説明

一時保管棚装置

【課題】天井付近に敷設された軌道を走行して収納容器を搬送するOHTにおいて用いられる収納容器を一時的に保管する一時保管棚装置であって、収納容器の識別情報の目視確認や、保管棚からの収納容器の摘出を容易に実行できる一時保管棚装置を提供する。
【解決手段】天井付近に敷設された軌道に沿って走行する懸垂式昇降搬送装置により搬送される被搬送物を一時的に保管し、軌道に沿った位置に設置される一時保管棚装置であって、被搬送物を載置する棚手段と、被搬送物を載置した状態で棚手段を昇降させる昇降手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、所定間隔を有して一定枚数のウエハを多段に収納したFOUP(Front Opening Unified Pod)等の収納容器である被搬送物を、天井部に敷設した走行レールに沿って走行する懸垂式昇降搬送装置(以下、OHT(Over head Hoist Transport)とする)を用いて、各種処理を行うステーション間で収納容器を移送する技術に関し、特に、前記収納容器を各処理ステーションに効率よく搬送させるための一時保管棚装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばウエハ等の基板の各種処理(薄膜形成、フォトリソグラフィー、洗浄、エッチング、検査等)を、一連の処理ステーションで実行するため、一連の処理ステーション間を接続する工程内環状軌道をクリーンルーム内に設置し、工程内環状軌道に沿って処理ステーション間を移動するOHTを用い、基板を収納した収納容器を処理ステーション間で搬送することにより、基板に対する処理ステーションでの各種処理を実行している。
【0003】
基板を収容する収納容器にはタグが付けられており、タグにはウエハ等の基板の処理工程に関する情報が記録されており、このタグの内容は基板処理工程の進行に従い逐次更新される。
基板処理工程を管理する管理コンピュータは、収納容器に付されたタグの情報に基づき、収納容器を管理し、OHTを用いて収納容器を複数の処理ステーションの間で移送し、収納容器についての各処理を各処理ステーションにて実行する。
また、収納容器は、収納容器が収容している基板を気密状態に保っている。処理ステーションにおいては、処理ステーションにある処理装置のポートに収納容器がOHTにより搬送され、処理ステーションのロボットが、収納容器の扉を開閉し、収納容器内の基板を一枚ずつ挿脱し、挿脱した基板に対して処理ステーションでの処理を実行する。
【0004】
ところで、各処理ステーションにおける基板の処理において、半導体基板はFOUPに収納され搬送装置により処理装置間を移送され、処理装置に固有の処理を受ける。しかし、このとき受ける処理装置の処理時間は装置毎に異なるため通常、半導体基板は次工程の処理を受けるまでに待ち時間が発生する。従来この待ち時間調整のため半導体基板は、FOUPに収納された状態で一旦ストッカに格納保管され、次工程の処理を受けられる状況になったとき再度、搬送装置によりストッカから搬出され、次工程の処理を受ける装置まで搬送されていた。
【0005】
しかし、このようなストッカに格納保管する方式では、ストッカへの入出庫に多大の時間が掛かり、生産工程が遅れ、生産性向上を図る上での障害となっていた。
かかる課題の解消策として、近年ストッカ程の収納能力は無いが、次工程までの待ち時間が短い短時間保管用装置として、搬送軌道に隣接して設置する簡易収納装置が使用されるようになった。
このような技術に例えば特許文献1がある。特許文献1においては、FOUPに収納された半導体基板は、ストレージラック部材に格納保管される。なお、ストレージラック部材は、天井付近の高い位置にある。
【特許文献1】特許第3067656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ストッカ内または特許文献1に示すストレージラック部材内の収納物は半導体製造などに使用されるウエハであり、煩雑な処理プロセスを経て完成されるものであるので、製造途中で、人が直接に、緊急に収納容器の識別確認や摘出が必要となる事態が起こる。
