説明

レーザ測定装置

【課題】レーザ光の走査方向を様々な向きに変化させやすく設置場所に応じた多様なエリア設定が可能な構成をより小型且つ簡易に実現する。
【解決手段】レーザ測定装置1は、偏向部41を中心軸42aに対して相対的に変位させることで、空間に照射されるレーザ光L1の水平面に対する傾斜角度を変化させる傾斜角度変更部100を備え、更に、偏向部41からのレーザ光L1の走査経路上に配置される受光面91を備え、当該受光面91に入射するレーザ光L1の入射高さを検出する受光センサ90が設けられている。そして、レーザダイオード10にてレーザ光L1が発生してから当該レーザ光L1に応じた反射光がフォトダイオード20によって検出されるまでの経過時間を検出すると共に、その経過時間と受光センサ90によって検出された入射高さとに基づいて検出物体の位置を検出するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザ光を用いて検出物体までの距離や方位を検出する技術として例えば特許文献1のような装置が提供されている。この特許文献1の装置では、レーザ光発生手段からのレーザ光の光軸上に、レーザ光を透過させ、かつ検出物体からの反射光を検出手段に向けて反射する光アイソレータを設けている。さらに、光アイソレータを透過するレーザ光の光軸上において当該光軸方向の中心軸を中心として回動する凹面鏡を設け、この凹面鏡によってレーザ光を空間に向けて反射させると共に、検出物体からの反射光を光アイソレータに向けて反射させることで360°の水平走査を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2789741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の技術では凹面鏡の回動により360°の水平走査を可能とし、検出領域(レーザ光による走査がなされる領域)を装置の周囲全体にまで拡大しているが、その一方で、検出領域が平面に限定されてしまうという問題がある。即ち、凹面鏡から空間に向けて反射されたレーザ光は所定平面(走査平面)内で走査がなされるため、その走査平面から外れた領域については検出が不能となる。
【0005】
例えば、特許文献1のような水平走査タイプのレーザレーダ装置を用いて人の侵入検出を行おうとする場合、一般的には図10(A)のように一定の高さで水平走査がなされるようにレーザレーダ装置を配置する方法が考えられるが、このような配置とすると、下方のエリアが死角となり、例えば低姿勢(例えば匍匐前進のような姿勢)で進入する場合に検出ができなくなる(図10(A)の符号AR1参照)。また、図10(B)のようにドアと平行に走査を行うような場合、ドアと走査エリアとの間に死角(符号AR2参照)ができるような場合もありうる。このような場合、レーザの走査方向をレイアウトに合わせて変更できることが望ましいが、特許文献1のような構成では、レイアウトに応じた微調整が困難であった。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、レーザ光の走査方向を様々な向きに変化させやすく設置場所に応じた多様なエリア設定が可能な構成をより小型且つ簡易に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、レーザ光を発生させるレーザ光発生手段と、前記レーザ光発生手段にて前記レーザ光が発生したときに、当該レーザ光が検出物体にて反射した反射光を検出する光検出手段と、所定の中心軸を中心として回動可能に構成された偏向手段を備えるとともに、当該偏向手段により前記レーザ光を空間に向けて偏向させ、且つ前記反射光を前記光検出手段に向けて偏向する回動偏向手段と、前記回動偏向手段を駆動する駆動手段と、前記レーザ光発生手段又は前記偏向手段若しくは前記レーザ光発生手段から前記偏向手段までの経路上に配される光学部品を前記中心軸に対して相対的に変位させることで、前記空間に照射される前記レーザ光の前記中心軸と直交する水平面に対する傾斜角度を変化させる傾斜角度変更手段と、前記偏向手段からの前記レーザ光の走査経路上に配置される受光面を備え、当該受光面に入射する前記レーザ光の入射高さを検出する高さ検出手段と、前記レーザ光発生手段にて前記レーザ光が発生してから当該レーザ光に応じた前記反射光が前記光検出手段によって検出されるまでの経過時間を検出する時間検出手段と、前記高さ検出手段によって検出された前記入射高さと、前記時間検出手段によって検出された前記経過時間とに基づいて前記検出物体の位置を検出する位置検出手段と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のレーザ測定装置において、前記傾斜角度変更手段は、前記偏向手段を変位させることで当該偏向手段への前記レーザ光の入射角度を変更することを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載のレーザ測定装置において、前記傾斜角度変更手段は、前記偏向手段を揺動可能に支持する支持機構と、外部操作可能な操作部と、前記操作部に対する外部操作に応じて前記支持機構による前記偏向手段の支持姿勢を変化させる連動機構と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2に記載のレーザ測定装置において、前記傾斜角度変更手段が、前記偏向手段を揺動可能な偏向手段駆動部と、前記偏向手段駆動部を制御する制御手段と、を備え、前記偏向手段駆動部が前記制御手段による制御に応じて前記偏向手段を駆動することで前記入射角度を変更することを特徴としている。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のレーザ測定装置において、前記高さ検出手段は、前記受光面が前記中心軸の方向に沿って長手状に延びる受光センサからなることを特徴としている。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のレーザ測定装置において、前記高さ検出手段は、受光素子が前記中心軸の方向に並ぶ一次元センサからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明は、レーザ光発生手段と、レーザ光発生手段にてレーザ光が発生したときに、当該レーザ光が検出物体にて反射した反射光を検出する光検出手段と、所定の中心軸を中心として回動可能に構成された偏向手段を備えるとともに、当該偏向手段によりレーザ光を空間に向けて偏向させ、且つ反射光を光検出手段に向けて偏向する回動偏向手段と、回動偏向手段を駆動する駆動手段とを備え、更に、レーザ光発生手段又は偏向手段若しくはレーザ光発生手段から偏向手段までの経路上に配される光学部品を中心軸に対して相対的に変位させることで、空間に照射されるレーザ光の中心軸と直交する水平面に対する傾斜角度を変化させる傾斜角度変更手段が設けられている。
