説明

ロボットハンド及びロボット装置

【課題】対象物を安定して把持しつつ対象物の姿勢を制御することが可能なロボットハンド及びロボット装置を提供する。
【解決手段】対象物を把持する2つの指部101,102を備え、2つの指部101,102の各々には、対象物を把持する部分に回転部材110が設けられ、2つの指部101,102で対象物を把持した状態で、2つの指部101,102の回転部材110が回転可能にされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンド及びロボット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボット装置に取り付けて、対象物を把持又は解放することで所定の作業を行うロボットハンドが知られている。近年では、例えば工具を把持して部品の組み付け等の作業を行うと共に、微小な部品を把持して精度良く配置する多機能なロボットハンドが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1のロボットハンドでは、2つの指部の対象物を把持する部分に複数の突起を有する弾性部材が設けられており、弾性部材の中心部には1つの突起が配置され、その周辺部には中心部の突起よりも高さの低い突起が複数配置されている。そして、2つの指部の開閉を適切に制御することにより、対象物に2つの指部の弾性部材の中心部の突起の先端のみを接触させることで対象物を回転可能に把持するとともに、指部の開閉の制御を変えることで弾性部材を変形させて対象物に複数の突起を接触させ、対象物を拘束して把持することを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−255191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術にあっては、2つの指部で対象物を回転可能に支持する際に、弾性部材の1つの突起の先端が接触する(対象物を2点で把持する)。しかし、対象物を2点で把持するだけでは、対象物の把持が不安定となり、対象物の姿勢を変更させる際に(対象物を回転させる際に)対象物が落下してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明のロボットハンドは、対象物を把持する2つの指部を備え、前記2つの指部の各々には、前記対象物を把持する部分に回転部材が設けられ、前記2つの指部で前記対象物を把持した状態で、前記2つの指部の回転部材が回転可能にされていることを特徴とする。
【0007】
このロボットハンドによれば、2つの指部の回転部材が回転することにより、対象物の姿勢を変更することができる。例えば、対象物が作業面に水平(横)に置かれた棒状部材の場合、2つの指部の回転部材で対象物の一端を把持して持上げると、対象物の他端は自重により把持点を基準に回転して垂れ下がり、この動作の過程で対象物の姿勢が横から縦に変更されることとなる。つまり、2つの指部の把持姿勢がほとんど変化しない状態で対象物の姿勢を変更させることができる。また、対象物を2つの指部の回転部材で把持する構成を採用しており、2つの指部に複数の突起を有する弾性部材を設け弾性部材の中心の1つの突起の先端で対象物を回転可能に把持する構成を必要としないので、対象物を安定して把持することができる。よって、対象物を安定して把持しつつ対象物の姿勢を変更することが可能なロボットハンドを提供することができる。
【0008】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部の少なくとも一方は、前記回転部材と、前記回転部材を回転可能に支持する支持部材とを備えており、前記2つの指部によって所定の把持力以上の把持力で前記対象物を把持したときに、前記回転部材と前記支持部材とが互いに接触し、前記回転部材の回転動作が抑制されていてもよい。
【0009】
このロボットハンドによれば、2つの指部で対象物を所定の把持力未満の把持力で把持したときには回転部材と支持部材とが互いに離間して回転部材が回転可能となり、その一方で対象物を所定の把持力以上の把持力で把持したときには回転部材と支持部材とが互いに接触して回転部材の回転動作が抑制される。つまり、回転部材と支持部材とが互いに接触しているか否かによって回転部材の回転動作が抑制される。よって、対象物の姿勢変更が容易となる。
【0010】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部の回転部材の回転軸は、互いに一致していてもよい。
【0011】
このロボットハンドによれば、対象物の姿勢変更を安定して行うことができる。これに対して、2つの指部の回転部材の回転軸が互いに異なっていると、対象物が回転しにくくなる。
【0012】
前記ロボットハンドにおいて、前記回転部材の前記対象物と接触する部分は、前記対象物が平滑面を有する場合でも前記対象物の平滑面に対して常に複数の接触点を持つ構造となっていてもよい。
【0013】
このロボットハンドによれば、対象物を常に安定して把持することができる。
【0014】
前記ロボットハンドにおいて、前記回転部材の前記対象物と接触する部分は、平滑面となっていてもよい。
【0015】
このロボットハンドによれば、対象物を安定して把持することができる。例えば、対象物の表面が平滑面の場合、回転部材の対象物と接触する部分と対象物とが面で接触するため、対象物をしっかりと把持できる。これに対して、回転部材の対象物と接触する部分が凹凸形状であると、回転部材の対象物と接触する部分と対象物とが点で接触することとなり、対象物の把持が不安定となる場合もある。
【0016】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部の前記支持部材には、前記回転部材の回転軸を回転可能に収容する収容部が形成されており、前記回転部材の回転軸と前記収容部との間には弾性部材が配置されており、前記2つの指部によって所定の把持力以上の把持力で前記対象物を把持したときに、前記弾性部材が弾性変形することにより、前記回転部材と前記支持部材とが互いに接触してもよい。
【0017】
