説明

ワインダー用コアの移載装置

【課題】ワインダー用コアを、X軸、Y軸又はZ軸を組み合わせた2軸方向又は3軸方向に移動させて、ワインダー装置に移載することができるワインダー用コアの移載装置を提供する。
【解決手段】コアwが収容された容器99に臨む位置に設けた、容器のコアを取り出す開口部の位置よりも高さを有する基体1と、この基体の上部に基端部が回動可能に連結された細長状の上腕部2と、この上腕部の先端部に基端部が回動可能に連結された細長状の前腕部3と、この前腕部に垂設されて、上記コアを吸着可能なハンドリング部4とを有し、かつ上記上腕部を駆動させる上腕駆動手段5と、上記前腕部を駆動させる前腕駆動手段とをそれぞれ上記基体の上部に設けた円筒状のコアをワインダー装置に移載するワインダー用コアの移載装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、紙、フィルム等の帯状体を巻取るためのコアをワインダー装置に移載するワインダー用コアの移載装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、上記ワインダー用コアは、オペレータによる手作業によって、又はリニアスライド機構を有する移載装置によって、ワインダー装置に供給されている。
【0003】
この手作業によるマニュアル作業では、ワインダー装置によって所定の長さの帯状体がコアに巻取られて、巻取り作業が終了した際に、毎回、この帯状体を巻取るための新しいコアをワインダー装置に設置する作業が必要となるため、作業要員を削減する省人化を図ることができないという問題がある。また、帯状体を巻取るコアを次々にワインダー装置に供給するため、ワインダー装置付近に多数のコアを用意する必要があり、このコアの載置場所によってオペレータの作業スペースが狭くなって、作業現場での事故等の原因になりかねないという問題がある。
【0004】
これに対して、上記リニアスライド機構を有する移載装置は、特許文献1及び2に示すように、X軸、Y軸およびZ軸方向にそれぞれリニアスライドレールが設置されて、このリニアスライドレール上を、コアを搬送するコア搬送機構が移動するようになっている。
【0005】
従って、この移載装置を用いた場合には、コアをワインダー装置へ自動供給することができるため、コアをワインダー装置に供給するオペレータが不要となって、オペレータによる作業現場での事故を阻止できるとともに、省人化を図ることができる。
【0006】
しかしながら、この移載装置によるコアの供給は、コア搬送機構をX軸、Y軸又はZ軸の単軸方向に順次移動させることによって行うために、1本当たりの搬送時間が長くなってしまう。このため、ワインダー装置のコアの供給サイクルタイムに合わせて、次々にコアをワインダー装置に供給することが難しいという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開平10−139166号公報
【特許文献2】特開平6−9122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情を考慮し、ワインダー用コアを、X軸、Y軸又はZ軸を組み合わせた2軸方向又は3軸方向に移動させて、ワインダー装置に移載することができるワインダー用コアの移載装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、請求項1の発明は、帯状体を巻取るための円筒状のコアをワインダー装置に移載するワインダー用コアの移載装置であって、上記コアが収容された容器に臨む位置に設けられ、上記容器の上記コアを取り出す開口部の位置よりも高さを有する基体と、この基体の上部に基端部が回動可能に連結された細長状の上腕部と、この上腕部の先端部に基端部が回動可能に連結された細長状の前腕部と、この前腕部に垂設されて、上記コアを保持可能なハンドリング部とを有し、かつ上記上腕部を駆動させる上腕駆動手段と、上記前腕部を駆動させる前腕駆動手段とがそれぞれ上記基体の上部に設けられていることを特徴とするものである。
ここで、ハンドリング部としては、例えば、爪式のチャックを有してコアを把持するものであっても、吸着パッドを有してコアを吸着するものであってもよく、円筒状のコアを保持できればよいものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載のワインダー用コアの移載装置において、上記上腕部は、第1の板状部材と第2の板状部材とが、それぞれ板面を上下方向に向けて対向配置されるとともに、これら第1の板状部材および第2の板状部材に上記上腕駆動手段の出力部が接続されることにより、上記基端部を軸として上記板面方向に回動可能に設けられており、上記前腕部は、第3の板状部材と第4の板状部材とが、それぞれ板面を上下方向に向けて対向配置されるとともに、これら第3の板状部材および第4の板状部材の基端部が前腕連結部材によって上記第1の板状部材および第2の板状部材の先端部に回動可能に連結されて、上記前腕連結部材を軸として上記板面方向に回動可能に設けられており、かつ上記前腕連結部材は、上記第3の板状部材および上記第4の板状部材に一体に設けられるとともに、上記前腕駆動部の出力部が接続されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2に記載のワインダー用コアの移載装置において、上記ハンドリング部は、上記コアを吸着可能な吸着パットを具備した細長状のハンドリング部本体と、上記第3の板状部材および第4の板状部材の先端部に設けられ、上記ハンドリング部本体を上記第3の板状部材および第4の板状部材の先端部に連結する回動自在なハンドリング連結部材とを有しており、上記ハンドリング部本体は、上記ハンドリング連結部材によって長手方向および幅方向に回動可能に設けられて、上記吸着パットが下方を向くようになっており、かつ上記吸着パットは、上記コアの表面の凹凸を吸収可能な弾性を有する素材からなり、上記ハンドリング部本体の長手方向に向けて複数設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3に記載のワインダー用コアの移載装置において、上記容器内には、上記コアがその軸線を上記前腕連結部材および上記ハンドリング連結部材の回動軸と平行に向けて、上記回動軸から接離する方向に複数本配置されるとともに、これらコア同士の間の上にも積み重ねられて複数段状に積層されて、コアが多数本収容されており、上記上腕部の鉛直線に対する角度を、上記コアを吸着する第1角度から上記コアを上記ワインダー装置への導入部に載置する第2角度に移行させる際に大きくすべく制御するとともに、上記前腕部の上記上腕部に対する角度を、上記第1角度から第2角度に移行させる際に小さくすべく制御する制御装置が備えられており、上記制御装置は、上記基体から離間して配置された遠方の上記コアの移載から一本手前側の上記コアの移載に移る度に、上記上腕部の鉛直線に対する上記第1角度を大きく、かつ上記前腕部の上記上腕部に対する上記第1角度を小さくすべく制御する平面距離制御部と、一段下の上記コアの移載に移る度に、上記上腕部の鉛直線に対する第1角度を小さく、かつ上記前腕部の上腕部に対する第1角度を大きくすべく制御する深度制御部とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載のワインダー用コアの移載装置によれば、上腕部駆動手段および前腕部駆動手段を基体の上部に設けたため、前腕駆動手段を上腕部と前腕部との連結部に設けた一般的な移載装置と異なり、この連結部に前腕駆動手段の荷重が作用することを阻止して、細長状の上腕部と、その先端部に連結された細長状の前腕部との姿勢が前腕駆動手段の荷重の作用によって不安定になることを防止でき、かつこの荷重の作用による駆動力の浪費によって、エネルギー効率が低下することを防止できる。
このため、ハンドリング部にコアを吸着させて、上腕部と、その先端部に連結された前腕部とを、それぞれ上腕駆動手段と前腕駆動手段とによって駆動させることにより、コアを2軸方向又は3軸方向に移動させることができ、安定的かつ効率的に移載することができる。
【0014】
特に、請求項2に記載のワインダー用コアの移載装置によれば、上腕部を構成する板面が上下方向に向けて対向配置された第1の板状部材と第2の板状部材とを、上腕駆動手段を作動させることによって、板面方向に回動させることができる。
同様に、前腕部を構成する板面が上下方向に向けて対向配置された第3の板状部材と第4の板状部材とを、これらの基端部と一体に設けられた前腕連結部材によって、第1の板状部材と第2の板状部材の先端部に回動可能に連結したため、前腕駆動手段を作動させることによって、前腕連結部材を軸として板面方向に回動させることができる。
その結果、ワインダー用コアを、基体から接離するX軸方向および高さ方向のZ軸方向の2軸方向に移動させることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、ハンドリング連結部材によって、第3の板状部材および第4の板状部材の先端部に細長状のハンドリング部本体を連結したため、このハンドリング部本体の長手方向に複数設けられた吸着パットによってコアを吸着して、移載することができる。このため、吸着パットによってコアを吸着させるため、爪によってコアを把持する場合と異なって、容器内にコアを隣接させて積載させても、コアを吸着搬送させることができ、容器の小型化を可能にすることができる。
【0016】
また、ハンドリング部本体を、ハンドリング連結部材によって幅方向に回動可能に設けたため、常に吸着パットを下方に向けて安定的にコアを吸着保持することができる。
