説明

ロックシステム

【課題】IDキーの不正使用者に対して効果的に警告を促すことができるロックシステムを提供する。
【解決手段】錠前の施解錠条件を設定するとともに、施解錠条件を満足しないときの対抗動作内容として威嚇動作と使用制限動作の少なくとも一方を設定部11から設定する。制御部14は、情報読書部13によるIDキー20のキーデータの読み取り時に、施解錠条件を満足せず対抗動作内容が威嚇動作の場合には、IDキー20のキーデータ読み取りエラー時とは異なる音や表示で威嚇するように報知部15を制御し、施解錠条件を満足せず対抗動作内容が使用制限動作の場合には、IDキー20による動作を無効にする使用禁止IDをIDキー20に書き込むように情報読書部13を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば一般住宅、集合住宅などの各種建物に採用され、錠前の施解錠に必要なキーデータ(暗証情報)を記憶したIDキーを用い、IDキーから取得したキーデータを正常に認証したときのみ錠前を施解錠するロックシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ホテルやオフィスビル等の商業施設や公共施設の入出口、集合住宅や一般住宅のエントランスや玄関等にはカード式電気錠が広く普及している。このカード式電気錠は、各所の電気錠毎に予め割り当てられた特定の暗号や施解錠情報等の各種データが記憶されたカード状記憶媒体を鍵カードとして用い、この鍵カードに記憶された各種データ(例えば特定の暗号による施解錠データ)を読み取り、読み取った各種データを予め登録された情報と照合して正当性を判別し、正常に認証した場合のみ錠前の施解錠を行うものである。
【0003】
このようなカード式電気錠は、ピッキング等の不正な施解錠行為を防止し、且つ、鍵の複製が非常に困難なため、セキュリティー面において信頼されている。また、各鍵カード毎の各種データをホストコンピューターで管理しているため、データ破損等の心配がなく、鍵カードを紛失した場合においても鍵カードを再発行することが可能である。そして、このようなカード式電気錠を用いたカードロックシステムとしては、例えば下記特許文献1に開示される出入管理システムが知られている。
【0004】
特許文献1に開示される出入管理システム101は、図3に示すように、出入管理ゲートとしてのドア102と、ドア102に取り付けられた電気錠103と、ドア102を通過しようとする人の個人情報を識別する複数の個人識別装置として作用する複数の磁気カードリーダ104及び105と、これら複数の磁気カードリーダ104及び105に接続され、電気錠103を制御するカードコントローラ106とを備えて概略構成される。
【0005】
カードコントローラ106は、電気錠103に接続された唯一の電気錠駆動部K(104,105)と、複数の磁気カードリーダ104及び105のうち何れかが識別した個人情報が、ドア103の通過を許可されている人の情報か否かを判定し、通過を許可されている人の情報であれば、電気錠駆動部K(104,105)に電気錠103を駆動する信号を発生させ、ドア103を開にする判定部107とを有している。また、カードコントローラ106には、管理ソフトウエアを搭載したコンピュータ108が通信ケーブル109で接続されている。
【特許文献1】特開2001−241226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この種の従来のカードロックシステムでは、システムに未登録のIDキーからキーデータ(暗証情報)を取得しても、使用者に対してエラーを通知するだけであり、効果的に威嚇して警告を促す機能を特に備えていなかった。
【0007】
そして、エラー通知機能を有する従来のカードロックシステムでは、IDキーを紛失した場合、そのIDキーをリーダに接近させてキーデータを読み込ませることで不正侵入される虞があり、不正入手したIDキーで解錠できるドアを探す等の不正使用者の行動に対抗することができなかった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、不正使用者に対して効果的に警告を促すことができるロックシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載されたロックシステムは、錠前の施解錠に必要なキーデータを記憶したIDキーを用い、該IDキーのキーデータの正当性を判別し、該キーデータを正常に認証したときのみ前記錠前を施解錠するロックシステムにおいて、
前記錠前の施解錠条件を設定するとともに、該施解錠条件を満足しないときの対抗動作内容として前記IDキーの使用者を威嚇する威嚇動作と前記IDキーの使用を停止する使用制限動作の少なくとも一方を設定する設定部と、
