説明

レーダ装置

【課題】FMCWレーダを初めとするCWレーダ方式を用いるレーダ装置において、干渉波の発生を回避し、制約された周波数変調帯域内に同時に多くのレーダ装置を収容可能とする。
【解決手段】周波数変調を伴う基準連続波に基づく送信波を空間に放射し、外部目標に反射されたこの送信波を受信して受信信号を取得するとともに、取得した受信信号と上記基準連続波からビート信号を求め、求めたビート信号から上記外部目標の距離及び速度を算出するレーダ装置1において、上記基準連続波を上記レーダ装置に特有の間隔でパルス化してパルス送信信号を生成するパルス生成手段13と、上記パルス送信信号を上記送信波として空間に放射するアンテナ16と、干渉波の発生を検出する干渉波モニタ19とを備え、パルス生成手段13は、干渉波モニタ19が検出した干渉波のパルス間隔と異なる間隔を上記特有の間隔に選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、周波数変調を伴う連続波を空間に照射して外部目標の位置や速度を検出するレーダ技術に係るものであり、特に複数のレーダ装置の存在を許容し、その送信波同士による干渉を回避する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の安全性をより高めるために、自動運転制御システム、あるいは運転者支援システムの検討がなされている。これらのシステムでは、運転者の知覚や感覚を補う目的で、自動車周囲の状況を観測するレーダ装置が搭載されることが多い。このような自動車搭載用レーダの方式として、パルスレーダ、パルス圧縮レーダ(スペクトル拡散レーダ)、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダ、2周波CW(Continuous Wave)レーダなどの各種方式が提案されている。
【0003】
気象レーダや防衛用途のレーダに代表されるように、従来、レーダ装置は比較的高価な装置であることが多かった。しかし、自動車搭載用レーダでは、その普及を図るために、低価格・簡易な方式が求められている。かかる観点から前述の各レーダ方式をみてみると、パルスレーダやパルス圧縮レーダは高速の信号処理を要求するので、レーダ装置の価格は高騰せざるを得ない。一方、FMCWレーダや2周波CWレーダは、比較的低速な信号処理でも所要の距離分解能が得られる方式であり、自動車搭載用レーダの主要な方式として有力視されている。
【0004】
一方、FMCWレーダや2周波CWレーダなどの連続波レーダは、連続波の周波数をある程度の帯域幅(スイープ幅)の範囲で変調させ、変調させた連続波を目標物に向かって放射し、反射した受信波と変調させている連続波とのビート信号を得て、所定の距離分解能を得る方式である。このためこれらの方式では、路面反射や他の車両に搭載された同種のレーダ装置からの干渉を受けやすいという問題を有している。このような問題の解決策の一つとしては、レーダ装置毎に異なる電波の帯域を割り当てる方法がある。このようにレーダ装置毎に異なるスイープ幅を割り当てる方法を周波数ホッピングと呼んでいる。
【0005】
これらのレーダ方式の原理によれば、より高い距離分解能を得るためにスイープ幅をさらに広げる必要がある。例えば、1mの距離分解能を得るために150(MHz)の帯域を必要とすることが知られている。この結果、レーダ装置がn台存在し、それぞれのレーダ装置が1mの距離分解能を得られるようにするには、150×n(MHz)の帯域幅が要求されることになる。
【0006】
一方、電波の帯域は電波関連法規によって利用目的毎に割り当てられている。自動車搭載用レーダ用に割り当てられている帯域幅が1(GHz)程度であるとすると、150×n(MHz)<1(GHz)を満たす最大のnは6となる。すなわち1(GHz)では、6台程度のレーダ装置しか収容できないこととなるのである。
【0007】
現在においても、自動車搭載用レーダ装置の測定精度向上に対する要求は高まる傾向にあり、レーダ装置毎に要求されるスイープ幅はさらに広がる傾向にある。その一方で、現在の道路事情では、ある所要のエリアに最大6台しか自動車が走行できないという状況は許容されない。また情報通信技術が発展するにつれて、電波の用途は一貫して拡大しており、自動車搭載用レーダ装置に割り当てられる帯域幅が広がることも期待できない。すなわち、レーダ装置間の干渉の発生状況は悪化する傾向にあり、周波数ホッピングのみでこの課題に対応することは困難であって、周波数ホッピングに替わる新たな解決策を見出さない限り、自動車搭載用レーダ装置の本格的普及は難しいといえる。
【0008】
このような問題の解決策として、連続波をパルス化し、パルス間の位相を符号変調した上で、その位相符号パターンを考慮したミキシングを行う手法が提案されている(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】梶原昭博,"自動車衝突警告用ステップドFMパルスレーダ",信学論B−II,Vol.J-81-B−II, No.3.pp.234-239, May. 1998.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、この文献に開示された方法によれば、符号パターンの直交化の方法によってはミキシング後にも干渉波が残留し、入力信号対干渉波電力が小さい場合など十分な目標検出性能が得られないことが容易に想像できる。また現実に採用可能な位相幅は最小でもπ/64程度と考えられるので、渋滞や駐車場など多数の自動車が周囲に存在する状況では完全な直交性が得られない場合があり、収容可能なレーダ装置の台数にも制限が生じることとなる。
【0011】