このようにすると、レーザ光発生手段又は偏向手段若しくはこれらの間の経路に介在する光学部品を変位させることでレーザ光の傾斜角度を変化させることができるため、例えばケース全体を変位させるといった大掛かりな構成を用いずにレーザ光を様々な方向に照射できるようになり、設置場所に応じた多様なエリア設定が可能となる。
更に、偏向手段からのレーザ光の走査経路上に配置される受光面を備え、当該受光面に入射するレーザ光の入射高さを検出する高さ検出手段と、レーザ光発生手段にてレーザ光が発生してから当該レーザ光に応じた反射光が光検出手段によって検出されるまでの経過時間を検出する時間検出手段と、高さ検出手段によって検出された入射高さと、時間検出手段によって検出された経過時間とに基づいて検出物体の位置を検出する位置検出手段とが設けられている。
このようにすると、偏向手段の変位によって変わり得るレーザ光の向きを、所定位置(受光面)に実際に入射するレーザ光の高さを検出して求めることができるため、簡易かつ小型化可能な構成で精度の高い方向検出、ひいては精度の高い位置検出が可能となる。
【0014】
請求項2の発明では、偏向手段を変位させることで当該偏向手段へのレーザ光の入射角度を変更するように傾斜角度変更手段が構成されている。このように比較的大きい偏向手段を変位させるようにすると、傾きの微調整を行いやすい構成を複雑な構成を用いずに実現しやすくなる。
【0015】
請求項3の発明では、傾斜角度変更手段が、偏向手段を揺動可能に支持する支持機構と、外部操作可能な操作部と、操作部に対する外部操作に応じて支持機構による偏向手段の支持姿勢を変化させる連動機構とを備えている。このようにすると、外部操作によって偏向手段を変位させ得る構成を大掛かりで複雑な構成を用いることなく実現できる。また、ユーザが実際に操作部を操作しながら傾斜角度を変更できるため、傾斜角度の微調整が行いやすくなる。
【0016】
請求項4の発明では、傾斜角度変更手段が、偏向手段を揺動可能な偏向手段駆動部と、偏向手段駆動部を制御する制御手段とを備えており、偏向手段駆動部は、制御手段による制御に応じて偏向手段を駆動することで入射角度を変更している。このようにすると、偏向手段駆動部に対する制御によって偏向手段を変位させることができるため、傾斜角度の変更作業に要する労力を抑えることができる。
【0017】
請求項5の発明は、受光面が中心軸の方向に沿って長手状に延びる受光センサによって高さ検出手段が構成されている。このようにすると、より小型且つ安価な構成で高さ検出手段を実現することができ、装置全体の小型化、コスト低減を図りやすくなる。
【0018】
請求項6の発明は、受光素子が中心軸の方向に並ぶ一次元センサによって高さ検出手段が構成されている。このようにすると、より一層小型且つ安価な構成で高さ検出手段を実現することができ、装置全体の一層の小型化、コスト低減を図りやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、第1実施形態に係るレーザ測定装置の全体構成を概略的に例示する断面図である。
【図2】図2は、図1のレーザ測定装置の電気的構成を概略的に例示するブロック図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係るレーザ測定装置で用いられる傾斜角度変更部を概略的に例示する斜視図である。
【図4】図4(A)は、図3の傾斜角度変更部を概念的に示す側面図であり、図4(B)は、図4(A)の状態から傾斜角度を変更した様子を概念的に示す側面図である。
【図5】図5は、第1実施形態に係るレーザ測定装置の使用例を示す説明図である。
【図6】図6は、図5の使用例に関し、レーザの走査エリアを概念的に例示する斜視図である。
【図7】図7は、第1実施形態に係るレーザ測定装置についての図5とは異なる使用例を示す説明図である。
【図8】図8は、第2実施形態に係るレーザ測定装置の全体構成を概略的に例示する断面図である。
【図9】図9(A)は、第2実施形態に係るレーザ測定装置における偏向部の支持機構を概略的に例示する斜視図であり、図9(B)は、第2実施形態に係るレーザ測定装置における駆動部を概念的に例示する説明図である。
【図10】図10(A)は、従来のレーザ測定装置を用いた侵入検出方法の一例を示す説明図であり、図10(B)は、従来における図10(A)とは異なる検出方法を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、本発明のレーザ測定装置を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
(全体構成)
まず、図1、図2等を参照して第1実施形態に係るレーザ測定装置の全体構成について説明する。なお、図1は、第1実施形態に係るレーザ測定装置の全体構成を概略的に例示する断面図である。また、図2は、図1のレーザ測定装置の電気的構成を概略的に例示するブロック図である。
【0021】
図1に示すように、レーザ測定装置1は、レーザダイオード10と、検出物体からの反射光L2を受光するフォトダイオード20とを備え、検出物体までの距離や方位を検出する装置として構成されている。
【0022】
