説明

一酸化炭素変換触媒

パラジウムを含む触媒製品ならびに関連する調製方法および使用方法を開示する。開示されるのは、基質上に形成される第1の触媒層であって、セリアを含まない酸素貯蔵成分に含浸させたパラジウムと、耐火性金属酸化物に含浸させた白金とを含む第1の触媒層と、セリアを含有する酸素貯蔵成分に含浸させた白金およびロジウムを含む、第1の触媒層上に形成される第2の触媒層とを含む触媒製品である。触媒製品のパラジウム成分は、他の白金族金属成分と比較してより高い割合で存在する。触媒製品は、特に、リッチなエンジン運転条件下で、排ガス中の一酸化炭素の変換率の向上を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物を含有するガス流の処理に有用な触媒製品、ガス流を処理するために触媒製品を使用する方法、ならびに触媒製品を作製する方法に関する。より具体的には、本発明は、気化器付きのオートバイ用エンジンを含む内燃機関によって生成される排気の処理のための触媒製品および方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排ガスは、空気を汚染する炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物(NOx)等の汚染物質を含有する。未燃の炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物汚染物質の排出基準は、種々の政府によって設定されており、古い車両だけでなく新しい車両によっても満たされなければならない。そのような基準を満たすために、内燃機関の排ガスラインに三元触媒(TWC)を含む触媒コンバータが設置される場合がある。排ガス触媒の使用は、空気の質を著しく向上させることに寄与してきた。TWCは、最も一般的に使用される触媒であり、一酸化炭素(CO)の酸化、未燃炭化水素(HC)の酸化、およびNOxのN2への還元の3つの機能を提供する。同時にCOおよびHCを酸化し、かつNOx化合物を還元するために、TWCは、典型的には1つ以上の白金族金属(PGM)を用いる。TWCの最も一般的な触媒成分は、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、およびパラジウム(Pd)である。
【0003】
TWC触媒は、エンジンが化学量論的条件またはそれに近い条件で運転する場合に最適に作用する(空気/燃料比、λ=1)。しかしながら、実際の使用において、エンジンは、運転周期の間の様々な段階でλ=1のいずれかの側で運転しなければならない。例えば、加速中等のリッチな運転条件下では、排ガス組成は還元的であり、触媒表面上で酸化反応を行うことがより困難である。この理由から、TWCは、運転周期のリーン部分の間は酸素を貯蔵し、運転周期のリッチ部分の間は酸素を放出する成分を組み込むように開発されてきた。ほとんどの市販されるTWCにおいて、この成分はセリアベースである。残念ながら、貴金属触媒でセリアをドープした場合、例えば800℃以上の高温に曝露されると、セリアは表面積を損失する傾向があり、触媒の全体的な性能が低下するため、セリア−ジルコニアの混合酸化物を酸素貯蔵成分として使用するTWCが開発されてきた(混合酸化物は、セリア単独よりも表面積損失に対してより安定であるため)。TWC触媒は、通常、支持体、酸素貯蔵成分、およびPGMを含有するウォッシュコート組成物として配合される。そのような触媒は、化学量論的条件と比較してリーンおよびリッチの両方である特定の範囲の運転条件にわたって有効であるように設計される。
【0004】
TWC触媒中の白金族金属(例えば、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、およびイリジウム)は、典型的には、高表面積の耐火性金属酸化物支持体、例えば、高表面積アルミナコーティング、または酸素貯蔵成分上に配置される。支持体は、耐火性セラミックもしくは金属製ハニカム構造を含むモノリシック基質等の好適な担体または基質、または好適な耐火性材料の球等の耐火性粒子もしくは短い押出成形されたセグメントに担持される。TWC触媒基質は、ワイヤメッシュ、典型的には、小さなエンジンにおいて特に有用な金属製ワイヤメッシュであってもよい。
【0005】
アルミナ、バルクセリア、ジルコニア、αアルミナ、および他の材料等の耐火性金属酸化物は、触媒製品の触媒成分のための支持体として使用することができる。「γアルミナ」または「活性アルミナ」とも称されるアルミナ支持体材料は、典型的には、1グラム当たり60平方メートル(「m2/g」)を超える、しばしば約200m2/g以上のBET表面積を呈する。そのような活性アルミナは、通常、アルミナのγ相およびδ相の混合物であるが、相当量のη、κ、およびθアルミナ相も含有し得る。他の耐火性金属酸化物支持体の多くは、活性アルミナよりもはるかに少ないBET表面積を有するという欠点があるが、その欠点は、結果として得られる触媒の高い耐性によって相殺される傾向がある。上述のような酸素貯蔵成分は、TWCのPGM成分のための支持体としても使用することができる。
【0006】
運転中のエンジンにおいて、排ガスの温度は1000℃に達する可能性があり、そのような温度の上昇により、支持材料は、特に蒸気の存在下で、体積収縮を伴う相転移によって引き起こされる熱劣化を受け、それによって収縮した支持媒体内に金属媒体が遮蔽され、触媒の曝露表面が失われ、それに応じて触媒活性が低下する。ジルコニア、チタニア、アルカリ土類金属酸化物(バリア、カルシア、もしくはストロンチア等)または希土類金属酸化物(セリア、ランタナ、および2つ以上の希土類金属酸化物の混合物等)の材料を使用することによって、アルミナ支持体をそのような熱劣化に対して安定化させることができる。
【0007】
異なる雰囲気の実験室条件下で触媒を加速熟成に暴露することにより、実験室において自動車触媒の安定性を調べた。これらの試験プロトコルは、排気における高温およびリーン/リッチの摂動を含むエンジン内の運転条件を模倣する。そのような試験は、典型的には、水の存在下または非存在下での高温を含む。2種類の加速熟成プロトコルは、蒸気/空気(リーンな運転条件をシミュレートする酸化による熱水熟成)、または窒素、アルゴン、もしくは水素下での熟成(リッチな運転条件をシミュレートする不活性熟成)である。これらの両方の触媒熟成条件下で試験を行うことは、エンジン環境での実際の使用における触媒性能のより良好な再現性を提供するが、当該産業におけるほとんどの関心は、高温の蒸気/空気熟成条件で生き残る触媒を開発することに向けられている。高温下のリッチな熟成に対する触媒安定性に対応するための研究はほとんど行われていない。現在の触媒技術は、リッチな熟成条件下で、特に、蒸気/空気プロトコルおよび高温のリッチな熟成プロトコルの両方を順番に受けた場合に、著しい触媒失活を示す。
