説明

レーダ装置

【課題】物体の左右方向及び上下方向の少なくとも一方の位置を正確に検出することの可能なレーダ装置の提供。
【解決手段】レーダ装置100は、左右方向に配列され、少なくとも一部が上下方向にずれて配設された複数(ここでは、3個)の素子アンテナ(21、22、23)を有する受信アンテナ2と、位置検出ECU(5)と、を備える。また、位置検出ECU(5)は、前記複数の素子アンテナ(21、22、23)で受信された受信信号の位相差に基づいて、物体TGの上下方向位置P1を検出する第1位置検出部53と、上下方向位置P1の履歴に基づいて、該上下方向位置P1を補正して、補正後の上下方向位置である第1補正位置P1Aを求める第1位置補正部(54)と、を備える。
【選択図】図2

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両に搭載され、該車両の周囲に存在する物体の上下方向位置を検出するレーダ装置に関する。また、本発明は、例えば、車両に搭載され、該車両の周囲に存在する物体の左右方向位置を検出するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用レーダ装置は、車両の前方を走行する車両等を認識するために利用されることが多く、その場合、道路標識、案内板等のような路面に対する上下方向の位置が高いために障害物とはなり得ない物体を先行車両と識別する必要がある。
【0003】
上記課題を解消するために種々の方法、装置等が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のレーダ装置は、複数の素子アンテナが左右方向に配列されたアレーアンテナを有する受信アンテナと、この受信アンテナのアンテナパターンの左右方向の走査を電気的に行うことにより、この受信アンテナで受信した受信信号から左右方向の所定方位範囲内に存在する物体の認識を行う信号処理部と、を備える。また、該レーダ装置において、素子アンテナの少なくとも一部は上下方向にずれて配置され、信号処理部は、上下方向にずれた素子アンテナからの受信信号を用いて物体の上下方向位置をモノパルス方式で検出する。
【0004】
特許文献1に記載のレーダ装置によれば、受信アンテナを構成する左右方向に配列された複数の素子アンテナの一部を上下にずらしたり、上下方向に配列された素子アンテナを左右方向に配列された素子アンテナとは別に設けたりすることにより、物体の上下方向の位置を所望の角度範囲で検出することができる。すなわち、上下のずれ量あるいは上下の配列間隔を必要に応じて小さく設定できるので上下方向の検出角度範囲を十分に広くとることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−287857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のレーダ装置では、路面反射の影響を受けて、物体の上下方向の位置を正しく検出できない場合がある。すなわち、1個の物体からの反射波には、路面で反射して受信された反射波も含まれるため、この反射波の影響を受けて、物体の上下方向の位置を正しく検出できない場合があるのである。
【0007】
また、上下方向の位置だけでなく、左右方向の位置に関しても、高速道路等に敷設された側壁、トンネル内の側壁等での反射波が受信される場合には、物体の左右方向の位置を正しく検出できない虞がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、物体の左右方向及び上下方向の少なくとも一方の位置を正確に検出することの可能なレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の特徴を有している。本発明の第1の局面は、車両に搭載され、該車両の周囲に存在する物体の上下方向位置を検出するレーダ装置であって、左右方向に配列され、少なくとも一部が上下方向にずれて配設された複数の素子アンテナを有する受信アンテナと、前記複数の素子アンテナで受信された受信信号の位相差に基づいて、前記物体の上下方向位置を検出する第1位置検出手段と、前記上下方向位置の履歴に基づいて、該上下方向位置を補正して、補正後の上下方向位置である第1補正位置を求める第1位置補正手段と、を備える。
【0010】
本発明の第2の局面は、上記第1の局面において、前記第1位置補正手段が、予め設定された所定期間内における前記上下方向位置の内、略最上方の位置を前記第1補正位置として求める。
【0011】
本発明の第3の局面は、上記第1の局面において、前記第1位置補正手段が、予め設定された所定期間内における前記上下方向位置の平均値である第1平均値と、前記上下方向位置の分散である第1分散とを求め、求められた第1平均値及び第1分散に基づいて、前記第1補正位置を求める。
【0012】
本発明の第4の局面は、上記第3の局面において、前記第1位置補正手段が、前記第1平均値に、前記第1分散に予め設定された1以上の第1所定数を積算した積を加算して、前記第1補正位置を求める。
【0013】
本発明の第5の局面は、上記第4の局面において、前記第1所定数が、2以上であって、且つ、4以下に設定されている。
【0014】
本発明の第6の局面は、上記第1の局面において、該レーダ装置から送出される電波の、該車両が走行する路面における反射特性である第1反射特性を推定する第1特性推定手段を備え、前記第1位置補正手段が、前記第1特性推定手段によって推定された第1反射特性に基づいて、前記第1補正位置を求める。
【0015】
本発明の第7の局面は、上記第6の局面において、該車両が走行する路面の画像情報を生成する第1画像生成手段を備え、前記第1特性推定手段が、前記第1画像生成手段によって生成された路面の画像情報に基づいて、前記第1反射特性を推定する。
【0016】
本発明の第8の局面は、上記第1の局面において、前記複数の素子アンテナで受信された受信信号の位相差に基づいて、前記物体の左右方向位置を求める第2位置検出手段と、前記第2位置検出手段によって求められた左右方向位置の履歴に基づいて、前記第2位置検出手段によって求められた左右方向位置を補正して、補正後の左右方向位置である第2補正位置を求める第2位置補正手段と、を備える。
【0017】
本発明の第9の局面は、車両に搭載され、該車両の周囲に存在する物体の左右方向位置を検出するレーダ装置であって、左右方向に配列された複数の素子アンテナを有する受信アンテナと、前記複数の素子アンテナで受信された受信信号の位相差に基づいて、前記物体の左右方向位置を求める第2位置検出手段と、前記第2位置検出手段によって求められた左右方向位置の履歴に基づいて、前記第2位置検出手段によって求められた左右方向位置を補正して、補正後の左右方向位置である第2補正位置を求める第2位置補正手段と、を備える。
【0018】
本発明の第10の局面は、上記第9の局面において、前記第2位置補正手段が、予め設定された所定期間内における前記左右方向位置の内、略最正面の位置を前記第2補正位置として求める。
【0019】
本発明の第11の局面は、上記第9の局面において、前記第2位置補正手段が、予め設定された所定期間内における前記左右方向位置の平均値である第2平均値と、前記左右方向位置の分散である第2分散とを求め、求められた第2平均値及び第2分散に基づいて、前記第2補正位置を求める。
【0020】
