説明

ロータリー式充填装置

【課題】高速運転時に充填液が遠心力によって外方へ振られても、容器2の底面2cの中央部に当てることを可能にする。
【解決手段】回転体28の外周に円周方向等間隔で複数の充填手段30が設けられ、各充填手段30の下方に、容器2を支持する容器支持手段48が配置されており、容器2を回転搬送しつつ充填を行う。充填手段30には、液バルブ46の開閉によって連通遮断される充填液通路34が形成されており、この充填液通路34を、遠心力によって充填液が外側に振られる角度に相当する角度θだけ回転体28の回転軸O2に対して傾斜して配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体に設けた容器支持手段に容器を支持させて容器を回転搬送しつつ、上方の充填手段から液体の充填を行うロータリー式充填装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的なロータリー式充填装置は、図5に示すように、回転体128の外周に円周方向等間隔で設けられた複数の充填手段(充填バルブ)130と、これら各充填手段130の下方にそれぞれ設けられた、容器2を支持するネックグリッパ等の容器支持手段148とを備えており、回転体128の回転に伴って、容器2を回転搬送しつつ液バルブ146を開放してこの容器2内に液体を充填するようになっている。このようなロータリー式充填装置では、回転体128が高速回転する高能力の装置の場合には、充填手段130から吐出される充填液150が遠心力の影響を受けて回転体128の半径方向外方へ振られてしまう。
【0003】
前記充填手段130の充填液通路134および容器支持手段148に支持されている容器2の軸線O11は、充填装置の回転軸心O12と平行になっているので、充填手段130から吐出された液体は、容器2の底面2cの中央部から外れて、底面2cの周縁部に当たってしまう。すると、充填液は、容器2の底面2cに当たった後側壁2dに沿って回り込み、再び底面2cに戻るような流れになり、側壁2dから底面2cに回り込む際にエアを巻き込んで大きな泡が立ってしまうという問題があった。そこで、容器2内に充填される液体を容器2の底面2cの中央部に当てることにより、泡立ちが発生することを防止することが可能なロータリー式充填装置が提案された(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1には、回転体に円周方向等間隔で設けられた複数の充填手段と、これら各充填手段にそれぞれ対応して設けられ、供給スターホイールを介して容器が供給される容器台と、これら各容器台に設けられ、供給された容器のネック部を把持するネック把持手段および胴部を支持する胴支持手段とを備えたロータリー式充填装置に、容器の底部を回転体の半径方向外方へ向けて傾斜させる傾斜手段と、前記充填手段のノズルを、容器口部の中心軸から回転体の中心側にオフセットして配置した構成が記載されている。
【0005】
この特許文献1に記載された発明の構成によると、充填時に、遠心力によって回転体の外方に向かって振られた充填液を、容器の底面の中央部に当てることができるので、容器の側壁に沿って流れることにより空気を巻き込んでしまうという従来の装置の欠点がなく、大きい泡の発生を防止することができる。
【0006】
また、他にも、容器を傾斜させて搬送するようにした充填装置が知られている(特許文献2参照)。この引用文献2には、「上端に開口を有する収容容器を円運動させ、円運動させた前記収容容器に液体食品を充填し、円運動させた状態で前記収容容器の上端に蓋体を配設し、該蓋体を前記収容容器の上端にシールする。そして、円運動させた収容容器は、円運動の回転速度に対応させて傾斜させられる」構成の包装容器の充填方法が記載されている。
【特許文献1】特開2003−63594号公報(第2−4頁、図5)
【特許文献2】特開平8−156905号公報(第2−3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
充填装置は、上流側に容器を洗浄するリンサ等が配置され、下流側には液体が充填された後の容器にキャッピングを行うキャッパ等の容器処理装置が配置されており、ロータリー式充填装置で容器を傾斜させて搬送していると、リンサやキャッパとの容器の受け渡しが困難であるという問題が発生する。