また、停電や事故でシステムがダウンし、ストッカ内または特許文献1に示すストレージラック部材内に収納されたFOUPの識別情報を人が確認せねばならない事態や、緊急にあるFOUPをストッカ内から摘出しなければならない事態なども生じうる。
このような場合においても、ストッカである場合においては、人間でしか対応できない状況に至っても保守点検用の梯子、通路が設備されており、想定内の問題として処理できる。
しかしながら、特許文献1に示すワーク搬送システムにあっては、ストレージラック部材が、天井付近の高い位置にあるため、保管されているワークの状況を人は容易に目視確認することが出来ないという問題がある。
【0007】
また、特許文献1に示すワーク搬送システムにあっては、人がワークの識別情報を目視確認する場合や、ストレージラックから摘出する場合には、例えば、天井走行車を用いマニュアル操作で、ワークを1つずつ地上に降ろすか又は、梯子などを用い人がワークに接近し識別情報を読み取る、或いはワークを摘出し地上に降ろすなどの作業が必要となる。しかしながら、このように、天井走行車を用いワークを1つずつ地上に降ろす方式では、この作業期間中生産ラインの操業を停止させることになり、また、梯子などを用いる方法にあっては、高所作業となり安全上の問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、天井付近に敷設された軌道を走行して収納容器を搬送するOHTにおいて用いられる収納容器を一時的に保管する一時保管棚装置であって、収納容器の識別情報の目視確認や、保管棚からの収納容器の摘出を容易に実行できる一時保管棚装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、天井付近に敷設された軌道に沿って走行する懸垂式昇降搬送装置により搬送される被搬送物を一時的に保管し、前記軌道に沿った位置に設置される一時保管棚装置であって、前記被搬送物が載置される棚手段と、前記被搬送物が載置された状態で前記棚手段を昇降させる昇降手段と、を有することを特徴とする一時保管棚装置である。
【0010】
この請求項1に係る発明によれば、収納容器の一時保管機能を有する棚手段(被搬送物載置部材)が昇降できる構成によって、棚手段上の収納容器の状況確認に際しては、OHTを稼動させることなく棚手段を降下させることによって、床面にいる作業者が、梯子を登るなど危険作業を伴うことなく安全に収納容器の確認あるいは一時持ち出しを行うことができる。従って、OHTの稼動効率の上昇及び収納容器の荷役の効率が上昇する効果、また、収納容器の状況確認等の効率が上昇する効果が得られる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記棚手段を下面より支持する受け手段と、前記受け手段と前記棚手段とが被搬送物の一時保管として用いられるときは、前記受け手段と前記棚手段とが互いに鉛直方向に重なり合う支持位置にあり、前記棚手段の昇降のときには、前記棚手段と前記受け手段とが互いに鉛直方向において重なり合わない解除位置にあるように、前記棚手段と前記受け手段との内の少なくとも何れか一方を移動させる支持位置調整手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載の一時保管棚装置である。
【0012】
この請求項2に係る発明によれば、棚手段が収納容器に一時保管のため上部に位置している場合においては、受け部材が棚手段を確実に支持し、誤操作に伴う棚手段の降下を防止できる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記昇降手段および前記支持位置調整手段が、それぞれ手動ハンドル手段を有しており、前記それぞれの手動ハンドル手段の駆動により、前記昇降手段が前記棚手段を昇降させ、前記支持位置調整手段が前記支持位置と前記解除位置との間で前記受け手段を移動させる、ことを特徴とする請求項2に記載の一時保管棚装置である。
この請求項3に係る発明によれば、生産ラインを停止させることなく、また停電時においても棚手段上に載置されている収納容器の状況確認を行うことができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記被搬送物がウエハを挿脱可能に収納する収納容器である、ことを特徴とする請求項1から請求項3に記載の一時保管棚装置である。