レーザダイオード10は、「レーザ光発生手段」の一例に相当するものであり、図2に示すように、制御回路70の制御により、図示しない駆動回路からパルス電流を受け、このパルス電流に応じたパルスレーザ光(レーザ光L1)を間欠的に出射している。なお、図1では、レーザダイオード10から検出物体に至るまでのレーザ光の経路を符号L1(太線矢印)にて概念的に例示し、検出物体からフォトダイオードに至るまでの反射光を符号L2にて概念的に例示している。
【0023】
フォトダイオード20は、「受光手段」の一例に相当するものであり、レーザダイオード10からレーザ光L1が発生し、そのレーザ光L1が検出物体にて反射したとき、その反射光L2を受光して電気信号に変換している。なお、検出物体からの反射光については所定領域のものが偏向部41に取り込まれる構成となっており、図1では、符号L2で示す2つのライン間の領域の反射光が取り込まれる例を示している。
【0024】
レーザダイオード10から出射されるレーザ光L1の光軸上にはレンズ60が設けられている。このレンズ60は、コリメートレンズとして構成されるものであり、レーザダイオード10からのレーザ光L1を平行光に変換している。
【0025】
レンズ60を通過したレーザ光L1の光路上には、ミラー30が設けられている。このミラー30は、レンズ60を透過したレーザ光L1の光軸に対して傾斜した反射面30aを備え、レンズ60を透過したレーザ光L1を回動偏向機構40に向けて反射させている。具体的には、レンズ60を通過した水平方向のレーザ光L1をミラー30によって垂直方向(後述する中心軸42aと平行な方向)に反射させており、その反射した垂直方向のレーザ光L1が回動偏向機構40の偏向部41に入射するようになっている。
【0026】
回動偏向機構40は、「回動偏向手段」の一例に相当するものであり、平坦な反射面41aを有するミラーからなる偏向部41と、この偏向部41を保持しつつ偏向部41の傾斜角度を変更可能に構成される傾斜角度変更部100と、この傾斜角度変更部100に連結された軸部42と、この軸部42を回転可能に支持する図示しない軸受とを備えている。
【0027】
偏向部41は、「偏向手段」の一例に相当するものであり、ミラー30で反射されたレーザ光L1の光軸上に配置されると共に、中心軸42a(所定の中心軸)を中心として回動可能とされている。この偏向部41は、レーザダイオード10からのレーザ光L1を空間に向けて偏向(反射)させ、且つ検出物体からの反射光L2をフォトダイオード20に向けて偏向(反射)させる構成をなしている。
【0028】
また、偏向部41の回転中心となる中心軸42aの方向は、ミラー30から当該偏向部41に入射するレーザ光L1の方向と一致しており、レーザ光L1が偏向部41に入射する入射位置P1が中心軸42a上の位置とされている。
【0029】
なお、本実施形態では、中心軸42aの方向を垂直方向(Y軸方向)としており、中心軸42aと直交する平面方向を水平方向としている。また、水平方向の内の所定方向をX軸方向として示している。
【0030】
本実施形態では、偏向部41は、当該偏向部41に入射するレーザ光L1の方向と一致した方向の中心軸42aを中心として回転するようになっている。そして、この中心軸42aに対して偏向部41の反射面41aが所望の角度で配置されるようになっている。例えば、図1の例では、偏向部41の反射面41aが垂直方向(反射面41aに入射するレーザ光L1の方向)に対して45°の角度で傾斜し、ミラー30側から入射するレーザ光L1を水平方向に反射させている。この図1の状態のときには、偏向部41の回転位置に関係なくレーザ光L1の入射角度が常に45°で維持され、位置P1からのレーザ光L1の向きは絶えず水平方向(中心軸42aと直交する方向)となる。
【0031】
一方、偏向部41は、後述する傾斜角度変更部100の動作によって例えば、図1の破線部分のように変位可能とされており、このように偏向部41が変位したときには空間に照射されるレーザ光の角度が水平方向(中心軸42aと直交する平面方向)に対して上向き或いは下向きに傾斜するようになっている。なお、傾斜角度変更部100の具体的構成や作用については後述する。
【0032】
また、本実施形態に係るレーザ測定装置1では、偏向部41における反射光を偏向する偏向領域(偏向部41における反射面41aの領域)が、ミラー30におけるレーザ光を反射する反射領域(ミラー30における反射面30aの領域)よりも十分大きく構成されている。
【0033】
更に、レーザ測定装置1には、回動偏向機構40を駆動するモータ50が設けられている。このモータ50は、「駆動手段」の一例に相当するものであり、軸部42を回転させることで、軸部42と連結された偏向部41を回転駆動している。なお、モータ50の具体的構成としては、例えばサーボモータ等を用いても良いし、定常回転するモータを用い、偏向部41が測距したい方向を向くタイミングに同期させてパルスレーザ光を出力することで、所望の方向の検出を可能としてもよい。また、本実施形態では、図1に示すように、モータ50の軸部42の回転角度位置(即ち偏向部41の回転角度位置)を検出する回転角度位置センサ52が設けられている。回転角度位置センサ52は、ロータリーエンコーダなど、軸部42の回転角度位置を検出しうるものであれば様々な種類のものを使用できる。
【0034】
また、回動偏向機構40からフォトダイオード20に至るまでの反射光L2の光路上には、フォトダイオード20に向けて反射光を集光する集光レンズ62が設けられ、その集光レンズ62とフォトダイオード20の間にはフィルタ64が設けられている。集光レンズ62は、偏向部41からの反射光L2を集光してフォトダイオード20に導くものであり、集光手段として機能している。
【0035】
また、フィルタ64は、回動偏向機構40からフォトダイオード20に至るまでの反射光L2の光路上において反射光L2を透過させ且つ反射光L2以外の光を除去するように機能するものである。このフィルタ64は、例えば反射光L2に対応した特定波長の光(例えば一定領域の波長の光)のみを透過させそれ以外の光を遮断する波長選択フィルタによって構成されている。
【0036】
