説明

レーザ装置

【課題】光出力を正確に制御して長期的に安定した運用が可能な構成のレーザ装置を提供する。
【解決手段】レーザ装置は、レーザ光をモニタ光と出力光とに分離する部分反射ミラー57と、部分反射ミラー57からのモニタ光の強度を検出する光出力モニタ装置60と、光出力モニタ装置60の検出値に基づいてレーザ光源の出力を制御して部分反射ミラー57からの出力光の強度を制御する制御部80と、所定の校正時期において部分反射ミラー57からの出力光の強度を検出するパワーメータ装置72とを備え、制御部80は、パワーメータ装置72の検出値に基づいて光出力モニタ装置60の出力を校正するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光出力をモニタするとともに当該モニタ結果に応じて光出力を一定に制御する機能を備えたレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなレーザ装置は、例えば、半導体デバイスに微細構造を形成する露光装置や、微細構造を観察する各種光学式検査装置、眼科治療等に用いるレーザ治療装置などの光源として用いられており、例えば、半導体レーザにより生成され光増幅器により増幅された赤外波長領域のレーザ光を、複数の波長変換素子を備える波長変換装置において順次波長変換し、最終的にArFエキシマレーザの発振波長と同じ波長λ=193nmの紫外光として出力する構成が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
レーザ装置においては、レーザ光の光出力の安定化を図るために、レーザ光の光出力を光出力モニタ装置(一般的にフォトダイオード等の受光素子)により検出し、光出力をモニタしながら所望の光出力が得られるように半導体レーザへの駆動電流をフィードバック制御する手段(APC:Automatic Power Control)が種々提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−200747号公報
【特許文献2】特開2002−42362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成において、深紫外レーザ光や高出力レーザ光を長期に亘り運用する場合、光出力モニタ装置が損傷により劣化して検出感度が低下し、光出力モニタ装置によって光出力を正確に検出することができなくなる。そのため、上記のようにフィードバック制御された光出力が本来の設定値から大きくずれてしまい、光出力を一定に制御することができなくなるという課題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、光出力を正確に制御して長期的に安定した運用が可能な構成のレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のレーザ装置は、レーザ光を出力するレーザ光出力部と、レーザ光出力部からのレーザ光をモニタ光と出力光とに分離する光分離部と、光分離部からのモニタ光の強度を検出する光出力モニタ部と、光出力モニタ部の検出値に基づいてレーザ光出力部の出力を制御して光分離部からの出力光の強度を制御する光出力制御部と、所定の校正時期において光分離部からの出力光の強度を検出する光強度検出部とを備え、光出力制御部は、光強度検出部の検出値に基づいて光出力モニタ部の出力を校正するようになっている。
【0008】
なお、上述の構成において、レーザヘッド部が、基本波レーザ光を発生するレーザ光発生部と、レーザ光発生からの基本波レーザ光を波長変換して所定の高調波を含むレーザ光として光分離部へ出力する波長変換部とを有して構成されることが好ましい。また、上記所定の高調波が、波長200nm以下の深紫外光であることは本発明の好ましい態様である。さらに、波長変換部から出力されるレーザ光から所定の高調波のレーザ光のみを抽出して光分離部へ出力する光抽出部を更に備えて構成されることも好ましい態様である。
【0009】