この請求項4に係る発明によれば、一時保管棚装置の棚手段上に載置される収納容器内の収納物は半導体製造などに使用されるウエハであり、煩雑な処理プロセスを経て完成されるものであるので、製造途中で緊急に収納容器の識別確認や摘出が必要となる事態が起こり易く、手動で収納容器を地上まで降下できる実利は大である。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、棚装置の被搬送物載置部材が昇降できる構成によって、棚装置が収納容器の一時保管棚として作用し、また、棚装置の被搬送物載置部材上の収納容器の状況確認に際しては、OHTを稼動させることなく被搬送物載置部材を降下させることによって地上にいる作業者による収納容器の確認あるいは一時持ち出しを行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
まず、本発明の実施の形態に関連する図面の概要を説明する。図1は本発明に適用されるOHTとこのOHTによって荷役される収納容器との関係を示す構成図であり、図2はOHTの工程内循環経路の周辺構成の概略図であり、図3は本発明に係る保管棚装置の概略図であり、図4は本発明の保管棚装置の被搬送物載置部材の昇降機構不動作時の構成図であり、図5は本発明の保管棚装置の被搬送物載置部材の昇降機構動作開始前の構成図であり、図6は本発明の保管棚装置の被搬送物載置部材の昇降機構動作完了時の構成図である。
【0017】
次に、本発明に適用されるOHTの構成と、このOHTによって荷役される収納容器との関係について、図1を用いて説明する。
図1において、1はOHTであり、OHT1は、所定の軌道に沿って天井に敷設された工程内循環経路を形成する走行レール2に、OHT1の案内駆動部3を介して吊り下げられている。
案内駆動部3は、図示しない走行輪と案内輪を有しており、案内駆動部3が走行輪と案内輪とにより走行レール2に規制されて走行することにより、OHT1も走行レール2に規制されて走行する。つまり、OHT1は、走行レール2の長手方向(図1の矢印Bの方向)に走行する。
なお、OHT1が走行レール2に規制されて走行する時に必要な動力は、OHT1の走行輪に駆動モータを備えること、或いは、走行レール2側とOHT1側とに夫々2次側と1次側を設ける直流リニアモータを備えること、等の周知の手段によって得るようにしてもよい。
【0018】
OHT1は、案内駆動部3の下部に、位置合せ機構4を有している。位置合せ機構4は、後述する収納容器を、走行レール2の長手方向と垂直に直交する方向(図1において、図1の紙面と垂直な方向)、及び、鉛直方向(図1の矢印Aの方向)を中心軸とした回転方向、に調整する機能を有する。
OHT1は、位置合せ機構4の下部に昇降機構6を有しており、昇降機構6はその下部に、タイミングベルト5を介して、ハンド部7を牽引可能に接続している。
タイミングベルト5は、4つのタイミングベルトからなり、昇降機構6の、走行レール2の長手方向の所定の2箇所であり、かつ、走行レール2の長手方向と垂直に直行する方向の所定の2箇所である、合計4箇所から伸び、ハンド部7へ接続される。
【0019】
このように、昇降機構6とハンド部7とは4つのタイミングベルト5により接続され、昇降機構6によりタイミングベルト5が伸縮自在に制御されることにより、ハンド部7が鉛直方向(図1の矢印Aの方向)に昇降させるように構成される。なお、このタイミングベルト5は、内部にハンド部7への電力供給、及び制御信号の授受用の電線(図示せず)を埋設している。
なお、昇降機構6とハンド部7とは4つのタイミングベルト5により牽引可能に接続されることに限定されるものではなく、昇降機構6とハンド部7とは、任意の数のタイミングベルト5により牽引可能に接続されてもよい。
【0020】
次に、ハンド部7は、ハンド部7の底部に、走行レール2の長手方向に互いに向かい合う(つまり、対応する)、2つのグリッパ部材7aを有している。2つの対応するグリッパ部材7aは、走行レール2の長手方向に沿って、互いに逆方向に変位する。なお、ハンド部7のグリッパ部材7aが変位することにより、グリッパ部材7aは後述の収納容器8の把持又は解除を行う。