この発明は、複数のレーダ装置が周囲に存在しても、安定して外部目標の検出を行うことのできるレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係るレーダ装置は、
周波数変調を伴う基準連続波に基づく送信波を空間に放射し、外部目標に反射されたこの送信波を受信して受信信号を取得するとともに、取得した受信信号と上記基準連続波からビート信号を求め、求めたビート信号から上記外部目標の距離及び速度を算出するレーダ装置において、
上記基準連続波を上記レーダ装置に特有の間隔でパルス化してパルス送信信号を生成するパルス生成手段と、
上記パルス送信信号を上記送信波として空間に放射するアンテナと、
干渉波の発生を検出する干渉波モニタと
を備え、
上記パルス生成手段は、上記干渉波モニタが検出した干渉波のパルス間隔と異なる間隔を上記特有の間隔に選択するものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係るレーダ装置によれば、周波数変調を伴う連続波をパルス化し、干渉波モニタが検出した干渉波のパルス間隔と異なる間隔を特有の間隔に選択して外部目標に照射することとしたので、他のレーダ装置の送信波との干渉が生じにくくなり、周波数の掃引帯域幅が制限された環境であっても、同時に多数のレーダ装置を安定して共存させることができる、という極めて有利な効果を奏するのである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の構成を示すブロック図、である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置が発生する基準信号の波形の例を示す図、である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置における送信周波数変換後の送信波の波形の例を示す図、である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置による送受信パルスと受信サンプリング間隔との関係を示す図、である。
【図5】この発明の実施の形態2に係るレーダ装置が発生する基準信号の波形の例を示す図、である。
【図6】この発明の実施の形態3に係るレーダ装置の構成を示すブロック図、である。
【図7】この発明の実施の形態4に係るレーダ装置の構成を示すブロック図、である。
【図8】この発明の実施の形態5に係るレーダ装置の構成を示すブロック図、である。
【図9】この発明の実施の形態6に係るレーダ装置の構成を示すブロック図、である。
【図10】この発明の実施の形態7に係るレーダ装置の構成を示すブロック図、である。
【図11】この発明の実施の形態8に係るレーダ装置の構成を示すブロック図、である。
【図12】この発明の実施の形態9に係るレーダ装置の構成を示すブロック図、である。
【図13】この発明の実施の形態10に係るレーダ装置の構成を示すブロック図、である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。図に示したレーダ装置1は、基準信号発生器11、送信周波数変換器12、パルス化装置13、制御器14、サーキュレータ15、アンテナ16、受信器17、信号処理器18を備えている。このうち、基準信号発生器11、送信周波数変換器12、パルス化装置13、制御器14までは、主として送信信号を発生するための部品群である。また、サーキュレータ15とアンテナ16は送受信兼用で用いられる部品群である。さらに受信器17と信号処理器18は受信信号を処理するための部品群である。
【0016】
基準信号発生器11は所定の連続波形を有する基準信号を発生する回路又は素子である。基準信号発生器11が生成する基準信号の周波数は、所定の期間Tごとに連続的に上昇と下降とを繰り返すようになっている。
【0017】
なお、ある1つの周波数上昇期間あるいは周波数下降期間のことを「スイープ」と呼ぶ。また、1つの周波数上昇期間とその周波数上昇期間に続く1つの周波数下降期間とによって形成される連続的な時間帯のことを「バースト」と呼ぶ。
【0018】
送信周波数変換器12は、必要に応じて基準信号発生器11が発生した基準信号に対して周波数変調を行い、レーダ装置1の送信波の帯域を、他のレーダ装置の送信波の帯域とは異なる帯域とする回路又は素子である。これによって、他のレーダ装置と送信周波数が重ならないようにすることができ、周波数ホッピングが実現される。
【0019】
パルス生成器13は、基準信号発生器11が生成した基準信号をパルス幅Tp(Tpは所定の長さを有する時間)でパルス信号に変換する回路である。制御器14は送信周波数変換器12及びパルス生成器13の双方の動作を制御するための回路又は素子である。
【0020】
サーキュレータ15は、パルス生成器が行うパルス送信信号生成タイミングに合わせて、アンテナ16の接続をパルス生成器13と受信器17とに切り替える素子又は回路である。この結果、アンテナ16がサーキュレータ15によってパルス生成器12に接続されている場合は、アンテナ16は送信アンテナとして機能する。また、アンテナ16がサーキュレータ15によって受信器17に接続されている場合は、アンテナ16は受信アンテナとして機能することとなる。
【0021】
なお、レーダ装置1では、装置の構成を簡素にするためにアンテナ16を送受信兼用アンテナとして構成しているが、送信アンテナと受信アンテナとを独立させる構成を採用してもよいことはいうまでもない。また、その場合にはサーキュレータ15を省略することが可能である。
【0022】
アンテナ16は、パルス生成器13が生成したパルス信号を送信波81−aとして外部目標2に照射するようになっている。その結果、送信波81−aは外部目標2によって反射され、反射波81−bとして再びアンテナ16に到来することとなる。
【0023】
