説明

ロボット制御装置及び方法

【課題】ロボットが追従対象を見失った場合に、追従対象の移動予測を行うことにより追従を続行できるロボット制御装置を提供する。
【解決手段】追従対象を検出するセンサ及び追従対象に追従する移動手段を備えたロボットの制御装置において、追従対象の移動可能な通路と通路上に配置される、第1計算地点及び第2計算地点を含む複数の計算地点とが記載された地図を記憶する第1の記憶部108と;追従対象の移動履歴を記憶する第2の記憶部111と;地図を参照して追従対象が通路上を第1計算地点から第2計算地点に移動する遷移確率を算出する算出部103と;センサが追従対象を検出できない場合に、移動履歴及び遷移確率に基づいて複数の計算地点における追従対象の存在可能性を予測する予測部105と;を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追従対象に追従するロボットのロボット制御装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、店舗などの施設において、施設利用者にロボットを追従させるサービスが提供されることがある。ロボットは追従対象をセンサによって検出し、移動手段を用いて追従する。施設内に追従対象の検出を妨げる柱などの障害物が存在すると、ロボットが追従対象を見失う場合がある。
【0003】
特許文献1には、物体が他の物体の影に隠れてしまうオクルージョンが発生した場合であっても、追従対象の追従を続行するための方法について記載されている。
【特許文献1】特開2004−220292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットが追従対象を見失った場合であっても、追従対象に再追従したい。しかしながら、再追従を実現するには追従対象を再発見するための移動予測が必要となる。上記特許文献1記載の方法ではオクルージョン発生時に追従対象を再発見することを目的としており、センサによるデータ取得が数回不可能になる程度の一瞬の見失いを想定している。従って、追従対象がセンサの検出範囲から離脱するなど重度の見失いが発生すると、ロボットは追従を続行できなくなってしまう。
【0005】
従って、本発明は、ロボットが追従対象を見失った場合に、追従対象の移動予測を行うことにより追従を続行できるロボット制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るロボット制御装置は、追従対象を検出するセンサ及び前記追従対象に追従する移動手段を備えたロボットの制御装置において、前記追従対象の移動可能な通路と前記通路上に配置される、第1計算地点及び第2計算地点を含む複数の計算地点とが記載された地図を記憶する第1の記憶部と;前記追従対象の移動履歴を記憶する第2の記憶部と;前記地図を参照して前記追従対象が前記通路上を前記第1計算地点から前記第2計算地点に移動する遷移確率を算出する算出部と;前記センサが前記追従対象を検出できない場合に、前記移動履歴及び前記遷移確率に基づいて前記複数の計算地点における前記追従対象の存在可能性を予測する予測部と;を具備する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロボットが追従対象を見失った場合に、追従対象の移動予測を行うことにより追従を続行できるロボット制御装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るロボット制御装置は、追従対象検出部101、見失い判定部102、遷移確率算出部103、初期位置推定部104、存在可能性算出部105、先回り位置決定部106、移動制御部107、地図記憶部108、遷移確率データベース(以下、単にDBと称する)109、事象情報記憶部110、移動履歴記憶部111及び追従性能記憶部112を有する。
【0009】
追従対象検出部101は、図示しないセンサから例えば画像データを受け取り、この画像データを解析することにより、追従対象を検出する。追従対象検出部101は、検出の信頼度を見失い判定部102に通知する。例えば、追従対象検出部101がテンプレートマッチングによって追従対象を検出するとすれば、二乗誤差和(SSD)が上記信頼度として用いられる。また、追従対象検出部101は、例えばステレオ視を用いて、地図記憶部108に記憶されている地図上での追従対象の位置を検出し、上記信頼度と共に見失い判定部102に通知する。
