説明

ロックイン型粉末

【課題】保存安定性に優れ、変色や色調の低下及び香質の変化が認められず、しかも消臭機能および抗酸化機能が保持される固形製剤を提供すること。
【解決手段】香粧品にポリフェノール類を封入したロックイン型粉末を配合する。さらに、塩基性物質や酵素を香粧品に配合してもよい。香粧品の中でも、とくに粉末あるいは錠剤入浴剤、粉末あるいは錠剤洗剤などが好ましい。工場から香粧品が出荷された後、消費者が製品を使用するときから使い終わるまでの標準的な期間が経過しても、当該製品の変色や色調の低下及び香質の変化、及び消臭機能や抗酸化機能の低下がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェノール類を含有するロックイン型粉末、およびそれを含有する固形製剤に関する。より詳細には、本発明は、ポリフェノール類を含有するロックイン型粉末、および、長期安定性に優れており、長期間保存後でも色調の低下や変色が実質的に観察されず、しかも香質の変化、消臭効果及び抗酸化効果の低下がなく、良好な効果を長期にわたって保持することができる、前記ロックイン型粉末、およびそれを含有する固形製剤に関する。とくに入浴剤や洗剤等に含まれている硫酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムなどの塩基性成分及び界面活性剤や酵素などの成分による変質の生じにくい固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活の多様化、生活程度の向上、意識の変化・向上などに伴い、身の周りの様々な点に注意が向けられるようになった。これらの動きにあわせて、種々の香粧品、例えば粉末入浴剤、錠剤入浴剤(バスタブレット)、バブルバス、デオドラントパウダー、粉末洗剤、自動食器洗い機用洗剤、粉末漂白剤、粉末パック、美白パウダー、ヌメリ取り剤、入れ歯洗浄剤なども、多様な香粧品が市販され、需要者の満足さが高まっている。
多様な香粧品の一つとして、口臭、汗臭などの身近な臭いに対する配慮を施した香粧品がある。その多くは臭いを感じないようにする、所謂マスキングする機能を持つ製品であるが、一方では悪臭成分を補足する所謂消臭機能を有する製品も検討されており、例えば、香粧品に消臭有効成分を配合させる香粧品の開発が検討されているところである。前記消臭成分としては植物抽出物に含まれる消臭成分が多い(特許文献1、特許文献2など)。該消臭成分は天然物に由来するものであり、安心して使用できるうえに、消臭効果も優れているが、十分に満足することができるというほどの効果をもたらすとはいえない。
そこで、本発明者らは消臭機能がより優れる技術を揮発しようと検討したところ、植物中に存在が知られているポリフェノール類にアルカリ成分を共存させる消臭剤組成物は、消臭効果が優れているうえ、前記消臭剤と同様に安心して使用できるという特徴も備えているという知見を得、この知見を応用する研究を開始した。
そして、例えば洗剤や入浴剤などの香粧品には通常アルカリ成分が配合されている点に着目し、前記香粧品にポリフェノール類を配合さてみたところ、優れた消臭機能を付与させる香粧品を得ることができた。
ところが、このポリフェノール類を含有する前記香粧品は、初期のころはともかく、長い時間の経過後には香粧品自体が着色(変色)し、そのうえ、香粧品から揮散される香質も変化するという、新たな問題点が見出された。
この着色及び香質の変化が認められた製品には、製品事体の機能にはなんら問題がないとしても、消費者にとっては商品のイメージが悪く、結局商品価値がなくなるという大きな問題点を秘めている。したがって、消臭効果が優れている前記消臭技術を香粧品に実用化することができるよう、新たな技術開発が望まれている。
【0003】
一方、香味成分が封入されたロックイン型粉末は、例えば、糖質などの炭水化物を、必要に応じ少量の水とともに加熱することにより溶融状として得られた非晶形のマトリックス材中に通常液状の香味成分を機械的に分散せしめて封じ込め(Locked−in)、そのまま冷却などにより固化させた後、微粉砕する方法、あるいは前記封じ込めたものを一軸または二軸押出機などを用い、ダイを通して冷媒などの冷却材中に押出して固化させ、その後切断または粉砕するなどして製造するものであり、既に公知のものである。前記ロックイン型粉末は、従来、各種食品に香味を付与するために用いられ、特にキャンディーやチューインガム等の製造においては広く使用されている。
【0004】
従来提案されている香味成分封入ロックイン型粉末あるいはその製造方法として、例えば次のような技術が挙げられる。
(1) 加熱したコーンシロップ中に酸化防止剤及び分散剤を含んだ芳香油(香味成分)を分散させ、押し出し成形後、粉砕する方法(特許文献3参照)。
(2) 蔗糖等の糖類、デンプン水解物および乳化剤からなる混合物を加熱し、これに香味成分を混和したものを、冷たい溶媒中に押し出し、成形した後粉砕する方法(特許文献4〜7参照)。
(3) ソルビトール水溶液または溶融液で精油等を固定する方法(特許文献8参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平9−290014号公報
【特許文献2】特開平9−290026号公報
【特許文献3】特公昭34−5600号公報
【特許文献4】特開昭49−62677号公報
【特許文献5】特開昭52−94452号公報
【特許文献6】特開昭61−12248号公報
【特許文献7】特表昭61−502656号公報
【特許文献8】特開昭49−132251号公報
【非特許文献1】Jhon M.deMAN著、「PRINCIPLES OF FOOD CHEMISTRY」Second Edition,Van Nostrand Reinhold(ニューヨーク)発行、1990年、167−168頁
【0006】
これら香味成分封入ロックイン型粉末は、従来、食品などに配合あるいは付加され、食品が保存あるいは市販される間においてはカプセル中の香味成分、フレーバーなどの揮散を防ぎ、食品などが消費者の口中に投入された際に、口中においてカプセル中の香味成分などが放出され、食品などの味や香りを十分な満足度を持って消費者に知覚させるために用いられているものである。したがって、従来ロックイン型粉末は、口中での香味成分、フレーバーなどの放出以外の目的で使用することは考えられていなかったし、勿論、このような飲食と使用態様と異なる香粧品に対し前記ロックイン型粉末を配合し、使用時に封入された化合物を放出させることについての使用も考えられていなかった。前記ロックイン型粉末が配合された香粧品については、出願人が知る限り、従来市場には存在しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、保存安定性に優れ、長期間保存した後でも変色や色調の低下及び香質の変化が認められず、しかも消臭機能が保持される固形製剤を提供することにある。さらに、工場から香粧品が出荷された後、消費者が製品を使用するときから使い終わるまでの標準的な期間が経過しても、当該製品の変色や色調の低下及び香質の変化、及び消臭機能や抗酸化機能の低下がない香粧品の製造に有効な固形製剤を提供することにある。さらに、前記香粧品配合用固形製剤に含有させる消臭機能を有するロックイン型粉末を提供することにある。なお、本発明でいう固形製剤とは錠剤、丸剤、カプセル状剤、顆粒状剤、細粒状剤、粉末状材などの一定の形状を持った剤をいう。また本発明の固形製剤は、香粧品、あるいは香粧品を製造する原材料を意味する。香粧品を製造する原材料である固形製剤に、例えば慣用の手段を適用して香粧品を得ることができる。
