説明

ワーク保持装置

【課題】測定や加工等を行う装置に対し、ワークの受け渡しを容易に行なえるようにしたワーク保持装置を提供する。
【解決手段】円柱型のワークWの両端面を挟持し保持するワーク保持装置1であって、ワークWの両端面を挟持する一対のチャック部5,5を備える。一対のチャック部5,5の各々に対し、ワークWの端面の内側面ではなく該内側面の外側に位置する外側面のみを挟持できるようにコ字型部18を形成し、一対のチャック部5,5のコ字型部18でワークWの端面の外側面を挟持できるようにする。ワーク保持装置1からワーク測定装置19にワークWを受け渡す際、ワーク測定装置19のワーククランプ軸21,21でワークWの端面の外側面でなく内側面を挟持させ、ワーク保持装置1からワーク測定装置19へワークWを容易に受け渡すことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED等で採用されるサファイア等のワークを保持するワーク保持装置に関し、特に、測定や加工を行う装置とのワークの受け渡しに適したワーク保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年急速に普及しているLED発光素子用サファイア基板の製造においては、サファイア基板を得るために、サファイアを所要形状に切り出す加工を行ったり、サファイアの結晶方位を測定することが不可欠となっており、硬脆性材料であって、素材として高価でもあるサファイアを落下させてしまい破損させることがないよう、測定装置や加工装置に対してサファイア等のワークを確実に搬入(受け渡し)できるようにする技術が望まれている。
【0003】
ところで、測定装置で円柱型のサファイアの結晶方位を測定する際には、測定装置に設けられたチャッキング機構へ手作業によりサファイアを搬入し、当該チャッキング機構でサファイアの両端面を挟持し、その状態でサファイアを回転させるなどして測定が行われることになるのだが、従来、測定装置へサファイアを搬入する際には、測定対象であるサファイアの直径サイズが、2インチ〜3インチ程度と比較的小さいということもあり、サファイアの搬入作業や測定する際の位置決めの調整を手作業により不自由なく行うことができたという実情があった。そして、こうした技術に関連するものとして、例えば特許文献1には、円柱型のワークの両端面を挟持することで当該ワークを保持する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−103218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のように、保持対象であるサファイア等のワークの直径サイズが2インチ〜3インチ程度と比較的小さい場合においては、保持対象であるワークが比較的軽量であるということもあり、ワークを保持するためのチャッキング機構に対し手作業にて容易にワークを搬入することが可能であったのだが、LED等に採用されるワークたるサファイアは、近年、その直径が6インチ〜8インチ程度やそれ以上のサイズなど、比較的大型なものが採用されることが多くなってきており、大型化に伴い重量の嵩むワークを、作業者による人為的な作業で測定装置や加工装置へ搬入することが困難になっているという実情があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、測定や加工等を行う装置に対し、ワークの受け渡しを容易に行なえるようにしたワーク保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係るワーク保持装置の発明は、
円柱型のワークの両端面を挟持し保持するワーク保持装置であって、
前記ワークの両端面を挟持する一対のチャック部を備え、
該チャック部に前記ワークの端面の中心側に位置する内側面ではなく該内側面の外側に位置する外側面のみを挟持できるようにコ字型部を形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係るワーク保持装置の発明は、請求項1において、
前記一対のチャック部のうち、何れか一方のチャック部は、他方のチャック部に向かってスライド可能に設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係るワーク保持装置の発明は、請求項1又は2において、
