説明

一時的被覆を使用して構成部品を作製する方法

【課題】基材基部の金属にさらなる処理をすることなく、縁部が鋭い直角に形成されたチャネルを、構成部品内に形成するための方法を提供する。
【解決手段】構成部品100を作製する方法は、基材110の表面112上に一時的被覆を堆積するステップを含み、基材は中空の内部空間114を有する。方法は、基材の表面に溝132を形成するように、一時的被覆を通って基材を機械加工するステップを含む。溝は基部を有し基材の表面に沿って延びる。方法は、各溝を各中空の内部空間とそれぞれ流体連通して連結するように、溝のそれぞれの基部を通って、のアクセス孔を形成するステップを含む。方法は、溝を充填剤で充填するステップ、一時的被覆を除去するステップ、基材の表面の上に被覆150を配設するステップ、および溝および被覆がともに構成部品を冷却するための多数のチャネル130を画成するように、充填剤を溝から除去するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にガスタービンエンジンに関し、より詳細には、ガスタービンエンジン内のマイクロチャネル冷却に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンでは、空気が圧縮機内で加圧され燃焼器内で燃料と混合され、高温の燃焼ガスを生成する。圧縮機を駆動する高圧タービン(HPT)内で、またターボファン航空機エンジン用ではファンを駆動し、または船舶および産業用では外部シャフトを駆動する低圧タービン(LPT)内で、ガスからエネルギーが抽出される。
【0003】
エンジン効率は燃焼ガスの温度とともに上昇する。しかし、燃焼ガスはその流路に沿って様々な構成部品を加熱するので、エンジンの長寿命を達成するために構成部品を冷却する必要がある。通常は、圧縮機から空気を抽気することによって高温ガス通路の構成部品を冷却する。抽気された空気は燃焼プロセスで使用されないため、この冷却プロセスはエンジン効率を低下させる。
【0004】
ガスタービンエンジン冷却技術は成熟しており、様々な高温ガス通路構成部品における冷却回路および特徴の様々な態様について多くの特許がある。例えば、燃焼器は、動作中に冷却を必要とする径方向外側および内側のライナーを含む。タービンノズルは、やはり冷却を必要とする、外側バンドと内側バンドとの間に支持された中空のベーンを含む。タービンロータブレードは中空であり、一般にその内部に冷却回路を含み、ブレードはやはり冷却を必要とするタービンシュラウドによって囲まれている。高温燃焼ガスは、内張りをすることもできる排気口を通して排出することができ、適切に冷却される。
【0005】
これらのすべての例示的なガスタービンエンジン構成部品では、冷却の必要性を最小限に抑えながら耐久性を向上させるために、高強度の超合金金属の薄い金属壁が一般に使用される。様々な冷却回路および特徴が、エンジン内のそれらに対応する環境で、これらの個々の構成部品に合わせて調整される。例えば、一連の内部冷却通路、または蛇行路を、高温ガス通路構成部品内に形成することができる。冷却流体をプレナムから蛇行路に供給することができ、冷却流体は通路を通って流れ、高温ガス通路構成部品基材および被覆を冷却することができる。しかし、この冷却法では一般に、伝熱率が比較的低く、構成部品の温度プロファイルが非均一になる。
【0006】
マイクロチャネル冷却は、冷却剤を熱部分の可能な限り近くに配置し、したがって所定の伝熱率で高温側と低温側との間の温度デルタを低減することによって、冷却要件を著しく低減する可能性を有する。しかし、チャネルの上に構造被覆を塗布するとき、最も重要な領域はチャネルの上縁部である。これらの縁部が鋭い直角でない場合、堆積されるにつれてひびを構造被覆へと伝播することがある、隙間、クラックスタータまたは小さい空洞のいずれかとして、基材基部の金属と構造被覆との間にひびが発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7302990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、基材基部の金属にさらなる処理をすることなく、縁部が鋭い直角に形成されたチャネルを、構成部品内に形成するための方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様は、構成部品を作製する方法である。方法は、基材の表面上に一時的被覆を堆積するステップを含み、基材は少なくとも1つの中空の内部空間を有する。方法はさらに、基材の表面に1つまたは複数の溝を形成するように、一時的被覆を通って基材を機械加工するステップを含む。1つまたは複数の溝はそれぞれ基部を有し、少なくとも一部が基材の表面に沿って延びる。方法はさらに、各溝を各中空の内部空間とそれぞれ流体連通して連結するように、1つまたは複数の溝のそれぞれの基部を通って、1つまたは複数のアクセス孔を形成するステップを含む。方法はさらに、1つまたは複数の溝を充填剤で充填するステップと、一時的被覆を除去するステップと、基材の表面の少なくとも一部分の上に被覆を配設するステップと、1つまたは複数の溝および被覆がともに構成部品を冷却するための複数のチャネルを画成するように、充填剤を1つまたは複数の溝から除去するステップとを含む。
【0010】
図面を通して同様の部品を同様の符号で示す添付の図面を参照しながら、以下の詳細な説明を読めば、本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点はより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ガスタービンシステムを概略的に示す図である。
【図2】本発明の態様による、冷却チャネルを備えたエーロフォイル構成の例の概略的な断面図である。
【図3】基材に冷却チャネルを形成するためのプロセスステップを概略的に示す図である。
【図4】基材に冷却チャネルを形成するためのプロセスステップを概略的に示す図である。