さらに、ハンドリング部本体を、ハンドリング連結部材によって長手方向に回動可能に設けたため、変形しているコアや凹凸を有するコアであっても、ハンドリング部の一端を他端に対して上方又は下方に傾けることにより、コアを吸着して移載することもできる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、制御装置によって、第1角度から第2角度に移行させる際に上腕部の基体に対する角度を大きく、かつ前腕部の上腕部に対する角度を小さくすることによって、コアを基体の手前に載置することができる。従って、基体と一体にコアのワインダー装置への導入部を設けることができ、基体と導入部とをそれぞれ別途設けた場合と比較して、ワインダー用コアの移載システムを小型化することができる。
【0018】
さらには、制御部における平面距離制御部によって、遠方のコアの移載から一本手前側のコアの移載に移る度に、上腕部の基体に対する第1角度を大きく、かつ前腕部の上腕部に対する第1角度を小さくすることができるため、順次、ハンドリング部の吸着パットによって、基体から離間して配置された遠方側から手前側のコアを一本ずつ吸着搬送することができる。
【0019】
これに加えて、深度制御部によって、一段下のコアの移載に移る際に、上腕部の基体に対する第1角度を小さく、かつ前腕部の上腕部に対する第1角度を大きくすることができるため、順次、上段の基体に対して遠方側のコアから手前側のコア、そして中段の遠方側から手前側のコアを経て、下段における遠方側から手前側のコアまでを一本ずつ吸着パットによって移載することができる。このため、容器内に積層された複数段状のコアを不規則に移載する場合と異なって、上段のコアが崩れ落ちることを防止して、コアを規則的かつ効率的に移載することができ、その結果、コアの供給サイクルタイムを短くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るワインダー用コアの移載装置における最良の実施形態について、図1〜図7を参照しながら説明する。
本実施形態のワインダー用コアの移載装置は、多数本のワインダー用コアwが収容された容器99に臨む位置に立設した基体1と、基体1の上部10に基端部が回動可能に連結された細長状の上腕部2と、この上腕部2の先端部に基端部が回動可能に連結された細長状の前腕部3と、この前腕部3の先端部に垂設されて、ワインダー用コアwを吸着可能なハンドリング部4とによって概略構成されている。
【0021】
基体1は、基台11の上部に2枚の板状部材12が板面を上下方向に向けて対向配置されて、これら2枚の板状部材12が一定の間隔をあけて平行に配設されることにより、その上端部が容器99の上端部よりも上方に位置する高さを有している。また、基台11の上部における容器99側には、コアwを載置する載置台19が一体に設けられているとともに、載置台19には、コアwを長手方向に向けてスライドさせて、ワインダー装置(図示を略す)に導入させる導入部19aが設けられている。
【0022】
上腕部2は、第1の板状部材21と第2の板状部材22とを有し、これらの板状部材21と板状部材21とは、それぞれ細長矩形状に形成されて、板面を上下方向に向けて板状部材12の間に対向配置されている。
そして、これら第1の板状部材21および第2の板状部材22は、それぞれ長手方向の一端部である基端部が板状部材12に回動可能に連結されており、これら板状部材21、22の先端部の対向裏面側には、円環状のリング部材35が設けられている。
また、第1の板状部材21および第2の板状部材22は、リング部材35の開口に臨む位置に円形貫通穴が形成されており、このリング部材35の内縁部には、ベアリングが設けられている。
【0023】
前腕部3は、第3の板状部材31と第4の板状部材32とを有し、これらの第3の板状部材31と第4の板状部材32とは、それぞれ細長矩形状に形成されて、板面を上下方向に向けて第1の板状部材21と第2の板状部材22との間に対向配置されている。
そして、これら第3の板状部材31および第4の板状部材32の基端部には、それぞれ円形貫通穴が形成されており、第3の板状部材31の基端部は、第1の板状部材21の板面に近接して配設されている。同様に、第4の板状部材32の基端部は、第2の板状部材22の板面に近接して配設されており、これによって、これら板状部材31、32の円形貫通穴は、それぞれリング部材35の開口に臨むように位置している。
【0024】
そして、これらのリング部材35の開口および板状部材21、22、31、32の貫通穴には、軸36が挿通しており、この軸36は、第3の板状部材31と第4の板状部材32とに接合されている。
さらに、軸36は、第3の板状部材31側のリング部材35の対向裏面外方に位置する先端部に、スプロケット39が設けられている。
【0025】
他方、軸36は、その基端部に、外周の一部が径よりも第2の板状部材22の基端部側に突出した偏円状のリンク板37が接合されている。