収納容器8は、ウエハなどの基板を収納する収納容器本体部分8aと、収納容器本体部分8aの上部に設けられ、前記グリッパ部材7aによって把持又はその解除を受けるフランジ部8bとから構成される。
【0021】
次に、工程内環状経路に沿って配置される各種施設を上方から見た平面視概略構成を、図2を用いて説明する。なお、工程内環状経路は、図1において説明した、天井部に支持された走行レール2により、形成されるものである。また、図1に説明したOHTおよび収納容器8は、走行レール2つまり工程内環状経路に沿って移動する。
図2において、12はそれぞれ処理ステーションであり、工程内環状経路(走行レール2)に沿って配置されており、前記収納容器8に収納されるウエハなどの基盤に対して洗浄、エッチング、CVDほか多数の処理の何れかを司り、工程内環状経路の所定箇所に設置される。なお、各処理ステーション12は、OHT1によって搬送および昇降制御を受ける収納容器8用の搬入および搬出するためのポートを備えている。
【0022】
13、14、15は分岐軌道11の直下に設けられた一時保管棚装置であり、処理ステーションへの待機領域として、収納容器8を一時的に保管し、分岐軌道11や工程内環状経路(図2には図示されていない)に沿って配置される。
一時保管棚装置13、14、15は、前記各処理ステーション12の近傍であって、各処理ステーション12の鉛直方向において上方位置であり、ほぼ走行レール2の高さにあり、走行レール2または天井より縣吊されている。
そして、この一時保管棚装置13、14、15は、処理ステーション12における収納容器8内に挿脱自在に収納されているウエハを迅速に処理するために、処理ステーション12の近傍に設置される。
また、一時保管棚装置13、14、15は、処理ステーション12での処理のために、収納容器8を一時保管する場合においては、工程内環状経路の経路において、少なくとも処理ステーション12における処理待ち側に設けられる。
【0023】
なお、一時保管棚装置13、14、15は、それぞれ同様な構成をしている。次に、一時保管棚装置13を例として、一時保管棚装置13の構成および作用を、図3から図6を用いて説明する。
図3は、一時保管棚装置13と走行レール2とOHT1とを、走行レール2の長手方向と水平に直交する方向から見た図である。また、図4から図6は、一時保管棚装置13と走行レール2とOHT1とを、走行レール2の長手方向から見た図である。なお、図3から図6において、図1の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。
【0024】
図3において、天井Tと、走行レール2とOHT1が示してあり、OHT1は走行レール2に沿って走行レール2の長手方向に移動可能である。天井Tは水平方向に面状である。走行レール2は、天井Tに吊り下げられて敷設されている。また図3においては、OHT1が搬送している収納容器8が、OHT1の内部に波線で示してある。
【0025】
一時保管棚装置13は、複数の収納容器8を被搬送物載置部材13aの上に載置して保管する。被搬送物載置部材13aは水平方向に配置される板状の部材である。図3に示すように、一時保管棚装置13は、走行レール2の長手方向に、所定の間隔を有して一列に並んだ状態にて被搬送物載置部材13aの上に複数の収納容器8を一時保管する。
被搬送物載置部材13aは、2つの対を成す支持部材13bにより支持される。図3に示すように、被搬送物載置部材13aの走行レール2の長手方向の両端付近の2箇所のそれぞれが、対となる支持部材13bの下端部のそれぞれに接続される。また、それぞれの支持部材13bの上端部は天井Tに固定して設置される。
【0026】
なお、それぞれの支持部材13bは、走行レール2の長手方向と水平に直交する方向(図3において、紙面に垂直な方向)から見て板状の部材である。また、図4に示すように、被搬送物載置部材13aと支持部材13bとは、L字型を形成して接続される。
なお、被搬送物載置部材13aは走行レール2の鉛直下方に水平に位置するように配置され、支持部材13bは被搬送物載置部材13aに垂直に上側に接続され、被搬送物載置部材13aと支持部材13bとは、走行レール2の長手方向から見て、L字型を形成して接続される。
