説明

レーザ誘起光破壊効果によって毛を短くするための装置

本発明は、毛(3)、特に、人間の皮膚(5)から生える毛を短くするための装置(1)に関する。この装置(1)は、所定のパルス時間の間レーザビーム(9)を発生させるためのレーザ源(7)と、前記レーザビームを焦点(25)に集束するための光学系(15)と、前記焦点を目標位置に位置決めするためのレーザビームマニピュレータ(17)とを持つ。本発明によれば、前記焦点(25)の寸法及び前記発生させられたレーザビーム(9)のパワーは、前記レーザビームが、前記焦点(25)において毛組織の特徴的閾値より上のパワー密度を持つようなものであり、前記特徴的閾値より上では、前記所定のパルス時間、レーザ誘起光破壊(LIOB)現象が前記毛組織において起こる。LIOB現象は、毛組織における多くの機械的効果、例えばキャビテーション及び衝撃波の発生を生じさせ、これら効果は、LIOB現象が起こる位置の周りの位置において毛(3)を損傷する。実験から、レーザ源(7)の十分な量の全エネルギーがあるとき、LIOB現象が、毛を完全に破壊し従って短くするのに用いられることができることが分かった。本発明による装置(1)の利点は、毛(3)を完全に破壊するのに必要なエネルギーの全量が、毛の周りの皮膚組織の刺激及び損傷が許容可能なレベルに制限されるか又は完全に防止されさえするようなレベルにある、ということである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のパルス時間の間レーザビームを発生させるためのレーザ源と、前記レーザビームを焦点に集束するための光学系と、前記焦点を目標位置に位置決めするためのレーザビームマニピュレータとを有する、毛を短くするための装置(device for shortening hairs)に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭段落に記載された種類の毛を短くするための装置は、国際特許出願公開第00/62700号から知られている。この既知の装置は、専門家でない人々によって使用されるのに適切な、即ち、消費者市場にとって適切な、レーザシェーバである。これは、当該装置が、レーザビームの焦点を目標位置に自動的に位置決めするシステムを有するという事実の結果であり、この目標位置は、毛が溶融、蒸発又は燃焼されなければならない、皮膚表面の近くの毛上の位置に対応する。既知の装置のレーザビームは、毛組織が比較的高い線形吸収特性を持つ波長を持つ。好適には、レーザビームの焦点の寸法は、焦点に存在する毛がその直径全体を通じて均一な態様で局所的に加熱されるように、毛の直径に対応する。焦点内に存在する毛の部分が、溶融、蒸発又は燃焼されて、毛が短くされるように、十分な量のレーザエネルギーが焦点に集束される。
【0003】
既知の毛を短くするための装置の欠点は、その直径全体を通じて毛を溶融、蒸発又は燃焼させるのに必要なエネルギーの全量が、比較的高いということである。典型的には、4〜5mJの量のエネルギーが、既知の装置によって毛を熱的に破壊又は切断するのに必要とされる。ほとんどの場合、この量のエネルギーは、毛の周りの皮膚組織の刺激又は損傷を回避するには高過ぎる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、冒頭段落に記載された種類の毛を短くするための装置であって、該装置によって、大幅に低減された量のレーザエネルギーによって毛が短くされることができ、このため、毛の周りの皮膚組織の刺激及び損傷が可能な限り防止されるような装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、本発明による毛を短くするための装置は、焦点の寸法及び発生させられたレーザビームのパワーが、レーザビームが前記焦点において毛組織の特徴的閾値より上のパワー密度を持つようなものであり、前記特徴的閾値より上では、所定のパルス時間、レーザ誘起光破壊現象が前記毛組織において起こることを特徴とする。
【0006】
一般に、レーザ誘起光破壊(LIOB)は、パルスレーザビームの波長に対して透明又は半透明な媒体において、焦点におけるレーザビームのパワー密度がその特定の媒体にとって特徴的な閾値を超えるときに起こる。閾値より下では、この特定の媒体は、レーザビームのこの特定の波長に対して比較的低い線形吸収特性を持つ。閾値より上では、媒体は、媒体のイオン化及びプラズマの形成の結果として、レーザビームのこの特定波長に対して強く非線形である吸収特性を持つ。LIOB現象は、多くの機械的効果、例えばキャビテーション及び衝撃波の発生を生じ、これらは、媒体をLIOB現象の位置の周りの位置において損傷する。