このリンク板37は、第2の板状部材22と平行に配設されるとともに、上記突出部に略円柱状の突起38が設けられており、上記リング部材35及び軸36とともに前腕連結部材を構成している。
従って、この前腕連結部材は、軸36によって第3の板状部材31および第4の板状部材32と一体的に設けられるとともに、これら第3の板状部材31および第4の板状部材32は、前腕連結部材によって第1の板状部材21および第2の板状部材22に連結されて、垂直平面を回動可能に設けられている。
【0026】
一方、第2の板状部材22の基端部の対向裏面外方には、図7に示すように、外観視略円柱状の減速器付きの前腕駆動用サーボモータ(前腕駆動手段)6が設けられており、このサーボモータ6の外周壁部周りには、回動自在な回動板611が設けられている。この回動板611は、その外形が外周の一部が径よりも第2の板状部材22の先端部側に突出した偏円板状に形成されて、第2の板状部材22と平行に配設されている。
【0027】
また、サーボモータ6は、その出力部に略円筒状の駆動力伝達手段62が接続されている。
この駆動力伝達手段62は、その内部に略円柱状の回動軸66が設けられているとともに、その内周壁面と回動軸66との間にベアリング65が設けられて、回動軸66回りに回動可能に設けられている。
【0028】
そして、この駆動力伝達手段62の外周壁部周りには、外周の一部を径よりも第2の板状部材22の先端部側に突出させた偏円板状のリンク板63が一体に設けられており、このリンク板63は、第2の板状部材22と平行に配設されるとともに、上記突出部に略円柱状の突起64が設けられている。
【0029】
この突起64には、連結棒70の一端部が一体的に設けられるとともに、この連結棒70の他端部は、リンク板37の突起38に一体的に設けられており、これによって、リンク板63は、連結棒70を介してリンク板37に連結されている。
よって、前腕駆動用サーボモータ6は、駆動力伝達手段62、リンク板63、連結棒70や上記前腕連結部材を介して前腕部3の第3の板状部材31や第4の板状部材32を回動させるようになっている。
【0030】
また、前腕駆動用サーボモータ6は、駆動力伝達手段62および回動軸66とともにユニットを構成して、板状部材12の上部に固定されている。この回動軸66は、第2の板状部材22側の先端部に径の一回り小さい円柱状の突起部71が設けられており、これによって、第2の板状部材22は、突起部71の挿通口を形成して回動軸66に固定することにより、板状部材12に回動自在に連結されている。
【0031】
さらに、この突起部71の先端部は、径が小さく形成されており、その外周壁面周りにベアリングを介してスプロケット73の円筒状の台座72が設けられている。
このスプロケット73と台座72とは、一体に形成されており、台座72の内周には、係合溝72aが形成されるとともに、この係合溝72aには、突起部71の他端面に接合した係合板71aが係合している。さらに、台座72は、第1の板状部材21と第2の板状部材22との間に配設された支持板74と、この支持板74に接続された固定棒75とを介して第1の板状部材21側の板状部材12に支持されている。
【0032】
一方、第1の板状部材21は、その基端部の対向裏面外方に外観視略円柱状の減速器付きの上腕駆動用サーボモータ(上腕駆動手段)5の出力部が接続されており、この上腕駆動用サーボモータ5が板状部材12の上部に固定されることにより、板状部材12に回動自在に連結されている。
【0033】
また、第1の板状部材21と第2の板状部材22とは、外観視円柱状の同期回動部材25によって同期して回動するようになっている。
すなわち、この同期回動部材25は、一端部が第1の板状部材21と接合されるとともに、他端部が第2の板状部材22を貫通して、同板状部材22の対向裏面外方において回動自在な回動板611の突出部に接合されている。これにより、第2の板状部材22は、第1の板状部材21および同期回動部材25を介して上腕駆動用サーボモータ5に接続されており、第2の板状部材22は、第1の板状部材21の回動に伴って同期回動部材25が移動することにより、回動板611とともに回動するため、第1の板状部材21と同期して垂直平面を安定的に回動するようになっている。
【0034】
さらに、第1の板状部材21および第2の板状部材22の長手方向の中央部における幅方向の中央部には、板状部材21、22間と第1の板状部材21の対向裏面外方とにスプロケット23、24を設けるための軸が挿通されている。この軸に対してスプロケット24は、回動自在に設けられている。
これにより、上記台座72のスプロケット73とスプロケット23との外周回りに、チェーン81が巻回されており、このチェーン81は、第1の板状部材21および第2の板状部材22の回動とともに走行するようになっている。他方、スプロケット24、39間にも同様にチェーン82が巻回されており、このチェーン82は、リンク板37等の前腕連結部材とともにスプロケット39が回動することにより走行するようになっている。