本発明の第12の局面は、上記第11の局面において、前記第2位置補正手段が、前記第2平均値に、前記第2分散に予め設定された1以上の第2所定数を積算した積を減算して、前記第2補正位置を求める。
【0021】
本発明の第13の局面は、上記第12の局面において、前記第2所定数が、2以上であって、且つ、4以下に設定されている。
【0022】
本発明の第14の局面は、上記第9の局面において、該レーダ装置から送出される電波の、該車両が走行する道路に敷設された側壁における反射特性である第2反射特性を推定する第2特性推定手段を備え、前記第2位置補正手段が、前記第2特性推定手段によって推定された第2反射特性に基づいて、前記第2補正位置を求める。
【0023】
本発明の第15の局面は、上記第14の局面において、該車両が走行する道路に敷設された側壁の画像情報を生成する第2画像生成手段を備え、前記第2特性推定手段が、前記第2画像生成手段によって生成された側壁の画像情報に基づいて、前記第2反射特性を推定する。
【0024】
本発明の第16の局面は、上記第9の局面において、前記複数の素子アンテナが、少なくとも一部が上下方向にずれて配設されており、前記複数の素子アンテナで受信された受信信号の位相差に基づいて、前記物体の上下方向位置を求める第1位置検出手段と、前記上下方向位置の履歴に基づいて、該上下方向位置を補正して、補正後の上下方向位置である第1補正位置を求める第1位置補正手段と、を備える。
【発明の効果】
【0025】
上記第1の局面によれば、受信アンテナが、左右方向に配列され、少なくとも一部が上下方向にずれて配設された複数の素子アンテナを有する。そして、前記複数の素子アンテナで受信された受信信号の位相差に基づいて、前記物体の上下方向位置が検出される。また、前記上下方向位置の履歴に基づいて、該上下方向位置を補正して、補正後の上下方向位置である第1補正位置が求められる。従って、物体の上下方向の位置を正確に検出することができる。
【0026】
すなわち、受信アンテナを構成する左右方向に配列された複数の素子アンテナの一部を上下にずらすことによって、前記複数の素子アンテナで受信された受信信号の位相差に基づいて、物体の上下方向の位置を検出することができる。また、求められた上下方向位置の履歴に基づいて、該上下方向位置が補正されて、補正後の上下方向位置である第1補正位置が求められるため、物体の上下方向の位置を正確に検出することができるのである。
【0027】
上記第2の局面によれば、予め設定された所定期間内における前記上下方向位置の内、略最上方の位置が前記第1補正位置として求められる。従って、物体の上下方向の位置を更に正確に検出することができる。
【0028】
すなわち、路面での反射波の影響を受けて、上下方向位置は、実際の上下方向位置よりも下側に検出される(図4参照)。そこで、予め設定された所定期間内における前記上下方向位置の内、略最上方の位置が前記第1補正位置として求められるため、前記所定期間を適正に設定することによって、物体の上下方向の位置を更に正確に検出することができるのである。
【0029】
上記第3の局面によれば、予め設定された所定期間内における前記上下方向位置の平均値である第1平均値と、前記上下方向位置の分散である第1分散とが求められ、求められた第1平均値及び第1分散に基づいて、前記第1補正位置が求められる。従って、物体の上下方向の位置を更に正確に検出することができる。
【0030】
すなわち、路面での反射波の影響を受けて、上下方向位置は、実際の上下方向位置よりも下側に検出される(図4参照)。また、前記第1平均値及び前記第1分散は、検出された上下方向位置の変化の状態を示すものである。そこで、前記第1平均値及び前記第1分散に基づいて、前記第1補正位置が求められるため、前記所定期間を適正に設定することによって、物体の上下方向の位置を更に正確に検出することができるのである。
【0031】
上記第4の局面によれば、前記第1平均値に、前記第1分散に予め設定された1以上の第1所定数を積算した積を加算して、前記第1補正位置が求められる。従って、物体の上下方向の位置を更に正確に検出することができる。
【0032】
すなわち、例えば、検出された上下方向位置が正規分布をしている場合には、前記第1平均値に、前記第1分散に「3」を積算した積を加算することによって(=前記第1所定数として「3」を設定することによって)、物体の上下方向の位置を更に正確に検出することができるのである。
【0033】
上記第5の局面によれば、前記第1所定数が、2以上であって、且つ、4以下に設定されている。従って、物体の上下方向の位置を更に正確に検出することができる。
【0034】
すなわち、例えば、検出された上下方向位置が正規分布をしている場合には、前記第1平均値に、前記第1分散に「3」を積算した積を加算することによって(=前記第1所定数として「3」を設定することによって)、物体の上下方向の位置を更に正確に検出することができるのである。
【0035】
上記第6の局面によれば、該レーダ装置から送出される電波の、該車両が走行する路面における反射特性である第1反射特性が推定される。そして、推定された第1反射特性に基づいて、前記第1補正位置が求められる。従って、物体の上下方向の位置を更に正確に検出することができる。
【0036】
すなわち、路面の反射率等の反射特性に基づいて、路面での反射波の影響の程度が変化する。例えば、路面の反射率が100%に近い場合(図4(b)参照)には、物体の上下方向の位置として、路面位置が検出される。また、例えば、路面の反射率が0%に近い場合(図4(c)参照)には、物体の上下方向の位置として、現実の物体の位置が検出される。そこで、推定された第1反射特性に基づいて、前記第1補正位置が求められるため、物体の上下方向の位置を更に正確に検出することができるのである。
【0037】
上記第7の局面によれば、該車両が走行する路面の画像情報が生成される。そして、生成された路面の画像情報に基づいて、前記第1反射特性が推定される。従って、前記第1反射特性を正確に推定することができる。
【0038】
すなわち、路面における反射特性である第1反射特性は、路面の種類によって推定することができる。例えば、路面がアスファルト舗装されている場合には、反射率が大きく、路面が砂利道である場合には、反射率が小さい。そこで、路面の画像情報に基づいて、路面の種類を推定し、路面における反射特性である第1反射特性が推定されるため、前記第1反射特性を正確に推定することができるのである。
【0039】
上記第8の局面によれば、前記複数の素子アンテナで受信された受信信号の位相差に基づいて、前記物体の左右方向位置が求められる。そして、求められた左右方向位置の履歴に基づいて、求められた左右方向位置を補正して、補正後の左右方向位置である第2補正位置が求められる。従って、物体の左右方向の位置を正確に検出することができる。
【0040】
すなわち、求められた左右方向位置の履歴に基づいて、該左右方向位置が補正されて、補正後の左右方向位置である第2補正位置が求められるため、物体の左右方向の位置を正確に検出することができるのである。
【0041】
上記第9の局面によれば、受信アンテナが、左右方向に配列された複数の素子アンテナを有している。そして、前記複数の素子アンテナで受信された受信信号の位相差に基づいて、前記物体の左右方向位置が求められる。また、求められた左右方向位置の履歴に基づいて、求められた左右方向位置が補正されて、補正後の左右方向位置である第2補正位置が求められる。従って、物体の左右方向の位置を正確に検出することができる。