【0007】
実験から、LIOB現象が、皮膚から生える毛を破壊して短くするのに用いられることができることが分かった。毛組織は、約500nm〜2000nmの波長に対して透明又は半透明である。この範囲内の波長の各値について、LIOB現象が、毛組織中で、焦点の位置において、焦点におけるレーザビームのパワー密度が毛組織について特徴的な閾値を上回るときに起こる。この閾値は、水性の媒体及び組織について特徴的な閾値にかなり近く、また、レーザビームのパルス時間に依存する。特に、パルス時間が増加すると、必要とされるパワー密度(W/cm)の閾値は減少する。LIOB現象の結果として、有効な損傷、即ち、少なくとも毛の初期破壊を生じさせるのに十分に効果的である機械的効果を達成するには、例えば10nsのオーダーのパルス時間で十分であることが分かった。パルス時間のこの値については、焦点におけるレーザビームのパワー密度の閾値は、2x1010W/cmのオーダーである。上記のパルス時間に対して、例えば十分に大きい開口数を持つレンズによって得られる十分に小さい焦点サイズによって、この閾値は、たったの10分の数mJの全パルスエネルギーによって達成されることができる。パルスエネルギーのこの全量は、国際特許出願公開第00/62700号から知られている装置によって毛の熱破壊を引き起こすために必要とされるパルスエネルギーの全量よりかなり小さく、全パルスエネルギーのこのような値については、毛の周りの皮膚組織の刺激及び損傷は、許容可能なレベルに制限されるか、又は、実質的に完全に防止されさえすることが分かった。本発明の追加の利点は、焦点におけるいわゆるプラズマシールド効果の発生であり、これは、LIOB現象の結果として、レーザビームの実質的に全てのエネルギーが焦点に吸収されることを意味する。その結果、本発明による装置は、比較的高い効率を持ち、焦点の後ろの位置の皮膚組織の刺激及び損傷は防止される。
【0008】
本発明による毛を短くするための装置の特定の実施例は、レーザビームの波長が800nm〜1300nmであることを特徴とする。この範囲内の波長に対して、毛の周りの毛組織及び皮膚組織は、半透明である。その結果、レーザビームの焦点は、皮膚表面より下の毛の中又は毛上の位置に位置決めされることができるので、装置は、比較的長期間維持される、皮膚の最適なスムーズさを提供する。皮膚組織及び毛組織がレーザビームの波長に対して半透明であり、LIOB現象はレーザビームの焦点においてしか起こらないので、レーザビームのエネルギーの比較的小さい部分しか、レーザ源と焦点との間のレーザビーム中に存在する皮膚組織及び毛組織によって吸収又は散乱されない。その結果、前記皮膚組織の刺激及び前記毛組織の損傷はほとんど起こらず、発生させられたレーザビームのエネルギーの比較的大きな部分が、焦点においてLIOB現象を引き起こすのに用いられる。
【0009】
本発明による毛を短くするための装置の他の実施例は、波長が1000nm〜1100nmであることを特徴とする。この範囲内の波長については、毛組織の線形吸収特性は最小であるので、発生させられるレーザビームのエネルギーの最大部分が、レーザビームの焦点においてLIOB現象を発生させるために用いられる。
【0010】
本発明による毛を短くするための装置の特定の実施例は、当該装置が、少なくとも皮膚の短くされるべき毛を備えた部分の画像を検出するための画像センサと、前記皮膚に対する前記毛の位置及び/又は向きを決定するための画像認識システムと、前記焦点の前記目標位置を、前記位置及び/又は向きの関数として決定するための制御システムとを有し、動作中、前記制御システムは、前記レーザビームマニピュレータを、前記焦点の前記目標位置に対応する位置に調整し、その後、前記レーザ源を作動させることを特徴とする。この特定の実施例では、レーザビームの焦点の目標位置は、制御システムによって自動的に決定され、制御システムは、レーザビームマニピュレータを目標位置に対応する位置に調整した後、レーザ源を自動的に作動させる。焦点のこの自動決定及び位置決めの結果として、この毛を短くするための装置は、専門家でない人々によって使用されるのに、即ち、消費者市場に、特に適切である。
【0011】
