説明

レーザ測距装置

【課題】パルスのレーザ光を送信して目標物で反射したレーザ光を受信し、送信から受信までの経過時間から目標物までの距離を算出するレーザ測距装置において、より効率的な測距処理を可能にしたレーザ測距装置を提供する。
【解決手段】パルス毎に受信信号の最大ピーク値と送信から最大ピーク値に達するまでの時間をサンプリング周期の周期数として測定し、複数回の受信信号の最大ピーク値をそれぞれカウントした周期数が同じ数同士で積分し、最大の積算値が存在する周期数を導出し、この導出した周期数に相当する時間から目標物までの距離を演算する。最大ピーク値及び周期数の測定には高速に応答可能なアナログ回路を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高繰り返しのレーザパルスを送信し、受信信号を積算処理することにより、高精度な測距を可能とするレーザ測距装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ測距装置は一般的に、目標物にレーザパルスからなる照射光を照射し、照射光の目標物での反射光を受信するまでの時間から目標物までの距離を測定する。ただし、レーザパルスのピークパワーが低い、または目標物までの距離が離れていて大気減衰が大きい場合等は、目標物からの受信パルス信号と目標物以外からの受信パルス信号で、それぞれの中に含まれる雑音の大きさの比が小さくなり、雑音の多い受信信号の中から目標物を検出することが困難となる。
【0003】
そこで、複数回分の受信信号のサンプリングデータを一旦メモリに記憶し、この記憶したサンプリングデータを送信したレーザパルスに同期させて複数回分積算する処理が知られている。この積算処理では、複数の受信信号における同じサンプリング位置のサンプリングデータを積算し、複数の受信信号を重ね合わせる演算処理を行う。ここで、受信パルス信号は目標物の有無にしか左右されないため積算値が高く、雑音はランダムで受信パルス信号に比べて積算値が低い。このため、雑音はその積算回数に応じて抑圧され、S/N比(信号対雑音比)が大幅に改善される。
【0004】
従来例として、下記特許文献1に記載のレーザ測距装置は、パルス信号を送信し物体からの反射パルス信号を受信し、その受信パルス信号をデジタル信号に変換して記憶し、そのデジタル信号の中で所定の値を越えるデジタル信号に基づいて目標物を認識し、その目標物までの前記パルス信号の走行時間から前記目標物までの距離を演算し距離データを出力する距離測定装置において、前記パルス信号の送信開始と、サンプリングの開始とを制御するタイミング制御手段と、前記タイミング制御手段に基づき、前記パルス信号を送信する送信手段と、前記送信されたパルス信号が物体に当たり反射したパルス信号を受信する受信手段と、前記受信パルス信号をハイレベルとローレベルの二値に変換するレベル変換手段と、前記タイミング制御手段のサンプリングの開始に基づき、パルス信号の走行時間順に、前記レベル変換手段で二値化した受信パルス信号を一時記憶する記憶手段と、前記パルス信号の送信毎に、前記記憶手段に一時記憶された二値化受信パルス信号を、前記パルス走行時間が同じものどうしを積算するデータ積算手段と、前記積算された二値化受信パルス信号の結果から演算処理して距離を演算する処理手段とを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−220231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載されたような従来のレーザ測距装置では、レベル変換手段は、基準となる所定値と受信手段からの受信パルス信号とを比較してハイレベルとローレベルの二値に変換している。すなわち、受信パルス信号の大きさに関わらず所定値以上の場合はハイレベルとして同じ値(+1)に変換する。このため、パルス毎の受信信号中に所定値以上のノイズがあればノイズと受信パルス信号とを識別することはできない。
【0007】
この場合、ノイズと受信パルス信号とを区別するために二値化した受信パルス信号を積算し、ランダムに発生するノイズを完全に除くために必要な積算回数は多くなる。また、近距離かつ高反射率の目標物からの高レベル反射信号の場合と遠距離かつ低反射率の目標物からの低レベル反射信号の場合とでは基準となる所定値の設定が異なるため、広範囲な距離測定には不利である。
【0008】
また、記憶手段には、サンプリングクロック毎に、この二値化受信パルス信号が時系列的に一時記憶される。すなわち、サンプリングクロックの周期毎に記憶したサンプリング回数分の二値のデータ(距離測定範囲に相当する受信パルス波形データ)を有している。このため、記憶手段は、サンプリング回数に比例してデータの記憶容量が必要である。しかも、距離の測定精度を確保するため、レベル変換手段を比較的高い周波数で駆動させるとサンプリングに必要なデータの記憶容量は増大する。
【0009】
さらに、データ積算手段は、この時系列的に一時記憶している二値化パルス信号を、前記パルス信号の送信毎に、前記パルス走行時間が同じパルス信号を積算している。このため、データ積算手段は、サンプリング回数に比例して積算する処理時間が必要である。
【0010】
以上のように、積算処理は複数回分のパルスを積算する処理時間が必要であり、測定時間が長くなるという問題がある。距離の測定範囲が広い、または測定精度が高い等の場合、サンプリング回数が増えるため、さらに不利となる。
【0011】
また、データの記憶容量に制限がある場合、高い測定精度を要求するとサンプリング間隔を狭くするため、測定範囲が犠牲になる。一方、広い測定範囲を要求するとサンプリング間隔を広くせざるを得ず、測定精度が犠牲になる。
【0012】
さらに、レーザパルスのピークパワーが低い場合、測定範囲を犠牲にしなければ所定の測定精度を得ることができず、多くの積算回数が必要になり、また測定時間が長くなるという問題が増える。
【0013】
また、サンプリングデータの増大は、データを記憶するメモリや演算回路への負担が大きくなり、コストや消費電力の増加を招くという問題がある。
【0014】