また、上述の構成において、光分離部および光抽出部の少なくとも一方が、予め設定された時間ごとにレーザ光の受光位置を所定量シフトさせることが好ましい。さらに、光分離部および光抽出部を一体として所定量シフトさせるシフト機構を更に備えた構成も好ましい態様である。また、光分離部、光出力モニタ部、光強度検出部、光抽出部、およびシフト機構のうちの少なくとも1つが、レーザ光出力部からのレーザ光を導入する入射口および出力光を導出する出射口を有する筐体内に収容されて、筐体を1つの単位としてレーザ装置に交換可能となる構成も好ましい態様である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光出力モニタ部が劣化等により検出感度を変動させた場合でも、光強度検出部が検出する光出力の絶対値に基づいて、制御部により光出力モニタ部の出力が校正されるため、光出力を正確に制御して長期的に安定した運用を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の適用例として示すレーザ装置の概要構成図である。
【図2】上記レーザ装置におけるレーザヘッドの概要構成図である。
【図3】上記レーザ装置における波長変換部の概要構成図である。
【図4】上記レーザ装置におけるパワーコントロールユニットの概要構成図である。
【図5】上記パワーコントロールユニットの変形例を示す概要構成図ある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。本発明を適用したレーザ装置の代表例として、レクチルのパターンを基板に転写する露光装置の光源装置として用いられるレーザ装置1の概要構成を図1に示すとともに、このレーザ装置1におけるレーザヘッド2の概要構成を図2に示しており、まず始めに、これらの図面を参照しながらレーザ装置1について概要説明する。
【0013】
レーザ装置1は、この装置を光源装置として利用するレーザシステムへの適用上の便宜から、深紫外光を出力する出力機能を有しレーザシステムへの組み込みを容易化した小型箱状のレーザヘッド2と、レーザヘッド2の制御機能を備えレーザヘッド2と別置される筐体状の制御ラック3とからなり、レーザヘッド2と制御ラック3とが、種々の電気ケーブルや、励起光伝送用の光ファイバ、パージガス供給用ガスチューブ、冷却水配管等のインターフェース4により相互接続されて構成される。
【0014】
レーザヘッド2は、赤外〜可視領域の基本波レーザ光を射出するレーザ光発生部10と、レーザ光発生部10から射出された基本波レーザ光を深紫外光に波長変換する波長変換部20とを備え、その出力端から深紫外光が出力されるように構成されている。
【0015】
レーザ光発生部10は、種光となるレーザ光(シード光)Lsを発生するレーザ光源11と、レーザ光源11により発生されたシード光Lsを増幅する光増幅器12,13とを備えて構成される。レーザ光源11及び光増幅器12,13は、このレーザ装置1を用いるレーザシステムの用途及び機能に応じ、適宜な発振波長、増幅率のものが用いられる。このようなレーザ光源11として、波長λ=1.547[μm]の単一波長のレーザ光を発生する分布帰還半導体レーザ(DFB半導体レーザ)を用い、第1段目の光増幅器12として半導体レーザ励起のエルビウム(Er)・ドープ・ファイバー光増幅器(EDFA)、第2段目の光増幅器13として、ラマン・レーザ励起のEDFAを用いた構成が例示される。なお、レーザ光発生部10からの出力は、光増幅器13に供給されるラマン・レーザの励起光出力によって制御される。
【0016】
波長変換部20は、レーザ光発生部10から射出されたレーザ光(光増幅器12,13により増幅された基本波レーザ光)Lrを、所定波長の深紫外光に波長変換する。レーザ装置1においては、レーザ光発生部10から射出された波長λ=1.547[μm]の基本波レーザ光を、複数の波長変換光学素子によって順次波長変換し、最終的に基本波の8倍波(第8次高調波)でArFエキシマレーザと同一波長である波長λ=193[nm]の深紫外光を出力する。
【0017】
このように、赤外領域(あるいは可視領域)の基本波レーザ光Lrを深紫外光に波長変換する波長変換部の構成(波長変換光学素子の種別や組み合わせ)には、種々の公知の形態がある。本実施形態では、波長変換部の一例として、レーザ光発生部10において、1つのレーザ光源から射出された基本波レーザ光を3つに分岐して各々2段の光増幅器12,13により増幅し、増幅された3つの基本波レーザ光Lr(Lr1,Lr2,Lr3)を波長変換部20に入射させて、基本波、2倍波(λ=774[nm])および5倍波(λ=309[nm])を生成し、これらの和周波発生により7倍波(λ=221[nm])、8倍波(λ=193[nm])を発生させる構成例を図3に示しており、この波長変換部20の構成について図3を追加参照して概要説明する。
