説明

ワクチン中の特定成分の含量を求める方法

【課題】ワクチン中の特定成分の含量を求める方法を提供する。
【解決手段】抗体を含むゲルに抗原を添加し、ゲル内での抗原抗体反応によって生じた沈降輪を画像取り込み手段によってコンピューターに画像として取り込み、取り込まれた画像をコンピューターによりディスプレーに表示し、画像として表示された沈降輪の端点を目視による助けを借りて決定し、その径の長さを自動で測定する方法。更に、X−Yテーブルを使用し、X−Yテーブルを自動的に移動させて順次全ての沈降輪をカメラにより画像として取り込み、順次ディスプレーに表示し、全ての沈降輪の端点を目視による助けを借りて決定し、その径の長さを自動で測定する方法。本発明の方法は、従来法に比べて要する労力を低減し、測定にかかる作業時間を短縮することができ、疲労から読み間違いを起こすことが少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワクチン中の特定成分の含量を求める方法に関するものである。詳細には、本発明は、一元放射免疫拡散法(Single Radial Immunodiffusion(SRD又はSRID))により得られた沈降輪の径を画像解析装置を用いて測定することにより、ワクチン中の特定成分の含量を求める方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SRD又はSRID技術は、アガロースゲル等の支持体中に一定濃度の抗体を入れておき、ウエルを開け、そのウエルに抗原溶液を注入し、拡散させて抗原抗体反応により沈降輪又は沈降線を形成させ、その沈降輪の直径を求め、抗原濃度を算出するものである。
【0003】
SRD又はSRID技術を応用する例として、インフルエンザワクチン中のヘマグルチニン(HA)含量を求める方法を挙げることができる。
【0004】
インフルエンザワクチン中の主要成分であるHA含量は、HAに対する抗血清を含んだアガロースゲルにワクチンを添加し、ゲル内での抗原抗体反応によって生じた沈降輪の大きさからHA含量を算出することが、世界保健機関(WHO)により推奨されている。
【0005】
HA含量の測定方法は、現在下記のようにして行われている(例えば非特許文献1を参照):ガラス板にアガロースフィルムを下塗りし、乾燥させる。内部を円形にくり抜いた型をそのガラス板にシールし、次いで適当な濃度のインフルエンザHA抗血清を含有するアガロースを型の中に注入する。ゲルを硬化させ、テンプレートを使用してアガロースの中にウエルを開け、型を取り去る。
【0006】
次いで、濃度既知の標準抗原及び濃度未知のテスト抗原を適当に希釈してアガロース中のウエルの中に導入する。一定温度、一定時間、抗原を拡散させた後に、水で湿らせたろ紙をアガロース表面上に置く。更にその上に重しを置き、ゲルをプレスする。重しを取り去り、ゲルを温風中で乾燥させ、完全に乾燥した後に、ろ紙を剥離し、ガラス板を染色液で着色する。次いで、ガラス板を、明瞭に区画された着色域が目に見えるようになるまで脱色し、最終的に温風中で乾燥させる。
【0007】
抗原ウエルを囲む着色域の直径を、マイクロメータースケールルーペを使用して二方向において直角の角度で測定し、得られた直径値から平行線定量法により、HA含量が求められる。
【非特許文献1】Journal of Biological Standardization,1977,5,237−247
【0008】
現在行われているHA含量の測定方法では、沈降輪の直径は6〜9mm程度で0.1mm単位まで測定することが要求され、計測は0.1mm目盛りのスケール付きの倍率が10倍のスケールルーペを用いて目視で行われている。
【0009】
この目視による計測は、測定する検体が多数の場合、オペレーターは長時間ルーペを覗き込むことになり、そのために眼精疲労を生じ、作業効率が悪くなる。又、オペレーターの疲労に伴って測定値に誤差が生じる可能性もある。
【0010】
更に、検体自身の性状に差があり、その多くは、光学機械によって認知し得る程に沈降輪の境界が明瞭でないために、機械による直径の自動計測は、非常に困難であることから、オペレーターが目視で計測を行わざるを得ないのが実情である。そのため、オペレーターの個人差によって値の差異が生じやすい。又、検体によっては、境界がいびつであったり、検体とバックグラウンドとの着色が同じになり、熟練したオペレーターでさえ境界を定義するのが困難なものもある。
【0011】