なお、目標物が静止時には受信信号の積算によりS/N比は高くなる。一方、目標物が移動時にはパルス毎に受信パルス信号の到達タイミングが変化する。このため、送信したレーザパルスに同期させて積算すると受信信号のピーク位置がパルス毎にずれることにより、波形データを重ね合わせても積算されず、S/N比は改善されないという問題がある。
【0015】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、パルスのレーザ光を送信して目標物で反射したレーザ光を受信し、送信から受信までの経過時間から目標物までの距離を算出する測距装置において、より効率的な測距処理を可能にしたレーザ測距装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、パルスのレーザ光を送信して目標物で反射したレーザ光を受信し、送信から受信までの経過時間から目標物までの距離を算出するレーザ測距装置であって、前記パルスのレーザ光を繰り返して複数回出力するレーザ光源と、受信したレーザ光を電気信号の受信信号に変換する光検出器と、パルス毎に送信開始と前記受信信号のサンプリング開始のタイミングを制御するタイミング手段と、パルス毎に前記受信信号の最大ピークを1つ検出し、最大ピークの大きさを多値の信号に変換する最大ピーク値出力手段と、パルス毎にサンプリング開始からの経過時間を一定間隔のサンプリング周期で区切り、最大ピークを検出した時間に達するまでの前記サンプリング周期の周期数をカウントする周期カウント手段と、パルス毎に受信信号の最大ピーク値とそれぞれカウントした周期数のデータを記憶するデータ記憶手段と、記憶された複数回の受信信号の最大ピーク値をそれぞれカウントした周期数が同じ数同士で積算し、周期数毎の積算値を算出する積算処理手段と、最大の積算値が存在する周期数を導出し、この導出した周期数に相当する時間から目標物までの距離を演算する距離演算手段と、を備えたことを特徴とするレーザ測距装置にある。
【発明の効果】
【0017】
この発明では、パルスのレーザ光を送信して目標物で反射したレーザ光を受信し、送信から受信までの経過時間から目標物までの距離を算出する測距装置において、より効率的な測距処理を可能にしたレーザ測距装置等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーザ測距装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1,3,4の各部から出力される主要な信号の波形を示すタイミングチャートである。
【図3】図1の最大ピーク値出力回路の一例を示す構成図である。
【図4】図1の周期カウント回路の一例を示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る積算処理部の積算処理を示す説明図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係るレーザ測距装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る積算処理部の積算処理を示す説明図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係るレーザ測距装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図9】図8の信号積分回路とレーザ停止回路を説明するための図である。
【図10】この発明の実施の形態4に係るレーザ測距装置の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明では特に、パルス毎に受信信号の最大値とその経過時間の一組のデータを測定し、このデータのみを複数回のパルスで積算処理することで、比較的簡単な回路構成となる。
以下に、この発明に係るレーザ測距装置を幾つかの実施の形態に従って図面を用いて詳細に説明する。但しこの発明に係るレーザ測距装置は、これらの実施の形態に限定されるものではない。
【0020】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るレーザ測距装置100の構成を示す機能ブロック図である。図1において、レーザ光源101は、固体レーザ(Nd:YAGレーザ、Er:Glassレーザ)や半導体レーザ(InGaAsP系)等で構成され、ナノ秒程度の時間幅の短いパルス光を複数回繰り返し出力する。光検出器102は、フォトダイオードやアバランシェフォトダイオード等で構成され、受信した光の強度変化を電気信号に変換して出力する。また、トランジスタ等で構成された増幅回路を備えており、電気信号を大きなエネルギーに増幅する。送信光学系103、受信光学系104は、レーザ光の波長に対応した材質のレンズやミラーで構成されている。送信光学系103と受信光学系104は同じ光学系を共有し、一体であっても良い。
【0021】
最大ピーク値出力回路105は、後述するようにコンパレータ、コンデンサ、A/D変換器等を組み合わせて構成され、受信信号の最大ピークを1つ検出し、最大ピークの大きさを多値に変換する。周期カウント回路106は、レジスタ等、あるいは後述するようにコンデンサ、A/D変換器等の組み合わせで構成され、サンプリング開始からの経過時間を一定間隔のサンプリング周期で区切り、最大ピークを検出した時間に達するまでの時間をサンプリング周期の周期数としてカウントする。
【0022】
データ記憶部107は、半導体RAM等で構成され、複数回の受信信号の最大ピーク値とそれぞれカウントした周期数のデータを高速で一時的に記憶する。積算処理部108は、PLD(プログラマブルロジックデバイス)やFPGA(フィールドプログラマブルロジックアレイ)等で構成され、記憶された複数回の受信信号の最大ピーク値をそれぞれカウントした周期数が同じ数同士で積算し、周期数毎の積算値を算出する。距離演算部109は、PLDやFPGA等で構成され、最大の積算値が存在する周期数を導出し、この導出した周期数に相当する時間から目標物Tまでの距離を演算する。
【0023】
