説明

ロータリーキルン

【課題】 製作容易な構成で伝熱面積を増加させる。
【解決手段】 内筒4と外筒5との間に熱風15を流通させる加熱流路6を備えたキルン本体1を形成する。内筒4の内周面の周方向所要間隔位置に、扁平な矩形断面形状を有し、内筒の全長に亘って軸心方向に平行に延びる中空構造のリフター18,19を、内筒4の内周面の接線方向に対して直角又は直角に近い角度で内側へ突出させて設ける。各リフター18,19の内部空間は、長手方向他端部の2個所を加熱流路6に連通させて、熱風15を流通させるための内部加熱流路20とする。回転させた内筒4内に供給される廃棄物9を、加熱流路6と内部加熱流路20を流通する熱風15の外熱により、内筒4の周面と各リフター18,19の表面を伝熱面として間接加熱して、乾燥、熱分解、炭化処理させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物やバイオマスと云われる生物由来資源等の有機物を外熱により間接加熱して乾燥、熱分解、炭化処理するために用いるロータリーキルンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ等の廃棄物の処理システムのうち、廃棄物を焼却炉で燃焼するようにした燃焼方式に代るものとして、近年では、廃棄物を低酸素雰囲気で加熱することにより熱分解させて、可燃性の熱分解ガスと、熱分解残渣としての炭化物(チャー)及び灰分を発生させ、該熱分解ガスと熱分解残渣を溶融炉へ導き、少ない空気量(たとえば、空気比1.3程度)で高温にして燃焼させ、溶融スラグとして取り出すようにし、更に排ガスは排ガス処理装置で処理して大気へ放出するようにした廃棄物の熱分解ガス化溶融設備や、上記熱分解ガスは燃焼炉で燃焼させた後、排ガス処理を施してから大気へ放出させるようにし、一方、熱分解残渣は、選別、粉砕をして炭化物を回収するようにした廃棄物の炭化処理設備(熱分解ガス化設備)が開発され、実用化されている。
【0003】
この種の廃棄物の熱分解ガス化溶融設備や廃棄物の炭化処理設備において廃棄物の熱分解、炭化処理を行なうための装置の1つとしては、外熱式のロータリーキルンが用いられてきている。
【0004】
図3は従来提案されている外熱式のロータリーキルンの一例の概略を示すもので、一端の入口2側に供給管2aを一体に接続し且つ他端の出口3側に排出管3aを一体に接続した内筒4と、該内筒4の外側に同心状に配置した外筒5との間に、加熱流路6を形成し、上記外筒5と内筒4を一体で回転できるようにした二重筒構造のキルン本体1を構成して、該キルン本体1を、水平のまま、あるいは、一端の入口2側よりも他端の出口3側が僅かに低くなるように傾斜させて回転駆動可能に横置きする。
【0005】
上記キルン本体1の入口2には、給じん機7が供給管2aの内側に挿入して設けてあり、投入ホッパ8に投入された廃棄物9を、給じん機7により入口2へ供給するようにしてある。一方、上記キルン本体1の出口3には、熱分解ガス10と熱分解残渣11とを分離する分離室12を設けて、該分離室12の頂部より上記熱分解ガス10、又、底部より上記熱分解残渣11をそれぞれ取り出すことができるようにしてある。
【0006】
更に、上記キルン本体1の出口3側には、上記加熱流路6に連通する加熱ガス入口13を、又、キルン本体1の入口2側には、上記加熱ガス流路6に連通させた加熱ガス出口14をそれぞれ設けて、上記加熱ガス入口13より供給される加熱用ガスとしての熱風15を、加熱流路6を流通させた後、上記加熱ガス出口14より排出できるようにしてある。
これにより、上記キルン本体1を低速(例えば1rpm)で回転駆動させた状態において、投入ホッパ8内の廃棄物9を給じん機7によりキルン本体1の内筒4内へ徐々に供給しつつ、高温の熱風15を、上記加熱ガス入口13より加熱流路6に供給して流通させることにより、上記内筒4内の廃棄物9を上記熱風15による外熱により間接加熱して、熱分解、炭化させるようにしてある。
【0007】
ところで、上記構成としてあるロータリーキルンでは、内筒4の周面のみを伝熱面とする間接加熱方式であるため、処理能力を高めるためには、内筒4の径を大きくするか内筒4を長くしなければならず、ロータリーキルン全体が大型化してしまう。