【0035】
ここで、容器99は、上部全面が開口しているものであり、その容器99の内部には、円筒状のコアwが収容されている。そして、コアwは、その軸線を上腕部2の回動軸、前腕連結部材の軸36や、後述するハンドリング連結部材9の回動軸と平行にして、これら回動軸から接離する方向に互いに離間して複数配置されるとともに、これらコアw同士の間の上に積み重ねられて複数段状に積層されることにより、容器99の内部に多数本収容されている。
【0036】
一方、上記前腕部3の先端部に垂設されたハンドリング部4は、上記板状部材31、32の先端部に設けられた細長状のハンドリング連結部材9と、このハンドリング連結部材9に接合された細長状のハンドリング部本体40とを有し、コアwの軸方向に向けて配設されている。
【0037】
このハンドリング連結部材9は、板状部材31、32の先端部の対向裏面側にそれぞれ設けられたベアリングホルダ90と、これらのベアリングホルダ90間に横架された回動軸91と、この回動軸91回りに一体的に設けられた厚板状の接合部材92とを有している。
【0038】
この接合部材92は、その上部に板幅方向に向けて回動軸91を挿通させる円形貫通穴が穿設されて、この回動軸91がボルト等によって固定されることにより、回動軸91と一体的に設けられており、これら接合部材92と回動軸91とは、ベアリングホルダ90の内周回りに回動自在に設けられている。
【0039】
さらに、回動軸91は、第3の板状部材31側のベアリングホルダ90の対向裏面外方に位置する端部に、スプロケット94が設けられている。これにより、スプロケット39、94間にも同様にチェーン83が巻回されており、このチェーン83の走行によりスプロケット94を介してハンドリング部4の板状部材31、32に対する角度が調整されて、板状部材31、32が回動してもハンドリング部4が下方に向けて配置されるようになっている。
【0040】
他方、接合部材92の下部には、板厚方向に向けて円形貫通穴が穿設されている。そして、この円形貫通穴には、その穴よりも一回り小さい径を有する円柱状の軸93aが挿通されているとともに、この軸93aは、穴の隙間にスラストブッシュ93cが嵌め込まれることによって、接合部材92と一体的に設けられている。
また、この軸93aの長手方向の両端部周りには、それぞれ軸93aの挿通穴が形成された回動板93bが回動自在に設けられており、これによって、この回動板93bは、回動軸91や軸93aを回動中心として回動自在に設けられている。
【0041】
上記ハンドリング部本体40は、各回動板93bの下部にそれぞれ接合部材43を介して接合された細長状の取付部材45を有している。これら2本の取付部材45は、互いに間隔を開けて回動軸91と平行に配設されるとともに、これら2本の取付部材の下面には、一枚の本体連結板42が接合されている。
【0042】
そして、本体連結板42の取付部材45間である幅方向の中央部には、長手方向に向けて等間隔に配置された複数の吸着手段が垂設されており、この吸着手段は、本体連結板42に接合された円板状の支持板46と、この支持板46に支持された円筒状の吸着パット41とによって構成されている。この支持板46は、中央部に吸引孔が形成されており、吸着パット41としては、独立気泡構造を有するスポンジが用いられている。
【0043】
また、これらの吸着手段には、高速流体によって負圧を生じさせる吸引装置(図示を略す)が接続されており、この吸引装置は、この負圧によって吸着パット41内の圧力を減少させることにより、吸着パット41によってコアwを吸着保持するようになっている。
この吸引装置は、長手方向の中央部の2つの吸引手段のみを作動させる第1のモード、4つの吸引手段を作動させる第2のモード、6つ全ての吸引手段を作動させる第3のモードとが調節可能であり、コアwの長さに応じて調節するようになっている。
【0044】
また、上記本体連結板42の幅方向の中央部には、長手方向の中央部から両端部側に離間した二箇所に、接合部材92との間にハンドリング部本体40の角度を調整するコイルスプリング44が設けられている。これらのコイルスプリング44は、本体連結板42に固定された棒状の軸部材47の上部周りに設けられており、この軸部材47には、コイルスプリング44の下部に当接するスプリング受け44bが固定されている。これにより、これらのコイルスプリング44は、ハンドリング部本体40が軸93a回りに回動することによって一方のコイルスプリング44が収縮して反発力が作用することにより、ハンドリング部本体40を元の角度に戻すようになっている。
【0045】
さらに、本体連結板42には、吸着パット41の周囲にコア検出用センサ(図示を略す)が設けられている。このコア検出用センサは、吸着パット41が吸着する容器内の所定位置のコアwの有無を検出するとともに、移載中に吸着パット41が吸着しているコアwの有無を検出するようになっている。
【0046】