本発明による毛を短くするための装置の他の実施例は、動作中、制御システムが、各目標位置に対して、所定のパルス時間を持つ複数のレーザパルスを発生させるようにレーザ源を作動させることを特徴とする。当該他の実施例においては、レーザ源が各目標位置に対して複数のレーザパルスを発生させるので、パルスごとに必要とされるエネルギーはかなり低減され、このため、レーザ源の必要とされるエネルギー容量はかなり低減される。
【0012】
本発明による毛を短くするための装置の他の実施例は、動作中、制御システムが、レーザビームマニピュレータを、短くされるべき毛の縦方向を横断するように当該毛を通じて伸びる仮想の線上の複数の隣接した目標位置に、続けて調整することを特徴とする。当該他の実施例においては、LIOB現象が前記仮想の線上の各目標位置において続けて引き起こされ、各LIOB現象は、毛の局所的な損傷又は初期破壊を生じ、このため、続けて引き起こされたLIOB現象によって生じた合計の損傷が、前記仮想の線に沿った毛の完全な破壊を引き起こす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下では、本発明による毛を短くするための実施例が、図を参照して更に詳細に説明される。
【0014】
図1では、人間の皮膚5から生えている毛3を短くするための装置1の主要な構成要素のみが図式的に示されている。装置1は、所定のパルス時間の間レーザビーム9を発生させるためのレーザ源7を有する。示される実施例において、レーザ源7は、パルスNd:YAGレーザであり、発生させられるレーザビーム9は、1064nmの波長を持つ。発生するレーザビーム9は、装置1のハウジング13の固定位置に取り付けられた第1のミラー11と、レンズ系又は対物レンズを有する光学系15と、第2のミラー19を有するレーザビームマニピュレータ17と、ハウジング13の皮膚接触表面23に設けられた放射線出口窓21とを介してレーザ源7から皮膚5に向かう光経路を辿る。光学系15は、レーザビーム9を焦点25に集束する。レーザビームマニピュレータ17は、図1では図式的にのみ示される電気駆動部材27を有し、この電気駆動部材27によって第2のミラー19は、第2のミラー19の表面に平行且つ皮膚接触面23に平行に延在する第1の旋回軸Xの周りを旋回可能であり、更に、第2のミラー19の表面に平行且つ第1の旋回軸Xに垂直に延在する第2の旋回軸Yの周りを旋回可能である。第1の及び第2の旋回軸X及びYの周りの第2のミラー19の旋回運動によって、焦点25は、レーザビームマニピュレータ17によって、以下に説明される態様で決定される目標位置に位置決めされる。
【0015】
図1において図式的に示されるように、装置1は、皮膚5のうち少なくとも短くされるべき毛を持つ部分の画像を検出するための、ハウジング13において固定位置に取り付けられる画像センサ29を更に有する。示される実施例において、画像センサ29はCCDカメラである。装置1は、更に、画像センサ29によって発生させられた皮膚5の画像に基づいて皮膚5に対する毛3の位置及び/又は向きを決定するための、画像認識システム31を有する。焦点25の目標位置は、画像認識システム31によって決定される皮膚5に対する毛3の位置及び/又は向きに基づいて、画像1の制御システム33によって決定される。画像認識システム31及び制御システム33の動作の詳細な説明は、簡単のためにここでは省略される。しかし、国際特許出願公開第00/62700号が参照される。そこで説明された脱毛装置は、類似した画像認識システム及び制御システムを持ち、その動作はそこで詳細に説明されている。この国際特許出願公開第00/62700号における説明に基づいて、当業者は、装置1において画像認識システム31及び制御システム33をその目的に適切になるように設計及び適応することができるであろう。目標位置が決定されると、制御システム33は、レーザビームマニピュレータ17の駆動部材27を調整し、その結果、第2のミラー19を、目標位置に対応する位置に調整する。その後、制御システム33が、レーザ源7を作動させる。このような態様で、レーザビーム9の焦点25の目標位置は制御システム33によって自動的に決定され、制御システム33はレーザビームマニピュレータ17の位置を調整した後でレーザ源7を自動的に作動させるので、装置1は、専門家でない人々による使用に特に適切である、即ち、消費者市場にとって特に適切である。
【0016】