【0018】
まず、P偏光で入射される第1の基本波レーザ光Lr1は、レンズ31により波長変換光学素子21に集光入射され、第2高調波発生(SHG)により周波数が基本波(ω)の2倍(2ω)、波長λが半分の2倍波を発生させる。波長変換光学素子21により発生されたP偏光の2倍波、および波長変換光学素子21を透過したP偏光の基本波は、レンズ32により波長変換光学素子22に集光入射され、和周波発生(ω+2ω)により周波数が基本波の3倍(3ω)の倍波を発生させる。これらの波長変換光学素子21,22は、例えば、2倍波発生用の波長変換光学素子21としてPPLN結晶、3倍波発生用の波長変換光学素子22としてLBO結晶が用いられる。なお、波長変換光学素子21として、PPKTP結晶、PPSLT結晶、LBO結晶等を用いることもできる。
【0019】
波長変換光学素子22により発生されたS偏光の3倍波と、波長変換光学素子22を透過したP偏光の基本波および2倍波は、2波長波長板41を透過させて2倍波だけをS偏光に変換する。2波長波長板41として、例えば、結晶の光学軸と平行にカットした一軸性の結晶の平板からなる波長板が用いられる。この波長板41は、一方の波長の光(2倍波)に対して偏光を回転させ、他方の波長の光に対しては、偏光が回転しないように、波長板(結晶)の厚さを一方の波長の光に対してλ/2の整数倍で、他方の波長の光に対しては、λの整数倍になるようにカットすることにより構成される。
【0020】
ともにS偏光になった2倍波および3倍波は、レンズ33により波長変換光学素子23に集光入射され、和周波発生(2ω+3ω)により5倍波(5ω)を発生させる。波長変換光学素子23からは、この波長変換光学素子23により発生されたP偏光の5倍波と、波長変換光学素子23を透過したS偏光の2倍波および3倍波、並びにP偏光の基本波が射出される。なお、5倍波を発生させる波長変換光学素子23として、例えばLBO結晶が用いられるが、BBO結晶、CBO結晶を用いることも可能である。ここで、波長変換光学素子23から射出される5倍波は、ウォークオフのため断面が楕円形になっている。そこで、2枚のシリンドリカルレンズ34v,34hにより、楕円形の断面形状を円形に整形し、ダイクロイックミラー44に入射させる。
【0021】
一方、P偏光で入射される第2の基本波レーザ光Lr2は、レンズ35により波長変換光学素子24に集光入射され、第2高調波発生により2倍波を発生させる。波長変換光学素子24からは、この波長変換光学素子24により発生されたP偏光の2倍波と基本波が射出され、レンズ36,37を介してダイクロイックミラー45に入射される。なお、波長変換光学素子24として、PPLN結晶を用いることができるほか、PPKTP結晶、PPSLT結晶、LBO結晶等を用いてもよい。
【0022】
また、S偏光で入射される第3の基本波レーザ光Lr3は、レンズ38を介してダイクロイックミラー45に入射される。ダイクロイックミラー45は、基本波の波長帯域の光を透過し、2倍波の波長帯域の光を反射するように構成されており、このダイクロイックミラー45に入射するS偏光の基本波と、波長変換光学素子24により発生されたP偏光の2倍波とが同軸上に合成される。
【0023】
上記合成されたS偏光の基本波およびP偏光の2倍波は、ダイクロイックミラー44に入射される。ダイクロイックミラー44は、基本波および2倍波の波長帯域の光を透過し、5倍波の波長帯域の光を反射するように構成されており、このダイクロイックミラー44に入射したS偏光の基本波およびP偏光の2倍波と、波長変換光学素子23により発生されたP偏光の5倍波とが同軸上に合成される。
【0024】
このように同軸上に合成されたS偏光の基本波、P偏光の2倍波、P偏光の5倍波は、波長変換光学素子25に入射される。ここで、基本波、2倍波、5倍波の各光路には各々レンズ(34v,34h,36,37,38)が設けられており、同軸上に合成された各波長の光が波長変換光学素子25に集光入射するようになっている。波長変換光学素子25では、P偏光の2倍波とP偏光の5倍波による和周波発生(2ω+5ω)が行われて7倍波(7ω)が発生される。波長変換光学素子25からは、この波長変換光学素子25により発生されたS偏光の7倍波とともに、波長変換光学素子25を透過した各波長の光が射出される。7倍波を発生させる波長変換光学素子25としては、例えばCLBO結晶が用いられる。