【0042】
すなわち、左右方向に配列された複数の素子アンテナで受信された受信信号位相差に基づいて、前記物体の左右方向位置を求めることができる。また、求められた左右方向位置の履歴に基づいて、該左右方向位置が補正されて、補正後の左右方向位置である第2補正位置が求められるため、物体の左右方向の位置を正確に検出することができるのである。
【0043】
上記第10の局面によれば、予め設定された所定期間内における前記左右方向位置の内、略最正面の位置が前記第2補正位置として求められる。従って、物体の左右方向の位置を更に正確に検出することができる。
【0044】
すなわち、側壁での反射波の影響を受けて、左右方向位置は、実際の左右方向位置よりも正面位置から離間する側に検出される(図5参照)。そこで、予め設定された所定期間内における前記左右方向位置の内、略最正面の位置が前記第2補正位置として求められるため、前記所定期間を適正に設定することによって、物体の左右方向の位置を更に正確に検出することができるのである。なお、本発明において、「略最正面の位置」とは、概ね最も正面に近い位置を意味している。
【0045】
上記第11の局面によれば、予め設定された所定期間内における前記左右方向位置の平均値である第2平均値と、前記左右方向位置の分散である第2分散とが求められ、求められた第2平均値及び第2分散に基づいて、前記第2補正位置が求められる。従って、物体の左右方向の位置を更に正確に検出することができる。
【0046】
すなわち、側壁での反射波の影響を受けて、左右方向位置は、実際の左右方向位置よりも正面位置から離間する側に検出される(図5参照)。また、前記第2平均値及び前記第2分散は、検出された左右方向位置の変化の状態を示すものである。そこで、前記第2平均値及び前記第2分散に基づいて、前記第2補正位置が求められるため、前記所定期間を適正に設定することによって、物体の左右方向の位置を更に正確に検出することができるのである。
【0047】
上記第12の局面によれば、前記第2平均値に、前記第2分散に予め設定された1以上の第2所定数を積算した積を減算して、前記第2補正位置が求められる。従って、物体の左右方向の位置を更に正確に検出することができる。
【0048】
すなわち、例えば、検出された左右方向位置が正規分布をしている場合には、前記第2平均値に、前記第2分散に「3」を積算した積を減算することによって(=前記第2所定数として「3」を設定することによって)、物体の左右方向の位置を更に正確に検出することができるのである。
【0049】
上記第13の局面によれば、前記第2所定数が、2以上であって、且つ、4以下に設定されている。従って、物体の左右方向の位置を更に正確に検出することができる。
【0050】
すなわち、例えば、検出された左右方向位置が正規分布をしている場合には、前記第2平均値に、前記第2分散に「3」を積算した積を加算することによって(=前記第2所定数として「3」を設定することによって)、物体の左右方向の位置を更に正確に検出することができるのである。
【0051】
上記第14の局面によれば、該レーダ装置から送出される電波の、該車両が走行する道路に敷設された側壁における反射特性である第2反射特性が推定される。そして、推定された第2反射特性に基づいて、前記第2補正位置が求められる。従って、物体の左右方向の位置を更に正確に検出することができる。
【0052】
すなわち、側壁の反射率等の反射特性に基づいて、側壁での反射波の影響の程度が変化する。例えば、側壁の反射率が100%に近い場合(図5(b)参照)には、物体の左右方向の位置として、側壁の表面位置が検出される。また、例えば、側壁の反射率が0%に近い場合(図5(c)参照)には、物体の左右方向の位置として、現実の物体の位置が検出される。そこで、推定された第2反射特性に基づいて、前記第2補正位置が求められるため、物体の左右方向の位置を更に正確に検出することができるのである。
【0053】
上記第15の局面によれば、該車両が走行する道路に敷設された側壁の画像情報が生成される。そして、生成された側壁の画像情報に基づいて、前記第2反射特性が推定される。従って、前記第2反射特性を正確に推定することができる。
【0054】
すなわち、側壁における反射特性である第2反射特性は、側壁の種類によって推定することができる。例えば、側壁がコンクリート、鋼材等で形成されている場合には、反射率が大きく、側壁がガラス、樹脂等で形成されている場合には、反射率が小さい。そこで、側壁の画像情報に基づいて、側壁の種類を推定し、側壁における反射特性である第2反射特性が推定されるため、前記第2反射特性を正確に推定することができるのである。
【0055】
上記第16の局面によれば、前記複数の素子アンテナが、少なくとも一部が上下方向にずれて配設されている。そして、前記複数の素子アンテナで受信された受信信号の位相差に基づいて、前記物体の上下方向位置が求められる。また、前記上下方向位置の履歴に基づいて、該上下方向位置が補正されて、補正後の上下方向位置である第1補正位置が求められる。従って、物体の上下方向の位置を正確に検出することができる。
【0056】
すなわち、受信アンテナを構成する左右方向に配列された複数の素子アンテナの一部を上下にずらすことによって、前記複数の素子アンテナで受信された受信信号の位相差に基づいて、物体の上下方向の方位を検出することができる。また、求められた上下方向位置の履歴に基づいて、該上下方向位置が補正されて、補正後の上下方向位置である第1補正位置が求められるため、物体の上下方向の位置を正確に検出することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るレーダ装置の構成の一例を示すブロック図
【図2】位置検出ECUの機能構成の一例を示すブロック図
【図3】物体の上下方向位置を検出する方法の一例を示す説明図
【図4】路面での反射波による物体の上下方向位置への影響の一例を示す説明図
【図5】側壁での反射波による物体の左右方向位置への影響の一例を示す説明図
【図6】物体の上下方向位置及び左右方向位置の検出結果の一例を示すグラフ
【図7】位置検出ECUの動作の一例を示すフローチャート(前半部)
【図8】位置検出ECUの動作の一例を示すフローチャート(後半部)
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、図面を参照して本発明に係るレーダ装置の実施形態について説明する。本発明に係るレーダ装置100は、車両VRに搭載され、車両VRの周囲に存在する物体TGの上下方向位置及び左右方向位置を検出するレーダ装置(図4、図5参照)である。まず、図1を用いて、車両VRに搭載されたレーダ装置100の構成の一例について説明する。
【0059】
図1は、本発明に係るレーダ装置100の構成の一例を示すブロック図である。ここでは、レーダ装置100は、例えば、FM−CW方式のレーダ装置であって、且つ、受信信号をDBF(Digital Beam Forming)処理を行うDBFレーダ装置である。また、レーダ装置100は、DBF処理によって物体TGとの距離及び相対速度を検出すると共に、位相モノパルス方式で、物体TGの上下方向及び左右方向の位置を求める。なお、以下の説明においては、主に、レーダ装置100において、位相モノパルス方式で、物体TGの上下方向及び左右方向の位置を求める点に関して説明し、FM−CW方式及びDBF処理によって物体TGとの距離及び相対速度を検出する点に関してはその説明の大半を省略する。