図2において図式的に示されるように、示される実施例では、制御システム33は、焦点25が、皮膚表面35から距離dだけ下の毛3の部分に存在するように、レーザビーム9の焦点25の目標位置を決定する。示される実施例において、前記距離dは、約0.1mmである。本発明によれば、焦点25の寸法及びレーザ源7によって発生させられたレーザビーム9のパワーは、レーザビーム9が焦点25において毛組織についての特徴的な閾値より上のパワー密度を持つようなものであり、前記特徴的な閾値より上では、レーザ誘起光破壊(LIOB)現象が、レーザビーム9の所定のパルス時間の間、毛組織で焦点25の位置において起こる。上記LIOB現象は、以下で更に説明されるように、毛3を機械的に破壊するのに用いられる。
【0017】
一般に、LIOB現象は、レーザビームの波長に対して透明又は半透明の媒体において、レーザビームのパワー密度がその特定の媒体について特徴的な閾値を超えるときに起こる。閾値より下では、媒体は、レーザビームの特定の波長に対して比較的小さい線形吸収係数を持つ。閾値より上では、媒体は、媒体のイオン化及びプラズマの形成の結果である、レーザビームのこの特定波長について強く非線形である吸収係数を持つ。LIOB現象は、多くの機械的効果、例えばキャビテーション及び衝撃波の発生を生じ、これらは、媒体をLIOB現象の位置の周りの位置において損傷させる。
【0018】
レーザビーム9は焦点25に集束されるので、レーザビーム9のパワー密度は、焦点25において最大値を持つ。その結果、レーザビーム9のパワーが徐々に増加されると、LIOB現象は最初に焦点25において発生する。焦点25の寸法及びレーザビーム9のパワーは、LIOB現象が実質的に焦点25においてのみ起こるようなものである。本発明による装置1の実施例において、レーザ源7の波長(1064nm)は、該波長に対して皮膚表面35と焦点25との間に存在する毛組織及び皮膚組織が半透明である波長である。その結果、皮膚表面35と焦点25との間に存在する毛組織及び皮膚組織によるレーザビーム9の吸収及び散乱は比較的小さくなり、このため、発生させられたレーザビーム9のエネルギーの比較的大きい部分が、焦点25においてLIOB現象を引き起こすのに用いられ、皮膚表面35と焦点25との間に存在する皮膚組織の刺激及び毛組織の損傷はほとんど起きない。一般的に、皮膚表面35の直下に存在する皮膚組織は、約800nm〜1300nmの範囲内の波長に対して半透明であることに注意されたい。結果として、皮膚表面35の下の位置の毛を短くするための装置の実施例は、好適には、前記範囲内の波長を持つレーザ源を持つべきである。好適には、皮膚表面35の下の毛を短くするには、図1の実施例におけるように、波長は、約1000nm〜1100nmの範囲内にある。なぜなら、この範囲内の波長については、皮膚表面35の直下の毛組織及び皮膚組織の線形の吸収及び散乱特性は、最少だからである。
【0019】
実験は、毛3の焦点25におけるLIOB現象から生じる上述の機械的効果が、毛3の破壊又は焦点25を直接囲む領域における毛3の初期破壊を生じることができることを示している。焦点25におけるLIOB現象を達成するためには、焦点25におけるレーザビーム9のパワー密度は、前述のとおり、毛組織についての特性閾値を上回るべきである。毛組織についての前記特性閾値は、水性媒体及び水性組織におけるLIOB現象の発生について特徴的である閾値にかなり近いことに注意されたい。更に、上記特性閾値は、波長の値及びレーザ源7のパルス時間の値の両方に依存する。特に、閾値(W/cm)は、パルス時間が増加するときに減少する。当業者は、実験によって上記閾値を決定することができるであろう。
【0020】
実験は、LIOB現象から生じる機械的効果が焦点25における毛組織の大きな損傷を生じさせる、即ち、焦点25における毛3の少なくとも初期破壊を生じさせるのに十分に強いことを達成するには、例えば10nsのオーダーのレーザ源7のパルス時間が十分であることを更に示した。図1に示される装置1の実施例において、Nd:YAGレーザ源7は、8nsのパルス時間を持つ。10nsのオーダーのパルス時間の値に対しては、焦点25におけるレーザビーム9のパワー密度の閾値は2x1010W/cmのオーダーにある。この閾値は巨大であるが、これは、上述のパルス時間について、十分小さい大きさの焦点25及び10分の数mJ以下の全パルスエネルギーで容易に達成されることができる。焦点25の必要とされる大きさは10μmであり、これは、毛の平均直径(100μm)よりも大幅に小さく、光学系の対物レンズ又はレンズ系の十分に大きい開口数によって実現されることができる。合計パルスエネルギーの上記の小さい量に鑑みて、短くされるべき毛3の周りの皮膚組織の損傷は、許容可能なレベルに制限されるか、又は、実質的に完全に防止されさえする。本発明による装置1の他の利点は、毛3が皮膚表面35より下で破壊されるという事実により、該装置1が、比較的長時間維持される皮膚5の最適な滑らかさを提供するということである。