このロボットハンドによれば、2つの指部で対象物を所定の把持力未満の把持力で把持したときには、弾性部材が十分に変形せず、回転部材と支持部材とが互いに離間して回転部材が回転可能となり、その一方で対象物を所定の把持力以上の把持力で把持したときには、弾性部材が弾性変形し、回転部材と支持部材とが互いに接触して回転部材の回転動作が抑制される。つまり、弾性部材が所定量だけ弾性変形するか否かによって回転部材の回転動作が抑制される。よって、対象物の姿勢変更が容易となる。
【0018】
前記ロボットハンドにおいて、前記回転部材の回転軸は弾性を有し、前記2つの指部の前記支持部材には、前記回転部材の回転軸を回転可能に収容する収容部が形成されており、前記2つの指部によって所定の把持力以上の把持力で前記対象物を把持したときに、前記回転軸が弾性変形することにより、前記回転部材と前記支持部材とが互いに接触してもよい。
【0019】
このロボットハンドによれば、2つの指部で対象物を所定の把持力未満の把持力で把持したときには、回転部材の回転軸が十分に変形せず、回転部材と支持部材とが互いに離間して回転部材が回転可能となり、その一方で対象物を所定の把持力以上の把持力で把持したときには、回転部材の回転軸が弾性変形し、回転部材と支持部材とが互いに接触して回転部材の回転動作が抑制される。つまり、回転部材の回転軸が所定量だけ弾性変形するか否かによって回転部材の回転動作が抑制される。よって、対象物の姿勢変更が容易となる。
【0020】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部によって所定の把持力以上の把持力で前記対象物を把持したときに前記回転部材が前記支持部材と接触する面と、前記2つの指部によって所定の把持力以上の把持力で前記対象物を把持したときに前記支持部材が前記回転部材と接触する面とのいずれか一方の面には凹部が形成され他方の面には前記凹部と噛み合う凸部が形成されていてもよい。
【0021】
このロボットハンドによれば、対象物を所定の把持力以上の把持力で把持したときに凹部と凸部とが噛み合うことによって回転部材の回転動作が抑制される。よって、簡素な構成で対象物の姿勢変更を行うことができる。
【0022】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部によって所定の把持力以上の把持力で前記対象物を把持したときに前記回転部材が前記支持部材と接触する面と、前記2つの指部によって所定の把持力以上の把持力で前記対象物を把持したときに前記支持部材が前記回転部材と接触する面との少なくとも一方の面は、前記回転部材と前記支持部材とが接触したときに前記回転部材の回転動作を抑制する摩擦係数を有していてもよい。
【0023】
このロボットハンドによれば、対象物を所定の把持力以上の把持力で把持したときに回転部材と支持部材とが接触する面における摩擦力によって回転部材の回転動作が抑制される。よって、簡素な構成で対象物の姿勢変更を行うことができる。
【0024】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部の前記回転部材の前記対象物と接触する部分には、前記対象物との接触を検出する第1センサーが設けられており、前記2つの指部の前記回転部材と前記支持部材との間には、前記回転部材と前記支持部材との接触を検出する第2センサーが設けられていてもよい。
【0025】
このロボットハンドによれば、第1センサーによって2つの指部の回転部材と対象物との接触判定を行うとともに、第2センサーによって回転部材と支持部材との接触判定を行うことができる。つまり、第1センサーの接触判定が「接触なし」の場合は2つの指部の回転部材が対象物を把持していないことが分かり、一方「接触あり」の場合は2つの指部の回転部材が対象物を把持していることが分かる。また、第2センサーの接触判定が「接触なし」の場合は2つの指部の回転部材が回転可能であることが分かり、一方「接触あり」の場合は2つの指部の回転部材の回転が停止している(回転部材が支持部材に固定されている)ことが分かる。よって、対象物の把持状態及び回転部材の回転動作の状態を確認することが容易となる。
【0026】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部のうち一方の指部の前記回転部材が前記対象物を把持する部分と他方の指部の前記回転部材が前記対象物を把持する部分との相対位置を検出する第3センサーと、前記2つの指部によって所定の把持力以上の把持力で前記対象物を把持したときに前記2つの指部のうち一方の指部の前記支持部材が前記回転部材と接触する面と、前記2つの指部によって所定の把持力以上の把持力で前記対象物を把持したときに他方の指部の前記支持部材が前記回転部材と接触する面との相対位置を検出する第4センサーと、を備えていてもよい。
【0027】
このロボットハンドによれば、第3センサーによって2つの指部の回転部材どうしの間隔を検出するとともに、第4センサーによって2つの指部の支持部材における回転部材との接触面どうしの間隔を検出することができる。例えば、対象物の大きさが正確に認識できている場合に有効である。つまり、第3センサーの検出結果が「対象物の幅(2つの指部で対象物を挟み込む方向における対象物の長さ)よりも大きい」場合は2つの指部の回転部材が対象物を把持していないことが分かり、一方「対象物の幅と等しい」場合は2つの指部の回転部材が対象物を把持していることが分かる。また、第4センサーの検出結果が「対象物の幅と2つの指部の回転部材の厚み(2つの指部で対象物を挟み込む方向における回転部材の長さ)とを足し合わせた値よりも大きい」場合は2つの指部の回転部材が回転可能であることが分かり、一方「対象物の幅と2つの指部の回転部材の厚みとを足し合わせた値と等しい」場合は2つの指部の回転部材の回転が停止している(回転部材が支持部材に固定されている)ことが分かる。よって、対象物の把持状態及び回転部材の回転動作の状態を確認することが容易となる。
【0028】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部のうち少なくとも一方の指部の前記回転部材の前記対象物と接触する部分には、前記対象物を把持する力を検出する第5センサーが設けられていてもよい。
【0029】
このロボットハンドによれば、第5センサーによって2つの指部が対象物を把持するときの把持力を検出することができる。例えば、第5センサーの検出結果によって2つの指部の回転部材が対象物をしっかりと把持しているか否かが分かる。よって、対象物を確実に把持することができる。