【0008】
そのため、外熱による間接加熱方式のロータリーキルンにおいて、全体を大型化することなく伝熱面積を増大させて処理能力を高めることができるようにするために、図4に示す如く、上記内筒4の内周面の周方向所要間隔位置に、扁平な矩形断面形状として内部にガス通路17を形成するようにしたプレート状の複数の伝熱管16を、該内筒4の回転方向(矢印r方向)の前方へ傾斜した角度で内筒4内側へ所要寸法張り出すように立てて長手方向の全長に亘りスパイラル状に取り付けて、上記各伝熱管16のガス通路17内に、加熱ガス入口13より加熱流路6へ供給される熱風15(図3参照)の一部を流通させることができるようにした構成とすることが従来提案されてきている(たとえば、特許文献1参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2002−156105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記図4に示した如き内筒4内にスパイラル状の伝熱管16を具備してなる形式のロータリーキルンによれば、内筒4の回転に伴い、各スパイラル状の伝熱管16が順次廃棄物9を掬い上げるようになるため、上記内筒4の周面に加えて、上記各スパイラル状の伝熱管16の両側面を伝熱面として廃棄物9に接触させることができるため、ロータリーキルン全体を大型化することなく伝熱面積を増大させて処理能力を高めるには有効であるが、上記扁平な断面形状で且つ内部にガス通路17を有する伝熱管16をスパイラル状に製作する必要があるため、このスパイラル状の伝熱管16を精度よく製作するのに労力及び製作コストが嵩むというのが実状である。
【0011】
更に、ロータリーキルンを設置する場合、通常、キルン本体1がある一定規模までは一体輸送可能であるが、たとえば、搬送用車両の積載制限等により、ある規模、たとえば、長さが15m程度を超えるようなスケールアップされたキルン本体1については、該キルン本体1を長さ方向に分割した状態で工場製作し、この工場製作された分割体により長さ方向の現地組立てを行う必要が生じる。このようなキルン本体1の長さ方向の現地組み立てを、上記スパイラル状の伝熱管16を具備した形式のロータリーキルンで行う場合は、キルン本体1の長さ方向の分割に応じて内筒4の内周面に取り付ける各スパイラル状の伝熱管16も長さ方向に分割した状態で工場製作しておき、現地組立てする必要が生じるが、この各スパイラル状の伝熱管16の現地組立も複雑で精度が求められるため、製作コストが嵩むというのが実状である。
【0012】
又、上記各伝熱管16が、内筒4の内周面に該内筒4の回転方向(矢印r方向)の前方へ傾斜させて設けてあると、該各伝熱管16のキルン回転方向前方に臨む面と、内筒4の内周面との間に鋭角のコーナ部が形成されるため、この鋭角のコーナ部に、廃棄物12や熱分解残渣11(図3参照)が詰まって滞留し易くなる虞も懸念される。
【0013】
そこで、本発明は、外熱による間接加熱方式のロータリーキルンにおいて、全体を大型化することなく伝熱面積を増大させて処理能力を高めることができるようにするものの製作に要する労力を低減できると共に、製作コストを削減することが可能なロータリーキルンを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するために、長手方向の両端部を供給管と排出管に接続した内筒と、その外側に設けた外筒との間に加熱流路を備えてなるキルン本体を備え、且つ上記内筒を回転させた状態にて、上記供給管より内筒内へ供給した原料を、上記加熱流路を流通させる高温ガスの外熱により間接加熱して乾燥、熱分解、炭化処理できるようにしてあるロータリーキルンにおける上記内筒の内周面の周方向所要間隔位置に、内筒の全長に亘って軸心方向に平行に延びる中空構造のリフターを、内側へ突出させて設け、更に、上記リフターの内部を内部加熱流路として、上記加熱流路を流通させる高温ガスの一部を流通させることができるようにした構成とする。