また、本発明の課題は、例えば入浴剤又は洗剤などの香粧品の基材成分として用いられことの多い硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの塩基性成分、あるいは酵素などの添加剤により、香粧品の変色や色調の低下及び香質の変化が認められず、しかも消臭機能も保持される香粧品用固形製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するべく検討を重ねたが満足できる結果をなかなか得ることができなかった。そのような状況のあるとき、糖類中にポリフェノール類を封入したロックイン型粉末(以下、ロックイン型粉末ということがある)を苦労の末に何とか調製し、当該ロックイン型粉末を香粧品に含有させたところ、意外にも、該香粧品を長期間保存した後でも、香粧品用固形製剤の変色や色調の低下及び香質の変化が認められないという事実を見出した。しかも、この長時間保存後の香粧品用固形製剤は消臭機能および抗酸化機能が保持されていることも知った。これらの知見に基づき、本発明者等は、更に研究を重ね、遂に本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、請求項1の発明は、ポリフェノール類を含有することを特徴とするロックイン型粉末である。ポリフェノール類が封入されていることを特徴とする香粧品配合用ロックイン型粉末でもある。さらに、請求項1の発明は、糖類中あるいは糖類マトリックス中にポリフェノール類が封入されていることを特徴とするロックイン型粉末であるともいえる。
さらに、請求項1の発明は、ポリフェノール類を含有することを特徴とするロックイン型カプセル粉末でもある。また、請求項1の発明は、糖類中あるいは糖類マトリックス中にポリフェノール類を含有することを特徴とするロックイン型カプセル粉末でもある。
ここで用いる糖類は、ロックイン型粉末を製造できる糖類であれば、特に制限されない。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、カプセル粉末全重量に対するポリフェノール類含有量が1〜50重量%であることを特徴とし、請求項3の発明は、更に、フレーバー及び/又はフレグランスを封入することを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載されたロックイン型粉末を含有することを特徴とする固形製剤の発明である。また、請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載されたロックイン型粉末を含有することを特徴とする香粧品用固形製剤の発明でもある。
請求項5の発明は、請求項4の発明において、固形製剤が香粧品であることを特徴とし、請求項6の発明は、請求項5の発明において、固形製剤が入浴剤又は洗剤であることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項4〜6のいずれか1項に記載された固形製剤中に、塩基性成分を更に含有することを特徴とし、請求項8の発明は、請求項4〜6のいずれか1項に記載された固形製剤中に酵素を更に含有することを特徴とする。
【0011】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
まず本発明の必須成分であるポリフェノール類(以下、ポリフェノールということがある)について説明する。
本発明で使用されるポリフェノールは所期の目的を達成できるポリフェノールである限り特に限定されない。詳細には、発明で使用されるポリフェノールとは、同一ベンゼン環に二個あるいは二個以上の水酸基が水素原子と置換されている化合物を意味し、その配糖体もポリフェノールとして含む。その中でも、ヒドロキノンおよびo−ジフェノール構造を有するポリフェノール が好ましい。なお、o−ジフェノール 構造とはベンゼン環に直接水酸基が置換されており、しかもその水酸基が隣接しているときの構造を意味する。
【0012】
ポリフェノールの具体例としては、例えば、アピゲニン、アピゲニン配糖体、アカセチン、イソラムネチン、イソラムネチン配糖体、イソクエルシトリン、エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エスキュレチン、エチルプロトカテキュ酸塩、エラグ酸、カテコール、ガンマ酸、カテキン、ガルデニン、ガロカテキン、カフェ酸、カフェ酸エステル、クロロゲン酸、ケンフェロール、ケンフェロール配糖体、ケルセチン、ケルセチン配糖体、ケルセタゲニン、ゲニセチン、ゲニセチン配糖体、ゴシペチン、ゴシペチン配糖体、ゴシポール、4−ジヒドロキシアントラキノン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、シアニジン、シアニジン配糖体、シネンセチン、ジオスメチン、ジオスメチン配糖体、3,4’−ジフェニルジオール、シナピン酸、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、スピナセチン、タンゲレチン、タキシホリン、タンニン酸、ダフネチン、チロシン、デルフィニジン、デルフィニジン配糖体、テアフラビン、テアフラビンモノガレート、テアフラビンビスガレート、トリセチニジン、ドーパ、ドーパミン、ナリンゲニン、ナリンジン、ノルジヒドログアヤレチック酸、ノルアドレナリン、ヒドロキノン、バニリン、パチュレチン、ハーバセチン、バニリルアルコール、バニトロープ、バニリンプロピレングリコールアセタール、バニリン酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン酸、ビスフェノール A、ピロカテコール、ビテキシン、4,4’−ビフェニルジオール、4−t−ブチルカテコール、2−t−ブチルヒドロキノン、プロトカテキュ酸、フロログルシノール、フェノール 