クロック発生器110は、水晶振動子等で構成され、安定した任意の周波数の周期的な電気信号を発生する。制御部111は、データ記憶部107のデータを消去させるための初期化信号、レーザ光源101のレーザ光を発生させるためのレーザ発振信号、積算処理部108の複数組のデータの積算処理を行わせるための積算処理信号を出力する。タイミング回路112は、パルス毎に送信のタイミングにサンプリングを開始するためのサンプリング開始信号、送信から所定の時間にサンプリングを終了するためのサンプリング終了信号を出力する。
【0024】
次に動作について説明する。一回の距離測定動作は、複数回のパルス信号を送受信して複数のデータを測定し、測定した複数のデータを演算処理して測定値を算出するまでの動作である。また、この距離測定動作を繰り返し行うことにより、連続して測定値を算出することが可能である。
【0025】
まず、距離測定を開始すると、制御部111は初期化信号をデータ記憶部107へ出力する。初期化信号が入力すると、データ記憶部107は記憶していたデータを消去し、新たにデータの記憶が可能な状態となる。また、制御部111は複数回のレーザ発振信号をレーザ光源101へ繰り返し出力する。レーザ発振信号が入力する毎に、レーザ光源101は所定のパルス幅のレーザ光を発生する。ここで、パルス幅は必要とする距離の分解能を得るのに十分に狭い時間幅を持つ。
【0026】
一方、クロック発生器110は、時間基準となる周期的なクロック信号を常に発生して出力する。クロック信号が入力すると、タイミング回路112はクロック信号に同期して動作する。さらに、制御部111及び周期カウント回路106はクロック信号に同期して動作しても良い(信号線図示省略)。
【0027】
次に、レーザ光源101から光検出器102までのパルス毎における動作を説明する。レーザ光源101から出力されたパルスのレーザ光は、送信光学系103を介して送信される。送信されたレーザ光は目標物Tに照射されると一部が反射される。この目標物Tからの反射光は受信光学系104を介して光検出器102で受信される。ここで、レーザ光が送信から受信までの時間に伝搬する距離は、このレーザ測距装置100から目標物Tまでを往復する距離に相当する。
【0028】
光検出器102は受信したレーザ光を電気的な受信信号に変換して出力する。ここで、受信信号は高い周波数帯域まで精度良く光電変換が行われている。また、受信信号は増幅回路(図示省略)により増幅され、最大ピーク値出力回路105に入力される。
【0029】
さらに、パルス毎におけるタイミング回路112からデータ記憶部107までの動作を説明する。図2は、図1,3,4の各部から出力される主要な信号の波形を示すタイミングチャートである。タイミング回路112はクロック信号に同期し、レーザ光の送信のタイミングでサンプリング開始信号を出力する。ここで、送信されたレーザ光の一部を検出して送信開始のタイミングに合わせている。あるいは、レーザ光源101に入力したレーザ発振信号を用いて送信開始のタイミングに合わせても良い。ここでは、HIGH(H)レベルの電圧信号である。
【0030】
最大ピーク値出力回路105はサンプリング開始信号が入力される度に、受信信号の最大ピークを1つ検出し、この最大ピーク値のデジタル信号を出力する。最大ピーク値出力回路105の動作を具体的に説明する。
【0031】
図3は、最大ピーク値出力回路105の一例を示す構成図である。構成を簡単に説明すると、第1電流源CS1には第3スイッチS3を介して第1コンデンサC1及び第1スイッチS1からなる第1並列回路、第2コンデンサC2及び第2スイッチS2からなる第2並列回路のそれぞれの一端側が接続され、これらの他端側はそれぞれ接地されている。第1スイッチS1の開閉はレーザ発振信号、第2スイッチS2の開閉はサンプリング開始/終了信号でそれぞれ制御される。
【0032】
コンパレータCP1の一方の第1入力端子には受信信号、他方の第2入力端子には、第1及び第2並列回路の一端側並びに第3スイッチS3の第1及び第2並列回路側が接続された充放電線が接続され、第3スイッチS3の開閉はコンパレータCP1の出力で制御される。充放電線上の第3スイッチS3と第1並列回路の一端側の間には第4スイッチS4が接続され、第1並列回路の一端側の第4スイッチS4と反対側には第1A/D変換器AD1が接続され、第1A/D変換器AD1の出力が最大ピーク値を示す。コンパレータCP1の出力はまたローパスフィルタ回路LF1を介してサンプルホールド信号となり、第4スイッチS4の開閉を制御すると共に外部に供給される。
【0033】
レーザ発振信号が入力すると、第1コンデンサC1は第1スイッチS1の一時ON(閉)で接地されて放電し、保持電圧はゼロとなる。サンプリング開始信号が入力すると、第2コンデンサC2は第2スイッチS2のOFF(開)で放電が解除され、第1電流源CS1から第3スイッチS3を介して保持電圧の充電が開始される。
【0034】
光検出器102からの受信信号は電流から電圧に変換され(光検出器102の増幅回路で変換されるか、又は最大ピーク値出力回路105のコンパレータCP1の入力側に電流/電圧変換器(図示省略)を備える)、コンパレータCP1の一方の第1入力端子に入力される。コンパレータCP1の他方の第2入力端子は第2コンデンサC2に接続されている。コンパレータCP1は第1入力端子と第2入力端子の電圧を比較し、第1入力端子の電圧が第2入力端子の電圧以上の場合のみHIGHレベルの電圧を出力し、第2入力端子の電圧未満の場合はLOWレベルの電圧を出力する。
【0035】
第3スイッチS3はコンパレータCP1から出力された電圧がHIGHレベルの信号でON(閉)、LOWレベルの信号でOFF(開)となり、第3スイッチS3のONで第1電流源CS1から第2コンデンサC2に電荷が供給される。このため、第2コンデンサC2の保持電圧は光検出器102からの入力信号電圧に追従して上昇する。
【0036】