【0010】
見失い判定部102は、追従対象検出部101から通知された信頼度を予め定める閾値と比較することにより、追従対象の見失いを判定する。即ち、上記信頼度が上記閾値未満であれば、見失い判定部102はロボットが追従対象を見失ったと判定し、上記信頼度が上記閾値以上であれば、見失い判定部102は追従対象が追従対象検出部101より通知された検出位置に存在していると判定する。見失い判定部102は、ロボットが追従対象を見失ったと判定した場合、初期位置推定部104を起動する。そうでなければ、見失い判定部102は、上記検出位置を遷移確率計算部103、移動制御部107、移動履歴記憶部111に渡す。
【0011】
遷移確率算出部103は、地図記憶部108に記憶されている地図中の遷移確率計算地点間の遷移確率を計算する。上記地図は例えば図2に示すような、通路をエッジ、分岐点をノードとするグラフ構造を持つ。図2において、○印がノード、矢印がエッジを夫々示している。以下の説明では上記ノードを遷移確率計算地点として扱う。このとき、ある地点nから遷移先地点nnextへの遷移確率は遷移元地点nprevを条件とする条件付き確率P(n→nnext|nprev)によって規定される。遷移確率計算部103は、見失い判定部102から検出位置が渡されると、当該検出位置が遷移確率計算地点であるか否かを検出する。当該検出位置が遷移確率計算地点nである場合、遷移確率算出部103は追跡対象が前々回通った遷移確率計算地点nppを遷移元地点、前回通った遷移確率計算地点npを現在地点、上記遷移確率計算地点を遷移先地点として遷移確率DB109を検索し、遷移確率P(np→n|npp)を更新する。即ち、npp→npの遷移が生じた回数でnpp→np→nの遷移が生じた回数を除することにより、遷移確率算出部103は遷移確率P(np→n|npp)を算出して、更新する。これに伴い、遷移確率算出部103は関連する遷移確率を更新する。即ち、npp→npの遷移が生じた回数が1増えているため、遷移確率算出部103は遷移確率計算地点npから遷移可能な全ての遷移確率計算地点に対して遷移確率の更新を行う。
【0012】
初期位置推定部104は、存在可能性算出部105において追従対象の存在可能性を算出する際に起点となる初期位置(算出開始位置)を推定し、存在可能性算出部105に通知する。初期位置推定部104は追従対象が見失い発生後に最初に訪れる遷移確率計算地点を推定し、当該遷移確率計算地点を初期位置として存在可能性算出部105に通知する。初期位置推定部104は初期位置を推定する際に、移動履歴記憶部111に記憶されている追従対象の移動履歴を利用する。例えば、初期位置推定部104は見失い直前の少なくとも2つの移動履歴から追従対象の移動ベクトルを推定し、見失い判定部102が追従対象の見失いを判定した見失い地点から上記移動ベクトルの示す方向上に存在し、最も距離の近い遷移確率計算地点を初期位置とする。尚、初期位置推定部104は上記移動ベクトルを補正してもよい。即ち、初期位置推定部104は、見失い地点から初期位置の候補となる遷移確率計算地点に対応する基準ベクトルを上記地図から夫々導出し、上記移動履歴から推定したベクトルに最も近い基準ベクトルを移動ベクトルとし、上記基準ベクトルに対応する遷移確率計算地点を初期位置としてもよい。
【0013】
存在可能性算出部105は、初期位置推定部104が推定した初期位置を起点として、地図中の各遷移確率計算地点における追従対象の存在可能性を算出する。各遷移確率計算地点における存在可能性は0.0から1.0までの数値で表され、上記初期位置には1.0が設定される。また、地図記憶部108に記憶されている地図には例えば施設の出口などのロボットが追従を終了すべき地点が記載されており、存在可能性算出部105は上記追従を終了すべき地点に最も近い遷移確率計算地点を終端位置として、当該地点における存在可能性を1.0に設定する。これは、終端位置は、追従対象が最終的に通る確率が非常に高い位置であるためである。これら初期位置から終端位置までの間に存在する遷移確率計算地点における存在可能性は、次のように算出される。
【0014】