また、近年では、飲料等の容器としてペットボトルが広く用いられているが、このようなペットボトルでは、ネックグリッパによって首部を支持して吊り下げた状態で搬送するので、前記特許文献1に記載された発明の構成を適用することは不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明は、回転体に円周方向等間隔で設けられ、内部に充填液通路とこの充填液通路を開閉する液バルブが形成された複数の充填手段と、これら各充填手段にそれぞれ対応して設けられた容器支持手段と、前記回転体を回転させる駆動手段とを備え、容器を所定の充填速度で回転搬送しつつ液体を充填するロータリー式充填装置において、前記充填手段の充填液通路の軸心を前記回転体の回転軸に対して内側へ傾斜して配置することにより、前記回転体を所定の充填速度で回転駆動させた際に、前記充填手段から吐出される充填液を容器底の中央付近に到達させることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2に記載した発明は、前記充填手段の充填液通路は、前記充填手段の充填液通路の軸心が回転体の回転軸に対して平行に配置された場合に、前記充填手段から吐出される充填液が遠心力により外側に振られる角度とほぼ同等の角度だけ傾斜して配置することを特徴とするものである。
【0010】
さらに、請求項3に記載した発明は、容器を前記回転体に供給する供給手段と、充填が終了した容器を下流へ排出する排出手段と、前記供給手段に進退動可能に設けられ、容器と係合して前記回転体への容器の供給を停止させるストッパとを備え、異常発生時には、前記ストッパを前進させることにより前記回転体への容器の供給を停止させるとともに、前記回転体内にある容器に対して充填液を充填して排出し、運転再開時には、前記ストッパを後退させて前記回転体への容器の供給を再開するとともに、容器への充填が行われるまでに前記回転体を所定の充填速度で回転させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のロータリー式充填装置は、充填手段の充填液通路を回転体の回転軸に対して内側に傾斜して配置したので、遠心力の影響を受けて外方へ振られた充填液を容器の底面の中央部に当てることができ、泡立ちが発生することを防止することができる。しかも、容器は傾斜させず、直立した状態で保持しているので、上流側のリンサや、下流側のキャッパともスムーズに容器の受け渡しを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
充填液通路とこの充填液通路を開閉する液バルブを有する充填手段を、回転体に円周方向等間隔で設けるとともに、これら各充填手段に対応して容器支持手段を設け、かつ、前記充填手段の充填液通路を、遠心力によって充填液が外側に振られる角度に相当する角度だけ回転体の回転軸に対して傾斜して配置するという構成により、充填液通路から吐出された充填液が遠心力の影響で容器の底面の中央部から外れることを防止するという目的を達成する。
【実施例1】
【0013】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は本発明の一実施例に係るロータリー式充填装置を備えた充填ライン全体の構成を簡略化して示す平面図、図2は本発明の一実施例に係るロータリー式充填装置の要部を拡大して示す縦断面図である。
【0014】
この実施例に係る充填装置で液体が充填される容器2はペットボトルであり、この充填ライン内では、首部2aを支持されて吊り下げられた状態でネック搬送され、充填装置等の各処理装置内を搬送されて充填その他の処理が行われる。容器2は、エアコンベヤ6によって供給され、スクリュー8によって所定の間隔に切り離されて供給スターホイール10に引き渡される。これら容器2は、供給スターホイール10を介してリンサ12に供給され、回転搬送される間に洗浄された後、中間ホイール(第1中間ホイール)14を介して、本発明の一実施例に係るロータリー式充填装置16に供給される。このロータリー式充填装置16で、所定の充填速度で回転搬送される間に液体が充填された容器2は、第2中間ホイール18を介してキャッパ20に送られて、キャッピングが行われる。その後、各容器2は、出口スターホイール22を介して排出側のエアコンベヤ24に引き渡されて次の工程に送られる。
【0015】
前記リンサ12よりも上流側に(この実施例では供給側のエアコンベヤ6に)、容器2の搬送を一時停止させるストッパ26が配置されている。例えば、リンサ12の上流側における容器2の供給不足や、キャッパ20の下流側が満杯である等の異常信号が入力された際に、このストッパ26を作動させて容器2の供給を停止させるとともに、リンサ12、ロータリー式充填装置16およびキャッパ20にすでに導入されている容器2を、充填等の処理を行った後全て払い出す。また、前記異常な状態が解消されて再度運転を開始する際には、ストッパ26を後退させて容器2の供給を再開する。なお、運転の開始時には容器2は低速で搬送されるが、供給スターホイール10、リンサ12,中間ホイール14を介してロータリー式充填装置16に搬送され、充填を行うまでには、通常の運転速度(前記所定の充填速度)に到達している。
【0016】