【0030】
前記ロボットハンドにおいて、前記2つの指部が同期して前記対象物に近づくまたは遠ざかるように、前記2つの指部を開閉動作させる駆動部を備えていてもよい。
【0031】
このロボットハンドによれば、2つの指部で対象物を把持しやすくなる。よって、対象物を安定して把持しやすくなる。また、簡素な構成で2つの指部の開閉動作を実現することができる。
【0032】
本発明に係るロボット装置は、上記のロボットハンドを備えたことを特徴とする。
【0033】
このロボット装置によれば、対象物を安定して把持しつつ対象物の姿勢を制御することが可能なロボット装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態に係るロボットハンドの全体構成を示す斜視図である。
【図2】同、ロボットハンドの全体構成を示す正面図である。
【図3】同、ロボットハンドの全体構成を示す断面図である。
【図4】同、回転部材と支持部材とが互いに接する面を示す図である。
【図5】同、ロボットハンドが対象物を把持した状態を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るロボット装置の全体構成を示す図である。
【図7】同、ロボット装置の動作時の状態を示す図である。
【図8】ロボットハンドの第1変形例を示す図である。
【図9】ロボットハンドの第2変形例を示す図である。
【図10】ロボットハンドの第3変形例を示す図である。
【図11】同、ロボットハンドの動作時の状態を示す図である。
【図12】ロボットハンドの第4変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0036】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るロボットハンドRHの全体構成を示す斜視図である。図2は、ロボットハンドRHの全体構成を示す正面図である。図3は、ロボットハンドRHの全体構成を示す断面図である。
図1に示すように、ロボットハンドRHは、2つの指部101,102と、第1センサー141と、第2センサー142と、2つの指部101,102を開閉動作させる駆動部103と、を備えている。
【0037】
このロボットハンドRHは、例えば工具や部品などの対象物を把持する産業用ロボットの把持装置として用いられる。なお、ロボットハンドRHとしては、産業ロボットに限られず、他の用途(宇宙関連、遊具など)に用いても構わない。
【0038】
指部101,102は、対象物を把持する部分である。各指部101,102には、対象物を把持する部分に回転部材110が設けられている。ロボットハンドRHは、2つの指部101,102で対象物を把持した状態で、2つの指部101,102の回転部材110が回転することにより、対象物の姿勢が変更可能となっている。
【0039】
各指部101,102は、回転部材110と、回転部材110を回転可能に支持する支持部材120と、を備えている。2つの指部101,102によって所定の把持力以上の把持力で対象物を把持したときに、回転部材110と支持部材120とが互いに接触し、回転部材110の回転動作が抑制される。
【0040】
図2に示すように、回転部材110は、対象物に接触する接触部材111と、回転軸112と、を備えている。2つの指部101,102の回転部材110の回転軸112は、互いに一致している。つまり、一方の指部101の回転部材110の回転軸112と他方の指部102の回転部材110の回転軸112とは、2つの指部101,102が開閉する方向から視て互いに重なる位置に配置されている。
【0041】
回転部材110の接触部材111の対象物と接触する部分(以下、接触面111f1と称することがある)は、平滑面となっている。接触部材111は例えば円盤状に形成された剛性部材である。例えば、接触部材111の接触面111f1とは反対側の面の中央部に回転軸112の一端が固定された構成となっている。これにより、回転部材110が回転軸112を中心に、接触部材111と回転軸112とが一体で、回転可能になっている。
【0042】
なお、接触部材111の接触面111f1とは反対側の面のうち回転軸112が設けられていない部分は、2つの指部101,102によって所定の把持力以上の把持力で対象物を把持したときに、接触部材111が支持部材120と接触する部分(以下、接触面111f2と称することがある)である。また、そのときに、支持部材120が接触部材111と接触する部分を接触面120fと称することがある。
【0043】
図3に示すように、各指部101,102の支持部材120には、回転部材110の回転軸112を回転可能に収容する収容部121が形成されている。収容部121の側壁部には、回転軸112を回転可能に支持する転がり軸受け131(ボールベアリングなど)が設けられている。これにより、回転軸112は円滑に回転するようになっている。
【0044】
回転部材110の回転軸112と収容部121との間には弾性部材132(バネなど)が配置されている。2つの指部101,102によって所定の把持力以上の把持力で対象物を把持したときに、弾性部材132が弾性変形(圧縮変形)することにより、回転部材110の接触部材111(接触面111f2)と支持部材120(接触面120f)とが互いに接触するようになっている。
【0045】
第1センサー141は、2つの指部101,102の回転部材110の接触部材111が対象物と接触する部分(接触面111f1)に設けられている。第1センサー141は、対象物との接触を検出するセンサーである。
【0046】
第2センサー142は、2つの指部101,102の回転部材110の接触部材111と支持部材120との間に設けられている。本実施形態では、第2センサー142は、支持部材120が接触部材111と接触する部分(接触面120f)に設けられている。第2センサー142は、回転部材110の接触部材111と支持部材120との接触を検出するセンサーである。
【0047】
駆動部103は、2つの指部101,102の一端部に取り付けられている。駆動部103は、2つの指部101,102が同期して対象物Wに近づくまたは遠ざかるように移動するように、2つの指部101,102を開閉動作させる。
【0048】