受信器17は、アンテナ16が反射波81−bを受信して得た受信信号の検波処理を行い、サンプリング間隔Tkによってディジタル信号に変換した上で、ディジタル化された受信信号と基準信号発生器11が出力する基準信号とを混合して、ビート信号を発生する回路又は素子である。
【0024】
信号処理器18は、受信器15が生成したビート信号に基づいて外部目標2の相対距離及び相対速度を検出する回路又は素子である。
【0025】
続いてこの発明の実施の形態1によるレーダ装置の動作について説明する。基準信号発生器11は、図2に示すような帯域幅Bからなる周波数変調を伴う基準信号を発生する。この基準信号は所定のベースバンドB0を最低周波数としていて、周波数上昇期間Tの間にB0+Bまで周波数が上昇する。そして周波数下降期間Tの間にB0まで戻るようになっている。
【0026】
送信周波数変換器12は、基準信号発生器11が発生した周波数変調を伴う基準信号の周波数を、さらに所定の許容帯域内の周波数に変調させる。ここで許容帯域の最低周波数f_mは制御器14からの制御信号に基づいて決定される。制御器14は、例えばレーダ装置1に特有の許容周波数を予め記憶しており、その許容周波数を送信周波数変換器12に制御信号として供給する。レーダ装置1に特有の許容周波数を予め記憶する方法としては、レーダ装置1を工場出荷する際に他のレーダ装置と重ならないように予め許容周波数を割り振っておいてもよい。また使用時に、利用者がレーダ装置1がおかれた環境(例えば、レーダ装置1が自動車搭載用レーダである場合には、周囲の交通状況を考慮しながら利用者が判断する)に合わせて許容周波数を設定するようにしてもよい。
【0027】
この結果、B0からB0+Bまで周波数変調されていた基準信号は、送信周波数変換器12によって、B0+f_mからB0+B+f_mまでの周波数変調を伴うFM送信信号となる。図3はこのようなFM送信信号を図示したものである。このようにレーダ装置毎に異なる許容帯域内に周波数変調することで周波数ホッピングが実現され、受信波の信号処理において干渉波の抑圧が容易になる。
【0028】
続いてパルス生成器13は、送信周波数変換器12が発生したFM送信信号をパルス幅Tp、パルス間隔PRIでパルス化する。ここで、パルス間隔PRIは制御器14からの制御信号に基づいて決定される。同様に制御器14は、レーダ装置1に特有のパルス間隔PRIを予め記憶しており、記憶しているパルス間隔PRIをパルス生成器13に制御信号として供給する。なお、パルス間隔PRIを予め記憶する方法は、許容帯域f_mの記憶方法と同じ方法を用いることができる。その結果、パルス生成器13は送信周波数変換器12が発生したFM送信信号の一部をパルス送信信号として出力する。
【0029】
パルス生成器13によって出力されたパルス送信信号は、サーキュレータ15を経由してアンテナ16から空間に送信波81−aとして照射され、そのうちの一部は外部目標2に反射されて反射波81−bとしてアンテナ16に戻ってくる。
【0030】
アンテナ16は反射波81−bを受信波として受信すると、アナログ信号である受信信号をサーキュレータ15を介して受信器17に出力する。図4は、送信周波数変換器12が発生したFM送信信号の一部をパルス生成器13がパルス化して得た送信パルスと反射波として得られる受信パルスとの関係を示す図である。図が示すように、周波数上昇期間における連続信号は複数の送信パルス(例えば送信パルス82−aや83−aなど)となるが、各送信パルスは基準信号の周波数変調に伴って、徐々に周波数が上昇していくことになる。また送信パルスを複数照射すると、その反射波である受信パルスも複数個得られる。それぞれの受信パルス(例えば受信パルス82−bや83−b)は、外部目標2まで到着して再びアンテナ16に戻るものなので、送信時から所定の時間遅延が発生することになる。さらに外部目標が移動している場合には、ドップラー効果による周波数変調が発生する。
【0031】
受信器17は、アンテナ16によって受信された受信信号を、所定のサンプリング間隔TKでディジタル信号に変換する。さらに送信周波数変換器12が発生しているその時点でのFM送信信号(内部信号)と混合してビート信号を生成する。受信器17によって生成されたビート信号は信号処理器18に出力される。
【0032】
受信器17における受信信号は、外部目標2までの距離による時間遅延と外部目標2の運動の効果に基づく周波数変調の影響を受けているので、受信信号と内部信号から得られたビート信号を解析することで、外部目標2の相対距離及び相対速度を得ることができる。このような原理に基づくレーダは、FMCWレーダとして広く知られるものである。
【0033】
ここで、レーダ装置1において特徴的なことは、送信波として連続波を用いる替わりに、周波数変調を伴った連続波をパルス化して得たパルス波を用いており、さらにパルス送信間隔PRIをレーダ装置1に特有な値に設定している点である。パルス送信間隔PRIがレーダ装置1に特有であるので、受信パルスと他のレーダ装置による送信波あるいは反射波との間で干渉が生じないようになっているのである。このため、レーダ装置1は多くのレーダ装置が混在する環境においても、安定して外部目標2の測定を行うことが可能となる。
【0034】
信号処理器18は、周波数上昇期間と周波数下降期間の双方において、ビート信号を周波数解析することによって、ビート信号の周波数fupとfdownとを算出する。FMCWレーダの原理によれば、周波数上昇期間において受信器17によって得られたビート信号の周波数をfup、周波数下降期間において受信器17によって得られたビート信号の周波数をfdownとするならば、外部目標2までの相対距離R及び外部目標2の相対速度vは式(1)及び式(2)によって与えられる。そこで、信号処理器18は、式(1)と式(2)に算出したfupとfdownを代入してRとvを算出する。なおこれらの式において、cは光速である。
