説明

レーザ加工装置

【課題】レーザ加工の際、対象物からの反射光の照射による非線形光学結晶の温度上昇に起因したレーザ光特性の変動を低減できるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】レーザ加工装置は、基本波レーザ光を出力するレーザ発振器1と、基本波レーザ光を波長変換して高調波レーザ光を出力する非線形光学結晶2と、非線形光学結晶2と基板12の間に配置され、開口位置および開口率が調整可能なアパーチャ5と、基板12への入射光の光強度分布を測定するための入射光測定器8と、基板12からの反射光の光強度分布を測定するための反射光測定器9と、入射光測定器8で測定された入射光の位置およびサイズ、ならびに反射光測定器9で測定された反射光の位置およびサイズに基づいて、アパーチャ5の開口位置および開口率を制御するための制御装置14などで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非線形光学結晶で波長変換したレーザ光を対象物に照射してレーザ加工を行うためのレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IGBTなどのスイッチングデバイスでは、レーザ光の照射により、基板表面側を温度上昇させずに、基板裏面側に形成された不純物層のみを高温加熱して電気的に活性化している。この場合、Nd:YLFレーザ装置(波長1053nm)やNd:YAGレーザ装置(波長1064nm)などの固体レーザ光源から基本波レーザ光を出射させ、さらに非線形光学結晶(例えば、LBO結晶:LiB)に入射して、2倍波に波長変換されたパルスレーザ光を基板に照射する手法が広く用いられている。
【0003】
非線形光学結晶から出射したレーザ光の出力およびパルス幅は、非線形光学結晶の結晶軸とレーザ光軸のなす角度に依存しており、さらに非線形光学結晶の結晶軸は結晶温度によって変化する。そのため、目標とするレーザ出力とパルス幅を維持するためには、加工中の結晶温度変動を抑制する必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1では、レーザ発振器に搭載されている非線形光学結晶の入射側端部および出射側端部に温調器をそれぞれ配置し、非線形光学結晶の一方の端部は、レーザ光照射直後において最大パワーが得られる温度に維持し、非線形光学結晶の他方の端部は、レーザ光照射に伴う自己加熱による温度上昇後に最大の出力パワーが得られる温度に維持することによって、レーザ特性の変動を抑制している。
【0005】
また、特許文献2では、波長変換素子の入射側および出射側に光学フィルタをそれぞれ配置し戻り光を遮断することによって、レーザ発振の安定化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−42371号公報
【特許文献2】特開平4204834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなレーザ加工装置を用いてレーザ照射による活性化を行う際、基板の照射面が鏡面仕上げである場合や照射領域が溶融する程度のエネルギー密度で照射した場合、基板に照射したビームの40%程度が反射される。基板からの反射光は、基板に入射した光路に沿って逆行し、非線形光学結晶を再び照射する。そのため、非線形光学結晶は、入射光による自己加熱だけでなく、入射光路外の領域が反射光の照射によって加熱されることになる。その結果、非線形光学結晶の温度がレーザ加工中に変動してしまい、レーザ光の出力やパルス幅が変動するといった問題が発生する。
【0008】
また、温調器の制御能力を超える強い反射光で連続的に照射された場合も、非線形光学結晶の温度が過度に上昇し、レーザ光の出力やパルス幅が変動する問題が発生する。
【0009】
本発明の目的は、レーザ加工の際、対象物からの反射光の照射による非線形光学結晶の温度上昇に起因した、レーザ光の出力やパルス幅などのレーザ光特性の変動を低減できるレーザ加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るレーザ加工装置は、基本波レーザ光を出力するレーザ発振器と、
基本波レーザ光を波長変換して高調波レーザ光を出力する非線形光学結晶と、
非線形光学結晶と対象物の間に配置され、開口位置および開口率が調整可能なアパーチャと、
対象物への入射光の光強度分布を測定するための入射光測定器と、
対象物からの反射光の光強度分布を測定するための反射光測定器と、