樹脂、プロシアニジン、プロデルフィニジン、フロレチン、フロレチン配糖体、フィゼチン、フォリン、フェルバセチン、フラクセチン、フロリジン、ペオニジン、ペオニジン配糖体、ペルオルゴニジン、ペルアグゴニジン配糖体、ペチュニジン、ペチュニジン配糖体、ヘスペレチン、ヘスペレジン、没食子酸、没食子酸エステル(没食子酸ラウリル、没食子酸プロピル、没食子酸ブチル)、マンジフェリン、マルビジン、マルビジン配糖体、ミリセチン、ミリセチン配糖体、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール )、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール )、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール )、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール )、メチルアトラレート、4−メチルカテコール、5−メチルカテコール、4−メトキシカテコール、5−メトキシカテコール、メチルカテコール−4−カルボン酸、2−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、モリン、リモシトリン、リモシトリン配糖体、リモシトロール、ルテオリン、ルテオリン配糖体、ルテオリニジン、ルテオリニジン配糖体、ルチン、レゾルシン、レスベラトロール、レゾルシノール、ロイコシアニジン、ロイコデルフィニジンなどがあげられる。
【0013】
これらのポリフェノール の中でも、ケルセチン、エピカテキン、および、エピガロカテキン等のフラボノイド類及びそれらの配糖体、没食子酸、没食子酸エステル、クロロゲン酸、カフェ酸、カフェ酸エステル、タンニン酸、ピロカテコール、ノルジヒドログアイアレクチック酸、L−ドーパ、4−メチルカテコール、5−メチルカテコール、4−メトキシカテコール、5−メトキシカテコール等のo−ジフェノール 構造を有するポリフェノール 、および、ヒドロキノンが特に好ましい。
これらのポリフェノール は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いても良い。
また、上記ポリフェノール は、公知の方法により調製できるが、市販品を購入してもよい。また、合成により調製してもよい。さらには、植物から調製した高濃度ポリフェノール 画分を使用することもできる。
【0014】
本発明では、ポリフェノール の代わりに、ポリフェノール を含む植物抽出物を使用することもできる。この場合の植物抽出物は、ポリフェノール を含むものであり、アミノ酸を実質的に含まない植物抽出物を採用することもできる。この植物抽出物は公知の方法により調製されたものを使用してもよいし、また市販のものを使用してもよい。
植物抽出物の例としては、例えば、アロエ、アニスシード、エルダー、エレウテロコック、オオバコ、オレンジフラワー、オールスパイス、オレガノ、カノコソウ、カモミル、カプシカムペッパー、カルダモン、カシア、ガーリック、キャラウエイシード、クローブ、クミンシード、コーラ、コリアンダーシード、五倍子、サフラン、サンショウ、ジュニパーベリー、シナモン、ジンジャー、スター・アニス、セント・ジョーンズ・ウオルト、セロリーシード、セイボリー、セサミ(ゴマ)、ダイオウ、タラゴン、ターメリック、チィスル、デイルシード、ナツメグ、ネットル、ハイビスカス、ハマメリス、バーチ、バジル、ビター・オレンジ、フェンネル、プリムローズ、フェヌグリーク、ベルベナ、ベイローレル、ホップ、ボルドー、ホースラデイッシュ、ポピーシード、没食子、マリーゴールド、マロー、マジョラム、マスタード、ミルフォイル、ミントリーブス、メリッサ、メース、リンデン、リンドウ、ローズヒップ、ローズマリー、マンネンロウ、ひまわり種子、ブドウ果皮、リンゴ、ニンジン葉、バナナ、イチゴ、アンズ、モモ、プラム、パイナップル、ナシ、カキ、サクランボ、パパイヤ、マンゴー、アボガド、メロン、ビワ、イチジク、キウイ、プルーン、ブルーベリー、ブラックベリー、ラスベリー、ツルコケモモ、コーヒー豆、カカオ豆、ブドウ種子、グレープフルーツ種子、ペカンナッツ、カシューナッツ、クリ、ココナッツ、ピーナツ、クルミ、緑茶葉、紅茶葉、ウーロン茶葉、タバコ、シソ葉、ニワタイム、セージ、ラベンダー、スペアミント、ペパーミント、サントリソウ、ヒソップ、メボウキ、マリーゴールド、タンポポ、アーチチョーク、ドイツカミルレ、キンミズヒキ、カンゾウ、アニス、ノコギリソウ、ユーカリ、ワームウッド、香油、シシウド、コロハ、シシトウガラシ、ウイキョウ、トウガラシ、コエンドロ種子、ヒメウイキョウ種子、ウイキョウ種子、ショウガ、西洋ワサビ、マヨラナ、ハナハッカ、カラシ、パセリ、コショウ、セイヴォリー、タラゴン、ウコン、ワサビ、イノンド種子、柑橘果実などから得られる抽出物があげられる。これらの植物抽出物を組み合わせて使用してもよい。
本発明においては、ポリフェノール類の含有量は配合させる固形製剤の種類、含まれる成分などにより変動するので一概に規定することができないが、例えばロックイン型粉末全重量に対するポリフェノール類含有量が1〜50重量%とすることができる。植物抽出物の配合量も上記と同様としてよい。
【0015】
本発明のロックイン型粉末のマトリックス材を具体的に示すと、例えば、単糖類、二糖類、多糖類、糖アルコール、ポリオール、糖誘導体、化工デンプン、改質デンプン、ゴム類などが挙げられ、より具体的には、例えば、ショ糖、グルコース、ラクトース、レブロース、フルクトース、マルトース、グルコピラノシルマンニトール、グルコピラノシルソルビトール、リボース、デキストロース、イソマルト、ソルビトール、マンニトール、キシロール、ラクチトール、マルチトール、ペンタトール、アラビノース、ペントース、キシロース、ガラクトース、デンプン、水素化デンプン加水分解物、マルトデキストリン、アガー、カラゲナン、ポリデキストロースならびにこれらの誘導体および混合物などが挙げられる。
【0016】
上記マトリックス材は、いずれも本発明において用いられるロックイン型粉末のマトリックス材として好ましいものであるが、中でも好ましいものの一例を挙げると、化工デンプンと糖類の水素添加物とが、固形分で換算して1:99〜30:70の重量割合で含まれる炭水化物混合物がある。該糖類の水素添加物としては、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、イソマルト、それらの水素添加処理および水素添加コーンシロップから選ばれる一種以上のものが好ましい。
【0017】
