏向可能に装設され、該偏向機構14はガルバノモータ15により作動されるようになっている。前記ガルバノミラー13の下方には集光レンズ16が配設され、レーザ光Lをコンベア17上のワークWに照射するようになっている。この実施形態では、前記ガルバノミラー13、偏向機構14及びガルバノモータ15等によって光走査手段Mが構成されている。
【0022】
前記ケース11内には、前記レーザ光源12及び光走査手段Mの動作を制御する制御手段としての制御装置21が収容されている。この制御装置21にはCPUを有する制御部22が設けられ、該制御部22には各種の動作プログラムを記憶したリードオンリメモリ(ROM)23、各種のデータを記憶する読み出し、書き込み可能な記憶媒体としてのランダムアクセスメモリ(RAM)24及び各種の時間を設定するためのタイマ25が接続されている。前記制御部22は前記レーザ光源12と接続され、該レーザ光源12に制御信号を出力するようになっている。前記制御部22は前記ガルバノモータ15に接続された駆動回路26に接続され、該駆動回路26に制御信号を出力するようになっている。
【0023】
前記ケース11内には該ケース11内の温度を測定するための温度測定手段としての温度センサ31が配設され、この温度センサ31により検出された温度データが前記制御部22に入力されるようになっている。前記ケース11には前記レーザ光源12及び光走査手段Mを冷却して、それらを適正温度に保持するための冷却手段としての冷却ファン32が収容され、前記制御部22からの制御信号により動作されるようになっている。前記ケース11の内部には、レーザ光を吸収する光吸収材料(例えば、黒アルマイトで表面処理されたアルミニウム板)よりなる遮光板33がアクチュエータ34によって前記レーザ光Lの集光レンズ16より下流の光路を遮蔽する遮蔽位置と、退避位置との間で切り換え可能に配設されている。前記アクチュエータ34は前記制御部22に接続され、該制御部22からの制御信号により動作されるようにしている。
【0024】
前記ケース11の外部には、各種のデータを入力するためのタッチパネル式の操作部として機能する表示画面35を有する操作パネル36が設けられ、該操作パネル36は、前記制御部22に接続されている。前記操作パネル36には電源スイッチ37が設けられている。
【0025】
前記制御部22には、前記RAM24に予め記憶されたマーキング(加工)情報に基づいて、前記駆動回路26に制御信号を出力するためのマーキング制御部41と、前記電源スイッチ37がオンされたか否かを判定する電源投入判定部42とが設けられている。又、前記制御部22には、エージング制御手段としてのエージング制御部43が設けられている。このエージング制御部43は、ワークWに対するマーキング動作(以下加工動作ともいう)が行われる以前に、前記駆動回路26に制御信号を出力して該駆動回路26及び前記光走査手段Mをエージングさせる機能を有している。この実施形態では、前記加工動作とは、一つのワークWに対し例えばA,B,Cの文字を刻印する場合にその全ての文字の一連の刻印動作を言う。又、前記光走査手段Mを動作状態のまま一定時間放置することをエージングと言う。さらに、前記制御部22には、前記エージング制御部43からの制御信号に基づいて、エージングが行われている期間中は、レーザ光源12から出射されたレーザ光Lが前記ワークWに照射されるのを停止するためのレーザ光照射停止部44が設けられている。このレーザ光照射停止部44から前記アクチュエータ34に制御信号が出力されると、遮光板33が遮蔽位置に切り換えられる。この実施形態では、レーザ光源12を作動させて出射されたレーザ光Lを前記遮光板33により遮光することをレーザ光源12のエージングと言う。前記レーザ光照射停止部44の機能を、光走査手段Mのエージング中に前記レーザ光源12に対し停止信号を出力する機能にしてもよい。
【0026】
次に、前記のより構成されたレーザマーカの動作について説明する。
前記エージング制御部43によるエージングのパターンとして、図2に示すように例えば第1〜第5パターンP1〜P5が考えられる。これらの各パターンP1〜P5について、以下に順次説明する。なお、このパターンP1〜P5においては、前記温度センサ31、冷却ファン32及び遮光板33は関係しない。又、図2及び図3に示すパターンP1〜P7においては、前記レーザ光照射停止部44は、光走査手段Mのエージング中に前記レーザ光源12に対し停止信号を出力するように機能する。
【0027】
図2に示す第1パターンP1は、電源スイッチ37がオンされた後に複数のワークWの加工動作(マーキング)が行われる場合において、エージング制御部43から各非加工期間のそれぞれの全期間に亘って前記駆動回路26のエージングを行う制御信号が出力される。
【0028】
図2に示す第2パターンP2は、電源スイッチ37がオンされた後に複数のワークWの加工動作が行われる場合において、制御部22の計時機能によりワークWの加工動作が終了してからの非加工時間が計測され、計測された非加工時間がRAM24に予め設定された基準時間t1を超えたか否かが制御部22により判定され、非加工時間が基準時間t1を越えた場合にエージング制御部43から制御信号が前記駆動回路26に出力される。
【0029】