前記IDキーに記憶されたキーデータを読み込むとともに、該IDキーへの情報の書き込みが可能な情報読書部と、
前記情報読書部による前記IDキーのキーデータの読み取り時に、前記施解錠条件を満足せず対抗動作内容が威嚇動作の場合には、前記IDキーのキーデータ読み取りエラー時とは異なる音や表示で威嚇するように報知部を制御し、前記施解錠条件を満足せず対抗動作内容が使用制限動作の場合には、前記IDキーによる動作を無効にする使用禁止IDを当該IDキーに書き込むように前記情報読書部を制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のロックシステムによれば、予め設定された特殊運用モード時にIDキーが操作されると、施解錠条件を満足しないときに対抗動作内容に基づく威嚇動作や使用制限動作を行うので、不審者の使用可能なリーダの探索に対して大きな威嚇となり、IDキーの不正使用者に対して不正使用の繰り返し使用や侵入を未然に防ぐことができ、且つ、不正入手したIDキーでの利用を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明に係るロックシステムの概略構成を示すブロック図、図2は本発明に係るロックシステムの動作フローチャートである。
【0012】
図1に示すように、本例のロックシステム1は、リーダ10とIDキー20とを備えて概略構成される。まず、リーダ10の構成について説明する。図1に示すように、リーダ10は、設定部11、記憶部12、情報読書部13、制御部14、報知部15を備えている。
【0013】
設定部11は、例えばテンキーや操作ボタンなどの各種入力キーや液晶表示器などの表示器を備えて構成され、表示器の表示画面を見ながら所定手順による使用者の入力操作に基づき、通常運用モードと特殊運用モードの2種類のモードの何れかを選択し、選択したモードにおける錠前の施解錠制御に関する各種設定を行っている。
【0014】
本例において、通常運用モードは、例えば使用者が在宅している場合などのように、使用者がIDキー20を使用する状況時において、通常の施解錠操作により錠前の施解錠制御が行えるモードである。
【0015】
また、特殊運用モードは、例えば使用者が不在の場合や就寝時などのように、使用者がIDキー20を使用しない状況時において、IDキー20が操作されても所定の施解錠条件を満たさなければ錠前の施解錠を行わないモードである。
【0016】
さらに詳しく説明すると、特殊運用モードは、IDキー20が不正使用されることを防止すためのモードである。この特殊運用モードでは、例えば使用者の外出時間から帰宅時間まで間や在宅中における就寝時間帯など使用者の生活状況の中で使用しない時間帯を規定する時間条件、異なる建物や違う階層といった明らかに異なるIDキー20の使用を禁止するための使用禁止条件など、生活習慣に応じて使用者が設定部11を入力操作して各種施解錠条件を設定する。
【0017】
また、この特殊運用モードでは、特殊運用モード中にIDキー20を不正使用した不正使用者に対する対抗動作を行うための対抗動作内容が設置環境や運用状況などに応じて適宜設定される。この対抗動作内容としては、例えばブザー音などの発報やLED点灯などの威嚇動作、IDキー20による動作を無効にするための使用制限動作がある。尚、この特殊運用モードの解除は、例えば設定部11の表示器にモード選択画面を表示させた状態で通常運用モードに切り替えるなど、予め決められた操作手順に従って使用者による設定部11の入力操作によって行うことができる。
【0018】
記憶部12は、例えば磁気的、光学的記憶媒体若しくはROM、RAMなどの半導体メモリで構成される。この記憶部12は、IDキー20毎に割り当てられるキーデータが正当であるか否かを判別するための認証用のキーデータ、設定部11で設定された特殊運用モード時の施解錠条件や対抗動作内容などの各種設定内容、モニタ情報としての状態信号(扉の開閉状態信号や錠前の施解錠状態信号)などの錠前の施解錠制御に関する各種データを記憶している。
【0019】
情報読書部13は、IDキー20との間で非接触通信により情報の読み書きを行うリード/ライト機能を備えている。この情報読書部13では、IDキー20がリーダ10に近接したときに、IDキー20のキーデータを非接触で読み取り、この読み取ったキーデータを制御部14に出力している。また、情報読書部13は、特殊運用モード中で施解錠条件を満足せず、対抗動作内容として使用制限動作が設定されているときに、IDキー20による動作を無効にする情報(使用禁止ID)を、制御部14の制御によりIDキー20に書き込んでいる。
【0020】
