説明

ロール装置

【課題】装置の低廉化、エア消費量の削減を図り得ると共に、部品点数を削減し得、組み立て工数を減少し得、しかも、ラジアル方向の磁気による吸着力が不均一となってラジアル方向の負荷容量が低下する虞をなくし得るロール装置を提供すること。
【解決手段】ロール装置1は、中空のロール体2と、ロール体2の中空部に隙間3をもって挿通されている軸体4と、ラジアル方向に関してロール体2を静圧気体によって支持すべくロール体2と軸体4との間に介在されている静圧気体軸受手段7及び8と、スラスト方向に関してロール体2を磁力によって支持する磁性軸受手段9及び10とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックのシートやフィルム等のコーティング、フィルム状にした電子デバイス製造(ロール・ツー・ロール方式)や、当該シート、フィルム等の搬送に用いられるロール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1及び2においては、ラジアル方向及びスラスト方向に関して静圧気体軸受を用いたロール装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−190338号公報
【特許文献2】特開2010−25208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
斯かるロール装置では、ラジアル方向及びスラスト方向の双方に関して静圧気体軸受を用いるために、静圧気体軸受による軸受隙間(片側隙間10〜15μm)を管理しなければならず、また、高精度な軸受隙間の管理が求められるために静圧気体軸受も高価なものが必要となって装置の低廉化を図り難い。加えて、斯かるロール装置では、ラジアル方向及びスラスト方向の双方の軸受にエアを消費するために、装置のランニングコストも削減し難い。
【0005】
前記諸点に鑑みて、本出願人は、特願2010−43375号において、中空のロール体と、ロール体の中空部に隙間をもって挿通されていると共に両端部がロール体から突出している軸体と、ラジアル方向に関してロール体を静圧気体によって支持すべくロール体と軸体との間に介在されている静圧気体軸受と、スラスト方向に関してロール体を磁力によって支持する磁性軸受とを具備しており、磁性軸受は、ロール体の一端部にボルトを介して装着されている環状の外側磁性体と、外周面で外側磁性体の内周面に隙間をもって対面していると共に軸体に装着されている環状の一対の内側磁性体と、一対の内側磁性体間に介在されている永久磁石とを具備しており、スラスト方向に関してロール体を支持すべく永久磁石の磁力に基づいて外側磁性体と一対の内側磁性体とが互いに引き合う力を生じさせるようになっているロール装置を提案しており、斯かるロール装置によれば、静圧気体軸受によってロール体をラジアル方向に関して支持する一方、磁性軸受によってロール体をスラスト方向に関して支持することができ、而して、装置の低廉化、エア消費量の削減を図り得る。
【0006】
また、ロール装置の部品点数を削減し得、組み立て工数を減少し得、ロール装置の外側磁性体及びロール体間の芯ズレ等に基づいて、ラジアル方向の磁気による吸着力が不均一となってラジアル方向の負荷容量が低下する虞をなくし得るのが望ましい。
【0007】
本発明は、上記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、装置の低廉化、エア消費量の削減を図り得ると共に、部品点数を削減し得、組み立て工数を減少し得、しかも、ラジアル方向の磁気による吸着力が不均一となってラジアル方向の負荷容量が低下する虞をなくし得るロール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のロール装置は、中空のロール体と、このロール体の中空部に隙間をもって挿通されている軸体と、ラジアル方向に関してロール体を静圧気体によって支持すべくロール体と軸体との間に介在されている静圧気体軸受手段と、スラスト方向に関してロール体を磁力によって支持する磁性軸受手段とを具備しており、ロール体は、磁性体からなり、磁性軸受手段は、外周面でロール体の内周面に隙間をもって対面していると共に軸体に装着されている一対の内側磁性体と、一対の内側磁性体間に介在されている永久磁石とを具備しており、スラスト方向に関してロール体を支持すべく永久磁石の磁力に基づいてロール体と一対の内側磁性体とが互いに引き合う力を生じさせるようになっている。