【0060】
図1に示すように、本発明に係るレーダ装置100は、送信アンテナ1、受信アンテナ2、発振器3、ミキサ部4、及び、位置検出ECU5を備えている。また、位置検出ECU5は、カメラ6と通信可能に接続されている。
【0061】
送信アンテナ1は、発振器3によって駆動されて送信波(電磁波)を送出するアンテナである。また、送信アンテナ1は、受信アンテナ2と同一平面上に設けられており、1つの給電点に接続され、上下方向に配列された複数のパッチアンテナ(図1において、白抜きの四角□で示す)を備えている。更に、送信アンテナ2の給電点には、中心周波数がf0(例えば、76GHz)の発振器3の出力端子が接続されている。
【0062】
受信アンテナ2は、送信アンテナ1から送出され、物体TG等によって反射された反射波を受信するアンテナである。また、受信アンテナ2は、左右方向(水平方向)に配列された3個の素子アンテナ21、22、23を備えている。素子アンテナ21、22、23はそれぞれ複数のパッチアンテナ(図1において白抜きの四角□で示す)を有し、各パッチアンテナは、素子アンテナ21、22、23毎に1つの給電点に対して略同一の線路長となるように接続されている。ここで、素子アンテナ21、22、23は、複数の(ここでは、3個の)素子アンテナに相当する。
【0063】
なお、本実施形態では各素子アンテナ21、22、23において、パッチアンテナが上下方向(垂直方向)に一列に配列されているが、2以上の列としても良いし、その他の配列であっても良い。各素子アンテナ21、22、23の中心点は交互に上下方向にずれて配列されている。すなわち、素子アンテナ21、23は上側素子アンテナ群を構成し、素子アンテナ22は下側素子アンテナ群を構成しており、上側素子アンテナ群と下側素子アンテナ群とは上下方向に距離Δyだけずれて配列されている。
【0064】
発振器3は、図示省略した変調用の直流電源から出力される制御電圧によって、周波数f0の搬送波に対して周波数変調幅ΔFの三角波変調を施した信号を生成する。すなわち、発振器3は、周波数f0±ΔF/2の変調波(=送信信号)を生成し、生成された変調波は、送信アンテナ1から電磁波として放射される。
【0065】
ミキサ部4は、受信アンテナ2の各素子アンテナ21、22、23にそれぞれ接続する3個のミキサ41、42、43を備えている。各ミキサ41、42、43には、発振器3からの送信信号の一部であるローカル信号が入力されており、それぞれの素子アンテナ21、22、23からの受信信号は、このローカル信号とミキシングされて中間周波数にダウンコンバートされる。このダウンコンバートによって、レーダ装置100おいて、FM−CW方式での距離及び相対速度の検出に用いるビート信号(送信信号と受信信号との差信号)が得られる。
【0066】
位置検出ECU(Electronic Control Unit)5は、ミキサ部4によって生成されたビート信号、及び、カメラ6からの画像情報に基づき、物体TGの上下方向及び左右方向の位置を求めるECUである。なお、位置検出ECU5の具体的な構成及び動作については、図2等を参照して後述する。
【0067】
カメラ6は、CCD(Charge Coupled Device)等を備え、車両VRが走行する道路の路面、及び、車両VRが走行する道路に敷設された側壁の画像情報を生成するカメラである。ここで、カメラ6は、第1画像生成手段の一部、及び、第2画像生成手段の一部に相当する。
【0068】
図2は、位置検出ECU5の機能構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、位置検出ECU5は、機能的に、第1画像生成部51、第1特性推定部52、第1位置検出部53、第1位置補正部54、第2画像生成部55、第2特性推定部56、第2位置検出部57、及び、第2位置補正部58を備えている。
【0069】
なお、位置検出ECU5は、位置検出ECU5の適所に配設されたマイクロコンピュータに、位置検出ECU5の適所に配設されたROM(Read Only Memory)等に予め格納された制御プログラムを実行させることにより、当該マイクロコンピュータを、機能的に、第1画像生成部51、第1特性推定部52、第1位置検出部53、第1位置補正部54、第2画像生成部55、第2特性推定部56、第2位置検出部57、第2位置補正部58等の機能部として機能させる。
【0070】
第1画像生成部51は、カメラ6を介して、車両VRが走行する道路の路面の画像情報を生成する機能部である。ここで、第1画像生成部51は、第1画像生成手段の一部に相当する。具体的には、第1画像生成部51は、予め設定された所定時間(例えば、0.2sec)毎に、カメラ6を介して、路面RSの画像情報を生成する(図4参照)。
【0071】
第1特性推定部52は、第1画像生成部51によって生成された路面RSの画像情報に基づいて、レーダ装置100(ここでは、送信アンテナ1)から送出される電波の、車両VRが走行する路面RSにおける反射特性である第1反射特性を推定する機能部である。ここで、第1特性推定部52は、第1特性推定手段に相当する。第1特性推定部52は、具体的には、路面RSの画像情報に基づいて、路面RSの種類を推定し、路面RSにおける反射率R1を推定する。例えば、第1特性推定部52は、路面RSがアスファルト舗装されている場合には、反射率R1が大きく、路面RSが砂利道である場合には、反射率R1が小さいと推定する。
【0072】
このようにして、路面RSの画像情報に基づいて、路面RSの種類を推定し、路面RSにおける反射特性である第1反射特性(ここでは、反射率R1)が推定されるため、前記第1反射特性(ここでは、反射率R1)を正確に推定することができる。
【0073】
本実施形態では、第1特性推定部52が、路面RSの画像情報に基づいて、反射率R1を推定する場合について説明するが、第1特性推定部52が、その他の情報に基づいて、反射率R1を推定する形態でも良い。例えば、第1特性推定部52が、ナビゲーションシステムからの地図情報(道路の路面情報:舗装道路であるか否か等の情報)、VICS(Vehicle Information and Communication System)からの路面情報、降雨、降雪情報等に基づいて、反射率R1を推定する形態でも良い。この場合には、処理が簡略化される。
【0074】
また、本実施形態では、第1特性推定部52が、第1反射特性として、反射率R1を推定する場合について説明するが、第1特性推定部52が、その他の第1反射特性を推定する形態でも良い。例えば、第1特性推定部52が、反射率R1の平均値及び分散を推定する形態でも良い。この場合には、第1位置補正部54は、反射率R1の平均値及び分散に基づいて、補正後の上下方向位置である第1補正位置を更に正確に求めることができる。
【0075】
第2画像生成部55は、カメラ6を介して、車両VRが走行する道路に敷設された側壁SWの画像情報を生成する機能部である。ここで、第2画像生成部55は、第2画像生成手段の一部に相当する。具体的には、第2画像生成部55は、予め設定された所定時間(例えば、0.2sec)毎に、カメラ6を介して、側壁SWの画像情報を生成する(図5参照)。
