説明

レーンマーク抽出装置

【課題】 有彩色の道路灯やヘッドライトの光源の影響を受けることなく、白色レーンマークと黄色レーンマークとを区別して検出できるようにしたレーンマーク検出装置を提供する。
【解決手段】 撮像装置1で車両近傍の道路領域を含む画像を撮影する。道路領域色計測処理部11で、道路領域の色成分を計測する。道路領域の色成分は、道路領域のRGB信号の平均値を算出し、算出したRGBの各信号の平均値を平均して道路領域の明度値を算出し、道路領域の明度値から、道路領域のRGB信号の平均値を減算して求める。道路領域色計測処理部11で計測された道路領域の色成分に応じて、画像補正処理部12で、画像信号の色補正を行う。この色補正された画像信号を用いて、黄色線2値画像と白色線2値画像を抽出して、黄色のレーンマークと白色のレーンマークを抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路領域の白線や黄色線のレーンマークを抽出するレーンマーク抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路に敷設されたレーンマークを認識し、ドライバーの運転補助を行う研究が進められている。レーンマークの検出方法としては、画像の輝度を所定値と比較し、輝度値が所定値以上ならレーンマークであると判断する方法が知られている。すなわち、多くのレーンマークは白色で示されており、白色は周囲の道路に比べて輝度が高い。このことから、画像の輝度を検出し、画像の輝度値が所定値以上であれば、白色のレーンマークと判断することができる。
【0003】
ところが、レーンマークは白色ばかりでなく、黄色のレーンマークも存在する。このような従来のレーンマーク検出方法では、白色レーンマークと黄色レーンマークとを区別して検出することができない。
【0004】
白色レーンマークと黄色レーンマークとが検出できるレーンマーク検出装置としては、特許文献1に示されているようなものがある。すなわち、特許文献1には、路面画像を構成するカラー信号を出力する撮像装置と、カラー画像のレーンマーク部分を強調した濃淡画像となるように、カラー信号を濃淡信号へ変換するレーンマーク強調変換手段により構成され、色空間における白色又は黄色のレーンマークと、レーンマーク以外の分布状況を調査し、レーンマークとそれ以外の分布を色空間において最も分離される軸を統計的に求めることにより決定された変換係数を算出して白色及び黄色レーンマークを抽出するようにしたものが記載されている。
【特許文献1】特開2002−123819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるレーンマーク検出装置では、レーンマークを強調することで白色及び黄色レーンマークの抽出精度を向上させる装置であるため、車両周辺の光源の色の影響により変色して黄色でなくなった黄色線を抽出できないという問題や、夜間の黄色ヘッドライトや黄色道路灯の影響を受けて黄色に変色した白色のレーンマークを、誤って黄色レーンマークとして抽出するという問題がある。
【0006】
したがって、本発明は、有彩色の道路灯やヘッドライトの光源の影響を受けることなく、白色レーンマークと黄色レーンマークとを区別して検出できるようにしたレーンマーク検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、請求項1の発明に係るレーンマーク検出装置は、車両近傍の道路領域を含む画像を撮影する撮像装置と、撮像装置からの画像信号から、道路領域の色成分を計測する道路領域色計測処理部と、道路領域色計測処理部で計測された道路領域の色成分に応じて、撮像装置からの画像信号の色補正を行う画像補正処理部とを備え、色補正された画像信号を用いて、レーンマークを抽出するようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明に係るレーンマーク検出装置は、請求項1の発明において、色補正された画像信号を用いて、黄色線のレーンマークを抽出するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明に係るレーンマーク検出装置は、請求項1の発明において、色補正された画像信号を用いて、白色線のレーンマークを抽出するようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明に係るレーンマーク検出装置は、請求項1の発明において、道路領域の色成分は、道路領域のRGB信号の平均値を算出し、算出したRGBの各信号の平均値を平均して道路領域の明度値を算出し、道路領域の明度値から、道路領域のRGB信号の各平均値を減算して求めるようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明に係るレーンマーク検出装置は、請求項1の発明において、色補正された画像信号を、明度、彩度、色相からなる色空間の信号に変換し、明度、彩度、色相からなる色空間の信号から黄色線の色範囲を推定するための閾値を設定し、設定された閾値で黄色線2値画像信号を抽出して黄色線のレーンマークを抽出するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、撮像装置からの画像信号から、道路領域の色成分を計測し、この計測された道路領域の色成分に応じて、撮像装置からの画像信号の色補正を行い、色補正された画像信号を用いて、レーンマークを抽出するようにしている。このため、有彩色の道路灯やヘッドライトの光源の影響を受けることなく、黄色レーンマークと白色レーンマークとを区別して検出することができる。
【0013】