次に、図2によりロータリー式充填装置(第1実施例のロータリー式充填装置を符号16Aで示す)の構成について説明する。回転体28の外周部に円周方向等間隔で複数の充填手段30が取り付けられている。これらの充填手段30は、円筒状のバルブボディ32の内部に充填液通路34が形成されており、供給配管36を介して充填液タンク(図示せず)からこの充填液通路34内に送られてきた充填液が、充填液通路34の吐出口34aから吐出されて容器2内に充填される。なお、この実施例に係るロータリー式充填装置16は、いわゆるノンシール充填であり、容器2の口部を密閉しない状態で液体の充填を行う。
【0017】
充填液通路34の内部には、昇降可能なロッド38が挿通され、バルブボディ32の上方に取り付けた昇降用エアシリンダ40によって昇降される。この昇降ロッド38の下端部には、シール部材が嵌着された弁体42が形成されており、この弁体42と充填液通路34の下端部内面に設けられた弁座44とにより、前記充填液通路34の連通遮断を行う液バルブ46が構成されている。前記昇降用エアシリンダ40の作動によってロッド38が昇降し、弁体42が下降して弁座44に着座しているときには、充填液通路34が閉鎖され、弁体42が上昇して弁座44から離座すると充填液通路34が開放して充填が行われる。前記昇降ロッド38は、全長に亘って同一の大きい径を有しており、この昇降ロッド38の外周面と前記バルブボディ32の内周面との隙間が充填液通路34を構成しており、充填液はこの充填液通路34を通過する過程で整流され、自然落下に近い状態で吐出される。
【0018】
前記供給配管36から供給され、充填液通路34を通って容器2内に充填される充填液の流量は、給液配管36に設けられた流量計(図示せず)によって計測されており、所定の流量を計測すると、エアシリンダ40の作動により液バルブ46が閉じられて充填が終了する。
【0019】
各充填手段30の下方には、それぞれ、容器2の首部2aに形成されているフランジ2bの下面側を支持する容器支持手段48が設けられており、前記供給スターホイール10からこのロータリー式充填装置16Aに供給された容器2を支持して回転搬送する。容器2は、容器支持手段48によって首部2aを支持されて吊り下げられた状態になっているので、鉛直な姿勢を保っており、その軸線O1が前記回転体28の回転軸線O2と平行している。
【0020】
一方、内部に充填液通路34が形成されている充填手段30のバルブボディ32は、充填液通路34の軸線O3が、回転体28の回転軸線O2に対して内側(半径方向内方側)に所定角度θ傾斜した状態で取り付けられている。この傾斜角度θは、図5に示す従来の充填装置、つまり、充填手段130の充填液通路134の軸線O13が回転体128の回転軸線O12に対して平行に配置された構成のロータリー式充填装置が運転をしている時に、充填液通路134から吐出される充填液150が遠心力によって外方へ振られる角度とほぼ同等の角度であり、回転体28の回転速度、充填手段30の回転半径、容器2のサイズ等によって決定する。例えば、500mlの容器(ペットボトル)に毎分1200本充填する能力を有し、直径が3.2メートルの充填装置で、お茶を充填する場合には、遠心力によって約10度充填液の流れが外側に傾斜するので、充填液通路を10度内側に傾斜させて取り付ける。このように充填装置の能力や容器2のサイズ等の条件から前記角度θを予め求めておき、充填手段30をこの角度θだけ傾斜させて回転体28に取り付ける。
【0021】
この実施例に係るロータリー式充填装置16Aでは、バルブボディ32内に形成された充填液通路34の中心軸線O3が、充填液通路34の吐出口34aの中心を通る鉛直軸線O4(回転体28の回転軸線O2と平行している)に対して、先端側を半径方向内方側に向けてθ度だけ傾斜させているので、液バルブ46が開放して充填液通路34から液体(図2中に符号50で示す)が吐出された直後は、前記充填液通路34の中心軸線O3の延長方向を向いているが、下方へ流れ落ちるに従って、遠心力によって半径方向外方側へ振られて、容器2の底面2cに届く時点では、ほぼ容器2の底面中央に当たるようになっている。従って、容器2内に充填された液体が側壁2dに沿って回り込むことにより発生する泡立ちを抑制することができる。しかも、この実施例では、従来の構成と異なり、容器2を傾斜させていないので、上流側のリンサ12や下流側のキャッパ20との容器2の受け渡しを正常に行うことができる。
【実施例2】
【0022】
図3は第2の実施例に係るロータリー式充填装置16Bの要部を拡大して示す縦断面図である。この実施例に係るロータリー式充填装置16Bは、容器2の口部を密閉した状態で充填を行うシール充填である点だけが、前記第1実施例と異なっており、その他の構成は同一なので、同一の部分には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0023】