【0021】
本発明は、レーザビーム9の焦点25の位置が皮膚表面35上にあるか又はそれより上にあるため毛3が皮膚表面35の高さとちょうど同じか又はそれより上の長さまで短くされる実施例も含む。このような実施例の利点は、レーザビーム9の波長が、皮膚表面35の直下に存在する皮膚組織が透明又は半透明である範囲内にある必要がないということである。このような実施例において、レーザビーム9の波長は、毛組織のみが透明又は半透明である範囲にあるべきである。この範囲は、上述の800nm〜1300nmの範囲より大幅に広く、約500nm〜2000nmにある。毛が皮膚表面35より上で破壊される実施例において、装置1による処理の前に毛のサポートジェルが皮膚5に塗布されると、より良い結果が得られることに留意されたい。
【0022】
上述の説明から、10nsのオーダーのパルス時間及び多くとも合計量10分の数mJのパルスエネルギーを持つレーザビーム9の単一のパルスによって、焦点25における毛3の局所的な損傷又は初期破壊が達成されることができることが明らかである。しかし、毛3の完全な破壊を達成するためには、これより大幅に高い全量のエネルギーが必要とされる。これは、例えば、これより大幅に高い量の全パルスエネルギーを持つ単一パルスによって達成されることができる。しかし、これは、レーザ源7の比較的高いエネルギー容量を必要とし、この結果、レーザ源7の寸法及び/又はコストは、消費者市場に適切な商品にとって許容できないほど高くなりうる。図1に示される装置1の実施例において、毛3を完全に破壊するために必要とされるエネルギーの全量は、焦点25の各目標位置について、制御システム33が、8nsの所定パルス時間及び0.2mJのパルスエネルギーを持つ複数のレーザパルスを発生させるようにレーザ源7を作動させることにより提供される。図1に示される実施例において、レーザ源7は100Hzのパルス周波数を持ち、レーザ源7は、約50msの期間の間各目標位置において作動されるので、レーザ源7は各目標位置において約5回のこのようなレーザパルスを発生させる。加えて、図2に示されるように、制御システム33は、短くされるべき毛3のそれぞれについて、レーザビームマニピュレータ17を、毛3の縦方向Zを横断するように当該毛3を通じて伸びる仮想の線37上で、毛3が短くされるべき位置に規則的な間隔で存在する、N個の隣接した目標位置T、T、…、Tに、続けて調整する。このようにして、各目標位置T、T、…、Tにおいて毛3の初期破壊を達成するのに必要とされるレーザパルスごとのエネルギーは制限され、このため、レーザ源7の必要とされるエネルギー容量は制限され、また、全目標位置T、T、…、TにおいてLIOB現象によって続けて達成される初期損傷が、前記仮想の線37に沿った毛3の全破壊を生じさせる。
【0023】
焦点25におけるLIOB現象による毛3の局所的な損傷は、前述の実施例における8nsという例よりもかなり小さい所定のパルス時間を持つレーザパルスによっても達成されることができることに注意されたい。レーザパルスが充分なパルスエネルギーを持つことを条件として、ピコ秒(10−12s)又はフェムト秒(10−15s)のオーダーのパルス時間も毛3の局所的損傷を生じさせるのに効果的であり、毛3の完全な破壊が、毛3内の又は毛3上の十分な数の異なる目標位置における十分な数のパルスによって達成されることができる。
【0024】
本発明の上記の説明及び請求の範囲において、焦点25の必要とされる寸法及び発生させられるレーザビームの必要とされるパワーは、達成されるべき結果によって規定されることに注意されたい。即ち、焦点25の寸法及び発生させられるレーザビーム9のパワーは、レーザビーム9が、焦点25において、それより上ではLIOB現象が毛組織において起こるような特徴的閾値を上回るパワー密度(W/cm)を持つようなものである。しかし、所定のパルス時間及びパルスエネルギーを持つ所与のレーザ源について、当業者は、パルス時間、パルスエネルギー及び焦点におけるパワー密度の特徴的閾値に基づいて焦点の必要とされる寸法を決定することができ、また、当業者は、焦点の必要な寸法を提供する適切な光学系を設計することもできることに注意されたい。当業者には、より高いパルスエネルギーを持つレーザ源が用いられれば、毛を完全に破壊するために必要とされる全回数は低下させられることも明らかであろう。
【0025】