まず、存在可能性算出部105は、初期位置からある遷移確率計算地点までの候補経路を検出する。ここで、候補経路は例えば初期位置から遷移確率計算地点に至るまでの距離が最小となる最短経路であり、例えばダイクストラ法を用いて求めることができる。尚、実際には追従対象は必ずしも最短経路を選ぶとは限らないため、存在可能性算出部105はマージンを持たせて候補経路を検出してもよい。即ち、距離の短い順に複数の経路を候補経路として検出してもよいし、上記最短距離から所定比率まで割り増した距離を持つ経路を候補経路として許容してもよい。最短経路を候補経路とする場合、図2に示すノードA乃至ノードIを遷移確率計算地点とする地図であれば、初期位置であるノードDから、ノードFに至る最短経路は、ノードD→ノードC→ノードG→ノードF(候補経路1)、ノードD→ノードH→ノードG→ノードF(候補経路2)、ノードD→ノードC→ノードB→ノードF(候補経路3)の3つが存在する。
【0015】
次に、存在可能性算出部105は、検出した候補経路全てについて、当該経路上の遷移確率の積を求める。前述したように、遷移確率は遷移元地点を条件とする条件付き確率で規定され、上記例であればノードCは例えば以下に示すような遷移確率を持ち、遷移確率DB109に記憶されている。
【表1】

【0016】
例えば、候補経路1における遷移確率の積は、P(C→G|D)・P(G→F|C)で求めることができる。P(C→G|D)は上記表の最下段を参照することにより0.35と求めることができる。また、P(G→F|C)についても同様に、現在地点G、遷移元地点C、遷移先地点Fをキーとして遷移確率DB109を検索することによって求めることができる。以下同様に、存在可能性算出部105は、候補経路2及び3についても遷移確率の積を求め、上記候補経路1における遷移確率の積と加算することにより、ノードFにおける追従対象の存在可能性E(F)を求める。即ち、ノードFにおける追従対象の存在可能性E(F)は、以下の式で求めることができる。
【数1】

【0017】
上記式(1)において、第1項は候補経路1における遷移確率の積、第2項は候補経路2における遷移確率の積、第3項は候補経路3における遷移確率の積を夫々示している。
【0018】
先回り位置決定部106は、存在可能性算出部105が算出した追従対象の存在可能性、移動履歴記憶部111に記憶された追従対象の移動履歴、追従性能記憶部112に記憶されたロボットのセンサの検出範囲及び移動手段の移動能力を総合的に判断して先回り位置を決定する。具体的には、まず先回り位置決定部106は上記移動履歴から追従対象の移動能力を判断する。即ち、先回り位置決定部106は上記移動履歴から例えば追従対象の移動速度を算出する。先回り位置決定部106は上記追従対象の移動能力と上記移動手段の移動能力を比較し、地図中でロボットが先回り可能な領域を推定する。先回り決定部106は上記先回り可能な領域に含まれる遷移確率計算地点を検出する。先回り決定部106は先回り可能な遷移確率計算地点の各々について、当該遷移確率計算地点を中心として上記検出範囲に含まれる遷移確率計算地点を検出し、これら遷移確率計算地点における存在可能性を合算することにより当該遷移確率計算地点における再発見可能性を算出する。例えば前述した図2の例であれば、センサが十字方向に十分広い検出範囲を備えているとすれば、ノードFにおける再発見可能性は、ノードB、ノードE、ノードJ、ノードG、ノードH及びノードFにおける存在可能性の総和となる。
【0019】
尚、先回り位置決定部106は、上記再発見可能性を算出する際に、上記存在可能性を事象情報記憶部111に記憶されている事象情報に基づいて補正しておいてもよい。事象情報記憶部111には、後述するように人の集まりやすさが変動する特別な事象の発生時間帯および発生位置が記憶されているため、見失い判定部102が見失いを判定した時刻が上記特別な事象の発生時間帯に含まれれば、先回り位置決定部106は上記事象情報を用いて存在可能性を次のように補正することができる。
【0020】
先回り位置決定部106は、上記発生位置からの距離に基づいて上記存在可能性を1.0から0.0までの範囲で重み付けする。例えば、先回り位置決定部106は、人の集まりやすさが高くなる事象が発生していれば、当該事象の発生位置にもっと近い遷移確率計算地点における存在可能性に1.0の重みを与え、当該遷移確率計算地点からの距離に対して単調減少する重みをその他の遷移確率計算地点における存在可能性に与える。また、先回り位置決定部106は、人の集まりやすさが低くなる事象が発生していれば、当該事象の発生位置にもっと近い遷移確率計算地点における存在可能性に0.0の重みを与え、当該遷移確率計算地点からの距離に対して単調増加する重みをその他の遷移確率計算地点における存在可能性に与える。尚、上記重み付けの手法は一例であり、これに限定されるものでない。例えば先回り位置決定部106は全ての遷移確率計算地点における存在可能性を重み付けの対象とせずに、上記事象の発生位置から一定距離までの範囲にある遷移確率計算地点における存在可能性を重み付けの対象としてもよい。先回り位置決定部106は以上のように算出した再発見可能性の最も高い地点を先回り位置と決定し、移動制御部107に渡す。