また、本実施形態では、レーザダイオード10、フォトダイオード20、ミラー30、レンズ60、回動偏向機構40、モータ50等がケース3内に収容され、防塵や衝撃保護が図られている。ケース3における偏向部41の周囲には、当該偏向部41を取り囲むようにレーザ光L1及び反射光L2の通過を可能とする窓状の導光部4が形成されている。導光部4は、偏向部41に入光するレーザ光L1の光軸を中心とした環状形態で、ほぼ360°に亘って構成されており、この導光部4を閉塞する形態でガラス板等からなるレーザ光透過板5が配され、防塵が図られている。
【0037】
(傾斜角度変更手段)
次に、「傾斜角度変更手段」として機能する傾斜角度変更部100について説明する。図3は、第1実施形態に係るレーザ測定装置で用いられる傾斜角度変更部を概略的に例示する斜視図である。なお、図3では、偏向部41の位置を二点鎖線にて仮想的に示し、更に、連結フレーム123や、軸保持部127についても二点鎖線にて仮想的に示している。また、図4(A)は、図3の傾斜角度変更部を概念的に示す側面図であり、図4(B)は、図4(A)の状態から傾斜角度を変更した様子を示す側面図である。なお、図4では、軸部115及び軸部118は概念的に示しており、各軸部の両端部は省略して示している。
【0038】
図3に示す傾斜角度変更部100は、ケース3内において偏向部41を中心軸42a(図1)に対して相対的に変位させることで、空間に照射されるレーザ光L1の水平面(中心軸42aと直交する平面)に対する傾斜角度を変化させる構成をなしている。この傾斜角度変更部100は、ユーザが操作部121を操作することに応じて偏向部41が軸部115を中心として揺動するようになっており、偏向部41の揺動に応じて偏向部41へのレーザ光L1の入射角度が変更するようになっている。
【0039】
具体的には、偏向部41を揺動可能に支持する支持機構110と、外部操作可能な操作部121と、操作部121に対する外部操作に応じて支持機構110による偏向部41の支持姿勢を変化させる連動機構130とが設けられている。連動機構130は、軸部118、回動部119a、119b、支持機構110によって構成されており、その連動動作については後述する。
【0040】
支持機構110は、偏向部41の裏面側に固定される一対の固定部材111,112を備え、これら固定部材を回動可能に、かつ所定方向にスライド可能に保持する支持台114とを備えている。支持台114は、中心軸42a(図1)と直交する方向に沿って延びる軸部115と、この軸部115が固定される軸保持部127と、軸保持部127が固定される台座部126と、この台座部126に固定される一対の側部フレーム124、125と、これら側部フレーム124、125を連結する連結フレーム123とを備えている。この支持台114は、上述した軸部42が下方に連結(具体的には、台座126の下部に連結)されるようになっており、軸部115が常に中心軸42aと直交する位置関係となるように軸部42と一体的に回動するようになっている。
【0041】
また、偏向部41の下端部は、所定方向(中心軸42aと直交する方向であって且つ軸部115に沿った方向)に延びる軸部118に回動可能に保持されている。図3の例では、円筒状の回動部119a、119bが偏向部41の裏面側且つ下端部側において幅方向両側にそれぞれ固定されており、この回動部119a、119b内を軸部118が貫通する形態をなしている。このような構成により、偏向部41の下端部側が軸部118に回動可能に支持されている。
【0042】
また、軸部118の両端側は、台座部126の両側にそれぞれ固定される一対の側部フレーム124、125にそれぞれ支持されており、これら一対の側部フレーム124、125に沿ってスライド可能とされている。一対の側部フレーム124、125は互いに略平行に配置されており、中心軸42aと直交する方向であって且つ軸部115aと直交する方向に沿って延びている。また、各側部フレーム124、125には、それぞれの延出方向に延びる形態で溝部124a、125aが形成されている。
【0043】
更に、図4に示すように、軸部118の中央部付近には、下方側に延出する延出部118aが形成されている(図3では図示略)。この延出部118aには図示しないねじ溝が形成され、このねじ溝には、ねじ部材120の螺合部122が螺合している。そして、ねじ部材120の操作部121が一方側に回転操作(例えば右回転操作)されたとき、ねじ部材120が延出部118aに対して締め付けられ、他方側に回転操作(例えば左回転操作)されたときにねじ部材120が延出部118aに対して緩められるようになっている。なお、ねじ部材120は、回転のみが許容され軸方向の移動が規制されるように連結フレーム123に保持されており、ねじ部材120の操作部121が上記一方側に回転操作されて延出部118aに締め付けられると、軸部118が側部フレーム124、125の両溝部124a,125aに沿って連結フレーム123側にスライドするようになっている。逆に、ねじ部材120が上記他方側に回転操作されて延出部118aに対して緩められると、軸部118は、側部フレーム124、125の両溝部124a,125aに沿って連結フレーム123から離れる側にスライドするようになっている。
【0044】
また、偏向部41の裏面側且つ長手方向中央部付近において幅方向両側には一対の固定部材111、112がそれぞれ固定されている。これら固定部材111、112には、偏向部41の板面方向(即ち、反射面41aと平行な方向)に沿って溝部111a,112aが長孔形状で形成されている。そして、両溝部111a、112a内を、それぞれ軸部115の一方側と他方側が貫通しており、軸部115が両溝部111a、112aに沿ってスライド可能となっている。逆に、両固定部材111、112及びこれに固定される偏向部41は、両溝部111a,112aの案内により、偏向部41の板面の方向にほぼ沿うようにスライド可能となっている。具体的には偏向部41の中央部付近及び上端部側が偏向部41の板面の方向にほぼ沿うように斜め上方又は斜め下方にスライド可能とされており、偏向部41の下方側は、溝部124a、125aに沿ってスライドするようになっている。