本発明は、装置がレーザビームを焦点に集束させるための他の種類の光学系を持つ実施例もカバーすることに更に注意されたい。レンズ系又は対物レンズの代わりに、例えばカーブしたミラーが用いられることもできる。光学系は、例えば、レンズ系又は対物レンズが続くビームエキスパンダを有することができ、これは、焦点サイズの更なる低下を生じさせる。出口窓21及び皮膚表面35に対して垂直な方向の焦点25の位置は、光学系15の光特性によって、そして、レーザ源7と出口窓21との間の光経路における光学系15の位置によって、決定されることに注意されたい。焦点25の上記位置は、短くされた後の毛3の長さを決定する。本発明による装置は、加えて、光学系15の前記位置を調整するためのアクチュエータ又は光学系15の光特性を調整するための装置を備えることができ、このため、皮膚表面35に対して垂直な前記方向の中の焦点25の位置が手動で又は自動的に調整されることができるということに注意されたい。最後に、本発明は、レーザビームマニピュレータ及び/又はレーザ源が、制御システム33によって自動制御されず、装置の専門のオペレータによって動作させられ制御されるべき実施例もカバーすることに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による毛を短くするための装置を図式的に示す。
【図2】図1の装置のレーザビームの焦点の短くされるべき毛の上の目標位置を詳細に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパルス時間の間レーザビームを発生させるためのレーザ源と、前記レーザビームを焦点に集束するための光学系と、前記焦点を目標位置に位置決めするためのレーザビームマニピュレータとを有する、毛を短くするための装置において、前記焦点の寸法及び前記発生させられたレーザビームのパワーは、前記レーザビームが前記焦点において毛組織の特徴的閾値より上のパワー密度を持つようなものであり、前記特徴的閾値より上では、前記所定のパルス時間、レーザ誘起光破壊現象が前記毛組織において起こることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の毛を短くするための装置において、前記レーザビームの波長は800nm〜1300nmであることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2に記載の毛を短くするための装置において、前記波長は1000nm〜1100nmであることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1に記載の毛を短くするための装置において、当該装置は、少なくとも皮膚の短くされるべき毛を備えた部分の画像を検出するための画像センサと、前記皮膚に対する前記毛の位置及び/又は向きを決定するための画像認識システムと、前記焦点の前記目標位置を、前記位置及び/又は向きの関数として決定するための制御システムとを有し、動作中、前記制御システムは、前記レーザビームマニピュレータを、前記焦点の前記目標位置に対応する位置に調整し、その後、前記レーザ源を作動させることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4に記載の毛を短くするための装置において、動作中、前記制御システムは、各目標位置に対して、前記所定のパルス時間を持つ複数のレーザパルスを発生させるように、前記レーザ源を作動させることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項4に記載の毛を短くするための装置において、動作中、前記制御システムは、前記レーザビームマニピュレータを、短くされるべき毛の縦方向を横断するように当該毛を通じて伸びる仮想の線上の複数の隣接した目標位置に、続けて調整することを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−501047(P2007−501047A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522457(P2006−522457)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051312
【国際公開番号】WO2005/011510
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】