【0015】
又、上記構成におけるリフターを、扁平な矩形断面形状として内筒の内周面の接線方向に対して直角又は直角に近い角度で内側へ突出させて設けるようにした構成とする。
【0016】
更に、上記各構成において、内筒の内周面の周方向に配列されたリフターのうち、周方向所要枚数おきの複数枚のリフターを、内筒の内周面からの高さ寸法が他のリフターの高さ寸法よりも所要寸法高くなるようにした構成とする。
【0017】
更に又、上記構成において、高さ寸法の高いリフターの先端部と、高さ寸法の低いリフターのうち、上記高さ寸法の高いリフターに対し内筒回転方向の後方に隣接するものを除く高さ寸法の低いリフターの先端部に、内筒回転方向の前方へ所要角度屈曲した屈曲部を設けるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のロータリーキルンによれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)長手方向の両端部を供給管と排出管に接続した内筒と、その外側に設けた外筒との間に加熱流路を備えてなるキルン本体を備え、且つ上記内筒を回転させた状態にて、上記供給管より内筒内へ供給した原料を、上記加熱流路を流通させる高温ガスの外熱により間接加熱して乾燥、熱分解、炭化処理できるようにしてあるロータリーキルンにおける上記内筒の内周面の周方向所要間隔位置に、内筒の全長に亘って軸心方向に平行に延びる中空構造のリフターを、内側へ突出させて設け、更に、上記リフターの内部を内部加熱流路として、上記加熱流路を流通させる高温ガスの一部を流通させることができるようにした構成としてあるので、各リフターの構造をシンプルなものとすることができて、該各リフターを容易に且つ精度よく製作することが可能になる。したがって、該各リフターを具備してなるキルン本体を、組立や製作が容易な簡単な構造とすることができると共に、製作労力の低減化や製作コストの削減化を図ることができる。
(2)又、上記のようにキルン本体の組立や製作が容易な構造であるにもかかわらず、内筒の周面に加えて、各リフターの表面を、原料を間接加熱するための伝熱面とすることができるため、ロータリーキルン全体を大型化することなく伝熱面積を増大させて処理能力を高めることができる。
(3)更に、キルン本体をスケールアップする場合には、工場製作したキルン本体の長さ方向の分割体からキルン本体を現地組立した後、内筒の内周面に、上記シンプルな構造としてある各リフターを取り付けるようにすればよいことから、工場製作及び現地組立ての作業をいずれも容易なものとすることができて、現地据付工事の工程短縮が期待できる。
(4)リフターを、扁平な矩形断面形状として内筒の内周面の接線方向に対して直角又は直角に近い角度で内側へ突出させて設けるようにした構成とすることにより、リフターにおける内筒の回転方向前方に臨む面と、内筒の内周面との間に鋭角のコーナ部が形成されなくなるため、リフターにおける内筒の回転方向前方に臨む面と、内筒の内周面との間に原料やその熱分解によって生じる熱分解残渣が詰まって滞留や付着する虞を未然に防止することが可能になる。
(5)内筒の内周面の周方向に配列されたリフターのうち、周方向所要枚数おきの複数枚のリフターを、内筒の内周面からの高さ寸法が他のリフターの高さ寸法よりも所要寸法高くなるようにした構成とすることにより、周方向にすべて同じ高さ寸法のリフターを設ける場合に比して、原料を間接加熱するための伝熱面積を拡大することができて、ロータリーキルンの処理能力の更なる向上化を図ることができる。
