説明

ロボットの接触種類判別システム

【課題】簡単な構成で接触の種類を判別することができるロボットの接触種類判別システムを提供する。
【解決手段】本発明に係るロボットの接触種類判別システム100は、ロボット1への接触によって外力が作用する際に、接触の種類を判別する接触種類判別システムである。接触種類判別システム100は、ロボット1に搭載された、外力の力学特性を示す3軸方向以上の成分を検出する第1の検出部110と、第1の検出部110の検出結果に基づいて特徴量を算出する特徴量算出部152と、特徴量と予め接触の種類に対応するように取得したサンプル特徴量とをパターンマッチングし、ロボット1への接触の種類を判別する接触種類判別部153と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの接触種類判別システム及び当該接触種類判別システムを備えたロボット、ロボットの接触種類判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からロボットへの接触を検出することが可能なロボットが開示されている。例えば、特許文献1乃至4のロボットは、外郭表面に所謂タッチセンサを設けることで、ロボットへの人の接触を検出する構成とされている。
【0003】
しかし、例えばアーム部への接触を検出するには、アーム部全域にタッチセンサを設ける必要がある。そのため、配線の取り回しが複雑になったり、タッチセンサからの検出結果の処理が複雑になったりする。
【0004】
そこで、特許文献5のロボットは、関節部に各軸トルクセンサを設け、各軸トルクセンサからの出力の変化に基づいてアーム部への接触を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−326274号公報
【特許文献2】特開2008−149442号公報
【特許文献3】特開2009−45692号公報
【特許文献4】特開2006−172410号公報
【特許文献5】特開2008−229800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ロボットハンドを有するアーム部に人が接触する場合としては、握手する場合、ハンド部を握って引っ張る場合、ハンド部を握ってロボットを誘導する場合、ハンド部に物を手渡す場合、アーム部を叩く場合等が想定される。
しかし、特許文献5のロボットは、単にロボットへの接触があったか否かを検出することができる構成とされているだけで、接触の種類を判別することができる構成とされていない。
【0007】
本発明の目的は、このような問題を解決するためになされたものであり、簡単な構成で接触の種類を判別することができるロボットの接触種類判別システム及び当該接触種類判別システムを備えたロボット、並びにロボットの接触種類判別方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るロボットの接触種類判別システムは、ロボットへの接触によって外力が作用する際に、前記接触の種類を判別する接触種類判別システムであって、前記ロボットに搭載された、前記外力の力学特性を示す3軸方向以上の成分を検出する第1の検出部と、前記第1の検出部の検出結果に基づいて特徴量を算出する特徴量算出部と、前記特徴量と、予め前記接触の種類に対応するように取得したサンプル特徴量と、をパターンマッチングし、前記ロボットへの接触の種類を判別する接触種類判別部と、を備える。
このように、第1の検出部として外力の力学特性を示す3軸方向以上の成分を検出可能な力センサを用いることにより、少ないセンサでロボットへの接触の種類を判別可能とした。そのため、ロボットの構成の簡素化に寄与できる。すなわち、配線の本数を減少でき、しかも演算量を軽減することができる。
【0009】
前記特徴量算出部は、前記第1の検出部が検出した前記外力の力学特性である力成分の水平成分と鉛直成分を算出し、算出した前記水平成分と前記鉛直成分とを特徴量とし、前記接触種類判別部は、予め前記接触の種類及び前記特徴量に対応するように取得した、外力の力学特性である力成分の水平成分と鉛直成分とをサンプル特徴量に用いて、前記特徴量と、前記サンプル特徴量と、をパターンマッチングし、前記ロボットへの接触の種類を判別すること、が好ましい。
このとき、前記特徴量算出部は、前記水平成分と前記鉛直成分との微分成分及び積分成分を特徴量とすること、が好ましい。
【0010】
または、前記特徴量算出部は、前記第1の検出部が検出した前記外力の力学特性であるモーメントの水平軸回りの成分と鉛直軸回りの成分を算出し、算出した前記水平軸回りの成分と前記鉛直軸回りの成分とを特徴量とし、前記接触種類判別部は、予め前記接触の種類及び前記特徴量に対応するように取得した、外力の力学特性であるモーメントの水平軸回りの成分と鉛直軸回りの成分とをサンプル特徴量に用いて、前記特徴量と、前記サンプル特徴量と、をパターンマッチングし、前記ロボットへの接触の種類を判別すること、が好ましい。
このとき、前記特徴量算出部は、前記水平軸回り成分と前記鉛直軸回り成分との微分成分及び積分成分を特徴量とすること、が好ましい。
【0011】
または、前記特徴量算出部は、前記第1の検出部が検出した前記外力の力学特性である力成分の値をフーリエ変換して算出した前記外力の周波数特性を特徴量とし、前記接触種類判別部は、予め前記接触の種類及び前記特徴量に対応するように取得した、外力の周波数特性をサンプル特徴量に用いて、前記特徴量と、前記サンプル特徴量と、をパターンマッチングし、前記ロボットへの接触の種類を判別すること、が好ましい。
このとき、前記特徴量算出部は、前記外力の周波数特性の微分成分及び積分成分を特徴量とすること、が好ましい。
【0012】
または、前記特徴量算出部は、前記第1の検出部が検出した前記外力を示すベクトルを通る直線と前記ロボットの表面の交点又は前記外力が作用する位置を算出し、算出した前記交点又は前記位置を特徴量とし、前記接触種類判別部は、予め前記接触の種類及び前記特徴量に対応するように取得した、外力を示すベクトルを通る直線と前記ロボットの表面の交点又は外力が作用する位置をサンプル特徴量に用いて、前記特徴量と、前記サンプル特徴量と、をパターンマッチングし、前記ロボットへの接触の種類を判別すること、が好ましい。
【0013】
加えて、前記特徴量算出部は、前記ロボットの所定部位における予め設定されている目標位置の軌道からの変位を算出し、算出した前記変位を特徴量とし、前記接触種類判別部は、予め前記接触の種類及び前記特徴量に対応するように取得した、前記ロボットの所定部位における予め設定されている目標位置の軌道からの変位をサンプル特徴量に用いて、前記特徴量と、前記サンプル特徴量と、をパターンマッチングし、前記ロボットへの接触の種類を判別すること、が好ましい。
【0014】