【0025】
これらの光は、波長変換光学素子26に入射し、ここでS偏光の基本波とS偏光の7倍波が和周波発生(ω+7ω)により合成され、P偏光の8倍波(8ω)が発生される。8倍波を発生させる波長変換光学素子26として、例えばCLBO結晶が用いられる。波長変換光学素子26からは、この波長変換光学素子26により発生された8倍波とともに、波長変換光学素子26を透過した各波長の光が射出され、その光路上に配置されたパワーコントロールユニット50に入射する。
【0026】
それでは、パワーコントロールユニット50の構成について、図4を追加参照しながら説明する。パワーコントロールユニット50は、図4に示すように、ユニットケース51、分散プリズム54,55、光吸収体56、部分反射ミラー57、シフト機構58、減光フィルタ59、光出力モニタ装置60、駆動機構70、全反射ミラー71、およびパワーメータ装置72を備えて構成されており、このユニットの基体となるベースプレート(不図示)にアライメントされた状態で配設されている。このパワーコントロールユニット50は、ユニット単位でレーザヘッド2に着脱可能(交換可能)に構成されている。
【0027】
ユニットケース51は、全体として矩形箱形状を呈しており、波長変換光学素子26から射出されたレーザ光を内部へ導入するための入射口52と、8倍波たる深紫外レーザ光Lvを外部へ導出するための出射口53とを有している。ユニットケース51の入射口52から導入されたレーザ光は分散プリズム54,55に入射する。
【0028】
分散プリズム54,55には、波長変換光学素子26により発生された8倍波以外に、波長変換光学素子26を透過した基本波や2倍波等の他の波長成分の光も入射されるが、この分散プリズム54,55内において8倍波は他の波長成分の光よりも大きく屈折するため(プリズム54,55内では波長の短いほうが屈折率は大きいため)、8倍波と他の波長成分の光とを分離することができる。なお、本実施形態においては、8倍波を略90度折り曲げて出射口へと導くために、2つの分散プリズム54,55を配置した場合を例示したが、これに限定されるものではなく、1つまたは3つ以上の分散プリズムを配置して構成してもよい。
【0029】
分散プリズム54,55で分離された8倍波以外の他の波長成分の光は、例えばシリコンナノチップ等から構成される光吸収体56に入射し、この光吸収体56内で多重反射によって吸収される。一方、分散プリズム54,55で分離された8倍波は、部分反射ミラー57に入射する。
【0030】
部分反射ミラー57は、入射される8倍波の一部をモニタ光(モニタ用微弱光)として部分的に取り出すための反射鏡である。なお、分散プリズム54,55と部分反射ミラー57はシフト機構58を介してベースプレートに取り付けられている。シフト機構58は、光軸に直交する1軸方向(例えば、図4において紙面に直交する方向)に移動自在な微細駆動ステージ等から構成されており、後述する制御ラック3の制御部80から出力されるステージ駆動信号に基づいて、予め設定された時間ごとに分散プリズム54,55および部分反射ミラー57を所定シフト量だけシフトさせて、レーザ光の受光位置を変更させる。ここで、所定シフト量としては、例えば、ビーム直径と同じ程度の値が例示される。
【0031】
部分反射ミラー57は、その反射率に応じて8倍波の一部(例えば、1%以下の光)をモニタ光として反射して、このモニタ光を光量調整用の減光フィルタ59を介して光出力モニタ装置60へ導く。なお、部分反射ミラー57としては、コーティングなしで光の入射偏光方向をP偏光とすることで低反射率としたものや、低反射率のコーティング処理を施したものが例示される。
【0032】
減光フィルタ59は、光出力モニタ装置60として一般的に適用されるフォトダイオードが微弱な光のみを検出することが可能であることに鑑みて配置されている。
【0033】
光出力モニタ装置60は、例えばフォトダイオード(Photo Diode)等の受光素子を備えて構成されており、部分反射ミラー57によって送られてきた8倍波の一部(モニタ光)を受光して、この受光量(モニタ光の強度)に応じた電流信号に変換する。光出力モニタ装置60に内蔵された不図示の増幅回路によって、この電流信号は電圧信号に変換されて、任意設定可能なゲイン(Gain)で増幅された電圧信号として制御ラック3の制御部80へ出力される。