ここで化工デンプンとは、化学的に処理したデンプンであり、例えば、酸で処理したデンプン(例:デキストリン)、酵素で処理したデンプン(例:デキストリン)、加熱したデンプン(例:α−デンプン)、酸化デンプン、架橋デンプンおよびその他のデンプン誘導体を挙げることができる(例えば、非特許文献1参照)。デキストリンとしては、DE(Dextrose Equivalent=旋右糖等量)値が低いもの、特に約20以下のものが好ましく用いられる。DE値が約20より大きいものでは、水分に対する安定性が悪くなる。但し、DE値が約5より小さいものであるとポリフェノール混合時の粘度が高くなりすぎるおそれがある。また、デンプン誘導体とは、デンプンの側鎖が親水基や疎水基で修飾された、高度の化工が行われたデンプンであり、具体的には、デンプンリン酸エステルのようなデンプンエステル、デンプンカルボキシメチルエーテルのようなデンプンエーテル、リン酸架橋デンプンのような架橋デンプンが挙げられる。これらのデンプン誘導体は、その他の化工デンプンに比べ、得られるカプセルの保存中の水分に対する安定性に優れ、好ましく用いられる。さらに、カプセルの水分安定性を高める他の要素として、平均分子量が大きく、かつ、分枝した構造を有する化工デンプンの使用が挙げられる。分枝構造を有する化工デンプンとしては、アミロペクチンを高い比率で含有するデンプンを化工したものが挙げられる。特に、アミロペクチンを約80重量%以上含有するデンプンを化工したものが好ましく用いられる。
【0018】
このような化工デンプンの具体的例としては、アミオカデンプン、タピオカデンプン、ワクシーメーズ等由来の化工デンプンを挙げることができる。中でもワクシーメーズ由来の化工デンプンが特に好ましい。最も好ましく用いられる化工デンプンは、ワクシーメーズ由来の化工デンプンであり、且つ、デンプンの側鎖間により強い相互作用を有するような嵩張った立体構造を有するデンプン誘導体を挙げることができる。このような化工デンプンの具体例としては、ピュリティガム(PURITY GUM)59、ピュリティガム(PURITY GUM)BE、ピュリティガム(PURITY GUM)1773、N−LOK(いずれも商品名、ナショナルスターチアンドケミカル社(National Starch and Chemical Company)製食用化工デンプン)等を挙げることができる。上記マトリックスの使用により、ポリフェノールの基材による劣化がなく、また香粧品使用時に、ポリフェノールを長時間にわたって徐々に放出することが可能となり、長期に亘って消臭機能及び抗酸化機能を保持することができる。
【0019】
また、他の好ましいマトリックス材として、特開2005−194419号公報に記載される、20%水溶液にして80℃で5分間加熱後に30℃で測定したときに、50cps(mPa・s)以上の粘度を有する変性アルファ化デンプン(以下、「変性アルファ化デンプン(≧50cps)」という。)をマトリックス材の少なくとも一部として用いるものが挙げられる。変性アルファ化デンプンは、変性デンプンを水またはお湯に膨潤または溶解して調整した糊状物を、糊の状態のままで急速に脱水、乾燥させて得られたものであり、常温の水に分散・膨潤して容易に糊状を再現できる。変性アルファ化デンプンのベースをなす変性デンプンとしては、酸化デンプン、誘導体デンプン(デンプン酢酸エステル、デンプンリン酸エステル、各種デンプンエーテルリン酸、架橋デンプンなど)等の各種の化工デンプンが挙げられる。
【0020】
前記変性アルファ化デンプン(≧50cps)は、従来から公知であって、種々の製品が販売されており、これら市販のものを適宜使用すれば良い。例えば、市販品としては、ナショナル・スターチ・アンド・ケミカル社製の「エヌクリーマー46」が挙げられる。これら、変性アルファ化デンプン(≧50cps)は、他の変性アルファ化デンプンと共に用いられても良い。前記変性アルファ化デンプン(≧50cps)と共に用いられる変性アルファ化デンプンとしては、例えば、20%水溶液にして80℃で5分間加熱後に30℃で測定したときに、50cps(mPa・s)未満の粘度を有する変性アルファ化デンプン(以下、「変性アルファ化デンプン(<50cps)」という。)が挙げられる。変性アルファ化デンプン(<50cps)は、加水分解デンプン、酸化デンプン、誘導体デンプン(デンプン酢酸エステル、デンプンリン酸エステル、各種デンプンエーテルリン酸、架橋デンプンなど)等の上記した各種の化工デンプン(変性デンプン)を、水またはお湯に膨潤または溶解して調整した糊状物を、糊の状態のままで急速に脱水、乾燥させて得られたものであり、変性アルファ化デンプン(≧50cps)と同様に、従来から公知であり、種々の製品が販売されている。例えば、市販品としては、ナショナル・スターチ・アンド・ケミカル社製の「ピュリティガムBE」、「カプシュール」などを挙げることができる。これらの併用により、香粧品使用時にポリフェノールをより長時間にわたって徐々に放出することが可能となり、長期に亘って消臭機能及び抗酸化機能を保持することができる。
【0021】
これら粘度の異なる水溶液を形成する変性アルファ化デンプン(≧50cps)及び変性アルファ化デンプン(<50cps)の配合比率を調整することにより、ロックイン型粉末の揮発速度や揮発パターンを良好に調整することができる。また入浴剤や洗剤中に含まれている基剤(例えば硫酸マーキングシートトリウムや炭酸水素ナトリウム等)などによるポリフェノールの変質や経時変化などを防止して、消臭機能及び抗酸化機能をより長い時間に亘って保持させることができる。また、変性アルファ化デンプンのマトリックス材全量に対する配合比率は、ロックイン型粉末の製造の容易性、長期保存性、消臭機能及び抗酸化機能、除放性能、使用時の感触などの点から、マトリックス基材の50質量%以上であることが好ましく、60〜100質量%であることがより好ましく、70〜95質量%以上であることが更に好ましい。また、変性アルファ化デンプン(≧50cps)の配合割合は、マトリックス材全量に対し15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、20〜80質量%であることが更に好ましい。また、変性アルファ化デンプン(≧50cps)と変性アルファ化デンプン(<50cps)を併用する場合は、その使用割合は、一般に10:90〜80:20の質量比であることが、好ましく、20:80から70:30の質量比であることがより好ましい。
【0022】
また、変性アルファ化デンプンは糖類など他の成分と併用されても良い。併用することのできる糖類としては、例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、リボースなどの単糖類、マントース、ラクトース、スクロース、などの二糖類、デンプンを酸又は酵素で加水分解したデキストリン類、マンニット、ソルビット、マルビットなどの糖アルコールなどを挙げることができる。これらの中では、デキストリンが好ましい。変性アルファ化デンプン(≧50cps)をマトリックス材として用いる場合には、例えば形成されたロックイン型粉末が粉末あるいは錠剤入浴剤に用いられた場合、38〜42℃というような比較的高温のお湯に入れても、消臭機能及び抗酸化機能が長時間保持されるという利点がある。
【0023】