さらに、前記ロボットの周辺情報を検出する第2の検出部を備え、前記特徴量算出部は、前記第2の検出部の検出結果に基づいて、前記ロボットに接触する人の顔の位置又は顔の向き又は手の位置又は手の向きの少なくとも一つを算出し、前記顔の位置又は前記顔の向き又は前記手の位置又は前記手の向きの少なくとも一つを特徴量とし、前記接触種類判別部は、予め前記接触の種類及び前記特徴量に対応するように取得した、人の顔の位置又は顔の向き又は手の位置又は手の向きの少なくとも一つをサンプル特徴量に用いて、前記特徴量と、前記サンプル特徴量と、をパターンマッチングし、前記ロボットへの接触の種類を判別すること、が好ましい。
このとき、前記特徴量算出部は、前記顔の位置又は前記顔の向き又は前記手の位置又は前記手の向きの少なくとも一つの微分成分及び積分成分を特徴量とすること、が好ましい。
【0015】
さらに、人の音声を検出する第3の検出部を備え、前記特徴量算出部は、前記第3の検出部の検出結果に基づいて音声認識を行い、音声の大きさ又は単語の使用頻度又は会話の内容を特徴量とし、前記接触種類判別部は、予め前記接触の種類及び前記特徴量に対応するように取得した、音声の大きさ又は単語の使用頻度又は会話の内容をサンプル特徴量に用いて、前記特徴量と、前記サンプル特徴量と、をパターンマッチングし、前記ロボットへの接触の種類を判別すること、が好ましい。
【0016】
前記接触種類判別部は、MTシステム、又はk−NN法、又はSVMを用いて、前記特徴量と、前記サンプル特徴量と、をパターンマッチングすること、が好ましい。
【0017】
前記第1乃至3のいずれかの検出部の検出結果に基づいて、前記パターンマッチングする前記サンプル特徴量を選定するマッチング選定部を備えること、が好ましい。
本発明に係るロボットは、上述のロボットの接触種類判別システムを備える。
【0018】
本発明に係るロボットの接触種類判別方法は、ロボットへの接触によって外力が作用する際に、前記接触の種類を判別する接触種類判別方法であって、前記外力が作用する位置より前記ロボットの基幹側に配置された、前記外力の力学特性を示す3軸方向以上の成分を検出する第1の検出部の検出結果に基づいて特徴量を算出する工程と、前記特徴量と、予め前記接触の種類に対応するように取得したサンプル特徴量と、をパターンマッチングし、前記ロボットへの接触の種類を判別する工程と、を備える。
このように、第1の検出部として外力の力学特性を示す3軸方向以上の成分を検出可能な力センサを用いることにより、少ないセンサでロボットへの接触の種類を判別可能とした。そのため、ロボットの構成の簡素化に寄与できる。すなわち、配線の本数を減少でき、しかも演算量を軽減することができる。
ここで、前記特徴量を算出する工程は、前記第1の検出部の検出結果をダウンサンプリングして得た結果に基づいて特徴量を算出する工程を備えること、が好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上、説明したように、本発明によると、簡単な構成で接触の種類を判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ロボットと人との接触行動を示す図である。
【図2】本発明に係る接触種類判別システムが搭載される、ロボットの制御系を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る第1の実施の形態の接触種類判別システムを概略的に示すブロック図である。
【図4】本発明に係る第1の実施の形態の接触種類判別システムにおいて、予め生成されるテンプレートを示す図である。
【図5】本発明に係る第1の実施の形態の接触種類判別方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る第2の実施の形態における異なる接触種類判別システムを示すブロック図である。
【図7】本発明に係る第4の実施の形態における接触種類判別システムを示すブロック図である。
【図8】本発明に係る第5の実施の形態における接触種類判別システムを示すブロック図である。
【図9】本発明に係る第6の実施の形態における接触種類判別システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
但し、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0022】
<第1の実施の形態>
本発明に係る第1の実施の形態のロボットの接触種類判別システム及び当該接触種類判別システムを備えたロボット、ロボットの接触種類判別方法を、以下に説明する。
本実施の形態のロボット1は、図1に示すように、所謂ヒューマノイドロボットである。ロボット1は、頭部2、胴体部3、アーム部4、脚部5等を備える。ロボット1は、頭部2と胴体部3、胴体部3とアーム部4、アーム部4と脚部5の連結部が可動な構成とされている。アーム部4は、ハンド部4a、下腕部4b、上腕部4c等を備え、各関節部が可動な構成とされている。脚部5は、足部5a、下腿部5b、上腿部5c等を備え、各関節部が可動な構成とされている。なお、ロボット1は、ヒューマノイドロボットに限定されない。
【0023】
このロボット1の制御系は、図2に示すように、第1の検出部110、第2の検出部120、第3の検出部130、第4の検出部140、制御部150、記憶部160、駆動部170を備える。このようなロボット1の要素を用いてロボットの接触種類判別システム(以下、単に接触種類判別システムと云う場合がある。)100は実現できる。すなわち、接触種類判別システム100は、第1の検出部110、制御部150、記憶部160を備える。なお、第2の検出部120、第3の検出部130、第4の検出部140の説明は、他の実施の形態で説明する。
【0024】
第1の検出部110は、外力の力学特性を示す3軸方向(X・Y・Z軸方向)以上の成分を検出可能な力センサである。本実施の形態の第1の検出部110としては、6軸力センサを用いている。6軸力センサは、X・Y・Z軸方向の力成分に加えて、X軸回りのモーメント、Y軸回りのモーメント、Z軸回りのモーメントを検出する。第1の検出部110は、検出した検出結果(検出信号)を制御部150に出力する。第1の検出部110は、1か所に作用する外力が複数の第1の検出部110に分散して伝わらず、1か所の第1の検出部110で略全て検出することができる部分に配置される。例えば、第1の検出部110は、ロボット1の手首部分、上腕部分、足裏と足首との間の部分にそれぞれ配置される。
【0025】
制御部150は、前処理部151、特徴量算出部152、接触種類判別部153を備える。制御部150には、第1の検出部110から検出信号が入力される。制御部150は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有する演算処理装置である。
