説明

ローラの表面研磨方法

【課題】通常の研磨加工法を採用しながら、気液二相の熱媒体を封入する密閉室を備えたローラ表面の機械精度を高めることができるようにすること。
【解決手段】ロールシェル1およびロール軸2肉厚内に軸方向と同方向に伸びる気液二相の熱媒体を封入する密閉室3および4を備えたローラの表面を、研磨加工する際、前記密閉室3および4内にアルコールなど研磨加工温度において気化蒸発する液体を封入する。これにより研磨時ローラ全体の表面温度が潜熱移動により維持され、偏った研磨加工温度による軸方向における直径などのくるいを修正することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液二相の熱媒体を封入する密閉室を備えたローラの表面研磨方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、所定の温度に加熱したローラ本体(以下、ロールシェルという。)の表面に樹脂フィルムを当接し、その樹脂フィルムを加熱したり、所定の温度にまで奪熱したりすることが行われている。このようなローラには、ローラの軸方向に沿う表面の温度を所定の温度に均一化するために、ローラの軸方向に沿って密閉室を設け、この密閉室にこの所定の温度以上で気化し、また所定の温度以下で液化する熱媒体を封入するローラがある。このような密閉室には、ロールシェルの肉厚内に軸方向に沿う複数のドリル孔で形成したもの、ロールシェルとこのロールシェルと直結したロール軸の両者に軸方向に沿う複数のドリル孔で形成したもの、ローラの中空内を密閉室としたもの、ロールシェルを二重缶としその間を密閉室としたものなどさまざま存在する。
【特許文献1】特開2006−112475号公報
【特許文献2】特開平10−125485号公報
【特許文献3】特公平告1−48409号公報
【特許文献4】実公昭63−37756号公報
【0003】
このようなローラは、最終的に機械精度、つまり真円度、円筒度、振れなどの仕上精度を高める機械加工が行われる。その機械加工は、一般的にローラの表面に研磨液をかけながら砥石をローラ表面に接触させローラ表面を削る、いわゆる円筒研磨やバーチャル研磨といった研磨加工が用いられる。しかし、このような研磨においては、砥石とローラ表面との摩擦や研磨液の熱によってローラ表面温度に温度斑が発生し、数ミクロンや1ミクロン以下といった機械精度を高めることがきわめて困難であるといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、通常の研磨加工法を採用しながら、気液二相の熱媒体を封入する密閉室を備えたローラ表面の機械精度を高めることができるようにし、斯かる問題を解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、軸方向と同方向に伸びる気液二相の熱媒体を封入する密閉室を備えたローラの表面を、軸方向と同方向に沿って順次研磨加工するローラの表面研磨方法において、研磨加工する際、前記密閉室に研磨により発生する低い温度で気化する気液二相の熱媒体を封入してなることを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、気液二相の熱媒体を封入する密閉室を設けたローラの表面を研磨仕上げする際には、その密閉室に、一端摩擦や研磨液の温度により気化する熱媒体を封入するので、研磨箇所に位置する熱媒体は研磨で発生した熱により気化して、温度の低い未研磨箇所へ移動し、ここで熱をローラへ放出して液化する。この潜熱の移動によって研磨時ローラ表面の温度は常に均一化され、これによって高い機械精度のローラを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
通常の研磨加工法を採用しながら、気液二相の熱媒体を封入する密閉室を備えたローラ表面の機械精度を高めることができるようにする目的を、研磨加工する際には、その密閉室に摩擦や研磨液の温度により気化する熱媒体を減圧封入することにより実現した。
【実施例】
【0008】
図1は一実施例に係る熱処理用ローラの概略の構成を示す断面図(a)とA−A断面図(b)である。図1(a)(b)において、1は円筒状のロールシェル(ローラ本体)、2はロール軸、3および4は気液二相の熱媒体を封入する密閉室である。ロール軸2はロールシェル1の両側の端部に固定され、その外周に図示しない軸受けを嵌合し、機台に回転自在に固定支持される。
【0009】
円筒状のロールシェル1には、その肉厚内にドリルにより軸方向と同方向に伸びる孔3が、周方向に複数形成され、また、ロール軸2には、その肉厚内にドリルにより軸方向と同方向に伸びる孔4とロールシェル1の端部に固定するフランジにロールシェル1の孔に連通する貫通孔が、周方向に複数形成されている。これらの孔を形成した後、ロールシェル1の両側の端部にそれぞれロール軸2を密着固定し、ロールシェル1の孔3およびロール軸2の孔4に水などの液体を真空引きして適量注入し、各孔の端部を適宜閉塞し、ロールシェル1の孔3およびロール軸2の孔4をそれぞれ気液二相の熱媒体を封入した密閉室3および4とし、ローラを組立後、ロールシェル1およびロール軸2の表面を研磨してローラを仕上げている。
【0010】
本発明にしたがいロールシェル1の両側の端部にそれぞれロール軸2を密着固定し、ロールシェル1の孔3およびロール軸2の孔4に研磨加工温度、通常10〜40℃において気化蒸発する液体、本例ではアルコール(フロンなどでもよい)を真空引きして適量注入し、各孔の端部を適宜閉塞する。この状態でロールシェル1および軸受けハウジング2の表面をローラの軸方向と同方向に沿って順次研磨加工する。研磨終了後、各孔の閉塞した端部を開放し、アルコールとローラの使用時の温度で気化蒸発する液体、たとえば水と入れ替えて開放した各孔の端部を閉塞し、ローラを完成させる。
【0011】
このように密閉室3および4に研磨加工温度において気液二相を形成する熱媒体を封入して研磨すると、研磨加工温度がローラ全体に分散し研磨時ローラ表面の温度は常に均一に維持され、偏った研磨加工温度による軸方向における直径などのくるいが修正され、1ミクロン以下の機械精度を得ることができる。
【0012】
なお、以上の説明におけるローラは、ロールシェル1の密閉室3とロール軸2の密閉室4はそれぞれ独立しているが、これを連通させるとロールシェル1とロール軸2が同一の温度となり、より精度を高めることができる。また、本発明は、ローラに形成する気液二相の熱媒体を封入する密閉室は、ロールシェルのみに形成したもの、ローラの中空内を密閉室としたもの、ロールシェルを二重缶としその間を密閉室としたものであっても、適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例に係る熱処理用ローラの概略の構成を示す断面図(a)とA−A断面図(b)である。
【符号の説明】
【0014】
1 ロールシェル(ローラ本体)
2 ロール軸
3、4は密閉室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向と同方向に伸びる気液二相の熱媒体を封入する密閉室を備えたローラの表面を、軸方向と同方向に沿って順次研磨加工するローラの表面研磨方法において、研磨加工する際、前記密閉室に研磨により発生する低い温度で気化する気液二相の熱媒体を封入してなることを特徴とするローラの表面研磨方法。
【請求項2】
ローラにはローラシェルに直結したロール軸を含むことを特徴とする請求項1に記載のローラの表面研磨方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−207265(P2008−207265A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44844(P2007−44844)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】