【図5】基材に冷却チャネルを形成するためのプロセスステップを概略的に示す図である。
【図6】基材に冷却チャネルを形成するためのプロセスステップを概略的に示す図である。
【図7】基材に冷却チャネルを形成するためのプロセスステップを概略的に示す図である。
【図8】基材に冷却チャネルを形成するためのプロセスステップを概略的に示す図である。
【図9】基材に冷却チャネルを形成するためのプロセスステップを概略的に示す図である。
【図10】基材に冷却チャネルを形成するためのプロセスステップを概略的に示す図である。
【図11】一部が基材の表面に沿って延びる冷却チャネルの3つの例および各フィルム冷却孔へのチャネル冷媒を概略的に示す斜視図である。
【図12】図11の冷却チャネルの例の1つの横断面およびアクセス孔からフィルム冷却孔へと冷媒を運ぶチャネルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用される「第1」、「第2」等の用語は、順序、量、または重要性を示すものではなく、1つの要素と別の要素を区別するために使用される。本明細書で使用される「a」および「an」は、量の限定を示すのではなく、言及された項目の少なくとも1つが存在することを示す。ある量と関連して使用される「約」という修飾語句は、記載された値を含み、文脈によって決定される意味を有する(例えば、特定の量の測定に関連する誤差の範囲を含む)。さらに、「組み合わせ」という用語は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物等を含む。
【0013】
さらに、本明細書では「(s)」という接尾辞は、一般にそれが修飾する語句の単数および複数の両方を含み、その用語の1つまたは複数を含む(例えば、「通路孔」は、別段の記載がない限り、1つまたは複数の通路孔を含むことができる)。明細書を通して述べられる「1つの実施形態」、「別の実施形態」、「実施形態」等は、実施形態と関連して説明される特定の要素(例えば、特徴、構造、および/または特色)が本明細書で説明される少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味し、他の実施形態に含むこともでき、含まないこともできる。さらに、説明された本発明の特徴は、様々な実施形態で、適切な方法で組み合わせることができることを理解されたい。
【0014】
図1は、ガスタービンシステム10の概略図である。システム10は、1つまたは複数の圧縮機12、燃焼器14、タービン16、および燃料ノズル20を含むことができる。圧縮機12およびタービン16は、1つまたは複数のシャフト18によって連結することができる。シャフト18は、単一のシャフトまたはシャフト18を形成するように互いに連結される複数のシャフト部分とすることができる。
【0015】
ガスタービンシステム10は、多数の高温ガス通路構成部品100を含むことができる。高温ガス通路構成部品は、システム10を通る高温のガス流に少なくとも一部がさらされる、システム10の任意の構成部品である。例えば、バケットアセンブリ(ブレードまたはブレードアセンブリとしても知られる)、ノズルアセンブリ(ベーンまたはベーンアセンブリとしても知られる)、シュラウドアセンブリ、トランジションピース、保持リング、および圧縮機排気口構成部品はすべて、高温ガス通路構成部品である。しかし、本発明の高温ガス通路構成部品100は上記の例に限定されず、高温のガス流に少なくとも一部がさらされるどのような構成部品とすることもできることが理解されよう。さらに、本開示の高温ガス通路構成部品100はガスタービンシステム10の構成部品に限定されず、高温流にさらされることがあるどのような機械部品または構成部品とすることもできることが理解されよう。
【0016】
高温ガス通路構成部品100が高温ガス流80にさらされるとき、高温ガス通路構成部品100は、高温ガス流80によって加熱され、高温ガス通路構成部品100が故障する温度に達することがある。したがって、システム10を高温の高温ガス流80で動作させることができるように、高温ガス通路構成部品100のための冷却システム、システム10の効率および性能を向上させる必要がある。
【0017】
一般的に、本開示の冷却システムは、高温ガス通路構成部品100の表面に形成された一連の細いチャネル、すなわちマイクロチャネルを含む。高温ガス通路構成部品は、カバー層を備えることができる。冷却流体をプレナムからチャネルに導入することができ、冷却流体はチャネルを通って流れることができ、カバー層を冷却する。
【0018】
構成部品100を作製する方法を、図3〜10を参照して説明する。例えば、図3に示すように、方法は基材110の表面112上に一時的被覆30を堆積するステップを含む。実施例によって、一時的被覆は表面112の一部分を覆うことができ、または、図3に示すように、表面110全体にわたることができる。例えば、図2に示すように、基材110は少なくとも1つの中空の内部空間114を有する。
【0019】
基材110は、一般に、基材110の表面112上に一時的被覆30を堆積する前に鋳造される。参照によってその全体を本明細書に援用する、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,626,462号に記載されているように、基材110は適切な材料から形成することができ、本明細書では第1の材料として説明される。構成部品100の目的の用途に応じて、ニッケル基、コバルト基およびFe基超合金を含むことができる。ニッケル基超合金は、γ相およびγ’相の両方を含むものとすることができ、特にγ相およびγ’相の両方を
含み、γ’相が超合金の体積の少なくとも40%を占めるニッケル基超合金とすることがで