【0035】
【数1】

【0036】
【数2】

【0037】
なお、信号処理器18で行われる周波数解析の方法としては、高速フーリエ変換などすでに知られている各種の方法を用いることができる。ところで、レーダ装置1はパルス波を用いているので、信号処理器18においてパルス方向にフーリエ変換することで、干渉波の影響をさらに低減することが可能となる。
【0038】
ここで、パルス方向にフーリエ変換する、とは次のような意味を有する。すなわち、送信パルスの送信時から数えてk回目のサンプリング時に得られたビート信号を、複数の送信パルスそれぞれについて積算してフーリエ変換するとき、k回目のサンプリング値をパルス方向についてフーリエ変換する、という。
【0039】
レーダ装置1が用いるパルス送信間隔PRIはレーダ装置1に特有な送信間隔であるので、たまたま送信パルスの一部において他のレーダ装置の送信波や反射波と干渉し合ってしまったとしても、他のパルスでは干渉波が発生しないことが期待される。したがって、パルス方向にフーリエ変換を行うことで、一部のパルスにおける干渉波の影響を低減することができる。
【0040】
以上、この発明の実施の形態1では、レーダ装置1に特有のパルス送信間隔PRIでパルスを送信するようにした。この結果、他のレーダ装置のパルス送信間隔とは異なる間隔でパルス送信を行うため、干渉波の発生頻度を低く抑えることができるのである。
【0041】
なお、この発明の実施の形態1において、送信周波数変換器12を省略し、レーダ装置1に特有なパルス送信間隔PRIを用いるだけでも、干渉波の発生頻度を抑制することができることは明らかである。その場合は、制御器14においても許容帯域に関する処理や機能を省略することができる。
【0042】
実施の形態2.
実施の形態1によるレーダ装置1は、FMCWレーダ方式を採用していたが、2周波CW方式を採用してもよい。実施の形態2によるレーダ装置はかかる特徴を有するものである。実施の形態2によるレーダ装置の構成のブロック図も図1によって示される。実施の形態2では、図の基準信号発生器11は、第1周波数期間において一定の周波数f1の連続波基準信号を発生し、第2周波数期間において一定の周波数f2(ただしf2>f1とする)の連続波基準信号を発生するようになっている。ここで第1周波数期間と第2周波数期間はともにTであるものとする。また連続する1つずつの第1周波数期間と第2周波数期間とで1つのバーストが構成されるものとする。
【0043】
この発明の実施の形態2において、図1の構成要素のうち、送信周波数変換器12、パルス生成器13、制御器14、サーキュレータ15、アンテナ16、受信器17については実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0044】
次に、この発明の実施の形態2のレーダ装置について動作を説明する。基準信号発生器11が発生した連続波基準信号は、送信波周波数変換器12に出力される。送信波周波数変換器12は実施の形態1と同様に、このレーダ装置1に特有の最低周波数f_mに基づいて第1周波数期間においては周波数f1+f_m(一定)の連続波基準信号を発生する。さらには第2周波数期間において、周波数f2+f_m(一定)の連続波基準信号を発生する。ここで、レーダ装置1に特有の最低周波数f_mは制御器14が予め記憶している値である。発生した連続波基準信号はパルス生成器13に出力される。
【0045】
またパルス生成器13は、制御器14が予め記憶しているレーダ装置1に特有なパルス送信間隔PRIに基づいてパルス化される。パルス化された送信信号はサーキュレータ15を介してアンテナ16から空間に照射され、一部が外部目標2に反射されてアンテナ16に受信される。ここで実施の形態1でも説明したように、送信波はレーダ装置1に特有なPRIによってパルス化され、さらに送信周波数変換器12によってレーダ装置1に特有な周波数帯に周波数ホッピングされているので、干渉波が生じにくいという特性がある。
【0046】
アンテナ16で受信された受信波は、サーキュレータ15を介して受信器17に出力される。受信器17はこの受信信号をディジタル変換するとともに、送信周波数変換器12が生成する内部基準信号と混合してビート信号を生成し、生成したビート信号を信号処理器18に出力する。
【0047】
信号処理器18は、各サンプリングデータをスペクトル分析してピークが得られる周波数から目標速度を得る。また距離については次のようにして算出する。まず、第1周波数期間のピークが得られる周波数成分の位相をφ1、第2周波数期間のピークが得られる周波数成分の位相をφ2として、その周波数の位相差Δφ=φ1−φ2を算出する。そして算出したΔφを用いて、式(3)により距離Rを算出するのである。
【数3】

【0048】
以上のように、レーダ装置1を2周波CW方式で構成した場合であっても、周波数ホッピングによりレーダ装置1特有の周波数帯域を使用するようにし、さらにレーダ装置1特有のパルス送信間隔でパルス送信を行うようにしたので、干渉波の発生を抑制することが可能となる。
【0049】
なお、実施の形態1で示したように、この発明の実施の形態2においてもパルス方向のフーリエ変換を行うことによって、一部のパルスで発生した干渉波の影響を小さくすることができる。
【0050】
また実施の形態1と同様に、周波数ホッピングを行わずに、このレーダ装置1に特有なパルス送信間隔でパルス送信を行うようにするだけでも干渉波の発生を抑制することができることは明らかである。
【0051】
なお、実施の形態1や実施の形態2で示したこの発明の特徴は、階段状の周波数変調を行うステップチャープレーダ方式のレーダ装置に対しても容易に適用できることはいうまでもない。
【0052】
実施の形態3.