【0026】
前処理部151は、第1の検出部110から入力される検出信号を平坦化するために、当該検出信号をフィルタリングするローパスフィルタである。前処理部151は、平坦化した検出信号を特徴量算出部152に出力する。
【0027】
特徴量算出部152は、前処理部151から入力される検出信号に基づいて特徴量を算出する。例えば、特徴量算出部152は、前処理部151から入力される検出信号に基づいて、人が接触して作用した外力の力学特性である力成分の水平成分と鉛直成分を算出する。具体的に云うと、特徴量算出部152は、図3に示すように、第1の検出部110が検出した3軸方向の力成分をワールド座標系に置き換える。そして、特徴量算出部152は、ワールド座標系に置き換えた3軸方向の力成分に基づいて、外力の水平成分(X軸とY軸とを含む平面上に作用する外力の分割成分)と鉛直成分(X軸とZ軸とを含む平面上に作用する外力の分割成分)とを算出する。なお、図3は、本実施の形態の接触種類判別システムの処理動作の主要部のみを示している。
【0028】
特徴量算出部152は、上述のように外力のワールド座標系での水平成分と鉛直成分をまとめてベクトルSfiltered(t)とし、当該ベクトルSfiltered(t)に対する微分成分udiff(t)及び積分成分uinteg(t)を算出する。
ここで、微分成分udiff(t)は[数1]で表され、積分成分uinteg(t)は[数2]で表される。
【数1】


【数2】

【0029】
特徴量算出部152は、微分成分udiff(t)及び積分成分uinteg(t)を特徴量とし、[数3]に示すようにベクトルuとする。
【数3】

【0030】
特徴量算出部152は、少なくてとも前処理部151から検出信号が入力されている間、断続的に上述の処理を行う。特徴量算出部152は、ベクトルuを接触種類判別部153に出力する。
【0031】
接触種類判別部153は、特徴量と、予め接触の種類に対応するように取得したサンプル特徴量と、をパターンマッチングし、ロボット1への接触の種類を判別する。ここで、接触種類判別部153は、例えばMT(マハラノビス・タグチ)システムを用いて、ロボット1への接触の種類を判別する。
【0032】
すなわち、接触種類判別部153は、記憶部160からサンプル特徴量を読み出す。記憶部160には、接触の種類に対応するサンプル特徴量が格納されている。例えば、判別するロボット1への接触の種類として、握手する場合、ハンド部4aを握って引っ張る場合、ハンド部4aを握ってロボット1を誘導する場合、ハンド部4aに物を手渡す場合、アーム部4を叩く場合を想定する。ここで、人がハンド部4aを握って握手し、そのときに作用する外力の力学特性である力成分のワールド座標系での水平成分と鉛直成分の微分成分及び積分成分をサンプル特徴量としたベクトルyを算出する。このベクトルyは例えば10ミリ秒毎(但し、算出間隔は任意に設定できる。)に算出し、そのときのベクトルyの平均値m、標準偏差σを算出する。この平均値m、標準偏差σ、及び[数4]を用いて基準化する。そのため、特徴量算出部152は、ベクトルyに対応するようにベクトルuを10ミリ秒毎に算出する。
【数4】


但し、i(i=1,2,・・・n)は、10ミリ秒毎にベクトルyを算出する際の算出順番を示す。j(j=1,2,・・・k)は、一つの接触の種類において複数回サンプリング(例えば、握手を複数回サンプリング)する際のサンプリングの順番を示している。
【0033】
[数4]を用いて基準化されたYij、[数5]及び[数6]で表される相関係数行列Rを用いて、逆行列R-1を算出する。
【数5】


【数6】

【0034】
このような工程を、握手に対して複数回繰り返し、図4に示すテンプレートを生成する。さらに接触の種類毎に複数回繰り返し、図4に示すテンプレートを接触の種類毎に生成する。このように生成したテンプレートは記憶部160に格納されている。
【0035】
接触種類判別部153は、記憶部160から平均値m、標準偏差σを読み出し、ベクトルuを[数7]を用いて基準化する。つまり、接触種類判別部153は、算出した10ミリ秒毎のベクトルuに対し、予め算出した全ての平均値m、標準偏差σを用いて基準化する。
【数7】

【0036】
接触種類判別部153は、記憶部160から逆関数R-1を読み出し、逆行列R-1、[数7]を用いて基準化されたU、Uの転置行列UT及び[数8]を用いて、マハラノビス距離D2を算出する。
【数8】

【0037】
このとき、接触種類判別部153は、マラハノビス距離D2が最も小さくなった際の逆行列R-1が属する接触の種類が、実際に人がロボット1へ接触した種類であると、判別する。このように、第1の検出部110として外力の力学特性を示す3軸方向以上の成分を検出可能な力センサを用いることにより、少ないセンサでロボットへの接触の種類を判別可能とした。そのため、ロボットの構成の簡素化に寄与できる。すなわち、配線の本数を減少でき、しかも制御部150の演算量を軽減することができる。
【0038】
また、接触種類判別部153は、MTシステムを用いて接触の種類を判別するので、少ない計算量で高い精度で接触の種類を判別することができる。但し、上記実施の形態では、MTシステムを用いたが、k−nn法(k nearest neighbors)を用いても良く、SVM(Support Vector Machine)のように学習機能を備えたシステムを用いて接触の種類を判別しても良い。
【0039】
ちなみに、特徴量算出部152は、図3に示すように、第1の検出部110の検出信号に基づいて特徴量を算出するのに加えて、第1の検出部110の検出信号をダウンサンプリングした後に特徴量を算出することが好ましい。接触種類判別部153は、第1の検出部110の検出信号に基づいて算出した特徴量を用いたパターンマッチングに加えて、第1の検出部110の検出信号をダウンサンプリングした後に算出した特徴量と、予め当該ダウンサンプリングした後に算出した特徴量に対応するようにサンプリングされたサンプル特徴量と、をパターンマッチングし、接触の種類を判別する。これにより、接触動作が変化した場合であっても、良好に接触の種類を判別することができる。
【0040】
本実施の形態では、外力の力学特性である力成分の水平成分と鉛直成分の微分成分及び積分成分を特徴量として用いているが、この限りでない。すなわち、6軸力センサは、上述のようにX軸回りのモーメント、Y軸回りのモーメント、Z軸回りのモーメントを検出することができるので、このような外力の力学特性であるモーメントの水平軸回りの成分と鉛直軸回りの成分の微分成分及び積分成分を特徴量として用いても、略同様に実施できる。
【0041】