図4は、回転部材110の接触部材111と支持部材120とが互いに接する面を示す図である。なお、図4(a)は接触部材111が支持部材120と接触する部分(接触面111f2)を示した図であり、図4(b)は支持部材120が接触部材111と接触する部分(接触面120f)を示した図である。
【0049】
図4(a)に示すように、接触部材111の接触面111f2には複数(3つ)の凹部111hが形成されている。各凹部111hは、平面視円弧状に形成されており、回転軸112を中心とした回転対称に配置されている。
【0050】
図4(b)に示すように、支持部材120の接触面120fには複数(3つ)の凸部122が形成されている。各凸部122は、各凹部111hと噛み合う大きさとなっている。各凸部122は、平面視矩形状に形成されており、収容部121を中心とした回転対象に配置されている。
【0051】
図5は、ロボットハンドRHが対象物Wを把持した状態を示す図である。
図5に示すように、2つの指部101,102によって所定の把持力以上の把持力で対象物Wを把持すると、弾性部材132が弾性変形(圧縮変形)して回転部材110の回転軸112が収容部121に収容される。回転軸112全体が収容部121に収容されると、2つの指部101,102の回転部材110の接触部材111と支持部材120とが互いに接触する。対象物Wの表面は平滑面となっており、回転部材110の対象物Wと接触する部分(接触面111f1)と対象物Wとが面で接触する。このとき、回転部材110の接触部材111の接触面111f2に形成された凹部111hと支持部材120の接触面120fに形成された凸部122とは互いに噛み合う。凹部111hと凸部122とが噛み合うことにより、回転部材110の回転動作が抑制される。
【0052】
本実施形態のロボットハンドRHによれば、2つの指部101,102の回転部材110が回転することにより、対象物の姿勢を変更することができる。例えば、対象物が作業面に水平(横)に置かれた棒状部材の場合、2つの指部101,102の回転部材110で対象物の一端を把持して持上げると、対象物の他端は自重により把持点を基準に回転して垂れ下がり、この動作の過程で対象物の姿勢が横から縦に変更されることとなる。つまり、2つの指部101,102の把持姿勢がほとんど変化しない状態で対象物の姿勢を変更させることができる。また、対象物を2つの指部101,102の回転部材110で把持する構成を採用しており、2つの指部に複数の突起を有する弾性部材を設け弾性部材の中心の1つの突起の先端で対象物を回転可能に把持する構成を必要としないので、対象物を安定して把持することができる。よって、対象物を安定して把持しつつ対象物の姿勢を変更することが可能なロボットハンドRHを提供することができる。
【0053】
この構成によれば、2つの指部101,102で対象物を所定の把持力未満の把持力で把持したときには回転部材110と支持部材120とが互いに離間して回転部材110が回転可能となり、その一方で対象物を所定の把持力以上の把持力で把持したときには回転部材110と支持部材120とが互いに接触して回転部材110の回転動作が抑制される。つまり、回転部材110と支持部材120とが互いに接触しているか否かによって回転部材110の回転動作が抑制される。よって、対象物の姿勢変更が容易となる。
【0054】
この構成によれば、2つの指部101,102の回転部材110の回転軸112が互いに一致しているので、対象物の姿勢変更を安定して行うことができる。これに対して、2つの指部の回転部材の回転軸が互いに異なっていると、回転部材が回転しても対象物が回転しにくくなる。
【0055】
この構成によれば、回転部材110の対象物と接触する部分が平滑面となっているので、対象物を安定して把持することができる。例えば、対象物の表面が平滑面の場合、回転部材110の対象物と接触する部分と対象物とが面で接触するため、対象物をしっかりと把持できる。これに対して、回転部材の対象物と接触する部分が凹凸形状であると、回転部材の対象物と接触する部分と対象物とが点で接触することとなり、対象物の把持が不安定となる場合がある。
【0056】
ただし、回転部材110の対象物と接触する部分が凹凸形状であっても、やわらかく変形しやすく摩擦が大きい素材の場合には、より安定性が増す場合もある。いずれにせよ、回転部材110の対象物と接触する部分は、対象物が平滑面を有する場合でも対象物の平滑面に対して常に複数の接触点を持つ構造となっていることが好ましい。
【0057】
この構成によれば、2つの指部101,102で対象物を所定の把持力未満の把持力で把持したときには、弾性部材132が十分に変形せず、回転部材110と支持部材120とが互いに離間して回転部材110が回転可能となり、その一方で対象物を所定の把持力以上の把持力で把持したときには、弾性部材132が弾性変形し、回転部材110と支持部材120とが互いに接触して回転部材110の回転動作が抑制される。つまり、弾性部材132が所定量だけ弾性変形するか否かによって回転部材110の回転動作が抑制される。よって、対象物の姿勢変更が容易となる。
【0058】
この構成によれば、対象物を所定の把持力以上の把持力で把持したときに凹部111hと凸部122とが噛み合うことによって回転部材110の回転動作が抑制される。よって、簡素な構成で対象物の姿勢変更を行うことができる。
【0059】
この構成によれば、第1センサー141によって2つの指部101,102の回転部材110と対象物との接触判定を行うとともに、第2センサー142によって回転部材110と支持部材120との接触判定を行うことができる。つまり、第1センサー141の接触判定が「接触なし」の場合は2つの指部101,102の回転部材110が対象物を把持していないことが分かり、一方「接触あり」の場合は2つの指部101,102の回転部材110が対象物を把持していることが分かる。また、第2センサー142の接触判定が「接触なし」の場合は2つの指部101,102の回転部材110が回転可能であることが分かり、一方「接触あり」の場合は2つの指部101,102の回転部材110の回転が停止している(回転部材110が支持部材120に固定されている)ことが分かる。よって、対象物の把持状態及び回転部材110の回転動作の状態を確認することが容易となる。
【0060】