この実施例の充填手段30は、バルブボディ32の下端部52が充填液通路34の吐出口34aよりも下方へ延長されており、この延長部52が鉛直方向を向いている。下端延長部52の内周側に、容器2の口部に密着して容器2内を密封するびん口パッキン54が嵌着されている。この実施例でも、容器2は容器支持手段48によって吊り下げられて垂直な状態に支持されているので、びん口パッキン54は容器2の口部に密着するように水平な状態に取り付けられている。また、バルブボディ32の下端延長部52には、びん口パッキン54によって容器2の口部を密閉した時に容器2内に連通する排気通路56が形成されている。この排気通路56は、バルブ58によって開閉されるようになっており、充填時には、密封された容器2内に液体が充填されるに伴って、容器2内のエアがこの排気通路56から排出される。
【0024】
この実施例に係るロータリー式充填装置16Bも、前記実施例と同様に、回転体28の回転軸線O2と平行な充填液通路34の吐出口34aの中央を通る鉛直軸線O4に対して、充填液通路34の中心軸線O3の下端側を角度θだけ半径方向内方へ傾けたので、充填液通路34から容器2内に吐出された液体が、容器2の底面2cの中央部に当たるので、充填された液体の泡立ちを抑制することができる。なお、角度θは、充填液通路34から吐出される液体が遠心力によって外側へ振られる角度に相当する角度であり、回転体28の回転速度、充填手段の回転半径、容器のサイズ等によって決定される。
【実施例3】
【0025】
図4は第3の実施例に係るロータリー式充填装置16Cの要部を拡大して示す縦断面図であり、基本的構成は前記第1実施例と同一であるが、第1実施例では充填手段30を回転体28の回転軸線O2に対して所定角度θ傾斜させた状態で固定しているが、この実施例では、充填手段30の傾斜を変更する調整機構60を備えている。このような調整機構60を備えたことにより、回転体の充填速度や容器2のサイズが変更になった場合に異なる角度の充填手段30に付け替える必要がなく、簡単な操作により充填手段30を最適な角度に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例に係るロータリー式充填装置を含む充填ラインの全体の構成を簡略化して示す平面図である。(実施例1)
【図2】前記ロータリー式充填装置の要部の縦断面図である。
【図3】ロータリー式充填装置の要部の縦断面図である。(実施例2)
【図4】ロータリー式充填装置の要部の縦断面図である。(実施例3)
【図5】従来のロータリー式充填装置の要部の縦断面図である。
【符号の説明】
【0027】
θ 充填液通路の傾斜角度
2 容器(ペットボトル)
16 ロータリー式充填装置
28 回転体
30 充填手段
34 充填液通路
46 液バルブ
48 容器支持手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に円周方向等間隔で設けられ、内部に充填液通路とこの充填液通路を開閉する液バルブが形成された複数の充填手段と、これら各充填手段にそれぞれ対応して設けられた容器支持手段と、前記回転体を回転させる駆動手段とを備え、容器を所定の充填速度で回転搬送しつつ液体を充填するロータリー式充填装置において、
前記充填手段の充填液通路の軸心を前記回転体の回転軸に対して内側へ傾斜して配置することにより、前記回転体を所定の充填速度で回転駆動させた際に、前記充填手段から吐出される充填液を容器底の中央付近に到達させることを特徴とするロータリー式充填装置。
【請求項2】
前記充填手段の充填液通路は、前記充填手段の充填液通路の軸心が回転体の回転軸に対して平行に配置された場合に、前記充填手段から吐出される充填液が遠心力により外側に振られる角度とほぼ同等の角度だけ傾斜して配置することを特徴とする請求項1に記載のロータリー式充填装置。
【請求項3】
容器を前記回転体に供給する供給手段と、充填が終了した容器を下流へ排出する排出手段と、前記供給手段に進退動可能に設けられ、容器と係合して前記回転体への容器の供給を停止させるストッパとを備え、
異常発生時には、前記ストッパを前進させることにより前記回転体への容器の供給を停止させるとともに、前記回転体内にある容器に対して充填液を充填して排出し、
運転再開時には、前記ストッパを後退させて前記回転体への容器の供給を再開するとともに、容器への充填が行われるまでに前記回転体を所定の充填速度で回転させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロータリー式充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−261651(P2007−261651A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91260(P2006−91260)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】