【0045】
このように構成されているため、例えば、図3、図4(A)の状態からねじ部材120の操作部121が一方側に回転操作されて軸部118が連結フレーム123側に近づくと、溝部111a,112aの案内により偏向部41及び固定部材111,112からなるユニットの中央部付近(レーザ光が入射する位置付近)が斜め下方に移動し、図4(B)のように偏向部41の反射面41aがやや上向きに変化し、中心軸42aに対する反射面41aの角度αが大きくなるように変化する。逆に、図4(B)の状態からねじ部材120の操作部121が他方側に回転操作されて軸部118が連結フレーム123から離れると、溝部111a,112aの案内により偏向部41及び固定部材111,112からなるユニットの中央部付近(レーザ光が入射する位置付近)が斜め上方に移動し、図4(A)のように偏向部41の反射面41aがやや下向きに変化し、中心軸42aに対する反射面41aの角度αが小さくなるように変化する。
【0046】
(高さ検出手段)
次に、「高さ検出手段」の一例に相当する受光センサ90について説明する。
受光センサ90は、偏向部41からのレーザ光L1の走査経路上(走査エリア上)に配置される受光面91を備えており、偏向部41が受光センサ90側を向いた所定の回動位置となったときにレーザ光L1が受光面91に入射し、このとき受光面91に入射するレーザ光L1の入射高さを検出するように機能する。具体的には、受光面91が中心軸42aの方向(上下方向)に沿って長手状に延びる構成をなしており、例えば、受光素子が中心軸42aの方向に並ぶ一次元センサなどによって構成されている。
【0047】
この受光センサ90は、受光面91において上下方向(中心軸42aと平行な方向)のどの位置にレーザ光L1が入射したかを検出できるようになっており、例えば、受光センサ90において受光位置P3が検出されたときには、この受光位置P3が所定の基準位置からどの程度の高さにあるかを特定できるようになっている。具体的には、位置P1から水平方向にレーザ光L1が照射されるときの受光面91での入射位置P2を基準位置としており、受光位置P3が検出されたときには、この基準位置P2からの高さY1が検出される。レーザ光L1が水平方向に照射されるときの偏向部41における入射位置P1と受光センサ9における入射位置P2(基準位置)は装置構成によって予め特定できる位置であり、それら位置P1とP2との距離X1も予め定まっている値であるため、位置P3が検出され、距離Y1が求められたときには、tanθ=Y1/X1の式によって傾斜角度θ(偏向部41からのレーザ光L1と水平面とのなす角度)を求めることができる。なお、図3、図4のような機構を用いると、図4(A)の場合と図4(B)の場合とでレーザ光L1の入射位置P1が若干異なるが、受光センサ90を位置P1からある程度離れた位置に配置すれば、上記の入射位置の差は微少となるため無視することができる。
【0048】
また、本実施形態で用いられる受光センサ90は、偏向部41の回転の基準位置を検出する手段として兼用してもよい。即ち、受光センサ90がレーザ光L1を検出したタイミングを基準タイミングとし、この基準タイミングからの回転角度を回転角度位置検出センサ52によって検出することで、受光センサ90にレーザ光L1が入射するときの回動位置を基準回動位置とする偏向部41の相対的な回動位置を検出することができる。
【0049】
(検出処理)
次に、レーザ測定装置1で行われる検出処理について説明する。
本実施形態に係るレーザ測定装置1では、レーザダイオード10からパルスレーザ光L1が出射される毎に、そのパルスレーザ光L1の反射光が検出されるか否かを判断しており、パルスレーザ光L1の反射光が検出されたときには、パルスレーザ光L1の出射から当該パルスレーザ光L1の反射光の受光までの経過時間に基づいて物体までの距離を算出する。具体的には、例えば、レーザダイオード10でパルスレーザ光L1が照射されてから、フォトダイオード20で当該パルスレーザ光L1の反射光が検出されるまでの時間Tを検出し、当該時間Tと光速Cとに基づいて、当該パルスレーザ光L1の経路の長さ(レーザダイオード10で出射されてから物体で反射しフォトダイオード20で受光されるまでの経路の長さ)Laを算出する。また、レーザダイオード10から原点位置(例えば位置P1)までの経路の長さLbは予め判明しており、原点位置(例えば位置P1)からフォトダイオード20までの経路の長さLcも予め判明しているため、例えば、上記のように得られた経路の長さLaからこれらLb、Lcを差し引き、さらに得られた値を1/2にすることで原点位置(例えば位置P1)から物体の検出位置までの距離を算出することができる。なお、このような算出値に対して補正を加えてもよい。
【0050】
また、上記のようにパルスレーザ光L1の反射光が検出されたときには、当該パルスレーザ光L1が出射されたときの偏向部41の回動位置を回転角度位置検出センサ52の検出値に基づいて求め、水平方向における照射の向きを特定する。即ち、中心軸42と直交する方向に関し、位置P1からどの方向にレーザ光L1が照射されたかを特定する。更に、上記のように、レーザ光L1と水平面とのなす角度θが特定できるため、反射光が検出されたときのパルスレーザ光L1の照射の向きを三次元的に特定できることとなる。
【0051】
このように、本実施形態の構成によれば、パルスレーザ光L1の照射に対して当該パルスレーザ光L1の反射光が受光されたときには(即ち、検出物体が検出されたときには)、当該検出物体が検出された位置(検出位置)が位置P1からどの方向にあるかを三次元的に特定でき、且つ、その検出位置が位置P1からどの程度の距離にあるかを特定できることとなる。
なお、本実施形態では、制御回路70が「時間検出手段」の一例に相当し、レーザダイオード10(レーザ光発生手段)にてレーザ光L1が発生してから当該レーザ光L1に応じた反射光L2が光検出手段によって検出されるまでの経過時間を検出するように機能する。また、制御回路70は、「位置検出手段」の一例に相当し、受光センサ90(高さ検出手段)によって検出された入射高さ(図1のY1)と、上記時間検出手段によって検出された経過時間とに基づいて検出物体の位置を検出するように機能する。