【0008】
気化器付きのオートバイ用エンジンにおいて、気化器による緩い制御の結果として、広範囲の空気対燃料比がもたらされることが多い。したがって、排出制御触媒は、この幅広い環境で機能することを要求され、リッチな熟成条件下ではCO変換活性を失うことが多い。よって、特にリッチなエンジン運転条件下で、CO変換性能の向上および熱水熟成後の安定性を伴うTWCを含有する触媒製品が必要とされている。本発明の触媒は、この必要性を満たす。リッチな条件下でのCOの変換は、酸化(CO+1/2O2=CO2)および水性ガスシフト(WGS)(CO+H2O=CO2+H2)の2つの反応によって達成されることが知られている。現在では、熱水熟成プロセスが酸化反応よりもWGS反応に対してより有害であり、これらの条件下で良好なPGM分散を維持することがWGS活性に必要不可欠であることが分かっている。本明細書に記載される本発明の触媒は、熱水熟成後にPGM分散の向上を示し、触媒性能の向上を提供する。
【発明の概要】
【0009】
本発明の実施形態は、触媒製品ならびに関連する調製方法および使用方法を対象とする。一態様において、第1の触媒層が担体基質上に形成され、第1の触媒層は、セリアを含まない酸素貯蔵成分に含浸させたパラジウムを含む。セリアを含まない酸素貯蔵成分は、ジルコニアと、セリア以外の希土類金属酸化物、例えば、プラセオジミア、ネオジミア、またはランタナとの複合体であってもよい。また、第1の触媒層は、耐火性金属酸化物支持体に含浸させた白金および/またはパラジウムを含んでもよい。第2の触媒層は、第1の触媒層上に形成され、第2の触媒層は、高含有量のセリウムを含むOSC支持体に含浸させた白金およびロジウムを含む。第2の触媒層は、パラジウムを含まず、耐火性金属酸化物を実質的に含まない。一実施形態において、触媒製品は、特にリッチな運転条件下で、既知のTWC触媒製品と比較して安定性およびCO変換性能の向上を示す。触媒製品の基質は、典型的にはハニカム構造であってもよい。触媒製品は、基質上に形成される任意選択的なエッチングコート層をさらに含んでもよく、エッチングコート層は、耐火性金属酸化物を含み、実質的に均一な表面を有する。
【0010】
本発明の別の態様において、触媒製品は、酸性ゾル中に耐火性金属酸化物を含むエッチングコート層を基質上に任意選択的に被覆し、実質的な表面を得るためにエッチングコート層を乾燥させ、エッチングコート層(存在する場合)または基質(エッチングコート層が存在しない場合)上にスラリを被覆することによって(スラリは、1)パラジウムに含浸させたセリアを含まない酸素貯蔵成分、および2)耐火性金属酸化物支持体に含浸させた白金を含む)エッチングコート層上に第1の触媒層を蒸着し、第1の触媒層を乾燥させることによって作製される。第1の触媒層中のパラジウムの一部を、耐火性金属酸化物支持体に含浸させてもよい。第1の触媒層のセリアを含まない酸素貯蔵成分は、ジルコニアと、セリア以外の希土類金属酸化物、例えば、プラセオジミア、ネオジミア、またはランタナとの複合体であってもよい。第2の触媒層は、第1の触媒層上にスラリを被覆することによって第1の触媒層上に蒸着され、スラリは、耐火性金属酸化物を実質的に含まないセリアOSCに含浸させた白金およびロジウムを含み、OSCは、高含有量のセリウムを含む。
【0011】
本発明の触媒製品は、運転条件におけるリーン/リッチの変動が、除去されなければならない排気汚染物質に大きな変化をもたらす、気化器付きのオートバイ用エンジン等の内燃機関によって生成される排気を処理するために特に有用である。具体的には、従来の触媒製品は、リッチな条件下でCO変換活性の急速な損失を受ける。本発明の触媒製品は、そのような運転条件下における新しい触媒の性能と比較して実質的に少ないCO変換率の低下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】WSCおよび酸化反応の触媒熟成によるCO変換への相対的寄与を示す棒グラフである。
【図2A】異なる量のセリアを含有するOSCについてリーンおよびリッチな熟成後の利用可能なPGM表面を比較する棒グラフである。
【図2B】異なる量のセリアを含有するOSCについてリーンおよびリッチな熟成後の利用可能なPGM表面を比較する棒グラフである。
【図3】リッチおよびリーンな運転条件下における本発明の触媒のCO変換効率のグラフである。
【図4】リッチおよびリーンな運転条件下における本発明の触媒のHC変換効率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、通常、三元変換触媒と称され、炭化水素および一酸化炭素の酸化ならびに窒素酸化物の還元を同時に触媒する能力を有する触媒製品、触媒製品の成分、触媒製品の使用方法、および触媒製品の作製方法に関する。本発明の実施形態による触媒製品は、少なくとも2つのウォッシュコート層を含む。基質上に2つの触媒含有層を提供することにより、リッチな運転条件下で実質的に性能の向上が達成されることが分かっており、第1の触媒層は、触媒製品中に白金およびロジウムと比較して高レベルのパラジウムを含む。第1の触媒層において、パラジウム成分は、セリアを含まない酸素貯蔵成分上に支持される。また、パラジウムの一部が、耐火性金属酸化物上に支持されてもよい。第1の触媒層の白金成分は、耐火性金属酸化物上に支持されるが、白金成分の一部が、セリアを含まない酸素貯蔵成分上に支持されてもよい。第2の触媒層は、ジルコニアおよびアルミナ等の耐火性金属酸化物を実質的に含まず、セリア以外の希土類酸化物を実質的に含まず、高含有量のセリウムを有する酸素貯蔵成分上に支持された白金およびロジウムを含む。
【0014】