なお、上記において、変性アルファ化デンプンの20%水溶液の粘度の値は、変性アルファ化デンプン40gを温度20℃の水160gに添加して20%水溶液を作り、その水溶液を攪拌下に80℃まで加熱し、攪拌しながら80℃で5分間維持し、次いで30℃まで冷却し、30℃に到達した直後における水溶液の粘度を粘度計(株式会社トキメック社製「Tokimec Viscmeter BM Type」;Spindle No.1 30rpm, Spindle No.2 30rpm)を使用して測定された時の値である。
【0024】
本発明のロックイン型粉末に封入されるフレーバー及び/又はフレグランスとしては、従来香粧品用固形製剤に用いられているものを含め、香粧品の賦香に用いられうるものであれば何れでも良く、特に限定されない。用いられる香料は合成香料でも天然精油でもよく、液状、ペースト状、固形状等いずれの状態のものであってもよい。例えば、本発明で用いられるフレーバー(以下、香料ということがある)としては、エステル類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アセタール類、フェノール 類、エーテル類、ラクトン類、フラン類、炭化水素類、酸類などの合成香料、および、天然香料などが挙げられる。
本発明で用いられるフレグランス(以下、香料ということがある)としては、炭化水素類、アルコール類、フェノール 類、アルデヒド類及び/又はアセタール類、ケトン類及び/又はケタール類、エーテル類、合成ムスク類、酸類、ラクトン類、エステル類、含ハロゲン化合物、天然香料などが挙げられる。
【0025】
香粧品に要求される香気、香質に応じ、所望する香質や香気を有する香料を使用することができる。例えばシトラス様香料、フルーティ様香料、グリーン様香料、フローラル様香料、アルデヒド様香料、スパイシー様香料、ウッディ様香料、スイート様香料、モッシー様香料、ムスキー様香料、アンバー様香料、アニマル様香料、ハーバル様香料、マリン様香料、およびミント様香料などが挙げられる。
【0026】
上記フレーバーおよびフレグランスとして、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」(平成12年度 厚生科学研究報告書;日本香料工業会 平成13年3月発行)、「合成香料 化学と商品知識」(1996年3月6日発行 印藤元一著 化学工業日報社)、「Perfume and Flavor Chemicals(Aroma Chemicals)1,2」(Steffen Arctender(1969))などの記載の香料を使用することができる。
これら、フレーバーおよびフレグランスは、1種および2種以上を混合して使用しても良い。
これらは市販のものを使用することもできる。また単品は、合成品を使用してもよいし、植物などの天然起源から導入してもよい。精油、レジノイド、バルサム、アブソリュート、コンクリート、チンキなどは、公知の方法で調製してから使用することもできる。
【0027】
香料成分の具体例としては、リモネン、ピネン、γ−テレピネン、カリオフィレンなどの炭化水素系香料;フェニルエチルアルコール、テレピネオール、パクダノール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シス−3−ヘキセノールなどのアルコール系香料;リリアール、シトラール、アルデヒドC−8、アルデヒドC−9、アルデヒドC−11、ヘキシルシンナミックアルデヒド、バニリン、ヘリオトロピンなどのアルデヒド系香料;ヨノン、ローズフェノン、ウッディーフロー、ダマスコン、イソイースーパーなどのケトン系香料;ムスク類、オイゲノール、クマリンなどの他の香料;レモン油、オレンジ油、ペパーミント油のような精油類;アップルエッセンス、ストロベリーエッセンスのようなエッセンス類などを挙げることができる。本発明においては、これら香料成分の1種または2種以上が含まれる。
【0028】
また、香料とともに、必要により、溶剤(エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなど)、乳化剤、可溶化剤、保留剤・保香剤、冷感剤・温感剤、エンハンサー、酸化防止剤、光劣化防止剤などの添加剤を適宜用いることができる(例えば、「周知・慣用技術集(香料)第1部 香料一般」、平成11年1月29日、特許庁発行参照)。
【0029】
前記マトリックス材、ポリフェノ−ル類、および必要に応じ用いられるフレーバー及び/又はフレグランスを含む添加剤は、例えば次のような方法によりロックイン型粉末とされる。
まずマトリックス材に、水に分散させたポリフェノール類配合する。このとき、必要に応じて、香料やその他の添加剤も添加することができる。ポリフェノール類の添加量は、マトリックス材に対し約1〜50重量%とすることができる。得られる粉末の水分に対する安定性は、水分、ポリフェノール類、香料やその他の添加剤等の含有量により変化し、成形時にこれらの含有量が多いと安定性が悪くなる。このため、ポリフェノール類の添加量は、マトリックス材に対し約20重量%以下とするのが望ましい。尚、ポリフェノール類の添加量があまりに少量すぎると、効果が得られない。このため、マトリックス材に対しポリフェノール類の配合率は、通常約0.2〜20重量%、好ましくは約1〜15重量%である。香料の添加量は香粧品配合用固形製剤によって異なるのであり、一概に規定できないが、例えば、マトリックス材に対し、通常約0.2〜20重量%とする。
ポリフェノール類を分散する水の量は、ポリフェノール類が均一に分散できる最低量とすることが望ましい。その量は用いるポリフェノールの種類や量、用いるマトリックス材の種類や量などにより変動するが、例えばマトリックス材に対し約3〜40重量%とするのが好ましい。水の添加量が多すぎると、後に加熱して水分含量を低下させる際に時間がかかりすぎるため好ましくない。加熱温度は、その組成にもよるが、約110〜200℃の範囲が好ましく、加熱時間は、マトリックス材が溶融し、水分含量がある程度低くなるまでとする。好ましくは、水分含量が約0.5〜6重量%となるまで、煮詰釜等で煮詰める。この時点で残留水分含量が多すぎると、得られる粉末の水分含量が多くなり、水分に対する安定性が悪くなるので好ましくない。かくしてマトリックス材とポリフェノール類との均一混合物を得ることができる。
【0030】
上記と異なる方法でもマトリックス材とポリフェノール類との均一混合物を得ることができる。すなわち、マトリックス材に、必要に応じて水を添加して加熱し、マトリックス材の溶融物を形成する。水を添加する場合、その量は、マトリックス材が均一に分散する最低量とすることが望ましく、例えばマトリックス材に対し、約3〜40重量%とするのが好ましい。水の添加量が多すぎると、後に加熱して水分含量を低下させる際に時間がかかりすぎるため好ましくない。加熱温度は、その組成にもよるが、約110〜200℃の範囲で、マトリックス材が溶融し、水分含量がある程度低くなるまでとする。好ましくは、水分含量が約0.5〜6重量%となるまで、煮詰釜等で煮詰める。この時点で残留水分含量が多すぎると、得られる粉末の水分含量が多くなり、水分に対する安定性が悪くなるので好ましくない。