【0076】
第2特性推定部56は、第2画像生成部55によって生成された側壁SWの画像情報に基づいて、レーダ装置100(ここでは、送信アンテナ1)から送出される電波の、車両VRが走行する道路に敷設された側壁SWにおける反射特性である第2反射特性を推定する機能部である。ここで、第2特性推定部56は、第2特性推定手段に相当する。第2特性推定部56は、具体的には、側壁SWの画像情報に基づいて、側壁SWの種類を推定し、側壁SWにおける反射率R2を推定する。例えば、第2特性推定部56は、側壁SWがコンクリート、鋼材等で形成されている場合には、反射率R2が大きく、側壁SWがガラス、樹脂等で形成されている場合には、反射率R2が小さいと推定する。
【0077】
このようにして、側壁SWの画像情報に基づいて、側壁SWの種類を推定し、側壁SWにおける反射特性である第2反射特性(ここでは、反射率R2)が推定されるため、前記第2反射特性(ここでは、反射率R2)を正確に推定することができる。
【0078】
本実施形態では、第2特性推定部56が、側壁SWの画像情報に基づいて、反射率R2を推定する場合について説明するが、第2特性推定部56が、その他の情報に基づいて、反射率R2を推定する形態でも良い。例えば、第2特性推定部56が、ナビゲーションシステムからの地図情報(側壁情報:側壁の材質等の情報)等に基づいて、反射率R2を推定する形態でも良い。この場合には、処理が簡略化される。
【0079】
また、本実施形態では、第2特性推定部56が、第2反射特性として、反射率R2を推定する場合について説明するが、第2特性推定部56が、その他の第2反射特性を推定する形態でも良い。例えば、第2特性推定部56が、反射率R2の平均値及び分散を推定する形態でも良い。この場合には、第2位置補正部58は、反射率R2の平均値及び分散に基づいて、補正後の左右方向位置である第2補正位置を更に正確に求めることができる。
【0080】
第1位置検出部53は、受信アンテナ2(素子アンテナ21、22、23)で受信された受信信号の位相差に基づいて、物体TGの上下方向位置Hを検出する機能部である。なお、第1位置検出部53は、第1位置検出手段に相当する。
【0081】
第2位置検出部57は、受信アンテナ2(素子アンテナ21、22、23)で受信された受信信号の位相差に基づいて、物体TGの左右方向位置Wを検出する機能部である。なお、第2位置検出部57は、第2位置検出手段に相当する。
【0082】
ここで、第1位置検出部53及び第2位置検出部57による物体TGの上下方向位置H及び左右方向位置Wの検出方法について、図3を用いて説明する。図3は、物体TGの上下方向位置を検出する方法の一例を示す説明図である。
【0083】
第1位置検出部53及び第2位置検出部57は、具体的には、素子アンテナ22及び素子アンテナ23による第1の斜め方向(角度θ1:図1参照)における物体TGの角度、及び、素子アンテナ21及び素子アンテナ22による第2の斜め方向(角度θ2:図1参照)における物体TGの角度をそれぞれ位相モノパルス方式で検出する。そして、第1位置検出部53は、検出された2つの角度(図3を用いて後述するθ(X)、θ(Y))から、物体TGの上下方向の位置P1を求めるものである。また、第2位置検出部57は、検出された2つの角度(図3を用いて後述するθ(X)、θ(Y))から、2つの検出角度(後述するθ(X)、θ(Y))から物体TGの左右方向の位置P2を求めるものである。
【0084】
図3において、x軸方向がこのレーダ装置100の左右方向に対応し、y軸方向が上下方向に対応し、z軸の正の向きが前方とである。また、図1における第1斜め方向がxy平面上のX軸、第2斜め方向がxy平面状のY軸にそれぞれ対応している。物体TGまでの距離をL、第1斜め方向すなわちX方向における物体TGのz軸を基準とする角度をθ(X)、第2斜め方向すなわちY方向における物体TGのz軸を基準とする角度をθ(Y)とすると、第1斜め方向及び第2斜め方向における目標物Tのそれぞれの変位WH1及び変位WH2は、次の(1)式、(2)式で表される。
WH1=L×sin(θ(X)) (1)
WH2=L×sin(θ(Y)) (2)
【0085】
第1斜め方向及び第2斜め方向についての角度θ(X)、θ(Y)は、素子アンテナ21、22、23で受信された受信信号の位相差に基づいて、位相モノパルス方式により検出することができる。また、距離Lは、左右方向に関するDBF合成によって検出することができるため、上記(1)式、(2)式から目標物Tの変位WH1及び変位WH2を求めることができる。
【0086】
次に、変位WH1及び変位WH2を用いて、y軸方向すなわち上下方向の角度を求める。第1斜め方向のx軸に対する角度をθ1、第2斜め方向のy軸に対する角度をθ2とする(図1参照)と、物体TGの上下方向の位置(高さ)P1及び左右方向の位置P2は、それぞれ、次の(3)式、(4)式で表すことができる。
P1=(WH1/cos(θ1)−WH2/cos(θ2))
/(1/tan(θ1)−1/tan(θ2)) (3)
P2=(WH1/sin(θ1)−WH2/sin(θ2))
/(1/tan(θ1)−1/tan(θ2)) (4)
【0087】
上記(3)式、(4)式に、上記(1)式、(2)式を用いて求められた変位WH1及び変位WH2を代入することによって、物体TGの上下方向の位置P1、及び、左右方向の位置P2をそれぞれ求めることができる。
【0088】
ここで、図4を用いて、第1位置検出部53によって検出される物体TGの上下方向位置P1の変化について説明する。図4は、路面RSでの反射波による物体TG10の上下方向位置P1への影響の一例を示す説明図である。図4(a)は、側面概念図である。図4(a)に示すように、車両VRの前面部に、前方の物体TG10を検出する送信アンテナ1及び受信アンテナ2が配設されている。ここでは、送信アンテナ1及び受信アンテナ2から物体TG10までの距離L1は、FM−CW方式及びDBF処理によって求められているものとする。
【0089】
送信アンテナ1から送出された送信波は、物体TG10によって反射され、反射されて生成された反射波が、実線で示す最短のルートと、破線で示す路面RSでの反射を経由するルートとで、受信アンテナ2に入射される。以下の説明において、実線で示す最短のルートで入射される反射波を、便宜上、「直接波」といい、破線で示す路面RSでの反射を経由するルート入射される反射波を、「路面反射波」という。路面反射波は、仮想的に、物体TG10を、路面RS(ここでは、路面RSが平面であると仮定する)について面対称となる位置に仮想物体TG11がある場合の、該仮想物体TG11からの反射波と、同一の位相差を生じる反射波として、受信アンテナ2に受信される。
【0090】
図4(b)、図4(c)は、図4(a)に示す状況において、第1位置検出部53によって検出される上下方向位置P1を規定する信号ベクトルの一例を示すベクトル図である。ベクトルV10は、直接波に対応する信号ベクトルであって、ベクトルV11は、路面反射波に対応する信号ベクトルである。また、ベクトルV12は、ベクトルV10と、ベクトルV11との合成ベクトルである。図4(b)は、路面RSの反射率R1が100%である場合であって、図4(c)は、路面RSの反射率R1が0%に近い(ここでは、10%程度)場合である。
【0091】