また、コンパレータCP1から出力された電圧がローパスフィルタ回路LF1を介してサンプルホールド信号として出力される。第4スイッチS4はサンプルホールド信号がHIGHレベルの信号でON(閉)、LOWレベルの信号でOFF(開)となり、第4スイッチS4のONで第1電流源CS1から第1コンデンサに電荷が供給される。従って、第1コンデンサC1の保持電圧はコンパレータCP1の入力信号電圧の最大値となり出力される。すなわち、アナログの回路構成により高速に応答し、最大ピーク値出力回路105はクロック信号のサンプリング周波数に関係なく、高精度なアナログ値で最大ピーク値を測定することができる。
【0037】
さらに、タイミング回路112からサンプリング終了信号が入力すると、この電圧信号を第1A/D変換器AD1は精度の高い多値のデジタル値の信号に変換して出力する。ここで、最大ピーク値のデータは一点であるため、第1A/D変換器AD1は高速である必要はない。したがって、パルス毎に受信信号の最大ピークを1つ検出し、最大ピークの大きさを多値に変換することができる。
【0038】
一方、周期カウント回路106はサンプリング開始信号(又はレーザ発振信号)が入力される度に、最大ピークを検出した時間に達するまでの時間をサンプリング周期の周期数としてカウントし、この周期数のデジタル信号を出力する。
【0039】
周期カウント回路106の動作を具体的に説明する。周期カウント回路106はクロック発生器110からのクロック信号(信号線図示省略)に同期し、サンプルホールド信号がHIGHレベルからLOWレベルに立ち下がる度に、サンプリング開始信号が入力されてからのクロック数をカウントする。すなわち、クロック数は2番目に大きなピーク値に達するまでの周期数となる。このクロック数をデジタル信号に変換して出力する。あるいは、高い測定分解能のサンプリング周期で測定するため、アナログの回路構成とすることも可能である。
【0040】
図4は、周期カウント回路106の一例を示す構成図である。構成を簡単に説明すると、第2電流源CS2には第7スイッチS7を介して第3コンデンサC3及び第5スイッチS5からなる第3並列回路の一端側、さらに第7スイッチS7、第3並列回路の一端側、第8スイッチS8を介して第4コンデンサC4及び第6スイッチS6からなる第4並列回路の一端側と第2A/D変換器AD2が接続されている。第3,第4並列回路の他端はそれぞれ接地されている。第7スイッチS7の開閉はサンプリング開始/終了信号、第5及び第6スイッチS5,S6の開閉はレーザ発振信号、第8スイッチS8の開閉はサンプルホールド信号でそれぞれ制御される。第2A/D変換器AD2の出力が周期数を示す。
【0041】
レーザ発振信号が入力すると、第3コンデンサC3と第4コンデンサC4は第5スイッチS5と第6スイッチS6の一時ON(閉)で接地して放電され、保持電圧はゼロとなる。サンプリング開始信号が入力すると、第3コンデンサC3は第7スイッチS7のON(閉)で第2電流源CS2から電荷が供給され保持電圧の充電が開始される。第3コンデンサC3の保持電圧(ランプ電圧)は経過時間とともに一定の傾きで上昇する。
【0042】
また、第8スイッチS8は、図3の最大ピーク値出力回路105のコンパレータCP1からの電圧がローパスフィルタ回路LF1で変換されたサンプルホールド信号でON/OFF(開閉)となり、第8スイッチS8のON(閉)で第2電流源CS2から第4コンデンサC4に電荷が供給される。したがって、第8スイッチS8のOFF(開)で第4コンデンサC4の保持電圧は第3コンデンサC3と同じ保持電圧で一定となり出力される。すなわち、アナログの回路構成により高速に応答し、周期カウント回路106はクロック信号のサンプリング周波数に関係なく、高精度なアナログ値でサンプリング開始信号が入力されてからの経過時間を測定することができる。
【0043】
さらに、タイミング回路112からサンプリング終了信号が入力すると(信号線図示省略)、この電圧信号を第2A/D変換器AD2は精度の高い多値のデジタル値の信号に変換して出力する。すなわち、サンプリング開始信号が入力されてからの経過時間を一定間隔のサンプリング周期で区切り、最大ピークを検出した時間に達するまでの時間をサンプリング周期の周期数としてカウントすることができる。ここで、周期数のデータは一点であるため、第2A/D変換器AD2は高速である必要はない。
【0044】
また、タイミング回路112はレーザ光の送信のタイミングから所定の時間が経過するとサンプリング終了信号を出力する。ここでは、LOWレベルの電圧信号である。サンプリング終了信号が入力すると、図3の最大ピーク値出力回路105の第2コンデンサC2は第2スイッチS2のON(閉)で接地して放電され、保持電圧はゼロとなる。
【0045】
一方、データ記憶部107は、サンプリング終了信号(信号線図示省略)が入力すると、最大ピーク値出力回路105及び周期カウント回路106から出力されたデジタル信号から最大ピーク値とそのサンプリング周期数の一組のデータを記憶する。パルス毎にデータ記憶部107の番地情報を与えることにより、パルス毎の番地のメモリーセルに対してデータの書き込みや読み出しの操作ができる。
【0046】
ここまでが、パルス毎における一連の動作である。すなわち、パルス毎に最大値とそのサンプリング周期数の一組のデータがデータ記憶部107に記憶され、複数回の測距用のパルスにより複数組のデータが記憶される。したがって、パルス毎に距離測定範囲に相当する受信パルス波形データのサンプリング回数分を全て記憶する必要がない構成であり、データの記憶容量を最小限にすることができる。また、複数回のパルスによるデータの記憶容量の増加を十分に抑えることができる。
【0047】
次に、複数回のパルスの送信が終了すると、制御部111から積算処理信号を積算処理部108へ出力する。積算処理信号が入力すると、積算処理部108は複数組のデータの積算処理を行う。
【0048】
図5は、この発明の実施の形態1に係る積算処理部108の積算処理を示す説明図であり、(a)は受信信号のパルス波形、(b)は測定データ、(c)は周期数と積算値との関係を示す。ここで、複数回の一定な送信周期で繰り返したパルスの総数をN(=正の整数)回、n(=1からNまでの整数)回目のパルスで最大ピーク値をP(n)、カウントしたサンプリング周期の周期数をs(n)と定義した場合、積算処理部108は、記憶された複数回の受信信号の最大ピーク値P(n)をそれぞれカウントした周期数s(n)が同じ数同士で積算し、周期数毎の積算値を算出する。データ記憶部107に記憶された最大ピーク値とそのサンプリング周期数の複数組のデータが読み出され、サンプリング周期数毎に割り当てられた積算処理部108のアドレスに対して最大ピーク値が逐次加算されて書き込まれる。