入射光測定器で測定された入射光の位置およびサイズ、ならびに反射光測定器で測定された反射光の位置およびサイズに基づいて、アパーチャの開口位置および開口率を制御するための制御装置とを備えることを特徴とする。
【0011】
また本発明に係るレーザ加工装置は、基本波レーザ光を出力するレーザ発振器と、
基本波レーザ光を波長変換して高調波レーザ光を出力する非線形光学結晶と、
非線形光学結晶と対象物の間に配置され、非線形光学結晶と対象物の間の光路を開閉するためのシャッタと、
対象物からの反射光の強度を測定するための反射光測定器と、
反射光測定器で測定された反射光強度に基づいてシャッタ動作を制御し、非線形光学結晶への反射光の連続照射時間を調整するための制御装置とを備えることを特徴とする。
【0012】
また本発明に係るレーザ加工装置は、基本波レーザ光を出力するレーザ発振器と、
基本波レーザ光を波長変換して高調波レーザ光を出力する非線形光学結晶と、
レーザ光の照射位置に対する対象物の相対位置を制御するためのステージと、
対象物からの反射光の強度を測定するための反射光測定器と、
反射光測定器で測定された反射光強度に基づいてステージ動作を制御し、非線形光学結晶への反射光の連続照射時間を調整するための制御装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、入射光の位置およびサイズ、ならびに反射光の位置およびサイズに基づいて、アパーチャの開口位置および開口率を制御することによって、対象物からの反射光の照射による非線形光学結晶の温度上昇を抑制できる。その結果、レーザ加工の際、非線形光学結晶の温度上昇に起因したレーザ光特性の変動を低減できる。
【0014】
また本発明によれば、対象物からの反射光強度に基づいてシャッタ動作またはステージ動作を制御し、非線形光学結晶への反射光の連続照射時間を調整することによって、対象物からの反射光の照射による非線形光学結晶の温度上昇を抑制できる。その結果、レーザ加工の際、非線形光学結晶の温度上昇に起因したレーザ光特性の変動を低減できる。
【0015】
また、非線形光学結晶への反射光照射を阻止できるため、過度の温度上昇による装置停止や非線形光学結晶の劣化、破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態を示す構成図である。
【図2】非線形光学結晶の温度、レーザ出力、パルス幅との相関関係を示すグラフである。
【図3】図3(a)は加工点におけるレーザ光の光強度分布を示し、図3(b)は基板12におけるレーザ光の走査方法を示す。
【図4】本発明の第1実施形態に係る動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態を示す構成図である。
【図6】反射光強度と単位時間当たりの非線形光学結晶の温度上昇との関係を示すグラフである。
【図7】基板の加工時間と非線形光学結晶の温度上昇との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
図1は、本発明の第1実施形態を示す構成図である。レーザ加工装置は、レーザ発振器1と、非線形光学結晶2と、分岐ミラー7と、ビームホモジナイザ10と、フォーカスレンズ11と、ステージ13などで構成される。
【0018】
レーザ発振器1は、基本波レーザ光を出力するものであり、例えば、Nd:YLFレーザ装置(波長1053nm)やNd:YAGレーザ装置(波長1064nm)などの固体レーザ光源で構成できる。こうした固体レーザ光源は、例えば、励起用光源であるレーザダイオードと、ポンピングチャンバと、固体レーザ素子と、光共振器と、内蔵シャッタなどで構成され、シャッタ開閉によるQスイッチ動作によって高出力のパルスレーザを出射する。パルス発振レーザを採用した場合、レーザ照射領域を短時間に高温加熱することができる。
【0019】
非線形光学結晶2は、レーザ発振器1からの基本波レーザ光を波長変換して、高調波レーザ光(例えば、2倍波)を出力する機能を有し、例えば、LBO結晶で構成できる。
【0020】
分岐ミラー7は、通過する光の一部を反射し、残りを透過させる機能を有し、ここでは非線形光学結晶2からの高調波レーザ光の大部分を反射して加工対象である基板12に入射させるとともに、高調波レーザ光の一部を透過させて、後述する入射光測定器8に入射させている。さらに、分岐ミラー7は、基板12で反射して入射光路に沿って逆行する反射光の一部を透過させて、後述する反射光測定器9に入射させている。
【0021】