また、本発明によれば、白色レーンマークと黄色レーンマークとを区別して検出することができるので、センターライン認識機能や車両の車線変更検知機能を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1において、撮像装置1は、車両近傍の道路領域を含む風景を撮影するものである。撮像装置1からは、図2に示すように、車両近傍の道路領域AR1を含むR(赤)G(緑)B(青)画像信号が出力される。
【0015】
撮像装置1からのRGB画像信号は、波線で囲んで示すレーンマーク抽出処理部2に送られる。レーンマーク抽出処理部2は、道路領域AR1の色成分を計測する道路領域色計測処理部11と、道路領域色計測処理部11で計測された道路領域AR1の色成分に応じて色補正を行う画像補正処理部12と、RGB画像信号からHSV画像信号への変換を行うカラー変換処理部13と、変換されたHSV画像信号から黄色線の色範囲を推定するための閾値を設定する黄色線色範囲推定処理部14と、変換されたHSV画像信号から白線の色範囲を推定するための閾値を設定する白線範囲推定処理部15と、黄色線色範囲推定処理部14で設定された閾値により黄色線2値画像を抽出するカラー抽出処理部16と、白線範囲推定処理部15で設定された閾値により白線2値画像を抽出する白線抽出処理部17とから構成される。
【0016】
撮像装置1からのRGB信号は、道路領域色計測処理部11に送られる。道路領域色計測処理部11で、以下のようにして、有彩色の道路灯やヘッドライトの光源による道路領域AR1の色成分が計測される。
【0017】
先ず、撮像装置1より入力された道路領域AR1のRGBの各信号の平均値Rmean、Gmean、Bmeanが算出される。そして、算出されたRGBの各信号の平均値Rmean、Gmean、Bmeanを平均して、下式のように、道路領域の明度値Grayが算出される。
Gray=(Rmean+Gmean+Bmean)/3 …(1)
【0018】
道路領域AR1が無彩色であるとすると、撮像装置1からの道路領域AR1のRGB信号の各色成分の信号値は等しくなり、
Rmean=Gmean=Bmean
となる。このため、道路領域AR1の明度値Grayを上式に示すようにして算出したとすると、
Gray=Rmean=Gmean=Bmean …(2)
となるはずである。
【0019】
ところが、実際に撮影した道路領域AR1は、有彩色の道路灯やヘッドライトの光源の色で変色しており、(2)式で示す関係式を厳密に満たさなくなる。例えば黄色のヘッドライトで道路領域AR1が変色している場合には、黄色は赤色と緑色の加色混合になるため、R信号の平均値RmeanやG信号の平均値Gmeanは、B信号の平均値Bmeanに比べて大きくなる。
【0020】
明度値Grayは、(1)式に示すように、RGBの各信号の平均値Rmean、Gmean、Bmeanを平均して求めているので、(1)式により求められた明度値Grayと、実際に撮像装置1から得られたRGB信号の各色成分の平均値Rmean、Gmean、Bmeanとの差が、道路領域AR1の色成分となる。つまり、道路領域AR1の色成分(Roff,Goff,Boff)は、
(Roff,Goff,Boff)=(Gray−Rmean,Gray−Gmean,Gray−Bmean) …(3)
として算出できる。
【0021】
このように、道路領域色計測処理部11では、有彩色の道路灯やヘッドライトの光源による道路領域AR1の色成分を計測している。図3は、このような道路領域の色成分の計測処理を示すフローチャートである。
【0022】
図3において、入力された道路領域AR1の画像信号のRGB各信号値の総和Rsum、Gsum、Bsumが算出され(ステップS1)、各画像信号の総和Rsum、Gsum、Bsumを道路領域AR1の画素数で割り算して、平均値Rmean、Gmean、Bmeanが算出される(ステップS2)。そして、算出されたRGBの各信号の平均値Rmean、Gmean、Bmeanの平均値から、(1)式に示すような演算により、明度値Grayが算出される(ステップS3)。そして、(3)式に示すようにして、道路領域AR1の色成分(Roff,Goff,Boff)が求められる(ステップS4)。
【0023】
図1において、道路領域色計測処理部11で計測された有彩色の道路灯やヘッドライトの光源による道路領域AR1の色成分は、画像補正処理部12に送られる。画像補正処理部12で、道路領域AR1の色成分により、入力画像信号の信号値が補正される。つまり、入力画像信号の信号値(Rsource,Gsource,Bsource)に、(3)式により求められた道路領域AR1の色成分(Roff,Goff,Boff)が加えられて、以下のように補正された画像信号値(Rmodify,Gmodify,Bmodify)が求められる。
(Rmodify,Gmodify,Bmodify)=(Rsource+Roff,Gsource+Goff,Bsource+Boff)
【0024】
この画像補正処理により、撮像装置1から入力されたRGBの各信号値(Rmodify,Gmodify,Bmodify)は、図4(A)〜図4(C)に示すように、道路領域AR1の色成分量だけ上下にスライドされることになる。なお、図4(A)〜図4(C)において、横軸は入力信号値、縦軸は出力信号値を示す。道路領域AR1の色成分量を加算することで、modify-lineで示すように、RGBの各信号値は上下にスライドする。
【0025】
図1において、画像補正処理部12により画像補正したRGB信号は、カラー変換処理部13に送られる。カラー変換処理部13は、RGB信号値を、明度、彩度、色相の色の3成分からなるHSV空間の色信号に変換する。なお、ここでは、RGB信号値をHSV表色系に変換したが、例えばCIE Lab等の他の表色系に変換しても良い。