【0034】
制御ラック3には、レーザ装置1を構成する各部の作動を統括的に制御してレーザヘッド2による紫外レーザ光Lvの出力を制御する制御部80、パワーコントロールユニット50等のレーザ装置1の各部にインターフェース4を通るガスチューブ(不図示)を介してN2ガス等の不活性ガスを供給するガス供給部90、光増幅部12,13を励起する励起光源部(不図示)などが設けられている。
【0035】
制御部80は、例えば、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オン・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等からなる所謂マイクロコンピュータを有して構成されており、光出力モニタ装置60から送出される電圧信号に基づいて、この電圧値が予め設定された制御指令値と一致するように(すなわち、レーザ光の出力が一定となるように)、光増幅器13に供給する励起光出力をフィードバック制御する。
【0036】
このとき、光出力モニタ装置60の代表例であるフォトダイオードは、サーモパイル等の熱電変換型ディテクタに比して高感度・高速応答であるという特徴を有する反面、8倍波である深紫外レーザ光Lvに長時間晒されると容易に損傷を受けて検出感度が変動する虞があり、その結果として、光増幅器13へのフィードバック制御としての適正な励起光出力を供給できず、光出力を一定に制御することができないという問題がある。そこで、本実施形態においては、ユニットケース51内に駆動機構70、全反射ミラー71およびパワーメータ装置72が備えられており、制御部80によって光出力モニタ装置60の出力(出力電圧値)に対して校正を行う機能を有している。
【0037】
部分反射ミラー57を透過した深紫外レーザ光Lvは、レーザ装置1の出力光としてユニットケース51の出射口53から外部へ射出される。一方で、部分反射ミラー57と出射口53との間の光路上には、例えば、電磁ソレノイド等の駆動機構70によって当該光路に対して進退自在に構成された全反射ミラー71が設けられている。駆動機構70は、制御部80から出力される駆動制御信号に基づいて、深紫外レーザ光Lvを外部へ射出する場合には全反射ミラー71を上記光路上から退避させ、光出力モニタ装置60の出力を校正する場合には予め設定された所定時間(例えば、24時間)ごとに全反射ミラー71を短時間(例えば、パワーメータ装置72の応答速度に応じた時間)だけ上記光路上に挿入する。全反射ミラー71が上記光路上に配置されると、出射口53へ向かう深紫外レーザ光Lvが全反射ミラー71によって略90度折り曲げられるように反射されて熱電変換型のパワーメータ装置72に導入される。
【0038】
パワーメータ装置72は、前述のフォトダイオードとは異なり、レーザ光の光出力(強度)を温度(熱エネルギ)によって検出する光出力検出手段であり、深紫外レーザ光Lvの強度の絶対値を検出することができる。パワーメータ装置72としては例えばサーモパイル(Thermopile)等が例示され、このサーモパイルは一般に複数の熱電対を直列に接続した構造となっており、レーザ光の受光面が温接点で、この温接点に対し熱絶縁を介して周囲温度測定のための冷接点が設けられる。パワーメータ装置72は、レーザ光を受光することにより吸収した熱エネルギ(温接点と冷接点との温度差)に応じた起電力(電圧信号)を制御部80へ出力する。
【0039】
制御部80は、パワーメータ装置72より測定される光出力信号に基づいて、光出力モニタ装置60のゲインおよびオフセット値を調節する。より具体的には、レーザ装置1から深紫外レーザ光Lvを外部へ出力する前の初期状態において、光出力モニタ装置60の出力電圧値とパワーメータ装置72の光出力値とが対応付けられた正確な相関関係(換算式の係数)を算定しておくことで、光出力モニタ装置60の出力を校正する場合、上記相関関係に従ってパワーメータ装置72の光出力値に対応した光出力モニタ装置60の光出力値となるように、光出力モニタ装置60の出力電圧値を光出力値に変換するための式のゲインおよびオフセット値を決定する。例えば、パワーメータ装置72の光出力値が初期値に対して同一値を示しているのに対して、光出力モニタ装置60の光出力値が初期値の半分の値となっているときには、光出力モニタ装置60の換算式の(フォトダイオードの増幅回路)のゲイン値を2倍に調節する。また、上記相関関係に基づいて、光出力モニタ装置60のオフセット値を、光入力がない場合における光出力モニタ装置60の光出力値がゼロとならないように調節する。これにより、光出力モニタ装置60の光出力値が適正に校正されることになる。