きる。そのような合金は、高温強度および高温クリープ抵抗を含む、望ましい特性の組み合わせであることから、有利であることが知られている。第1の材料はまた、航空機で使用されるタービンエンジン用途での使用に有利な高温強度および高温クリープ抵抗を含む、優れた特性の組み合わせを有することも知られていることから、NiAl金属間化合物合金を含むこともできる。ニオブ基合金の場合、Nb/Ti合金、特にNb‐(27‐40)Ti‐(4.5‐10.5)Al‐(4.5‐7.9)Cr‐(1.5‐5.5)Hf‐(0‐6)V原子パーセントを含む合金など、優れた耐酸化性を有する、コーティングされたニオブ基合金が好ましい。第1の材料はまた、ニオブ含有金属間化合物、ニオブ含有炭化物またはニオブ含有ホウ化物など、少なくとも1つの二次相を含む、ニオブ基合金を含むこともできる。そのような合金は、延性相(すなわち、ニオブ基合金)および強化相(すなわち、ニオブ含有金属間化合物、ニオブ含有炭化物またはニオブ含有ホウ化物)を有するという点が複合材料と類似している。
【0020】
例えば、図4に示すように、方法はさらに、基材110の表面112に1つまたは複数の溝132を形成するように、一時的被覆30を通って基材110を機械加工するステップを含む。図示された例では、基材110に複数の溝132が形成されている。図4に示すように、溝132はそれぞれ基部134を有し、例えば図11および12に示すように、少なくとも一部が基材110の表面112に沿って延びている。溝は直線状の壁を有するものとして示されているが、溝132は、例えば直線状、湾曲状、または複数の湾曲部を有するなど、どのような構成とすることもできる。図11および12に示す例では、溝は流体がフィルム孔142を出るように運ぶ。しかし、他の構成はフィルム孔を伴わず、チャネルが単に基材表面112に沿って延び、後縁またはバケット先端、または端部壁の縁部など、構成部品の縁部を出ている。さらに、フィルム孔は図11では円形として示しているが、これは単に非限定的な例であることに留意されたい。フィルム孔は、非円形の孔とすることもできる。
【0021】
溝132は、多様な技術を使用して形成することができる。例えば、溝132は、研磨液噴流、プランジ電解加工(ECM)、単一のスピン電極を使用した放電加工(フライスEDM)、およびレーザー加工(レーザー穿孔)の1つまたは複数を使用して形成することができる。レーザー加工技術の例が、本発明の譲受人に譲渡された、2010年1月29日に出願された「Process and system for forming shaped air holes」という名称の米国特許出願第12/697,005号に説明されており、参照によってその全体を本明細書に援用する。EDM技術の例が、本発明の譲受人に譲渡された、2010年5月28日に出願された「Articles which include chevron film cooling holes, and related processes」という名称の米国特許出願第12/790,675号に説明されており、参照によってその全体を本明細書に援用する。
【0022】
特定のプロセス構成では、1つまたは複数の溝132は、図4に概略的に示すように、基材110の表面112へ研磨液噴流160を向けることによって形成される。チャネルの縁部の丸み付けを、基材基部の金属ではなく、一時的材料に行うことが有益である。水噴流穿孔プロセスおよびシステムの例が、本発明の譲受人に譲渡された、2010年5月28日に出願された「Articles which include chevron film cooling holes, and related processes」という名称の米国特許出願第12/790,675号に説明されており、参照によってその全体を本明細書に援用する。米国特許出願第12/790,675号に説明されているように、水噴流プロセスは一般に、高圧水流に懸濁させた研磨粒子(例えば、研磨「粒」)の高速流を使用する。水圧力は様々に変えることができるが、約5,000〜90,000psiの範囲であることが多い。ガーネット、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、およびガラス玉など、多くの研磨材料を使用することができる。水噴流プロセスは、基材110の顕著な加熱を伴わないことが有益である。したがって、基材表面112には、溝132の所望の出口形状に悪影響を及ぼすことがある「熱影響部」が形成されることがない。
【0023】
さらに、米国特許出願第12/790,675号に説明されているように、水噴流システムは、多軸コンピュータ数値制御(CNC)ユニットを含むことができる。CNCシステム自体は当技術分野で知られており、例えば、米国特許出願第2005/0013926号(S. Rutkowski et al.)に説明されており、参照によって本願に援用する。CNCシステムでは、多数のX、Y、およびZ軸、ならびに回転軸に沿って、切断具の動作が可能である。
【0024】
例えば、図5に示すように、方法はさらに、1つまたは複数のアクセス孔140を形成するステップを含む。より詳細には、溝132ごとに1つまたは複数のアクセス孔140が設けられている。図示された例では、溝132ごとに1つのアクセス孔140が設けられている。例えば、図10に示すように、アクセス孔140はそれぞれ、各溝132の基部134を通って形成されており、溝132を中空の内部空間114とそれぞれ流体連通して連結する。例えば、図10に示すように、アクセス孔140は各溝132を、少なくとも1つの中空の内部空間114とそれぞれ流体連通して連結する。1つまたは複数のアクセス孔140は一般に、円形または楕円形の断面を有し、例えば、レーザー加工(レーザー穿孔)、研磨液噴流、放電加工(EDM)および電子ビーム穿孔の1つまたは複数を使用して形成することができる。アクセス孔140は、各溝132の基部134に対して垂直とすることができ(図6に示す通り)、または、溝132の基部134に対して20〜90度の範囲の角度で穿孔することができる。
【0025】