制御部14は、例えばCPUやROM、RAMなどのマイクロコンピュータで構成され、施解錠操作時にIDキー20から読み取ったキーデータと記憶部12に記憶された認証用のキーデータとを照合してキーデータの正当性を判別している。そして、制御部14は、通常運用モード時でキーデータを正常に認証したときに、現在の錠前や扉の状態に応じて錠前を施解錠制御している。また、制御部14は、特殊運用モード時でキーデータを正常に認証し、かつ施解錠条件を満足しているときに、現在の錠前や扉の状態に応じて錠前を施解錠制御している。
【0021】
さらに、制御部14は、特殊運用モード時で施解錠条件を満足しないときに、対抗動作内容に応じた制御を行う。すなわち、対抗動作内容として威嚇動作が設定されているときには、威嚇動作を行うための威嚇実行信号を報知部15に出力する。また、対抗動作内容として使用制限動作が設定されているときは、IDキー20による動作を無効にするための情報(使用禁止ID)をIDキー20に書き込むように情報読書部13を制御する。
【0022】
さらに、制御部14は、情報読書部13がIDキー20からキーデータとともに使用禁止IDを読み取ると、運用モードに関係なくIDキー20による錠前の施解錠動作を禁止制御し、威嚇動作を行うための威嚇実行信号を報知部15に出力する。これにより、報知部15の鳴動手段15aと表示手段15bが駆動制御され、威嚇動作を実行する。
【0023】
報知部15は、IDキー20のキーデータの読み込み時にエラー音や特殊運用モード時に威嚇するための警報音を発報する鳴動手段15aと、例えばLEDなどの点灯/点滅表示可能な表示手段15bを備えて構成される。報知部15は、鳴動手段15aや表示手段15bの駆動条件を設定部11から予め設定しておき、制御部14から威嚇実行信号が入力されたときに、駆動条件に基づいて鳴動手段15aや表示手段15bの駆動制御を行う。
【0024】
次に、IDキー20の構成について説明する。IDキー20は、例えばリモコンキーや非接触式カードなどで構成され、上述したリーダ10と非接触により各種情報の送受を行うためのリード/ライト機能を有している。また、IDキー20は、例えばICチップやROM,RAMなどの半導体メモリなどからなる記憶部21を備えている。
【0025】
記憶部21には、正当なIDキー20であるか否かを認証するため、例えば部屋番号、機器番号などの機器情報や錠前の施解錠に必要な暗証情報などの施解錠情報からなるキーデータが記憶されている。このIDキー20のキーデータは、リーダ10に近接させて非接触通信を行うことでリーダ10に送出される。
【0026】
次に、上記構成によるロックシステム1の運用時におけるリーダ10の動作について、図2を参照しながら説明する。本例のロックシステム1は、初期運用時において通常運用モードが設定されている。特殊運用モードで運用する場合には、設定部11からモードを特殊運用モードに切り替え、施解錠条件と対向動作内容とを設定しておく。
【0027】
図2に示すように、実際の運用において、リーダ10にIDキー20を近接させてIDキー20のキーデータの読み取りを開始すると(ST1)、特殊運用モードか否かを判別する(ST2)。通常運用モードと判別すると(ST2−No)、通常運用動作に移行し、IDキー20からのキーデータの読み取りが完了したか否かを判別する(ST3)。IDキー20からのキーデータの読み取り完了と判別すると(ST3−Yes)、そのキーデータを正常に認証したか否かを判別する(ST4)。そして、キーデータを正常に認証したと判別すると(ST4−Yes)、現在の錠前や扉の状態に応じて錠前を施解錠するべく、解錠信号又は施錠信号を不図示の電気錠に出力する(ST5)。
【0028】
尚、IDキー20からのキーデータの読み取りが完了せず、読み取りエラーと判別すると(ST3−No)、キーデータの再読み取りを実行させるべく、報知部15によるブザーの鳴動やLEDの点灯によりエラーの旨を報知する(ST6)。また、キーデータが正常に認証されず、異常と認証したときにも、報知部25によるブザーの鳴動やLEDの点灯によりエラーの旨を報知する(ST6)。
【0029】
ST2において、特殊運用モードと判別すると(ST2−Yes)、施解錠条件を満足するか否かを判別する(ST7)。施解錠条件を満足すると判別すると(ST7−Yes)、ST3の動作に移行し、通常運用モードと同様の動作が実行される。これに対し、施解錠条件を満足しないと判別すると(ST7−No)、対抗動作内容の判別を行う(ST8)。即ち、対抗動作内容が「威嚇動作」か「使用制限動作」のどちらかを判別する。
【0030】
そして、対抗動作内容が「威嚇動作」と判別すると(ST8−威嚇)、エラー時とは区別された報知部15によるブザーの鳴動やLEDの点灯により威嚇動作を開始する(ST9)。具体的に、ブザーの場合、エラー時に「ピッ」等の短く高い音で鳴動し、威嚇時には「ビーッ」等の大きく長い音で鳴動する。また、LEDの場合、エラー時に短く点灯し、威嚇時には点滅を長時間繰り返す。そして、禁止動作の対抗内容の設定で定めた威嚇時間が経過すると、初期動作へ復帰する。