次に、得られた溶融物にポリフェノール類を添加する。ポリフェノール類の添加量は前記と同様である。
【0031】
マトリックス材溶融物とポリフェノール類を混合する方法としては、均一な混合物を得ることのできる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、高速撹拌機(ホモディスパー)のような装置でマトリックス材の溶融物を撹拌しているところにポリフェノール類等を添加し、更に撹拌を続けて均一とすれば良い。このとき、ポリフェノール類等に分散剤あるいは乳化剤が配合されていると、ポリフェノール類等の均一な分散物が得られ易い。
【0032】
前記方法で得られた均一混合物を、押出機に移し、密閉後、圧力をかけ、押出機の射出口(ダイ)から押し出す。また、加熱、混合、押し出しを同一の容器で行うことのできる、押し出しプレート付きの耐圧容器からなる押出機を用いることもできる。すなわち、マトリックス材、添加水、ポリフェノール類、香料等を、定量ポンプ等からなる供給装置を用いて押出機内にそれぞれ導入し、該押出機内でこれらの加熱、混合、次いで押し出しを行えば、一連の工程を容器を変えることなく連続して行うことができ、時間当たりの製造量を増やすことができるので好ましい。特に、原料を搬送すると同時に加熱、混合を行うことができる構造(以下、「バレル」という)を有するものが更に好ましい。
【0033】
更に、二以上のスクリューを有する耐圧容器からなる押出機が、好ましく用いられる。二以上のスクリューを有する押出機は、単一のスクリューからなる押出機と比較すると、搬送力・混合力が優れ、より安定な製造を可能とする。上記バレルに二以上のスクリューを有する押出機が特に好ましく用いられる。
【0034】
一方、マトリックス混合物の固化は、通常冷却された冷媒を用いて行われる。このため、冷却槽に冷媒を入れ、適宜低温に冷却しておく。冷媒としては、人に害を与えないものであって、マトリックス材を溶解せず、かつ、得られる粉末の表面から容易に除去することができるものを選ぶことが望ましく、具体的には、エタノール、イソプロピルアルコールのようなアルコール等を挙げることができる。これらの冷媒の冷却方法は、特に限定されるものではなく、ドライアイス等による冷却、またはクーラー等の装置による冷却等、設備に応じて自由に選択できる。
【0035】
冷却温度は、押出機のダイから押し出された均一混合物が急激に冷却され、固化するのに十分な温度、かつ、得られた固形物が軟化しない温度であり、具体的には、約−10〜−30℃とすると良い。ここで得られる固形物は、ポリフェノールなどを封入したマトリックス材が急激に冷され固化したものである。尚、押し出しを行う圧力は、原料の種類や押出機の機種によって異なるが、ポリフェノールなどを封入したマトリックス材がフィラメント状に連続的に押出機のダイから押し出される圧力であればよく、具体的には、押し出しプレート付きの耐圧容器からなる押出機を用いる場合には、該押出機を密閉後、窒素ガスを導入する等の手段により約5〜50psigの圧力をかけると良い。
【0036】
均一混合物を押し出しながら急激に冷却して得られた固形物は、撹拌等の手段により、切断または粉砕され、ロックイン型粉末が形成される。得られた粉末は、遠心分離等の手段によって粉末と冷媒とに分離される。粉末の再固結を防止するため、ケーキング防止剤を添加すると良い。ケーキング防止剤としては、二酸化ケイ素、第三硫酸カルシウム、第三リン酸カルシウム等を用いることができる。ケーキング防止剤の添加量は、全重量に対し、約0.1〜1重量%とすると良い。
【0037】
次いで、粉末の乾燥を行う。乾燥の方法としては、特に限定されないが、粉末の粒子構造を破壊しない方法を選択することが必要であり、好ましくは、真空回転乾燥機等の手段による減圧乾燥が好ましい。こうして得られる粉末の水分含量は、約6重量%以下となるようにすることが好ましい。更に、必要に応じて、篩別等を行い、ロックイン型粉末を得ることができる。
【0038】
ロックイン型粉末の平均粒径は、特に限定されるものではないが、香粧品基材などとの均一混合性、ポリフェノールの使用時における消臭機能及び抗酸化機能の保持性、使用時の触感などから、通常、例えば2〜250μm程度の大きさとされる。
こうして得られたロックイン型粉末は、粉末パック、美白パウダー、粉末入浴剤、錠剤入浴剤、バブルバス、デオドラントパウダー、粉末洗剤、自動食器洗い機用洗剤、粉末漂白剤、ヌメリ取り剤、入れ歯洗浄剤などを初めとする種々の固体製剤とされた香粧品に配合される、その主な目的は香粧品の使用時に消臭効果を付与することであるが、また、ポリフェノール類に香料を共存させてある場合には、使用時に香気を付与する目的でもある。特に、粉末入浴剤あるいは錠剤タイプの入浴剤においては、基材として硫酸ナトリウムあるいは発泡性の入浴剤である場合には硫酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムが用いられ、また洗剤においては界面活性剤の外、ビルダーとして硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが用いられ、さらには酵素などの添加剤も用いられている。ポリフェノール類が封入されたロックイン型粉末の場合には、このような基材化合物に対し、ポリフェノール類が影響を受けないため、長期保存後に使用した際においても良好な消臭機能を有する。特にアルカリ成分が配合される香粧品、とくに入浴剤或いは洗剤は良好な消臭機能を保持する。このため、香粧品としては、入浴剤、洗剤が好ましいものの例として挙げられる。
【0039】
本発明で使用する成分である塩基性物質(アルカリ成分)は、公知の化学物質であり、本発明の所期の目的を達成することができる限り、特に制限されない。具体的な塩基性物質としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸グアニジン等の炭酸塩;もしくは炭酸水素塩;ホウ酸カリウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩;珪酸カリウム、1号珪酸ナトリウム、2号珪酸ナトリウム、3号珪酸ナトリウム、オルト珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム等の珪酸塩;リン酸1水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、過硫酸カリウム、モノ過
硫酸水素カリウムなどが挙げられる。
この塩基性物質の配合量は、本発明とくに制限されないのであって、例えばロックイン型粉末を含有する固形製剤の水溶液がpH7を超え13以下とすることが好ましく、さらにはpH8〜13とすることが好ましい。