なお、支持部材13bは、後に図4から図6を用いて説明するように、被搬送物載置部材13aを鉛直方向(図3の矢印Aの方向)に昇降する機構を有する。
【0027】
被搬送物載置部材13aは、その下面を、受け部材13cにより支持される。受け部材13cは、図4で後述する機構によって、高さを不変に維持しつつ走行レール2の長手方向と水平に直交する方向に変位できるように構成されている。
受け部材13cは、走行レール2の長手方向と水平に直交する方向で被搬送物載置部材13aに下面を支持する位置(支持位置とする)においては、何らかの誤動作によって当該被搬送物載置部材13aの降下を防止すべく被搬送物載置部材13aを支持し、走行レール2の長手方向と水平に直交する方向で被搬送物載置部材13aの下面を支持せず解除した位置(解除位置とする)においては、被搬送物載置部材13aが支持部材13bにより自由に昇降することを許容する。受け部材13cの機構については、図4から図6を用いて詳述する。
【0028】
次に、支持部材13b及び、受け部材13cの構成の詳細を、図4から図6を用いて説明する。
図4に示すように、支持部材13bは、平板状の支持用基材13bxと、対となるスライド板群13byとから構成される。対となるスライド板群13byは、支持用基材13bxを両側から対として挟み、順次外側に平面接触する摺動自在である。
支持用基材13bxの下端部は、走行レール2の長手方向から見て、被搬送物載置部材13aとL字型を形成するように接続され、スライド板群13byの最も外側に位置する2枚のスライド板の上端部はそれぞれ天井の所定位置に固定設置される。
【0029】
つまり、平板状の支持用基材13bxの両面が、スライド板群13byを形成する最も内側の対を成す2つの板部材のそれぞれの内面と鉛直方向に摺動自在に平面接触し、次に、スライド板群13byを形成する最も内側の対を成す2つの板部材のそれぞれの外面が、スライド板群13byを形成する2番目に内側の対を成す2つの板部材のそれぞれの内面と鉛直方向に摺動自在に平面接触する。以下順次、スライド板群13byを形成する対を成す板部材が、鉛直方向に摺動自在に平面接触されている。
【0030】
このような支持部材13bの構成により、支持部材13bは、スライド板群13byの最も外側に位置する対を成す2枚のスライド板の上端部はそれぞれ天井の所定位置に固定設置したまま、スライド板群13byを構成するスライド板が鉛直方向に摺動自在に変位することにより、被搬送物載置部材13aが鉛直方向(図4の矢印Aの方向)に移動可能となる。
なお、スライド板群13byは平板状体郡に限られるものではなく、筒状体郡であってもよい。
【0031】
前記支持用基材13bxの下端部には、取手13cxが付けられている。取手13cxに、人が図示しないフックを掛け、フックにより取手13cxを鉛直方向の下方に引き下ろすことにより、支持用基材13bxを下方に引き下ろし、被搬送物載置部材13aを下方に変位させる。このとき、スライド板群13byは、図4または図5の状態から図6に示すように、鉛直方向に伸張する。
【0032】
前記支持用基材13bxの下端部には、ワイヤー13eの遊端部が固定接続される。ワイヤー13eは、滑車13dzと滑車13dyを介して、リール13dに繰り出しと巻取可能に収容される。リール13dは、図示しない固定部の適所に固定支持されている。
また、リール13dはワイヤー13eの繰り出しと巻取りを行うための、第1のハンドル13dxを有している。第1のハンドル13dxを回転する操作により、ワイヤー13eの繰り出しと巻取りを行うことが可能である。
【0033】
走行レール2の長手方向から見てL字型である平板状の部材である受け部材13cの上端部は、可動部材13fの下端部に固定される。
可動部材13fの上部には、走行レール2の長手方向と水平に直交する方向に沿ってラック13fxが形成されている。
また、可動部材13fは、走行用ホイール13fyを複数有している。走行用ホイール13fyは、走行レール2の長手方向に伸びる中心軸部材により、可動部材13fに固定されており、走行レール2の長手方向に伸びる中心軸部材を中心に自由に回転可能である。