したがって、人間の優れた目視の能力を活かしながら、かつ、従来の作業に比べ、作業が容易で労力を必要とせず、更に、誤差や測定ミスを生じにくい測定方法が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、前記事情に鑑み、抗原抗体反応によって生じた沈降輪の径を測定する際に、オペレーターの眼精疲労を低減させて作業性を向上させ、沈降輪測定の精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上述した課題を解決すべく鋭意検討したところ、沈降輪を画像データとして取り込み、画像解析の手法を利用して沈降輪の寸法を精査することによって、本発明の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
かくして本発明によれば、以下の1〜8の発明が提供される。
1.抗体(抗血清)を含むゲルに抗原を添加し、ゲル内での抗原抗体反応によって生じた沈降輪を画像取り込み手段によってコンピューター(又はパーソナルコンピューター、以下コンピューターと言う)に画像として取り込み、取り込まれた画像をコンピューターによりディスプレーに表示し、画像として表示された沈降輪の端点を目視による助けを借りて決定し、その径の長さを自動で測定する方法。
2.抗体を含むゲルに抗原を添加し、ゲル内での抗原抗体反応によって生じた沈降輪を複数有する測定サンプルをX−Yテーブル上にセットし、一つの沈降輪をカメラで撮影して画像として取り込んだ後に、X−Yテーブルを自動的に移動させて順次全ての沈降輪をカメラにより画像として取り込み、次いで取り込まれた画像の一つをカメラに接続されたコンピューターにより順次ディスプレーに表示し、全ての沈降輪の端点を目視による助けを借りて決定し、その径の長さを自動で測定する方法。
3.画像として表示された沈降輪の径を、画面上にあるX軸、Y軸それぞれ2本の平行線で挟み込み、その長さを求める上記1又は2に記載の方法。
4.画像として表示された沈降輪の径の両端をクリックして直線を描かせ、その長さを求める上記1〜3のいずれか一に記載の方法。
5.画像として表示された沈降輪の径の長さを画素数によって計測する上記1〜4のいずれか一に記載の方法。
6.基準スケールを使用して1画素当たりの長さ又は1mm当たりの画素数を求める段階を更に含む上記5に記載の方法。
7.抗体が、ヘマグルチニンに対する抗血清である上記1又は2に記載の方法。
8.抗原がワクチンである上記1又は2に記載の方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方法は、従来法に比べて要する労力を低減し、測定にかかる作業時間を短縮することができ、疲労から読み間違いを起こすことが少ない。又、疲労が小さいことから、疲労に伴って測定値に誤差が生じることが少ない。更に、ディスプレーに映し出すことで複数の人間に同じ見え方で計測することができるから、測定する者の個人差による差異も小さくすることができる。即ち、オペレーターの引継ぎが容易になる。本発明の方法により、オペレーターの眼精疲労を低減させることができ、オペレーターの労働環境を改善させることができる。なお更に、従来法で使用されるスケールを使用しないから、スケールの読み間違いによるミスを無くせる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に従って測定する測定サンプルは、抗原抗体反応によって沈降輪を形成したサンプルを1つ以上有するものである。好ましくは、抗血清とワクチンとの反応によって形成された沈降輪をサンプルとして1つ以上有するものである。
【0017】
本発明において用いる抗体は、例えばHAに対する抗血清を挙げることができる。HAは、血球凝集を起こす物質であり、例えばインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、日本脳炎ウイルスのように赤血球凝集素としての糖タンパク質を持っているものを挙げることができる。
【0018】
本発明において用いる抗原は、ワクチン、好ましくはインフルエンザワクチンである。
【0019】