【0040】
本発明の固形製剤には、さらに酵素を含有させてもよい。この酵素は、洗剤に通常用いられる酵素でよく、悪臭成分を分解するなど消臭機能を有する酵素でもよく、フェノール性化合物の酸化酵素でもよい。これら酵素は公知である。それら酵素としては、例えば、カーボヒドラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、フィターゼ、ラッカーゼ等が挙げられる。
前記酵素の配合量は、用いるポリフェノールの種類や量などにより変動されるので、一概に規定することができないのであり、所期の目的を達成できる限り特に制限されない。
【0041】
界面活性剤としては、ノニオンタイプ(ポリオキシエチレンアルキルエーテルや脂肪酸アルキロールアミドなど)、アシルグルタミン酸タイプなどをあげることができ、これらの界面活性剤を1種または2種以上組み合わせて用いることが好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの例としては、ポリオキシエチレンステアリル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油などがあげられる。脂肪酸アルキロールアミドの例としては、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドがあげられる。アシルグルタミン酸タイプとしては、炭素数12〜18の飽和及び不飽和脂肪酸、これらの混合物であるヤシ油脂肪酸、硬化ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、硬化パーム油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸などのグルタミン酸エステルが挙げられ、具体的には、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、ラウロイル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸・硬化牛脂脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸カリウムなどがあげられる。
【0042】
本発明の香粧品配合用固形製剤が、粉末、カプセルあるいは錠剤タイプ入浴剤である場合には、硫酸ナトリウムあるいは発泡剤である炭酸水素ナトリウムからなる基材に、前記ロックイン型粉末や香料と必要に応じ、保湿剤、酵素剤、結合剤、崩壊剤、分散剤、色素剤、界面活性剤、緩衝剤、安定化剤、pH調整剤、生薬成分等を配合することができる。
【0043】
また、本発明の香粧品用固形製剤が粉末あるいは錠剤タイプ洗剤である場合には、界面活性剤とビルダーに前記ロックイン型粉末や香料並びに必要に応じ保湿剤、酵素剤、崩壊剤、色素剤、緩衝剤、アルカリ剤、漂白剤、柔軟化剤、沈着防止剤、粉末化剤等を配合することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明の香粧品用固形製剤は、ポリフェノール類がロックイン型カプセル中に封じ込められているため、ポリフェノール類が安定して保持され、長期間保存した後においても、香粧品が着色することがなく、優れた外観を保持することができる。しかも香粧品の使用時に消臭効果および抗酸化機能が保持されている。香粧品に用いられている基材による影響をほとんど受けないという特徴もある。香粧品が入浴剤あるいは洗剤である場合、特に優れた効果を得ることができる。また、香粧品中にアルカリ成分が配合されているときには、ロックイン型粉末から開放されたポリフェノール類と共同して優れた消臭効果および抗酸化機能を発揮することができる。
また、本発明の香粧品あるいは固形製剤に香料が用いられているときには、香料がロックイン型カプセル中に封じ込められているため、香料が香粧品に用いられている基材による影響をほとんど受けず、これにより保存時の香りの低下や香質の変化がない香粧品用固形製剤を得ることができる。
たとえば、香料を含有する入浴剤について説明すると、硫酸ナトリウム49.0重量部、炭酸水素ナトリウム49.0重量部、無水ケイ酸1.0重量部と香料1.0重量部からなる入浴剤ベース99.0重量部に本発明のカテキン、没食子酸、コーヒー生豆抽出物のそれぞれを0.1重量部封入したポリフェノール含有ロックイン型粉末1.0重量部を添加し均一に混合して得られる3種類の入浴剤を25℃および50℃で1ヶ月保存したときには、3種類の入浴剤とも香質の変化はまったくないことが判った。一方、上記入浴剤ベース99.9重量部に、カテキン、没食子酸、コーヒー生豆抽出物のそれぞれをを0.1重量部配合して調製した3種類の入浴剤を、25℃および50℃で1ヶ月保存すると、3種類の入浴剤とも香質の変化が起きることが判った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
(実施例)
以下に、本発明を実施例、比較例、試験例、製造例などによって具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されるものでない。
【0046】
実施例1:ロックイン型粉末Aの製造
イソマルト(パラチニット)66.79重量部、化工デンプン(ピュリティガム59:ナショナルスターチアンドケミカル社製)0.95重量部、デキストリン(パインデックス#1:松尾化学工業社製)22.26重量部を、イオン交換水27mLに分散させたカテキン(ポリフェノールパウダーGTP90:あいや社製)10重量部とともに撹拌しながら加熱し、均一な溶融飴状物を得た。次いで、その溶融物を、押出機を用いて、−10℃に冷却されたイソプロピルアルコール中にフィラメント状に押し出し、急速冷却した後、撹拌、粉砕した。次いで、その粉砕物を遠心分離処理によりイソプロピルアルコールを除去して、均一なロックイン型粉末Aを得た。
【0047】
実施例2:ロックイン型粉末Bの製造
イソマルト(パラチニット)66.79重量部、化工デンプン(ピュリティガム59:ナショナルスターチアンドケミカル社製)0.95重量部、デキストリン(パインデックス#1:松尾化学工業社製)22.26重量部を、イオン交換水27mLに分散させた没食子酸(純正化学社製)10重量部とともに撹拌しながら加熱し、均一な溶融物を得た。次いで、その溶融物を、押出機を用いて、−10℃に冷却されたイソプロピルアルコール中にフィラメント状に押し出し、急速冷却した後、撹拌、粉砕した。次いで、遠心分離によりイソプロピルアルコールを除去して、均一なロックイン型粉末Bを得た。
【0048】
製造例1 コーヒー生豆抽出物の調製