また、走行用ホイール13fyは、走行レール2の長手方向と水平に直交する方向に伸びるレール13g上で回転することにより、可動部材13fはレール13gに沿って、走行レール2の長手方向と水平に直交する方向(図4の矢印Cで示す方向)に、移動可能である。
レール13gは、可動部材13fの走行用ホイール13fyを、走行レール2の長手方向と水平に直交する方向に案内するように、天井または側壁などに基づき水平に固定されて設置されている。
【0034】
固定部材13hは、走行レール2の長手方向と水平に直交する方向に、固定部材13hの長手方向を向けて天井付近の上部であり、後述の固定部材13hに取り付けられる
ピニオン13hzが、可動部材13fのラック13fxと係合する位置に固定支持される部材である。
固定部材13hの、走行レール2の長手方向と水平に直交する方向において支持部材13bから遠い側の端部には、一対のスプロケット13hxが、回転自在に設置される。一対のスプロケット13hxは、走行レール2の長手方向の中心軸部材を中心として回転自在である。また、一対のスプロケット13hxにおいて、スプロケットの一方が動力を受け、スプロケットの他方が動力を供給する。また、一対のスプロケット13hxは、互いに同期して回転動作を行う。
【0035】
また、固定部材13hの、走行レール2の長手方向と水平に直交する方向において支持部材13bから近い側の端部には、ピニオン13hyが、またピニオン13hyと対向する可動部材13fの上面にはラック13fxが設けられる。スプロケット13hxとピニオン13hyとは、夫々同期して回転自在に支持されており、ピニオン13hyは前記ラック13fxと係合している。
【0036】
一対のスプロケット13hx、13hxは、第1の環状チェーン13iにより連結されている。
また、前記リール13dと並んだ位置であって、支持部材13bとは受け部材13cについて反対側の適所に、スプロケット13jが回転可能に固定支持され設置されている。
一対のスプロケット13hxのうちの一方と、スプロケット13jとは、第2の環状チェーン13kで連結されており、第2の環状チェーン13kにより、スプロケット13jの動力が一対のスプロケット13hxのうちの動力受動側のスプロケットへ伝達できるように係合している。
このスプロケット13jは第2のハンドル13jxを有しており、第2のハンドル13jxの回転操作によって、スプロケット13jも回転する。
【0037】
次に図4〜図6を用いて、図3および図4に示した本発明による一時保管棚装置の作用について、次のステップを用いて、説明する。
【0038】
ステップ1:
まず、図4に示すように、受け部材13cが支持位置(図4のC1の位置)にあり、被搬送物載置部材13aが受け部材13cによって支持されている状態においては、前記被搬送物載置部材13aには、収納容器8が順次OHT1にて搬送され、処理ステーション11(図2を参照)における処理のために収納容器8が待機状態におれる。なお、複数の収納容器8は、OHT1の走行方向に沿って一列に配置される。
なお、この状態において、被搬送物載置部材13aは、鉛直方向において、載置位置A1(図4のA1の位置)にある。
なお、被搬送物載置部材13aが載置位置A1にある場合おいては、OHT1による被搬送物載置部材13a上における収納容器8の搬入および搬出が行われ、OHT1は収納容器8を把持した状態において被搬送物載置部材13aの上方部の空間を通過できる。
【0039】
ステップ2:
被搬送物載置部材13a上にある収納容器8の状況確認のため、先ず、受け部材13cを、図4の支持位置(図4のC1の位置)から、図5の解除位置(図5のC2の位置)に、走行レール2の長手方向と水平に直交する方向に、支持部材13bから遠ざかる方向に移行させる。
ここでは、第2のハンドル13jxを一方の方向(例えば、左回転の方向)に回転させる。これにより、第2の環状チェーン13k、一対のスプロケット13hx、及び第1の環状チェーン13iを順次介して、動力がピニオン13hyに伝達され、このピニオン13hyの回転に伴って、当該ピニオン13hyに噛み合う(つまり、係合する)ラック13fxが、走行レール2の長手方向と水平に直交する方向で、支持部材13bから遠ざかる方向に送られる。
【0040】