ビームホモジナイザ10は、非線形光学結晶2からのレーザ光を、断面が略矩形状である光ビームに造形する機能を有する。フォーカスレンズ11は、ビームホモジナイザ10を出射した略矩形状の光ビームを集光して、基板12の表面上にY方向に沿ったライン状の照射領域を形成する。ステージ13は、制御装置14からの指令に応じて、基板12を戴置した状態でX−Y方向の移動および位置決めを行う機能を有する。
【0022】
本実施形態において、非線形光学結晶2の温度を測定するための温度測定素子(不図示)と、非線形光学結晶2を加熱するためのヒータ3と、ヒータ3の発熱量を制御するための温調器4とが設けられ、非線形光学結晶2の温度を一定に保つための温度安定化回路を構成している。温度安定の基準温度は、制御装置14によって設定される。
【0023】
また、非線形光学結晶2と基板12の間、好ましくは非線形光学結晶2と分岐ミラー7の間、より好ましくは非線形光学結晶2の出射面に近接して、開口位置および開口率が調整可能なアパーチャ5が設けられる。アパーチャ5は、基板12からの反射光が非線形光学結晶2に入るエリアを制限して、反射光の照射による非線形光学結晶の温度上昇を抑制する機能を有する。アパーチャ5の開口位置および開口率は、制御装置14によって制御される。
【0024】
入射光測定器8は、例えば、撮像素子などで構成され、非線形光学結晶2を出射して分岐ミラー7を通過したレーザ光が受光できるように設置され、基板12に入射するレーザ光の光強度分布を測定する。そのため分岐ミラー7と入射光測定器8との間には、基板12の表面と入射光測定器8の受光面とが互いに共役になるように結像レンズを設けることが好ましい。
【0025】
反射光測定器9は、例えば、撮像素子などで構成され、基板12で反射して分岐ミラー7を通過した光が受光できるように設置され、非線形光学結晶2に入る反射光の光強度分布を測定する。そのため分岐ミラー7と反射光測定器9との間には、非線形光学結晶2の出射面と反射光測定器9の受光面とが互いに共役になるように結像レンズを設けることが好ましい。
【0026】
制御装置14は、例えば、マイクロプロセッサなどで構成され、装置全体の動作を制御するとともに、入射光測定器8で測定された入射光の位置およびサイズ、ならびに反射光測定器9で測定された反射光の位置およびサイズに基づいて、アパーチャ5の開口位置および開口率を制御する。
【0027】
図2は、非線形光学結晶2の温度、レーザ出力、パルス幅との相関関係を示すグラフである。横軸は非線形光学結晶(LBO結晶)の温度(F)、左の縦軸は非線形光学結晶2から出射される高調波レーザ光の出力(W)(■のグラフ)、右の縦軸は高調波レーザ光のパルス幅(ナノ秒)(▲のグラフ)である。パルス幅の温度依存性はレーザ出力の温度依存性よりも大きく、レーザ出力と比べてパルス幅は一定となる範囲が狭く、非線形光学結晶2の温度変化に敏感である。また、レーザ出力、パルス幅とも安定な値となる温度範囲から高温側は、低温側に比べて、非線形光学結晶2の温度変化によるレーザ出力およびパルス幅の変化量が大きいことが判る。
【0028】
図3(a)は加工点におけるレーザ光の光強度分布を示し、図3(b)は基板12におけるレーザ光の走査方法を示す。非線形光学結晶2で波長変換されたレーザ光Lは、ビームホモジナイザ10によって、図3(a)に示すようにY方向に細長い矩形状の断面形状を有するように造形され、X方向の強度分布LxおよびY方向の強度分布Lyも矩形状になる。レーザ光Lは、さらにフォーカスレンズ11で集光され、ステージ13に載置した基板12を照射する。ステージ13は、図3(b)に示すように、+X方向に定速移動し、基板12を通過した時点で−Y方向にステップ移動し、続いて−X方向に定速移動し、基板12を通過した時点で−Y方向にステップ移動し、以下、同様な往復走査を繰り返すことによって基板12の全面に渡ってレーザ照射を行う。
【0029】
こうした基板12のレーザ照射を行う際、レーザ光の一部が基板12で反射し、その反射光が光路に沿って戻り、非線形光学結晶2を再び照射することがある。非線形光学結晶2の入射光路外に反射光が照射されると、入射光のみの場合と比較して非線形光学結晶2の温度特性が変化する。例えば、図2に示す温度特性を基準にすると、見かけ上高温側にシフトする。そのため、図2に示す温度特性に基づいて温度制御をしていても、基板加工中にレーザ出力およびパルス幅は当初設定した値から変化し、かつ反射光のばらつきが原因となって変動することがある。
【0030】
図4は、本実施形態に係る動作を示すフローチャートである。まずステップa1において、基板12のレーザ照射中に、分岐ミラー7で分岐した入射光の一部および反射光の一部を光強度測定器8、9で測定して、入射光および反射光の光強度分布、特にレーザ出力、レーザ照射位置、レーザ光のサイズ等の情報を制御装置14に出力する。