【0009】
本発明のロール装置によれば、特に、磁性軸受手段は、外周面でロール体の内周面に隙間をもって対面していると共に軸体に装着されている一対の内側磁性体と、一対の内側磁性体間に介在されている永久磁石とを具備しており、スラスト方向に関してロール体を支持すべく永久磁石の磁力に基づいてロール体と一対の内側磁性体とが互いに引き合う力を生じさせるようになっているために、静圧気体軸受手段によってロール体をラジアル方向に関して支持する一方、磁性軸受手段によってロール体をスラスト方向に関して支持することができ、而して、装置の低廉化、エア消費量の削減を図り得、また、ロール体自体が内側磁性体に対面する外側磁性体としての機能を有している磁性体からなるために、内側磁性体に対面する外側磁性体を別個にロール体に設ける必要をなくすことができて部品点数を削減し得、ロール装置の組み立て工数を減少し得、更に、例えば、組み立て時において外側磁性体とロール体との芯ズレが生じることをなくして、ラジアル方向の磁気による吸着力が不均一となってラジアル方向の負荷容量が低下する虞をなくし得る。
【0010】
本発明の他の態様のロール装置は、中空のロール体と、このロール体の中空部に隙間をもって挿通されている軸体と、ラジアル方向に関してロール体を静圧気体によって支持すべくロール体と軸体との間に介在されている静圧気体軸受手段と、スラスト方向に関してロール体を磁力によって支持する磁性軸受手段とを具備しており、磁性軸受手段は、ロール体の内周面に嵌着された外側磁性体と、外周面で外側磁性体の内周面に隙間をもって対面していると共に軸体に装着されている一対の内側磁性体と、一対の内側磁性体間に介在されている永久磁石とを具備しており、スラスト方向に関してロール体を支持すべく永久磁石の磁力に基づいて外側磁性体と一対の内側磁性体とが互いに引き合う力を生じさせるようになっている。
【0011】
本発明の他の態様のロール装置によれば、特に、磁性軸受手段は、ロール体の内周面に嵌着された外側磁性体と、外周面で外側磁性体の内周面に隙間をもって対面していると共に軸体に装着されている一対の内側磁性体と、一対の内側磁性体間に介在されている永久磁石とを具備しており、スラスト方向に関してロール体を支持すべく永久磁石の磁力に基づいて外側磁性体と一対の内側磁性体とが互いに引き合う力を生じさせるようになっているために、静圧気体軸受手段によってロール体をラジアル方向に関して支持する一方、磁性軸受手段によってロール体をスラスト方向に関して支持することができ、而して、装置の低廉化、エア消費量の削減を図り得、また、外側磁性体がロール体の内周面に嵌着されているために、外側磁性体を予めロール体に嵌着させて一体物としておくことができて、ロール体に対する軸体、静圧気体軸受手段及び磁性軸受手段の組み立て工数を減少させ得、加えて、ロール体及び外側磁性体の芯出しを予め精確に行い得、組み立て時において外側磁性体とロール体との芯ズレが生じることをなくして、ラジアル方向の磁気による吸着力が不均一となってラジアル方向の負荷容量が低下する虞をなくし得る。
【0012】
本発明の更に他の態様のロール装置は、中空のロール体と、このロール体の中空部に隙間をもって挿通されている軸体と、ラジアル方向に関してロール体を静圧気体によって支持すべくロール体と軸体との間に介在されている静圧気体軸受手段と、スラスト方向に関してロール体と磁力によって支持する磁性軸受手段とを具備しており、磁性軸受手段は、ロール体の端部に装着された外側磁性体と、外周面で外側磁性体の内周面に隙間をもって対面していると共に軸体に装着されている一対の内側磁性体と、一対の内側磁性体間に介在されている永久磁石とを具備しており、スラスト方向に関してロール体を支持すべく永久磁石の磁力に基づいて外側磁性体と一対の内側磁性体とが互いに引き合う力を生じさせるようになっており、静圧気体軸受手段は、ロール体の内周面に対して環状の軸受隙間をもって対面しているラジアル軸受面を有していると共に軸体に固着されている円筒状の軸受体と、ラジアル軸受面から軸受隙間に供給すべき気体を給気することができるように軸受体に形成されている給気通路と、軸体に形成されていると共に給気通路に気体を供給することができるように当該給気通路に連通した供給通路とを具備している。
【0013】
本発明の更に他の態様のロール装置によれば、特に、磁性軸受手段は、ロール体の端部に装着された外側磁性体と、外周面で外側磁性体の内周面に隙間をもって対面していると共に軸体に装着されている一対の内側磁性体と、一対の内側磁性体間に介在されている永久磁石とを具備しており、スラスト方向に関してロール体を支持すべく永久磁石の磁力に基づいて外側磁性体と一対の内側磁性体とが互いに引き合う力を生じさせるようになっているために、静圧気体軸受手段によってロール体をラジアル方向に関して支持する一方、磁性軸受手段によってロール体をスラスト方向に関して支持することができ、而して、装置の低廉化、エア消費量の削減を図り得、また、静圧気体軸受手段は、ロール体の内周面に対して環状の軸受隙間をもって対面しているラジアル軸受面を有していると共に軸体に固着されている円筒状の軸受体と、ラジアル軸受面から軸受隙間に供給すべき気体を給気することができるように軸受体に形成されている給気通路と、軸体に形成されていると共に給気通路に気体を供給することができるように当該給気通路に連通した供給通路とを具備しているために、例えば、静圧気体軸受手段の軸受本体の一方の端面で開口するように当該軸受本体に気体の供給通路を設置した場合に比べて、磁性軸受手段をロール体の両端面に設けることができるようになり、スラスト方向の負荷容量を増大させることができる。
【0014】
本発明の上述のロール装置及び他の態様のロール装置では、静圧気体軸受手段は、ロール体の内周面に対して環状の軸受隙間をもって対面しているラジアル軸受面を有していると共に軸体に固着されている円筒状の軸受体と、ラジアル軸受面から軸受隙間に供給すべき気体を給気することができるように軸受体に形成されている給気通路と、軸体に形成されていると共に給気通路に気体を供給することができるように当該給気通路に連通した供給通路とを具備していてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装置の低廉化、エア消費量の削減を図り得ると共に、部品点数を削減し得、組み立て工数を減少し得、しかも、ラジアル方向の磁気による吸着力が不均一となってラジアル方向の負荷容量が低下する虞をなくし得るロール装置を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態の例を正面視した一部断面全体説明図である。
【図2】図1に示す例の一部断面説明図である。
【図3】図1に示す例のIII−III線断面矢視説明図である。
【図4】図1に示す例のIV−IV線断面矢視説明図である。
【図5】図1に示す例のV−V線断面矢視説明図である。
【図6】図1に示す例のVI−VI線断面矢視説明図である。
【図7】図1に示す例の主に磁性軸受手段の拡大説明図である。
【図8】本発明の実施の形態の他の例の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【実施例】
【0018】
図1から図7において、本例のロール装置1は、中空のロール体2と、ロール体2の中空部に隙間3をもって挿通されている軸体4と、ラジアル方向に関してロール体2を静圧気体によって支持すべくロール体2と軸体4との間に介在されている静圧気体軸受手段7及び8と、スラスト方向に関してロール体2を磁力によって支持する磁性軸受手段9及び10とを具備している。
【0019】
静圧気体軸受手段7及び磁性軸受手段9は、ロール体2の一端部5側に、静圧気体軸受手段8及び磁性軸受手段10は、ロール体2の他端部6側に夫々配されている。静圧気体軸受手段7及び磁性軸受手段9は、静圧気体軸受手段8及び磁性軸受手段10と夫々同様に形成されているので、以下、一端部5側に配された静圧気体軸受手段7及び磁性軸受手段9について詳細に説明し、他端部6側に配された静圧気体軸受手段8及び磁性軸受手段10については図1に適宜符号aを付してこれらの詳細な説明を省略する。尚、磁性軸受手段9は、当該磁性軸受手段9に隣接する静圧気体軸受手段7に対して一端部5側に配されており、磁性軸受手段10は、当該磁性軸受手段10に隣接する静圧気体軸受手段8に対して他端部6側に配されている。
【0020】
ロール体2は、円筒状の磁性体からなり、その内周面12で静圧気体軸受手段7及び8並びに磁性軸受手段9及び10に対して環状の軸受隙間31及び環状の隙間64をもって対面している。
【0021】
軸体4は、円柱状であり、その一端部21がロール体2の一端部5から突出しており、当該一端部21で支持フレーム15等に固定支持されている。軸体4の他端部22は、ロール体2の他端部6から突出しており、当該他端部22で支持フレーム15等に固定支持されている。軸体4は、本例では支持フレーム15等に両持ち支持されているが、例えば、一端部21又は他端部22だけが片持ち支持されていてもよい。軸体4には静圧気体軸受手段7及び8並びに磁性軸受手段9及び10が取り付けられている。軸体4の外周面20はロール体2の内周面12に対して隙間3をもって対面している。静圧気体軸受手段7及び8間に位置する軸体4の外周部分は拡径されている。
【0022】
静圧気体軸受手段7は、ロール体2の内周面12に対して環状の軸受隙間31をもって対面しているラジアル軸受面32を有していると共に軸体4に固着されている円筒状の軸受体36と、ラジアル軸受面32から軸受隙間31に供給すべき気体を給気することができるように、軸受体36に形成されている給気通路44と、給気通路44に気体を供給することができるように当該給気通路44に連通して軸体4に形成されている供給通路45とを具備している。
【0023】
軸受体36は、内周面51で軸体4の外周面20に固着されている円筒状の本体55と、本体55の外周面52に接合されている多孔質体としての円筒状の多孔質金属焼結層56とを具備している。
【0024】
多孔質金属焼結層56は、その全表面の無秩序な多数の部位で開口すると共に無秩序に互いに連通する多数の細孔を内部に有している。ラジアル軸受面32は、多孔質金属焼結層56の支持すべきロール体2の内周面12に対面して露出する外周面からなる。
【0025】
多孔質金属焼結層56は、4重量%以上10重量%以下の錫と、10重量%以上40重量%以下のニッケルと、0.1重量%以上0.5重量%未満の燐と、2重量%以上10重量%以下の無機物質粒子と、残部が銅とからなっていてもよい。多孔質金属焼結層に分散含有される無機物質粒子は、黒鉛、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、フッ化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素及び炭化ケイ素のうちの少なくとも一つからなっていてもよい。
【0026】
給気通路44は、軸受体36の本体55の外周面52に形成された複数の環状通路71及び72と、軸方向に伸びて本体55内に形成されており、環状通路71及び72に連通していると共に供給通路45に連通している連通路76とを具備している。供給通路45は、軸方向に伸びて軸体4内に形成されており、一端部21で開口していると共に連通路76に連通している。斯かる給気通路44では、一端部21から供給通路45を介して供給される気体(圧縮気体)が連通路76に供給され、連通路76に供給された気体が環状通路71及び72に流入され、当該流入された気体を多孔質金属焼結層56に供給することで、軸受隙間31に気体を供給する。尚、ロール体2の一端部5側に設けられた静圧気体軸受手段7の供給通路45とロール体2の他端部6側に設けられた静圧気体軸受手段8の供給通路(図示せず)とは互いに連通している。
【0027】
本例のロール装置1は、多孔質金属焼結層56及び56aを夫々有した静圧気体軸受手段7及び8を具備しているが、これらに代えて、例えば、軸受体36及び36aに形成された自成絞り通路を介して静圧気体を軸受隙間31に供給してロール体2をラジアル方向に関して非接触支持する自成絞り型の静圧気体軸受手段を具備していてもよい。
【0028】
磁性軸受手段9は、外周面62でロール体2の内周面12に環状の隙間64をもって対面していると共に軸体4に装着されている環状の一対の内側磁性体65及び66と、一対の内側磁性体65及び66間に介在されている永久磁石、本例では中空円板状の一つの永久磁石67とを具備しており、スラスト方向に関してロール体2を支持すべく永久磁石67の磁力に基づいてロール体2と一対の内側磁性体65及び66とが互いに引き合う力を生じさせるようになっている。隙間64は軸受隙間31に隣接配置されている。
【0029】
ロール体2には、その一端部5側において内側磁性体65に向かって突出して当該ロール体2の内周面12に形成された環状凸部82と、その一端部5側において内側磁性体66に向かって突出して当該ロール体2の内周面12に形成された環状凸部83とが形成されている。
【0030】
環状凸部82及び83は互いに同形状であり、環状凸部82は環状凸部83に対して一端部5側に位置している。環状凸部82及び83間と環状凸部83及び軸受体36間との夫々には環状の凹溝84及び85が形成されている。凹溝84は永久磁石67に対面しており、凹溝85は後述の環状スペーサ80に対面している。本例の環状凸部82及び83には例えば面取りが施されていてもよい。環状凸部82及び83の内側磁性体65及び66の外周面62に対面する面は平坦面からなっていてもよい。
【0031】
内側磁性体65は、内側磁性体66に対して一端部5側に位置しており、内側磁性体65の外周面62は環状凸部82に、内側磁性体66の外周面62は環状凸部83に夫々環状の隙間64をもって対面している。
【0032】
内側磁性体65及び66の夫々は、中空円板状であり、中空部において軸体4に夫々固着されている。内側磁性体65及び66の夫々の外周面62には面取りが施されていてもよい。内側磁性体65及び66の夫々の外周面62は、環状凸部82及び83の夫々に隙間64をもって対面する平坦面からなっていてもよい。尚、内側磁性体66は、環状スペーサ80を介して軸受体36に取り付けられている。
【0033】
永久磁石67は、一端面86がN極、他端面88がS極となっている。内側磁性体65及び66は、当該永久磁石67の磁力に基づいて磁性を帯び、これにより、内側磁性体65の外周面62がN極、内側磁性体66の外周面62がS極となる。ロール体2の一端部5は、当該複数の永久磁石67の磁力に基づいて磁性を帯び、これにより、環状凸部82がS極、環状凸部83がN極となる。従って、磁性軸受手段9には、例えば図7に示すように磁束68が生じて、環状凸部82と内側磁性体65の外周面62との間に引き合い力が生じると共に環状凸部83と内側磁性体66の外周面62との間に引き合い力が生じる。斯かる引き合い力は、ロール体2の軸体4に対するスラスト方向の変位に伴って増大するため、ロール体2はスラスト方向に関して磁力によって支持されることになる。このように、磁性軸受手段9は、スラスト方向に関してロール体2を支持すべく永久磁石67の磁力に基づいてロール体2の一端部5と一対の内側磁性体65及び66とが互いに引き合う力を生じさせるようになっている。尚、磁性軸受手段10もまた、磁性軸受手段9と同様に、スラスト方向に関してロール体2を支持すべく永久磁石67aの磁力に基づく引き合い力を生じさせるようになっている。
【0034】
磁性軸受手段9及び10は、一つの中空円板状の永久磁石67及び67aを夫々具備しているが、これに代えて、例えば円周方向に並んだ複数の永久磁石を具備していてもよい。
【0035】
斯かるロール装置1では、夫々の給気通路44から多孔質金属焼結層56及び56aに給気されることによりラジアル軸受面32及び32aから軸受隙間31及び31aに気体が供給され、而して、静圧気体軸受手段7及び8によりロール体2を非接触にてR方向に回転自在に支持する。また、ロール体2は、上述のように、磁性軸受手段9及び10の磁力により横方向に関して非接触にてR方向に回転自在に支持され、これにより、ロール体2の軸体4に対する横方向の位置ずれは禁止される。ロール装置1では、スラスト方向に関するロール体2の支持におけるエア消費は生じないので、ロール体2を支持する際のエア消費量を抑えることができる。
【0036】
本例のロール装置1によれば、中空のロール体2と、ロール体2の中空部に隙間3をもって挿通されている軸体4と、ラジアル方向に関してロール体2を静圧気体によって支持すべくロール体2と軸体4との間に介在されている静圧気体軸受手段7及び8と、スラスト方向に関してロール体2を磁力によって支持する磁性軸受手段9及び10とを具備しており、ロール体2は、磁性体からなり、磁性軸受手段9は、外周面62でロール体2の内周面12に環状の隙間64をもって対面していると共に軸体4に装着されている一対の内側磁性体65及び66と、一対の内側磁性体65及び66間に介在されている永久磁石67とを具備しており、スラスト方向に関してロール体2を支持すべく永久磁石67の磁力に基づいてロール体2と一対の内側磁性体65及び66とが互いに引き合う力を生じさせるようになっており、磁性軸受手段10は、外周面62でロール体2の内周面12に隙間3をもって対面していると共に軸体4に装着されている一対の内側磁性体65a及び66aと、一対の内側磁性体65a及び66a間に介在されている永久磁石67aとを具備しており、スラスト方向に関してロール体2を支持すべく永久磁石67aの磁力に基づいてロール体2と一対の内側磁性体65a及び66aとが互いに引き合う力を生じさせるようになっているために、静圧気体軸受手段7及び8によってロール体2をラジアル方向に関して支持する一方、磁性軸受手段9及び10によってロール体2をスラスト方向に関して支持することができ、而して、装置の低廉化、エア消費量の削減を図り得、また、ロール体2自体が内側磁性体65及び66並びに内側磁性体65a及び66aに対面する外側磁性体としての機能を有している磁性体からなるために、内側磁性体65及び66並びに内側磁性体65a及び66aに対面する外側磁性体をロール体2とは別個にロール体2に設ける必要をなくすことができて部品点数を削減し得、ロール装置1の組み立て工数を減少し得、更に、組み立て時において外側磁性体とロール体2との芯ズレが生じることをなくし得て、ラジアル方向の磁気による吸着力が不均一となってラジアル方向の負荷容量が低下する虞をなくし得る。
【0037】
本例の他の態様の図8に示すロール装置101は、ロール体2を除きロール装置1と同様に形成されており、非磁性体からなる中空のロール体102を具備している。ロール装置101の磁性軸受手段9は、ロール体102の一端部5における内周面12の部位に嵌着された外側磁性体103を更に具備しており、ロール装置101の磁性軸受手段10は、上述のロール装置101の磁性軸受手段9と同様に、ロール体102の他端部6における内周面12の部位に嵌着された外側磁性体(図示せず)を更に具備している。
【0038】
ロール体102の内周面12は、その一端部5及び他端部6において拡径されており、外側磁性体103は当該拡径された一端部5に、ロール装置101の磁性軸受手段10の外側磁性体は当該拡径された他端部6に夫々嵌着されている。
【0039】
外側磁性体103には、上述の環状凸部82及び83並びに凹溝84及び85が形成されている。ロール装置101の磁性軸受手段10の外側磁性体は外側磁性体103と同様に形成されている。
【0040】
斯かるロール装置101の磁性軸受手段9及び10は、スラスト方向に関してロール体102を支持すべく永久磁石67及び67aの磁力に基づいて外側磁性体103及び前記磁性軸受手段10の外側磁性体と内側磁性体65及び66並びに65a及び66aとが互いに引き合う力を生じさせるようになっている。
【0041】
ロール装置101によれば、ロール装置1と同様に、静圧気体軸受手段7及び8によってロール体102をラジアル方向に関して支持する一方、磁性軸受手段9及び10によってロール体102をスラスト方向に関して支持することができ、而して、装置の低廉化、エア消費量の削減を図り得、また、外側磁性体103及びロール装置101の磁性軸受手段10の外側磁性体がロール体102の内周面12に嵌着されているために、外側磁性体103及びロール装置101の磁性軸受手段10を予めロール体102に嵌着させて一体物としておくことができて、ロール体102に対する軸体4、静圧気体軸受手段7及び8並びに磁性軸受手段9及び10の組み立て工数を減少させ得、加えて、ロール体102並びに外側磁性体103及びロール装置101の磁性軸受手段10の外側磁性体の芯出しを予め簡単に且つ精確に行い得、組み立て時において外側磁性体とロール体との芯ズレが生じることをなくして、ラジアル方向の磁気による吸着力が不均一となってラジアル方向の負荷容量が低下する虞をなくし得る。
【0042】
本例の更に他の態様のロール装置(図示せず)は、非磁性体からなるロール体の両端部に外側磁性体が装着されており、斯かる事項を除いてはロール装置1及び101と同様に形成されている。斯かるロール装置並びにロール装置1及び101の夫々によれば、特に、静圧気体軸受手段7及び8は、ロール体2(102)の内周面12に対して環状の軸受隙間31及び31aをもって対面しているラジアル軸受面32及び32aを有していると共に軸体4に固着されている円筒状の軸受体36及び36aと、ラジアル軸受面32及び32aから軸受隙間31及び31aに供給すべき気体を給気することができるように軸受体36及び36aに形成されている給気通路44(静圧気体軸受手段8の給気通路は図示せず)と、軸体4に形成されていると共に給気通路44に気体を供給することができるように当該給気通路44に連通した供給通路45(静圧気体軸受手段8の供給通路は図示せず)とを具備しているために、例えば、静圧気体軸受手段7及び8の軸受体36及び36aのどちらか一方に気体の供給通路を設置した場合に比べて、静圧気体軸受手段7の一端部5側に設けられている磁性軸受手段9に加えて、磁性軸受手段9と同様に形成されていると共に、静圧気体軸受手段8の他端部6側に隣接して設けられた磁性軸受手段10とを、備えられるようになる。
【0043】
また、ロール装置1及び101並びに前記本例の更に他の態様のロール装置は、上述の事項に加えて、静圧気体軸受手段7の一端部5側に隣接して設けられた磁性軸受手段9と同様に形成されていると共に当該静圧気体軸受手段7の他端部側に隣接して設けられた他の磁性軸受手段(図示せず)と、静圧気体軸受手段8の一端部6側に隣接して設けられた磁性軸受手段10と同様に形成されていると共に、当該静圧気体軸受手段8の他端部側に隣接して設けられた他の磁性軸受手段(図示せず)とを更に具備していてもよく、斯かる場合にはスラスト方向の負荷容量を更に増大させることができる。
【符号の説明】
【0044】
1、101 ロール装置
2、102 ロール体
4 軸体
7、8 静圧気体軸受手段
9、10 磁性軸受手段
64 隙間
65、66、65a、66a 内側磁性体
67、67a 永久磁石
31、31a 軸受隙間
32、32a ラジアル軸受面
44 給気通路
45 供給通路
103 外側磁性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のロール体と、このロール体の中空部に隙間をもって挿通されている軸体と、ラジアル方向に関してロール体を静圧気体によって支持すべくロール体と軸体との間に介在されている静圧気体軸受手段と、スラスト方向に関してロール体を磁力によって支持する磁性軸受手段とを具備しており、ロール体は、磁性体からなり、磁性軸受手段は、外周面でロール体の内周面に隙間をもって対面していると共に軸体に装着されている一対の内側磁性体と、一対の内側磁性体間に介在されている永久磁石とを具備しており、スラスト方向に関してロール体を支持すべく永久磁石の磁力に基づいてロール体と一対の内側磁性体とが互いに引き合う力を生じさせるようになっているロール装置。
【請求項2】
中空のロール体と、このロール体の中空部に隙間をもって挿通されている軸体と、ラジアル方向に関してロール体を静圧気体によって支持すべくロール体と軸体との間に介在されている静圧気体軸受手段と、スラスト方向に関してロール体を磁力によって支持する磁性軸受手段とを具備しており、磁性軸受手段は、ロール体の内周面に嵌着された外側磁性体と、外周面で外側磁性体の内周面に隙間をもって対面していると共に軸体に装着されている一対の内側磁性体と、一対の内側磁性体間に介在されている永久磁石とを具備しており、スラスト方向に関してロール体を支持すべく永久磁石の磁力に基づいて外側磁性体と一対の内側磁性体とが互いに引き合う力を生じさせるようになっているロール装置。
【請求項3】
中空のロール体と、このロール体の中空部に隙間をもって挿通されている軸体と、ラジアル方向に関してロール体を静圧気体によって支持すべくロール体と軸体との間に介在されている静圧気体軸受手段と、スラスト方向に関してロール体と磁力によって支持する磁性軸受手段とを具備しており、磁性軸受手段は、ロール体の端部に装着された外側磁性体と、外周面で外側磁性体の内周面に隙間をもって対面していると共に軸体に装着されている一対の内側磁性体と、一対の内側磁性体間に介在されている永久磁石とを具備しており、スラスト方向に関してロール体を支持すべく永久磁石の磁力に基づいて外側磁性体と一対の内側磁性体とが互いに引き合う力を生じさせるようになっており、静圧気体軸受手段は、ロール体の内周面に対して環状の軸受隙間をもって対面しているラジアル軸受面を有していると共に軸体に固着されている円筒状の軸受体と、ラジアル軸受面から軸受隙間に供給すべき気体を給気することができるように軸受体に形成されている給気通路と、軸体に形成されていると共に給気通路に気体を供給することができるように当該給気通路に連通した供給通路とを具備しているロール装置。
【請求項4】
静圧気体軸受手段は、ロール体の内周面に対して環状の軸受隙間をもって対面しているラジアル軸受面を有していると共に軸体に固着されている円筒状の軸受体と、ラジアル軸受面から軸受隙間に供給すべき気体を給気することができるように軸受体に形成されている給気通路と、軸体に形成されていると共に給気通路に気体を供給することができるように当該給気通路に連通した供給通路とを具備している請求項1又は2に記載のロール装置。
【請求項5】
一対の内側磁性体に対面しているロール本体の内周面の部位は拡径されており、外側磁性体は、ロール本体の内周面の前記拡径された部位に嵌着されている請求項2に記載のロール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−97793(P2012−97793A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244793(P2010−244793)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】