したがって、ラック13fxと一体となっている可動部材13fも、走行レール2の長手方向と水平に直交する方向で、支持部材13bから遠ざかる方向に移動し、可動部材13fとともに、これと一体的に固定される受け部材13cも図5に示すように、走行レール2の長手方向と水平に直交する方向で、支持部材13bから遠ざかる方向に移行し、受け部材13cが解除位置C2まで移動し、受け部材13cが被搬送物載置部材13aを支持する状態が解かれる、
【0041】
ステップ3:
図5の状態において、取手13cxを図示しないフックにて下方に引っ張ることによりリール13dからワイヤー13eを繰出し、支持部材13bの支持用基材13bxが下方に引き出され、これに伴いスライド板群13byが順次引き出され、図6の状態の、被搬送物載置部材13aが下方の位置である確認位置A2(図6のA2の位置)にある状態になる。
これによって、被搬送物載置部材13aに載置される収納容器8の状況確認ができる高さ位置まで降下し、次に、検査を行う人が収納容器8についての必要な確認を行う。
【0042】
ステップ4:
被搬送物載置部材13a上にある収納容器8群の状況確認終了後、第1のハンドル13dxを一方の方向(例えば、左回りの方向)に回転させると、ワイヤー13eがリール13dに巻き取られ、支持部材13bの支持用基材13bx及びスライド板群13byが図5の状態に縮退し、被搬送物載置部材13aが載置位置A1に戻る。
【0043】
ステップ5:
図5の状態において、第2のハンドル13jxをステップ2とは逆の一方の方向(例えば、右回転の方向)に回転させることにより、前記ステップ2とは反対方向にピニオン13hxが回転し、ステップ2とは逆の動作が生じ、可動部材13fと可動部材13fに一体的に固定されている受け部材13cとは、走行レール2の長手方向と水平に直交する方向で、支持部材13bに近づく方向に移動し、受け部材13cは支持位置(C1)まで移動する。つまり、図4の状態にもどり、一時保管棚装置13は、通常の一時保管棚として機能する。
【0044】
なお、上記説明においては、受け部材13cと支持部材13bとの走行レール2の長手方向と水平に直交する方向における相対位置の変化を、受け部材13cの位置を支持位置C1と解除位置C2とに変化させる具体例を述べたが、これに限られるものではなく、例えば、支持部材13bおよび被搬送物載置部材13a側に、同様な、走行レール2の長手方向と水平に直交する方向での可動機構を設けるように構成することもできる。
また、受け部材13c側及び支持部材13b側の両者に可動機構を設けることも可能である。
【0045】
また、上記説明においては、受け部材13cを走行レール2の長手方向と水平に直交する方向において移動し、支持位置と解除位置との位置を変えることにより、受け部材13cが被搬送物載置部材13aを支持または解除するようにしたが、受け部材13cの移動の方向は、これに限られるものではない。
例えば、受け部材13cを走行レール2の長手方向において移動し、被搬送物載置部材13aを支持または解除する位置になるようにしてもよい。
また、受け部材13cを動かす方向は、走行レール2の長手方向、または、走行レール2の長手方向と水平に直交する方向に限られるものではなく、走行レール2の長手方向に対して任意の角度に変位させてもよい。
【0046】
つまり、受け部材13cは、被搬送物載置部材13aを支持するような位置と解除するような位置との間を、変位可能であれば、どのように変位してもよい。
ただし、被搬送物載置部材13aが何らかの問題により落下することを防止する目的のために、受け部材13cは水平方向にのみ移動可能であり、受け部材13cが垂直方向には移動しないようにし、受け部材13cが被搬送物載置部材13aを支持している状態においては、受け部材13cにより被搬送物載置部材13aが鉛直方向に垂直に落下しないように出来ることが望ましい。
【0047】
なお、受け部材13cが被搬送物載置部材13aを支持するような位置(支持位置C1)と解除するような位置(解除位置C2)とは、受け部材13cと被搬送物載置部材13aとが、鉛直方向において重なり合う位置と重なり合わない位置である。
【0048】
なお、図4に開示の取手13cxを設けることなく、第1のハンドル13dxを、ワイヤー13eが繰出される方向に回動させるようにしてもよい。