以下に、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の方法を実施するための一例を示す。抗体(抗血清)を含むゲルに抗原を添加し、ゲル内での抗原抗体反応によって生じた沈降輪を複数有する測定サンプル1を、非特許文献1に記載される通りにして調製する。測定サンプル1をX−Yテーブル2上にセットする。照明3を点灯して測定サンプル1に照明をあてる。カメラ4、例えばCCDカメラの焦点を測定サンプル1の一つの沈降輪に合わせ、沈降輪全体がカメラの画像内に収まるように撮影して画像として取り込む。X−Yテーブル2を移動させて順次全ての沈降輪をカメラ4により画像として取り込む。カメラ4は、コンピューター5に接続し、カメラ4が撮影した画像は全て、コンピューター5の記憶装置に取り込まれる。
【0020】
本発明の好適な実施態様では、測定サンプル1の複数の沈降輪は、横方向及び縦方向の個数及びピッチがそれぞれ一定になるように作成する。個数及びピッチの数値情報をコンピューター5のプログラムに入力し、カメラ4が一つの沈降輪の撮影を終了したら、コンピューター5がそれを認知してコンピューター5に接続したX−Yテーブルコントローラ6に個数及びピッチの数値情報に基づいて指令を送る。X−Yテーブルコントローラ6は、X−Yテーブル2に接続し、コンピューター5からの指令に従ってX−Yテーブル2を自動的に移動させて次の沈降輪の撮影を前と同様にして実施する。
【0021】
1枚の測定サンプル1には複数の円形模様があるが、基準(1番目)となる円形模様にカメラ視野と焦点を合わせればその後の位置合わせと撮影は全自動で行うことができる。
【0022】
例えば、サンプルが図8に示されているように等ピッチで配置された4×4の16個の沈降輪から成る場合に、コンピューター5は最初の基準となる沈降輪の撮影が終了した後に、X−Yテーブル2を左方向に1ピッチ分だけ移動する命令をX−Yテーブルコントローラ6に出力する。命令を受け取ったX−Yテーブルコントローラ6はその信号をX−Yテーブル2内のモーター等の駆動装置の駆動信号に変換し、その信号をX−Yテーブル2内の駆動装置に出力し、X−Yテーブル2が1ピッチ分だけ左に移動する。以降、同様な処理を2回繰り返し、4番目の沈降輪の撮影が終了した後に、コンピューター5はX−Yテーブル2を後方向に1ピッチ分及び右方向に3ピッチ分だけ移動する命令をX−Yテーブルコントローラ6に出力する。命令を受け取ったX−Yテーブルコントローラ6は、X−Yテーブル2内の駆動装置を起動し、5番目の沈降輪がカメラの真下にくるようにX−Yテーブル2を移動させる。以降、同様な処理を繰り返し16個全部の沈降輪を撮影した後に、コンピューター5は基準沈降輪がカメラの真下にくるようにX−Yテーブル2を移動させ、撮影を完了する。
【0023】
画像取り込みが完了したら、撮影した画像をディスプレーに映し出して、目視により沈降輪の端点を決定することにより、画像(沈降輪)の外径を計測する。画像の外径を計測する前に、予め長さ及び高さ(例えば、8mm×8mm)がわかっている基準スケールの取り込みを下記の通りにして行う。
(a) サンプルの撮影条件と同じ状態にして、基準スケールを撮影する。
基準スケールは各種のものを用いてよく、使いやすいものを用いてよい。
(b) 基準スケールの長さ(横方向長さ)と高さ(縦方向長さ)を計測する。
(c) それぞれの寸法の画素数が表示されるので、その数値を基準スケール値とする。つまり、1画素あたりの長さの係数を求める。これにより、特に複雑な設定や較正を必要とせずに、ディスプレー上の1画素あたりの長さ及び高さを求めることができる。又、長さと高さの両方を測定するのは、画像処理ボードでは、縦の解像度と横の解像度が異なっていることが多いためである。
【0024】
画像の外径は、二方向において直角の角度で計測し、以下の2通りの方式で計測することができる。
4本カーソル方式:画面上にあるX軸、Y軸それぞれ2本の平行線を、サンプルの外周に接するように移動して挟み込み、計測する。平行線は、マウス及び矢印キーで位置を調整することができる。
クリック方式:計測する開始点及び終了点、又は、左右及び上下の両端をマウスの矢印キーでクリックすることで、その2点間の直線が描かれ、その長さを計測する。
【0025】
又、画面上の画像の外径は生画像(又は、カラー画像)で行われてもよいし、二値化画像(又は、モノクロ画像)で行われてもよい。二値化画像は適当な閾値(又は、基準値)を決定し、閾値より明るい画像を白等、閾値より暗い画像を黒等にすることにより作成することができる。上述したように、沈降輪の境界線は非常にあいまいであり、コンピューターによる自動的な閾値の設定は困難である場合が多いが、このような二値化画像は特に、境界線のはっきりしている基準スケール(較正用の正円シール)の測定に対して有効である。
【0026】