【0052】
(第1実施形態の主な効果)
本実施形態では、更に、偏向部41を中心軸42aに対して相対的に変位させることで、空間に照射されるレーザ光L1の水平面(中心軸42aと直交する平面)に対する傾斜角度θを変化させる傾斜角度変更手段が設けられている。このようにすると、例えばケース全体を変位させるといった大掛かりな構成を用いずにレーザ光L1を様々な方向に照射できるようになり、設置場所に応じた多様なエリア設定が可能となる。例えば、家Hの軒下にレーザ測定装置1を配置し、下方側を検出領域として壁Wに沿ってレーザ光L1を走査するような場合に、図10(B)のように死角が生じるエリア設定から図5、図6のように死角をカバーするエリア設定に容易に変更することができ、ユーザの利便性を格段に高めることができる。なお、図6では、レーザレーダ装置1の構成は省略しており、レーザ光L1の経路を概念的に示している。また、図7のように家Hの外側に向けてレーザ光L1を照射する場合も同様であり、図10(A)のような死角が生じるエリア設定を変更したい場合に、図7のような死角を解消し得るエリア設定に容易に変更することができる。このように、本実施形態に係るレーザ測定装置1によれば、様々なレイアウトに適切に対応でき、走査方向の微調整なども行いやすくなる。
【0053】
また、本実施形態に係るレーザレーダ装置1は、偏向部41からのレーザ光の走査経路上に配置される受光面91を備え、当該受光面91に入射するレーザ光L1の入射高さを検出する受光センサ90(高さ検出手段)と、レーザダイオード10(レーザ光発生手段)にてレーザ光L1が発生してから当該レーザ光L1に応じた反射光がフォトダイオード20(光検出手段)によって検出されるまでの経過時間を検出する時間検出手段と、受光センサ90(高さ検出手段)によって検出された入射高さと、時間検出手段によって検出された経過時間とに基づいて検出物体の位置を検出する位置検出手段とが設けられている。このようにすると、偏向部41の変位によって変わり得るレーザ光L1の向きを、所定位置(受光面)に実際に入射するレーザ光L1の高さを検出して求めることができるため、簡易かつ小型化可能な構成で精度の高い方向検出、ひいては精度の高い位置検出が可能となる。
【0054】
また、本実施形態では、比較的大きい偏向部41を変位させることで傾斜角度θを変更しているため、傾きの微調整を行いやすい構成を複雑な構成を用いずに実現しやすくなる。
【0055】
また、傾斜角度変更部100は、偏向部41を揺動可能に支持する支持機構110と、外部操作可能な操作部121と、操作部121に対する外部操作に応じて支持機構110による偏向部41の支持姿勢を変化させる連動機構130とを備えている。このようにすると、外部操作によって偏向部41を変位させ得る構成を大掛かりで複雑な構成を用いることなく実現できる。また、ユーザが実際に操作部121を操作しながら傾斜角度θを変更できるため、傾斜角度θの微調整が行いやすくなる。
【0056】
また、受光面91が中心軸42aの方向に沿って長手状に延びる受光センサ90によって高さ検出手段が構成されている。このようにすると、より小型且つ安価な構成で高さ検出手段を実現することができ、装置全体の小型化、コスト低減を図りやすくなる。特に、受光素子が中心軸42aの方向に並ぶ一次元センサによって高さ検出手段が構成されているため、より一層小型且つ安価な構成で高さ検出手段を実現することができ、装置全体の一層の小型化、コスト低減を図りやすくなる。
【0057】
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。図8は、第2実施形態に係るレーザ測定装置の全体構成を概略的に例示する断面図である。図9(A)は、第2実施形態に係るレーザ測定装置における偏向部の支持機構を概略的に例示する斜視図であり、図9(B)は、第2実施形態に係るレーザ測定装置における駆動部を概念的に例示する説明図である。
【0058】
本実施形態では、回動偏向機構240の構成が第1実施形態の回動偏向機構40の構成と異なりそれ以外は第1実施形態と同様である。よって、第1実施形態と異なる部分について重点的に説明し、第1実施形態と同様の部分については第1実施形態と同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0059】
本実施形態に係るレーザ測定措置200でも、レーザ光を発生させるレーザダイオード10(レーザ光発生手段)と、レーザダイオード10にてレーザ光L1が発生したときに、当該レーザ光L1が検出物体にて反射した反射光を検出するフォトダイオード20(光検出手段)と、所定の中心軸42aを中心として回動可能に構成された偏向部41(偏向手段)を備えるとともに、当該偏向部41によりレーザ光L1を空間に向けて偏向させ、且つ反射光をフォトダイオード20に向けて偏向する回動偏向機構240と、回動偏向機構240を回転駆動するモータ50(駆動手段)とが設けられている。
【0060】
また、本実施形態でも、ケース3内において偏向部41を中心軸42aに対して相対的に変位させることで、空間に照射されるレーザ光L1の水平面(中心軸42aと直交する平面)に対する傾斜角度を変化させる傾斜角度変更部210が設けられている。そして、この傾斜角度変更部210の構成が第1実施形態と異なっている。本実施形態で用いられる傾斜角度変更部210は、偏向部41を揺動可能な駆動部280が設けられ、この駆動部280を第1実施形態と同様の制御回路70(図2も参照)によって制御している。そして、駆動部280が制御回路70による制御に応じて偏向部41を駆動することで、レーザ光L1の水平面に対する傾斜角度を変更している。なお、駆動部280は「偏向手段駆動部」の一例に相当し、制御回路70は、「制御手段」の一例に相当する。
【0061】