本実施の形態では、外力の力学特性である力成分の水平成分と鉛直成分、又はモーメントの水平軸回りの成分と鉛直軸回りの成分の微分成分及び積分成分を特徴量として用いているが、この限りでない。すなわち、外力の力学特性である力成分の水平成分と鉛直成分、又はモーメントの水平軸回りの成分と鉛直軸回りの成分を特徴量として用いても良い。
【0042】
記憶部160は、ロボット1の制御を司るプログラム、及び上述した接触の種類に応じたテンプレート等が格納されている。駆動部170は、ロボット1の各関節部に設けられた、電動モータや減速機等である。駆動部170は、制御部150の制御信号に基づいて制御される。
【0043】
上述の接触種類判別システム100を用いて、本実施の形態のロボットの接触種類判別方法(以下、単に接触種類判別方法と云う場合がある。)は、以下のように実施される。なお、上述の接触種類判別システム100の説明と重複する説明は省略する。
【0044】
先ず、図5に示すように、ロボット1に外力が作用すると、外力が作用した位置より当該ロボット1の基幹側に配置された第1の検出部110は検出信号を制御部150に出力する(S1)。
次に、制御部150の前処理部151は、第1の検出部110から入力された検出信号をフィルタリングし、平坦化した当該検出信号を特徴量算出部152に出力する(S2)。
【0045】
次に、特徴量算出部152は、前処理部151から入力された検出信号に基づいて、外力の力学特性である力成分のワールド座標系での水平成分と鉛直成分を算出する。さらに特徴量算出部152は、外力の力学特性である力成分のワールド座標系での水平成分と鉛直成分の微分成分及び積分成分を特徴量とし、接触種類判別部153に出力する(S3)。
【0046】
接触種類判別部153は、特徴量算出部152から入力された、特徴量である外力の力学特性である力成分のワールド座標系での水平成分及び鉛直成分の微分成分及び積分成分と、記憶部160から読み出したサンプル特徴量と、をパターンマッチングし、最も近いサンプル特徴量が属する接触の種類が、実際に人がロボット1へ接触した種類であると、判別する(S4)。
【0047】
<第2の実施の形態>
本発明に係る第2の実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法を、以下に説明する。なお、第1の実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法と重複する説明は省略する。
【0048】
本実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法は、第1の検出部110が検出した外力の力学特性である力成分の値をフーリエ変換することで、当該外力の周波数特性を算出し、この外力の周波数特性を特徴量として用いる。すなわち、例えば握手する場合、ハンド部4aを握って引っ張る場合、ハンド部4aを握ってロボット1を誘導する場合、ハンド部4aに物を手渡す場合、アーム部4を叩く場合では、ロボット1に生じる振動(周波数)は異なるはずである。そこで、本実施の形態の特徴量算出部152は、接触することによって作用する外力の周波数特性を算出し、当該外力の周波数特性を特徴量とする。そのため、記憶部160には、予め接触の種類毎に複数回サンプリングを実施し、その際の周波数特性をサンプル特徴量として格納している。
【0049】
接触種類判別部153は、記憶部160からサンプル特徴量を読み出して、外力の周波数特性である特徴量と、サンプル特徴量と、をパターンマッチングし、最も近いサンプル特徴量が属する接触の種類が、実際に人がロボット1へ接触した種類であると、判別する。
【0050】
これにより、本実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法も、第1の検出部110として、外力の力学特性を示す3軸方向以上の成分を検出可能な力センサを用いることにより、少ないセンサでロボットへの接触の種類を判別可能とした。そのため、ロボットの構成の簡素化に寄与できる。すなわち、配線の本数を減少でき、しかも制御部150の演算量を軽減することができる。
【0051】
本実施の形態でも、接触種類判別部153はMTシステムを用いて、接触の種類を判別することが好ましい。これにより、少ない計算量で高い精度で接触の種類を判別することができる。勿論、k−nn法を用いても良く、SVMのように学習機能を備えたシステムを用いても良く、要するに一般的なパターン認識の技術を用いることができる。
【0052】
本実施の形態でも、特徴量算出部152は第1の検出部110の検出信号に基づいて特徴量を算出するのに加えて、第1の検出部110の検出信号をダウンサンプリングした後に特徴量を算出することが好ましい。接触種類判別部153は、第1の検出部110の検出信号に基づいて算出した特徴量を用いたパターンマッチングに加えて、第1の検出部110の検出信号をダウンサンプリングした後に算出した特徴量と、予め当該ダウンサンプリングした後に算出した特徴量に対応するようにサンプリングされたサンプル特徴量と、をパターンマッチングし、接触の種類を判別する。これにより、接触動作が変化した場合であっても、良好に接触の種類を判別することができる。
【0053】
本実施の形態では、外力の周波数特性を特徴量としたが、外力の周波数特性の微分特性及び積分特性を特徴量として用いても良い。
本実施の形態では、外力の周波数特性に基づく特徴量のみで接触の種類を判別しているが、図6に示すように、外力の力学特性である力成分(及び/又はモーメント)の水平成分(水平軸回りの成分)と鉛直成分(鉛直軸回りの成分)の微分成分及び積分成分を特徴量とする、第1の実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法と組み合わせると、より精度の高い接触の種類の判別を行うことができる。なお、図6は、本実施の形態の接触種類判別システムの処理動作の主要部のみを示している。
【0054】
<第3の実施の形態>
本発明に係る第3の実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法を、以下に説明する。なお、第1の実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法と重複する説明は省略する。
【0055】
本実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法は、外力を示すベクトルを通る直線とロボット1の表面の交点又は外力が作用する位置(座標)を特徴量として用いる。すなわち、特徴量算出部152は、第1の検出部110が検出した検出結果に基づいて、