【0031】
また、対抗動作内容が「使用制限動作」と判別すると(ST8−使用制限)、IDキー20による動作を無効にするための使用禁止IDをIDキー20に書き込む(ST10)。これにより、使用禁止IDが書き込まれたIDキー20は、他のリーダ10に近接させて非接触通信を行った場合、リーダ10がこのIDキー20による動作を無効とし、報知部15の鳴動手段15aと表示手段15bによる威嚇動作を実行し、錠前の施解錠制御を禁止する。
【0032】
尚、図2に示す動作例では、ST8において威嚇動作と使用制限動作とを判別し、設定された対抗動作内容に応じて処理を行っているが、使用制限動作と威嚇動作とを同時に設定することも可能である。また、本例では、リーダ10に設定部11を備えた構成として説明したが、例えばリーダ10と別体で構成された設定器に設定部11の機能を持たせる構成としても良い。
【0033】
このように、上述したロックシステム1では、使用者が通常運用モードと特殊運用モードの何れのモードで運用するかを予め設定しておき、IDキー20からキーデータの読み取りを開始した際に現在のモードがどちらのモードであるかを判別する。そして、モードの判別結果、通常運用モードである場合は、読み取ったキーデータが正当であるか否かを認証し、その認証結果に基づいて施解錠制御を行う。これに対し、特殊運用モードである場合は、予め使用者によって設定された施解錠条件を満足するか否かを判別し、施解錠条件を満足する場合は通常運用モードと同様の施解錠制御を行い、施解錠条件を満足しない場合は、対抗動作内容に応じて威嚇動作や使用制限動作を選択的に実行して威嚇したり、IDキー20による動作を無効とするように使用制限を掛ける。
【0034】
これにより、不審者の使用可能なリーダの探索に対して大きな威嚇となり、IDキーを使用して不正行動を繰り返す不正使用者の侵入を未然に防ぐことができる。また、不正入手したIDキーでの悪戯を軽減することができる。さらに、施解錠条件やこの施解錠条件を満足しないときの対抗動作内容を使用者が設定できるので、対抗動作内容を威嚇のみから使用停止まで、用途に応じて使い分けることができる。
【0035】
そして、このようなIDキーの不正使用者に対する威嚇機能とIDキーの使用制限機能とをロックシステム自体に兼備しているので、例えばセンサーライト、ダミーカメラなどの不正使用者を威嚇するための機器を別途接続する必要がなく、効果的に不正使用者を威嚇でき、優れた防犯性を備えたロックシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るロックシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係るロックシステムの動作フローチャートである。
【図3】従来のカードロックシステムの一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ロックシステム
10 リーダ
11 設定部
12 記憶部
13 情報読書部
14 制御部
15 報知部
15a 鳴動手段
15b 表示手段
20 IDキー
21 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠前の施解錠に必要なキーデータを記憶したIDキーを用い、該IDキーのキーデータの正当性を判別し、該キーデータを正常に認証したときのみ前記錠前を施解錠するロックシステムにおいて、
前記錠前の施解錠条件を設定するとともに、該施解錠条件を満足しないときの対抗動作内容として前記IDキーの使用者を威嚇する威嚇動作と前記IDキーの使用を停止する使用制限動作の少なくとも一方を設定する設定部と、
前記IDキーに記憶されたキーデータを読み込むとともに、該IDキーへの情報の書き込みが可能な情報読書部と、
前記情報読書部による前記IDキーのキーデータの読み取り時に、前記施解錠条件を満足せず対抗動作内容が威嚇動作の場合には、前記IDキーのキーデータ読み取りエラー時とは異なる音や表示で威嚇するように報知部を制御し、前記施解錠条件を満足せず対抗動作内容が使用制限動作の場合には、前記IDキーによる動作を無効にする使用禁止IDを当該IDキーに書き込むように前記情報読書部を制御する制御部とを備えたことを特徴とするロックシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−285000(P2007−285000A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113511(P2006−113511)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】