【0026】
カラー変換処理部13からのHSV空間の信号は、黄色線色範囲推定処理部14及び白線範囲推定処理部15に送られる。
【0027】
黄色線色範囲推定処理部14は、HSV空間の色信号から、黄色線の存在範囲を推定する。すなわち、黄色線は、HSV色空問において、色相角が黄色(60度)周辺である。そして、無彩色の道路に有彩色の黄色線が載っている状態であるので、道路領域の彩度値よりも高い。そこで、黄色線色範囲推定処理部14では、道路領域AR1の画素の中で色相角が黄色の彩度値を求めることで、道路領域と黄色線領域を分割する黄色の彩度値の閾値を算出する。
【0028】
具体的には、道路領域AR1において、色相角が予め設定した黄色の範囲(60度周辺)を満たす画素の彩度値の標準偏差σsと、平均値Smeanを算出する。この実施形態では、黄色線彩度限界値Slimitを、
Slimit=Smean+3σs
として、黄色線彩度下限値を計算している。
【0029】
白線範囲推定処理部15は、HSV空間の色信号から、白色線の存在範囲を推定する。すなわち、白線は、無彩色で、輝度が高い。そこで、白線範囲推定処理部15では、道路領域AR1の無彩色の画素の明度を、道路領域と白色線領域を分割する閾値として算出している。
【0030】
黄色線色範囲推定処理部14で設定された閾値は、カラー抽出処理部16に送られる。カラー抽出処理部16で、設定された閾値で、入力画像から黄色線の抽出処理が行われる。これにより、黄色線2値画像画像が形成される。
【0031】
白線範囲推定処理部15で設定された閾値は、白線抽出処理部17に送られる。白線抽出処理部17で、設定された閾値で、入力画像から白線の抽出処理が行われる。これにより、白線2値画像画像が形成される。
【0032】
以上のようにして、黄色線2値画像画像と白線2値画像画像が形成される。この黄色線2値画像画像と白線2値画像画像とから、黄色線ラインマークと白色ラインマークが抽出される。
【0033】
以上説明したように、本発明の実施形態では、撮像装置からの画像信号から、道路領域の色成分を計測し、この計測された道路領域の色成分に応じて、撮像装置からの画像信号の色補正を行い、色補正された画像信号を用いて、レーンマークを抽出するようにしている。このため、有彩色の道路灯やヘッドライトの光源の影響を受けることなく、黄色レーンマークと白色レーンマークとを区別して検出することができる。
【0034】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、道路に敷設されレーンマークを認識し、ドライバーに対して走行車線に沿って運行されているかの警報を行ったり、ステアリング制御を行ったりするのに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態の説明図である。
【図3】道路領域色計測処理の説明に用いるフローチャートである。
【図4】画像補正処理の説明に用いるグラフである。
【符号の説明】
【0037】
1 撮像装置
2 レーンマーク抽出処理部
11 道路領域色計測処理部
12 画像補正処理部
13 カラー変換処理部
14 黄色線色範囲推定処理部
15 白線範囲推定処理部
16 カラー抽出処理部
17 白線抽出処理部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両近傍の道路領域を含む画像を撮影する撮像装置と、
前記撮像装置からの画像信号から、道路領域の色成分を計測する道路領域色計測処理部と、
前記道路領域色計測処理部で計測された道路領域の色成分に応じて、前記撮像装置からの画像信号の色補正を行う画像補正処理部とを備え、
前記色補正された画像信号を用いて、レーンマークを抽出するようにしたことを特徴とするレーンマーク抽出装置。
【請求項2】
前記色補正された画像信号を用いて、黄色線のレーンマークを抽出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のレーンマーク抽出装置。
【請求項3】
前記色補正された画像信号を用いて、白色線のレーンマークを抽出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のレーンマーク抽出装置。
【請求項4】
前記道路領域の色成分は、前記道路領域のRGB信号の平均値を算出し、算出したRGBの各信号の平均値を平均して道路領域の明度値を算出し、前記道路領域の明度値から、前記道路領域のRGB信号の各平均値を減算して求めるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のレーンマーク抽出装置。
【請求項5】
前記色補正された画像信号を、明度、彩度、色相からなる色空間の信号に変換し、前記明度、彩度、色相からなる色空間の信号から黄色線の色範囲を推定するための閾値を設定し、設定された閾値で黄色線2値画像信号を抽出して黄色線のレーンマークを抽出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のレーンマーク抽出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−209209(P2006−209209A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16878(P2005−16878)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(300052246)株式会社ホンダエレシス (105)
【Fターム(参考)】