本明細書で使用される場合、酸素貯蔵成分に関連する「高含有量のセリウム」という用語は、OSCが、約45質量%〜約100質量%、例えば、約60質量%〜約100質量%、約80質量%〜100質量%、約90質量%〜約100質量%、または約100質量%の量でセリア(CeO2)を含有することを意味する。セリアを含有するOSCは、セリア以外の希土類酸化物または耐火性金属酸化物等、例えば、ジルコニアもしくはアルミナ等の追加成分を含有してもよい。そのような追加成分は、典型的にはセリアを含有するOSCの約55質量%未満の量で存在するが、通常はOSCの約5〜40質量%以下で存在するべきである。本発明の一態様において、第2の触媒層中の白金およびロジウムのためのセリアを含有する支持体は、純粋なセリアであり、バルクセリアとも称される。さらなる態様において、第2の触媒層中の白金およびロジウムのための支持体は、純粋なセリア、およびZrをドープしたアルミナであり、第2の触媒層中のアルミナの量は、第2の触媒層の約15質量%以下である。
【0015】
本明細書で使用される場合、「セリアを含まない酸素貯蔵成分」または「セリアを含まないOSC」という用語は、1%未満のセリア、好ましくは0.5%未満のセリア、最も好ましくは本質的に0%のセリアを含有するOSCを指す。セリアを含まないOSCの例として、ジルコニア−プラセオジミア、ジルコニア−ネオジミア、ジルコニア−イットリア、およびジルコニア−ランタナが挙げられる。
【0016】
本明細書で使用される場合、OSCに関連する「耐火性金属酸化物を実質的に含まない」という用語およびその均等物は、従来OSCを安定化させるために使用される耐火性金属酸化物が、約50質量%以下、例えば、約20%〜50%、約5%〜30%、約0%〜10%、約0%〜5%の量でOSC中に存在するか、または本質的に存在しないことを意味する。
【0017】
本明細書で使用される場合、OSCに関連する「セリア以外の希土類酸化物を実質的に含まない」という用語またはその均等物は、セリアがOSC中に存在する希土類酸化物の大半を占めることを意味する。他の希土類酸化物が存在する場合、それらは約10質量%、例えば、約5質量%〜10質量%、約5質量%以下の量であるか、または本質的に存在しない。セリア以外の希土類酸化物は、ランタナ、プラセオジミア、およびネオジミアを含み、それらの合計は、触媒層の約10質量%を超えない。
【0018】
本明細書で使用される場合、触媒製品または触媒製品の層に関連する「高パラジウム」という用語は、物品または層中のパラジウムの質量含有量が、物品または層中のパラジウム以外のPGM成分の質量含有量よりも高いことを意味する。好ましくは、パラジウム含有量は、パラジウム以外のPGM成分の各々よりも高い。より好ましくは、パラジウム含有量は、全てのパラジウム以外のPGM成分の合計含有量よりも高い。一態様において、パラジウム含有量は、触媒層または触媒製品中のパラジウム以外のPGM成分の合計含有量よりも3〜10倍高くてもよい。典型的には、触媒製品の合計PGM含有量は、30〜100g/ft3、50〜80g/ft3、または約75g/ft3である。
【0019】
本明細書で使用される場合、触媒製品の層または触媒製品の組成に関連する「パラジウムを含まない」という用語は、層または組成中にパラジウムが添加されないことを意味する。しかしながら、層または組成中に含まれる他の成分からの汚染物質として、層または組成中に微量の残留パラジウムが存在してもよい。そのような微量は、「パラジウムを含まない」という用語に含まれてもよく、典型的には、層または組成の0.5%以下、好ましくは0.5%未満、最も好ましくは0質量%を構成する。
【0020】
本明細書で使用される場合、触媒製品の層に関連する「実質的に均一」という用語は、層の表面が、全表面積の少なくとも約90%にわたって欠陥がないことを意味する。実質的に均一な表面は、層の全表面積の約10%以下の層表面のひび割れ、亀裂、または剥離を呈する。
【0021】
本明細書で使用される場合、触媒層に関連する「支持体」という用語は、会合、分散、含浸、または他の好適な方法により、白金族金属、安定剤、促進剤、結合剤等を受容する材料を指す。支持体の例として、耐火性金属酸化物、高表面積の耐火性金属酸化物、および酸素貯蔵成分を含有する材料が挙げられるが、これらに限定されない。高表面積の耐火性金属酸化物支持体は、アルミナ、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−セリア−ジルコニア、ランタナ−アルミナ、ランタナ−ジルコニア−アルミナ、バリア−アルミナ、バリアランタナ−アルミナ、バリアランタナ−ネオジミアアルミナ、およびアルミナ−セリアからなる群から選択される活性化合物を含む。酸素貯蔵成分を含有する材料の例として、セリア−ジルコニア、セリア−ジルコニア−ランタナ、ジルコニア−プラセオジミア、イットリア−ジルコニア、ジルコニア−ネオジニア、およびジルコニア−ランタナが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、支持体は、100%(すなわち、99%を超える純度)の公称の希土類金属含有量を有するバルクセリア等のバルク希土類金属酸化物を含む。
【0022】
本明細書で使用される場合、「酸素貯蔵成分」(OSC)という用語は、多価状態を有し、酸化条件下で酸素もしくは亜酸化窒素等の酸化剤と、または還元条件下で一酸化炭素(CO)もしくは水素等の還元剤と活発に反応することができる材料を指す。酸素貯蔵成分の例として、セリアおよびプラセオジミアが挙げられる。OSCの層への送達は、例えば、混合酸化物の使用によって達成することができる。例えば、セリアは、セリウムおよびジルコニウムの混合酸化物、セリウム、ジルコニウム、およびネオジムの混合酸化物、ならびに/またはセリウム、ジルコニウム、ランタン、およびプラセオジムの混合酸化物によって送達することができる。別の例において、プラセオジミアは、プラセオジムおよびジルコニウムの混合酸化物、ならびに/またはプラセオジム、セリウム、ランタン、イットリウム、ジルコニウム、およびネオジムの混合酸化物によって送達することができる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「含浸させる」という用語は、白金族金属を含有する溶液が支持体の細孔に入れられることを意味する。具体的な実施形態において、白金族金属の含浸は、希釈した白金族金属の体積が支持体本体の細孔容積にほぼ等しい初期湿潤によって達成される。通常、初期湿潤含浸は、支持体の細孔系全体にわたって前駆体溶液の実質的に均一な分布をもたらす。