図2に示す第3パターンP3は、電源スイッチ37がオンされた後に複数のワークWの加工動作が行われる場合において、電源スイッチ37のオンから最初の加工動作が行われるまでの間のみエージング制御部43から制御信号が前記駆動回路26に出力される。
【0030】
図2に示す第4パターンP4は、前記電源スイッチ37がオンされた後に複数のワークWの加工動作が予め設定された所定間隔で行われる場合において、各加工動作の開始以前にエージング制御部43から前記駆動回路26に制御信号がそれぞれ所定時間だけ出力される。このパターンP4においては、エージング時間は、非加工時間よりも短く設定される。
【0031】
図2に示す第5パターンP5は、前記電源スイッチ37がオンされた後に複数のワークWの加工動作が予め設定された所定間隔で行われる場合において、各非加工時間の長さが制御部22により判定され、判定された非加工時間t2(t4)の長さに正比例して、前記駆動回路26のエージング時間t3(t5)の長さが制御部22により演算設定され、エージング制御部43から制御信号が前記エージング時間t3(t5)だけ駆動回路26に出力される。
【0032】
図2に示す第6パターンP6は、前記温度センサ31を用いたものである。この第6パターンP6においては、前記電源スイッチ37がオンされた後に複数のワークWの加工動作が行われる場合において、レーザマーカの電源スイッチ37のオン時に前記温度センサ31により測定された初期温度が制御部22により高い(例えば30℃)と判定された場合には、エージング時間が制御部22により短く設定される。反対に、制御部22により前記初期温度が低い(例えば20℃)と判定された場合には、前記エージング時間が長く設定される。
【0033】
図3に示す第7パターンP7も、前記温度センサ31を用いたものである。この第7パターンP7においては、前記温度センサ31により測定された温度が制御部22により予めRAM24に記憶された基準温度tkに達したと判定された場合に、前記駆動回路26のエージングを停止させるようにしたものである。又、前記測定温度が
予めRAM24に記憶された基準温度tcに達したと判定された場合に、前記駆動回路26のエージングを再開させるようにしている。
【0034】
図4に示す第8パターンP8は、冷却ファン32を用いたものである。この第8パターンP8は、前記エージング制御部43により前記駆動回路26がエージングされている期間は、制御部22からの制御信号により前記冷却ファン32の動作が停止される。
【0035】
図5に示す第9パターンP9は、図1に示す前記レーザ光照射停止部44が前記遮光板33を退避位置から遮蔽位置に切り換えるように機能する。この第9パターンP9は、前記駆動回路26のエージング期間において、アクチュエータ34が作動されて遮光板33が前記レーザ光Lの光路を遮断した状態で、前記レーザ光源12からレーザ光Lが出射され、レーザ光Lは遮光板33によって吸収され、レーザ光源12のエージングが行われる。
【0036】
前述した各パターンP1〜P9において、エージング制御部43から制御信号が前記駆動回路26に出力されて、光走査手段Mのエージングが行われている期間中、マーキング制御部41からのワークWのマーキング(加工)情報と同じマーキング情報に基づいて前記光走査手段Mが動作状態に放置され、光走査手段Mの温度が上昇される。
【0037】
上記実施形態のレーザマーカによれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、ワークWに対する実際のマーキング動作が行われる以前に、制御部22のエージング制御部43からの制御信号により前記駆動回路26を作動させて、光走査手段Mを動作状態に放置するエージングを行うようにした。このため、光走査手段Mの温度が上昇し、光走査手段Mが加熱されて膨張され、通常のマーキング動作を行うことができる適正状態となる。その後、前記レーザ光源12からレーザ光Lを出射してワークWにマークを形成する加工動作を行う。従って、ワークWに対するレーザ光Lの照射位置が正規の照射位置からズレることはなく、マーキング(加工)位置の温度ドリフトを防止し、ワークのマーキング(加工)精度を向上することができる。
【0038】
(2)上記実施形態においては、前記制御部22の制御プログラムを変更するのみで済むため、温度ドリフトを防止するための専用の部品が不要となり、製造を容易に行い、コストの低減を図ることができる。なお、前記温度センサ31、冷却ファン32及び遮光板33等は、レーザマーカに元々備えられているものである。
【0039】
(3)上記実施形態において、前記エージング制御部43の機能として図2の第1パターンP1が設定された場合には、各非加工動作のそれぞれの全期間中エージングが行われるので、エージングを確実に行うことができる。
【0040】
(4)上記実施形態において、前記エージング制御部43の機能として図2の第2パターンP2が設定された場合には、エージングが必要な場合のみ行われるので、消費電力を節減すことができる。
【0041】
(5)上記実施形態において、前記エージング制御部43の機能として図2の第3パターンP3が設定された場合には、レーザマーカの起動時のみ行うので、エージング制御部43の制御プログラムの設定作業を容易に行うことができる。