【0021】
移動制御部107は、見失い判定部102から渡された検出位置または先回り位置決定部106から渡された先回り位置にロボットを移動させるため、図示しない移動手段を制御する。例えば、移動制御部107は、上記移動手段を動作させるためのモータの回転を制御する。
【0022】
地図記憶部108は、前述したように、例えば通路をエッジ、分岐点をノードとするグラフ構造を持つ地図を記憶している。
遷移確率DB109は、遷移確率算出部103が算出した遷移確率を記憶するデータベースである。遷移元地点nprev、現在地点n、遷移先地点nnextをキーとして遷移元地点nprevを条件とする条件付き確率P(n→nnext|nprev)を検索することができる。
【0023】
事象情報記憶部110は、上記存在可能性を重み付けするための特別な事象の発生時間帯及び発生位置を記憶する。具体的には、事象情報記憶部110は例えばタイムセールなどの人の集まりやすさが高くなる事象または工事などの人の集まりやすさが低くなる事象の発生時間帯及び発生位置が記憶されている。
【0024】
移動履歴記憶部111は、追従対象の移動履歴を記憶する。具体的には、見失い判定部102から渡された検出位置が上記遷移確率計算地点であれば、移動履歴記憶部111は追従対象の移動履歴として上記検出位置を記憶する。移動履歴記憶部111は、例えば上記検出位置の遷移を示す時系列データを移動履歴として記憶する。
【0025】
追従性能記憶部112は、ロボットの持つセンサの検出範囲及び移動手段の移動能力を記憶する。上記検出範囲及び移動能力は通常、上記センサ及び移動手段次第で決まる固定値であるが、周囲の状況に合わせた可変値であってもよい。即ち、上記検出範囲及び移動能力は周囲の明るさや路面の状態によって適宜補正されてよい。
【0026】
以下、図3及び図4に示すフローチャートを用いて本実施形態に係るロボット制御装置の動作について説明する。
まず、追従対象検出部101は、図示しないセンサから例えば画像データを受け取り、この画像データを解析することにより、追従対象を検出し、追従対象の位置及び検出の信頼度を見失い判定部102に渡す(ステップS201)。次に、見失い判定部102は、上記信頼度を予め定める閾値と比較し、追従対象の見失いを判定する(ステップS202)。見失い判定部102がステップS201における検出は成功であると判定すれば、処理はステップS203へと進む。一方、見失い判定部102がステップS201における検出は失敗であると判定すれば、処理はステップS300へと進む。
【0027】
ステップS203では、見失い判定部102はステップS201において検出された追従対象の位置が地図記憶部108に記憶されている地図上の追従を終了すべき地点であるか否かを判定する。ステップS201において検出された追従対象の位置が追従を終了すべき地点であれば、追従処理は終了となる。一方、ステップS201において検出された追従対象の位置が追従を終了すべき地点でなければ、見失い判定部102は上記追従対象の位置を遷移確率計算部103、移動制御部107及び移動履歴記憶部111に渡し、処理はステップS204へと進む。
【0028】
ステップS204では、遷移確率計算部103は地図記憶部108を参照して、ステップS201において検出された追従対象の位置が遷移確率計算地点であるか否かを判定する。ステップS201において検出された追従対象の位置が遷移確率計算地点であれば、遷移確率計算部103は遷移確率を計算し、処理はステップS206へと進む。一方、ステップS201において検出された追従対象の位置が遷移確率計算地点でなければ、処理はステップS208へと進む。
【0029】
ステップS206では、遷移確率計算部103は遷移確率DB109をステップS204において計算した遷移確率に基づいて更新する。次に、ステップS203において渡された追従対象の位置に基づいて移動履歴記憶部111の記憶する追従対象の移動履歴が更新され、処理はステップS208へと進む。