例えば、図6に示すように、方法はさらに、1つまたは複数の溝132を充填剤32で充填するステップを含む。例えば、充填剤は、溝132が充填されるように構成部品100を金属性のスラリー「インク」32でスラリーにし、浸漬被覆または溶射被覆することによって塗布することができる。他の構成では、充填剤32は、マイクロペンまたは注射器を使用して塗布することができる。ある実施例では、溝132は充填剤材料32で過剰に充填されることがある。過剰な充填剤32は、例えば、溝132が「見える」ように拭き取ることなどによって除去することができる。充填剤32の非限定的な材料の例には、光硬化性樹脂(例えば、可視光またはUV硬化性樹脂)、セラミック、有機溶媒担体を有する銅またはモリブデンインク、および水基剤(water base)および担体を有する黒鉛粉末を含む。より一般的には、充填剤32は、適宜バインダーを使用して、担体に懸濁させた目的の粒子を含むことができる。さらに、使用される充填剤のタイプによって、充填剤は、アクセス孔140に流入させることもでき、させないこともできる。充填剤材料(またはチャネル充填手段または犠牲材料)の例が、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,640,767号、および本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,321,449号に説明されており、参照によってその全体を本明細書に援用する。特定のプロセス構成では、低濃度の金属性スラリー「インク」が充填剤に使用される。低濃度インクの使用は、その後の研磨を容易にすることが有益である。さらに、あるプロセス構成では、第1の一時的被覆の厚さにより、充填剤をチャネル高さより高く充填し、充填剤が所望の高さに、またはそれよりわずかに高く硬化されるようになっている。
【0026】
例えば、図9に示すように、方法はさらに、基材110の表面112の少なくとも一部分の上に被覆150を堆積するステップを含む。図示するように、被覆150はチャネルを覆う第1の被覆または構造被覆であるに過ぎないことに留意されたい。ある用途では、単一の被覆だけを使用することができる。しかし、他の用途では、ボンドコートおよび遮熱コーティング(TBC)も使用することができる。被覆150の例が、米国特許第5,640,767号および米国特許第5,626,462号に説明されており、参照によってその全体を本明細書に援用する。米国特許第5,626,462号に説明されているように、被覆150は基材110の表面112の一部分に結合される。
【0027】
図2に示す構成の例では、被覆150は基材110のエーロフォイル形の外面112に沿って長手方向に延びる。被覆150は、エーロフォイル形の外面112に順応し、チャネル130を形成する溝132を覆う。図11および12に示すように、例えば、基材110および被覆150はさらに、1つまたは複数の出口フィルム孔142を画成することができる。より一般的には、基材110および被覆は、流体をチャネル130から構成部品100の外面へと運ぶ多数の出口孔を画成することができる。図12に示す例示的な構成では、チャネル130は、冷媒をアクセス孔140からフィルム冷却孔142へと運ぶ。被覆150は、適切な材料とすることができ、基材110のエーロフォイル形の外面120に結合される、第2の材料を含む。特定の構成では、被覆150の厚さは、0.1〜2.0ミリメートルの範囲、より詳細には0.1〜1ミリメートルの範囲、さらにより詳細には工業部品では0.1〜0.5ミリメートルである。航空部品では、この範囲は一般に0.1〜0.25ミリメートルである。しかし、特定の構成部品100の要件によって、他の厚さを使用することもできる。
【0028】
図6および7を再び参照すると、特定のプロセス構成では、方法はさらに、基材110の表面112上に被覆150を堆積する前に、一時的被覆30を除去するステップを含む。特定の材料およびプロセスによって、一時的被覆30は、機械的手段(例えば、研磨)または化学的手段(例えば、溶媒中での溶解)、またはそれらの組み合わせを使用して、除去することができる。被覆150は、多様な技術を使用して堆積することができる。特定のプロセスでは、被覆150は、イオンプラズマ堆積を実施することによって、基材110の表面112の少なくとも一部分の上に配設される。陰極アークイオンプラズマ堆積装置および方法の例が、本発明の譲受人に譲渡された、Weaver et al.の米国特許出願第20080138529号「Method and apparatus for cathodeic arc ion plasma deposition」に説明されており、参照によってその全体を本明細書に援用する。簡潔には、イオンプラズマ堆積は、被覆材料で形成された陰極を真空室内の真空環境に置くステップと、基材110を真空環境内に配置するステップと、陰極表面に陰極アークを形成するように陰極に電流を供給して陰極表面の被覆材料を腐食または蒸発させるステップと、陰極の被覆材料を基材表面112に堆積するステップとを含む。
【0029】
1つの非限定的な例では、イオンプラズマ堆積プロセスは、プラズマ気相堆積プロセスを含む。被覆150の非限定的な例には、以下で米国特許第5,626,462号を参照してより詳細に説明するように、構造被覆、ボンドコーティング、耐酸化性被覆、および遮熱コーティングを含む。ある高温ガス通路構成部品100では、被覆150はニッケル基またはコバルト基合金を含み、より詳細には、超合金またはNiCoCrAlY合金を含む。例えば、基材110の第1の材料がγ相およびγ’相の両方を含むニッケル基超合金である場合
、被覆150は、以下で米国特許第5,626,462号を参照してより詳細に説明するように、これらの同じ材料を含むことができる。
【0030】
他のプロセス構成では、被覆150は、熱溶射プロセスおよび低温溶射プロセスの少なくとも1つを実施することによって、基材110の表面112の少なくとも一部分の上に配設される。例えば、熱溶射プロセスは燃焼溶射またはプラズマ溶射を含むことができ、燃焼溶射は高速酸素燃料溶射(HVOF)または高速空気燃料溶射(HVAF)を含むことができ、プラズマ溶射は大気(空気または不活性ガスなど)プラズマ溶射、または低圧プラズマ溶射(LPPS、真空プラズマ溶射すなわちVPSとしても知られる)を含む。1つの非限定的な例では、NiCrAlY被覆が、HVOFまたはHVAFによって堆積される。被覆150の1つまたは複数の層を堆積する他の例示的な技術には、スパッタリング、電子ビーム物理気相堆積、無電解めっき、および電気めっきを含むがこれに限定されない。