加えて、本実施形態のワインダー用コアの移載装置は、上述の上腕駆動用サーボモータ5や前腕駆動用サーボモータ6を作動させる制御装置(図示を略す)が設けられており、この制御装置は、上腕駆動用サーボモータ5を制御して、第1の板状部材21および第2の板状部材22の基体1に対する角度を、コアwを吸着する第1角度からコアwを導入部19aに載置する第2角度に移行させる際に大きく、かつ第2角度から第1角度に移行させる際に小さくするようになっている。
また、この制御装置は、前腕駆動用サーボモータ6を制御して、第3の板状部材31の第1の板状部材21に対する角度や第4の板状部材32の第2の板状部材22に対する角度を、第1角度から第2角度に移行させる際に小さく、かつ第2角度から第1角度に移行させる際に大きくするようになっている。
これにより、ワインダー用コアの移載装置は、吸着パット41によってコアwを1本ずつ吸着して、導入部19aに載置可能である。
【0047】
さらに、制御装置は、容器99内において基体1から離間して配置された遠方のコアwから一本手前側のコアwの移載に移る度に、第1の板状部材21および第2の板状部材22の基体1に対する第1角度を大きく、かつ第3の板状部材31の第1の板状部材21に対する第1角度や第4の板状部材32の第2の板状部材22に対する第1角度を小さくする平面距離制御部を有している。
加えて、制御装置は、容器99内の一段下のコアwの移載に移る度に、第1の板状部材21および第2の板状部材22の基体1に対する第1角度を小さく、かつ第3の板状部材31の第1の板状部材21に対する第1角度や第4の板状部材32の第2の板状部材22に対する第1角度を大きくする深度制御部を有している。
【0048】
次ぎに、上述のワインダー用コアの移載装置の作用について、図9〜図14を用いて説明する。
制御装置を起動して、図9に示すように上腕駆動用サーボモータ5によって第1の板状部材21および第2の板状部材22の基体1に対する角度を、前腕駆動用サーボモータ6によって第3の板状部材31の第1の板状部材21に対する角度や第4の板状部材32の第2の板状部材22に対する角度を、それぞれコアwを吸着する際の第1角度に調整して、吸着パット41によって容器99内の基体1から最も遠方に載置されたコアwを吸着する。
【0049】
その際、上腕駆動用サーボモータ5は、第1の板状部材21を回動させるとともに、この第1の板状部材21に接合された同期回動部材25を介して第2の板状部材22を回動させる。また、前腕駆動用サーボモータ6は、駆動力伝達手段62およびこれと一体に設けられたリンク板63を回動させることにより、連結棒70を介してリンク板37とともに軸36を回動させて、この軸36と一体に設けられた第3の板状部材31および第4の板状部材32を回動させる。すると、チェーン83も走行して、ハンドリング部4の板状部材31、32に対する角度が大きくなることにより、吸着パット41が下方に向いており、この吸着パット41は、独立気泡構造を有するスポンジからなるため、表面に凹凸のあるコアwであっても安定的に吸着保持する。
【0050】
次いで、図10に示すように、上腕駆動用サーボモータ5によって第1の板状部材21および第2の板状部材22の基体1に対する角度を、数度大きくすることにより、ハンドリング部4を上方に移動させる。
その後、図11に示すように、上腕駆動用サーボモータ5によって第1の板状部材21および第2の板状部材22の基体1に対する角度を、前腕駆動用サーボモータ6によって第3の板状部材31の第1の板状部材21に対する角度や第4の板状部材32の第2の板状部材22に対する角度を、それぞれコアwを導入部19aに載置する第2角度に移行させる。
【0051】
すると、吸着パット41は、導入部19a上に位置して、コアwを導入部19aに載置する。この導入部19aに載置されたコアwは、ワインダー装置(図示を略す)に搬送される。
【0052】
次いで、同様に、制御装置によって、上腕駆動用サーボモータ5と前腕駆動用サーボモータ6とを作動させて、第1の板状部材21および第2の板状部材22の基体1に対する角度、第3の板状部材31の第1の板状部材21に対する角度や第4の板状部材32の第2の板状部材22に対する角度をそれぞれ第1角度に移行させることにより、吸着パット41によって、一本手前側のコアwを吸着する。
その際、平面距離制御部によって、先程よりも第1の板状部材21および第2の板状部材22の基体1に対する第1角度が数度大きく設定されるとともに、第3の板状部材31の第1の板状部材21に対する第1角度や第4の板状部材32の第2の板状部材22に対する第1角度が数度小さく設定される。
【0053】
その後、上腕駆動用サーボモータ5や前腕駆動用サーボモータ6によって、第1の板状部材21および第2の板状部材22の基体1に対する角度、第3の板状部材31の第1の板状部材21に対する角度や第4の板状部材32の第2の板状部材22に対する角度をそれぞれ第2角度に移行させて、コアwを導入部19aに載置する。