図4(b)に示すように、路面RSの反射率R1が100%である場合には、路面反射波の強度が、直接波の強度と略同一となるため、信号の強度を示すベクトルV11の長さは、ベクトルV10の長さと略同一となる。そこで、合成ベクトルV12の向きは、物体TG10と仮想物体TG11との中点TG12(=路面RS上に位置する)の向きとなり、第1位置検出部53によって検出される物体TGの上下方向位置(高さ)P1は、概ね「0」となる。従って、図4(b)には、その高さを記載していない。
【0092】
図4(c)に示すように、路面RSの反射率R1が10%である場合には、路面反射波の強度が、直接波の強度と比較して略(1/10)となるため、信号の強度を示すベクトルV11の長さは、ベクトルV10の長さの略(1/10)となる。そこで、合成ベクトルV12の向きは、物体TG10に向かう向きと近い向きとなり、第1位置検出部53によって検出される物体TG10の上下方向位置(高さ)P11は、物体TG10の高さP10に近似する値となる。
【0093】
図6は、物体の上下方向位置及び左右方向位置の検出結果の一例を示すグラフである。図6(a)は、第1位置検出部53によって検出された上下方向位置P1の検出結果の一例を示すグラフであって、図6(b)は、第2位置検出部57によって検出された左右方向位置P2の検出結果の一例を示すグラフである。図6(a)に示すように、第1位置検出部53によって検出される上下方向位置P1は、図4を用いて説明したように、路面RSの反射率R1の変化に応じて、路面位置(=高さ「0」)から物体TG10の高さP10の間で変化する。
【0094】
再び、図2に戻って、位置検出ECU5の機能構成について説明する。第1位置補正部54は、第1位置検出部53によって検出された上下方向位置P1の履歴に基づいて、該上下方向位置P1を補正して、補正後の上下方向位置である第1補正位置P1Aを求める機能部である。ここで、第1位置補正部54は、第1位置補正手段に相当する。また、第1位置補正部54は、具体的には、予め設定された所定期間(例えば、0.2sec)内における上下方向位置P1の平均値である第1平均値AP1と、上下方向位置P1の分散である第1分散SP1とを求め、求められた第1平均値AP1及び第1分散SP1に基づいて、第1補正位置P1Aを求める。
【0095】
例えば、第1位置補正部54は、第1平均値AP1に、第1分散SP1に予め設定された1以上の第1所定数K1を積算した積を加算して、次の(5)式によって第1補正位置P1Aを求める。
P1A=AP1+K1×SP1 (5)
ここで、第1所定数K1は、例えば、「3」に設定されている。
【0096】
このようにして、第1平均値AP1及び第1分散SP1は、検出された上下方向位置P1の変化の状態を示すものである。そこで、第1平均値AP1及び第1分散SP1に基づいて、第1補正位置P1Aが求められるため、前記所定期間を適正に設定することによって、物体TG10の上下方向の位置を更に正確に検出することができる。
【0097】
また、例えば、検出された上下方向位置P1が正規分布をしている場合には、第1平均値AP1に、第1分散SP1に「3」を積算した積を加算することによって(=第1所定数K1として「3」を設定することによって)、物体の上下方向の位置を更に正確に検出することができる(図6(a)参照)。
【0098】
本実施形態では、第1位置補正部54が、第1平均値AP1及び第1分散SP1に基づいて、第1補正位置P1Aを求める場合について説明するが、第1位置補正部54が、上下方向位置P1の履歴に基づいて、該上下方向位置P1を補正して、第1補正位置P1Aを求める形態であれば良い。例えば、第1位置補正部54が、予め設定された所定期間(例えば、0.2sec)内における上下方向位置P1の内、略最上方の位置を第1補正位置P1Aとして求める形態でも良い。
【0099】
次に、図5を用いて、第2位置検出部57によって検出される物体TGの左右方向位置P2の変化について説明する。図5は、側壁SWでの反射波による物体TG20の左右方向位置P2への影響の一例を示す説明図である。図5(a)は、平面概念図である。図5(a)に示すように、車両VRの前面部に、前方の物体TG20を検出する送信アンテナ1及び受信アンテナ2が配設されている。ここでは、送信アンテナ1及び受信アンテナ2から物体TG20までの距離L2は、FM−CW方式及びDBF処理によって求められているものとする。また、左右方向位置P2の基準位置は、送信アンテナ1及び受信アンテナ2の車両VRにおける配設位置の正面前方方向(ここでは、一点鎖線で示す車両中心軸方向)の位置とし、左右方向位置P2を、車両中心軸からの距離で規定するものとする。
【0100】
送信アンテナ1から送出された送信波は、物体TG20によって反射され、反射されて生成された反射波が、実線で示す最短のルートと、破線で示す側壁SWでの反射を経由するルートとで、受信アンテナ2に入射される。以下の説明において、実線で示す最短のルートで入射される反射波を、便宜上、「直接波」といい、破線で示す側壁SWでの反射を経由するルート入射される反射波を、「側壁反射波」という。側壁反射波は、仮想的に、物体TG20を、側壁SW(ここでは、側壁SW表面が平面であると仮定する)について面対称となる位置に仮想物体TG21がある場合の、該仮想物体TG21からの反射波と、同一の位相差を生じる反射波として、受信アンテナ2に受信される。
【0101】
図5(b)、図5(c)は、図5(a)に示す状況において、第2位置検出部57によって検出される左右方向位置P2を規定する信号ベクトルの一例を示すベクトル図である。ベクトルV20は、直接波に対応する信号ベクトルであって、ベクトルV21は、側壁反射波に対応する信号ベクトルである。また、ベクトルV22は、ベクトルV20と、ベクトルV21との合成ベクトルである。図5(b)は、側壁SWの反射率R2が100%である場合であって、図5(c)は、側壁SWの反射率R2が0%に近い(ここでは、10%程度)場合である。
【0102】
図5(b)に示すように、側壁SWの反射率R2が100%である場合には、側壁反射波の強度が、直接波の強度と略同一となるため、信号の強度を示すベクトルV21の長さは、ベクトルV20の長さと略同一となる。そこで、合成ベクトルV22の向きは、物体TG20と仮想物体TG21との中点TG22(=側壁SW上に位置する)の向きとなり、第2位置検出部57によって検出される物体TG20の左右方向位置P2は、左右方向位置P21となる。
【0103】
図5(c)に示すように、側壁SWの反射率R3が10%である場合には、側壁反射波の強度が、直接波の強度と比較して略(1/10)となるため、信号の強度を示すベクトルV21の長さは、ベクトルV20の長さの略(1/10)となる。そこで、合成ベクトルV22の向きは、物体TG20に向かう向きと近い向きとなり、第2位置検出部57によって検出される物体TG20の上下方向位置P22は、物体TG20の左右方向位置P20に近似する値となる。
【0104】
上述のように、図6(b)は、第2位置検出部57によって検出された左右方向位置P2の検出結果の一例を示すグラフである。図6(b)に示すように、第2位置検出部57によって検出される上下方向位置P2は、図5を用いて説明したように、側壁SWの反射率R2の変化に応じて、側壁位置P21から物体TG20の左右方向位置P20の間で変化する。
【0105】