【0024】
本明細書で使用される場合、白金族金属と関連する「成分」という用語は、それを焼成または使用すると、分解するか、またはそうでなければ触媒的に活性な形態の白金族金属、通常は金属または金属酸化物に変換する、任意の化合物、錯体等を意味する。耐火性金属酸化物支持体の粒子に金属成分を含浸させるかまたは蒸着するために使用される液体媒体が、金属もしくはその化合物もしくはその錯体、または触媒組成中に存在し得る他の成分と有害な反応を起こさず、加熱および/または真空印加した時の揮発または分解によって金属成分から除去することができる限り、水溶性化合物または水分散性化合物または金属成分の錯体が使用されてもよい。いくつかの場合において、触媒を使用して、運転中に遭遇する高温に供するまで、液体の完全な除去は起こらない可能性がある。通常、経済および環境的な観点の両方から、白金族金属の可溶性化合物または錯体の水溶液が用いられる。例えば、好適な化合物は、硝酸パラジウムを含む。焼成ステップの間、または少なくとも複合体の使用初期段階の間に、そのような化合物は、触媒的に活性な形態の金属またはその化合物に変換する。
【0025】
第1の態様において、本発明の触媒製品は、好適な基質上に第1の触媒層を含み、該触媒層は、高レベルのパラジウムを含む、高パラジウム物品である。触媒製品中に存在する全てのパラジウム成分は、第1の触媒層に含有される。第1の触媒層中のパラジウム成分の一部は、耐火性金属酸化物支持体、好ましくは高表面積の耐火性金属酸化物支持体上に支持されてもよい。第1の触媒層中のパラジウム成分の残りは、セリアを含まない酸素貯蔵成分、好ましくはプラセオジミア、ランタナ、ネオジミア、イットリア、またはそれらの混合物をドープしたジルコニア上に支持される。代替として、全てのパラジウムがセリアを含まない酸素貯蔵成分上に支持されてもよい。第1の触媒層は、アルミナを含有する支持体であってもよい、耐火性金属酸化物上に支持された白金成分をさらに含んでもよい。第1の触媒層は、セリアを含有する酸素貯蔵成分上に支持されたロジウム成分および白金成分を含む第2の触媒層で被覆される。第2の触媒層は、パラジウムを含まず、またセリア以外の酸素貯蔵成分を実質的に含まない。
【0026】
さらなる態様において、第1の触媒層のOSCは、プラセオジミア−ジルコニア複合体、イットリア−ジルコニア複合体、ネオジミア−ジルコニア複合体、またはランタナ−ジルコニア複合体であり、複合体の希土類成分は、約1〜40質量%を占める。第2の触媒層において、複合体は、バルクセリア、または少量のジルコニア、ランタナ、ネオジミア、またはプラセオジミアを含む複合体中のセリアであってもよい。複合体は、共沈殿、ゾルゲル、および希土類金属酸化物のジルコニアとの混合を含む、当該技術分野で既知の方法を用いて調製することができる。そのような複合体中の希土類金属酸化物の存在は、典型的には、ジルコニア成分に熱安定性の向上を付与する。
【0027】
本発明の別の態様は、触媒製品のパラジウム成分が、白金成分およびロジウム成分のいずれかまたは両方よりも多い量の質量で存在することを提供する。白金対パラジウム対ロジウム(Pt/Pd/Rh)の質量比は、それぞれ、0.5〜5/2〜80/0.1〜5、1〜3/5〜40/0.25〜2、または約2/9/1であってもよい。つまり、特定の実施形態において、触媒製品のパラジウム含有量は、白金含有量の約4〜5倍であり、ロジウム含有量の約8〜10倍である。
【0028】
本発明の他の態様は、第2の触媒層が高含有量のセリウムを含むセリアOSCを含むことを提供する。白金およびロジウム成分は、セリアOSC上に支持される。1つ以上の実施形態において、セリアOSCは、バルクセリア(本質的に100%のセリウムを提供する)を含む。代替として、高セリウム含有量のOSCは、約55〜65%のセリア、約2〜4%のランタナ、約6〜8%のプラセオジミア、および約25〜35%のジルコニアか、または約40〜50%のセリア、約4〜5%のネオジミア、および約45〜50%のジルコニアを含んでもよい。第2の触媒層は、上述のように、パラジウムを含まず、セリア以外のOSCを実質的に含まず、耐火性金属酸化物を実質的に含まない。ロジウムおよび白金成分は、完全にセリアOSC上に支持される。
【0029】
本発明の他の態様は、炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物を含むガスを処理するための方法を提供し、本方法は、排気流中の炭化水素、一酸化炭素、およびNOxが還元されるように、ガソリンエンジンの排気流中のガスを基質上の触媒材料に接触させることを含み、触媒材料は、第1の触媒層の下層に任意選択的なエッチングコート層を有するかまたは有さない、本明細書に記載される2つの触媒層を含む。具体的には、排気流中のCOは、第2の触媒層が低含有量のセリウム(典型的にはセリア−耐火性金属酸化物複合体として存在する)を有し、白金およびロジウムのための支持体として耐火性金属酸化物を含む触媒製品と比較して、リッチな熟成後に本発明の触媒製品によって実質的に還元される。
【0030】
本発明の一態様は、触媒製品であって、基質上に触媒材料を含み、触媒材料は、本明細書に記載される2つの触媒層を含む触媒製品を提供し、触媒製品は、基質と第1の触媒層との間にエッチングコート層をさらに含む。エッチングコート層は、高表面積の耐火性金属酸化物を含み、好ましくは表面が実質的に均一であるように調製される。エッチングコート上の実質的に均一な表面は、第1の触媒層の基質への結合の向上を提供し、触媒製品が小さなエンジン等の高振動環境において使用される場合に特に有利である。エッチングコートの迅速かつ完全な乾燥は、実質的に均一な表面の生成を促進し、移動する空気下で層を低温乾燥させることによって達成することができる。また、エッチングコートの完全な乾燥は、第1の触媒層内におけるパラジウム成分の均等な分布にも寄与する。
【0031】
一実施形態において、本発明の触媒製品を使用して、オートバイ用エンジン等の気化器付ガソリンエンジンからのCO排出物の還元における著しい改善を得ることができる。また、炭化水素変換率の向上も達成され得る。NOx変換性能は、典型的には既知の触媒製品と同等であるが、オートバイの用途において、COの還元に比べてNOxの還元は関心を持たれていない。本発明の触媒製品は、小さな気化器付エンジンにおいて一般的に起こるようなリッチなエンジン運転条件下でCO変換性能の実質的な向上を示す。