【0042】
(6)上記実施形態において、前記エージング制御部43の機能として図2の第4パターンP4が設定された場合には、各加工動作毎にエージングが所定期間行われるので、エージングを適正に行うことができる。
【0043】
(7)上記実施形態において、前記エージング制御部43の機能として図2の第5パターンP5が設定された場合には、非加工時間t2,t4の長短によりエージング時間t3,t5が適正に設定され、エージングをさらに適正に行うことができる。
【0044】
(8)上記実施形態において、前記エージング制御部43の機能として図2の第6パターンP6が設定された場合には、電源スイッチ37のオン時の温度の高低に応じて、エージング時間が適正に設定され、エージングを適正に行うことができる。
【0045】
(9)上記実施形態において、前記エージング制御部43の機能として図3の第7パターンP7が設定された場合には、ケース11内の温度が基準温度tkを基準としてエージングの停止が行われるので、無駄なエージングを防止すことができる。
【0046】
(10)上記実施形態において、前記エージング制御部43の機能として図4の第8パターンP8が設定された場合には、エージングが行われている場合には、冷却ファン32が停止されるので、エージング効率を向上することができる。
【0047】
(11)上記実施形態において、前記エージング制御部43の機能として図5の第9パターンP9が設定された場合には、光走査手段Mのエージングが行われている期間に、レーザ光源12のエージングも行われるので、レーザ光源12の温度が上昇され、このレーザ光源12が加熱されて熱膨張し、通常の作動状態の適正温度に上昇される。従って、レーザ光源12のレーザ光Lの出射角のズレが無くなり、ワークに対するレーザ光Lの照射位置の温度ドリフトを防止し、ワークWの加工精度をさらに向上することができる。
【0048】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・図6に示すように、ケース11内に保護ケース51を設け、この保護ケース51の内部に前記光走査手段Mを収容し、保護ケース51の外面に駆動回路26を取り付けたレーザマーカに具体化してもよい。
【0049】
・図7に示すように、ケース11を二つのレーザ発振ユニットケース52、走査ユニットケース53に分割し、レーザ発振ユニットケース52に前記レーザ光源12及び制御装置21の少なくともレーザ光源12を収容し、走査ユニットケース53に前記光走査手段M及び駆動回路26を収容する。そして、レーザ光源12からのレーザ光Lを走査ユニットケース53内に導くレーザ光案内管54を設けたレーザマーカに具体化してもよい。
【0050】
・前記制御装置21及び操作パネル36に対し、前述した第1〜第9パターンP1〜P9のうち少なくとも2つの任意のパターンを選択する機能を付与してもよい。
・前記電源投入判定部42を省略し、電源スイッチ37がオンされると、エージング制御部43から動作信号が出力されるようにしてもよい。
【0051】
・前記エージング制御部43に対し、電源スイッチ37のオン時に温度センサ31により測定された温度に基づいてエージング時間の長さを演算設定する機能を付与してもよい。この場合、測定温度の高低に逆比例するようにエージング時間の長さを設定するのが望ましい。
【0052】
・前記エージングに際して、前記光走査手段Mを構成するガルバノミラー13を最大偏向角度範囲で往復回動されるように構成してもよい。このガルバノミラー13をエージングさせる速度を通常の移動速度よりも速くしてもよい。
【0053】
・前記実施形態では、エージングが予め設定された所定時間だけ行われるようにしたが、作業者がリアルタイムで操作パネル36を操作して指示した所定時間だけエージングが行われるようにしてもよい。
【0054】
・冷却手段として、冷却ファン32に代えて、ペルチェ素子を用いてもよい。
・レーザマーカ以外に、ワークを切断したり、穴明けしたりすることができるレーザ加工装置に具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明のレーザ加工装置をレーザマーカとして具体化した一実施形態を示すブロック回路図。
【図2】加工動作及びエージングのタイミングを示す第1〜第6パターンのタイミングチャート。
【図3】加工動作、エージング及び温度との関係を示すタイミングチャート。
【図4】加工動作、エージング及び冷却ファンの動作の関係を示すタイミングチャート。
【図5】加工動作、エージング、レーザ光及びシャッタの関係を示すタイミングチャート。
【図6】この発明の別の実施形態を示すレーザマーカの略体説明図。
【図7】この発明の別の実施形態を示すレーザマーカの略体説明図。
【符号の説明】
【0056】
L…レーザ光、M…光走査手段、W…ワーク、t1…基準時間、t2,t4…非加工時間、t3,t5…エージング時間、tc,tk…基準温度、11…ケース、12…レーザ光源、13…ガルバノミラー、21…制御装置、26…駆動回路、52…レーザ発振ユニットケース、53…走査ユニットケース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光を偏向走査する光走査手段と、