再び、図2に戻って、位置検出ECU5の機能構成について説明する。第2位置補正部58は、第2位置検出部57によって検出された左右方向位置P2の履歴に基づいて、該左右方向位置P2を補正して、補正後の左右方向位置である第2補正位置P2Aを求める機能部である。ここで、第2位置補正部58は、第2位置補正手段に相当する。また、第2位置補正部58は、具体的には、予め設定された所定期間(例えば、0.2sec)内における左右方向位置P2の平均値である第2平均値AP2と、左右方向位置P2の分散である第2分散SP2とを求め、求められた第2平均値AP2及び第2分散SP2に基づいて、第2補正位置P2Aを求める。
【0106】
例えば、第2位置補正部58は、第2平均値AP2に、第2分散SP2に予め設定された1以上の第2所定数K2を積算した積を減算して、次の(6)式によって第2補正位置P2Aを求める。
P2A=AP2−K2×SP2 (6)
ここで、第2所定数K2は、例えば、「3」に設定されている。
【0107】
このようにして、第2平均値AP2及び第2分散SP2は、検出された左右方向位置P2の変化の状態を示すものである。そこで、第2平均値AP2及び第2分散SP2に基づいて、第2補正位置P2Aが求められるため、前記所定期間を適正に設定することによって、物体TG20の上下方向の位置を更に正確に検出することができる。
【0108】
また、例えば、検出された左右方向位置P2が正規分布をしている場合には、第2平均値AP2に、第2分散SP2に「3」を積算した積を減算することによって(=第2所定数K2として「3」を設定することによって)、物体の左右方向の位置を更に正確に検出することができる(図6(b)参照)。
【0109】
本実施形態では、第2位置補正部58が、第2平均値AP2及び第2分散SP2に基づいて、第2補正位置P2Aを求める場合について説明するが、第2位置補正部58が、左右方向位置P2の履歴に基づいて、該左右方向位置P2を補正して、第2補正位置P2Aを求める形態であれば良い。例えば、第2位置補正部58が、予め設定された所定期間(例えば、0.2sec)内における左右方向位置P2の内、略正面の位置(図5(a)に一点鎖線で示す車両中心軸方向からの距離が最も短い位置)を第2補正位置P2Aとして求める形態でも良い。
【0110】
図7、図8は、位置検出ECU5の動作の一例を示すフローチャートである。まず、図7に示すように、第1画像生成部51によって、路面画像が生成される(S101)。そして、第1特性推定部52によって、路面RSの反射率R1が推定される(S103)。次いで、第1位置補正部54によって、ステップS103において推定された反射率R1に基づいて、第1所定数K1が設定される(S105)。
【0111】
次に、第1位置検出部53によって、物体TGの上下方向位置P1が検出される(S107)。そして、第1位置補正部54によって、ステップS107において検出された上下方向位置P1の所定期間(例えば、0.2sec)内の平均値である第1平均値AP1と、所定期間(例えば、0.2sec)内の分散である第1分散SP1とが算出される(S109)。そして、第1位置補正部54によって、ステップS109において算出された第1平均値AP1に、ステップS109において算出された第1分散SP1にステップS105において設定された第1所定数K1を積算した積を加算して、第1補正位置P1Aが求められる(S111)。
【0112】
次いで、第2画像生成部55によって、側壁画像が生成される(S113)。そして、第2特性推定部56によって、ステップS113において形成された側壁画像に基づいて、側壁SWが存在するか否かの判定が行われる(S115)。側壁SWが存在しないと判定された場合(S115でNO)には、処理が終了される。側壁SWが存在すると判定された場合(S115でYES)には、図8に示すように、第2特性推定部56によって、側壁SWの反射率R2が推定される(S117)。次いで、第2位置補正部58によって、ステップS117において推定された反射率R2に基づいて、第2所定数K2が設定される(S119)。
【0113】
次に、第2位置検出部57によって、物体TGの左右方向位置P2が検出される(S121)。そして、第2位置補正部58によって、ステップS121において検出された左右方向位置P2の所定期間(例えば、0.2sec)内の平均値である第2平均値AP2と、所定期間(例えば、0.2sec)内の分散である第2分散SP2とが算出される(S123)。そして、第2位置補正部58によって、ステップS123において算出された第2平均値AP2から、ステップS123において算出された第2分散SP2にステップS119において設定された第2所定数K2を積算した積を減算して、第2補正位置P2Aが求められ(S125)、処理が終了される。
【0114】
このようにして、受信アンテナ2を構成する左右方向に配列された複数の素子アンテナ21、22、23の一部を上下にずらすことによって、前記複数の素子アンテナ21、22、23で受信された受信信号の位相差に基づいて、物体TGの上下方向の位置P1を検出することができる。また、求められた上下方向位置P1の履歴に基づいて、該上下方向位置P1が補正されて、補正後の上下方向位置である第1補正位置P1Aが求められるため、物体TGの上下方向の位置を正確に検出することができる。
【0115】
また、左右方向に配列された複数の素子アンテナ21、22、23で受信された受信信号位相差に基づいて、物体TGの左右方向位置P2を求めることができる。また、求められた左右方向位置P2の履歴に基づいて、該左右方向位置P2が補正されて、補正後の左右方向位置である第2補正位置P2Aが求められるため、物体TGの左右方向の位置を正確に検出することができる。
【0116】
なお、本発明に係るレーダ装置100は、上記実施形態に限定されず、下記の形態でも良い。
(A)本実施形態においては、位置検出ECU5が、機能的に、第1画像生成部51、第1特性推定部52、第1位置検出部53、第1位置補正部54、第2画像生成部55、第2特性推定部56、第2位置検出部57、第2位置補正部58等を備える場合について説明したが、第1画像生成部51、第1特性推定部52、第1位置検出部53、第1位置補正部54、第2画像生成部55、第2特性推定部56、第2位置検出部57、及び、第2位置補正部58の内、少なくとも1つの機能部が電気回路等のハードウェアによって実現されている形態でも良い。
【0117】
(B)本実施形態においては、レーダ装置100が、車両VRの前方の物体TGを検出する場合について説明したが、レーダ装置100が、車両VRの周囲に存在する物体を検出する形態であれば良い。例えば、レーダ装置100が、車両VRの後方に存在する物体を検出する形態でも良いし、レーダ装置100が、車両VRの側方に存在する物体を検出する形態でも良い。
【0118】
(C)本実施形態においては、レーダ装置100が、FM−CW方式にDBF処理を施して物体TGとの距離及び相対速度を検出する場合について説明したが、レーダ装置100が、その他の方式(例えば、モノパルス方式等)によって物体TGとの距離及び相対速度を検出するでも良い。
【0119】
(D)本実施形態においては、レーダ装置100が、位相モノパルス方式で、物体TGの上下方向及び左右方向の位置を求める場合について説明したが、レーダ装置100が、複数の素子アンテナ21、22、23で受信された受信信号の位相差に基づいて、物体TGの上下方向位置及び左右方向位置を検出する形態であれば良い。