【0030】
ステップS208では、移動制御部107がステップS204にて渡された追従対象の位置に向かってロボットが移動するように移動手段を制御し、ステップS201へと戻る。
【0031】
図4に示すように、ステップS300における追従対象の再発見処理はステップS301乃至ステップS305を含む。まず、初期位置推定部104が、移動履歴記憶部111に記憶されている追従対象の移動履歴から導出した追従対象の移動ベクトル及び追従対象の見失い位置に基づいて、追従対象が見失い発生後最初に訪れる遷移確率計算地点を推定し、当該遷移確率計算地点を初期位置として存在可能性算出部105に渡す(ステップS301)。
【0032】
次に、存在可能性算出部105が、ステップS301において推定した初期位置を起点として各遷移確率計算地点における存在可能性を算出する(ステップS302)。次に、先回り位置決定部106は、事象情報記憶部110に記憶されている事象情報に基づいてステップS302において算出された存在可能性に重み付けを行う(ステップS303)。
【0033】
次に、先回り位置決定部106はロボットが移動すべき先回り位置を決定し、移動制御部107に通知する(ステップS304)。具体的には、先回り位置決定部106は移動履歴記憶部111に記憶されている追従対象の移動履歴から追従対象の移動能力を推定し、追従性能記憶部112に記憶されている移動手段の移動能力と比較して、ロボットが先回り可能な遷移確率計算地点を検出する。先回り位置決定部106は、上記先回り可能な遷移確率計算地点の夫々において、当該遷移確率計算地点を中心としてセンサの検出範囲に含まれる全ての遷移確率計算地点における存在可能性を合算して再発見可能性を算出する。先回り位置決定部106は上記再発見可能性が最も高い遷移確率計算地点を先回り位置に決定する。
【0034】
次に、移動制御部107は先回り位置決定部106から通知された先回り位置にロボットが移動するように移動手段を制御し、処理はステップS201へと戻る(ステップS305)。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係るロボット制御装置は、地図中の複数地点に遷移確率計算地点を設け、当該地点間の遷移確率に基づいて追従対象の再発見可能性を算出している。従って、本実施形態に係るロボット制御装置によれば、追従対象の再発見位置を精度良く推定できるため、ロボットが追従対象を見失いやすい大型の施設や施設利用者の多い場所であっても追従サービスの提供を続行させることができる。
【0036】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】一実施形態に係るロボット制御装置を示すブロック図。
【図2】図1に示すロボット制御装置による、追従対象の再発見動作を説明するための概念図。
【図3】図1に示すロボット制御装置による、追従動作を示すフローチャート。
【図4】図3に示す追従対象の再発見処理を詳しく示すフローチャート。
【符号の説明】
【0038】
101・・・追従対象検出部
102・・・見失い判定部
103・・・遷移確率計算部
104・・・初期位置推定部
105・・・存在可能性算出部
106・・・先回り位置決定部
107・・・移動制御部
108・・・地図記憶部
109・・・遷移確率DB
110・・・事象情報記憶部
111・・・移動履歴記憶部
112・・・追従性能記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
追従対象を検出するセンサ及び前記追従対象に追従する移動手段を備えたロボットの制御装置において、
前記追従対象の移動可能な通路と前記通路上に配置される、第1計算地点及び第2計算地点を含む複数の計算地点とが記載された地図を記憶する第1の記憶部と、
前記追従対象の移動履歴を記憶する第2の記憶部と、
前記地図を参照して前記追従対象が前記通路上を前記第1計算地点から前記第2計算地点に移動する遷移確率を算出する算出部と、
前記センサが前記追従対象を検出できない場合に、前記移動履歴及び前記遷移確率に基づいて前記複数の計算地点における前記追従対象の存在可能性を予測する予測部と
を具備することを特徴とするロボット制御装置。
【請求項2】