上記光走査手段を駆動する駆動回路と、
予め設定された加工情報に基づいて前記駆動回路を動作させて前記光走査手段を駆動することにより、ワークに前記レーザ光を照射して加工動作を行う制御装置とを備えたレーザ加工装置において、
上記制御装置には、
電源が投入された場合に、少なくともワークの最初の加工動作が行われる以前の非加工期間において、ワークに対して前記レーザ光を照射させない状態で前記駆動回路を所定時間だけ動作させるエージングを制御するエージング制御手段が備えられていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1において、前記エージング制御手段は、電源投入後に複数のワークの前記加工動作が行われる場合において、各非加工期間のそれぞれの全期間において前記エージングを行うように構成されていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1において、前記エージング制御手段は、電源投入後に複数のワークの加工動作が行われる場合において、ワークの加工動作が終了してからの非加工時間を計測し、計測された非加工時間が予め設定された基準時間を超えたか否かを判定し、非加工時間が基準時間を越えた場合のみに前記エージングを行うように構成されていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項1において、前記エージング制御手段は、電源投入後に複数のワークの加工動作が予め設定された所定間隔で行われる場合において、各非加工時間の長さを判定し、判定された非加工時間の長さに比例して、エージング時間の長さを設定し、この設定されたエージング時間に基づいて前記エージングを行うように構成されていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
請求項1において、温度測定手段が備えられ、前記エージング制御手段は、前記温度測定手段により測定された温度が予め設定された基準温度に達した場合に、前記エージングを停止させるように構成されていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
請求項1において、温度測定手段が備えられ、前記エージング制御手段は、前記温度測定手段により測定された温度が、予め設定された基準温度に低下した場合に、前記エージングを再開させるように構成されていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項7】
請求項1において、温度測定手段が備えられ、前記エージング制御手段は、電源の投入時に前記温度測定手段により測定された温度に基づいてエージング時間を設定するように構成されていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項において、レーザ加工装置のケース内には、前記駆動回路を冷却する冷却手段が備えられ、前記制御装置は、前記駆動回路がエージングされている期間において、前記冷却手段の動作を停止させる機能を備えていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、レーザ加工装置のケース内には、前記レーザ光源から出射された前記レーザ光の光路を遮蔽可能な光吸収材よりなるシャッタ手段が備えられ、前記制御装置は、前記駆動回路がエージングされている期間において、前記シャッタ手段により前記光路を遮断した状態で、前記レーザ光源から前記レーザ光を出射する機能を備えていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項において、前記エージング制御手段は、ワークの加工動作に用いられる加工情報と同じ加工情報に基づいて前記駆動回路及び光走査手段をエージングさせる機能を備えていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項において、前記エージングに際して、前記光走査手段を構成するガルバノミラーは最大偏向角度範囲で往復回動されるように構成されていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項において、前記レーザ光源及び制御手段の少なくともレーザ光源は、レーザ発振ユニットケースに収容され、前記光走査手段及び駆動回路は、走査ユニットケースに収容されていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項において、レーザ加工装置の本体ケース内には、前記光走査手段を収容する防塵ケースが収容され、該防塵ケースの外面に前記駆動回路が配設されていることを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−296258(P2008−296258A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146231(P2007−146231)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000106221)サンクス株式会社 (578)
【Fターム(参考)】