【0120】
(E)本実施形態においては、レーダ装置100が、3個の素子アンテナ21、22、23を有する場合について説明したが、レーダ装置100が、複数の素子アンテナを備える形態であれば良い。例えば、レーダ装置100が、2個の素子アンテナを備える形態でも良いし、4個以上の素子アンテナを備える形態でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、例えば、車両に搭載され、該車両の周囲に存在する物体の上下方向位置を検出するレーダ装置に適用することができる。また、本発明は、例えば、車両に搭載され、該車両の周囲に存在する物体の左右方向位置を検出するレーダ装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0122】
100 レーダ装置
1 送信アンテナ
2 受信アンテナ
21 第1素子アンテナ(複数の素子アンテナの一部)
22 第1素子アンテナ(複数の素子アンテナの一部)
23 第1素子アンテナ(複数の素子アンテナの一部)
3 発振器
4 ミキサ部
41 第1ミキサ
42 第2ミキサ
43 第3ミキサ
5 位置検出ECU
51 第1画像生成部(第1画像生成手段の一部)
52 第1特性推定部(第1特性推定手段)
53 第1位置検出部(第1位置検出手段)
54 第1位置補正部(第1位置補正手段)
55 第2画像生成部(第2画像生成手段の一部)
56 第2特性推定部(第2特性推定手段)
57 第2位置検出部(第2位置検出手段)
58 第2位置補正部(第2位置補正手段)
6 カメラ(第1画像生成手段の一部、第2画像生成手段の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、該車両の周囲に存在する物体の上下方向位置を検出するレーダ装置であって、
左右方向に配列され、少なくとも一部が上下方向にずれて配設された複数の素子アンテナを有する受信アンテナと、
前記複数の素子アンテナで受信された受信信号の位相差に基づいて、前記物体の上下方向位置を検出する第1位置検出手段と、
前記上下方向位置の履歴に基づいて、該上下方向位置を補正して、補正後の上下方向位置である第1補正位置を求める第1位置補正手段と、を備える、レーダ装置。
【請求項2】
前記第1位置補正手段は、予め設定された所定期間内における前記上下方向位置の内、略最上方の位置を前記第1補正位置として求める、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記第1位置補正手段は、予め設定された所定期間内における前記上下方向位置の平均値である第1平均値と、前記上下方向位置の分散である第1分散とを求め、求められた第1平均値及び第1分散に基づいて、前記第1補正位置を求める、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記第1位置補正手段は、前記第1平均値に、前記第1分散に予め設定された1以上の第1所定数を積算した積を加算して、前記第1補正位置を求める、請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記第1所定数は、2以上であって、且つ、4以下に設定されている、請求項4に記載のレーダ装置。
【請求項6】
該レーダ装置から送出される電波の、該車両が走行する路面における反射特性である第1反射特性を推定する第1特性推定手段を備え、
前記第1位置補正手段は、前記第1特性推定手段によって推定された第1反射特性に基づいて、前記第1補正位置を求める、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項7】
該車両が走行する路面の画像情報を生成する第1画像生成手段を備え、
前記第1特性推定手段は、前記第1画像生成手段によって生成された路面の画像情報に基づいて、前記第1反射特性を推定する、請求項6に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記複数の素子アンテナで受信された受信信号の位相差に基づいて、前記物体の左右方向位置を求める第2位置検出手段と、
前記第2位置検出手段によって求められた左右方向位置の履歴に基づいて、前記第2位置検出手段によって求められた左右方向位置を補正して、補正後の左右方向位置である第2補正位置を求める第2位置補正手段と、を備える、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項9】
車両に搭載され、該車両の周囲に存在する物体の左右方向位置を検出するレーダ装置であって、
左右方向に配列された複数の素子アンテナを有する受信アンテナと、
前記複数の素子アンテナで受信された受信信号の位相差に基づいて、前記物体の左右方向位置を求める第2位置検出手段と、
前記第2位置検出手段によって求められた左右方向位置の履歴に基づいて、前記第2位置検出手段によって求められた左右方向位置を補正して、補正後の左右方向位置である第2補正位置を求める第2位置補正手段と、を備える、レーダ装置。
【請求項10】
前記第2位置補正手段は、予め設定された所定期間内における前記左右方向位置の内、略最正面の位置を前記第2補正位置として求める、請求項9に記載のレーダ装置。
【請求項11】
前記第2位置補正手段は、予め設定された所定期間内における前記左右方向位置の平均値である第2平均値と、前記左右方向位置の分散である第2分散とを求め、求められた第2平均値及び第2分散に基づいて、前記第2補正位置を求める、請求項9に記載のレーダ装置。
【請求項12】
前記第2位置補正手段は、前記第2平均値に、前記第2分散に予め設定された1以上の第2所定数を積算した積を減算して、前記第2補正位置を求める、請求項11に記載のレーダ装置。
【請求項13】
前記第2所定数は、2以上であって、且つ、4以下に設定されている、請求項12に記載のレーダ装置。
【請求項14】
該レーダ装置から送出される電波の、該車両が走行する道路に敷設された側壁における反射特性である第2反射特性を推定する第2特性推定手段を備え、
前記第2位置補正手段は、前記第2特性推定手段によって推定された第2反射特性に基づいて、前記第2補正位置を求める、請求項9に記載のレーダ装置。
【請求項15】
該車両が走行する道路に敷設された側壁の画像情報を生成する第2画像生成手段を備え、
前記第2特性推定手段は、前記第2画像生成手段によって生成された側壁の画像情報に基づいて、前記第2反射特性を推定する、請求項14に記載のレーダ装置。
【請求項16】
前記複数の素子アンテナは、少なくとも一部が上下方向にずれて配設されており、
前記複数の素子アンテナで受信された受信信号の位相差に基づいて、前記物体の上下方向位置を求める第1位置検出手段と、
前記上下方向位置の履歴に基づいて、該上下方向位置を補正して、補正後の上下方向位置である第1補正位置を求める第1位置補正手段と、を備える、請求項9に記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−27695(P2011−27695A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176630(P2009−176630)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】