外力を示すベクトルを通る直線とロボット1の表面の交点又は外力が作用する座標を算出し、外力を示すベクトルを通る直線とロボット1の表面の交点又は外力が作用する座標を特徴量とする。そのため、記憶部160には、予め接触の種類毎に複数回サンプリングを実施し、その際の外力を示すベクトルを通る直線とロボット1の表面の交点又は外力が作用する座標をサンプル特徴量として格納している。なお、外力を示すベクトルを通る直線とロボット1の表面の交点又は外力が作用する座標の算出方法は、例えば日本ロボット学会誌 Vol22 No5、pp616〜624,2004に開示されている算出方法等を用いることができる。
【0056】
接触種類判別部153は、記憶部160からサンプル特徴量を読み出して、特徴量と、サンプル特徴量と、をパターンマッチングし、最も近いサンプル特徴量が属する接触の種類が、実際に人がロボット1へ接触した種類であると、判別する。
【0057】
これにより、本実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法も、第1の検出部110として、外力の力学特性を示す3軸方向以上の成分を検出可能な力センサを用いることにより、少ないセンサでロボットへの接触の種類を判別可能とした。そのため、ロボットの構成の簡素化に寄与できる。すなわち、配線の本数を減少でき、しかも制御部150の演算量を軽減することができる。
【0058】
本実施の形態でも、接触種類判別部153はMTシステムを用いて、接触の種類を判別することが好ましい。これにより、高い精度で接触の種類を判別することができる。勿論、k−nn法を用いても良く、SVMのように学習機能を備えたシステムを用いても良く、要するに一般的なパターン認識の技術を用いることができる。
【0059】
本実施の形態でも、特徴量算出部152は第1の検出部110の検出信号に基づいて特徴量を算出するのに加えて、第1の検出部110の検出信号をダウンサンプリングした後に特徴量を算出することが好ましい。接触種類判別部153は、第1の検出部110の検出信号に基づいて算出した特徴量を用いたパターンマッチングに加えて、第1の検出部110の検出信号をダウンサンプリングした後に算出した特徴量と、予め当該ダウンサンプリングした後に算出した特徴量に対応するようにサンプリングされたサンプル特徴量と、をパターンマッチングし、接触の種類を判別する。これにより、接触動作が変化した場合であっても、良好に接触の種類を判別することができる。
【0060】
本実施の形態では、外力を示すベクトルを通る直線とロボット1の表面の交点又は外力が作用する座標のみを特徴量として接触の種類を判別しているが、外力の力学特性である力成分(及び/又はモーメント)の水平成分(水平軸回りの成分)と鉛直成分(鉛直軸回りの成分)の微分成分及び積分成分を特徴量とする、第1の実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法と組み合わせると、より精度の高い接触の種類の判別を行うことができる。
【0061】
<第4の実施の形態>
本発明に係る第4の実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法を、以下に説明する。なお、第1の実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法と重複する説明は省略する。
【0062】
本実施の形態の接触種類判別システム101及び接触種類判別方法は、図7に示すように、第1の実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法で用いた特徴量に加えて、ロボット1の所定部位における予め設定されている目標位置が連続する軌道からの変位の微分成分及び積分成分を特徴量として用いる。なお、図7は、本実施の形態の接触種類判別システムの処理動作の主要部のみを示している。
【0063】
すなわち、接触種類判別システム101は、角度を検出可能な第2の検出部120を備える。第2の検出部120としては、ポテンショメータやエンコーダ等の角度センサを用いることができる。第2の検出部120は、ロボット1の各関節部に搭載されている。第2の検出部120は、検出信号を制御部150に出力する。
【0064】
制御部150は、ロボット1の所定部位として手先位置が予め設定されている軌道から、どれ位の変位が生じているかを算出する。すなわち、制御部150の特徴量算出部152は、第2の検出部120の検出結果やアーム部4の各要素の長さ等に基づいてロボット1の手先位置の座標(ワールド座標系又はベース座標系のどちらでも良い。)を算出する。ここで、ロボット1のハンド部4aの手先位置は、予め動作に応じて目標位置(目標座標)が設定されており、この目標座標が連続する軌道上を移動するようにインピーダンス制御やコンプライアンス制御される。そこで、特徴量算出部152は、現在の手先位置の座標と、予め設定されている軌道と、の変位を算出する。さらに特徴量算出部152は、算出した当該変位の微分成分及び積分成分を特徴量とする。そのため、記憶部160には、予め接触の種類毎に複数回サンプリングを実施し、その際に取得した、ロボット1の手先位置の座標と、予め設定されている軌道と、の変位の微分成分及び積分成分をサンプル特徴量として格納している。但し、本実施の形態では、当該変位の微分成分及び積分成分を特徴量としたが、当該変位を特徴量として用いても良い。
【0065】
接触種類判別部153は、記憶部160からサンプル特徴量を読み出して、特徴量と、サンプル特徴量と、をパターンマッチングし、最も近いサンプル特徴量が属する接触の種類が、実際に人がロボット1へ接触した種類であると、判別する。
【0066】
このように接触種類判別システム101及び接触種類判別方法は、第1の実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法で用いた特徴量に加え、さらにロボット1の所定部位における予め設定されている目標位置の軌道からの変位の微分成分及び積分成分をサンプル特徴量とするので、接触の種類の判別の精度をより向上させることができる。
【0067】
本実施の形態でも、接触種類判別部153はMTシステムを用いて、接触の種類を判別することが好ましい。これにより、高い精度で接触の種類を判別することができる。勿論、k−nn法を用いても良く、SVMのように学習機能を備えたシステムを用いても良く、要するに一般的なパターン認識の技術を用いることができる。
【0068】
本実施の形態でも、特徴量算出部152は第2の検出部120の検出信号に基づいて特徴量を算出するのに加えて、第2の検出部120の検出信号をダウンサンプリングした後に特徴量を算出することが好ましい。接触種類判別部153は、第2の検出部120の検出信号に基づいて算出した特徴量を用いたパターンマッチングに加えて、第2の検出部120の検出信号をダウンサンプリングした後に算出した特徴量と、予め当該ダウンサンプリングした後に算出した特徴量に対応するようにサンプリングされたサンプル特徴量と、をパターンマッチングし、接触の種類を判別する。これにより、接触動作が変化した場合であっても、良好に接触の種類を判別することができる。