次に、計測された沈降輪の長さ及び高さは実際の長さ及び高さに変換される。すなわち、左右及び上下のそれぞれの両端の間の画素数を計算し、得られた画素数に、前述の基準スケールを使用して得られた1画素あたりの長さ及び高さを掛けることによって(又は、得られた画素数を単位長(例えば、1mm)あたりの画素数で割ることによって)沈降輪の実際の長さ及び高さが計算される。計測データ及び(又は)計算された実際の長さ及び高さはコンピューター5内の記憶装置に順次蓄積される。
【0027】
得られた直径値から平行線定量法によりHA含量値が求まる。
【0028】
得られた結果はコンピューター内に自動的に保存させることができ、データベース化できるので、結果の管理がし易い。
【実施例】
【0029】
以下に実際に使用した測定サンプル、装置及び具体的な操作方法を説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0030】
1.測定サンプル
抗体としてインフルエンザHA抗血清を用い、抗原としてインフルエンザワクチンを用いて、非特許文献1に記載される通りにして測定サンプル1を調製した。測定サンプル1は、図2に示す通りに、ガラス板(180×145mm)上に直径約90mmの円形のアガロースゲルがプレスされかつ完全に乾燥された状態で付着している。図3は、円形のアガロースゲルを拡大して示す図であり、中に縦4個、横4個のウエルの円とそれに同心の沈降輪がそれぞれ等ピッチで形成されている。図4は、1個の沈降輪を拡大して示す図である。沈降輪の横方向外径(d1)及び縦方向外径(d2)を計測することになる。
【0031】
2.使用した装置は、下記の通りである:
1)パソコン及び画像処理ボード
(イ)WindowsXPを起動可能なパソコンシステム(デスクトップ型パーソナルコンピュータ及び17インチ型液晶ディスプレイ)
O/Sは、WindowsXP
(ロ)画像処理ホード(FDM−PCI IV)+標準計測ソフト
・最大解像度=640×480ピクセル
・最高フレームレート=30フレーム/秒
・対応ビデオソース=NTSC信号
・対応バス=PCIバス(基板サイズ:PCIショート規格)
・消費電流=5V−1A、12V−0.15A
2)モノクロCCDカメラ及びズームレンズ
3)カメラ照明ユニット
・照明方式=白色LED透過照明
【0032】
4)自動送り装置
(イ)X−Yテーブル(KS262−50)
・外形寸法=236.5×236.5×70ミリ
(ステージ面サイズ=60×60ミリ)
・移動量=50ミリ×50ミリ
・分解能=4μm/パルス
・最高スピード=20mm/sec
・耐加重=8.8kgf
(ロ)コントローラドライバ
・外形寸法=200w×200D×88h
・供給電源=AC100〜240V±10%
・制御方式=RS−232C
(ハ)ハンディターミナル:手動でX−Yテーブルを移動する(基準となる沈降輪をカメラの焦点に合わせるため等に使用する)。
(ニ)サンプル固定台
サンプル台面積=180〜200w×145〜200h
・ワークセット方式=ワンタッチ式
・重量=約15kg
【0033】
5)カメラセット台及びベース
Z軸移動範囲=約50ミリ
6)計測ソフトウエアー
外径寸法計測装置専用ソフトウエアー
7)基準スケール
【0034】
3.アプリケーションソフトの主な操作画面は、下記の通りである:
1)メインメニュー:基本機能を表示する。
2)設定画面:基本データ及び基準スケール値等、システムで管理する重要データを設定する。プレート切り替(1又は2)、データ記録場所設定画面
3)撮影画面:サンプルの自動撮影を行う。
4)計測画面:撮影した画像の外径寸法を計測する。
5)計測データ管理画面:計測したデータのファイル管理を行う。
6)メンテナンス画面:システムに必要な情報を管理する。
【0035】
4.基本操作は、下記の通りである:
1)装置及びパソコンの電源を入れ、WindowsXPを起動した後に、外径寸法計測装置のプログラムを起動する。
2)設定画面に遷移し、基本データの設定を行う。
(イ)基本データの設定(確認)
・移動ピッチ(10.0〜15.0mm)
・プレート切り替(1→2又は2→1)
(本実施例においては、同じ検体を含んだプレートを2枚使用し、各プレートの平均値を測定値として採用した。)
・データ記録場所(プレート1及びプレート2について各16カ所)
・外形寸法の計測方式(4本カーソル方式、クリック方式)
(ロ)測定サンプルに関するデータの入力
データ管理に必要なサンプルの固有情報を入力する(図5参照)。