【0031】
次にステップa2において、制御装置14は、光強度測定器8、9から信号に基づいて、非線形光学結晶2の入射光路外の反射光成分の有無を判定する。反射光成分が無ければ、ステップa4へジャンプする。
【0032】
一方、反射光成分がある場合、ステップa3へ移行する。入射光と反射光の位置関係に関して、レーザ光が基板12の照射面に対して垂直に入射している場合、入射光と反射光の中心は一致するが、基板12の照射面に対してレーザ光が垂直に入射していない場合や基板12表面の照射面に凹凸がある場合は、入射光と反射光の中心がずれる。このため、ステップa3では、制御装置14は、光強度測定器8、9で測定した入射光および反射光の位置およびサイズ等の情報に基づいて、入射光路外の反射光成分が所定レベル以下、好ましくは入射光成分の10%以下となるようにアパーチャ5の開口位置および開口率を調整する。
【0033】
こうしたアパーチャ制御により、基板12からの反射光の照射による非線形光学結晶2の温度上昇を抑制できる。その結果、レーザ加工の際、非線形光学結晶2の温度上昇に起因したレーザ光特性の変動を低減できる。
【0034】
ここで、アパーチャ5の開口部は円形形状であることが好ましく、これにより入射光にあまり影響を及ぼすことなく、非線形光学結晶2に戻る反射光を効率的に遮蔽できる。
【0035】
ステップa4では、非線形光学結晶2への反射光照射が無いか、あるいは低減した状態で基板12のレーザ照射を続行することができる。そして、再びステップa1に戻って、上述と同様なフィードバック動作を実行する。
【0036】
実施の形態2.
図5は、本発明の第2実施形態を示す構成図である。本実施形態において、レーザ発振器1、非線形光学結晶2、ヒータ3、温調器4、分岐ミラー7、入射光測定器8、反射光測定器9、ビームホモジナイザ10、フォーカスレンズ11、ステージ13は、図1に示した第1実施形態のものと同じであるため、重複説明を省く。
【0037】
本実施形態では、アパーチャ5の代わりに、非線形光学結晶2と基板12の間、好ましくは非線形光学結晶2と分岐ミラー7の間にシャッタ6を設けている。シャッタ6が光路から退却している場合、非線形光学結晶2からの入射光だけでなく、基板12からの反射光も通過可能になる。一方、シャッタ6が光路中に存在する場合、入射光および反射光の両方が遮断される。そこで、シャッタ6の開閉時間を制御することによって、非線形光学結晶2への反射光の連続照射時間を調整することが可能になる。こうしたシャッタ6の開閉動作は、制御装置14によって制御される。
【0038】
さらに、こうしたシャッタ6の代わりに、レーザ光の照射領域が基板12から外れているオーバーラン時間の長さを制御するステージ動作によっても、非線形光学結晶2への反射光の連続照射時間を調整することが可能である。
【0039】
図6は、反射光強度と単位時間当たりの非線形光学結晶の温度上昇Δtとの関係を示すグラフである。基板12からの反射光の強度が所定レベル以下である場合(図6の範囲B)、非線形光学結晶2の温度上昇Δtはあまり顕著に現れない。従って、反射光強度が範囲Bにあれば、ヒータ3および温調器4による温度安定化動作が正常に機能する。しかし、反射光の強度が所定レベルを超えると、単位時間当たりの温度上昇Δtが急激に増加することが判る。
【0040】
図7は、基板の加工時間と非線形光学結晶の温度上昇Δtとの関係を示すグラフである。基板12をレーザ照射している間、基板12からの反射光が非線形光学結晶2を照射し続けるため、基板12の温度上昇Δtは増加し続ける。レーザ光の照射領域が基板12から外れると(オーバーラン)、基板12の温度上昇Δtは急速に低下する。そのためオーバーラン時間の長さを制御することによって、非線形光学結晶2の温度を調整することが可能になる。
【0041】
図8は、本実施形態に係る動作を示すフローチャートである。まずステップb1において、基板12のレーザ照射中に、分岐ミラー7で分岐した反射光の一部を光強度測定器8で測定して、反射光の強度情報を制御装置14に出力する。制御装置14には、図6に示す反射光強度と非線形光学結晶2の温度上昇の相関データ、および図7に示す基板の加工時間と非線形光学結晶の温度上昇との相関データが予め登録されている。
【0042】
次にステップb2において、制御装置14は、光強度測定器8で測定した反射光強度が、図6中に示す範囲B内であるか否か、即ち、温調器4の制御能力範囲内であるか否かを判定する。反射光強度が範囲B内にあれば、ステップb4へジャンプする。