図6は、この発明の実施の形態3によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。図において新規な要素は、送信周波数制御器21である。その他の構成要素は実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
【0053】
送信周波数制御器21は、実施の形態1における制御器14に替わる部位であって、送信周波数変換器12が基準信号に対して行う周波数変調の最低周波数f_mの値を所定の周期毎に変更するように送信周波数変換器12を制御するものである。ここで、送信周波数制御器21がf_mの値を変更する周期は、例えばバーストやパルス送信間隔(PRI)を基準に設定するとよい。すなわち、バーストを基準に周期を設定する場合には、n×バースト(nは自然数)を周期長さとして設定する。またパルスの送信間隔を基準に設定する場合もn×パルスを周期長さとして設定する。
【0054】
異なるf_mを選択する方法としては、例えば送信周波数制御器21が予め最低周波数f_mを複数個記憶しておき、記憶している複数のf_mから一つのf_mを選択する方法が考えられる。その場合には、乱数を発生させて発生した乱数に基づいていずれかのf_mを選択するようにする。こうすると、他に同様のレーダ装置が近くに存在しても、互いに異なるf_mを選択することとなるので、周波数帯域の競合を回避して共存が可能となる。
【0055】
一般にFMCWレーダ方式においてより高い距離分解能を得るには、スイープ幅を広げる必要があるが、電波の帯域幅は電波関連法規によって利用目的毎に制約されるので、狭い領域に同種のレーダ装置が多数存在する場合には、レーダ装置間でスイープ周波数帯が衝突する可能性が避けられない。この結果、同一のスイープ周波数帯に複数のレーダ装置が存在してしまうことによって干渉波が発生することになる。しかし、この発明の実施の形態3による方法のように、所定の周期毎に最低周波数を切り替えるようにすれば、一時的に同一周波数帯を使用する複数のレーダ装置が周囲に存在することで干渉波が多発し、測定精度が大きく劣化しても、パルス送信間隔の数倍あるいはバーストの数倍の時間が経過するうちに、周波数帯の衝突が回避されて、測定精度が回復するのである。
【0056】
なお、実施の形態2に示した2周波CW方式の構成にこの実施の形態の構成を適用しても同様の効果が得られる。
【0057】
実施の形態4.
図7は、この発明の実施の形態4によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。図において新規な要素は、PRI制御器22である。その他の構成要素は実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
【0058】
PRI制御器21は、実施の形態1における制御器14に替わる部位であって、パルス生成器13が連続波送信信号に対して行うパルス化処理のパルス間隔(PRI)を所定の周期毎に変更するようにパルス生成器13とサーキュレータ15を制御するものである。ここで、PRI変換器21がPRIの値を変更する周期は、例えばバーストや送信したパルスの個数を基準に設定するとよい。すなわち、バーストを基準に周期を設定する場合には、n×バースト(nは自然数)毎に新たなPRIを設定する。またパルスの送信個数を基準に設定する場合は、例えばパルスn個毎に新たなPRIを設定する。
【0059】
異なるPRIを選択する方法としては、例えばPRI制御器22が予めPRIを複数個記憶しておき、記憶している複数のPRIから一つのPRIを選択する方法が考えられる。その場合には、乱数を発生させて発生した乱数に基づいていずれかのPRIを選択するようにする。こうすると、他に同様のレーダ装置が近くに存在しても、互いに異なるPRIを選択することとなるので、周波数帯域の競合を回避して共存が可能となる。
【0060】
なお、この場合にはサーキュレータ15の送受信切り替え間隔もあわせて変更する。これによって、設定したPRIに合わせた受信波の受信が可能となる。
【0061】
以上のように構成することで、複数の送信パルスに対する受信パルスのうち、一部のパルスにおいて干渉波が発生してしまったとしても、すべての受信パルスで干渉波が発生することはほとんど起こり得ないこととなる。したがって一時的に測定精度が劣化しても、送信パルス数個分あるいは数バーストのうちに測定精度が回復するのである。
【0062】
またこの結果、狭い領域内に複数のレーダ装置が同時に存在してままであっても、安定して外部目標の測定を行うことができるのである。
【0063】
なお、この実施の形態で示したPRIを所定の周期で変更する構成と実施の形態1で示したパルス方向のフーリエ変換を組み合わせるようにしてもよい。これによって、さらに干渉波の影響を低減することが可能となる。
【0064】
また、実施の形態1や2で示した周波数ホッピングと組み合わせることにより、さらに干渉波の発生頻度を小さくすることが可能である。
【0065】
なお、実施の形態2に示した2周波CW方式の構成にこの実施の形態の構成を適用しても同様の効果が得られる。
【0066】
実施の形態5.