前記ワークは、LED発光素子用サファイア基板の製造段階において、結晶方位の測定や加工がなされるサファイアであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、円柱型のサファイア等のワークの円周面ではなく、ワーク両端にある平坦状の両端面を、チャック部により挟持することができるから、比較的重量の嵩むワークであっても脱落しないよう確実に保持することができる。よって、例えばワークの両端面ではなく円周面を2点でチャックして保持する場合には、円形であるため保持が不安定となり安定性に欠けることになるが、円柱型のワークの互いに平行関係を有するワークの端面を挟持することで、ワークを安定的に保持することができる。さらに、ワークの端面の中心側に位置する内側面ではなく、外側に位置する外側面をコ字型部により挟持することができることから、サファイア等のワークの加工や測定を行うため、ワーク保持装置から測定や加工を行う装置に対しワークを受け渡す際、こうした装置に備えたワーククランプ軸により、ワークの端面の中心側に位置する内側面を挟持させることでワークの受け渡しを行なうことが可能となる。よって、ワークの受け渡しを人為的な作業ではなく、機械的(自動的)に行なうことができる。
【0011】
また、ワークの測定や加工を行う際には、ワークの両端面の中心部を挟持した状態で、当該ワークを回転させながら加工や測定を行うことが多いことが一般的となっているが、本発明のワーク保持装置のチャック部は、ワークの端面の中心側に位置する内側面を挟持しないように構成されていることから、ワークの受け渡し先となるワーク測定装置やワークの加工を行う装置では、ワークの端面の中心側を直ぐに挟持することができ、当該中心側を挟持し測定や加工作業を速やかに開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態におけるワーク保持装置からワーク測定装置へワークを受け渡ししている状態を示す平面図であり、より具体的には、ワーク測定装置のワーククランプ軸でワークを挟持した状態でワーク保持装置のチャック部を後退させている状態を示している。
【図2】同上、ワーク保持装置からワーク測定装置へ受け渡されたワーククランプ軸で挟持されたワークを回転させながら接触式変位センサで測定を行っている状態を示す側面図である。
【図3】ワーク保持装置の一対のチャック部によりワークの両端面を挟持した状態を示す側面図である。
【図4】ワーク保持装置の一対のチャック部とワーク測定装置の一対のワーククランプ軸との両者によりワークの両端面を挟持した状態を示す側面図である。
【図5】ワークの位置のズレを測定し、この測定結果に基づきワークの位置ズレの補正を行なうに際し、ワーク保持装置からワーク測定装置へワークを搬入(受け渡し)し、ワーク測定装置からワーク保持装置へワークを搬出(受け渡し)する際の動作を示す説明図である。
【図6】ワークの位置のズレを測定し、この測定結果に基づきワークの位置ズレの補正を行なうに際し、ワーク保持装置からワーク測定装置へワークを搬入(受け渡し)し、ワーク測定装置からワーク保持装置へワークを搬出(受け渡し)する際の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態を以下に説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反しない範囲で、実施形態において説明した以外の構成のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【0014】
本実施形態のワーク保持装置1は、サファイア、シリコン、SIC、ガラス、希土類磁石、窯業系材料などの硬脆性材料等のワークWを落下せぬよう保持するものであり、本実施形態の一例では、LED発光素子用サファイア基板として採用されるサファイアを保持するものであり、当該サファイアであるワークWは円柱型をなし、長手方向の長さが350mm(350mm以下でも可)、直径は4インチ〜8インチ程度で、従来品に対し比較的大型なサイズとなっている。
【0015】
図1に示すように、ワーク保持装置1には、机上や床等に載置される機台2を備えており、機台2上に装着されたレール3上には、このレールの長手方向(図1に示す左右方向)に進退可能に搬送装置4が設けられている。
【0016】
搬送装置4には、相互に対向した一対のチャック部5,5が設けられている。この一対のチャック部5,5は水平方向に相対向してガイドバー6に装着され、チャック部5,5の各々は相対向する他方のチャック部5に向かってスライド可能に設けられている。そして、ワークWの両端を一対のチャック部5,5で保持する際には、チャック部5,5間にワークWを配置した状態でチャック部5,5をワークWに向かって前進させてワークWの挟持を行なう。なお、チャック部5,5は電動モータ10を駆動源としてプーリ11及び駆動伝達ベルト12等からなる駆動伝達機構を介して駆動されるようになっており、また、搬送装置4を進退させるときの駆動は図示しないモータを駆動源として行なわれる。