【0040】
そして、制御部80は、光出力モニタ装置60から送出される、上記校正された電圧信号に基づいて、光増幅器13へ供給する励起光出力を正確にフィードバック制御して、深紫外レーザ光Lvの出力を一定に制御する。
【0041】
このようにレーザ装置1において、光出力モニタ装置(フォトダイオード)60が長時間に亘って深紫外レーザ光Lvに晒されて劣化等により検出感度が変動したり、部分反射ミラー57の劣化により、その反射率に変動が生じた場合でも、所定のタイミングで光出力の絶対値を検出するパワーメータ装置72の検出値に基づいて光出力モニタ装置60の出力が正確に校正されるため、光増幅器13へのフィードバック制御としての適正な励起光出力を供給して、レーザ装置1の光出力を安定化させることができる。従って、以上説明したレーザ装置1によれば、光出力を正確に制御して長期的に安定した運用を実現することが可能である。
【0042】
また、分散プリズム54,55や部分反射ミラー57も8倍波(深紫外光)に晒されることで損傷を受けて劣化する虞があるが、上述のように、分散プリズム54,55および部分反射ミラー57はシフト機構58によって一定時間ごとにシフトされ8倍波の受光位置を変更する(未使用の領域で8倍波を受光する)構成であるため、これらの素子の長寿命化を図ることができるとともに、損傷による劣化によって光出力やビームの品質の劣化を防止することができる。
【0043】
さらに、分散プリズム54,55および部分反射ミラー57は、共に一つのシフト機構58にマウントされて全体的にシフトされるため、両者の相対位置の変動を防止するとともに、効率的な運用を図ることができる。
【0044】
また、光出力モニタ装置60や部分反射ミラー57等の実使用時間が所定の規定時間を経過して交換を要する場合でも、パワーコントロールユニット50の各構成部品はユニットケース51内に全て収容され、ユニット単位で容易に交換できるため、交換後短時間のうちにレーザ光を再投入することができ、パワーコントロールユニット50の交換後のレーザ装置1の立ち上げ時間を短縮することが可能になる。
【0045】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、パワーコントロールユニットの変形例として図5に示すように、パワーコントロールユニット150に入射する各波長の光から8倍波のみを抽出する光抽出部として、分散プリズム(上述の実施形態における分散プリズム54,55)の代わりに波長選択用ミラー154を設けて構成してもよい。この波長選択ミラー154としては、最終出力波長の8倍波に対しては全反射(ほぼ反射率100%)で、8倍波以外の他の波長成分の光に対しては全透過(ほぼ透過率100%)となる所定のコーティングが施された構成が例示される。
【0046】
また同様に図5に示すように、全反射ミラー(上述の実施形態における全反射ミラー71)を設けることなく、例えば電磁ソレノイド等の駆動機構170によってパワーメータ装置72自体を直接、部分反射ミラー57と出射口53との間の光路に対して進退自在に構成してもよい。
【0047】
また、上述の実施形態では、分散プリズム54,55、光吸収体56、部分反射ミラー57、シフト機構58、減光フィルタ59、光出力モニタ装置60、駆動機構70、全反射ミラー71、パワーメータ装置72等がユニットケース51内に全て収容され、1つの単位としてパワーコントロールユニット50を構成する形態を例示したが、これに限定されるものではなく、これらの一部を各々一つの単位としてユニットで構成してもよい。このような構成によれば、交換時間(消耗時間)が素子ごとに異なるような場合に合理的である。
【0048】