(6)高さ寸法の高いリフターの先端部と、高さ寸法の低いリフターのうち、上記高さ寸法の高いリフターに対し内筒回転方向の後方に隣接するものを除く高さ寸法の低いリフターの先端部に、内筒回転方向の前方へ所要角度屈曲した屈曲部を設けるようにした構成とすることにより、内筒の回転時に、上記屈曲部を設けた各リフターでは、掬い上げた原料の落下を抑制して、該掬い上げた原料との接触時間を延長できるため、原料に対する伝熱を促進することができて、ロータリーキルンの処理能力の更なる向上化が期待できる。しかも、高さ寸法の高いリフターの内筒回転方向の後方に隣接するリフターの先端部に、内筒回転方向の前方へ屈曲した屈曲部を設ける場合に懸念されるような、該高さ寸法の高いリフターの内筒回転方向の後方に隣接するリフターの先端部が、上記高さ寸法の高いリフターに接近して、該部分に原料の挟まりによる詰まりが生じる虞を解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1(イ)(ロ)は本発明のロータリーキルンの実施の一形態を示すもので、図3に示したと同様の構成としてあるロータリーキルンにおいて、内筒4の内周面の周方向所要間隔位置、たとえば、周方向30度間隔位置に、扁平な矩形断面形状を有し且つ内筒の全長に亘って軸心方向(炉長方向)に平行に延びる中空構造のリフター18,19を、上記内筒4の内周面の接線方向に対して直角又は直角に近い角度で内側へ突出させて設ける。
【0021】
上記各リフター18,19の内部空間は、該各リフター18,19の加熱ガス入口13寄りとなる長手方向一端部と、熱分解ガス出口14寄りとなる長手方向他端部の2個所を、内筒4のそれぞれ対応する個所に穿設した図示しない貫通孔を介して加熱流路6に連通させた構成としてある。これにより、上記各リフター18,19の内部を、上記加熱ガス入口13より加熱流路6へ供給される熱風15の一部を流通させる内部加熱流路20としてある。
【0022】
更に、上記周方向に配列した各リフター18,19のうち、周方向所要枚数おきの複数枚のリフター18、たとえば、周方向90度間隔で配された4枚のリフター18は、内筒4の内周面からの高さ寸法aが、他のリフター19の高さ寸法bよりも所要寸法高くなるようにしてある。具体的には、上記高さの高い各リフター18の高さ寸法aを、高さの低い各リフター19の高さ寸法bの2倍程度に設定してある。なお、上記高さ寸法の高い各リフター18の先端部(内側端部)同士の間には、少なくとも熱分解、炭化処理用の原料としての廃棄物9の最大粒径の数倍程度の間隔が形成されるようにして、上記高さ寸法の高い各リフター18の先端部(内側端部)同士の間に、上記廃棄物9が挟まる等して詰まる虞を未然に防止できるようにしてある。
【0023】
図1(ロ)における矢印rは内筒4の回転方向を示す。なお、図1(ロ)では廃棄物9の記載は省略してある。その他の構成は図3に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0024】
以上の構成としてあるロータリーキルンを使用する場合は、図3に示したものと同様に、高温の熱風15を、上記加熱ガス入口13より加熱流路へ供給すると、該熱風15は、内外筒間に形成してある加熱流路6を流通して加熱ガス出口14へ向かうと共に、その一部が、上記各リフター18と19の内部加熱流路20を経由して流通させられるようになる。この状態にて、上記キルン本体1を図1(ロ)に矢印rで示す方向へ低速(例えば1rpm)で回転駆動させながら、投入ホッパ8内の廃棄物9を給じん機7によりキルン本体1の内筒4内へ徐々に供給すると、該供給された廃棄物9は、上記内筒4内を入口2側から出口3側へ通過する間に、上記内筒4と一体に回転する各リフター18,19によって掬い上げられて撹拌され、その際、上記廃棄物9は、内筒4の周面と、上記各リフター18,19の両側面を伝熱面として、上記各加熱流路6及び20を流通している熱風15による該熱により間接加熱されて、乾燥、熱分解、炭化処理が行なわれるようになる。
【0025】
このように、本発明のロータリーキルンによれば、上記各リフター18,19が、内筒4の軸心方向に平行に延びる形状、すなわち、真っ直ぐに延びる形状としてあるため、該各リフター18,19の両側面と先端面(内側端面)をいずれも平面とすることができる。これにより、各リフター18,19の構造をシンプルなものとすることができて、該各リフター18,19を、容易に且つ精度よく製作することが可能になる。したがって、該各リフター18,19を具備してなるキルン本体1を、組立や製作が容易な簡単な構造とすることができると共に、製作労力の低減化や製作コストの削減化を図ることができる。