図9(A)に示すように、本実施形態でも第1実施形態と同様に偏向部41が板状のミラーとして構成され、軸部42に連結された支持フレーム243に回動可能に支持されている。そして、偏向部41と支持フレーム243とが所定の中心軸42aを中心として一体的に回動するように構成されている。更に、支持フレーム243は、偏向部41が中心軸42aと直交する回動軸41bを中心として回動するようにこの偏向部41を回動可能に支持している。より具体的には、モータ50のロータの一部として構成された軸部42がY軸方向に延びており、回転軸41bは、この軸部42の中心軸42a上に位置すると共に当該中心軸42aと直交し、かつ偏向部41の反射面41aに沿って当該反射面41a上に位置している。偏向部41はこのような回転軸41bを中心として回動するようになっている。なお、図8では、偏向部41の回転中心となる回転軸41bを点によって概念的に示し、図9(A)では、回転軸41bを一点鎖線にて概念的に示している。
【0062】
軸部42によって偏向部41を回動可能に支持する構成としては様々な構成を採りうるが、その一例としては、例えば、図9(A)のようにすることができる。図9(A)では、軸部42の先端側に固定された支持フレーム243に一対の軸受245,245が設けられており、この軸受245、245に偏向部241の側方から突出する凸部244,244が回動可能に支持されている。
【0063】
更に、本実施形態のレーザレーダ装置200は、偏向部41の所定箇所(具体的には偏向部41の端部近傍)に当接しつつ回転するカム281と、このカム281をモータ282と連結する軸部283とを備えており、これらカム281及び軸部283がカム機構を構成している。このカム機構は、カム281の回転運動によって所定箇所(偏向部41の端部近傍)に対して直線的運動を与える構成となっている。
【0064】
更に軸部283を回転駆動するモータ282が設けられており、このモータ282が所定の回転軸281a(図8では、回転軸41bと平行な軸)を中心として軸部283及びカム281を回転駆動するようになっている。このモータ282は、例えば、ステッピングモータなどによって構成されており、制御回路70によって回転角度が制御されるようになっている。なお、モータ282は、偏向部41と一体的に回動する電源(例えば充電可能な二次電池など)から電力供給を受けてもよく、外部の商用電源などからの電力供給を受ける構成でもよい。
【0065】
次に、駆動部280による傾斜制御について説明する。
駆動部280では、図9(B)のように、モータ282に接続されるカム281が、様々な位置(例えば位置P1〜P8など)にて偏向部41を支持しうる構成をなしており、カム281がどの位置で偏向部41を支持するかによって偏向部41の傾斜角度が定まるようになっている。各位置P1〜P8は、カム281の回転中心(回転軸281a)からの距離がそれぞれ異なっており、カム281による偏向部41の支持位置がP1、P2、P3・・・と変化するにつれ、回転軸281aから偏向部41が次第に遠ざけられ、傾斜が変化するようになっている。カム281の外周面(偏向部41と当接する面)は、ほぼ全周にわたって曲面とされており、各位置P1〜P8での曲率半径がそれぞれ異なるようになっている。カム281の外周面はP1からP2側に進むにつれ曲率半径が次第に大きくなるように構成され、さらに、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8と進むにつれ曲率半径が次第に大きくなるように構成されている。駆動部280では、モータ282によってカム281が矢印F1の方向に回転されるようになっており、カム281は、偏向部41と当接しながら滑動し、その当接位置をP1からP2、P3、P4と順番に変化させていく。当接位置がP8となった後はさらに回転し、再び当接位置をP1とするようになっている。
【0066】
このように構成される駆動部280は、ユーザによる指示があった場合(例えばユーザが図示しない操作部から指示データを入力した場合)に駆動が開始され、まず、制御回路70からモータ282に対してユーザの指示に応じた回転角度のデータが与えられ、モータ282はその指示に応じた回転角度に設定される。そして、上述したように、カム281はモータ282の回転に応じて回転し、カム281の回転角度の変化に応じてカム281の中心(回転軸281a)から偏向部41までの距離が変化するため、偏向部41の傾斜角度は、カム281の回転角度に応じた傾斜角度に設定されることとなる。
【0067】
なお、ここでは、ユーザによる指示に応じて偏向部41を所定の傾斜角度に設定する例を示したが、このような例に限られない。例えば、制御回路70が予め定められたプログラムに従ってモータ282を駆動し、偏向部41の傾斜角度を自動的に変更するような構成であってもよい。
【0068】
また、本実施形態でも、第1実施形態と同様の受光センサ90(高さ検出手段)が設けられており、偏向部41からのレーザ光L1の走査経路上に受光面91が配置され、当該受光面91に入射するレーザ光L1の入射高さを検出している。なお、本実施形態での受光センサ90による高さの検出方法は第1実施形態と同様である。
【0069】
また、本実施形態のレーザ測定装置200は、偏向部41の傾斜角度の調整方法を手動による調整から自動調整に変更した違いはあるが、空間に存在する物体の位置検出方法自体は第1実施形態と同様となっている。例えば、検出物体までの距離の検出方法や検出物体の方向の検出方法については第1実施形態と同様である。そして、本実施形態でも、制御回路70が「時間検出手段」の一例に相当し、レーザダイオード10にてレーザ光が発生してから当該レーザ光に応じた前記反射光が前記光検出手段によって検出されるまでの経過時間を検出するように機能する。また、制御回路70は、「位置検出手段」の一例に相当し、受光センサ90(高さ検出手段)によって検出された入射高さと、時間検出手段によって検出された経過時間とに基づいて検出物体の位置を検出するように機能する。
【0070】
(第2実施形態の主な効果)
本実施形態では、傾斜角度変更部210が、偏向部41を揺動可能な駆動部280と、駆動部280を制御する制御回路70(制御手段)とを備えており、駆動部280は、制御回路70による制御に応じて偏向部41を駆動することで入射角度(偏向部41の反射面41aに対するレーザ光L1の入射角度)を変更している。このようにすると、駆動部280に対する制御によって偏向部41を変位させることができるため、傾斜角度の変更作業に要する労力を効果的に抑えることができる。