図8は、この発明の実施の形態5によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。図において、実施の形態1と比して新規な要素は次のとおりである。まず、サーキュレータ15を廃して代わりに送信専用アンテナ16aをパルス生成器13に接続した。そして、受信専用アンテナとして素子アンテナ16b−1〜16b−n(nは自然数)を設けてアレーアンテナ構成とするとともに、受信素子アンテナ毎に個別の受信器(受信器17−1〜17−nとする)を設けた。さらに受信器17−1〜17−nの受信信号に基づいてマルチビーム形成処理を行うマルチビーム形成処理器18aを設け、マルチビーム形成処理器18aが形成したビーム毎に個別の信号処理器(信号処理器18b−1〜18b−n)を設けた。その他の構成要素は実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
【0067】
次に、この発明の実施の形態5によるレーダ装置1の動作について説明する。基準信号発生器11は、図2に示すような帯域幅Bからなる周波数変調を伴う基準信号を発生する。送信周波数変換器12は、基準信号発生器11が発生した周波数変調を伴う基準信号の周波数を、さらに所定の許容帯域内の周波数に変調させる。ここで、制御器14は実施の形態1と同様に、送信周波数変換器12に対してレーダ装置1に特有となる許容帯域の最低周波数f_mを与える。これによって周波数ホッピングが実現される。なお、制御器14に替えて、実施の形態3で用いる送信周波数制御器21のような部位を用いて数バーストあるいは数個のパルス送信毎に最低周波数f_mを変更する構成を用いてもよい。
【0068】
そして、パルス生成器13は、送信周波数変換器12が発生したFM送信信号をパルス幅Tp、パルス間隔PRIでパルス化する。ここで、制御器14は実施の形態1と同様に、送信周波数変換器12に対してレーダ装置1特有のパルス間隔PRIを与える。この結果、パルス間隔がレーダ装置1に特有であるため、一部のパルスで干渉波が発生したとしても、送信パルスの大部分では干渉波が発生しないこととなる。このことにより、一定の周波数帯域内で多くのレーダ装置が同時に動作することが可能となる。
【0069】
なお、制御器14に替えて、実施の形態4で用いるPRI制御器22のような部位を用いて数バーストあるいは数個のパルス送信毎にパルス送信間隔PRIを変更する構成を用いてもよい。
【0070】
パルス生成器13によってパルス化された送信信号は、アンテナ16aから空間に照射され、外部目標に反射されて、素子アンテナ16b−1〜16b−nに受信される。その結果、素子アンテナ16b−1〜16b−nは対応する受信器17−1〜17−nに受信信号を出力する。受信器17−1〜17−nでは、それぞれの信号を所定のサンプリング間隔でディジタル信号に変換し、送信周波数変換器12が出力する周波数変調を伴う内部基準信号と混合することでビート信号を生成して、マルチビーム形成処理器18aに出力する。
【0071】
マルチビーム形成処理器18aは、受信器17−1〜17−nが出力したビート信号をアレーアンテナ方向にフーリエ変換してマルチビームを形成する。このようにして、ビート信号は各マルチビーム方向へ指向性利得を持つビーム出力信号に変換される。続いて信号処理器18b−1〜18b−nは出力された各ビーム出力信号に対して、実施の形態1または2と同様にピーク検出を行ってその周波数を算出し、式(1)と式(2)に代入して目標の距離・速度を算出する。
【0072】
こうすることで、一部のビーム方向で他のレーダ装置と同じ周波数やPRIを用いているために干渉波が生じてしまったとしても、このビーム方向とは異なるビーム方向では干渉波が生じないこととなる。また、ピークが検出されたマルチビームからビーム方向が得られる。
【0073】
なおこの実施の形態では、素子アンテナ16b−1〜16b−nとして別個の素子アンテナを配置し、アレーアンテナ構成とすることとしたが、機械スキャンや電子スキャンによるマルチビーム構成としてもよい。またその場合は受信器を実施の形態1と同様に受信器17を一つだけ配置し、時分割で各ビームを処理するようにすればよい。このような構成を採用しても、この発明の特徴は失われることがなく、したがって干渉波を抑制するという効果を奏することは明らかである。
【0074】
またこの実施の形態では、FMCWレーダ方式を用いることとしたが、2周波CW方式に基づくレーダ装置で構成することも容易である。
【0075】
実施の形態6.