この構成によれば、2つの指部101,102を同期して開閉動作させる駆動部103を備えているので、2つの指部101,102で対象物を把持しやすくなる。よって、対象物を安定して把持しやすくなる。また、簡素な構成で2つの指部101,102の開閉動作を実現することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、各指部101,102が、回転部材110と、回転部材110を回転可能に支持する支持部材120と、を備えている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、指部101,102のいずれか一方のみが、回転部材110と、回転部材110を回転可能に支持する支持部材120と、を備えていてもよい。つまり、2つの指部101,102によって所定の把持力以上の把持力で対象物を把持したときに、一方の指部の回転部材110のみの回転が止まる構成であっても対象物を回転させずに把持できる効果がある。すなわち、指部101,102の少なくとも一方が、回転部材110と、回転部材110を回転可能に支持する支持部材120と、を備えていればよい。
【0062】
また、本実施形態では、接触部材111の接触面111f2に凹部111hが形成され、支持部材120の接触面120fに凸部122が形成された構成を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、接触部材111の接触面111f2に凸部が形成され、支持部材120の接触面120fに凹部が形成された構成であってもよい。すなわち、2つの指部101,102によって所定の把持力以上の把持力で対象物を把持したときに接触部材111の接触面111f2、そのときに支持部材120の接触面120fのいずれか一方の面には凹部が形成されるとともに他方の面には凹部と噛み合う凸部が形成されていればよい。
【0063】
また、本実施形態では、第2センサー142が、支持部材120が接触部材111と接触する部分(接触面120f)に設けられているが、これに限らない。例えば、第2センサー142が、接触部材111が支持部材120と接触する部分(接触面111f2)に設けられていてもよい。
【0064】
また、本実施形態では、接触部材111の接触面111f2には3つの凹部111hが形成されているが、これに限らない。例えば、接触部材111の接触面111f2には1または2、4以上の凹部が形成されていてもよい。すなわち、接触部材111の接触面111f2に形成される凹部の配置数は必要に応じて適宜変更可能である。なお、支持部材120の接触面120fには3つの凸部122が形成されているが、これに限らず、支持部材120の接触面120fに形成される凸部の配置数も、凹部の配置数と同様に必要に応じて適宜変更可能である。
【0065】
(第2実施形態)
図6は、本実施形態に係るロボット装置RAの構成を示す斜視図である。
図6に示すように、ロボット装置RAは、例えば産業用ロボットアームとして用いられる。ロボット装置RAは、取付部ATC、第一関節10、第二関節20、第三関節30、第四関節40、第五関節50及び第六関節60を有している。
【0066】
取付部ATCは、例えば床部や壁部、天井部などに取り付けられる部分である。第一関節10〜第六関節60は、例えば取付部ATCから順に直列に接続されている。第一関節10〜第六関節60は、例えば隣接する関節との間で回転軸を介して接続されており、互いにその回転軸を中心に回転可能に設けられている。第一関節10〜第六関節60のそれぞれが回転可能に設けられているため、それぞれの関節を適宜回転させることで、ロボットアームRA全体としての複合的な動作が可能になっている。
【0067】
第六関節60は、ロボット装置RAの先端部分である。この第六関節60の先端部に、上記実施形態に記載のロボットハンドRHが取り付けられている。
【0068】
本実施形態のロボット装置RAによれば、対象物を安定して把持しつつ対象物の姿勢を制御することが可能なロボット装置RAを提供することができる。
【0069】
図7は、ロボット装置RAの動作時の状態を示す図である。図7(a)は対象物Wの姿勢が変更される前を示す図であり、図7(b)は対象物Wの姿勢が変更された後を示す図である。なお、図7においては、便宜上、ロボット装置RAを構成するロボットハンドRH及び第六関節60のみを図示し、その他の図示を省略している。
【0070】
図7(a)に示すように、例えば、対象物Wが棒状部材であり、対象物Wが作業面(図示略)に横に置かれているとする。先ず、2つの指部101,102の回転部材110で対象物Wの一端部(対象物Wの重心とは異なる部分)を把持する。
【0071】
次に、図7(b)に示すように、2つの指部101,102の回転部材110で対象物Wを持上げる(ロボット装置RAの第六関節を上方に移動させる)。すると、対象物の他端は自重により一端部を基準に回転して垂れ下がる。つまり、この動作の過程で対象物Wの姿勢が横から縦に変更されることとなる。この動作の過程でロボット装置RAの第六関節60は上方に移動するものの、その姿勢はほとんど変化していない。よって、2つの指部101,102の把持姿勢がほとんど変化しない状態で対象物Wの姿勢を変更できることが分かる。
【0072】
(変形例1)
図8は、本発明に係るロボットハンドの第1変形例を示す図である。
本変形例のロボットハンドRH1は、回転部材110Aの回転軸112Aが弾性を有する点で、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと異なる。つまり、第1実施形態のロボットハンドRHは回転部材110の回転軸112と収容部121との間に弾性部材132が配置されていたのに対し、本変形例では弾性部材132が配置されておらず、回転軸112A自体が弾性部材として機能する構成となっている。その他の構成は、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと同様であるので詳細な説明は省略する。
【0073】
図8に示すように、2つの指部101A,102Aの回転部材110Aは接触部材111と、回転軸112Aと、を備えている。回転軸112Aは例えばゴムなどの弾性部材により形成されている。2つの指部101A,102Aの支持部材120には、回転部材110Aの回転軸112Aを回転可能に支持する収容部121が形成されている。2つの指部101A,102Aによって所定の把持力以上の把持力で対象物を把持したときに、回転軸112Aが弾性変形することにより、回転部材110Aの接触部材111と支持部材120とが互いに接触する。