また、上述の実施形態では、レーザ光発生部10において、レーザ光源11により発生されたレーザ光(シード光)Lsを、直列接続した2段の光増幅器12,13によって増幅し、増幅されたレーザ光Lrを波長変換部20に入射させる構成を例示したが、レーザ光源11の出力や増幅率に応じて光増幅器を1段もしくは3段以上とし、または光増幅器を設けることなく波長変換部20に直接入射させるように構成してもよく、波長変換部20の構成に応じて、レーザ光源11から出射されるレーザ光を複数に分割し並列に設けた複数の光増幅器で増幅することなく、単列の光増幅器で構成してもよい。また、説明簡略化のため記載を省略したが、レーザ光源11と光増幅器12との間、光増幅器12と波長変換部20との間に、光パルスを切り出すEOM等の光変調器や、単色光を高める狭帯域フィルタ等が適宜設けられる。
【0049】
また、レーザ装置1からの出力光の波長は193nmに限定されるものではなく、KrFエキシマレーザやFレーザ等と同様の波長帯域であってもよい。さらに、本発明によるレーザ装置の適用例としては露光装置に限らず、各種の光学式検査装置や、レーザ治療装置など、他の種々の装置においても用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 レーザ装置
2 レーザヘッド
3 制御ラック
10 レーザ光発生部
11 レーザ光源
20 波長変換部
50 パワーコントロールユニット
51 ユニットケース
54 分散プリズム
55 分散プリズム
57 部分反射ミラー
58 シフト機構
60 光出力モニタ装置
71 全反射ミラー
72 パワーメータ装置
80 制御部
150 パワーコントロールユニット(変形例)
154 波長選択用ミラー
158 シフト機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出力するレーザ光出力部と、
前記レーザ光出力部からのレーザ光をモニタ光と出力光とに分離する光分離部と、
前記光分離部からのモニタ光の強度を検出する光出力モニタ部と、
前記光出力モニタ部の検出値に基づいて前記レーザ光出力部の出力を制御して前記光分離部からの出力光の強度を制御する光出力制御部と、
所定の校正時期において前記光分離部からの出力光の強度を検出する光強度検出部とを備え、
前記光出力制御部は、前記光強度検出部の検出値に基づいて前記光出力モニタ部の出力を校正することを特徴とするレーザ装置。
【請求項2】
前記レーザ光出力部が、基本波レーザ光を発生するレーザ光発生部と、前記レーザ光発生部からの基本波レーザ光を波長変換して所定の高調波を含むレーザ光として前記光分離部へ出力する波長変換部とを有して構成されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記所定の高調波が、波長200nm以下の深紫外光であることを特徴とする請求項2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記波長変換部から出力されるレーザ光から前記所定の高調波のレーザ光のみを抽出して前記光分離部へ出力する光抽出部を更に備えて構成されることを特徴とする請求項2または3に記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記光分離部および前記光抽出部の少なくとも一方が、予め設定された時間ごとにレーザ光の受光位置を所定量シフトさせることを特徴とする請求項4に記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記光分離部および前記光抽出部を一体として前記所定量シフトさせるシフト機構を更に備えて構成されることを特徴とする請求項5に記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記光分離部、前記光出力モニタ部、前記光強度検出部、前記光抽出部、および前記シフト機構のうちの少なくとも1つが、前記レーザ光出力部からのレーザ光を導入する入射口および出力光を導出する出射口を有する筐体内に収容されて、前記筐体を1つの単位として前記レーザ装置に交換可能に構成されることを特徴とする請求項6に記載のレーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−142187(P2011−142187A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1509(P2010−1509)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】