【0031】
ある構成では、被覆システム150を形成するために複数の堆積法を使用することが望ましい。例えば、第1の被覆層はイオンプラズマ堆積を使用して堆積することができ、その後の堆積層および適宜追加層(図示せず)は、燃焼溶射プロセス(例えばHVOFまたはHVAF)など他の技術を使用して、またはLPPSなどプラズマ溶射プロセスを使用して、堆積することができる。使用される材料によって被覆層ごとに異なる堆積法を使用することによって、歪み耐性および/または延性に利益が得られる。
【0032】
より一般的には、米国特許第5,626,462号に説明されているように、被覆150を形成するために使用される第2の材料は任意の適切な材料を含む。冷却式タービン構成部品100の場合、第2の材料は約1150℃までの温度に耐えることができなければならないが、TBCは約1320℃までの温度に耐えることができる。被覆150は基材110のエーロフォイル形の外面112に適合し、結合されるように適合されていなければならない。この結合は、被覆150が基材110上に堆積されるとき、形成することができる。この結合は、堆積の方法、基材110の堆積中の温度、堆積表面が堆積源に対してバイアスされているかどうか、および他のパラメータを含む、多くのパラメータによって堆積中に影響を受けることがある。結合はまた、その後の熱処理または他の処理によって影響されることもある。さらに、堆積前の基材110の表面形状、化学的性質および清浄度が、金属結合が起きる程度に影響を及ぼすことがある。被覆150と基材110との間に強い金属結合を形成することに加えて、この結合は、本明細書で説明するように、相変化および相互拡散に関して、時間の経過および高温に対して安定したままであることが望ましい。あるいは、これらの要素間の結合が熱力学的に安定しており、ニッケル基合金のエーロフォイルの支持壁40およびニッケル基のエーロフォイルの外表面42が1,150℃程度の高温、または、ニオブ基合金などのより高温材料が使用される場合は、1,300℃程度のより高温にさらされても、結合の強度および延性が、相互拡散または他のプロセスによって時間の経過とともに(例えば3年間まで)著しく劣化することがないようになっていることが好ましい。
【0033】
米国特許第5,626,462号に説明されているように、基材110の第1の材料がγ相およびγ’相の両方を含むニッケル基超合金またはNiAl金属間化合物合金である場合
、被覆150の第2の材料は、これらの同じ材料を含むことができる。被覆150および基材110の材料のそのような組み合わせは、既存のエンジンと同様の動作環境の最大温度(例えば、1650℃未満)での用途などに好ましい。基材110の第1の材料がニオブ基合金である場合、被覆150の第2の材料は、同じニオブ基合金を含む、ニオブ基合金を含むこともできる。
【0034】
米国特許第5,626,462号に説明されているように、金属合金被覆150の使用が望ましくない温度、環境または他の制約がある用途など、他の用途では、被覆150が、金属間化合物(Is)/金属合金(M)相複合材料および金属間化合物(Is)/金属間化合物(IM)相複合材料の一般的な形態の複合材料など、金属合金だけよりも優れた特性を有する材料を含むことが好ましい。金属合金Mは、エーロフォイルの支持壁40に使用したものと同じ合金、またはエーロフォイルの要件によって異なる材料とすることができる。これらの複合材料は、一般的に言って、両方の材料の利点を持った被覆150を形成するために、比較的高い延性の相MまたはIMと比較的低い延性の相Isを組み合わせている点が同様である。さらに、良好な複合材料を得るためには、2つの材料は適合性がなければならない。本明細書で複合材料に関して使用される適合性という用語は、材料が、それらの相の所望の初期分布を形成し、その分布を、複合材料の強度、延性、硬度、および他の重要な特性を実質的に損なう冶金反応を起こすことなく、1,150℃以上の使用温度で、上記で説明したように長期間にわたって維持することができなければならないことを意味する。そのような適合性は、相安定性という用語で表すこともできる。すなわち、複合材料の別個の相は、これらの相がその別個の独自性および特性を維持しながら、別個かつ個別のままであり、相互拡散により単一の相または複数の別の相にならないように、長期間にわたって高温での動作中、安定性を有さなければならない。適合性は、IS/MまたはIS/IM複合材料層の相間境界の形態安定性という用語で表すこともできる。そのような不安定性は、どちらかの層の連続性を妨げる回旋によって現れ得る。所定の被覆150内で複数のIS/MまたはIS/IM複合材料を使用することもでき、そのような複合材料は2つの材料または2つの相の組み合わせに限定されないことにも留意されたい。そのような組み合わせの使用は単に例示的なものであり、組み合わせの可能性を排除または限定するものではない。したがってM/IM/IS、M/IS1/IS2(IS1およびIS2が異なる材料である場合)、および多くの他の組み合わせが可能である。
【0035】
米国特許第5,626,462号に説明されているように、基材110がγ相およびγ’
相の両方の混合物を含むニッケル基超合金を含む場合、ISはNi3[Ti、Ta、Nb、V]、NiAl、Cr3Si、[Cr、Mo]XSi、[Ta、Ti、Nb、Hf、Zr、V]C、Cr32およびCr73金属間化合物および中間相を含むことができ、Mはγ相およびγ’相の両方の混合物を含むニッケル基超合金を含むことができる。γ相およびγ
’相の両方の混合物を含むニッケル基超合金では、元素Co、Cr、Al、CおよびBが、