図9は、この発明の実施の形態6によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。実施の形態6は、実施の形態5に加えてさらに送信側もマルチビーム構成にした点が特徴である。送信側の構成もマルチビーム構成としたので、PRIと最低周波数f_mとビーム方向の組み合わせをレーダ装置1に特有のものとすることで、さらに干渉波の抑制を行うことができる。
【0076】
図において、実施の形態5と比して新規な要素は次のとおりである。まず基準信号発生器11が発生した周波数変調を伴う基準信号に基づいて送信マルチビーム形成処理を行う送信マルチビーム形成処理器11−2を設けた。さらに送信マルチビーム形成処理によって形成されたマルチビームのそれぞれに対して送信周波数変換を行うために、複数の送信周波数変換器(送信周波数変換器12−1〜12−n、ただしnは2以上の自然数。以下同じ)を設けた。またアンテナ素子として送受兼用のアンテナ素子16−1〜16−nを設け、アンテナ素子16−1〜16−nの送受信を切り替えるためにサーキュレータ15−1〜15−nを設けた。
【0077】
また実施の形態6における制御器14は、送信周波数変換器12−1〜12−nのそれぞれに対して周波数ホッピングのベース周波数を与え、パルス生成器13に対してPRIを与えるとともに、送信マルチビーム形成処理器11−2と受信マルチビーム形成処理器18aに対してビーム方向を与えるようになっている。なおここで、ビーム方向とは、方向を直接的に指示する情報である必要はない。例えば、ビームが異なる方向に向けて構成されている場合には、その中の一つのビームを識別するための情報を与えることで、間接的に方向を指示していることになる。ビーム方向としては、このような情報で十分なのである。
【0078】
これによってビーム方向と周波数ホッピングのベース数波数、パルス送信間隔の組み合わせがレーダ装置1に特有のものとなる。なお。ビーム方向と周波数ホッピングのベース数波数、パルス送信間隔の組み合わせがレーダ装置1に特有である、とは、ビーム方向と周波数ホッピングのベース数波数、パルス送信間隔の組み合わせが全く同じになるレーダ装置が他に存在しないことを意味している。こうすることで、複数のレーダ装置間で、一部のビームにおいて周波数ホッピングの周波数帯域やパルス送信間隔の競合が発生し、その結果として干渉が生じていても、他のビームでは競合が発生せず、干渉波の発生を回避できる。そのため、干渉波が生じないビームを用いての補正や補間が可能となって、外部目標の距離や位置を算出することが可能となるのである。
【0079】
実施の形態7.
図10は、この発明の実施の形態7によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。図において新規な要素は、干渉波モニタ19である。干渉波モニタ19は受信器17が出力する受信信号の周波数とPRIを監視する。またこの発明の実施の形態7における制御器14はこの監視結果に基づいて、レーダ装置の周波数やPRIを変更する。その他の構成要素は実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
【0080】
続いてこの発明の実施の形態7によるレーダ装置の動作について説明する。基準信号発生器11から送信周波数変換器12、パルス生成器13、サーキュレータ15、アンテナ16、受信器17の動作は実施の形態1と同様である。干渉波モニタ19は受信器17の出力に基づいて干渉波の検出を行う。そして干渉波が発生していると判断される場合には、制御器14に信号を送出する。
【0081】
制御器14は、干渉波モニタ19から干渉波発生を検知する信号を受信すると、近接する他のレーダ装置との間で現在の周波数ホッピングの使用周波数帯域やPRIの競合が発生していると判断し、現在の周波数ホッピング帯域あるいはPRIを変更する。周波数ホッピング帯域やPRIの変更方法にはいくつかの方法が考えられる。例えば、干渉波が他のCW(連続波)レーダによるものである場合には、他のPRIを採用しても複数のパルスで干渉波の影響を受けてしまうので、周波数ホッピング帯域を変更し、周波数帯が重ならないようにする。また干渉波がパルスの場合はPRIを変更すれば足りるので、PRIのみを変更するようにしてもよい。
【0082】
このようにして、干渉波モニタ19を設けることにより、この発明の実施の形態7によるレーダ装置は、他のレーダ装置の送信波との間で干渉波の発生を抑制することができるのである。
【0083】
実施の形態8.
図11は、この発明の実施の形態8によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。図において実施の形態7に比較して新規な要素は、送信停止制御付パルス生成器20を設けた点にある。送信停止制御付パルス生成器20は連続波をパルス化するとともに、一時的にパルス波の発生を停止する機能を有する。その他の構成要素は実施の形態7と同じであるので説明を省略する。
【0084】
このようにすることで、実施の形態8によるレーダ装置は一時的に自身のレーダ波の照射を停止する。一方その間、干渉波モニタ19では他のレーダの照射した送信波を受信して得た信号の有無を識別することができる。この場合、この信号の中には自身のレーダ波による信号が含まれないこととなり、ほとんどすべての信号が干渉波によるものとなる。したがって干渉波の発生を検出するために自分自身の照射したレーダの影響を抑え、より正確に他のレーダとの干渉発生を検出できるのである。
【0085】
実施の形態9.