【0074】
本変形例のロボットハンドRH1によれば、2つの指部101A,102Aで対象物を所定の把持力未満の把持力で把持したときには、回転部材110Aの回転軸112Aが十分に変形せず、回転部材110Aと支持部材120とが互いに離間して回転部材110Aが回転可能となり、その一方で対象物を所定の把持力以上の把持力で把持したときには、回転部材110Aの回転軸112Aが弾性変形し、回転部材110Aと支持部材120とが互いに接触して回転部材110Aの回転動作が抑制される。つまり、回転部材110Aの回転軸112Aが所定量だけ弾性変形するか否かによって回転部材110Aの回転動作が抑制される。よって、対象物の姿勢変更が容易となる。
【0075】
(変形例2)
図9は、本発明に係るロボットハンドの第2変形例を示す図である。なお、図9においては、便宜上、ロボットハンドRHの構成のうち、2つの指部の回転部材110Bと支持部材120Bとが互いに接触する部分のみを示している。なお、図9(a)は、図4(a)に対応した、接触部材111Bが支持部材120Bと接触する部分(接触面111Bf2)であり、図9(b)は、図4(b)に対応した、支持部材120Bが接触部材111Bと接触する部分(接触面120Bf)である。
【0076】
本変形例のロボットハンドRH2は、2つの指部によって所定の把持力以上の把持力で対象物を把持したときに回転部材110Bの接触部材111Bが支持部材120Bと接触する面(接触面111Bf2)、そのときの支持部材120Bが回転部材110Bの接触部材111Bと接触する面(接触面120Bf)の双方の面が、回転部材110Bの接触部材111Bと支持部材120Bとが互いに接触したときに回転部材110Bの回転動作を抑制する摩擦係数を有する点で、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと異なる。つまり、第1実施形態のロボットハンドRHは接触部材111の接触面111f2に凹部111hが形成され、支持部材120の接触面120fに凹部111hと噛み合う凸部122が形成されていたのに対し、本変形例では凹部111h及び凸122が形成されていない。その他の構成は、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと同様であるので詳細な説明は省略する。
【0077】
図9(a)に示すように、接触部材111Bの接触面111Bf2は、回転部材110Bの接触部材111Bと支持部材120Bとが互いに接触したときに回転部材110Bの回転動作を抑制する摩擦係数を有する面となっている。このような摩擦係数を有する面は、例えば、ゴムシートなどの摩擦係数の大きい素材を接触部材111Bの接触面111Bf2に配置したり、接触部材111Bの接触面111Bf2に複数の微細な凹凸を付したりすることにより実現することができる。
【0078】
図9(b)に示すように、支持部材120Bの接触面120Bfも、回転部材110Bの接触部材111Bと支持部材120Bとが互いに接触したときに回転部材110Bの回転動作を抑制する摩擦係数を有する面となっている。このような摩擦係数を有する面は、接触部材111Bの接触面111Bf2と同様に、例えば、ゴムシートなどの摩擦係数の大きい素材を支持部材120Bの接触面120Bfに配置したり、支持部材120Bの接触面120Bfに複数の微細な凹凸を付したりすることにより実現することができる。
【0079】
本変形例のロボットハンドRH2によれば、対象物を所定の把持力以上の把持力で把持したときに回転部材110Bと支持部材120Bとが接触する面における摩擦力によって回転部材110Bの回転動作が抑制される。よって、簡素な構成で対象物の姿勢変更を行うことができる。
【0080】
なお、本変形例では、接触面111Bf2及び接触面120Bfの双方の面が、回転部材110Bの接触部材111Bと支持部材120Bとが互いに接触したときに回転部材110Bの回転動作を抑制する摩擦係数を有する面となっているが、これに限らない。例えば、接触面111Bf2のみが回転部材110Bの接触部材111Bと支持部材120Bとが互いに接触したときに回転部材110Bの回転動作を抑制する摩擦係数を有する面となっていてもよいし、接触面120Bfのみが回転部材110Bの接触部材111Bと支持部材120Bとが互いに接触したときに回転部材110Bの回転動作を抑制する摩擦係数を有する面となっていてもよい。
【0081】
(変形例3)
図10は、本発明に係るロボットハンドの第3変形例を示す図である。
本変形例のロボットハンドRH3は、2つの指部101,102に設けられた第1センサー141、第2センサー142に替えて第3センサー143、第4センサー144が設けられている点で、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと異なる。その他の構成は、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと同様であるので詳細な説明は省略する。
【0082】
図10に示すように、第3センサー143は、2つの指部101,102の回転部材110の接触部材111の対象物と接触する部分(接触面111f1)に設けられている。第3センサー143は、2つの指部101,102のうち一方の指部101の回転部材110が対象物を把持する部分(接触面111f1)と他方の指部102の回転部材110が対象物を把持する部分(接触面111f1)との相対位置を検出するセンサーである。
【0083】
第4センサー144は、2つの指部101,102の回転部材110の接触部材111と支持部材120との間に設けられている。本変形例では、第4センサー144は、支持部材120が接触部材111と接触する部分(接触面120f)に設けられている。第4センサー144は、2つの指部101,102によって所定の把持力以上の把持力で対象物を把持したときに2つの指部101,102のうち一方の指部101の支持部材120が回転部材110の接触部材111と接触する面(接触面120f)と、そのときに他方の指部102の支持部材120が回転部材110の接触部材111と接触する面(接触面120f)との相対位置を検出するセンサーである。
【0084】