前記予測部は、前記移動履歴に基づいて前記追従対象が次に移動する算出開始位置を推定し、前記算出開始位置から前記複数の計算地点に至る全ての候補経路について、前記候補経路上の遷移確率の積を合算することにより、前記複数の計算地点における存在可能性を予測することを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記地図は、前記通路をエッジ、前記通路の分岐点をノードとするグラフ構造を有し、前記複数の計算地点は前記ノード上に設定されることを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置。
【請求項4】
前記地図は、更に前記ロボットが追従を終了する終端位置が記載されていることを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置。
【請求項5】
前記予測部は、更に前記終端位置における前記追従対象の存在可能性を予測するように構成され、前記終端位置における前記追従対象の存在可能性を前記複数の計算地点における追従対象の存在可能性よりも高く予測することを特徴とする請求項4記載のロボット制御装置。
【請求項6】
前記地図上で人の集まりやすさが変動する事象の発生する発生時間帯及び発生位置を記憶する第3の記憶部を更に具備することを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置。
【請求項7】
前記予測部は、前記発生時間帯に基づいて前記事象の発生を検出すると、前記発生位置からの距離に応じて前記複数の計算地点における追従対象の存在可能性を重み付けすることを特徴とする請求項6記載のロボット制御装置。
【請求項8】
前記算出部は、前記追従対象が前記第1計算地点から前記第2計算地点に移動した回数を、前記追従対象が前記第1計算点を通った回数で除することにより前記遷移確率を算出することを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置。
【請求項9】
前記センサの検出範囲及び前記移動手段の第1移動能力を記憶する第4の記憶部と、
(a)前記検出範囲、(b)前記第1移動能力、(c)前記移動履歴に基づいて算出した前記追従対象の第2移動能力及び(d)前記存在可能性に基づいて前記ロボットの移動位置を決定する決定部と
を更に具備することを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置。
【請求項10】
前記決定部は、前記第1移動能力及び前記第2移動能力に基づいて、前記地図上で前記ロボットの先回り可能な領域を検出し、前記領域から前記移動位置を決定することを特徴とする請求項9記載のロボット制御装置。
【請求項11】
前記決定部は、前記複数の計算地点のうち前記領域に含まれる計算地点において、前記検出範囲に含まれる計算地点における前記存在可能性を合算して再発見可能性を算出し、当該再発見可能性に基づいて前記移動位置を決定することを特徴とする請求項10記載のロボット制御装置。
【請求項12】
前記決定部は、前記再発見可能性の最も高い地点を前記移動位置として決定することを特徴とする請求項11記載のロボット制御装置。
【請求項13】
追従対象を検出するセンサ及び前記追従対象に追従する移動手段を備えたロボットの制御方法において、
前記追従対象の移動可能な通路と前記通路上に配置される、第1計算地点及び第2計算地点を含む複数の計算地点とが記載された地図を記憶し
前記追従対象の移動履歴を記憶し、
前記地図を参照して前記追従対象が前記通路上を前記第1計算地点から前記第2計算地点に移動する遷移確率を算出し、
前記センサが前記追従対象を検出できない場合に、前記移動履歴及び前記遷移確率に基づいて前記複数の計算地点における前記追従対象の存在可能性を予測する
ことを特徴とするロボット制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−20749(P2009−20749A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183523(P2007−183523)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト、ロボット搬送システム(サービスロボット分野)、店舗応用を目指したロボット搬送システムの研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】