【0032】
具体的な態様において、セリアを含まない酸素貯蔵成分は、典型的には第1の触媒層の成分の10〜60質量%、30〜50質量%、または40〜50質量%の量で第1の触媒層中に存在する。第2の触媒層中のセリア酸素貯蔵成分は、典型的には第2の触媒層の成分の20〜100質量%、40〜100質量%、60〜100質量%、または80〜100質量%の量で存在する。
【0033】
1つ以上の実施形態は、PGM成分が、約10〜150g/ft3、約20〜100g/ft3、または約40〜80g/ft3の量で存在することを提供する。特定の実施形態において、PGM成分は、約45g/ft3、60g/ft3、または75g/ft3の量で触媒製品中に存在する。触媒製品中の各PGMの含有量、ひいてはそれらの相対的な質量比は、所望の合計PGM含有量を達成するために異なり得ることを理解されたい。通常、コストを削減するために、パラジウムが白金およびロジウムよりも多い量で存在することが好ましいが、これは触媒製品の機能のために必要ではない。典型的には、白金は1〜90g/ft3で存在し、パラジウムは1〜90g/ft3で存在し、ロジウムは1〜30g/ft3で存在する。特定の実施形態において、白金は2〜20g/ft3で存在し、パラジウムは20〜70g/ft3で存在し、ロジウムは1〜10g/ft3で存在する。さらに特定の実施形態において、PGMの合計は、45g/ft3、60g/ft3、または75g/ft3であり、任意選択的に2/9/1のPt/Pd/Rh比である。
【0034】
具体的な実施形態は、基質上に2つの触媒層を提供する。第1の触媒層は、基質上に被覆された高パラジウム層であり、プラセオジミアをドープしたジルコニアおよびアルミナに含浸させたパラジウム、ならびにアルミナに含浸させた白金を含む。第1の触媒層は、基質上に被覆され、焼成される。第2の触媒層は、第1の触媒層上に被覆され、バルクセリア−OSCに含浸させたロジウムおよび白金を含む。第2の触媒層も焼成される。
【0035】
第2の具体的な実施形態は、基質上に3つの層を提供する。基質上に被覆された第1の層は、γアルミナ等の耐火性金属酸化物を含むエッチングコート層である。エッチングコート層は、実質的に均一であるように、すなわち、ひび割れ、亀裂、および剥離等の欠点を実質的に含まないように、基質上に被覆され、乾燥させられる。第1の触媒層は、セリアを含まないOSC支持体、例えば、プラセオジミアをドープしたジルコニア、ならびに高表面積の耐火性金属酸化物、例えば、パラジウムおよびパラジウム/白金のそれぞれに含浸させたγアルミナ等を含む。第1の触媒層上に被覆された第2の触媒層は、白金および/またはロジウムを含むが、パラジウムは含有しない。第2の触媒層は、ジルコニアおよびアルミナ等の耐火性金属酸化物を実質的に含まず、ランタナ、プラセオジミア、およびネオジミア等のセリア以外のOSCを実質的に含まないセリアOSC支持体に含浸させたロジウムおよび白金を含む。白金/パラジウム/ロジウムの質量比は、典型的には0.5〜5/2〜80/0.1〜5、1〜3/5〜40/0.25〜2、または2/9/1である。
【0036】
別の態様において、炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物を含むガスを処理するための方法が提供され、本方法は、ガソリンエンジンの排気流中のガスを基質上の触媒材料に接触させることを含み、触媒材料は、本明細書に記載されるような2つの触媒層を含む。任意選択的に、触媒材料は、第1の触媒層の蒸着前に基質上に被覆される、本明細書に記載されるようなエッチングコート層をさらに含んでもよい。さらなる態様において、触媒材料の第1の触媒層は、高表面積の耐火性金属酸化物を含むエッチングコート上に被覆され、該エッチングコートの表面は、実質的に均一である。本発明によれば、この方法は、リッチなエンジン運転条件下で、第2の触媒層のセリウム含有量がより少なく、相当量の耐火性金属酸化物および/またはセリア以外のOSCが存在する触媒材料と比較して、排ガスから有意により多くのCOを除去するのに有効である。また、炭化水素の還元における改善は、本発明の触媒材料を使用したリッチなエンジン運転条件下でも達成することができる。
【0037】
さらなる態様は、耐火性金属酸化物、好ましくは高表面積の耐火性金属酸化物を基質上に被覆することによって、任意選択的に基質上にエッチングコートを形成することを含む、触媒製品を作製する方法を提供する。被覆は、手動浸漬またはエアブラシ等の当該技術分野において既知である方法のうちのいずれかによって達成することができる。実質的に均一なエッチングコートの表面が形成されるように、エッチングコートは、その後、好ましくは温度および空気流を選択して、熱および空気を用いて乾燥させる。乾燥温度は、約60〜140℃の範囲であってもよい。従来の送風機によって提供され得るように、エッチングコートを乾燥する間、基質全体にわたって弱〜中程度の空気流を維持する。次いで、典型的には490〜550℃で1〜2時間、エッチングコート層を焼成する。第1の触媒層を、エッチングコート上に被覆する。
【0038】
第1の触媒層の被覆は、エッチングコート上または直接基質上に、セリアを含まない希土類をドープしたジルコニア支持体に含浸させたパラジウムおよび耐火性金属酸化物支持体に含浸させた白金を含む高パラジウム触媒材料を蒸着することによって達成される。第1の触媒層中のOSCの希土類成分は、複合体の1〜40質量%であってもよい。次いで、第1の触媒層を乾燥させ、典型的には490〜550℃で1〜2時間焼成する。第2の触媒層を第1の触媒層上に被覆する。第2の触媒層は、セリアOSC上に支持された白金およびロジウムを含み、セリアOSC支持体は、高含有量のセリウムを有し、耐火性金属酸化物を実質的に含まず、セリア以外のOSCを実質的に含まない。第2の触媒層は、パラジウムを含まない。第2の触媒層中のセリウムを含有するOSCは、例えば、バルクセリア(100%CeO2)であってもよいか、または材料のセリア含有量が、少なくとも約40質量%、少なくとも約45質量%、または少なくとも約60質量%である限り、耐火性金属酸化物および/もしくはセリア以外のOSCを含むセリアの複合体であってもよい。触媒製品のPGM含有量の質量比は、典型的には約0.5〜5/5〜15/0.1〜5、1〜3/5〜40/0.25〜2または約2/9/1(Pt/Pd/Rh)である。