同様に繰り返して、最上段の全てのコアwを導入部19aに載置する。
【0054】
次ぎに、制御装置によって、上腕駆動用サーボモータ5と前腕駆動用サーボモータ6とを作動させて、第1の板状部材21および第2の板状部材22の基体1に対する角度、第3の板状部材31の第1の板状部材21に対する角度や第4の板状部材32の第2の板状部材22に対する角度をそれぞれ第1角度に移行させることにより、吸着パット41によって、2段目の最も遠方のコアwを吸着して、同様に導入部19aに載置する。
その際、深度制御部によって、最上段の最も遠方に位置するコアwを吸着した際よりも、第1の板状部材21および第2の板状部材22の基体1に対する第1角度が数度小さく設定されるとともに、第3の板状部材31の第1の板状部材21に対する第1角度や第4の板状部材32の第2の板状部材22に対する第1角度が数度大きく設定される。
【0055】
次いで、最上段のコアwと同様に繰り返し、平面距離制御部によって、第1の板状部材21および第2の板状部材22の基体1に対する第1角度、第3の板状部材31の第1の板状部材21に対する第1角度や第4の板状部材32の第2の板状部材22に対する第1角度を設定して、上腕駆動用サーボモータ5と前腕駆動用サーボモータ6とを作動させて、2段目の全てのコアwを移載する。
【0056】
そして、2段目のコアwの移載が終了すると、同様に一段下の3段目のコアwの移載に移行する。
その際、深度制御部によって、2段目の最も遠方に位置するコアwを吸着した際よりも、第1の板状部材21および第2の板状部材22の基体1に対する第1角度が数度小さく設定されるとともに、第3の板状部材31の第1の板状部材21に対する第1角度や第4の板状部材32の第2の板状部材22に対する第1角度が数度大きく設定される。
【0057】
上述のように、最上段の遠方のコアwから手前側のコアwを経て、一段下の遠方のコアwから手前側のコアwを移載することを繰り返して、図12〜14に示すように最下段の遠方のコアwから手前側のコアwを導入部19aに載置する。
【0058】
上述の実施形態のワインダー用コアの移載装置によれば、上腕駆動用サーボモータ5のみならず前腕駆動用サーボモータ6を、基体1の板状部材12間に配置された第2の板状部材22の基端部の対向裏面外方に設けて、この前腕駆動用サーボモータ6を含むユニットを支持部材68によって板状部材12の上部に固定したため、前腕駆動用サーボモータ6の荷重が上腕部を構成する板状部材21、22、前腕部を構成する板状部材31、32や前腕連結部材に作用することを阻止することができる。このため、このような荷重の作用による板状部材21、22、31、32のコアwの搬送姿勢が不安定になることを防止でき、かつこの荷重の作用による駆動力の低下を防止できる。
【0059】
さらには、上腕部を構成する第1の板状部材21と第2の板状部材22とを、板面を上下方向に向けて対向配置させるとともに、前腕部を構成する第3の板状部材31と第4の板状部材32とを、板面を上下方向に向けて対向配置させて、前腕連結部材によって板状部材21、22の先端部に回動可能に連結したためたため、上腕駆動用サーボモータ5や前腕駆動用サーボモータ6を作動させることによって、これらの板状部材21、22、31、32を板面方向に回動させることができる。
従って、この第3の板状部材31および第4の板状部材32の先端部に設けられたハンドリング部4によって、コアwを基体から接離するX軸方向および高さ方向のZ軸方向の2軸方向に移載することができる。
【0060】
さらに、ハンドリング部本体40は、ハンドリング連結部材9における回動軸91、接合部材92、軸93aや回動板93bによって、幅方向および長手方向に回動自在に設けられているため、コアwの吸着・取り外し作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施形態のワインダー用コアの移載装置の全体正面図である。
【図2】本実施形態のワインダー用コアの移載装置の全体平面図である。
【図3】ハンドリング部4の正面図であって、一部断面説明図である。
【図4】ハンドリング部本体40の底面図である。
【図5】上腕部2および前腕部3の動作説明図である。
【図6】前腕連結部材の説明図である。
【図7】基体1と上腕部との接続部を説明するための説明図である。
【図8】図3のVIII−VIII線矢示図である。
【図9】ワインダー用コアの移載装置を用いて、容器99内の最上段のコアwを吸着する際の正面模式図である。
【図10】ワインダー用コアの移載装置を用いて、容器99内の最上段のコアwを吸着後、移動させる際の正面模式図である。
【図11】ワインダー用コアの移載装置を用いて、容器99内の最上段のコアwを移動後、導入部19aに載置する際の正面模式図である。
【図12】ワインダー用コアの移載装置を用いて、容器99内の最下段のコアwを吸着する際の正面模式図である。