【0017】
チャック部5,5の各々の先端側は、図2〜図4に示すように、上板部15、下板部16、及び上板部15と下板部16との間に設けられた円弧部17を有し、平行に設けられた上板部15と下板部16とは円弧部17により一体に連結されコ字型に形成され、このコ字型部18の内側には、後述するワーク測定装置20に構成される円柱型のワーククランプ軸21,21の先端が挿通されるようになっており、チャック部5,5先端の開口部22の径Xよりもワーククランプ軸21,21の直径を小さくして、開口部22を通じてコ字型部18内へワーククランプ軸21,21を配置することができる。
【0018】
ワーク測定装置19に構成される2つ(一対)のワーククランプ軸21,21は、図1に示すように、その軸心が同一軸心上になるようにして回転可能に設けられており、ワーククランプ軸21,21は、図示はしないがモータを駆動源として、チャック部5,5の進退方向と同様に、進退駆動されるようになっている。そして、一対のワーククランプ軸21,21の間に配設された円柱型のワークWの両端面をワーククランプ軸21,21の先端面で挟持でき、この挟持されるワークWは、ワーククランプ軸21,21で保持された状態で当該ワーククランプ軸21,21が図示しないモータを駆動源として回転駆動されることで回転される。
【0019】
また、ワーク測定装置19には、ワーククランプ軸21,21で保持されたワークWの円周面に一端が当接される接触式変位センサ25を備えており、ワーククランプ軸21,21を回転させ、当該ワーククランプ軸21,21で保持されたワークWを360度等回転させることにより、前記接触式変位センサ25によりワーククランプ軸21,21の軸心(中心)に対するワークWの軸心(中心)のズレを測定することができる。
【0020】
ここで、ワーク保持装置1からワーク測定装置19へワークWを搬入(受け渡し)し、ワーク測定装置19でワークWの位置のズレを測定した後、ワーク測定装置19からワーク保持装置1へワークWを搬出(受け渡し)し、ワーク測定装置19で測定した測定結果に基づいて、ワーク保持装置1でワークWの位置ズレを補正する際の動作について、図5及び図6における(a)〜(i)により説明する。先ず、ワーク保持装置1のチャック部5,5により、ワークWの両端面の外側部を挟持して保持させた後(図5の(a)及び図3の状態)、ワーク保持装置1の搬送装置4を前進させて、進行方向に設置したワーク測定装置19の近傍まで、チャック部5,5で保持されたワークWを移送する(図5の(b))。
【0021】
次に、ワーク測定装置19のワーククランプ軸21,21によりワークWの両端面の内側部を挟持して保持する(図5の(c))。なお、この状態では、ワークWはワーク保持装置1のチャック部5,5とワーク測定装置19のワーククランプ軸21,21の両者により挟持され保持されている(図5の(c)及び図4の状態)。
【0022】
次に、ワーク保持装置1のチャック部5,5を開き後退させ、当該ワーク保持装置1のチャック部5,5によるワークWの保持を解除することで、ワーク保持装置1からワーク測定装置19へのワークの搬送(受け渡し)を行なう(図5の(d))。
【0023】
続いて、ワーク測定装置19に構成される接触式変位センサ25の先端にある変位センサヘッド25aをワークWの外周面(円周面)に接触させ(図5の(e))、その状態でワーククランプ軸21,21を360度回転させ、ワーククランプ軸21,21の軸心に対するワークWの軸心のズレを接触式変位センサ25で測定させる。
【0024】
次に、接触式変位センサ25を後退させ、ワークWから変位センサヘッド25aを非接触にして(図6の(f))、上記ズレのうち、最もズレが大きかった箇所がワーク保持装置1側になるよう、ワークWを回転させる(図6の(g))。
【0025】
次に、ワーククランプ軸21,21で挟持されているワークWをチャック部5,5でも挟持させ(図6の(h))、次に、ワーククランプ軸21,21を後退させワーククランプ軸21,21によるワークWの挟持を解除する(図6の(i))。そして、ワーク測定装置19で測定した結果(ワーククランプ軸21,21の軸心に対するワークWの軸心のズレ)に基づき、ワークWの軸心の位置がワーククランプ軸21,21の軸心の位置に近づくよう、搬送装置4を水平方向に移動させズレの補正を行い、それにより、ワークWを所定の位置に配置することが可能になることから、ひいては、加工手段(切削、研磨、研削等を行う加工装置)により、ワークWの加工を効率的に行なうことが可能となる。
【0026】