図11は、ロボットハンドRH3の動作時の状態を示す図である。図11(a)は対象物Wが把持される前の状態を示す図、図11(b)は対象物Wが把持された状態を示す図、図11(c)は回転部材の回転が停止した状態を示す図である。
【0085】
図11(a)に示すように、2つの指部101,102に設けられた第3センサー143の検出結果により、一方の指部101の接触面111f1と他方の指部102の接触面111f1との間の間隔L1が対象物の幅WL(2つの指部101,102で対象物Wを挟み込む方向における対象物Wの長さ)よりも大きい場合を考える(L1>WL)。この場合、2つの指部101,102の回転部材110が対象物Wを把持していないことが分かる。
【0086】
図11(b)に示すように、2つの指部101,102に設けられた第3センサー143の検出結果により、一方の指部101の接触面111f1と他方の指部102の接触面111f1との間の間隔L1が対象物の幅WLと等しい場合を考える(L1=WL。この場合、2つの指部101,102の回転部材110が対象物Wを把持していることが分かる。
【0087】
また、図11(a)及び図11(b)に示すように、2つの指部101,102に設けられた第4センサー144の検出結果により、一方の指部101の接触面120fと他方の指部102の接触面120fとの間の間隔L2が対象物の幅WLと2つの指部101,102の回転部材110の厚み111t(2つの指部101,102で対象物Wを挟み込む方向における回転部材110の接触部材111の長さ)とを足し合わせた値よりも大きい場合を考える(L2>WL+111t×2)。この場合、2つの指部101,102の回転部材110が回転可能であることが分かる。
【0088】
図11(c)に示すように、2つの指部101,102に設けられた第4センサー144の検出結果により、一方の指部101の接触面120fと他方の指部102の接触面120fとの間の間隔L2が対象物の幅WLと2つの指部101,102の回転部材110の厚み111tとを足し合わせた値と等しい場合を考える(L2=WL+111t×2)。この場合、2つの指部101,102の回転部材110の回転が停止している(回転部材110が支持部材120に固定されている)ことが分かる。
【0089】
本変形例のロボットハンドRH3によれば、第3センサー143によって2つの指部101,102の回転部材110どうしの間隔を検出するとともに、第4センサー144によって2つの指部101,102の支持部材120における回転部材110との接触面どうしの間隔を検出することができる。例えば、対象物の大きさが正確に認識できている場合に有効である。つまり、第3センサーの検出結果が「対象物の幅(2つの指部で対象物を挟み込む方向における対象物の長さ)よりも大きい」場合は2つの指部101,102の回転部材110が対象物を把持していないことが分かり、一方「対象物の幅と等しい」場合は2つの指部101,102の回転部材110が対象物を把持していることが分かる。また、第4センサー144の検出結果が「対象物の幅と2つの指部の回転部材の厚み(2つの指部で対象物を挟み込む方向における回転部材の長さ)とを足し合わせた値よりも大きい」場合は2つの指部101,102の回転部材110が回転可能であることが分かり、一方「対象物の幅と2つの指部101,102の回転部材110の厚みとを足し合わせた値と等しい」場合は2つの指部101,102の回転部材110の回転が停止している(回転部材110が支持部材120に固定されている)ことが分かる。よって、対象物の把持状態及び回転部材110の回転動作の状態を確認することが容易となる。
【0090】
(変形例4)
図12は、本発明に係るロボットハンドの第4変形例を示す図である。
本変形例のロボットハンドRH4は、2つの指部101,102に設けられた第1センサー141に替えて第5センサー145が設けられている点、第2センサー142が設けられていない点で、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと異なる。その他の構成は、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと同様であるので詳細な説明は省略する。
【0091】
図12に示すように、第5センサー145は、2つの指部101,102のうち一方の指部101の回転部材110の接触部材111の対象物と接触する部分(接触面111f1)に設けられている。第5センサー145は、対象物を把持する力を検出するセンサーである。第5センサー145としては、例えば、圧力センサーを用いたり、モーターのトルクの変化(モーターを流れる電流の変化)を検出するセンサーを用いたりすることができる。例えば、回転部材110が押し込まれる力(弾性部材132の弾性係数(ばね定数など))が予め分かっている場合に有効である。
【0092】
本変形例のロボットハンドRH4によれば、第5センサー145によって2つの指部101,102が対象物を把持するときの把持力を検出することができる。例えば、第5センサー145の検出結果によって2つの指部101,102の回転部材110が対象物をしっかりと把持しているか否かが分かる。よって、対象物を確実に把持することができる。
【0093】
なお、本変形例では、第5センサー145は、2つの指部101,102のうち一方の指部101の回転部材110の接触部材111の対象物と接触する部分(接触面111f1)に設けられているが、これに限らない。例えば、第5センサー145は、2つの指部101,102のうち他方の指部102の回転部材110の接触部材111の対象物と接触する部分(接触面111f1)に設けられていてもよい。すなわち、第5センサー145は、2つの指部101,102のうち少なくとも一方の指部の回転部材110の接触部材111の対象物と接触する部分(接触面111f1)に設けられていればよい。
【0094】
また、本変形例では、第5センサー145のみが設けられているが、これに限らない。例えば、第5センサー145に加えて、さらに第1センサー141及び第2センサー142が設けられていてもよいし、第3センサー143及び第4センサー144が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0095】