【0026】
又、上記したように組立や製作が容易な構造であるにもかかわらず、内筒4の周面に加えて、各リフター18,19の表面を、原料としての廃棄物9を間接加熱するための伝熱面とすることができるため、外熱による間接加熱方式のロータリーキルンにおいて、全体を大型化することなく伝熱面積を増大させて処理能力を高めることが可能になる。よって、図3に示した如き内筒4の周面のみを伝熱面とする従来のロータリーキルンと同程度の処理能力を所望する場合には、ロータリーキルン全体の小型化を図ることが可能になる。
【0027】
更に、本発明のロータリーキルンをスケールアップする場合は、工場製作した該キルン本体1の長さ方向の分割体から規模の大きなキルン本体1を現地組立した後、内筒4の内周面に、上記シンプルな構造としてある各リフター18,19を、適宜長さ方向に組立ながら取り付けるようにすればよいことから、工場製作及び現地組立ての作業をいずれも容易なものとすることができる。これにより、現地据付工事の工程短縮が期待できる。
【0028】
更に、上記各リフター18,19のうち、周方向所要枚数おきの複数枚のリフター18を、廃棄物9の挟まりによる詰まりが生じない範囲で内筒4の内周面からの高さ寸法が高いものとしてあることから、周方向にすべて同じ高さ寸法のリフターを設ける場合に比して、廃棄物9を間接加熱するための伝熱面積を拡大することができて、ロータリーキルンの処理能力の更なる向上化を図ることができる。
【0029】
しかも、上記各リフター18,19は、内筒4の内周面の接線方向に対して直角又は直角に近い角度で内側へ突出させて設けるようにしてあることから、該各リフター18,19における内筒4の回転方向(矢印r方向)の前方に臨む面と、内筒4の内周面との間に鋭角のコーナ部が形成されなくなるため、この各リフター18,19における内筒4の回転方向前方に臨む面と、内筒4の内周面との間に廃棄物4や熱分解残渣11が詰まって滞留する虞を未然に防止することが可能になる。よって、このことからも、ロータリーキルンの処理能力の向上化が期待できる。
【0030】
次に、図2は本発明の実施の他の形態として、上記実施の形態の変形例を示すもので、図1(イ)(ロ)に示したと同様の構成において、高さ寸法aの高いリフター18の先端部に、内筒回転方向(矢印r方向)の前方へ所要角度屈曲した屈曲部18aを設け、更に、高さ寸法bが低いリフター19のうち、上記高さ寸法aの高いリフター18の内筒回転方向(矢印r方向)の後方に隣接するもの以外の高さ寸法bの低いリフター19の先端部に、内筒回転方向(矢印r方向)の前方へ所要角度屈曲した屈曲部19aを設けるようにしたものである。
【0031】
なお、図2では廃棄物9の記載は省略してある。その他の構成は図1(イ)(ロ)に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0032】
本実施の形態によれば、内筒4の回転時に、上記高さ寸法の高いリフター18、及び、高さ寸法の低いリフター19のうち、上記高さ寸法aの高いリフター18の内筒回転方向(矢印r方向)の後方に隣接するもの以外の高さ寸法bの低いリフター19では、それぞれの先端部に設けてある屈曲部18a,19aによって、掬い上げた廃棄物9の落下を抑制して、該掬い上げた廃棄物9との接触時間を延長できるため、廃棄物9に対する伝熱を促進することができて、ロータリーキルンの処理能力の更なる向上化が期待できる。
【0033】
なお、高さ寸法bが低いリフター19のうち、高さ寸法aの高いリフター18の内筒回転方向(矢印r方向)の後方に隣接するリフター19の先端部に、内筒回転方向(矢印r方向)の前方へ屈曲した屈曲部を設ける場合には、該高さ寸法aの高いリフター18の内筒回転方向(矢印r方向)の後方に隣接するリフター19の先端部が、上記高さ寸法aの高いリフター18に接近することになるため、該部分に廃棄物9の挟まりによる詰まりが生じる虞が懸念されるが、本実施の形態のロータリーキルンでは、上記高さ寸法aの高いリフター18の内筒回転方向(矢印r方向)の後方に隣接する高さ寸法bの低いリフター19の先端部と、高さ寸法aの高いリフター18との間に上記のような廃棄物9の詰まりが生じる虞を解消できる。