生コーヒー豆を粉砕機で粉砕後(メッシュ5mm)、水を加えて85〜95℃で2時間抽出する。抽出物を濾過後、濾液をXAD−2(オルガノ(株)製)カラムに吸着させる。水で洗浄した後、メタノールで溶出させたものを濃縮乾固し、コーヒー生豆抽出物を得た。
【0049】
実施例3:ロックイン型粉末Cの製造
イソマルト(パラチニット)66.79重量部、化工デンプン(ピュリティガム59:ナショナルスターチアンドケミカル社製)0.95重量部、デキストリン(パインデックス#1:松尾化学工業社製)22.26重量部を、イオン交換水27mLに分散させたコーヒー生豆抽出物10重量部(製造例1)とともに撹拌しながら加熱し、均一な溶融物を得た。次いで、その溶融物を、押出機を用いて、−10℃に冷却されたイソプロピルアルコール中にフィラメント状に押し出し、急速冷却した後、撹拌、粉砕した。次いで、遠心分離によりイソプロピルアルコールを除去して、均一なロックイン型粉末Cを得た。
【0050】
実施例4:食器洗い機粉末洗剤(L)の製造
食器洗い機粉末洗剤(チャーミー:ライオン社製)99.0重量部に実施例1で製造したロックイン型粉末A1.0重量部を添加し均一に混合した。
【0051】
実施例5:食器洗い機粉末洗剤(M)の製造
食器洗い機粉末洗剤(チャーミー:ライオン社製)99.0重量部に実施例2で製造したロックイン型粉末B1.0重量部を添加し均一に混合した。
【0052】
実施例6:食器洗い機粉末洗剤(N)の製造
食器洗い機粉末洗剤(チャーミー:ライオン社製)99.0重量部に実施例3で製造したロックイン型粉末C1.0重量部を添加し均一に混合した。
【0053】
比較例1:食器洗い機粉末洗剤(P)の製造
市販の食器洗い機粉末洗剤(チャーミー:ライオン社製)99.9重量部にカテキン(ポリフェノールパウダーGTP90:あいや社製)0.1重量部を添加し均一に混合した。
【0054】
比較例2:食器洗い機粉末洗剤(Q)の製造
食器洗い機粉末洗剤(チャーミー:ライオン社製)99.9重量部に没食子酸0.1重量部を添加し均一に混合した。
【0055】
試験例1
製造直後の食器洗い機粉末洗剤(L)〜(N)、(P)、(Q)およびそれらを容器に収めた状態で5℃、25℃、50℃にて1ヶ月保存し後、それぞれの食器洗い機粉末洗剤(L)〜(N)、(P)、(Q)の外観および匂いを、次の評価基準に基づいて官能にて評価した。評価結果は、5名の平均点によった。
結果を表2に示す。
【0056】
表1 食器洗い機粉末洗剤の組成(重量部)



表中、実施例1の粉末「1.0」には、ポリフェノール含量が0.1重量部含まれる(ほかの実施例も同様)。
【0057】
評価基準(5℃保存品と比較して)
外観
A 着色(変色)が全く認められない〔変化なし〕
B 極く僅かに着色(変色)した
C 僅かに着色(変色)した
D かなり着色(変色)した
E 完全に着色(変色)した
匂い
A 匂いの変化が全く認められない〔変化なし〕
B 極く僅かに匂いが変化した
C 僅かに匂いが変化した
D かなり匂いが変化した
E 完全に匂いが変化した
【0058】
表2 食器洗い機粉末洗剤の評価

【0059】
表2から、従来法で製造された食器洗い機粉末洗剤では、50℃1ヶ月の保存後においては、着色(変色)の程度が高く外観が極めて悪くなり、また匂いも変化し、匂いのバランスがとれていないのに対し、本発明のロックイン型粉末が配合された食器洗い機粉末洗剤においては、50℃1ヶ月間の保存後においても、保存前の外観や匂いと同様の外観や匂いを保持していることが分かる。
【0060】
比較例3:衣料用粉末洗剤(P)の製造
衣料用粉末洗剤(部屋干しトップ:ライオン社製)99.9重量部にカテキン(ポリフェノールパウダーGTP90:あいや社製)0.1重量部を添加し均一に混合した。
【0061】
比較例4:衣料用粉末洗剤(Q)の製造
衣料用粉末洗剤(部屋干しトップ:ライオン社製)99.9重量部に没食子酸0.1重量部を添加し均一に混合した。
【0062】
比較例5:衣料用粉末洗剤(R)の製造
衣料用粉末洗剤(部屋干しトップ:ライオン社製)99.9重量部に製造例1のコーヒー生豆抽出物0.1重量部を添加し均一に混合した。
【0063】
実施例7:衣料用粉末洗剤(L)の製造
市販の衣料用粉末洗剤部屋干しトップ(ライオン社製)99.0重量部に実施例1で製造したロックイン型粉末A1.0重量部を添加し均一に混合した。
【0064】
実施例8:衣料用粉末洗剤(M)の製造
市販の衣料用粉末洗剤部屋干しトップ(ライオン社製)99.0重量部に実施例2で製造したロックイン型粉末B1.0重量部を添加し均一に混合した。
【0065】
実施例9:衣料用粉末洗剤(N)の製造
市販の衣料用粉末洗剤部屋干しトップ(ライオン社製)99.0重量部に実施例3で製造したロックイン型粉末C1.0重量部を添加し均一に混合した。
【0066】
表3 衣料用粉末洗剤の組成(重量部)

【0067】
試験例2
衣料用粉末洗剤の安定性試験
製造直後の衣料用粉末洗剤(P)〜(R)、(L)〜(N)およびそれらを容器に収めた状態でを5℃、25℃、50℃にて1ヶ月保存した後、衣料用粉末洗剤(P)〜(R)、(L)〜(N)それぞれの外観および匂いを、試験例1と同様に評価した。
結果を表4に示す。
【0068】
表4 衣料用粉末洗剤の評価


表4から、従来法で製造された衣料用粉末洗剤では、50℃1ヶ月の保存後においては、着色(変色)の程度が高く外観が極めて悪くなり、また匂いも変化し、匂いのバランスがとれていないのに対し、本発明のロックイン型粉末が配合された衣料用粉末洗剤においては、50℃1ヶ月間の保存後においても、保存前の外観や匂いと同様の外観や匂いを保持していることが分かる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェノール類を含有することを特徴とするロックイン型粉末。
【請求項2】
ロックイン型粉末全重量に対するポリフェノール類含有量が1〜50重量%である請求項1記載のロックイン型粉末。
【請求項3】
フレーバー及び/又はフレグランスを更に含有する請求項1又は2記載のロックイン型粉末。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のロックイン型粉末を含有することを特徴とする固形製剤。
【請求項5】
固形製剤が、香粧品であることを特徴とする請求項4記載の固形製剤。
【請求項6】
香粧品が、入浴剤又は洗剤であることを特徴とする請求項5記載の固形製剤。
【請求項7】
塩基性成分を更に含有する請求項4〜6のいずれか1項記載の固形製剤。
【請求項8】
酵素を更に含有する請求項4〜6のいずれか1項記載の固形製剤。

【公開番号】特開2007−254339(P2007−254339A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79796(P2006−79796)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】