Ti、Ta、Nb、V、W、Mo、Re、HfおよびZrの様々な組み合わせとともに、合金成分としてほぼ常に存在する。したがって、上記のIS材料の成分の例は、(基材110を形成する)第1の材料として使用することができるニッケル基超合金に一般に見られる1つまたは複数の材料に対応し、したがって、本明細書で説明される相および相互拡散の安定性を達成するように適合させることができる。第1の材料(基材110)がNiAl金属間化合物合金を含む場合の追加的な例として、ISはNi3[Ti、Ta、Nb、V]、NiAl、Cr3Si、[Cr、Mo]XSi、[Ta、Ti、Nb、Hf、Zr、V]C、Cr32およびCr73金属間化合物および中間相を含むことができ、IMはNi3Al金属間化合物合金を含むことができる。また、NiAl金属間化合物合金では、元素Co、Cr、CおよびBの1つまたは複数が、Ti、Ta、Nb、V、W、Mo、Re、HfおよびZrの様々な組み合わせとともに、合金成分としてほぼ常に存在する。したがって、上記のIS材料の成分の例は、第1の材料として使用することができるNiAl合金に一般に見られる1つまたは複数の材料に対応し、したがって、本明細書で説明される相および相互拡散の安定性を達成するように適合させることができる。
【0036】
米国特許第5,626,462号に説明されているように、基材110が、少なくとも1つの二次相を有するニオブ基合金を含むニオブ基合金を含む場合、ISはニオブ含有金属間化合物、ニオブ含有炭化物またはニオブ含有ホウ化物を含むことができ、Mはニオブ基合金を含むことができる。そのようなIS/M複合材料は、チタンを含むニオブ基合金のM相を含み、合金のチタン対ニオブ(Ti/Nb)の原子比率が0.2〜1の範囲であり、IS相がニオブ基ケイ化物、Cr2[Nb、Ti、Hf]、およびニオブ基アルミナイドからなる群を含み、Nb、TiおよびHfのなかでNbが原子ベースでCr2[Nb、Ti、Hf]の主要成分であるようになっていることが好ましい。これらの化合物はすべて、共通の成分としてNbを有し、したがって、米国特許第5,626,462号で説明される相および相互拡散の安定性を達成するように適合させることができる。
【0037】
ここで図10を参照すると、方法はさらに、犠牲充填剤32を溝132から除去するステップを含み、溝132および被覆150がともに構成部品100を冷却するための多数のチャネル130を画成するようになっている。例えば、充填剤32を、化学浸出プロセスを使用してチャネル130から浸出させることができる。米国特許第5,640,767号に説明されているように、充填剤(またはチャネル充填手段)を、例えば、溶解/抽出、熱分解、またはエッチングによって除去することができる。同様に、米国特許第6,321,449号で説明された充填剤材料(犠牲材料)を、水、アルコール、アセトン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは硝酸に溶解することによって除去することができる。
【0038】
被覆システム150に加えて、チャネル130の内面は、耐酸化性および/または耐高温腐食性を向上させるように、さらに修正することができる。耐酸化性被覆(明示的に図示せず)を溝132の(またはチャネル130の)内面に塗布するための適切な技術には、蒸気相またはスラリークロムめっき、蒸気相またはスラリーアルミめっき、または蒸発によるオーバーレイ堆積、スパッタリング、イオンプラズマ堆積、熱溶射、および/または低温溶射を含む。耐酸化性のオーバーレイ被覆の例には、MCrAlY族(M={Ni、Co、Fe})の材料ならびにNiAlX族(X={Cr、Hf、Zr、Y、La、Si、Pt、Pd})から選択される材料が含まれる。耐酸化性被覆が使用される場合、耐酸化性被覆は一般に、犠牲充填剤32を除去した後、蒸気相またはスラリークロムめっきおよびスラリーアルミめっきの1つまたは複数を使用して、チャネル130の内面に塗布される。
【0039】
図11および12に示す構成の例では、チャネル130は、冷却流を各アクセス孔140から出口フィルム孔142へと導く。一般に、チャネルの長さはフィルム孔直径の10〜1000倍の範囲であり、より詳細には、フィルム孔直径の20〜100倍である。チャネル130は、有益には、構成部品(エーロフォイル本体、前縁、後縁、ブレード先端、端部壁、プラットホーム)の表面上のどのような場所に使用することもできる。さらに、チャネルは直線状の壁を有するものとして示されているが、チャネル130は、例えば直線状、湾曲状、または複数の湾曲部を有するなど、どのような構成とすることもできる。
【0040】
ここで図3を参照すると、特定のプロセス構成では、基材110の表面112上に堆積された一時的被覆30の厚さは、0.5〜2.0ミリメートルの範囲である。1つの非限定的な例では、一時的被覆30は1ミリメートル厚さのポリマーベースの被覆を含む。一時的被覆30は、粉末被覆、静電被覆、浸漬被覆、スピン被覆、化学気相堆積および準備したテープの使用を含む、多様な堆積法を使用して堆積することができる。より詳細には、一時的被覆は基本的に均一であり、基材基部の金属に接着することができるが害を与えない。
【0041】
特定のプロセス構成では、一時的被覆30は、粉末被覆または静電被覆を使用して堆積される。プロセス構成の例では、一時的被覆30はポリマーを含む。例えば、一時的被覆30は、化学気相堆積を使用して堆積することができる、ピリジンなどポリマーベースの被覆を含むことができる。ポリマーベースの被覆材料の他の例には、ポリエステルまたはエポキシなどの樹脂が含まれる。樹脂の例には、感光硬化性またはUV硬化性樹脂などの光硬化性樹脂が含まれ、その非限定的な例には、コネチカット州Torringtonに事業所を置くDYMAX社からスピードマーク729(登録商標)という商標名で販売されているUV/可視光硬化性マスキング樹脂が含まれ、この場合、方法はさらに、溝132を形成する前に光硬化性樹脂30を硬化させるステップを含む。他のプロセス構成では、一時的被覆30は炭素質材料を含むことができる。例えば、一時的被覆30は黒鉛塗料を含むことができる。ポリエチレンは、被覆材料のさらに別の例である。他のプロセス構成では、一時的被覆30を基材110の表面112上でエナメル加工することができる。