【0039】
本発明による触媒製品の成分の詳細を以下に提供する。
【0040】
基質
1つ以上の実施形態によれば、基質は、典型的にはTWC触媒を調製するために使用される材料のうちのいずれであってもよく、好ましくは金属またはセラミック構造を含む。任意の好適な基質、例えば、そこを通る液体流に経路が開放されるように、基質の上流側表面および下流側表面からそこを通って延在する複数の細い平行なガス流経路を有する種類のモノリシック基質等が用いられてもよい。経路は、それらの液体流入口から液体流出口まで本質的に直線的な経路であり、経路を通って流れるガスが触媒材料に接触するように触媒材料が「ウォッシュコート」として被覆された壁によって画定される。モノリシック基質の流路は、薄い壁のチャネルであり、台形、長方形、正方形、正弦波形、六角形、楕円形、円形等の任意の好適な断面形状およびサイズであってもよい。そのような構造は、断面1平方インチ当たり約60〜約600またはそれ以上のガス流入開口部(すなわち、「セル」)を含んでもよい。
【0041】
セラミック基質は、例えば、コーディエライト、コーディエライト−αアルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポージュメン、アルミナ−シリカマグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、αアルミナ、アルミノケイ酸塩等の任意の好適な耐火性材料で作製されてもよい。
【0042】
また、本発明の層状触媒複合体に有用な基質は、本質的に金属であってもよく、1つ以上の金属または金属合金からなってもよい。金属基質は、波形シート、金属板、ワイヤメッシュ、またはモノリシック形態等の種々の形状で用いられてもよい。好ましい金属支持体は、チタンおよびステンレススチール、ならびに鉄が実質的なまたは主な成分である他の合金等の耐熱金属および金属合金を含む。そのような合金は、ニッケル、クロム、および/またはアルミニウムのうちの1つ以上を含有してもよく、これらの金属の合計量は、合金の少なくとも15質量%、例えば、クロムの10〜25質量%、アルミニウムの3〜8質量%、ニッケルの最大20質量%を有利に占めてもよい。また、合金は、マンガン、銅、バナジウム、チタン等の1つ以上の他の金属を少量または微量含有してもよい。基質の表面上に酸化物層を形成することによって合金の耐食性を向上させるために、例えば1000℃以上の高温で金属基質の表面を酸化させてもよい。そのような高温によって誘導される酸化により、耐火性金属酸化物支持体および触媒的に促進する金属成分の基質への付着を強化することができる。
【0043】
触媒材料
本発明の触媒材料は、2つの層に形成される。各触媒層の組成物は、PGM成分のスラリとして調製され、このスラリが、基質上に層を形成するために使用される。材料は、従来技術において周知のプロセスによって容易に調製することができる。代表的なプロセスを後に記載する。本明細書で使用される場合、「ウォッシュコート」という用語は、処理されるガス流が経路を通ることができるように十分に多孔質であるハニカム型基質部材またはワイヤメッシュ等の、触媒または基質担体材料に適用される他の材料の薄い接着性被覆という、当該技術分野におけるその通常の意味を有する。
【0044】
特定のウォッシュコートの層の場合、γアルミナ等の高表面積の耐火性金属酸化物またはプラセオジミア−ジルコニア等のOSCの微粉化粒子を、適切なビヒクル中、例えば水中でスラリ化する。次いで、金属酸化物またはOSCの所望の負荷量、例えば、浸漬当たり約0.5〜約2.5g/in3が基質上に存在するように、そのようなスラリ中に1回以上基質を浸漬してもよいか、または基質にスラリを被覆してもよい。白金族金属(例えば、パラジウム、ロジウム、白金、および/またはそれらの組み合わせ)、安定剤、および/または促進剤等の成分を組み込むために、そのような成分は、水溶性もしくは水分散性の化合物または錯体の混合物としてスラリ中に組み込まれてもよい。その後、例えば、500〜600℃で約1〜約3時間加熱することによって基質を焼成する。典型的には、PGM成分は、耐火性金属酸化物支持体上で成分の分散を達成するために化合物または錯体の形態で用いられる。本発明の触媒製品の任意の触媒層を調製する好適な方法は、所望の白金族金属成分の溶液と、後に水と合わせて被覆可能なスラリを形成するための湿潤固体を形成するように、実質的に全ての溶液を吸収するように十分乾燥した少なくとも1つの支持体、例えば、微粉化した高表面積の耐火性金属酸化物支持体、例えば、γアルミナまたはジルコニアを被覆したアルミナ等との混合物を調製することである。1つ以上の実施形態において、スラリは酸性であり、例えば、約2〜約7未満のpHを有する。スラリのpHは、十分な量の無機酸または有機酸をスラリに添加することによって低下させることができる。酸と原材料との適合性が懸念される場合は、両方の組み合わせが使用されてもよい。無機酸は、硝酸を含むがこれに限定されない。有機酸は、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、酒石酸、クエン酸等を含むが、これらに限定されない。その後、必要に応じて、酸素貯蔵成分(例えば、セリウム−ジルコニウム複合体)、安定剤(例えば、酢酸バリウム)、および促進剤(例えば、硝酸ランタン)の水溶性または水分散性の化合物をスラリに添加してもよい。また、スラリの添加前に、同様の様式で、酸素貯蔵成分、例えば、セリア−ジルコニアまたはプラセオジミアをドープしたジルコニアに白金族金属成分を含浸させてもよい。
【0045】
一実施形態において、その後、支持体の粒子径を減少させるためにスラリが粉砕される。粉砕は、ボールミルまたは他の同様の機器において達成することができ、スラリの固体含有量は、例えば、約20〜60質量%、より具体的には約30〜40質量%であってもよい。
【0046】
追加の層は、第1の触媒層の蒸着について上述したのと同様の様式で調製し、第1の触媒層上に蒸着することができる。
【0047】