図12は、この発明の実施の形態9によるレーダ装置の構成を示すブロック図である。図において実施の形態1に比較して新規な要素は、コード送信回路21とコードモニタ22とを設けた点にある。コード送信器21は、レーダ装置1で使用している周波数ホッピングの周波数帯域とPRIとをコード化した情報をパルス信号とし、このパルス信号とパルス生成器13が出力するFMCW波に基づくパルス波とを時分割で送信する回路又は素子である。またコードモニタ22は、他のレーダ装置が送信してきた周波数ホッピングの周波数帯域とPRIとをコード化した情報をモニタリングする回路又は素子である。制御器14は、コードモニタ22が取得した情報に基づいてレーダ装置1の周波数ホッピングの周波数帯域とPRIとを制御するとともに、コード送信器21が送信するコードをコードモニタ22が受信した他のレーダ装置のコードに基づいて決定するようになっている。その他の構成要素は実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
【0086】
このように構成することで、レーダ装置1に特有の周波数ホッピング帯域やPRIを簡易に選択することができるようになる。
【0087】
なお、コード送信の方法としては図12に示すように連続波をパルス化した送信波と時分割とする方法の他、コード送信用に所定の周波数帯域を予め割り当てておき、常時この帯域を用いてFMCWなどの連続波のパルスとは別に信号を送受信するような構成としてもよい。
【0088】
また他のレーダ装置の用いるコードと別のコードをレーダ装置1に簡易に割り当てる方法としては、例えば次のように行う。
(1)レーダ装置毎に順位を割り当てる予め識別値を付与しておき、コードとしては周波数ホッピング帯域、PRIを表すコードとこの識別値とを送出する。またコードは周波数ホッピング帯域、PRIの組み合わせ毎に複数個準備しておく。複数のコードについても順番を付与しておく。
(2)コードモニタ22では自己の識別値と他のレーダ装置との識別値の大小関係を判断し、他のレーダ装置と自己のレーダ装置のコードが一致し、さらに自己の識別値の方が他のレーダ装置の識別値よりも大きい場合は、一つ順序の大きいコードに移行し、他のレーダ装置よりも識別値が小さい場合は、一つ順序の小さいコードに移行する。
【0089】
このようにすることで、コードが衝突していることを検知した場合に、コード値を調整した後もさらにコードの衝突が発生することを避けることが可能となる。
【0090】
実施の形態10.
また、レーダ波を通じてPRIや周波数ホッピングの帯域の衝突を検出するのではなく、通信手段を設けて通信による他のレーダ装置との間で情報交換をし、ここで得られた情報に基づいてレーダ装置に特有なPRIや周波数ホッピングの帯域を選択するようにしてもよい。図13は、このような特徴を有するレーダ装置の構成を示すブロック図である。図に示すように、このレーダ装置では通信手段23を設けた。この通信手段23は他のレーダ装置と通信による情報交換を行う。具体的には、このレーダ装置のPRIや周波数ホッピングの周波数帯域を他のレーダ装置に送信する。また他のレーダ装置からそのレーダ装置が使用しているPRIや周波数ホッピングの周波数帯域を受信する。これによって周囲の状況に基づいて、このレーダ装置に特有なPRIや周波数帯域を選択するのである。
【0091】
このように構成することで、パルスの一部や観測時間の一部を干渉波検出用に用いずに他のレーダ装置との間で周波数ホッピングの周波数帯域やPRIの衝突が発生するかどうかを検出できるので、観測精度を常時一定以上の精度に保つことができる。またこの結果として受信器17や信号処理器18の構成を単純とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
この発明は、特に自動車搭載用レーダのように、所定の領域内に複数の連続波レーダが存在する状況下で、各レーダ装置が安定的に外部目標の観測を行うことができるようにするものである。
【符号の説明】
【0093】
13 パルス生成器、16 アンテナ、19 干渉波モニタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数変調を伴う基準連続波に基づく送信波を空間に放射し、外部目標に反射されたこの送信波を受信して受信信号を取得するとともに、取得した受信信号と上記基準連続波からビート信号を求め、求めたビート信号から上記外部目標の距離及び速度を算出するレーダ装置において、
上記基準連続波を上記レーダ装置に特有の間隔でパルス化してパルス送信信号を生成するパルス生成手段と、
上記パルス送信信号を上記送信波として空間に放射するアンテナと、
干渉波の発生を検出する干渉波モニタと
を備え、
上記パルス生成手段は、上記干渉波モニタが検出した干渉波のパルス間隔と異なる間隔を上記特有の間隔に選択することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
請求の範囲第1項記載のレーダ装置において、
上記パルス生成手段は、所定の時間パルスの生成を停止することを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
周波数変調を伴う基準連続波に基づく送信波を空間に放射し、外部目標に反射されたこの送信波を受信して受信信号を取得するとともに、取得した受信信号と上記基準連続波からビート信号を求め、求めたビート信号から上記外部目標の距離及び速度を算出するレーダ装置において、
上記基準連続波を上記レーダ装置に特有の間隔でパルス化してパルス送信信号を生成するパルス生成手段と、
上記パルス送信信号を上記送信波として空間に放射するアンテナと、
このレーダ装置が使用するパルス送信間隔を符号化してコードを生成するとともに、生成したコードを他のレーダ装置に送信するコード送信手段と、
他のレーダ装置が使用するパルス送信間隔に対応するコードを受信するコードモニタと
を備え、
上記パルス生成器は、上記コード送信手段が送信するコードと上記コードモニタが受信した受信結果に基づいてこのレーダ装置が使用するパルス送信間隔を選択することを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
請求の範囲第3項記載のレーダ装置において、
上記コード送信手段は、上記パルス生成手段によって生成されたパルス送信信号を取得して第1のパルス送信信号とし、上記コードをパルス化して得たパルス送信信号を第2のパルス送信信号として、第1及び第2のパルス送信信号を時分割で出力し、
上記アンテナは上記コード送信手段が出力する第1及び第2のパルス送信信号を上記送信波として空間に放射するとともに、外部目標に反射されたこの送信波を受信して受信信号を出力し、
上記コードモニタは、上記アンテナが出力した受信信号からコードを抽出して上記他のレーダ装置が使用するパルス送信間隔に対応するコードを取得することを特徴とするレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−25944(P2010−25944A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230268(P2009−230268)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【分割の表示】特願2006−531052(P2006−531052)の分割
【原出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】