101,102,101A,102A…指部、103…駆動部、110,110A,110B…回転部材、111,111A,111B…接触部材、111f1…接触面(回転部材の対象物と接触する部分)、111h…凹部、112,112A…回転軸、120,120B…支持部材、121…収容部、122…凸部、132…弾性部材、141…第1センサー、142…第2センサー、143…第3センサー、144…第4センサー、145…第5センサー、W…対象物、RA…ロボット装置、RH,RH1,RH2,RH3,RH4…ロボットハンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を把持する2つの指部を備え、
前記2つの指部の各々には、前記対象物を把持する部分に回転部材が設けられ、
前記2つの指部で前記対象物を把持した状態で、前記2つの指部の回転部材が回転可能にされていることを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記2つの指部の少なくとも一方は、前記回転部材と、前記回転部材を回転可能に支持する支持部材とを備えており、前記2つの指部によって所定の把持力以上の把持力で前記対象物を把持したときに、前記回転部材と前記支持部材とが互いに接触し、前記回転部材の回転動作が抑制されることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記2つの指部の回転部材の回転軸は、互いに一致していることを特徴とする請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記回転部材の前記対象物と接触する部分は、前記対象物が平滑面を有する場合でも前記対象物の平滑面に対して常に複数の接触点を持つ構造となっていることを特徴とする請求項2または3に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記回転部材の前記対象物と接触する部分は、平滑面となっていることを特徴とする請求項4に記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記2つの指部の前記支持部材には、前記回転部材の回転軸を回転可能に収容する収容部が形成されており、
前記回転部材の回転軸と前記収容部との間には弾性部材が配置されており、
前記2つの指部によって所定の把持力以上の把持力で前記対象物を把持したときに、前記弾性部材が弾性変形することにより、前記回転部材と前記支持部材とが互いに接触することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項7】
前記回転部材の回転軸は弾性を有し、
前記2つの指部の前記支持部材には、前記回転部材の回転軸を回転可能に収容する収容部が形成されており、
前記2つの指部によって所定の把持力以上の把持力で前記対象物を把持したときに、前記回転軸が弾性変形することにより、前記回転部材と前記支持部材とが互いに接触することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項8】
前記2つの指部によって所定の把持力以上の把持力で前記対象物を把持したときに前記回転部材が前記支持部材と接触する面と、前記2つの指部によって所定の把持力以上の把持力で前記対象物を把持したときに前記支持部材が前記回転部材と接触する面とのいずれか一方の面には凹部が形成され他方の面には前記凹部と噛み合う凸部が形成されていることを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項9】
前記2つの指部によって所定の把持力以上の把持力で前記対象物を把持したときに前記回転部材が前記支持部材と接触する面と、前記2つの指部によって所定の把持力以上の把持力で前記対象物を把持したときに前記支持部材が前記回転部材と接触する面との少なくとも一方の面は、前記回転部材と前記支持部材とが接触したときに前記回転部材の回転動作を抑制する摩擦係数を有することを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項10】
前記2つの指部の前記回転部材の前記対象物と接触する部分には、前記対象物との接触を検出する第1センサーが設けられており、
前記2つの指部の前記回転部材と前記支持部材との間には、前記回転部材と前記支持部材との接触を検出する第2センサーが設けられていることを特徴とする請求項2〜9のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項11】
前記2つの指部のうち一方の指部の前記回転部材が前記対象物を把持する部分と他方の指部の前記回転部材が前記対象物を把持する部分との相対位置を検出する第3センサーと、
前記2つの指部によって所定の把持力以上の把持力で前記対象物を把持したときに前記2つの指部のうち一方の指部の前記支持部材が前記回転部材と接触する面と、前記2つの指部によって所定の把持力以上の把持力で前記対象物を把持したときに前記2つの指部のうち他方の指部の前記支持部材が前記回転部材と接触する面との相対位置を検出する第4センサーと、
を備えることを特徴とする請求項2〜9のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項12】
前記2つの指部のうち少なくとも一方の指部の前記回転部材の前記対象物と接触する部分には、前記対象物を把持する力を検出する第5センサーが設けられていることを特徴とする請求項2〜11のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項13】
前記2つの指部が同期して前記対象物に近づくまたは遠ざかるように移動するように、前記2つの指部を開閉動作させる駆動部を備えることを特徴とする請求項2〜12のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のロボットハンドを備えたロボット装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−171018(P2012−171018A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31724(P2011−31724)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】