本発明のいくつかの例示的な実施形態を記載する前に、本発明は、以下の説明に記載される構造またはプロセスの詳細に限定されるものではないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、種々の方式で実践することができる。以下の非限定的な実施例は、本発明の特定の実施形態を例示することを意図する。
【0048】
実施例1:熟成条件が水性ガスシフト反応に与える影響
熱水熟成が水性ガスシフト反応(WGS)に与える影響を次の通り評価した:触媒(基準触媒A、40g/ft3、2/4/1)を金属基質(直径1インチおよび長さ2インチ、300cpsi)にウォッシュコートし、次いで、実験室の反応器内で70,000 1/時間、450℃で試験を行った。ガスの組成は、CO約5.4%、CO2約10%、C36+C38(比率2)およそ360ppm、およびNOおよそ500ppmであった。空気流およびN2流は、λ=0.94に制御した。湿潤条件下(H2O6%)および供給物中にH2Oを含まない乾燥条件下の両方で試験を行った。
【0049】
その結果を図1に示す:酸化反応の低減に起因する熟成後に、CO変換率にごくわずかな低下が見られたことを示している。一方、WGSの低減に起因するCO変換率の低下は実質的により大きく、60%超から40%未満の変換率まで低下した。我々は、リッチな条件下での効率的なCO変換のためにはWGSが重要であり、WGS反応の活性を維持することが、熟成後の触媒安定性および耐久性の向上に寄与すると結論付けた。
【0050】
実施例2:セリウム含有量が利用可能なPGM表面に与える影響
セリア以外の金属酸化物成分および耐火性金属酸化物成分に対して異なる量のセリアを含有するセリアOSCを、0.5%白金、0.25%ロジウム、および0.5%白金/0.25%ロジウムの各々に含浸させた。OSC支持体の組成を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
PGMの利用可能な金属表面を評価するために、COの化学吸着後に拡散反射FT−IR(DRIFTS)を用いた。最初に、MCT検出器を備えたVarian FTS−7000分光計内のPike拡散反射チャンバのサンプルカップ内に触媒サンプルを負荷し、アルゴン(流量:40cc/分)中7%のH2で、1時間400℃で還元した。アルゴン中、30℃まで冷却した後、スペクトル分解能2cm-1でDRIFTスペクトルを収集した。その後、アルゴン中1%COを40cc/分でサンプルチャンバ内に導入し、平衡に到達するまでスペクトルを収集した。COを導入する前のスペクトルに対するCO吸着後のスペクトルの比率を用いて、差スペクトルを得た。PGM金属表面上で化学吸着されたCOに対応するスペクトルのバンドを積分し、バンド強度を利用可能なPGM金属表面の尺度として捉えた。
【0053】
その結果を図2Aおよび図2Bに示す:45.6%〜100%のセリアを含有する触媒では、リッチな熟成後に利用可能なPGM表面が実質的により大きいことを示している。また、バルクセリア支持体は、セリア複合体である支持体またはセリアを含まない支持体と比較して、リーンな熟成後に利用可能なPGM表面が実質的により大きかった。
【0054】
実施例3:熟成させた触媒の性能試験
触媒の調製―円筒形の金属製ハニカム基質を担体として使用した。担体は、直径1.57インチ、長さ3.54インチ、および全容積6.9立方インチを有していた。本発明による3つの触媒と、対照として使用するための1つの触媒を調製した。本発明の触媒の合計貴金属含有量は、45g/ft3、60g/ft3、および75g/ft3であった。対照触媒は、100g/ft3の合計貴金属含有量を有していた。貴金属成分は、各触媒中、それぞれ2/9/1の比の白金、パラジウム、およびロジウムからなっていた。金属担体を930℃で6時間前処理して、表面上にアルミナの薄層を形成した。
【0055】
水溶液の形態の第1の触媒層を担体の表面に塗布した。75g/ft3の触媒の第1の触媒層に使用したスラリは、約40%の固体含有量の、アルミナ228g、Prをドープしたジルコニア228g、水酸化バリウム30g、硝酸Pd溶液としてアルミナおよびPrをドープしたジルコニアに含浸させたPd12.4g、ならびに硝酸Pt溶液として含浸させたPt0.27gを含有する水溶液からなっていた。残りの2つの本発明の触媒のためのスラリは、所望の触媒の比率および負荷量を得るように調節した。対照触媒の第1の触媒層のためのスラリは、アルミナ226g、Prをドープしたジルコニア226g、硝酸Pd溶液としてアルミナおよびPrをドープしたジルコニアに含浸させたPd16.34g、ならびに硝酸Pt溶液として含浸させたPt0.36gからなっていた。次いで、被覆した担体を550℃で1時間焼成し、約1.64g/in3で乾燥ウォッシュコートを得た。
【0056】
次いで、水溶液の形態である上層(すなわち、第2の触媒層)を、既に第1の触媒層で被覆された担体の表面に塗布した。75g/ft3の触媒(触媒3)のトップコートに使用した水性スラリは、酸素貯蔵成分(バルクセリア)418gおよびZrをドープしたアルミナ66g中に遊星運動で混合することにより、硝酸白金溶液として含浸させた白金2.87gおよび硝酸ロジウム溶液として含浸させたロジウム1.59gを含有していた。残りの2つの本発明の触媒のためのスラリは、所望の触媒の比率および負荷量を得るように調節した(触媒1:45g/ft3、触媒2:60g/ft3)。対照触媒(触媒100g/ft3)の第2の触媒層のためのスラリは、Zrをドープしたアルミナ208g、酸素貯蔵成分(粉末を含有するCe−Zr−Nd)283g、硝酸Pt溶液としてZr−ジルコニウムをドープしたアルミナおよび酸素貯蔵成分に含浸させたPt3.28g、ならびに硝酸ロジウム溶液としてZrをドープしたアルミナおよび酸素貯蔵成分に含浸させたRh1.82gからなっていた。次いで、得られた担体を550℃で1時間焼成し、約1.33g/in3で乾燥ウォッシュコートを得た。
【0057】
性能試験
上述の実験室の反応器で、以下のガス組成で、サンプルを40,000空間速度で評価した:COおよそ0.5〜5.6%、CO2およそ10%、HC(C1)およそ1350ppm(C36/C38=2)、NOおよそ400ppm、H2Oおよそ6〜7%。リッチ(λおよそ0.93)およびリーン(λおよそ1.04)な条件を満たすようにCO/O2でλを変化させた。空気中、10%のH2Oで、蒸気熟成を950℃で4時間行った。
【0058】