【図13】ワインダー用コアの移載装置を用いて、容器99内の最下段のコアwを吸着後、移動させる際の正面模式図である。
【図14】ワインダー用コアの移載装置を用いて、容器99内の最下段のコアwを、移動後、導入部19aに載置する際の正面模式図である。
【符号の説明】
【0062】
1 基体
2 上腕部
3 前腕部
4 ハンドリング部
5 上腕駆動用サーボモータ
6 前腕駆動用サーボモータ
9 ハンドリング連結部材
12 板状部材(基体1の上部)
19a導入部
21 第1の板状部材
22 第2の板状部材
31 第3の板状部材
32 第4の板状部材
35 リング部材(前腕連結部材)
36 回動軸(前腕連結部材)
37 リンク板(前腕連結部材)
40 ハンドリング部本体
41 吸着パット
44 コイルスプリング(弾性部材)
91 回動軸
99 容器
w コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状体を巻取るための円筒状のコアをワインダー装置に移載するワインダー用コアの移載装置であって、
上記コアが収容された容器に臨む位置に設けられ、上記容器の上記コアを取り出す開口部の位置よりも高さを有する基体と、この基体の上部に基端部が回動可能に連結された細長状の上腕部と、この上腕部の先端部に基端部が回動可能に連結された細長状の前腕部と、この前腕部に垂設されて、上記コアを保持可能なハンドリング部とを有し、かつ上記上腕部を駆動させる上腕駆動手段と、上記前腕部を駆動させる前腕駆動手段とがそれぞれ上記基体の上部に設けられていることを特徴とするワインダー用コアの移載装置。
【請求項2】
上記上腕部は、第1の板状部材と第2の板状部材とが、それぞれ板面を上下方向に向けて対向配置されるとともに、これら第1の板状部材および第2の板状部材は、上記上腕駆動手段の出力部が接続されることにより、上記基端部を軸として上記板面方向に回動可能に設けられており、
上記前腕部は、第3の板状部材と第4の板状部材とが、それぞれ板面を上下方向に向けて対向配置されるとともに、これら第3の板状部材および第4の板状部材は、それぞれ基端部が前腕連結部材によって上記第1の板状部材および第2の板状部材の先端部に回動可能に連結されて、上記前腕連結部材を軸として上記板面方向に回動可能に設けられており、かつ
上記前腕連結部材は、上記第3の板状部材および上記第4の板状部材に一体に設けられるとともに、上記前腕駆動部の出力部が接続されていることを特徴とする請求項1に記載のワインダー用コアの移載装置。
【請求項3】
上記ハンドリング部は、上記コアを吸着可能な吸着パットを具備した細長状のハンドリング部本体と、上記第3の板状部材および第4の板状部材の先端部に設けられ、上記ハンドリング部本体を上記第3の板状部材および第4の板状部材の先端部に連結する回動自在なハンドリング連結部材とを有しており、
上記ハンドリング部本体は、上記ハンドリング連結部材によって長手方向および幅方向に回動可能に設けられて、上記吸着パットが下方を向くようになっており、かつ
上記吸着パットは、上記コアの表面の凹凸を吸収可能な弾性を有する素材からなり、上記ハンドリング部本体の長手方向に向けて複数設けられていることを特徴とする請求項2に記載のワインダー用コアの移載装置。
【請求項4】
上記容器内には、上記コアがその軸線を上記前腕連結部材および上記ハンドリング連結部材の回動軸と平行に向けて、上記回動軸から接離する方向に複数本配置されるとともに、これらコア同士の間の上にも積み重ねられて複数段状に積層されて、上記コアが多数本収容されており、
上記上腕部の上記基体に対する角度を、上記コアを吸着する第1角度から上記コアを上記ワインダー装置への導入部に載置する第2角度に移行させる際に大きくすべく制御するとともに、上記前腕部の上記上腕部に対する角度を、上記第1角度から第2角度に移行させる際に小さくすべく制御する制御装置が備えられており、
上記制御装置は、上記基体から離間して配置された遠方の上記コアの移載から一本手前側の上記コアの移載に移る度に、上記上腕部の基体に対する上記第1角度を大きく、かつ上記前腕部の上腕部に対する上記第1角度を小さくすべく制御する平面距離制御部と、
一段下の上記コアの移載に移る度に、上記上腕部の基体に対する第1角度を小さく、かつ上記前腕部の上腕部に対する第1角度を大きくすべく制御する深度制御部とを有することを特徴とする請求項3に記載のワインダー用コアの移載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−143664(P2009−143664A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321741(P2007−321741)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【Fターム(参考)】