【0042】
図3および4を再び参照すると、特定のプロセス構成では、方法はさらに、基材110を加工する前に、一時的被覆30を硬化させるステップを含む。一時的被覆30は、チャネルを形成するための加工マスクとして作用する。このマスクにより所望の鋭いチャネル縁部が得られる。したがって、溝132を形成する加工動作中に一時的被覆を有することにより、被覆境界に不可欠な明確に画成された縁部を備えた冷却チャネル130を形成することが容易になる。これは、冷却の概念においてただ1つの最も重要な領域であり、上記の作製プロセスによって、一時的被覆を使用しない場合に必要となるよりも精度の低い加工および複雑さの少ない充填で、所望の結果が達成される。
【0043】
明示的に図示されていないが、特定のプロセス構成では、方法はさらに、溝を充填剤32で充填する前に一時的被覆30を除去するステップを含む。被覆30は、多様な技術を使用して除去することができ、その非限定的な例には、化学的除去(例えば、浸出)または機械的除去(例えば、研磨)が含まれる。溝の形成中、一時的被覆が(例えば)研磨液噴流を隠すため、一時的被覆を除去すると一時的被覆上の過剰な充填剤が除去され、有益には、基材基部の金属に鋭いチャネル縁部が残される。除去プロセスは犠牲充填剤に影響を及ぼさない。方法はさらに、被覆システム150を堆積する前に、表面を研磨して過剰な犠牲充填剤を除去するステップを含むことができる。
【0044】
図6および7に示すような他のプロセス構成では、一時的被覆を除去する前に、充填剤が堆積され、硬化される。有益には、一時的被覆が基材基部の金属を隠すために使用され、簡便な充填プロセスのためのガイドまたはテンプレートとして作用するため、これにより構造被覆を塗布する前に溝の充填が容易になる。例えば、図6に示すプロセス構成の例では、方法は適宜、充填剤32を硬化するステップを含むことができる。例えば、光硬化性樹脂を含む充填剤32では、充填剤は光を当てることによって硬化する。セラミック充填剤では、充填剤32は担体溶液を除去する熱処理によって硬化する。有機溶液担体を有する銅またはモリブデンインクを含む充填剤では、充填剤は担体を除去する熱処理によって硬化する。ある実施例では、硬化プロセスは、一時的被覆30を有効に除去することができる。例えば、焼結温度が摂氏600℃を超える場合、硬化ステップがポリマーマスク30を基材110から除去する。
【0045】
犠牲充填剤32は、一時的被覆30の厚さにより、チャネルの高さより高く(例えば図6および7に示すように)充填することができるので、充填剤32は所望の高さに、または所望の高さよりいくらか高く硬化される。次いで、被覆150を堆積する前に、基材110の表面112を研磨して過剰な充填剤を除去する。硬化プロセスによって犠牲充填剤が減少し過ぎ、充填剤がチャネルの壁から離れてしまう場合、一時的被覆を除去する前に、追加の充填剤を追加することができる。参照によってその全体を本明細書に援用する、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,321,449号に記載されているように、ニッケル基超合金基材110で使用するための適切な犠牲充填剤32は、以下を示す:(a)例えばイオンプラズマ堆積では少なくとも400℃など、被覆(エーロフォイル100の場合、エーロフォイルの外表面)150を堆積するのに必要な温度でのニッケル基超合金との組成適合性、(b)被覆(エーロフォイルの外表面)150の堆積温度での熱安定性、(c)被覆(外表面)を堆積した後の除去の容易さ、(d)被覆(外表面)を堆積する前および堆積中、それぞれ低温および高温でのニッケル基基材110への接着性、(e)被覆(外表面)の堆積中に充填剤32が加熱されるため、ニッケル基基材110に対する最小限の圧縮収縮、(f)ニッケル基超合金と同等の熱膨張係数(CTE)、(g)被覆(外表面)150が基材110に堆積され直接結合されるように、被覆(外表面)を堆積する前の基材110からの除去の容易さ、および(h)溝132を完全に充填し、平滑で合理的な密度の充填を、被覆(外表面)150が堆積される表面に実現する成形性。項目(d)から(h)のいずれかが満たされない場合、外表面の堆積中に溝内に隙間が生じ、隙間が十分に大きい場合は、被覆(エーロフォイルの外表面)に許容不可能な欠陥を生じることになる。
【0046】
図6および7に示すプロセスでは、方法はさらに、充填剤32を乾燥、硬化、または焼結した(総称して、充填剤を「硬化する」という)後で、被覆150を基材110の表面112上に堆積する前に、一時的被覆30を除去するステップを含む。例えば、(過剰な乾燥、硬化、または焼結した、総称して「硬化した」充填剤を除去するように)一時的被覆30の除去および基材110の表面112の研磨を、単一のステップで実施することができる。他の実施例では、過剰な硬化した充填剤32を除去するように、2つの別個のステップを使用して、一時的被覆30を除去し、基材110の表面112を研磨することができる。
実施例
一連のプロセスステップの例を以下に述べる。しかし、これは例であり、本発明を限定するものではない。スピードマスク729(登録商業)UV/可視光硬化性マスキング樹脂を含む一時的被覆を、単結晶超合金(ReneeN5)基材の表面に塗布した。研磨水噴流を使用して、一時的被覆を通って溝を基材に形成した。銅インクを含む充填剤材料をスラリーとして、一時的被覆された基材の全面および溝内部に塗布した。過剰な充填剤を拭き取り、次いで、残りの充填剤を硬化させた。摂氏500度で熱処理を実施することによって、チャネル内の充填剤には害を及ぼさないがマスカント上の過剰な充填剤を除去して、マスカント(一時的被覆)を除去した。次いで、表面を研削することによって、チャネル内の残りの硬化した充填剤を平面に平滑化した。HVOFプロセスを使用して最終的な金属結合被覆およびYSZ(イットリア安定化ジルコニア)遮熱コーティングを塗布し、濃硝酸を使用して充填剤を浸出させた。
【0047】