【0043】
一方、反射光強度が範囲B内になければ、ステップb3へ移行し、制御装置14は、図7に示すように反射光強度と連続照射時間から算出される非線形光学結晶2の温度上昇を記録していき、安定なレーザ特性が得られる非線形光学結晶2の温度範囲(例えば、図2でパルス幅変動が5%以下となる範囲Aに相当する範囲)から外れないように、基板12のオーバーラン時間の長さまたはシャッタ6の開閉時間を制御する。これにより、非線形光学結晶2への反射光の連続照射時間を調整することができ、その結果、レーザ加工の際、非線形光学結晶2の温度上昇に起因したレーザ光特性の変動を低減できる。
【0044】
さらに、本実施形態では、非線形光学結晶2への反射光照射を完全に阻止できるため、過度の温度上昇による装置停止や非線形光学結晶2の劣化、破損を防止できる。
【0045】
そして、ステップb4では、非線形光学結晶2の温度があまり高くない状態で基板12のレーザ照射を続行することができる。そして、再びステップb1に戻って、上述と同様なフィードバック動作を実行する。
【符号の説明】
【0046】
1 レーザ発振器、 2 非線形光学結晶、 3 ヒータ、 4 温調器、
5 アパーチャ、 6 シャッタ、 7 分岐ミラー、 8 入射光測定器、
9 反射光測定器、 10 ビームホモジナイザ、 11 フォーカスレンズ、
12 基板、 13 ステージ、 14 制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本波レーザ光を出力するレーザ発振器と、
基本波レーザ光を波長変換して高調波レーザ光を出力する非線形光学結晶と、
非線形光学結晶と対象物の間に配置され、開口位置および開口率が調整可能なアパーチャと、
対象物への入射光の光強度分布を測定するための入射光測定器と、
対象物からの反射光の光強度分布を測定するための反射光測定器と、
入射光測定器で測定された入射光の位置およびサイズ、ならびに反射光測定器で測定された反射光の位置およびサイズに基づいて、アパーチャの開口位置および開口率を制御するための制御装置とを備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
制御装置は、非線形光学結晶において入射光路外の反射光成分が入射光の10%以下となるように、アパーチャの開口位置および開口率を制御することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
アパーチャの開口部が円形形状であることを特徴とする請求項2記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
基本波レーザ光を出力するレーザ発振器と、
基本波レーザ光を波長変換して高調波レーザ光を出力する非線形光学結晶と、
非線形光学結晶と対象物の間に配置され、非線形光学結晶と対象物の間の光路を開閉するためのシャッタと、
対象物からの反射光の強度を測定するための反射光測定器と、
反射光測定器で測定された反射光強度に基づいてシャッタ動作を制御し、非線形光学結晶への反射光の連続照射時間を調整するための制御装置とを備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
基本波レーザ光を出力するレーザ発振器と、
基本波レーザ光を波長変換して高調波レーザ光を出力する非線形光学結晶と、
レーザ光の照射位置に対する対象物の相対位置を制御するためのステージと、
対象物からの反射光の強度を測定するための反射光測定器と、
反射光測定器で測定された反射光強度に基づいてステージ動作を制御し、非線形光学結晶への反射光の連続照射時間を調整するための制御装置とを備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
レーザ発振器は、パルス発振レーザであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
非線形光学結晶の温度を調整するための温度調整装置をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−179325(P2010−179325A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23371(P2009−23371)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】