【0069】
<第5の実施の形態>
本発明に係る第5の実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法を、以下に説明する。なお、第1の実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法と重複する説明は省略する。
【0070】
本実施の形態の接触種類判別システム102及び接触種類判別方法は、図8に示すように、第1の実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法で用いた特徴量に加えて、人の顔や手先位置等を特徴量として用いる。なお、図8は、本実施の形態の接触種類判別システムの処理動作の主要部のみを示している。
【0071】
すなわち、接触種類判別システム102は、ロボット1の周辺情報を検出する第3の検出部130を備える。第3の検出部130としては、撮像素子としてCCD(charge coupled device)やCMOS(complementary metal oxide semiconductor)等を備えるビジョンセンサ(例えばステレオカメラ)等の撮像センサやレーザレンジファインダ等の測距センサを用いることができる。第3の検出部130は、人の顔や手を検出するのに適したロボット1の所定の位置に配置されており、例えば上下左右に検出領域を振ることができる構成とされている。第3の検出部130は、検出信号を制御部150に出力する。
【0072】
制御部150は、ロボット1に接触する人の顔の位置、顔の向き、手の位置、手の向きを算出する。すなわち、制御部150の特徴量算出部152は、入力された検出信号に基づいて顔中心を検出し、当該顔中心のベース座標系での座標の微分成分及び積分成分を特徴量とする。このとき、特徴量算出部152は、第3の検出部130から顔までの距離の微分成分及び積分成分を特徴量としても良い。
【0073】
また、特徴量算出部152は、入力された検出信号に基づいて、ベース座標系における、顔の正面方向の単位ベクトルと、人の顔中心からロボット1の所定の部位(例えば手先位置)への単位ベクトルとの内積を算出し、当該内積の微分成分及び積分成分を特徴量とする。
【0074】
また、特徴量算出部152は、入力された検出信号に基づいて、人の手先位置のベース座標系での座標を検出し、当該手先位置の座標の微分成分及び積分成分を特徴量とする。
【0075】
また、特徴量算出部152は、入力された検出信号に基づいて、ベース座標系における、人の掌の法線単位ベクトルと、人の掌中心からロボット1の所定の部位(例えば手先位置)への単位ベクトルとの内積を算出し、当該内積の微分成分及び積分成分を特徴量とする。
【0076】
そのため、記憶部160には、予め接触の種類毎に複数回サンプリングを実施し、その際に取得した、人の顔の位置又は顔の向き又は手の位置又は手の向きの微分成分及び積分成分をサンプル特徴量として格納している。
【0077】
接触種類判別部153は、記憶部160からサンプル特徴量を読み出して、特徴量と、サンプル特徴量と、をパターンマッチングし、最も近いサンプル特徴量が属する接触の種類が、実際に人がロボット1へ接触した種類であると、判別する。
【0078】
このように接触種類判別システム102及び接触種類判別方法は、第1の実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法で用いた特徴量に加え、さらにロボット1に接触する人の顔の位置又は顔の向き又は手の位置又は手の向きの微分成分及び積分成分を特徴量とするので、接触の種類の判別の精度をより向上させることができる。
【0079】
本実施の形態でも、接触種類判別部153はMTシステムを用いて、接触の種類を判別することが好ましい。これにより、高い精度で接触の種類を判別することができる。勿論、k−nn法を用いても良く、SVMのように学習機能を備えたシステムを用いても良く、要するに一般的なパターン認識の技術を用いることができる。
【0080】
本実施の形態でも、特徴量算出部152は第3の検出部130の検出信号に基づいて特徴量を算出するのに加えて、第3の検出部130の検出信号をダウンサンプリングした後に特徴量を算出することが好ましい。接触種類判別部153は、第3の検出部130の検出信号に基づいて算出した特徴量を用いたパターンマッチングに加えて、第3の検出部130の検出信号をダウンサンプリングした後に算出した特徴量と、予め当該ダウンサンプリングした後に算出した特徴量に対応するようにサンプリングされたサンプル特徴量と、をパターンマッチングし、接触の種類を判別する。これにより、接触動作が変化した場合であっても、良好に接触の種類を判別することができる。
【0081】
本実施の形態では、人の顔の位置、顔の向き、手の位置、手の向きの全ての微分成分及び積分成分を特徴量として用いているが、これらの少なくとも1つの微分成分及び積分成分を特徴量として用いれば良い。
【0082】
本実施の形態では、人の顔の位置、顔の向き、手の位置、手の向きの微分成分及び積分成分を特徴量として用いているが、人の顔の位置、顔の向き、手の位置、手の向きを特徴量として用いても良い。
【0083】
<第6の実施の形態>
本発明に係る第6の実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法を、以下に説明する。なお、第1の実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法と重複する説明は省略する。
【0084】
本実施の形態の接触種類判別システム103及び接触種類判別方法は、図9に示すように、第1の実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法で用いた特徴量に加えて、人が発する音声の大きさ又は人が発する音声に含まれる単語の使用頻度又は会話の内容等を特徴量として用いる。なお、図9は、本実施の形態の接触種類判別システムの処理動作の主要部のみを示している。
【0085】
すなわち、接触種類判別システム103は、人の音声を検出する第4の検出部140を備える。第4の検出部140としては、一般的な集音マイクを用いることができる。第4の検出部140は、ロボット1に搭載されている。第4の検出部140は検出信号を制御部150に出力する。
【0086】