【0049】
このため、最大ピーク値が存在する周期数のみに加算され、受信パルス信号が大きい周期数の積算値は高くなる。また、受信パルス信号と雑音の大きさの差が小さい場合、パルスによっては雑音で受信パルス信号の小さい周期数に最大ピーク値が存在するが、受信パルス信号は任意の大きさで常に検出され、最大ピーク値として同じ周期数で検出される確率が高く、雑音が同じ周期数で検出される確率は低い。すなわち、雑音は周期数に対してランダムで積算値は一様となり、受信パルス信号がある周期数で積算値は高くなる。したがって、受信パルス信号とノイズとを容易に識別することができる。さらに、パルス毎に距離測定範囲に相当する受信パルス波形データのサンプリング回数分を全て積算する必要がない構成であり、データの処理時間を最小限にすることができる。また、複数回のパルスによるデータの処理時間の増加を十分に抑えることができる。
【0050】
複数組のデータの積算処理を行うと、距離演算部109は最大の積算値が存在する周期数を導出し、この導出した周期数に相当する時間から目標物までの距離を演算する。ここで、サンプリング周期と周期数の積は送信から受信までの時間であり、レーザ光が伝搬してこのレーザ測距装置100から目標物Tまでを往復する時間に相当する。このため、目標物Tまでの距離はこの時間でレーザ光が伝搬する距離の半分として演算し、測定値の距離データを出力する。
【0051】
以上の動作により、1回の距離測定動作を終了する。すなわち、積算回数を増加することにより、S/N比の低い受信信号でも受信パルス信号と雑音との識別が容易にできる。このため、測定範囲、測定精度、ピークパワー、目標物の反射率等に依らず距離測定が可能である。
【0052】
最大ピーク値出力回路105や周期カウント回路106として、高速に応答可能なアナログ回路を用いることにより、高速なA/D変換器を用いることなく、高精度に測定することができる。また、コンパレータやコンデンサ等の低コストな素子を用いることにより、装置を低コストに構成することができる。さらに、パルス毎の測定データは一組の最大ピーク値と周期数のみであり、サンプリング回数分の測定データは全て記憶及び処理する必要がないため、データ記憶部107の記憶容量を少なく、積算処理部108の処理速度を遅くすることにより、装置を低コストで低消費電力に構成することができる。
【0053】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2に係るレーザ測距装置100aの構成を示す機能ブロック図である。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号もしくは相当する符号で示し説明を省略する(以下同様)。図6において、積算処理部201は、受信信号の最大ピーク値をシフトした周期数が同じ数同士で積算し、異なるシフト周期数で周期数をシフトさせて周期数毎の積算値を算出する。速度演算部202はで、最大となる積算値が存在するシフト周期数を導出し、導出したシフト周期数に相当する時間から目標物との相対速度を演算する。
【0054】
次に、積算処理部201からの動作を詳細に説明する。積算処理信号が入力されると、積算処理部201は複数組のデータに対して周期数をずらして積算処理を行い、ずらす周期数を変化させて繰り返し行う。図7はこの発明の実施の形態2に係る積算処理部201の積算処理を示す説明図であり、(a)はシフト周期数=0の測定データ、(b)はシフト周期数=Δsの測定データを示す。ここで、複数回の一定な送信周期で繰り返したパルスの総数をN(=正の整数)回、n(=1からNまでの整数)回目のパルスでカウントしたサンプリング周期の周期数をs(n)、積算における周期数の数をシフトさせるシフト周期数をΔs(=ゼロ、正または負の整数)と定義した場合、n回目の受信信号の最大ピーク値をs(n)+(N−n)×Δsでシフトした周波数が同じ数同士で積算し、異なるシフト周期数で周期数をシフトさせて周期数毎の積算値を算出する。
【0055】
データ記憶部107に記憶された最大ピーク値とサンプリング周期数の複数組のデータが読み出され、パルス毎に周期数をシフト周期数ずつずらし、サンプリング周期数毎に割り当てられた積算処理部201のアドレスに対して最大ピーク値を逐次加算して書き込まれ、異なるシフト周期数分について繰り返し行う。
【0056】
ここで、この装置または目標物が加速度一定で移動して相対速度を有する場合、パルス毎にこの装置と目標物との距離は近づくあるいは遠ざかるため異なる。このため、記憶された複数回の受信信号の最大ピーク値をそれぞれカウントした周期数が同じ数同士で積算した場合、パルス毎に受信パルス信号が存在する周期数は異なるため、同じ周期数で積算値は高くならない。パルス間隔におけるこの装置と目標物の相対移動距離は、パルス毎にシフトした周期数の時間にレーザ光が伝搬する往復の距離に相当する。すなわち、パルス毎に周期数をずらして積算した場合、任意のシフト周期数で積算値は高くなる。したがって、受信パルス信号とノイズとを容易に識別することができる。
【0057】
複数組のデータに対して周期数をパルス毎にずらして積算処理を行い、ずらす周期数を変化させて繰り返し行う。距離演算部109は最大の積算値が存在する周期数とシフト周期数を導出する。ここで、シフト周期数Δsから相対移動距離を算出し、パルス間隔で相対移動距離を割るとレーザ測距装置100と目標物Tの相対速度を算出することができる。なお、図7はシフト周期数Δsが正の場合であり、相対移動距離は遠ざかることになる。また、最後のパルスを基準に周期数をシフトして積算した場合、最大の積算値が存在する周期数から最後のパルスで測定した距離を算出することができる。
【0058】
実施の形態3.