【0071】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0072】
上記実施形態では、偏向部41を変位させる一例を示したが、偏向部41を他の構成によって変位させてもよい。例えば、偏向部41を支持する機構を図9(A)と同様の構成とし、軸部42の上端部側に偏向部42を回動可能に保持する支持フレーム243を固定し、この支持フレーム243において偏向部42を回動可能に保持する一対の軸受245、245を設けるようにすればよい。この構成では、一対の軸受245、245は、レーザ光L1の入射位置P1(図1、図8参照)を通り且つ中心軸42aと直交する回転軸41bを中心として回動可能となるように偏向部41を保持しており、その回転軸41bが反射面41上に位置するようになっているため、偏向部41の傾斜角度に関係なく、反射面41aにおけるレーザ光L1の入射位置P1は常に同じ位置となる。この場合、手動操作可能な操作部を設け、凸部244、244が軸受245、245に対して回動する状態と、凸部244、244が軸受245、245に対して回動不能となる状態とに切り替えることができるようにすれば、偏向部41を任意の傾斜角度に位置決めできるようになる。偏向部41を任意の傾斜角度に位置決めする方法としては、例えば、図9(B)で説明したカム281を第2実施形態と同様に設けると共に、当該カム281を手動で回転できるように構成し、当該カム281を任意の位置で位置決めできるようにすればよい。或いは、支持フレーム243の側壁からねじ部材等の当接部材を挿入できるようにし、このねじ部材をある程度の深さまで挿入したときにねじ部材が凸部244に当接し、ねじ部材を緩めるとねじ部材と凸部244との当接が解除されるようにしてもよい。
【0073】
上記実施形態では、傾斜角度変更手段として偏向部41(偏向手段)を変更させる構成を例示したが、偏向部41を変位させずにレーザダイオード10(レーザ光発生手段)やミラー30(レーザ光発生手段と偏向手段との間に介在する光学部品)を変位させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…レーザ測定装置
10…レーザダイオード(レーザ光発生手段)
20…フォトダイオード(光検出手段)
40…回動偏向機構(回動偏向手段)
41…偏向部(偏向手段)
50…モータ(駆動手段)
70…制御回路(時間検出手段、位置検出手段、制御手段)
90…受光センサ(高さ検出手段)
91…受光面
100…傾斜角度変更部(傾斜角度変更手段)
110…支持機構
121…操作部
130…連動機構
280…駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発生させるレーザ光発生手段と、
前記レーザ光発生手段にて前記レーザ光が発生したときに、当該レーザ光が検出物体にて反射した反射光を検出する光検出手段と、
所定の中心軸を中心として回動可能に構成された偏向手段を備えるとともに、当該偏向手段により前記レーザ光を空間に向けて偏向させ、且つ前記反射光を前記光検出手段に向けて偏向する回動偏向手段と、
前記回動偏向手段を駆動する駆動手段と、
前記レーザ光発生手段、又は前記偏向手段、若しくは前記レーザ光発生手段から前記偏向手段までの経路上に配される光学部品を前記中心軸に対して相対的に変位させることで、前記空間に照射される前記レーザ光の前記中心軸と直交する水平面に対する傾斜角度を変化させる傾斜角度変更手段と、
前記偏向手段からの前記レーザ光の走査経路上に配置される受光面を備え、当該受光面に入射する前記レーザ光の入射高さを検出する高さ検出手段と、
前記レーザ光発生手段にて前記レーザ光が発生してから当該レーザ光に応じた前記反射光が前記光検出手段によって検出されるまでの経過時間を検出する時間検出手段と、
前記高さ検出手段によって検出された前記入射高さと、前記時間検出手段によって検出された前記経過時間とに基づいて前記検出物体の位置を検出する位置検出手段と、
を備えたことを特徴とするレーザ測定装置。
【請求項2】
前記傾斜角度変更手段は、前記偏向手段を変位させることで当該偏向手段への前記レーザ光の入射角度を変更することを特徴とする請求項1に記載のレーザ測定装置。
【請求項3】
前記傾斜角度変更手段は、
前記偏向手段を揺動可能に支持する支持機構と、
外部操作可能な操作部と、
前記操作部に対する外部操作に応じて前記支持機構による前記偏向手段の支持姿勢を変化させる連動機構と、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載のレーザ測定装置。
【請求項4】
前記傾斜角度変更手段は、
前記偏向手段を揺動可能な偏向手段駆動部と、
前記偏向手段駆動部を制御する制御手段と、
を備え、
前記偏向手段駆動部が前記制御手段による制御に応じて前記偏向手段を駆動することで前記入射角度を変更することを特徴とする請求項2に記載のレーザ測定装置。
【請求項5】
前記高さ検出手段は、前記受光面が前記中心軸の方向に沿って長手状に延びる受光センサからなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のレーザ測定装置。
【請求項6】
前記高さ検出手段は、受光素子が前記中心軸の方向に並ぶ一次元センサからなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のレーザ測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−169730(P2011−169730A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33510(P2010−33510)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】