制御部150は、人が発している声の大きさ、声の周波数帯や単語の使用頻度、会話の内容等を検出する。すなわち、制御部150の特徴量算出部152は、入力された検出信号に基づいて、声の大きさ、声の周波数帯及び単語の使用頻度、会話の内容等を検出し、当該声の大きさ、声の周波数帯及び単語の使用頻度、会話の内容度を特徴量とする。例えば、人がロボット1に握手をする場合は「こんにちは」と発言したり、人がロボット1に物を渡す場合は「どうぞ」と発言したり、人がロボット1を誘導する場合は「こちらへ」と発言したりするので、これらの単語の使用頻度を特徴量とする。また、人が感情的になっている場合は、声が大きくなったり、声の周波数帯が高くなったりするので、これらを特徴量とする。そのため、記憶部160には、予め接触の種類毎に複数回サンプリングを実施し、その際に取得した、声の大きさ、声の周波数帯及び単語の使用頻度、会話の内容をサンプル特徴量として格納している。なお、どの様な単語を特徴量とするかは、任意で設定することができ、しかも声の大きさ、声の周波数帯及び単語の使用頻度、会話の内容等と接触の種類との対応関係も、任意で設定することができる。
【0087】
接触種類判別部153は、記憶部160からサンプル特徴量を読み出して、特徴量と、サンプル特徴量と、をパターンマッチングし、最も近いサンプル特徴量が属する接触の種類が、実際に人がロボット1へ接触した種類であると、判別する。
【0088】
このように接触種類判別システム103及び接触種類判別方法も、第1の実施の形態の接触種類判別システム及び接触種類判別方法で用いた特徴量に加え、さらに声の大きさ、声の周波数帯及び単語の使用頻度、会話の内容等を特徴量とするので、接触の種類の判別の精度をより向上させることができる。
【0089】
本実施の形態でも、接触種類判別部153はMTシステムを用いて、接触の種類を判別することが好ましい。これにより、高い精度で接触の種類を判別することができる。勿論、k−nn法を用いても良く、SVMのように学習機能を備えたシステムを用いても良く、要するに一般的なパターン認識の技術を用いることができる。
【0090】
以上、本発明に係る接触種類判別システム及び接触種類判別方法、並びにロボットの実施の形態を説明したが、上記の構成に限らず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、変更することが可能である。
【0091】
上記実施の形態では、第1の検出部110として6軸力センサを用いたが、少なくとも外力の力学特性を示す3軸方向以上の成分を検出可能な力センサを用いれば、略同様に実施できる。
【0092】
上記実施の形態では、記憶部160に格納されている全てのテンプレートについてパターンマッチングを実行しているが、予めパターンマッチングするテンプレートを絞り込むことが好ましい。例えば、第1の実施の形態を例に説明すると、図2に示すように、制御部150はマッチング選択部154を備える。マッチング選択部154には、第1の検出部110から検出信号が入力される。マッチング選択部154には、予め閾値が設定されており、当該閾値と、入力される力成分やモーメントと、が比較される。つまり、握手程度であれば、比較的力成分やモーメントは小さいので、入力される力成分やモーメントが閾値より大きいと、マッチング選択部154は接触の種類として握手以外であることが判断できる。そのため、マッチング選択部154は、入力される力成分やモーメントが閾値より大きいと、接触の種類として握手に属するテンプレートとのパターンマッチングを省略するように、接触種類判別部153に指示する。このようにパターンマッチングの回数を減らすことで、制御部150の負担を軽減することができる。この場合、第2及び第3の実施の形態でも、同様にマッチング選択部154を用いてパターンマッチングの回数を減らすことが可能である。
【0093】
第4の実施の形態では、マッチング選択部154が、例えば第2の検出部120の検出結果やアーム部4の各要素の長さ等に基づいてロボット1の手先位置の座標を算出する。そして、マッチング選択部154は、算出した手先位置の座標と予め設定されている軌道との変位と、閾値とを比較する。つまり、ロボット1が引っ張られると、当該変位は比較的大きくなるので、当該変位が閾値より小さいと、マッチング選択部154は接触の種類としてロボット1を引っ張る動作以外であることが判断できる。そのため、マッチング選択部154は、当該変位が閾値より小さいと、接触の種類としてロボット1を引っ張る動作に属するテンプレートとのパターンマッチングを省略するように、接触種類判別部153に指示する。
【0094】
第5の実施の形態では、マッチング選択部154が、例えば第3の検出部130から入力される画像情報から顔が正面を向いた画像を検出できるか否かを判定する。つまり、握手であれば顔が正面を向いた画像を検出できる可能性が高いので、マッチング選択部154は入力される画像情報から顔が正面を向いた画像を検出できないと、接触の種類として握手に属するテンプレートとのパターンマッチングを省略するように、接触種類判別部153に指示する。
【0095】
第6の実施の形態では、マッチング選択部154が、例えば第4の検出部140から入力される音声から声の大きさを算出し、算出した声の大きさと、閾値と、を比較する。つまり、握手であれば人が発する声の大きさは比較的小さい可能性が高いので、マッチング選択部154は算出した声の大きさが閾値より大きいと、接触の種類として握手に属するテンプレートとのパターンマッチングを省略するように、接触種類判別部153に指示する。
【0096】
上記実施の形態では、第1の実施の形態を中心に他の実施の形態と組み合わせているが、組み合わせは適宜、設定される。
【符号の説明】
【0097】
1 ロボット、2 頭部、3 胴体部
4 アーム部、4a ハンド部、4b 下腕部、4c 上腕部
5 脚部、5a 足部、5b 下腿部、5c 上腿部
100 接触種類判別システム
101 接触種類判別システム
102 接触種類判別システム
103 接触種類判別システム
110 第1の検出部
120 第2の検出部
130 第3の検出部
140 第4の検出部
150 制御部、151 前処理部、152 特徴量算出部、153 接触種類判別部、154 マッチング選択部
160 記憶部
170 駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットへの接触によって外力が作用する際に、前記接触の種類を判別する接触種類判別システムであって、
前記ロボットに搭載された、前記外力の力学特性を示す3軸方向以上の成分を検出する第1の検出部と、
前記第1の検出部の検出結果に基づいて特徴量を算出する特徴量算出部と、
前記特徴量と、予め前記接触の種類に対応するように取得したサンプル特徴量と、をパターンマッチングし、前記ロボットへの接触の種類を判別する接触種類判別部と、
を備えることを特徴とするロボットの接触種類判別システム。
【請求項2】
前記特徴量算出部は、前記第1の検出部が検出した前記外力の力学特性である力成分の水平成分と鉛直成分を算出し、算出した前記水平成分と前記鉛直成分とを特徴量とし、