有益には、上記の方法は、基材基部の金属のさらなる処理を必要とすることなく、チャネル縁部が鋭い直角に形成された冷却チャネルの形成を可能にする。このような鋭いチャネル縁部は、基材基部の金属と構造被覆との間の境界に、ひび(例えば、堆積されるにつれてひびを構造被覆へと伝播することがある隙間、クラックスタータまたは小さい空洞)が発生する可能性が減少する。さらに、本発明の技術は、一時的被覆が基材基部の金属を隠すために使用され、簡便な充填プロセスのためのガイドまたはテンプレートとして作用するため、構造被覆を塗布する前に溝を充填することを容易にする。
【0048】
本明細書では、本発明のある特徴のみを図示し説明したが、当業者であれば多くの修正および変更を思い付くであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのような修正および変更をすべて、本発明の真の趣旨の範囲内として含むものであることが理解されよう。
【符号の説明】
【0049】
10 ガスタービンシステム
12 圧縮機
14 燃焼器
16 タービン
18 シャフト
20 燃料ノズル
30 一時的被覆
32 充填剤
80 高温ガス流
100 高温ガス通路構成部品
110 基材
112 基材の外面
114 中空の内部空間
116 基材の内面
130 チャネル
132 溝
134 溝の基部
136 溝の上面(開口)
138 溝壁部
140 アクセス孔
142 フィルム孔
150 被覆
160 研磨液噴流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成部品(100)を作製する方法であって、
少なくとも1つの中空の内部空間(114)を有する基材(110)の表面(112)上に一時的被覆(30)を堆積するステップと、
前記基材(110)の前記表面(112)に、それぞれ基部(134)を有し、少なくとも一部が前記基材(110)の前記表面(112)に沿って延びる、1つまたは複数の溝(132)を形成するように、前記一時的被覆(30)を通って前記基材(110)を機械加工するステップと、
各溝(132)を各中空の内部空間(114)とそれぞれ流体連通して連結するように、前記1つまたは複数の溝(132)のそれぞれの前記基部(134)を通って、1つまたは複数のアクセス孔(140)を形成するステップと、
前記溝(132)を充填剤(32)で充填するステップと、
前記一時的被覆(30)を除去するステップと、
前記基材(110)の前記表面(112)の少なくとも一部分の上に被覆(150)を配設するステップと、
前記1つまたは複数の溝(132)および前記被覆(150)がともに前記構成部品(100)を冷却するための1つまたは複数のチャネル(130)を画成するように、前記充填剤(32)を前記1つまたは複数の溝(132)から除去するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記基材(110)の前記表面(112)上に前記一時的被覆(30)を堆積する前に、前記基材(110)を鋳造するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の溝(132)が、磨液噴流、プランジ電解加工(ECM)、スピン電極を使用した放電加工(フライスEDM)、およびレーザー加工(レーザー穿孔)の1つまたは複数を使用して形成される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記基材(110)の前記表面(112)の少なくとも一部分の上に前記被覆(150)を配設するステップがイオンプラズマ堆積を実施するステップを含み、前記被覆(150)がニッケル基またはコバルト基合金を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記基材(110)の前記表面(112)の少なくとも一部分の上に前記被覆(150)を配設するステップが、
高速酸素燃料溶射(HVOF)、高速空気燃料溶射(HVAF)、大気プラズマ溶射、または低圧プラズマ溶射(LPPS)を含む熱溶射プロセス、および
低温溶射プロセスの少なくとも一方を実施するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記基材(110)の前記表面(112)に堆積された前記一時的被覆(30)の厚さが0.1〜2.0ミリメートルの範囲であり、前記一時的被覆(30)がポリマーまたは炭素質材料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記基材(110)を機械加工する前に、前記一時的被覆(30)を乾燥、硬化、または焼結するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記充填剤(32)を乾燥、硬化、または焼結するステップと、
前記充填剤(32)を乾燥、硬化、または焼結した後、前記基材(110)の前記表面(112)上に前記被覆(150)を配設する前に、前記一時的被覆(30)を除去するステップとをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記1つまたは複数の溝を前記充填剤(32)で充填する前に、前記一時的被覆(30)を除去するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記一時的被覆(30)が、粉末被覆、静電被覆、浸漬被覆、スピン被覆、化学気相堆積および準備したテープの使用からなる群から選択される堆積技術を使用して堆積される、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−102731(P2012−102731A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−243086(P2011−243086)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】