【0036】
3)測定サンプル1(SRDプレート)を所定の位置(照明台(バックライト)の上)にセットする。
(イ)モニタに映っている生画像を見ながら、ハンディターミナルを使用して、1番目のサンプルの位置がモニタ画面の中央になるように位置合わせする。
(ロ)カメラの焦点・絞り、撮影範囲、照明の具合を調整する。
生画像と二値化画像の両方で確認できる。
4)基準スケールの取り込み(撮影)
(イ)基準スケール治具を用意し(例えば、SRDプレート上に校正用の正円シール(直径8mm)を貼り)、画像を取り込む。
(ロ)二値化した画像からスケール値を読み取り、基準データに登録する。
すなわち、校正用の正円シールの直径が画面上で何画素あるかを確認する。得られた画素数を8mmで割ることで1mm当たりの画素数がわかる(又は、8mmを画素数で割ることにより、1画素あたりの長さ(mm)がわかる)。
基準スケールの取り込みに関する説明
(a)サンプルの撮影条件と同じ状態にして、基準スケールを撮影する。基準スケールは複数準備し、用途に応じて使いやすいものを使用する。
(b)基準スケールの長さ(横方向長さ)と高さ(縦方向長さ)を計測する。
(c)それぞれの寸法の画素数が表示され、その数値が基準スケール値として登録される。すなわち、1画素あたりの長さの係数を求める。
画像処理ボードでは、縦の解像度と横の解像度が異なっていることが多いため、縦及び横の両方に対して同じ操作を行う。すなわち、縦と横の両方の基準スケールが必要である。
(d)基準スケールの値が入力されていない場合、寸法計測の時にエラーメッセージを出力する。
(ハ)基準スケールを取り込んだ(撮影した)後に、計測値の基準となる値を設定する。
【0037】
5)サンプル画像の取り込み
画像取り込み開始を指定するとX−Yステージ2が作動を開始し、1番目のサンプルから順に撮影を行う。そして、16個全てのサンプルを撮影して終了する
全ての撮影が終了すると、X−Yステージ2は自動的に1番目のサンプル位置に戻る。
【0038】
6)外径寸法の計測
(イ)画像取り込みが完了し計測を指定すると外形寸法を測定する画面に遷移する。
(ロ)以下の2通りの方式で外径を計測することができる。
(a)4本カーソル方式
4本カーソル方式の操作は、図6に示す通りに行う。上下、左右のカーソルを、マウスでドラッグしてサンプルの外周に接するように移動し、カーソル微調整用矢印キーで位置を調整して計測する。
(b)クリック方式
クリック方式の操作は、図7に示す通りに行う。マウスの矢印キーを移動させて計測する画像の外周に当て、左クリックして確定する。
(ハ)検査装置が自動で撮影した画像を目視で確認しながら計測していく。
16個分の計測結果(X軸方向のデータとY軸方向のデータ)は、それぞれ操作画面上に一覧表示する。
(ニ)再計測したい場合は、取り込んだ画像を再度呼び出して行う。
【0039】
7)計測データの保存と確認
(イ)計測が終了したら、データを保存する。
(ロ)測定データは、帳票で保存する。
成績記録用紙のフォーマット形式で保存する。
試験年月日、試験ワクチン株、標準抗原ロット等サンプル固有の情報は、予め設定画面で入力しておく。
ファイル名は、エクセルBook形式で保存する。
(ハ)一度保存したデータを修正する場合、格納してあるファイル名を呼び出して修正する。
成績記録用紙のフォーマット形式のままで修正される。
【0040】
5.測定サンプルと計測条件
1)測定サンプル
測定サンプルは図2に示すように、縦横ともに4列から成る、合計16個の沈降輪を含むサンプルプレートを使用した。
【0041】
2)計測個所と計測順序
規則的に配列されている16個の円の外側に薄く浮き出ている円形模様の外形寸法を全て計測した。計測(撮影)順序は図8に示す。
【0042】
3)計測条件(計測分解能は0.1ミリ)
X軸の最大外径部(横寸法 d1)を計測する。
Y軸の最大外形部(縦寸法 d2)を計測する。
【0043】
4)計測データの保存
計測したデータは、所定の書式にて記録(保存)する。
計測データの記録(保存)形式は図9に示す通りである。
注)測定したデータは、予め設定した記録場所に記録する。
記録場所は、記録場所設定画面にて設定できるようになっている。
【0044】
6.画像の自動取り込み
画像の取り込み(撮影)は、予め設定した条件でX−Yテーブル2を移動しながら行う(図8参照)。
1)X−Yテーブルの移動条件設定
1個目のサンプルを基準にして、X軸のピッチ、Y軸のピッチをそれぞれ設定する。好ましい実施例では、サンプル数は、4個×4個である。