図8はこの発明の実施の形態3に係るレーザ測距装置100bの構成を示す機能ブロック図である。図8において、信号積分回路301は、後述する図9に示すコンパレータとコンデンサと抵抗で構成され、受信信号の大きさを時間積分して積分値を算出する。レーザ停止回路302は、同様にコンパレータと電圧源で構成され、積分値が所定値に達するとレーザ光の出力を停止させる。
【0059】
次に、信号積分回路301とレーザ停止回路302の動作を具体的に説明する。図9の(a)は信号積分回路301とレーザ停止回路302の一例を示す構成図、(b)は(a)における各部の信号を示すタイミングチャートである。構成を簡単に説明すると、図9の(a)の信号積分回路301は、コンパレータCP2の第1入力端子(負帰還入力)に抵抗R1を介して受信信号が入力され、第2入力端子が接地され、出力端子と第1入力端子の間の帰還ループに第5コンデンサC5が挿入されてなる。レーザ停止回路302は、第1入力端子に入力される信号積分回路301のコンパレータCP3の出力(積分値)と第2入力端子に接続された電圧源VS1の電圧との比較に基づいてレーダ停止信号を出力端子から出力する。図9の(b)は(a)の回路の受信信号、積分値、レーザ停止信号の変化を示す。
【0060】
信号積分回路301は、光検出器102から受信信号が入力されると、コンパレータCP2で構成される積分回路で受信信号を時間積分して積分値の電圧信号を出力する。レーザ停止回路302は積分値の電圧信号を入力すると、コンパレータCP3で積分値の電圧と電圧源VS1の所定の電圧を比較し、積算値の方が高い場合のみHIGHレベルの電圧を出力し、電圧源VS1の所定の電圧以下の場合はLOWレベルの電圧を出力する。ここでは、所要S/N比となるために必要な受信信号の積分値に相当する所定の電圧を設定している。なお、受信信号中に受信パルス信号以外の雑音が大きい場合はその大きさを含めて電圧を設定する。制御部111はレーザ停止回路302から出力された電圧がHIGHレベルの信号でレーザ発振信号の出力を停止し、レーザ光源101はレーザ光を発生しなくなる。ここで、予め設定したパルスの総数より少なくなり、測定時間を短くすることができる。
【0061】
また、制御部111から積算処理信号を積算処理部108へ出力する。積算処理信号が入力すると、積算処理部108は複数組のデータの積算処理を行う。ここで、予め設定した積算回数より少なくなり、処理時間を短くすることができる。すなわち目標物Tの距離及び反射率により所要の積算回数が異なるため、受信信号の積分値により所要S/N比に達するまで積算を行うように設定し、積算処理を最小限とすることにより、測定時間、処理時間及び消費電力を抑えることができる。信号積分回路301やレーザ停止回路302として、コンパレータやコンデンサ等の低コストな素子を用いることにより、装置を低コストに構成することができる。
【0062】
実施の形態4.
図10はこの発明の実施の形態4に係るレーザ測距装置100cの構成を示す機能ブロック図である。図10において、第2ピーク値出力回路401は、受信信号の2番目に大きなピークを1つ検出し、2番目のピークの大きさを多値に変換する。なお、最大ピーク値出力回路105と第2ピーク値出力回路401は同じ回路を共有して一体であっても良い。第2周期カウント回路402は、2番目に大きなピークを検出した時間に達するまでのサンプリング周期の周期数をカウントする。なお、周期カウント回路106と第2周期カウント回路402は同じ回路を共有して一体であっても良い。
【0063】
第2データ記憶部403は、複数回の受信信号の2番目に大きなピーク値とそれぞれカウントした周期数のデータを高速で一時的に記憶する。第2積算処理部404は、記憶された複数回の受信信号の最大ピーク値及び2番目に大きなピーク値をそれぞれカウントした周期数が同じ数同士で積算し、周期数毎の積算値を算出する。第2距離演算部405は、最大ピーク値及び2番目に大きな積算値が存在する周期数を導出し、これら導出した周期数に相当する時間から目標物までの距離をそれぞれ演算する。
【0064】
次に、パルス毎における第2ピーク値出力回路401から第2データ記憶部403までの動作を説明する。第2ピーク値出力回路401はサンプリング開始信号が入力される度に、受信信号の2番目に大きなピークを1つ検出し、この2番目に大きなピーク値のデジタル信号を出力する。サンプルホールド信号がHIGHレベルからLOWレベルに立ち下がると、最大ピーク値出力回路105からの最大ピーク値のデータを第2ピーク値出力回路401の第1メモリ(図示省略:図3の第2コンデンサC2に対応)に一時的に記憶する。サンプルホールド信号がLOWレベルからHIGHレベルに立ち上がると、第2ピーク値出力回路401の第1メモリに記憶していたデータを第2ピーク値出力回路401の第2メモリ(図示省略:図3の第1コンデンサC1に対応)に一時的に記憶し、再びサンプルホールド信号がHIGHレベルからLOWレベルに立ち下がると、新たに最大ピーク値出力回路105からの最大ピーク値のデータを第2ピーク値出力回路401の第1メモリに一時的に記憶する。すなわち、第2ピーク値出力回路401の第2メモリに記憶されたデータは2番目に大きなピーク値となる。この第2メモリに記憶されたデータをデジタル信号に変換して出力する。
【0065】
あるいは、サンプルホールド信号がHIGHレベルからLOWレベルに立ち下がると、最大ピーク値出力回路105の第1コンデンサC1の保持電圧と同じ電圧まで第2ピーク値出力回路401の第6コンデンサ(図示省略:図3の第2コンデンサC2に対応)に電荷が供給される。サンプルホールド信号がLOWレベルからHIGHレベルに立ち上がると、第2ピーク値出力回路401の第6コンデンサの保持電圧と同じ電圧まで第2ピーク値出力回路401の第7コンデンサ(図示省略:図3の第1コンデンサC1に対応)に電荷が供給され、再びサンプルホールド信号がHIGHレベルからLOWレベルに立ち下がると、新たに最大ピーク値出力回路105の第1コンデンサC1の保持電圧と同じ電圧まで第2ピーク値出力回路401の第6コンデンサに電荷が供給される。すなわち、第7コンデンサの保持電圧により2番目に大きなピーク値を測定することができる。
【0066】
さらに、タイミング回路112からサンプリング終了信号が入力すると、この電圧信号をA/D変換器(図示省略:図3の第1A/D変換器AD1に対応)は精度の高い多値のデジタル値の信号に変換して出力する。ここで、2番目に大きなピーク値のデータは一点であるため、A/D変換器は高速である必要はない。したがって、パルス毎に最大ピーク値に達するまでに検出された受信信号の2番目に大きなピークの大きさを多値に変換することができる。