前記接触種類判別部は、予め前記接触の種類及び前記特徴量に対応するように取得した、外力の力学特性である力成分の水平成分と鉛直成分とをサンプル特徴量に用いて、前記特徴量と、前記サンプル特徴量と、をパターンマッチングし、前記ロボットへの接触の種類を判別することを特徴とする請求項1に記載のロボットの接触種類判別システム。
【請求項3】
前記特徴量算出部は、前記水平成分と前記鉛直成分との微分成分及び積分成分を特徴量とすることを特徴とする請求項2に記載のロボットの接触種類判別システム。
【請求項4】
前記特徴量算出部は、前記第1の検出部が検出した前記外力の力学特性であるモーメントの水平軸回りの成分と鉛直軸回りの成分を算出し、算出した前記水平軸回りの成分と前記鉛直軸回りの成分とを特徴量とし、
前記接触種類判別部は、予め前記接触の種類及び前記特徴量に対応するように取得した、外力の力学特性であるモーメントの水平軸回りの成分と鉛直軸回りの成分とをサンプル特徴量に用いて、前記特徴量と、前記サンプル特徴量と、をパターンマッチングし、前記ロボットへの接触の種類を判別することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のロボットの接触種類判別システム。
【請求項5】
前記特徴量算出部は、前記水平軸回りの成分と前記鉛直軸回りの成分との微分成分及び積分成分を特徴量とすることを特徴とする請求項4に記載のロボットの接触種類判別システム。
【請求項6】
前記特徴量算出部は、前記第1の検出部が検出した前記外力の力学特性である力成分の値をフーリエ変換して算出した前記外力の周波数特性を特徴量とし、
前記接触種類判別部は、予め前記接触の種類及び前記特徴量に対応するように取得した、外力の周波数特性をサンプル特徴量に用いて、前記特徴量と、前記サンプル特徴量と、をパターンマッチングし、前記ロボットへの接触の種類を判別することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のロボットの接触種類判別システム。
【請求項7】
前記特徴量算出部は、前記外力の周波数特性の微分成分及び積分成分を特徴量とすることを特徴とする請求項6に記載のロボットの接触種類判別システム。
【請求項8】
前記特徴量算出部は、前記第1の検出部が検出した前記外力を示すベクトルを通る直線と前記ロボットの表面の交点又は前記外力が作用する位置を算出し、算出した前記交点又は前記位置を特徴量とし、
前記接触種類判別部は、予め前記接触の種類及び前記特徴量に対応するように取得した、外力を示すベクトルを通る直線と前記ロボットの表面の交点又は外力が作用する位置をサンプル特徴量に用いて、前記特徴量と、前記サンプル特徴量と、をパターンマッチングし、前記ロボットへの接触の種類を判別することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のロボットの接触種類判別システム。
【請求項9】
前記特徴量算出部は、前記ロボットの所定部位における予め設定されている目標位置の軌道からの変位を算出し、算出した前記変位を特徴量とし、
前記接触種類判別部は、予め前記接触の種類及び前記特徴量に対応するように取得した、前記ロボットの所定部位における予め設定されている目標位置の軌道からの変位をサンプル特徴量に用いて、前記特徴量と、前記サンプル特徴量と、をパターンマッチングし、前記ロボットへの接触の種類を判別することを特徴とする請求項2乃至8のいずれか1項に記載のロボットの接触種類判別システム。
【請求項10】
前記ロボットの周辺情報を検出する第2の検出部を備え、
前記特徴量算出部は、前記第2の検出部の検出結果に基づいて、前記ロボットに接触する人の顔の位置又は顔の向き又は手の位置又は手の向きの少なくとも一つを算出し、前記顔の位置又は前記顔の向き又は前記手の位置又は前記手の向きの少なくとも一つを特徴量とし、
前記接触種類判別部は、予め前記接触の種類及び前記特徴量に対応するように取得した、人の顔の位置又は顔の向き又は手の位置又は手の向きの少なくとも一つをサンプル特徴量に用いて、前記特徴量と、前記サンプル特徴量と、をパターンマッチングし、前記ロボットへの接触の種類を判別することを特徴とする請求項2乃至9のいずれか1項に記載のロボットの接触種類判別システム。
【請求項11】
前記特徴量算出部は、前記顔の位置又は前記顔の向き又は前記手の位置又は前記手の向きの少なくとも一つの微分成分及び積分成分を特徴量とすることを特徴とする請求項10に記載のロボットの接触種類判別システム。
【請求項12】
人の音声を検出する第3の検出部を備え、
前記特徴量算出部は、前記第3の検出部の検出結果に基づいて音声認識を行い、音声の大きさ又は単語の使用頻度又は会話の内容を特徴量とし、
前記接触種類判別部は、予め前記接触の種類及び前記特徴量に対応するように取得した、音声の大きさ又は単語の使用頻度又は会話の内容をサンプル特徴量に用いて、前記特徴量と、前記サンプル特徴量と、をパターンマッチングし、前記ロボットへの接触の種類を判別することを特徴とする請求項2乃至11のいずれか1項に記載のロボットの接触種類判別システム。
【請求項13】
前記接触種類判別部は、MTシステム、又はk−NN法、又はSVMを用いて、前記特徴量と、前記サンプル特徴量と、をパターンマッチングすることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のロボットの接触種類判別システム。
【請求項14】
前記第1乃至3のいずれかの検出部の検出結果に基づいて、前記パターンマッチングする前記サンプル特徴量を選定するマッチング選定部を備えることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載のロボットの接触種類判別システム。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載のロボットの接触種類判別システムを備えるロボット。
【請求項16】
ロボットへの接触によって外力が作用する際に、前記接触の種類を判別する接触種類判別方法であって、
前記外力が作用する位置より前記ロボットの基幹側に配置された、前記外力の力学特性を示す3軸方向以上の成分を検出する第1の検出部の検出結果に基づいて特徴量を算出する工程と、
前記特徴量と、予め前記接触の種類に対応するように取得したサンプル特徴量と、をパターンマッチングし、前記ロボットへの接触の種類を判別する工程と、
を備えることを特徴とするロボットの接触種類判別方法。
【請求項17】
前記特徴量を算出する工程は、前記第1の検出部の検出結果をダウンサンプリングして得た結果に基づいて特徴量を算出する工程を備えることを特徴とする請求項16に記載のロボットの接触種類判別方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate