説明

ワイヤハーネスの配索形状解析方法及び装置

【課題】拘束具で拘束されるワイヤハーネス(W/S)の配索作業に際して、W/Sが捩れ変形する状態を画面上で確認可能にするW/Sの配索形状解析装置を提供する。
【解決手段】有限要素法によりW/Sの中心ライン上の節点群で構成される解析モデルの各節点について捩れ回転量及び三次元位置を解析して拘束位置間の配索形状を規定する変形解析モデルを作成する変形解析手段と、このモデルに応答してW/Sに相当する円筒でディスプレイ部2の画面2aに配索形状を表示する表示制御手段10と、拘束位置近辺の節点を囲む円筒部分の表面に基準点を設定し、節点群を囲む円筒部分の表面上に、それぞれの捩れ回転量に相当する基準点からの回転位置を捩れ点として順に求める捩れ点データ作成手段14と、縦方向に捩れ点を通過する捩れラインデータを作成する捩れラインデータ作成手段14とを備える。これにより、円筒部分の表面上に捩れラインを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拘束具で互いに間隔を置いて拘束されることにより配索されるワイヤハーネスについて、その中心ライン上の節点群で構成される解析モデルに対して、有限要素法によりワイヤハーネスの物性データ、形状データ及び拘束条件を解析条件として各節点について中心ラインを中心にした捩れ回転量及び三次元位置を解析して拘束位置間の捩れ変形に対応した変形解析モデルを作成し、この変形解析モデルに応答してワイヤハーネスの外径に相当する円筒により、ディスプレイ部の画面に表示される三次元仮想空間に配索形状を表示するワイヤハーネスの配索形状解析方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、特許文献1により、有限要素法により、ワイヤハーネスを円形断面の複数の梁要素が結合された弾性体とみなすことを前提にして、所定部位で拘束されているワイヤハーネスの特定部位が画面上で指示されて画面上で移動させられた移動位置を解析用三次元座標系の三次元座標値として認識する座標値認識手段と、ワイヤハーネスの物性データ、形状データ及び拘束条件を入力条件として、認識された最終及び途中の移動位置の三次元座標値データに応答して、有限要素法により特定部位の移動に伴ってワイヤハーネスの中心ライン上の節点群で構成される解析モデルが変形するのを解析して変形解析モデルを逐次作成し、この変形解析モデルに応答して、画面上の三次元仮想空間に最終及び途中の移動位置の変形したワイヤハーネスの三次元形状を模した円筒をグラフィック表示するワイヤハーネスの変形解析装置を提案した。
【0003】
つまり、ワイヤハーネスの特定部位を移動させた場合の配索経路が、有限要素法で各節点について中心ラインを中心にした捩れ回転量及び三次元位置を解析・表示することにより画面上で確認でき、したがってワイヤハーネスの周辺部品との干渉、或は実装状態での変動に伴う周辺部品との干渉等が高精度に評価可能となり、ワイヤハーネスの設計に際して試作への依存度を軽減もしくは無くすことができる。
【特許文献1】特開2005−22574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、このようなワイヤハーネスの配索作業に際しては、コネクタ、クランプ等の拘束具で拘束位置に拘束する場合に、その取付けの回転位置をワイヤハーネスの捩り変形に対応させないと、配索後にワイヤハーネスに無理な捩れ荷重が加わったり、或は拘束具の再取付けを要することになる問題がある。つまり、次の拘束位置がそれ以前の配索面と同一面上であっても拘束方向が変更される場合には拘束具の取付けの回転位置を適宜調整するのが好ましい。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて、ワイヤハーネスの配索作業に際して、直前の拘束位置から次の拘束位置間でワイヤハーネスが捩れ変形する状態を画面上で確認可能にするワイヤハーネスの配索形状解析方法及び装置を提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ワイヤハーネスの配索形状の有限要素法による解析に際して、ワイヤハーネスの捩れ回転量が解析要素になることに着眼して、前述の目的を達成するために、請求項1により、拘束具で互いに間隔を置いて拘束されることにより配索されるワイヤハーネスについて、その中心ライン上に設定された節点群で構成される解析モデルに対して、有限要素法によりワイヤハーネスの物性データ、形状データ及び拘束条件を解析条件として各節点について中心ラインを中心にした捩れ回転量及び三次元位置を解析して拘束位置間の配索形状を規定する変形解析モデルを作成し、この変形解析モデルに応答してワイヤハーネスの外径に相当する円筒により、ディスプレイ部の画面に表示される三次元仮想空間に配索形状を表示するワイヤハーネスの配索形状解析方法において、拘束位置近辺の節点を囲む円筒部分の表面に基準点を設定し、次の拘束位置に向けて節点群をそれぞれ囲む円筒部分の表面上に、それぞれの捩れ回転量に相当する基準点からの回転位置を捩れ点として順に求め、各円筒部分の縦方向に沿って所属の捩れ点を通過する捩れラインデータを作成し、ディスプレイ部の画面上に三次元の配索形状を模してグラフィック表示された拘束位置間の円筒部分の表面上に、捩れラインデータに応答して捩れラインをグラフィック表示することを特徴とする。
【0007】
これにより、配索形状の解析過程において、ワイヤハーネスの中心ラインの解析モデルを構成する各節点のねじれ回転量が解析されることを前提に、このねじれ回転量をワイヤハーネス周面の三次元形状に対応する円筒の表面上の相応の回転位置に表示することにより、次の拘束位置に向けてワイヤハーネスが徐々に捩れる状態が、円筒の回転量として画像表示される。その際、捩れラインの確認を容易にするには、請求項2により、基準点が、三次元仮想空間において円筒部分の最外位置に設定されると共に、捩れラインが、残りの円筒部分の表面側及び裏側で区別して表示される。
【0008】
ワイヤハーネスの配索形状解析方法を実施する装置としては、請求項4により、拘束具で互いに間隔を置いて拘束されることにより配索されるワイヤハーネスについて、その中心ライン上の節点群で構成される解析モデルに対して、有限要素法によりワイヤハーネスの物性データ、形状データ及び拘束条件を解析条件として各節点について中心ラインを中心にした捩れ回転量及び三次元位置を解析して拘束位置間の配索形状を規定する変形解析モデルを作成する変形解析手段と、この変形解析モデルに応答してワイヤハーネスの外径に相当する円筒により、ディスプレイ部の画面に表示される三次元仮想空間に配索形状を表示する表示制御手段とを備えたワイヤハーネスの配索形状解析装置において、拘束位置近辺の節点を囲む円筒部分の表面に基準点を設定し、次の拘束位置に向けて節点群をそれぞれ囲む円筒部分の表面上に、それぞれの捩れ回転量に相当する基準点からの回転位置を捩れ点として順に求める捩れ点データ作成手段と、各円筒部分の縦方向に沿って所属の捩れ点を通過する捩れラインデータを作成する捩れラインデータ作成手段とを備えると共に、表示制御手段が、ディスプレイ部の画面上に三次元の配索形状を模して拘束位置間の円筒部分をグラフィック表示すると共に、捩れラインデータに応答して円筒部分の表面上に捩れラインをグラフィック表示することを特徴とする。
【0009】
捩れラインを表示するための三次元の配索形状を簡単なグラフィック処理で画面上に表示する方法又は装置としては、請求項3により、所定数の節点間の間隔に対応する縦幅及びワイヤハーネスの外径に対応する単位円筒を規定する円筒データを作成し、変形解析モデルデータの所定数の節点間を順に結ぶ直線ラインに単位円筒の中心軸を順に位置付けした一連の円筒部分による円筒状変形解析モデルデータを作成し、この円筒状変形解析モデルデータを、一連の円筒部分が画面に対応する投影面へ投影された投影円筒像を規定する投影円筒像データに変換し、この投影円筒像データに応答して拘束位置間の配索形状を投影円筒像としてディスプレイ部の画面に表示すると共に、投影円筒像に、それぞれの円筒部分に所属の節点の捩れ回転量に応じて作成された捩れラインデータに応答して捩れラインをグラフィック表示するか、又は請求項5により、所定数の節点間の間隔に対応する縦幅及びワイヤハーネスの外径に対応する単位円筒を規定する円筒データを作成する円筒データ作成手段と、変形解析モデルデータの所定数の節点間を順に結ぶ直線ラインに単位円筒の中心軸を順に位置付けした一連の円筒部分による円筒状変形解析モデルデータを作成する円筒状解析モデルデータ作成手段と、円筒状変形解析モデルデータを、一連の円筒部分が画面に対応する投影面へ投影された投影円筒像を規定する投影円筒像データに変換するモデルデータ変換手段とを備え、表示制御手段が、投影円筒像データに応答して拘束位置間の配索形状を投影円筒像により表示すると共に、この投影円筒像に、それぞれの円筒部分に所属の節点の捩れ回転量に応じて作成された捩れラインデータに応答して捩れラインをグラフィック表示する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1又は請求項4の発明によれば、ワイヤハーネスが直前の拘束位置から次の拘束位置に配索されて拘束される際の捩れ状態が画面上で確認でき、したがってワイヤハーネスの互いに同一回転位置に取付けられた拘束具により拘束された場合のワイヤハーネスに対する捩れ荷重が評価できる。換言すれば、捩れ状態を画面上で確認しつつ拘束具の取付け回転位置を調整することにより無理の無い配索作業が可能になる。その際、請求項2の発明によれば、捩れ状態が全域にわたり確実に確認可能になる。請求項3又は請求項5の発明によれば、有限要素法によるワイヤハーネスの中心ラインの解析モデルに基づく配索形状の解析結果に応じて配索形状を円筒状の三次元形状を模して二次元画面にグラフィック表示する際に、順に配列位置を規定されただけの一連の円筒部分による円筒状変形解析モデルデータを投影データに変換することにより、グラフィック処理段階での曲線に対する多数の関数を用いた演算処理が不要になり、メモリ容量が大幅に削減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1乃至図4を基に本発明の実施の形態による配索形状解析装置を説明する。この装置は、本発明のワイヤハーネスの配索形状解析方法を実施するようにパソコン1を用いるもので、さらにディスプレイ部2と、入力部としてのキーボード3及びマウス4並びにCD等の記録媒体がセットされる入出力用のディスクドライブ6等の入出力部5とが付属している。
【0012】
パソコン1は、ディスクドライブ6で読取られたワイヤハーネス(W/H)の配索形状解析用のプログラムにより内蔵のメモリ、CPU等を作動させて、次の各手段を備えるように機能する。即ち、ディスクドライブ6を介して或はCAD装置から直接取込まれたCADデータを格納するCADデータ格納手段19と、有限要素法による配索形状の解析に必要なCADデータ及び特に物性に関しては入力操作より入力された解析条件を取込んでその設定を行う解析条件設定手段12と、その解析条件を基に、拘束具により順に間隔を置いて拘束することにより配索されるワイヤハーネスの中心ラインに沿った節点群で構成される解析モデルに対して、各節点について前述の中心ラインを中心にした捩れ回転量及びそのCAD三次元座標系の三次元位置を解析することにより拘束位置間の配索形状を規定する変形解析モデルを作成する変形解析手段13と、ワイヤハーネスの外径に相当する円筒に対して拘束位置近辺の節点を囲むその半径位置上の円筒部分の表面に基準点を設定し、次の拘束位置に向けて節点群をそれぞれ囲む円筒部分の表面上に、それぞれの捩れ回転量に相当する基準点からの回転位置を捩れ点として順に求める捩れ点データ作成手段14と、各円筒部分の縦方向に沿って所属の捩れ点を通過する捩れラインデータを作成する捩れラインデータ作成手段15と、ディスプレイ部2の画面2a上にCAD座標系に応じて表示される三次元仮想空間上に、グラフィック処理に必要なデータと共に表示データ格納部10aに格納された解析済みのW/Hの変形解析モデル及び捩れラインデータに応答して、三次元の配索形状を模して円筒をグラフィック表示すると共に、その円筒表面上に捩れラインをグラフィック表示する表示制御手段10とを備えている。
【0013】
CADデータ格納手段19には、CAD装置で設計された解析対象になるW/Hの配索形状の三次元モデルが、各拘束位置のCAD座標系上の座標値、各拘束具の形状データ、それぞれの拘束方向、W/Hの物性データ等と共にCADデータとして格納される。
【0014】
W/Hは、結束された複数本の電線、複数の芯線を有する樹脂外装のケーブル、複数本の結束されたケーブル等であり、したがって曲げ剛性が縦横剛性に比べて著しく小さく、また長さ方向の伸縮が制限されるために、等価的に複数の梁要素が結合された弾性体と見なし、この結合点を解析モデルの節点とすることができる。つまり、各節点の解析された捩り量で隣の節点の位置が順に解析され、その各節点を順に直線で結んで変形解析モデルが作成される。したがって、変形解析手段13は、解析条件設定手段12で設定されたCADデータ中のW/Hの外径・長さの形状、拘束位置・方向、ヤング率・ポアソン比・密度を解析条件データとして有限要素法により拘束位置間の捩れ変形に対応した変形解析モデルを作成する。CAD装置で考慮しなかった物性データについてはパソコン1側で別途に入力設定する。例えば、自動車のインストルメンタルパネルの裏側において配索されるW/Hの最終領域について、図2に示すように、変形解析モデルM1が作成されると共に、以下に説明する捩れラインデータの作成処理を経て、図3に示すように、円筒20によりW/Hの配索形状が表示される。
【0015】
即ち、図2に示すように、直前の拘束位置にクランプ21により垂直上向きに取付け穴に拘束され、先端部のコネクタ22が次の拘束位置のコネクタ座23に垂直方向から捩られて水平方向に差込まれるとすると、直前の最終拘束位置に所属する節点a及び次の最終の拘束位置に所属の節点a間の例えば5mm間隔の節点bについて配索形状を規定する変形位置(xb1,yb1,zb1),(xb2,yb2,zb2)……(xbn―1,ybn―1,zbn−1)、(xbn,ybn,zbn)が解析され、変形解析モデルM1が作成される。その際、捩れ点データ作成部14で、図示のように、節点aについては、この点を中心にしたW/Hに対応する半径の円形上、即ち所属の円筒部分の表面の最外位置(モニタ側に最も膨らんだ位置)に基準点Pa0が設定される。以下、次の拘束位置aに向けて順に節点bにつき、それぞれを囲む円形上に求められる捩れ回転量に応じて所属の円筒部分の表面上の捩れ点Pb1、Pb2……Pn−1,bn,a1の三次元座標値が算出される。
【0016】
捩れラインデータ作成部15では、次に隣合う節点間の間隔に相当する縦幅を有する所属の円筒部分の表面をその縦方向に沿って直線状に捩れ点を通過する捩れラインデータLtが作成される。これにより、表示制御手段10は、表示データ格納部10aに変形解析モデルM1及び捩れラインデータLtを取込んで、W/Hの外径データ、拘束具の形状データを基に曲線状のグラフィック処理を行って円筒20を拘束具と共に表示し、その表面に捩れラインデータLtを円筒20の直線もしくは曲線に応じてグラフィック処理した捩れライン29を表示し、その際円筒20の裏面に隠れる場合点線で表示する。その際、捩れライン29は、曲線処理を施すことなく節点群に対応する円筒部分単位で直線のまま表示することもできる。
【0017】
このように構成されたW/Hの配索形状解析装置の動作を説明する。パソコン1において、キーボード3或はマウス4の入力操作により、所望の格納済みのW/H配索形状の三次元モデルのCADデータを選択して配索形状を解析させる。さらに、入力操作により、図3に示すように、XYZ軸のCAD座標系に対応した三次元仮想空間において、その最終範囲の表示を指示すると、クランプ21及びコネクタ座23に装着されたコネクタ22及びその間の捩れ変形したW/Hの配索形状に対応する円筒20が表示されると共に、その表面に捩れライン29が連続線として表示される。これにより、クランプ21で垂直上方へ拘束されたW/Hについて、その最外位置から点線表示するように裏面に隠れる捩れライン29を基に、次の拘束位置のコネクタ座23にコネクタ22により同一面から外れた位置で水平のW/H方向に拘束される場合点線で表示する間の捩れ変形が確認される。
【0018】
これにより、W/H端末領域の楕円Eと点線になった捩りライン29との交点位置29aを画面2a上で想定し、基準点Pa0に対応する近辺の捩りライン29の基点29bに対する捩れ回転量が、その回転方向と共に確認される。したがって、クランプ21を基点とした自然状態のW/Hの先端部でのコネクタ22の取付け位置をW/Hの先端方向を見て90°程度予め反時計方向にずらせば無理なく、コネクタ座23に拘束されることが分る。同様に、クランプ21の取付け位置を確認する場合には、マウス4により画面2aをスクロールして図4に示す配索範囲を表示させる。この場合、直前の拘束位置にクランプ25で水平方向に拘束されており、この拘束位置を基点として次の拘束位置でクランプ21で垂直上方へ拘束する際の捩れ変形が捩れライン29により確認される。これにより、クランプ21の取付け位置をクランプ25の取付け位置に対してW/Hの先端方向を見て相応の回転角だけ時計方向に回転させれば良いことがわかる。
【0019】
以上説明したように、拘束位置間の捩れ変形が画面画面2a上で確認できることにより、ワイヤハーネスをその基端から最後のコネクタ22に向けてそれぞれ拘束具で順に配索作業を行う際に、直前の拘束位置の拘束具に対する次の拘束位置の拘束具の取付け位置の捩れ回転量を基端側から順に確認しつつ拘束具の回転位置を調整して取付けることにより、ワイヤハーネスに加わる捩り荷重を解消もしくは軽減して配索することが可能になる。
【0020】
図5はワイヤハーネスのグラフィック表示処理に要するメモリ容量を削減するための別の実施の形態による配索形状解析装置を示すもので、図1に示すパソコン1において、次の各部が追加されるようにプログラムされている。即ち、解析前の標準変形解析モデルデータの節点群について所定数の節点間の間隔に対応する縦幅及びW/Hの外径に対応する外径を有する単位円筒を規定する円筒データを作成する円筒データ作成手段31と、変形解析された所定数の節点間を結ぶ直線ラインに単位円筒の中心軸を順に位置付けした一連の円筒部分を規定する円筒状変形解析モデルデータを作成する円筒状モデルデータ作成手段32と、その円筒状変形解析モデルデータを、一連の円筒部分が2次元の画面2aに対応する投影面へ投影された投影円筒像を規定する投影円筒像データに変換するモデルデータ変換手段33とが追加されている。
【0021】
即ち、円筒データ作成手段31は、図6Aに示すように、例えば2個の隣合う節点b間の間隔2mmに対応する縦幅及び解析条件設定手段12で設定されたW/Hの外径データを取込んで、その外径を有する縦幅2mmの単位円筒Meを規定する円筒データを作成する。円筒状モデルデータ作成手段32は、図6Bに隣合う3個の節点について示すように、解析結果により変位した2個の節点間を結ぶ直線ラインに単位円筒Meの中心軸を順に位置付けして円筒状変形解析モデルデータを作成する。捩れラインデータ作成部15は、円筒状変形解析モデルデータに応答して、図6Bに示すように、一連の円筒部分の表面をその縦方向に沿って直線状に捩れ点を通過する捩れラインデータLtを作成する。
【0022】
モデルデータ変換手段33は、入出力部5での入力操作により配索形状に対応して指示された投影方向に応答して、3軸中のいずれか2軸で規定される投影面を画面2aとして想定し、単位円筒Meによる一連の円筒部分を拘束具と共に投影して、それぞれの輪郭位置を規定する投影円筒像データに変換する。例えば、前述の図3において、X軸に沿ってYZ軸面を投影面とするか、或はX軸方向へ移動した45°の斜め上方からYZ軸面への投影方向を指示する。
【0023】
表示制御手段10は、この投影円筒像データに応答して、配索形状に対応する円筒列を拘束具の外形と共に表示する画像データを作成して付属の表示データ格納部10aに格納し、画面2aに表示された三次元仮想空間に画像表示すると共に、捩れラインデータLtに応答して、その各円筒部分の表面上にその縦方向に沿った直線状の捩れラインcを表示する。その際、この格納部に格納されているグラフィック表示用の表示制御データを基に、各単位円筒Meの表面は着色し、その直交する端面は輝度を変える等により区別して表示し、隣同士の単位円筒Meの端面位置が一致する場合には、その端面の画像は省略して連続的に表示し、さらに投影方向からの平行光に対する陰影を輝度変化により表示する。捩れラインは、単位円筒Meとは別の色で着色される。尚、直線領域も当然単位円筒Me単位で区切って表示しても良く、さらにその各円筒面は着色することなく輪郭で表示したり、着色はカラーに限らず、グレースケールで表示することも考えられる。
【0024】
パソコン1において、入力操作により、前述の図4に示す配索範囲の解析結果について前述の45°の斜め上方からYZ軸面への投影方向を指示すると、図7に示すように、クランプ21,25間の捩れ変形したW/H1の配索形状に対応する一連の円筒部分(簡単のために縦幅は拡大してある)の投影画像20aが表示されると共に、各円筒像の表面に、各節点間を結ぶ直線ライン沿った捩りライン29cがそれぞれ表示される。
【0025】
尚、前述の実施の形態において、単位円筒Meの縦幅を2個の隣合う節点間の間隔に対応して設定したが、縦幅を3個以上の節点間隔に対応させ、そのいずれかの節点の捩れ回転量に対応して捩れラインデータを作成して、より簡単にグラフィック処理を行うことも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態によるワイヤハーネスの配索形状解析方法を実施する装置の回路構成を説明する図である。
【図2】同装置の解析原理を説明する図である。
【図3】同装置によるワイヤハーネスの最終領域の配索形状の画面表示状態を説明する図である。
【図4】同装置による最終領域の直前領域のワイヤハーネスの配索形状の画面表示状態を説明する図である。
【図5】別の実施の形態によるワイヤハーネスの配索形状解析装置の回路構成を説明する図である。
【図6】図5による配索形状解析装置の動作原理を説明する図である。
【図7】図5による配索形状解析装置のワイヤハーネスの配索形状の画面表示状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0027】
1 パーソナルコンピュータ
2 ディスプレイ部
2a 画面
3 キーボード
4 マウス
20 ワイヤハーネスに対応する円筒
21,25 クランプ
22 コネクタ
23 コネクタ座
29,29c 捩れライン
,a,b 節点
Lt 捩れラインデータ
M1 変形解析モデル
Me 単位円筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拘束具で互いに間隔を置いて拘束されることにより配索されるワイヤハーネスについて、その中心ライン上に設定された節点群で構成される解析モデルに対して、有限要素法によりワイヤハーネスの物性データ、形状データ及び拘束条件を解析条件として各節点について中心ラインを中心にした捩れ回転量及び三次元位置を解析して拘束位置間の配索形状を規定する変形解析モデルを作成し、この変形解析モデルに応答してワイヤハーネスの外径に相当する円筒により、ディスプレイ部の画面に表示される三次元仮想空間に配索形状を表示するワイヤハーネスの配索形状解析方法において、
拘束位置近辺の節点を囲む円筒部分の表面に基準点を設定し、次の拘束位置に向けて節点群をそれぞれ囲む円筒部分の表面上に、それぞれの捩れ回転量に相当する前記基準点からの回転位置を捩れ点として順に求め、
各前記円筒部分の縦方向に沿って所属の前記捩れ点を通過する捩れラインデータを作成し、
ディスプレイ部の画面上に三次元の配索形状を模してグラフィック表示された前記拘束位置間の前記円筒部分の表面上に、前記捩れラインデータに応答して捩れラインをグラフィック表示することを特徴とするワイヤハーネスの配索形状解析方法。
【請求項2】
基準点が、三次元仮想空間において円筒部分の最外位置に設定されると共に、捩れラインが、残りの円筒部分の表面側及び裏側で区別して表示されることを特徴とする請求項1記載のワイヤハーネスの配索形状解析方法。
【請求項3】
所定数の節点間の間隔に対応する縦幅及びワイヤハーネスの外径に対応する単位円筒を規定する円筒データを作成し、
変形解析モデルデータの前記所定数の前記節点間を順に結ぶ直線ラインに前記単位円筒の中心軸を順に位置付けした一連の円筒部分による円筒状変形解析モデルデータを作成し、
この円筒状変形解析モデルデータを、一連の前記円筒部分が画面に対応する投影面へ投影された投影円筒像を規定する投影円筒像データに変換し、
この投影円筒像データに応答して拘束位置間の配索形状を前記投影円筒像としてディスプレイ部の画面に表示すると共に、前記投影円筒像に、それぞれの前記円筒部分に所属の前記節点の捩れ回転量に応じて作成された捩れラインデータに応答して捩れラインをグラフィック表示することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のワイヤハーネスの配索形状表示方法。
【請求項4】
拘束具で互いに間隔を置いて拘束されることにより配索されるワイヤハーネスについて、その中心ライン上の節点群で構成される解析モデルに対して、有限要素法によりワイヤハーネスの物性データ、形状データ及び拘束条件を解析条件として各節点について中心ラインを中心にした捩れ回転量及び三次元位置を解析して拘束位置間の配索形状を規定する変形解析モデルを作成する変形解析手段と、この変形解析モデルに応答してワイヤハーネスの外径に相当する円筒により、ディスプレイ部の画面に表示される三次元仮想空間に配索形状を表示する表示制御手段とを備えたワイヤハーネスの配索形状解析装置において、
拘束位置近辺の節点を囲む円筒部分の表面に基準点を設定し、次の拘束位置に向けて節点群をそれぞれ囲む円筒部分の表面上に、それぞれの捩れ回転量に相当する前記基準点からの回転位置を捩れ点として順に求める捩れ点データ作成手段と、各前記円筒部分の縦方向に沿って所属の前記捩れ点を通過する捩れラインデータを作成する捩れラインデータ作成手段とを備えると共に、表示制御手段が、ディスプレイ部の画面上に三次元の配索形状を模して前記拘束位置間の前記円筒部分をグラフィック表示すると共に、前記捩れラインデータに応答して前記円筒部分の表面上に捩れラインをグラフィック表示することを特徴とするワイヤハーネスの配索形状解析装置。
【請求項5】
所定数の節点間の間隔に対応する縦幅及びワイヤハーネスの外径に対応する単位円筒を規定する円筒データを作成する円筒データ作成手段と、変形解析モデルデータの前記所定数の前記節点間を順に結ぶ直線ラインに前記単位円筒の中心軸を順に位置付けした一連の円筒部分による円筒状変形解析モデルデータを作成する円筒状解析モデルデータ作成手段と、前記円筒状変形解析モデルデータを、一連の前記円筒部分が画面に対応する投影面へ投影された投影円筒像を規定する投影円筒像データに変換するモデルデータ変換手段とを備え、
表示制御手段が、前記投影円筒像データに応答して拘束位置間の配索形状を前記投影円筒像により表示すると共に、この投影円筒像に、それぞれの前記円筒部分に所属の前記節点の捩れ回転量に応じて作成された捩れラインデータに応答して捩れラインをグラフィック表示することを特徴とする請求項4記載のワイヤハーネスの配索形状表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−86850(P2007−86850A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271435(P2005−271435)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】