【0067】
第2周期カウント回路402はサンプリング開始信号が入力される度に、2番目に大きなピークを検出した時間に達するまでの時間をサンプリング周期の周期数としてカウントし、この周期数のデジタル信号を出力する。第2周期カウント回路402はクロック信号に同期し、サンプルホールド信号がHIGHレベルからLOWレベルに立ち下がる度に、サンプリング開始信号が入力されてからのクロック数をカウントし、このクロック数を第3メモリ(図示省略:図4の第3コンデンサC3に対応)に一時的に記憶する。サンプルホールド信号がLOWレベルからHIGHレベルに立ち上がると、第2周期カウント回路402の第3メモリに記憶していたクロック数を第2周期カウント回路402の第4メモリ(図示省略:図4の第4コンデンサC4に対応)に一時的に記憶し、再びサンプルホールド信号がHIGHレベルからLOWレベルに立ち下がると、新たにサンプリング開始信号が入力されてからのクロック数をカウントし、このクロック数を第3メモリに一時的に記憶する。すなわち、第2周期カウント回路402の第4メモリに記憶されたクロック数は2番目に大きなピーク値に達するまでの周期数となる。この第4メモリに記憶されたクロック数をデジタル信号に変換して出力する。
【0068】
あるいは、サンプルホールド信号がHIGHレベルからLOWレベルに立ち下がると、周期カウント回路106の第4コンデンサC4の保持電圧と同じ電圧まで第2周期カウント回路402の第8コンデンサ(図示省略:図4の第3コンデンサC3に対応)に電荷が供給される。サンプルホールド信号がLOWレベルからHIGHレベルに立ち上がると、第2周期カウント回路の第8コンデンサの保持電圧と同じ電圧まで第2周期カウント回路402の第9コンデンサ(図示省略:図4の第4コンデンサC4に対応)に電荷が供給され、再びサンプルホールド信号がHIGHレベルからLOWレベルに立ち下がると、新たに周期カウント回路106の第4コンデンサC4の保持電圧と同じ電圧まで第2周期カウント回路402の第8コンデンサに電荷が供給される。すなわち、第8コンデンサの保持電圧により2番目に大きなピーク値に達するまでの周期数を測定することができる。
【0069】
さらに、タイミング回路112からサンプリング終了信号が入力すると、この電圧信号をA/D変換器(図示省略:図4の第2A/D変換器AD2に対応)は精度の高い多値のデジタル値の信号に変換して出力する。ここで、2番目に大きなピーク値に達するまでの周期数のデータは一点であるため、A/D変換器は高速である必要はない。したがって、パルス毎に最大ピーク値に達するまでに検出された受信信号の2番目に大きなピークを検出した時間に達するまでの周期数をカウントすることができる。
【0070】
一方、第2データ記憶部403は、サンプリング終了信号が入力すると、第2ピーク値出力回路401及び第2周期カウント回路402から出力されたデジタル信号から2番目に大きなピーク値とそのサンプリング周期数の一組のデータを記憶する。すなわち、パルス毎に2番目に大きなピーク値とそのサンプリング周期数の一組のデータが第2データ記憶部403に記憶され、複数回のパルスにより複数組のデータが記憶される。したがって、パルス毎に距離測定範囲に相当する受信パルス波形データのサンプリング回数分を全て記憶する必要がない構成であり、データの記憶容量を最小限にすることができる。また、複数回のパルスによるデータの記憶容量の増加を十分に抑えることができる。
【0071】
積算処理信号が入力されると、第2積算処理部404は複数組のデータの積算処理を行う。ここで、複数回の一定な送信周期で繰り返したパルスの総数をN(=正の整数)回、n(=1からNまでの整数)回目のパルスで2番目に大きなピーク値をP2(n)、カウントしたサンプリング周期の周期数をs2(n)と定義した場合、記憶された複数回の受信信号の最大ピーク値P(n)と2番目に大きなピーク値P2(n)でそれぞれカウントした周期数s(n)及びs2(n)が同じ数同士で積算され、周期数毎の積算値を算出する。データ記憶部107及び第2データ記憶部403に記憶された最大ピーク値及び2番目に大きなピーク値とそれらのサンプリング周期数の複数組のデータが読み出され、サンプリング周期数毎に割り当てられた第2積算処理部404のアドレスに対して最大ピーク値と2番目に大きなピーク値を逐次加算して書き込まれる。
【0072】
このため、最大ピーク値及び2番目に大きなピーク値が存在する周期数のみに加算され、受信パルス信号が大きい周期数の積算値は高くなる。また、受信パルス信号と雑音の大きさの差が小さい場合、パルスによっては雑音で受信パルス信号の小さい周期数に最大ピーク値及び2番目に大きなピーク値が存在するが、受信パルス信号は任意の大きさで常に検出され、最大ピーク値及び2番目に大きなピーク値として同じ周期数で検出される確率が高く、雑音が同じ周期数で検出される確率は低い。すなわち、雑音は周期数に対してランダムで積算値は一様となり、受信パルス信号がある周期数で積算値は高くなる。したがって、受信パルス信号とノイズとを容易に識別することができる。さらに、パルス毎に距離測定範囲に相当する受信パルス波形データのサンプリング回数分を全て積算する必要がない構成であり、データの処理時間を最小限にすることができる。また、複数回のパルスによるデータの処理時間の増加を十分に抑えることができる。
【0073】
複数組のデータの積算処理を行うと、第2距離演算部405は最大及び2番目に大きなピーク値の最大の積算値が存在する周期数を導出し、これら導出した周期数に相当する時間から目標物までの距離をそれぞれ演算する。すなわち、最大と2番目に大きな受信パルス信号を検出することにより、反射強度の大きい二つの目標物までの距離をそれぞれ測定することができる。例えば、目標物の背景に大きな建物や山、あるいは地面があり、背景からの反射強度の方が大きい場合、最大の受信パルス信号は背景に相当し、最大の受信パルス信号が検出される前の2番目に大きな受信パルス信号が目標物に相当する。このため、最大の受信パルス信号だけでは目標物の距離を測定することができない。したがって、最大及び2番目に大きな受信パルス信号を検出することにより、背景の距離と背景より近い目標物の距離をそれぞれ測定することができる。
【0074】