以上のように本実施形態のワーク保持装置1によれば、一対のチャック部5,5の各々に対し、ワークWの端面の中心側に位置する内側面ではなく該内側面の外側に位置する外側面のみを挟持できるようにコ字型部18を形成し、該一対のチャック部5,5のうち、一方のチャック部5は、少なくとも他方のチャック部5に向かってスライド可能に設けたものである。これにより、円柱型のサファイア等のワークWの円周面ではなく、ワークW両端にある平坦状の両端面を、チャック部5,5により挟持することができるから、比較的重量の嵩むワークWであっても脱落しないよう確実に保持することができる。よって、例えばワークの両端面ではなく円柱型のワークWの円周面を2点でチャックして保持したりする場合には、円形であるために保持が不安定となり安定性に欠けることになるが、円柱型のワークの互いに平行関係を有するワークWの端面を、ワーク保持装置1のコ字型のチャック部5,5で挟持することで、ワークWを安定的に保持することができる。さらに、ワークWの端面の中心側に位置する内側面ではなく、外側に位置する外側面をコ字型部18により挟持することができることから、サファイア等のワークWの加工や測定を行うため、ワーク保持装置1からワークWの測定を行う測定や加工を行う装置等に対しワークWを受け渡す際、こうした装置に備えられたワーククランプ軸19,19により、ワークWの端面の中心側に位置する内側面を挟持させることでワークWの受け渡しを行なうことが可能となる。よって、ワークの受け渡しを人為的な作業ではなく、機械的(自動的)に行なうことが可能となる。
【0027】
さらに、ワークWの測定や加工を行う際には、ワークの両端面の外側面ではなくそれよりも内側の中心部を挟持した状態で、当該ワークWを回転させながら測定や加工を行うことが多いことが一般的となっているが、本実施形態のワーク保持装置1のチャック部5,5は、ワークWの端面の中心側に位置する内側面を挟持しないように構成されていることから、ワークWの受け渡し先となるワーク測定装置19やワークWの加工を行う加工装置では、ワークWの端面の中心側を直ぐに挟持することができ、当該中心側を挟持し測定や加工作業を速やかに開始することができる。
【0028】
以上、本発明の一例を実施例として説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく種々の変形実施が可能である。例えば、本実施形態では、一対のチャック部5,5は、これらの間に配設されたワークWに対し両者がスライド可能に設けられているが、ワークWを挟持できるのであれば、何れか一方のチャック部5のみスライド可能に設けてもよい。そして、その場合には、スライド機構の構造を簡略化することができコストを安価に抑えることも可能となる。また、ワークWを加工する加工装置については図示していないが、ワーク保持装置1又はワーク測定装置19に構成してもよく、また、これらの装置とは別に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 ワーク保持装置
2 機台
3 レール
4 搬送装置
5 チャック部
6 ガイドバー
10 電動モータ
11 プーリ
12 駆動伝達ベルト
15 上板部
16 下板部
17 円弧部
18 コ字型部
19 ワーク測定装置
21 ワーククランプ軸
22 開口部
25 接触式変位センサ
25a 変位センサヘッド
W ワーク(サファイア)
X 径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱型のワークの両端面を挟持し保持するワーク保持装置であって、
前記ワークの両端面を挟持する一対のチャック部を備え、
該チャック部に前記ワークの端面の中心側に位置する内側面ではなく該内側面の外側に位置する外側面のみを挟持できるようにコ字型部を形成したことを特徴とするワーク保持装置。
【請求項2】
前記一対のチャック部のうち、何れか一方のチャック部は、他方のチャック部に向かってスライド可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載のワーク保持装置。
【請求項3】
前記ワークは、LED発光素子用サファイア基板の製造段階において、結晶方位の測定や加工がなされるサファイアであることを特徴とする請求項1又は2に記載のワーク保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−47129(P2013−47129A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185651(P2011−185651)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(501376590)株式会社ジェイシーエム (20)
【Fターム(参考)】