【0034】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、
内筒4の内面や各リフター18,19の表面を波状やコルゲート状にしてもよい。このようにすれば、伝熱面積の更なる拡大を図ることができる。
【0035】
廃棄物9以外の原料の乾燥、熱分解、炭化処理を行うロータリーキルンにも適用できる。
【0036】
内筒4の内周面に設けるリフター18,19の総数や、高さ寸法の低いリフター19の枚数に対する高さ寸法aの高いリフター18の枚数の比は、内筒4の径の大小や、ロータリーキルンに所望する伝熱効率等に応じて適宜変更してもよい。又、上記各リフター18,19のそれぞれの高さ寸法や、高さ寸法aの高いリフター18と高さ寸法の低いリフター19の高さ寸法の比は、内筒4の径の大小や、乾燥、熱分解、炭化処理の対象となる原料の粒径や性状に応じて適宜変更してもよい。
【0037】
供給管2aより供給される廃棄物9を受け入れて外熱により原料の乾燥、熱分解、炭化処理を行なうための回転する内筒4を備えていれば、いかなる形式のロータリーキルンに適用してもよい。その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のロータリーキルンの実施の一形態を示すもので、(イ)は一部切断概略側面図、(ロ)は(イ)のA−A方向矢視拡大図である。
【図2】本発明の実施の他の形態を示す図1(ロ)に対応する図である。
【図3】従来提案されているロータリーキルンの一例の概略を示す切断側面図である。
【図4】従来提案されている内筒内にスパイラル状の伝熱管を具備した形式のロータリーキルンを示すキルン本体の切断図である。
【符号の説明】
【0039】
1 キルン本体
2a 供給管
3a 排出管
4 内筒
5 外筒
6 加熱流路
9 廃棄物(原料)
15 熱風(高温ガス)
18 リフター
18a 屈曲部
19 リフター
19a 屈曲部
20 内部加熱流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の両端部を供給管と排出管に接続した内筒と、その外側に設けた外筒との間に加熱流路を備えてなるキルン本体を備え、且つ上記内筒を回転させた状態にて、上記供給管より内筒内へ供給した原料を、上記加熱流路を流通させる高温ガスの外熱により間接加熱して乾燥、熱分解、炭化処理できるようにしてあるロータリーキルンにおける上記内筒の内周面の周方向所要間隔位置に、内筒の全長に亘って軸心方向に平行に延びる中空構造のリフターを、内側へ突出させて設け、更に、上記リフターの内部を内部加熱流路として、上記加熱流路を流通させる高温ガスの一部を流通させることができるようにした構成を有することを特徴とするロータリーキルン。
【請求項2】
リフターを、扁平な矩形断面形状として内筒の内周面の接線方向に対して直角又は直角に近い角度で内側へ突出させて設けるようにした請求項1記載のロータリーキルン。
【請求項3】
内筒の内周面の周方向に配列されたリフターのうち、周方向所要枚数おきの複数枚のリフターを、内筒の内周面からの高さ寸法が他のリフターの高さ寸法よりも所要寸法高くなるようにした請求項1又は2記載のロータリーキルン。
【請求項4】
高さ寸法の高いリフターの先端部と、高さ寸法の低いリフターのうち、上記高さ寸法の高いリフターに対し内筒回転方向の後方に隣接するものを除く高さ寸法の低いリフターの先端部に、内筒回転方向の前方へ所要角度屈曲した屈曲部を設けるようにした請求項3記載のロータリーキルン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−127946(P2009−127946A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304006(P2007−304006)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】