その結果を図3および図4に示す。第2の触媒層にセリア/ジルコニア複合体酸化物ならびに白金およびロジウムのためのジルコニアで被覆されたアルミナ支持体を有する対照触媒と比較して、第2の触媒層に100%セリアOSC支持体を含有する触媒は、λ<1(COの排出が典型的に増加する)で著しく向上したCO変換率を提供した。本発明の触媒を使用すると、全体的な炭化水素の変換率がλ<1で同様に向上した。COおよびTHCの両方で、PGM負荷量を増加させることによって変換効率が増加した。本発明の触媒に関するNOxの変換率(データは図示せず)は、λスイープ全体を通して対照触媒と等しく、λ<1で約100%の変換率が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関において使用するための触媒製品であって、
基質上に形成され、かつセリアを含まない酸素貯蔵成分に含浸したパラジウムと、耐火性金属酸化物に含浸した白金と、を含む、第1の触媒層と、
前記第1の触媒層上に形成され、かつパラジウムを含まず、セリアを含有する酸素貯蔵成分に含浸した白金およびロジウムを含み、前記セリアを含有する酸素貯蔵成分は、耐火性金属酸化物を実質的に含まず、セリア以外の酸素貯蔵成分を実質的に含まない、第2の触媒層と、を含み、
前記内燃機関からの排ガス中の一酸化炭素を減少させるのに有効である触媒製品。
【請求項2】
前記第1の触媒層中の前記パラジウムがジルコニア−プラセオジミアに含浸され、前記第1の触媒層中の前記白金がアルミナに含浸されるか、または前記第1の触媒層中の前記パラジウムがジルコニア−プラセオジミアに含浸され、前記第1の触媒層の白金およびパラジウムがアルミナに含浸される、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記第2の触媒層の前記酸素貯蔵成分は、約40%〜約100%のセリアを含有する、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
合計20〜100g/ft3の白金族金属または合計40〜80g/ft3の白金族金属を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
1〜90g/ft3の白金、1〜90g/ft3のパラジウム、および1〜30g/ft3のロジウムを含む、請求項4に記載の物品。
【請求項6】
それぞれ、0.5〜5/2〜80/0.1〜5の白金/パラジウム/ロジウムの質量比、またはそれぞれ、1〜3/5〜40/0.25〜2の白金/パラジウム/ロジウムの質量比を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物を含むエンジン排気を処理する方法であって、
前記排気を、基質上に被覆され、かつセリアを含まない酸素貯蔵成分に含浸したパラジウムと、耐火性金属酸化物に含浸した白金と、を含む第1の触媒層と、
前記第1の触媒層上に形成され、かつパラジウムを含まず、セリアを含有する酸素貯蔵成分に含浸した白金およびロジウムを含み、前記セリアを含有する酸素貯蔵成分は、耐火性金属酸化物を実質的に含まず、セリア以外の酸素貯蔵成分を実質的に含まない、第2の触媒層と、を含む触媒製品に接触させる工程を含み、
前記排気中の一酸化炭素を減少させるのに有効である、エンジン排気の処理方法。
【請求項8】
前記排気を、a)前記第1の触媒層中のプラセオジミアをドープしたジルコニアに含浸したパラジウムおよびアルミナに含浸した白金、ならびにb)前記第2の層中のバルクセリアに含浸した白金およびロジウムを含む触媒製品に接触させる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
白金/パラジウム/ロジウムの質量比は、それぞれ、0.5〜5/2〜80/0.1〜5である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記排気を、合計20〜100g/ft3の白金族金属を含む触媒製品に接触させる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記排気を、1〜90g/ft3の白金、1〜90g/ft3のパラジウム、および1〜30g/ft3のロジウムを含む触媒製品に接触させる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
触媒製品を製造する方法であって、
基質上に、セリアを含まない酸素貯蔵成分に含浸したパラジウムと、耐火性金属酸化物に含浸した白金とを含むスラリを施与することによって、前記基質上に第1の層を形成する工程と、
前記第1の層を乾燥させる工程と、
前記第1の層上にスラリを施与させることによって前記第1の層上にパラジウムを含まない第2の層を形成する工程と、
前記第2の層を乾燥させること工程と、
を含み、
前記スラリは、セリアを含有する酸素貯蔵成分に含浸した白金およびロジウムを含み、前記セリアを含有する酸素貯蔵成分は、耐火性金属酸化物を実質的に含まず、セリア以外の酸素貯蔵成分を実質的に含まない、触媒製品の製造方法
【請求項13】
合計20〜100g/ft3の白金族金属が、前記触媒製品上に形成される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1〜90g/ft3の白金、1〜90g/ft3のパラジウム、および1〜30g/ft3のロジウムが、前記触媒製品上に形成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
白金、パラジウム、およびロジウムは、それぞれ、0.5〜5/2〜80/0.1〜5の質量比で前記触媒製品上に施与される、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−521121(P2013−521121A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556253(P2012−556253)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2011/027120
【国際公開番号】WO2011/109676
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】