なお、第1のハンドル13dxおよび第2のハンドル13jxは、手動ハンドルであることより、例えば、停電時においても被搬送物載置部材13aに載置されている収納容器8の確認ができる。
【0049】
なお、本発明の説明においては、FOUP等である収納容器を一時的に保管する一時保管棚装置について説明したが、本発明は任意の被搬送物を保管する一時保管棚装置について適応可能である。
【0050】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、OHTを用いた工程内循環経路における一時保管棚装置に用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に適用されるOHTとこの台車によって荷役される収納容器との関係を示す構成図である。
【図2】OHTの工程内循環経路の周辺構成の概略図である。
【図3】この発明の一実施形態による保管棚装置の構成図である。
【図4】図3の保管棚装置の被搬送物載置部材の昇降機構の不動作時の構成図である。
【図5】図3の保管棚装置の被搬送物載置部材の昇降機構の動作開始前の構成図である。
【図6】図3の保管棚装置の被搬送物載置部材の昇降機構の動作完了状態の構成図である。
【符号の説明】
【0053】
1 OHT
2 走行レール
3 案内駆動部
4 位置合せ機構
5 タイミングベルト
6 昇降機構
7 ハンド部
7a グリッパ部材
8 収納容器
8a 収納容器本体部分
8b フランジ部
11 分岐軌道
12 処理ステーション
13、14、15 一時保管棚装置
13a 被搬送物載置部材
13b 支持部材
13c 受け部材
13bx 支持用基材
13by スライド板群
13cx 取手
13e ワイヤー
13dz、13dy 滑車
13d リール
13dx 第1のハンドル
13f 可動部材
13fx ラック
13fy 走行用ホイール
13g レール
13h 固定部材
13hx 一対のスプロケット
13j スプロケット
13hy ピニオン
13i 第1の環状チェーン
13k 第2の環状チェーン
13jx 第2のハンドル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井付近に敷設された軌道に沿って走行する懸垂式昇降搬送装置により搬送される被搬送物を一時的に保管し、前記軌道に沿った位置に設置される一時保管棚装置であって、
前記被搬送物が載置される棚手段と、
前記被搬送物が載置された状態で前記棚手段を昇降させる昇降手段と、
を有することを特徴とする一時保管棚装置。
【請求項2】
前記棚手段を下面より支持する受け手段と、
前記受け手段と前記棚手段とが被搬送物の一時保管として用いられるときは、前記受け手段と前記棚手段とが互いに鉛直方向に重なり合う支持位置にあり、前記棚手段の昇降のときには、前記棚手段と前記受け手段とが互いに鉛直方向において重なり合わない解除位置にあるように、前記棚手段と前記受け手段との内の少なくとも何れか一方を移動させる支持位置調整手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の一時保管棚装置。
【請求項3】
前記昇降手段および前記支持位置調整手段が、それぞれ手動ハンドル手段を有しており、
前記それぞれの手動ハンドル手段の駆動により、前記昇降手段が前記棚手段を昇降させ、前記支持位置調整手段が前記支持位置と前記解除位置との間で前記受け手段を移動させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の一時保管棚装置。
【請求項4】
前記被搬送物がウエハを挿脱可能に収納する収納容器である、
ことを特徴とする請求項1から請求項3に記載の一時保管棚装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−24417(P2008−24417A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198195(P2006−198195)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(302059274)アシスト テクノロジーズ ジャパン株式会社 (146)
【Fターム(参考)】