(イ)X軸の送りピッチ(10.0から15.0mm)
X軸の移動範囲は、50mmを超えないこと。
(ロ)Y軸の送りピッチ(10.0から15.0mm)
Y軸の移動範囲は、50mmを超えないこと。
【0045】
従来法と本発明に従う方法とで、同日測定を行ったところ、3株15検体中、14検体でHA含量に有意差は見られなかった。又、同一のプレートを日を変えて測定を行ったところ、3株27検体中、26検体で有意差は見られなかった。有意差があった検体では、従来法によって測定した値の方が大きい値を示した。しかし、従来法と本発明に従う方法との間で、全体としてはほぼ全ての検体において有意差は見られなかった。本発明に従う方法を用いることにより、約40%作業時間を短縮することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の方法は、一般的に抗原抗体反応により生じる沈降輪の大きさを測定するのに、従来の目視測定より、短時間で作業効率よく測定することができる。特に、本発明の方法は、SRD又はSRID法においてインフルエンザHA抗血清とインフルエンザワクチンとの反応によって生じた沈降輪の大きさを測定するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の方法を実施するための装置の一例を示す。
【図2】測定サンプル1を示す。
【図3】図2に示す円形のアガロースゲルを拡大して示す。
【図4】図3に示す1個の沈降沈降輪を拡大して示す。
【図5】サンプルの固有情報の一例を示す。
【図6】4本カーソル方式の操作の例を示す。
【図7】クリック方式の操作の例を示す。
【図8】計測(撮影)順序を示す。
【図9】計測データの記録(保存)形式を示す。
【符号の説明】
【0048】
1 測定サンプル
2 X−Yテーブル
3 照明
4 カメラ
5 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体を含むゲルに抗原を添加し、ゲル内での抗原抗体反応によって生じた沈降輪を画像取り込み手段によってコンピューターに画像として取り込み、取り込まれた画像をコンピューターによりディスプレーに表示し、画像として表示された沈降輪の端点を目視による助けを借りて決定し、その径の長さを自動で測定する方法。
【請求項2】
抗体を含むゲルに抗原を添加し、ゲル内での抗原抗体反応によって生じた沈降輪を複数有する測定サンプルをX−Yテーブル上にセットし、一つの沈降輪をカメラで撮影して画像として取り込んだ後に、X−Yテーブルを自動的に移動させて順次全ての沈降輪をカメラにより画像として取り込み、次いで取り込まれた画像の一つをカメラに接続されたコンピューターにより順次ディスプレーに表示し、全ての沈降輪の端点を目視による助けを借りて決定し、その径の長さを自動で測定する方法。
【請求項3】
画像として表示された沈降輪の径を、画面上にあるX軸、Y軸それぞれ2本の平行線で挟み込み、その長さを求める請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
画像として表示された沈降輪の径の両端をクリックして直線を描かせ、その長さを求める請求項1〜3のいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
画像として表示された沈降輪の径の長さを画素数によって計測する請求項1〜4のいずれか一に記載の方法。
【請求項6】
基準スケールを使用して1画素当たりの長さ又は1mm当たりの画素数を求める段階を更に含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
抗体が、ヘマグルチニンに対する抗血清である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
抗原がワクチンである請求項1又は2に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−90864(P2006−90864A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277183(P2004−277183)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(591125371)デンカ生研株式会社 (72)
【Fターム(参考)】