なおこの発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、これらの実施の形態の可能な組み合わせを全て含むことは云うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
100,100a,100b,100c レーザ測距装置、101 レーザ光源、102 光検出器、103 送信光学系、104 受信光学系、105 最大ピーク値出力回路、106 周期カウント回路、107 データ記憶部、108,201 積算処理部、109 距離演算部、110 クロック発生器、111 制御部、112 タイミング回路、301 信号積分回路、302 レーザ停止回路、401 第2ピーク値出力回路、402 第2周期カウント回路、403 第2データ記憶部、404 第2積算処理部、405 第2距離演算部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスのレーザ光を送信して目標物で反射したレーザ光を受信し、送信から受信までの経過時間から目標物までの距離を算出するレーザ測距装置であって、
前記パルスのレーザ光を繰り返して複数回出力するレーザ光源と、
受信したレーザ光を電気信号の受信信号に変換する光検出器と、
パルス毎に送信開始と前記受信信号のサンプリング開始のタイミングを制御するタイミング手段と、
パルス毎に前記受信信号の最大ピークを1つ検出し、最大ピークの大きさを多値の信号に変換する最大ピーク値出力手段と、
パルス毎にサンプリング開始からの経過時間を一定間隔のサンプリング周期で区切り、最大ピークを検出した時間に達するまでの前記サンプリング周期の周期数をカウントする周期カウント手段と、
パルス毎に受信信号の最大ピーク値とそれぞれカウントした周期数のデータを記憶するデータ記憶手段と、
記憶された複数回の受信信号の最大ピーク値をそれぞれカウントした周期数が同じ数同士で積算し、周期数毎の積算値を算出する積算処理手段と、
最大の積算値が存在する周期数を導出し、この導出した周期数に相当する時間から目標物までの距離を演算する距離演算手段と、
を備えたことを特徴とするレーザ測距装置。
【請求項2】
前記積算処理手段が、繰り返して出力した複数回のパルスの総数をN(=正の整数)回、n(=1からNまでの整数)回目のパルスでカウントしたサンプリング周期の周期数をs(n)、積算における周期数の数をシフトさせるシフト周期数をΔs(=ゼロ、正または負の整数)と定義した場合、n回目の受信信号の最大ピーク値をs(n)+(N−n)×Δsでシフトした周期数が同じ数同士で積算し、異なるシフト周期数で周期数をシフトさせて周期数毎の積算値を繰り返し算出し、
最大となる積算値が存在するシフト周期数を導出し、導出したシフト周期数に相当する時間から目標物との相対速度を演算する速度演算手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のレーザ測距装置。
【請求項3】
前記受信信号の大きさを時間積分して積分値を算出する信号積分手段と、
積分値が所定値を超えるとレーザ光の出力を停止させるレーザ停止手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ測距装置。
【請求項4】
パルス毎に前記受信信号の2番目に大きなピークを1つ検出し、2番目のピークの大きさを多値の信号に変換する第2ピーク値出力手段と、
パルス毎にサンプリング開始からの経過時間を前記サンプリング周期で区切り、2番目に大きなピークを検出した時間に達するまでのサンプリング周期の周期数をカウントする第2周期カウント手段と、
パルス毎に受信信号の2番目に大きなピーク値とそれぞれカウントした周期数のデータを記憶する第2データ記憶手段と、
記憶された複数回の受信信号の最大ピーク値及び2番目に大きなピーク値をそれぞれカウントした周期数が同じ数同士で積算し、周期数毎の積算値を算出する第2積算処理手段と、
最大ピーク値及び2番目に大きなピーク値の大きな積算値が存在する周期数を導出し、これら導出した周期数に相当する時間から目標物までの距離をそれぞれ演算する第2距離演算手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のレーザ測距装置。
【請求項5】
パルスのレーザ光を送信して目標物で反射したレーザ光を受信し、送信から受信までの経過時間から目標物までの距離を算出するレーザ測距装置であって、
前記パルスのレーザ光を繰り返して複数回出力するレーザ光源と、
受信したレーザ光を電気信号の受信信号に変換する光検出器と、
パルス毎に送信開始と前記受信信号のサンプリング開始のタイミングを制御するタイミング手段と、
パルス毎に前記受信信号の最大ピークを1つ検出し、最大ピークの大きさを多値の信号に変換する最大ピーク値出力手段と、
パルス毎にサンプリング開始からの経過時間を一定間隔のサンプリング周期で区切り、最大ピークを検出した時間に達するまでの前記サンプリング周期の周期数をカウントする周期カウント手段と、
パルス毎に受信信号の最大ピーク値とそれぞれカウントした周期数のデータを記憶するデータ記憶手段と、
パルス毎に前記受信信号の2番目に大きなピークを1つ検出し、2番目のピークの大きさを多値の信号に変換する第2ピーク値出力手段と、
パルス毎にサンプリング開始からの経過時間を前記サンプリング周期で区切り、2番目に大きなピークを検出した時間に達するまでのサンプリング周期の周期数をカウントする第2周期カウント手段と、
パルス毎に受信信号の2番目に大きなピーク値とそれぞれカウントした周期数のデータを記憶する第2データ記憶手段と、
記憶された複数回の受信信号の最大ピーク値及び2番目に大きなピーク値をそれぞれカウントした周期数が同じ数同士で積算し、周期数毎の積算値を算出する拡張積算処理手段と、
最大ピーク値及び2番目に大きなピーク値の大きな積算値が存在する周期数を導出し、これら導出した周期数に相当する時間から目標物までの距離をそれぞれ演算する拡張距離演算手段と、
を備えたことを特徴とするレーザ測距装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−237067(P2010−237067A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85985(P2009−85985)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】